(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306616
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】3次元プリンティングのためのスライシングおよび/またはテクスチャリング
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20180326BHJP
G06T 19/20 20110101ALI20180326BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20180326BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20180326BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20180326BHJP
【FI】
B29C64/386
G06T19/20
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-562558(P2015-562558)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-517361(P2016-517361A)
(43)【公表日】2016年6月16日
(86)【国際出願番号】IL2014050276
(87)【国際公開番号】WO2014141273
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】61/782,142
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・シュティラーマン
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−160858(JP,A)
【文献】
特開2010−089438(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0174709(US,A1)
【文献】
特開2008−094001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B33Y 10/00
B33Y 50/00
B33Y 80/00
G06T 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタにより対応する物体をプリントするために、3次元モデルをスライスするための方法であって、前記スライスすることがZ軸を有する空間内でなされ、前記Z軸がプリント平面に垂直であり、前記方法が、
平面多角形の集合として物体の周囲を取り囲む包絡面の表現を獲得するステップであって、各多角形が形状、位置座標、およびそれぞれの前記平面多角形の平面に垂直な方向ベクトルにより規定され、前記方向ベクトルが前記物体の外側に向き、それによって前記平面多角形の内向き平面を前記平面多角形の外向き平面と区別する、ステップと、
前記Z軸に沿ったZ0座標により特徴付けられるスライス平面を規定するステップと、
前記スライス平面を、前記物体内の領域、支持構造に属する領域、および前記物体の外側にありプリントされない領域に分割するステップと
を含み、
前記スライス平面を分割するステップは、
識別されるべきそれぞれの領域の上に位置決めされる前記包絡面の最も近い多角形を見いだすステップと、
多角形が識別されない場合、対応する領域を非プリント領域としてマーキングするステップと、
多角形上の最も近いものの方向ベクトルがZ方向に正の成分を有するならば、前記対応する領域をモデル領域としてマーキングするステップと、
多角形上の前記最も近いものの方向ベクトルがZ方向に負の成分を有するならば、前記領域を支持領域としてマーキングするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
表現を獲得する前記ステップが、方位付けするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
テクスチャマップを獲得するステップと、前記スライス上にテクスチャの領域をマッピングするステップとをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記テクスチャマップが、色分布を規定するマップ、様々な材料の分布を規定するマップ、および3次元表面テクスチャを規定するマップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各領域がマルチボクセル領域であり、前記方法が、プリントする前に、前記規定されたスライス領域の各領域中にボクセルを規定するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記物体を層状にプリントするステップをさらに含み、各層が、複数の平面スライスのそれぞれのスライスに対応し、前記各層が、
