(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、重度の透析患者においては飲水制限が設けられる場合があり、服薬に際し水分摂取を必要としない製剤の開発が急務である。このような透析患者に対する服薬コンプライアンスを向上させるために、軟膏剤が検討されている。
【0005】
他方、薬物はその取り扱い性や安定性の面から塩酸塩等の酸付加塩の形で流通させるのが一般的であり、ナルフラフィンも例外ではない。
【0006】
しかしながら、ナルフラフィン塩酸塩を含有する液剤や軟膏剤等の製剤を調製したところ、ナルフラフィンの製剤安定性が悪いことを本発明者らは見出した。また、ナルフラフィンの遊離塩基(フリー体)を用いて上記製剤を調製した場合においても、製剤安定性が悪いことを本発明者らは見出した。
【0007】
そこで、本発明は、優れた製剤安定性を発揮するナルフラフィン含有製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ナルフラフィンのフリー体を含有する貼付剤を調製し、ナルフラフィンの塩酸塩を含有する貼付剤と比較したところ、上記一般的な予想に反して、フリー体を含有する貼付剤の方が優れた製剤安定性を発揮することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、支持体と、該支持体の少なくとも片面上に配置された、薬物及び粘着剤を含有する粘着剤層と、を備える貼付剤であって、薬物の少なくとも一部は、フリー体であるナルフラフィンである、貼付剤を提供する。
【0010】
このような貼付剤とすることにより、優れた製剤安定性が発揮されるばかりでなく、透析患者に対する服薬コンプライアンスを向上させることができる。さらに、血中濃度を一定に保つことができることからQOLを向上させるメリットもある。
【0011】
粘着剤層は、ナルフラフィンのフリー体を粘着剤と混合させて得られたものであってもよいし、ナルフラフィンの塩を脱塩剤とともに粘着剤と混合させて得られたものであってもよい。
【0012】
ナルフラフィンの塩を脱塩剤とともに粘着剤と混合させる場合は、製剤化までは取り扱い性において優れる塩の形で存在させ、製剤中で脱塩剤によってフリー体に変換させることから、より効率的に製剤の調製が可能となる。
【0013】
脱塩剤は、酢酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に酢酸ナトリウムであることがより好ましい。また、脱塩剤の含有量は、ナルフラフィンの塩1モルに対し、0.3〜5モルであることが好ましい。このような貼付剤とすることにより、ナルフラフィンの塩のうちの少なくとも一部が製剤中でフリー体に変換され、より製剤安定性が向上し得る。
【0014】
粘着剤は、アクリル系粘着剤、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの粘着剤が粘着剤層に含まれることによって、ナルフラフィンの分解等が一層抑制され、製剤安定性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた製剤安定性を発揮するナルフラフィン含有製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
本実施形態に係る貼付剤は、支持体と、該支持体の少なくとも片面上に配置された、薬物及び粘着剤を含有する粘着剤層(薬物含有粘着剤層)と、を備える貼付剤であって、薬物の少なくとも一部は、フリー体であるナルフラフィンである。
【0018】
支持体としては、通常貼付剤に使用できる伸縮性又は非伸縮性のものが用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂で形成された、フィルム若しくはシート又はこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布及び不織布、或いは紙材等を好適に用いることができる。
【0019】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられる。粘着剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を併用して用いる粘着剤としては、スチレンブロックコポリマー系粘着剤及びポリイソブチレン系粘着剤を組み合わせる態様等が挙げられる。
【0020】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体若しくは共重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の単量体との共重合体が好適に用いられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸エステル及び上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルアルコール又はアルキルジオールの(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。アルキルアルコール及び上記アルキルジオールとしては、炭素数4〜16のものが好ましい。また、その他の単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
このようなアクリル系粘着剤としては、例えば、DURO−TAK 87−2510、DURO−TAK 87−235A、DURO−TAK 87−4098(いずれもヘンケル社製、商品名)が挙げられる。
【0023】
スチレンブロックコポリマー系粘着剤とは、スチレンブロックコポリマーに粘着付与剤等を添加し粘着性を付与したものである。スチレンブロックコポリマー系粘着剤としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)系粘着剤、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)系粘着剤、スチレン−エチレンブチレン−スチレン(SEBS)系粘着剤又はスチレン−エチレンプロピレン−スチレン(SEPS)系粘着剤等が挙げられる。
【0024】
粘着付与剤としては、例えば、エステルガム(荒川化学工業社製、商品名)、ハリエスター(ハリマ化成社製、商品名)、ペンタリン(イーストマンケミカル社製、商品名)、フォーラル(イーストマンケミカル社製、商品名)等のロジン系樹脂、YSレジン(ヤスハラケミカル社製、商品名)、ピコライト(ルースアンドディルワース社製、商品名)等のテルペン系樹脂、アルコン(荒川化学工業社製、商品名)、リガレッツ(イーストマンケミカル社製、商品名)、ピコラスチック(イーストマンケミカル社製、商品名)、エスコレッツ(エクソン社製、商品名)、ウイングタック(グッドイヤー社製、商品名)、クイントン(日本ゼオン社製、商品名)等の石油樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が使用可能である。
【0025】
これらの粘着付与剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与剤の含有量は、粘着剤の十分な粘着力及び剥離時の局所刺激性を考慮し、当業者が適宜設定することが可能である。このような観点から、粘着付与剤の含有量の上限は、粘着剤層の全質量を基準として、例えば10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。一方、粘着付与剤の含有量の下限は、粘着剤層の全質量を基準として、例えば90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。粘着付与剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがさらに好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。
【0026】
ポリイソブチレン系粘着剤とは、ポリイソブチレン(PIB)に可塑剤等を添加し粘着性を付与したものである。
【0027】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル、ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル、ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム、スクワラン、スクワレン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。可塑剤としては、特に流動パラフィン、ポリブテンが好ましい。
【0028】
薬物含有粘着剤層中の可塑剤の含有量は、粘着剤としての十分な粘着力の維持を考慮し、当業者が適宜調整することができる。このような観点から、可塑剤の含有量の上限は、薬物含有粘着剤層の全質量を基準として、例えば1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。一方、可塑剤の含有量の下限は、例えば60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。可塑剤の含有量は、薬物含有粘着剤層の全質量を基準として1〜60質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましく、3〜40質量%であることがさらに好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。
【0029】
シリコーン系粘着剤とは、ジメチルポリシロキサンと、三次元構造のシリケートレジンとの縮合反応物からなる粘着剤であり、例えばBio−PSA 7−4102(ダウコーニング社製、商品名)等を挙げることができる。
【0030】
これらの各種粘着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着剤の含有量は、薬物含有粘着剤層の形成及び粘着性、有効成分の組織透過性を考慮し、当業者によって適宜設定され得る。
なお、スチレンブロックコポリマー系粘着剤とポリイソブチレン系粘着剤とを組み合わせて用いると、それぞれを単独で用いる場合と比較して、ナルフラフィンの製剤安定性がさらに向上するばかりでなく、貼付剤の凝集力、粘着力、皮膚への付着性もさらに改善される傾向がある。スチレンブロックコポリマー系粘着剤とポリイソブチレン系粘着剤を組み合わせる比率としては、スチレンブロックコポリマーに対してポリイソブチレンが1:10〜10:1の範囲であることが好ましく、1:1〜9:1の範囲であることがより好ましく、6:4〜8:1の範囲であることがさらに好ましい。