前記それぞれのスライス内の支持領域としてマーキングされる複数の領域のそれぞれのボクセルに支持材料を堆積すること、および
前記それぞれのスライス内のモデルピクセルとしてマーキングされる複数の領域のそれぞれのボクセルにモデル材料を堆積すること
によりプリントされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
層をプリントすることが、前記3次元モデルの対応するスライシングの直後に続く、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
グラフィックカードまたはグラフィック処理ユニット上で実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を使用してスライスされた、プリントされるべき物体のスライスされた3次元モデル。
【請求項10】
3Dプリンタにより対応する物体をプリントするために、スライスされた3次元モデルにテクスチャを追加するための方法であって、
平面多角形の集合として物体の包絡面の表現を獲得するステップと、
前記包絡面を横切ってモデルをスライスするステップと、
前記モデルのテクスチャマップを獲得するステップと、
前記テクスチャマップを前記スライス上にマッピングして、規定されるテクスチャの領域を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を使用して、プリントされ、スライスされ、テクスチャマッピングされるべき物体の、スライスされテクスチャマッピングされた3次元モデル。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に従って、プリントされるべき物体の3次元モデルをスライスするための、グラフィカルプリンティングユニット(GPU)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、その全体を参照することによりその内容が本明細書に組み込まれる、2013年3月14日に出願された米国仮特許出願第61/782,142号の、米国特許法第119条(e)の下の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、3次元プリンティングのためのスライシングを実行する様態に関し、より詳細には、それだけには限らないが、グラフィックカードまたはグラフィカル処理ユニット(GPU)上に実現されるのに特に適した様態に関する。
【背景技術】
【0003】
3次元(3D)インクジェットプリンティングは、その最も広義の意味で、付加的製作の様式であり、そこでは、射出ノズルを通して絞り出すことができる任意の材料が、計画またはモデルに従って、層状に付着されて、3次元物体を形成する。
【0004】
モデルは、いくつかの様態のうちの任意の1つで、たとえば、コピーすることが求められる元の生成物の3D測定を実行することによって、獲得することができる。あるいは、コンピュータ支援設計(CAD)パッケージからの3D設計を使用することができる。さらなる代替として、3D設計は、好適なグラフィックパッケージを使用して、ユーザによりその場で生成することができる。
【0005】
3Dモデルは、通常、その最終形態で製造することができない。というのは、射出されると各層は溶融され、通常、その製造期間に少なくとも部分的に支持される必要があるからである。したがって、後で除去できる支持構造が、通常設けられる。物体用の任意のプリント計画は、そのような支持構造のプリントを含むべきであり、プリントに続き、容易に除去可能な支持構造を作る様態を組み込む場合がある。
【0006】
さらに、3Dモデルは、色およびテクスチャを必要とする場合があり、テクスチャは、単純に平坦なパターンである場合があり、またはある程度までモデルの深さに延びる場合がある、様々な種類の表面の特徴である。同様に、支持構造は、特に表面において、たとえば支持構造を容易に除去可能とするために、支持構造に付着されるテクスチャを有する場合がある。
【0007】
3Dモデルは、様々な位置に様々な材料をさらに含む場合がある。すなわち、防水加工が外面の周りに必要となる場合がある、または軟らかい内部が硬い外殻を必要とする場合がある、などである。
【0008】
3Dモデルは、プリントヘッドを動作させるために、命令に変換される必要がある。典型的には、モデルは、スライスに切断され、次いで各スライスの各ピクセルは、テクスチャファイルにより修正される。同様に、各個別ピクセルは、モデルの包絡面に対して試験されて、ピクセルが包絡面の内側にありモデルの部分であるのか、包絡面の下にありしたがって支持体の部分であるのか、または包絡面の外側にありしたがってプリントされないのかを決定する。ピクセルは、次いで別個のテクスチャファイルから、テクスチャ用に修正される。次いで、命令が生成されて、プリンタヘッドを動作させ、スライスをプリントすることができる。
【0009】
すなわち、スライスはピクセル毎に生成され、各ピクセルが別個に記憶されるので、かなりのメモリを必要とする。計算は、典型的には、コンピュータの中央処理装置(CPU)部分上で実行され、またはGPUもしくは他のグラフィックハードウェア上のカスタマイズされた計算を使用することができ、カスタマイズされた計算は、複雑で非常に長い。
【0010】
グラフィック処理は、典型的には別個のグラフィックカード中に設けられるGPUの形態で、ほとんどのコンピュータ上で一般的に利用可能である。グラフィックカードは、個別ピクセルの計算をバイパスする様態で、グラフィック処理用に最適化されるパイプラインを用いて設計される。しかし、グラフィックカードは3Dイメージの2D投影を提供するように設計されているので、グラフィックカードは、3Dモデルから3Dプリンティング命令を生成するように直接には使用されない。グラフィックカード上の3D処理は、典型的には、2D投影を迅速に生成するために、ビデオゲームを念頭に置いて構築されている。3Dイメージングでは、投影ではなく、実際の3D形状が必要である。このため、グラフィックカードが3Dプリント用に使用されることになる場合、カスタマイズされた解決策を介してのみ可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態は、個別ピクセルを計算および規定するのではなく、容積を識別および操作することに基づいて、3Dモデルをプリント命令に変換するプロセスを実行することに関する。そのようなプロセスは、グラフィックカード上で実行されるのに特に好適であり、グラフィックカードでは、スライスを生成するために、投影機能を使用することができ、容積の特定の部分が支持体の部分であるのか、モデル自体の部分であるのか、またはプリントされるべきでないかを決定するために、クリッピングを使用することができる。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、3Dプリンタにより対応する物体をプリントするために、3次元モデルをスライスするための方法が提供され、スライスすることはZ軸を有する空間内でなされ、Z軸はプリント平面に垂直であり、方法は、
平面多角形の集合として物体の包絡面の表現を獲得するステップであって、各多角形が形状、位置座標、およびそれぞれの多角形に垂直な方向ベクトルにより規定され、前記方向ベクトルが前記物体の外側に向き、それによって前記多角形の内面を前記多角形の外面と区別する、ステップと、
Z軸に沿ったZ0座標により特徴付けられるスライス平面を規定するステップと、
前記スライス平面を、物体内の領域、支持構造に属する領域、および物体の外側にありプリントされるべきでない領域に分割するステップと
を含む。
【0013】
一実施形態では、前記スライス内の領域を識別することが、
識別されるべきそれぞれの領域の上に位置決めされる前記包絡面に最も近い多角形を見いだすステップと、
多角形が識別されない場合、対応する領域を非プリント領域としてマーキングするステップと、
多角形上の最も近いものの方向ベクトルがZ方向に正の成分を有するならば、前記対応する領域をモデル領域としてマーキングするステップと、
多角形上の前記最も近いものの方向ベクトルがZ方向に負の成分を有するならば、領域を支持領域としてマーキングするステップと
を含む。
【0014】
一実施形態では、表現を獲得するステップは、方位付けするステップをさらに含む。一実施形態は、テクスチャマップを獲得するステップと、前記スライス上にテクスチャの領域をマッピングするステップとをさらに含む。
【0015】
一実施形態では、前記テクスチャマップが、色分布を規定するマップ、様々な材料の分布を規定するマップ、および3次元表面テクスチャを規定するマップを含む。
【0016】
一実施形態では、各領域はマルチボクセル領域であり、方法は、プリントする前に、前記規定されたスライス領域の各領域中にボクセルを規定するステップをさらに含む。
【0017】
一実施形態は、物体を層状にプリントするステップをさらに含み、各層が、複数の平面スライスのそれぞれのスライスに対応し、前記各層が、
前記それぞれのスライス内の支持領域としてマーキングされる各領域のボクセルに支持材料を堆積すること、および
前記それぞれのスライス内のモデルピクセルとしてマーキングされる各領域のボクセルにモデル材料を堆積すること
によりプリントされる場合がある。
【0018】
一実施形態では、層をプリントすることは、対応する仮想的なスライシングの直後に続き、その結果、層は、スライスされ、次いで直ちにプリントされる。
【0019】
方法は、グラフィックカードまたはグラフィック処理ユニット上で実行することができる。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に説明されるようにスライスされた、プリントされるべき物体のスライスされた3次元モデルに拡張することができる。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、3Dプリンタにより対応する物体をプリントするためにスライスされた3次元モデルにテクスチャを追加するための方法が提供され、方法は、