また、スチレンブロックコポリマーを含有する粘着剤においては、上記粘着付与剤の含有量は特に制限はないが、上記可塑剤の含有量を基準として、例えば、0.4倍以上であってもよく、0.5倍以上であってもよく、1倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、2倍以上であってもよく、2.5倍以上であってもよく、3倍以上であってもよく、3.5倍以上であってもよい。他方、粘着付与剤の含有量の上限は特に制限はないが、例えば、可塑剤の含有量を基準として100倍以下であってもよく、50倍以下であってもよく、10倍以下であってもよく、5倍以下であってもよく、4倍以下であってもよい。粘着付与剤の含有量を多くすることによって、貼付剤の皮膚への付着性をより効果的に向上させることができる。
粘着剤の含有量の上限は、薬物含有粘着剤層の全体の質量を基準として、例えば10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。一方、粘着剤の含有量の下限は、例えば99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。例えば、粘着剤の含有量は、薬物含有粘着剤層の全体の質量を基準として10〜99質量%であってよく、15〜90質量%であってもよい。特に20〜85質量%であることが好ましい。
【0031】
薬物含有粘着剤層における薬物のうちの少なくとも一部は、フリー体であるナルフラフィンである。すなわち、薬物含有粘着剤層においてナルフラフィンのフリー体が存在していればよく、ナルフラフィンの塩が共存していてもよい。さらに、必要に応じて他の薬物を含んでいてもよい。薬物含有粘着剤層の製造に際しては、ナルフラフィンのフリー体が原材料として使用されていてもよいし、ナルフラフィンの塩が原材料として脱塩剤とともに使用されていてもよい。ナルフラフィンの塩が原材料として脱塩剤とともに使用された場合、貼付剤の製造中又は製造後に、該塩のうちの少なくとも一部がフリー体に変換される。
【0032】
ナルフラフィンの塩としては、薬学的に許容される塩であれば特に限定されるものではないが、貼付剤製造前の保管安定性の観点から、ナルフラフィンの酸付加塩であることが好ましい。酸付加塩としては、塩酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ヨウ化水素酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩等を例示することができる。
【0033】
ナルフラフィンの塩とともに使用される脱塩剤としては、ナルフラフィンの酸付加塩をフリー体に変換させる場合は塩基性物質が好適である。このような脱塩剤の具体例としては、特に酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、この中でも酢酸ナトリウムが好ましい。脱塩剤は、ナルフラフィンの塩のうちの少なくとも一部を製剤中でフリー体に変換させるために使用されるが、必ずしもナルフラフィンの塩の全量がフリー体に変換されなくともよく、実質的に製剤安定性が向上し得る範囲でフリー体に変換されていればよい。このような観点から、脱塩剤の含有量の上限は、ナルフラフィンの塩1モルに対し、0.3モル以上であることが好ましく、0.5モル以上であることがより好ましく、1モル以上であることがさらに好ましく、1.5モル以上であることが特に好ましく、1.8モル以上であることが最も好ましい。一方、脱塩剤の含有量の下限は、5モル以下であることが好ましく、3モル以下であることがより好ましく、2モル以下であることがさらに好ましい。脱塩剤の含有量は、ナルフラフィンの塩1モルに対し、0.3〜5モルの範囲内の量であることが好ましく、0.5〜3モルの範囲内の量であることがより好ましく、0.5〜2モルの範囲内の量であることが特に好ましい。脱塩剤の配合は、製造工程中1回で行ってもよいし、数回に分けて行ってもよい。
【0034】
薬物含有粘着剤層は、支持体に2層以上積層されていてもよく、支持体の一方の面だけでなく両方の面に積層されていてもよい。
【0035】
薬物含有粘着剤層は、必要に応じて、吸収促進剤、充填剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、架橋剤、保存剤等を含有してもよい。また、上述した粘着付与剤や可塑剤をさらに含有していてもよい。
【0036】
吸収促進剤としては、イソステアリルアルコール等の脂肪族アルコール、カプリン酸等の脂肪酸、プロピレングリコールモノラウレートやミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸誘導体、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミン等が好適に使用できる。これらの吸収促進剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、吸収促進剤の含有量は、製剤としての組織への有効成分の十分な透過性及び局所刺激性等を考慮し、当業者によって適宜設定され得る。このような観点から、吸収促進剤の含有量の上限は、貼付剤の全質量を基準として、例えば1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。一方、吸収促進剤の含有量の下限は、例えば30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。吸収促進剤の含有量は、貼付剤の全質量を基準として1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。
【0037】
充填剤としては、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が例示できる。
【0038】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が例示できる。
【0039】
上記の充填剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、架橋剤、保存剤は、合計で、薬物含有粘着剤層の全質量に基づいて、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で配合される。
【0040】
以下、本実施形態に係る貼付剤の製造方法の一例を示す。
【0041】
本実施形態に係る貼付剤の製造方法は、例えば、薬物及び粘着剤を溶媒に溶解又は分散させて混合物を得る工程と、当該混合物を支持体の少なくとも片面上に配置させる工程と、を備える。
【0042】
より具体的には、混合機を用いて、粘着剤、ナルフラフィンのフリー体、又はナルフラフィンの塩並びに脱塩剤、及び必要に応じてその他の成分を、溶媒に溶解又は分散させることにより、粘着剤溶液、すなわち薬物含有粘着剤層形成用の混合物が得られる。上記溶媒としては、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、酢酸ブチル、エタノール、メタノール、キシレン、イソプロパノール等が使用できる。これらは、溶解又は分散させる成分に応じて適宜選択し、1種を単独で又は2種以上を混合して組み合わせて用いることができる。
【0043】
上記混合物を得る工程の具体的な態様としては、ナルフラフィンのフリー体を粘着剤と混合させる態様、及びナルフラフィンの塩を脱塩剤とともに粘着剤と混合させる態様等が挙げられる。
【0044】
上記粘着剤及び脱塩剤としては、例えば上記で述べたものと同様のものが挙げられ、これらの含有量は、それぞれ上述したとおりであることが好ましい。
【0045】
得られた薬物含有粘着剤層形成用の混合物を、支持体の上に直接展延して薬物含有粘着剤層を形成するか、或いは離型処理された紙又はフィルム上に展延して薬物含有粘着剤層を形成し、その上に支持体を載せて、薬物含有粘着剤層を支持体上に圧着転写させる。
【0046】
上記のようにして得られた本実施形態に係る貼付剤は、優れた製剤安定性を発揮する。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。なお、各実施例及び比較例並びに各表における配合量に関する「%」は、質量%を意味する。
【0048】
以下の各実施例及び比較例で製造された貼付剤の安定性評価は以下のようにして行った。まず、貼付剤をそれぞれアルミ包材にて包装し密閉した。密閉した貼付剤を60℃、75%RHで2週間保存した後、製剤中の薬物含量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により測定した。密閉直後の薬物含量に対する保存後の薬物含量の割合を算出し、安定性を評価した。
【0049】
(参考例)
ナルフラフィンフリー体及び塩酸塩の原末における安定性を確認するために、20mgのナルフラフィンフリー体及び塩酸塩をそれぞれ50mLのメタノールで溶解し、60℃、75%RHで2週間保存した後、メタノールで1000倍希釈したサンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。保存開始直後のナルフラフィン含量に対する、保存後の含量割合を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示されるように、ナルフラフィンの原末は、他の一般的な薬剤と同様にフリー体よりも塩酸塩の方が保存安定性がよいことが確認された。
【0052】
(実施例1)
混合機を用いて予めナルフラフィンのフリー体をメタノールに混合させた混合物を、アクリル系粘着剤DURO−TAK 87−2510の酢酸エチル溶液に添加、混合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を離型紙上に塗工し、溶媒を乾燥除去して、薬物含有粘着剤層を形成させた後、その上にPETフィルム支持体を載せ、薬物含有粘着剤層を圧着転写させることにより貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表2に示す。
【0053】
(実施例2)
混合物として、ナルフラフィン塩酸塩及び脱塩剤としての酢酸ナトリウムをメタノールに混合させた混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって貼付剤を得た。脱塩剤としての酢酸ナトリウムの含有量は、ナルフラフィン塩酸塩1モルに対し、1.9モルとした。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表2に示す。
【0054】
(実施例3)
アクリル系粘着剤として、DURO−TAK 87−2510に替えてDURO−TAK 87−235Aを用いた以外は、実施例2と同様の方法によって貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表2に示す。
【0055】
(実施例4)
アクリル系粘着剤として、DURO−TAK 87−2510に替えてDURO−TAK 87−4098を用いた以外は、実施例2と同様の方法によって貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量安定性評価の結果を表2に示す。
【0056】
(比較例1)
混合物として、ナルフラフィン塩酸塩をメタノールに混合させた混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表2に示す。