平面多角形の集合として物体の包絡面の表現を獲得するステップと、
包絡面を横切ってモデルをスライスするステップと、
前記モデルのテクスチャマップを獲得するステップと、
前記テクスチャマップを前記スライス上にマッピングして、規定されるテクスチャの領域を生成するステップと
を含む。
【0022】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されるような方法を使用して、プリントされ、スライスされ、テクスチャマッピングされるべき物体の、スライスされテクスチャマッピングされた3次元モデルに関する。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載されるように生成されるスライスされた3次元モデルからプリントされる、プリントされた3次元物体に関する。
【0024】
本実施形態のさらに別の態様は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかを使用してプリントされるべき物体の3次元モデルをスライスするための、グラフィカルプリンティングユニット(GPU)の使用に関する。
【0025】
別段に規定されない限り、本明細書に使用されるすべての技術的および/または科学的用語は、本発明が関係する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または等価な方法および材料を、実際に、または本発明の実施形態の試験で使用することはできるが、例示的な方法および/または材料が下で記載される。矛盾がある場合、規定を含む、特許明細書が優先することになる。加えて、材料、方法、および例は、単に例示であり、必ずしも限定することを意図しない。
【0026】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムの実現は、手動、自動、またはその組合せで選択されたタスクを実施または完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の、実際の器具および装置に従って、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアにより、ソフトウェアにより、ファームウェアにより、またはそれらの組合せによりオペレーティングシステムを使用して実現することができる。
【0027】
たとえば、本発明の実施形態に従って選択されたタスクを実施するためのハードウェアは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとしては、本発明の実施形態に従って選択されたタスクは、任意の好適なオペレーティングシステムを使用してコンピュータにより実行される、複数のソフトウェア命令として実現することができる。本発明の一例示的実施形態では、本明細書に記載されるような方法および/またはシステムの例示的な実施形態に従う1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサにより実施される。任意選択で、データプロセッサは、命令および/もしくはデータを記憶するための揮発性メモリ、ならびに/または命令および/もしくはデータを記憶するための、たとえば磁気ハードディスクおよび/もしくは取り外し可能媒体といった不揮発性記憶装置を含む。任意選択で、ネットワーク接続が同様に設けられる。ディスプレイおよび/またはキーボードもしくはマウスなどのユーザ入力デバイスが、同様に任意選択で設けられる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書で、添付図面を参照して、単に例として記載される。ここで詳細に図面への具体的な参照をすると、示される細目は、例としてであり、本発明の実施形態の説明に役立つ議論が目的であることが強調される。この点に関し、図面を用いた説明は、本発明の実施形態をどのようにして実施することができるのかについて、当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施形態に従う、プリントされるべき物体の3Dモデルをスライスするための手順を図示する、簡略化した流れ図である。
【
図2】
図1の手順が適用される、3Dモデルの概略図である。
【
図3】3Dモデル上にテクスチャをマッピングするための、
図1の手順の修正を示す、簡略化した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、3次元プリンティングのためのスライシングを実行する様態に関し、より詳細には、それだけには限らないが、グラフィックカード上で実行するのに特に適した様態に関する。
【0031】