【0057】
(比較例2)
アクリル系粘着剤として、DURO−TAK 87−2510に替えてDURO−TAK 87−235Aを用いた以外は、比較例1と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表2に示す。
【0058】
(比較例3)
アクリル系粘着剤として、DURO−TAK 87−2510に替えてDURO−TAK 87−4098を用いた以外は、比較例1と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例5)
予め、ナルフラフィンのフリー体をメタノールに混合させた混合物を、SIS、脂環族飽和炭化水素樹脂(アルコンP100;荒川化学工業社製、商品名)及び流動パラフィンのトルエン溶液に添加、混合し、SIS系粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を離型紙上に塗工し、溶媒を乾燥除去して、薬物含有粘着剤層を形成させた後、その上にPETフィルム支持体を載せ、薬物含有粘着剤層を圧着転写させることにより貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0061】
(実施例6)
混合物として、ナルフラフィン塩酸塩及び脱塩剤としての酢酸ナトリウムをメタノールに混合させた混合物を用いた以外は、実施例5と同様の方法によって貼付剤を得た。脱塩剤としての酢酸ナトリウムの含有量は、ナルフラフィン塩酸塩1モルに対し、1.9モルとした。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0062】
(実施例7)
SIS及びPIBを用いて粘着剤溶液を得た以外は、実施例6と同様の方法によって貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0063】
(実施例8)
SIS、脂環族飽和炭化水素樹脂アルコンP100及び流動パラフィンのトルエン溶液に替えて、PIB及び流動パラフィンのトルエン溶液を用いて粘着剤溶液を得た以外は、実施例6と同様の方法によって貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0064】
(実施例9)
脱塩剤としての酢酸ナトリウムに替えて水酸化ナトリウムを用いた以外は、実施例7と同様の方法によって貼付剤を得た。脱塩剤としての水酸化ナトリウムの含有量は、ナルフラフィン塩酸塩1モルに対し、1.0モルとした。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0065】
(比較例4)
混合物として、ナルフラフィン塩酸塩をメタノールに混合させた混合物を用いた以外は、実施例5と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0066】
(比較例5)
SIS及びPIBを用いて粘着剤溶液を得た以外は、比較例4と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0067】
(比較例6)
SIS、脂環族飽和炭化水素樹脂アルコンP100及び流動パラフィンのトルエン溶液に替えて、PIB及び流動パラフィンを用いて粘着剤溶液を得た以外は、比較例4と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
(実施例10)
予め、ナルフラフィンのフリー体をメタノールに混合させた混合物を、シリコーン系粘着剤Bio−PSA 7−4102に添加、混合し、粘着剤溶液を得た。この粘着剤溶液を離型紙上に塗工し、溶媒を乾燥除去して、薬物含有粘着剤層を形成させた後、その上にPETフィルム支持体を載せ、薬物含有粘着剤層を圧着転写させることにより貼付剤を得た。本実施例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表4に示す。
【0070】
(実施例11)
混合物として、ナルフラフィン塩酸塩及び脱塩剤としての酢酸ナトリウムをメタノールに混合させた混合物を用いた以外は、実施例10と同様の方法によって貼付剤を得た。脱塩剤としての酢酸ナトリウムの含有量は、ナルフラフィン塩酸塩1モルに対し、1.9モルとした。本実施例に係る貼付剤の配合量安定性評価の結果を表4に示す。
【0071】
(比較例7)
混合物として、ナルフラフィン塩酸塩をメタノールに混合させた混合物を用いた以外は、実施例10と同様の方法によって貼付剤を得た。本比較例に係る貼付剤の配合量及び安定性評価の結果を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表2〜4に示されるように、粘着剤として、アクリル系粘着剤、SIS系粘着剤、PIB系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤のいずれを用いた場合にも、ナルフラフィンのフリー体が原材料として使用されるか、又はその塩酸塩が原材料として脱塩剤とともに使用されることによって、製剤安定性が向上することが分かった。
【0074】
この結果は、薬剤は塩の状態の方がフリー体の状態よりも保存安定性が高いという、一般的な予想に反し驚くべきものである。
【0075】
中でも、表3及び4に示すように、SIS系粘着剤、PIB系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤を用いた場合に、特に良好な安定性を示した。