下でより詳細に説明されることになるように、3Dプリンタにより対応する物体をプリントするために、3次元モデルをスライスするための方法が提供され、方法は、この場合、スライス平面内の予め規定された作業域の各領域について、物体の包絡面を多角形として獲得するステップと、それぞれの領域の上に位置決めされる包絡面の最も近い多角形を識別するステップと、多角形が識別されない場合、対応する領域を非プリント領域としてマーキングするステップと、多角形上の前記最も近いものの方向ベクトルがZ方向に正の成分を有する場合、前記対応する領域をモデル領域としてマーキングするステップと、前記多角形の方向ベクトルがZ方向に負の成分を有する場合、前記対応する領域を支持領域としてマーキングするステップと、それに応じてプリントするステップとを含む。上の手順の利点は、スライシングがグラフィックカードまたはGPU上で効率的に実行することができることである。
【0032】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、以下の記載に示される、かつ/または、図面および/もしくは例に図示される、構成要素の構成および配置の詳細ならびに/または方法への本発明の応用に、本発明が必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な様態で実施もしくは実行されることが可能である。
【0033】
ここで図面を参照すると、
図1は、本発明の実施形態に従って、物体のプリントの前にモデルのスライスを実現する手順を図示する、簡略化した流れ図である。
【0034】
本発明の実施形態は、仮想的な視野機能である、グラフィックカードの視錐台(viewing frustum)を使用し、プリントされるべき物体である3D本体を生成して、物体を垂直なセクション(スライス)に分割することができる。本体は、本体面を規定する3D空間中の多角形の組により描写される。
【0035】
本実施形態は、上向きに面している本体である、正の法線z成分を有する表面は、底からの垂直投影中には見られず、本体の内側からのみ見ることができる、という事実を利用することができる。同様に下向きに面している表面は、底から見られ、負の法線z成分を有する。これらの面は、モデルの内部本体を指す方位ベクトルを表面に最初に供給することにより識別することができる。方位ベクトルは、多角形に対して垂直であってよく、z方向に成分を有することができる。
【0036】
そのような表面を識別するために、法線の正のz成分を有するすべての多角形面は、モデル材料を示す色によってマーキングされ、法線に対し負のz成分を有するすべての多角形面は、支持領域を示す色によってマーキングされる。
【0037】
スライスは、この場合、底から見た垂直投影の結果であってよく、ここで、それぞれに割り当てられた色によりマーキングされたモデルおよび支持区域を含むことができる。
【0038】
下でより詳細に説明されることになるように、ここで、モデル中のスライス中の表面に、または表面の周りに3Dテクスチャを割り当てることができ、テクスチャは、所望の表面3Dテクスチャ、物体面色、存在する場合には様々な物体材料、および支持区域のための構造を提供する。
【0039】
特徴は、スライスの領域に割り当てられ、個別ピクセルは、この点では計算されない。
【0040】
結果として、数千スライスを計算する必要があり、従来では数時間かかる典型的なスライス処理が、グラフィックアクセラレータHWを使用してはるかに速く実行され、垂直投影およびクリッピングを使用するスライスを計算することができる。
【0041】
さらに詳細には、スライシング方法は、グラフィックカードの視錐台を使用して、3D本体の垂直セクション、スライスを生成するステップを含む。後続のスライスが生成されると、必要なスライス解像度に従って、スライサの視点が正のz方向に徐々に動かされる。それに応じて、視錐台が調整される。
【0042】
あらゆるスライスは、こうして、モデルおよび支持区域の一方または両方を含むことができ、区域は、モデル面または近い表面に割り当てられる異なる色またはパターンによりマーキングされる。色またはパターンは、材料、材料の異質な組合せ、すなわち、デジタル材料(DM)または支持構造についてのテクスチャを含む。
【0043】
図1を再び参照して、ボックス100に示されるように、第1のステージでは、オフスクリーン描画のためグラフィックカードへの1つまたは複数の3Dモデルのロード、より正確にはMLoadを行う。モデルは、プリントされるべき物体の表面を記載する多角形の組を使用して、物体を描写する。モデルは、所望の位置および方位に従って位置決めされる。
【0044】
すべての多角形は3D面の部分であり、3D面は内側および外側を有する。ボックス102では、あらゆる多角形の法線が計算される。ボックス104では、法線のz成分は、物体の内側および外側をマーキングするために見いだされる。底において開始して、負符号が付いた法線のz成分を有するすべての多角形面は、支持領域を示す特定の色によりマーキングされ、正の方位である多角形面は、モデル色によりマーキングされる。
【0045】
その後、ボックス106中に示されるように、仮想カメラの位置(視点)が、z=0に設定され、第1のスライスを規定し始める。カメラ位置は、次いで、モデルの最高の高さに到達するまで、各後続のスライスについて増分する。
【0046】
次いで、ボックス108中のように、スライスの各々について、上向きに見る仮想カメラがスライスの長さに沿ってスライドされると、スライスの各部分が次の多角形面に上向きに投影される。視野内の第1の多角形面が下向きに面している外面である場合、スライスのその領域は、支持領域としてマーキングされる。表面が下向きに面している内面である場合、領域は、物体自体の部分としてマーキングされる。スライスは実際には2次元の区域であり、そのため、プロセスは、全区域にわたって実行されなければならないことが理解されよう。
【0047】
各スライスが完了すると、カメラまたは視点は、z方向にスライス幅だけ上に動かされる-ボックス110。
【0048】
グラフィックカードの速い並列計算能力は、スライスが上のように迅速に計算されることを可能にすることができ、上述のように、計算は、個別ピクセルではなくスライスの領域に関する。個別3Dピクセルまたはボクセルは、その後プリントするステップの前に、個別3Dピクセルまたはボクセルが属する領域のプロパティから簡単に計算される。
【0049】
どのようにして上の手順がL字型のモデル品200上で働くことができるのかを図示する概略図である、
図2をここで参照する。モデル品は3次元のモデル品であるが、簡単のために2Dとして示されることが理解されよう。モデル品は、垂直セクション202および水平セクション204を有し、表面は、多角形により規定され、各表面に対し内面および外面を有する。
【0050】
ここで、スライス206の計算を考える。上向きに見ている仮想カメラが、スライスの長さに沿ってスライドされる。仮想カメラが直立モデル部202内にある限り、仮想カメラが見る第1の面は、上部壁208の内向きに面する側である。したがって、垂直部202内のスライスの領域は、モデル内であるとマーキングされる。
【0051】
仮想カメラが直立部を出て、L型の拡張部の下に動くと、仮想カメラが出会う第1の表面は、下部壁210の下向きに面する外面である。したがって、直立部の外側およびLの拡張部の下の領域は、支持領域としてマーキングされる。
【0052】
モデル内または204の拡張部の下のいずれでもないが、全くL型の外側であるスライスのそれらの部分では、上向きに見ているカメラが多角形面に出会わず、したがって領域は、非プリント領域としてマーキングされる。
【0053】
本発明の実施形態によれば、グラフィックカードは、こうして、スライスから上向きであるZ方向に見ることにより、3Dの場面をレンダリングし、平行な投影視を形成することができる。各スライスについて、カメラは、スライスのz平面(カメラのz位置)上に設定され、z平面(視界方向)に垂直であるスライス中のベクトルに沿って、底から上向きにスライドする。
【0054】
グラフィックカードは、こうして、領域内の個別ピクセルを後で規定する準備ができている、多角形、投影、および多角形選別を使用して、モデルおよび支持領域を自動的に計算することができる。内側を指す法線ベクトルを有するすべての可視多角形面は、モデルに属するものとしてレンダリングおよびマーキングすることができ、外側を指す法線ベクトルを有するすべての可視多角形は、支持構造に属するものとしてレンダリングおよびマーキングすることができる。
【0055】
ここで一般に、単純に領域をモデルとして、または支持部として、または非プリント部としてマッピングするのは、十分でない。ユーザがプリントする必要がある現実世界の物体は、色、様々な場所における様々な材料、表面パターン、3Dテクスチャなどを必要とする。再びグラフィックプロセッサが答えを提供することができる。テクスチャマッピングユニット(TMU)は、現代のグラフィック処理ユニット(GPU)中の構成要素である。TMUは、所与の3D物体の任意の平面上にテクスチャとして配置されるビットマップを回転およびサイズ変更することが可能である。現代のグラフィックカードでは、TMUは典型的には、グラフィックパイプライン中のディスクリートステージとして実現される。
【0056】
3Dの場面をレンダリングするため、テクスチャは、多角形メッシュの頂部上にマッピングされる。これは、テクスチャマッピングと呼ばれ、グラフィックカード上のTMUにより達成される。
【0057】
テクスチャマップは、形状または多角形の表面に付着、またはマッピングすることができる。付着プロセスは、平坦な白いボックスにパターン付けされた紙を付着させることに近い。たとえば、多角形中のあらゆる頂点は、明示的な割当てを介するかまたは手続き的な規定によるかのいずれかで、テクスチャ座標を割り当てることができる。マルチテクスチャリングは、多角形上に一度に2つ以上のテクスチャを使用することである。
【0058】
本発明の実施形態では、上に記載されたようなテクスチャマッピングを使用して、モデル(たとえば、DM)および支持部の、関心の対象部または複雑で複数の材料の構造部を生成し、たとえば支持部をグリッドとして規定することができる。
【0059】
方法は、簡略化した流れ図である
図3に図示される。方法は、予め規定された2Dもしくは3Dテクスチャまたは色マップを使用するステップと、モデル形状を規定する、同じ多角形上にそのマッピングを規定するステップとを含む。スライスについて、1つまたは複数のテクスチャマップが獲得される(ボックス300)。色および表面パターン用302、様々な材料用304、および様々な3D深度テクスチャ用306といった、別個のテクスチャマップがあってよい。さらなるテクスチャマップを必要に応じて設計することができ、様々なテクスチャマップを、便宜上1つまたは複数のファイルに組み合わせることができる。ボックス308中で、テクスチャマップ領域は、スライス領域上にマッピングされる。異なるテクスチャを、2つの異なる多角形の側、外側および内側に別個に付着することができ、上のように実行されるレンダリングの後で、出力は、モデルまたは支持構造の色およびテクスチャ表現を含むことができる。
【0060】
グラフィックプロセッサは、様々な材料を表す直接の様態を有さない。しかし、グラフィックプロセッサは、色を表すことが非常に得意であり、したがって、色が、生成されるスライス中にプリントされるべき様々なボクセルの様々な材料を表すことができる。こうして、マルチテクスチャリングを使用して、材料タイプを意味する色を、物体上に現れることが意図される色と組み合わせることができる。
【0061】
3Dテクスチャは、深さを有する構造を生成するためにさらに使用することができる。深さは、表面から計算されるので、グラフィックプロセッサは、モデルの深さへの投影プロセスの部分として、コーティングされる、または複数コーティングされる層構造、および表面平面に垂直な方向への勾配構造を簡単に生成することができる。たとえば、特定の物体は、表面における硬い外殻および軟らかい充填材料を必要とする場合があり、または表面における防水加工を必要とする場合がある。テクスチャマップは、グラフィックプロセッサがスライス中の領域に関連する情報を適用することを可能にする様態である。
【0062】
この出願から特許が満期になる有効期間に、多くの関連するインクジェットおよび他のプリント技術が発展することが期待されるが、「プリンティング」という用語の範囲は、事前に、すべてのそのような新規技術を含むことが意図される。
【0063】
「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」という用語およびそれらの語形変化は、「含むが限定しないこと(including but not limited to)」を意味する。
【0064】
「からなる(consisting of)」という用語は、「含んでおり、限定されること(including and limited to)」を意味する。
【0065】
本明細書で使用する、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないと定める場合を除き、複数形への言及を含む。
【0066】
分かりやすくするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態中に組み合わせて提供することもでき、上の記載は、この組合せが明示されているものとして解釈されるべきであることが理解されよう。反対に、簡潔のために単一の実施形態の文脈中に記載される本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の好適な部分的な組合せで、または本発明の任意の他の記載された実施形態で好適なように提供することもでき、上の記載は、これらの別個の実施形態が明示的に書かれた場合と同様に解釈されるべきである。様々な実施形態の文脈中に記載された特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不可能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と考えるべきでない。
【0067】
本発明は、その特定の実施形態と組み合わせて記載されてきたが、多くの代替形態、修正形態、および変形形態が当業者には明らかとなることは明白である。したがって、添付の請求項の思想および広い範囲内に入る、すべてのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含することが意図される。
【0068】
この明細書中に言及されるすべての出版物、特許、および特許出願は、各個別の出版物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれると具体的および個別に示された場合と同程度に、明細書中へ参照によりそれらの全体が本明細書において組み込まれる。加えて、この出願中の任意の参照の引用および識別情報は、そのような参照が本発明に対する従来技術として利用可能であると認めると解釈されるべきでない。セクション見出しが使用されるほどまでに、それらは必ずしも限定的であると解釈するべきでない。
【符号の説明】
【0069】
200 L字型のモデル品
202 垂直セクション、垂直部
204 水平セクション
206 スライス
208 上部壁
210 下部壁