特許第6306656号(P6306656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306656
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20180326BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20180326BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20180326BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20180326BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20180326BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A61F13/475 100
   A61F13/511 100
   A61F13/534 100
   A61F13/535 200
   A61F13/536 100
   A61F13/537 310
   A61F13/537 320
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-190368(P2016-190368)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-50951(P2018-50951A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 富美子
(72)【発明者】
【氏名】益井 大和
(72)【発明者】
【氏名】木村 真由美
(72)【発明者】
【氏名】田中 聰
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−051171(JP,A)
【文献】 特開2008−125918(JP,A)
【文献】 特開2007−089907(JP,A)
【文献】 特開2012−157459(JP,A)
【文献】 特開2008−246093(JP,A)
【文献】 実開昭54−168797(JP,U)
【文献】 特公昭40−004113(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向と該縦方向に直交する横方向を備え、吸収体を有し、該縦方向に沿って前方部、中間部及び後方部を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記中間部の肌対向面側に、他の部分よりも厚みの厚い中高部を有しており、
前記吸収体は、前記中高部よりも後方側に、前記縦方向に延びる後方スリットが配置された後方スリット領域を有し、該後方スリット領域は、前記吸収体を横方向に二分して縦方向に延びる仮想縦中心線を挟んで両側に一対配されており、
一対の前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットの内、最も前記中高部に近い位置に配され、かつ最も横方向の内方に位置する近接スリットどうしの横方向の間隔は、該中高部における縦方向の後端部の横方向の幅と同じか或いは該幅よりも広い、吸収性物品。
【請求項2】
前記近接スリットの横方向の間隔は、前記中高部を縦方向に5分割した際の最も後側の最後端分割域における横方向の最大長さと同じかそれより広い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体は、前記中高部に、縦方向に延びる中央スリットが縦方向及び横方向に分散して配された中央スリット領域を有している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中央スリット領域を構成する前記中央スリットの内、最も後方側に位置する中央最後部スリットの後端と、各前記後方スリット領域の前記近接スリットの前端とは、前記吸収性物品を横方向から視て、重なっていない、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記一対の後方スリット領域それぞれの横方向の最も内側に位置した、横方向に隣り合う後方スリット間の横方向の距離が、横方向に隣り合った前記中央スリット間の横方向の距離よりも長い、請求項3又は4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記一対の後方スリット領域それぞれの、横方向の最も内側に位置する前記後方スリットは、前記中高部における縦方向の後端部の横方向の幅を5等分した際の中央1領域より横方向の外側に位置する、請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品は、前記吸収体を挟持する表面シート及び裏面シートを具備し、肌対向面に、前記表面シート及び前記吸収体が一体となった、前記裏面シート側に底部を有する溝を備え、
前記吸収性物品を平面視して、各前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットが、前記溝と重なる部分を有している、請求項1〜6の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、前記吸収体と、該吸収体を挟持する表面シート及び裏面シートを具備する吸収性本体を有し、該吸収性本体における前記中間部よりも後方に、該吸収性本体の縦方向に沿う両側部それぞれから横方向の外方に延出する一対の後方フラップ部を有しており、
各前記後方フラップ部は、その非肌対向面に縦方向に延びるズレ止め部材を有し、
前記吸収性物品を平面視して、各前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットは、前記ズレ止め部材の縦方向の後端部よりも後方に配されていない、請求項1〜7の何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、吸収体の排泄部対向部における中央部に、縦スリットが分散して形成された中央スリット領域と、吸収体の後方部に、横方向に延びる後方スリットが縦方向に間欠的に配されて形成された後方スリット領域とを有する吸収性物品を提案した(特許文献1)。特許文献1に記載の吸収性物品によれば、深い折れ皺やヨレが発生し難く、フィット性が向上し、着用感が向上する。
【0003】
これとは別の技術として、特許文献2には、吸収性物品の使用中に、着用者の尻の間の割れ目中に延ばして吸収性物品を安定させる観点から、吸収体の後部分において、物品の縦方向の中央線に沿って延びる細長い貫通穴を配置した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−23999号公報
【特許文献2】特表2005-512680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、就寝時に身体を仰向けにした姿勢をとると、一般的な夜用の生理用ナプキンでは、着用者の液排泄部に対向配置される排泄部対向部よりも後方に隙間が生じ易く、一度に多量に経血が排泄された場合等に経血が肌を伝って流れ易く、漏れの原因になることを見出した。このような漏れに対し、特許文献1に記載の吸収性物品を着用すれば、後方スリット領域によりフィット性が向上するので、一定の効果はあるものの、中央スリット領域に配された吸収体の中高部分と、該中高部から後方スリット領域を構成する後方スリットまでの間の部分との剛性差によって、吸収性物品と肌との間に隙間が生じてしまう場合があり、特許文献1に記載の吸収性物品には、改善の余地があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の吸収性物品を着用すれば、着用時に吸収体の後方領域が着用者の肌に向かって貫通穴を起点に屈曲した形状に変形するので、着用者に違和感を与えてしまう。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向と該縦方向に直交する横方向を備え、吸収体を有し、該縦方向に沿って前方部、中間部及び後方部を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、前記中間部の肌対向面側に、他の部分よりも厚みの厚い中高部を有しており、前記吸収体は、前記中高部よりも後方側に、前記縦方向に延びる後方スリットが配置された後方スリット領域を有し、該後方スリット領域は、前記吸収体を前記横方向に二分して前記縦方向に延びる仮想縦中心線を挟んで両側に一対配されており、一対の前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットの内、最も前記中高部に近い位置に配され、かつ最も横方向の内方に位置する近接スリットどうしの横方向の間隔は、該中高部における縦方向の後端部の横方向の幅と同じか或いは該幅よりも広い、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品によれば、フィット性が向上し、体液が肌を伝って流れ難く、防漏性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の吸収性物品の好ましい一実施形態である生理用ナプキンを肌対向面側から視た平面図である。
図2図2は、図1のII−II線断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1のIII−III線断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図1に示す生理用ナプキンの備える吸収体を肌対向面側から視た平面図である。
図5図5は、本発明の吸収性物品の備える別の実施形態の吸収体を肌対向面側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキン1(以下、「ナプキン1」とも言う。)に基づき図面を参照して説明する。ナプキン1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと縦方向Xに直交する横方向Yを備え、吸収体4を有し、該縦方向Xに沿って前方部F、中間部M及び後方部Rを有している。図1図3に示すナプキン1は、就寝時の使用に適した夜用のナプキンである。図1には、ナプキン1を肌対向面側から見た平面図が示されており、図2及び図3には、ナプキン1の断面図が示されている。また、図4には、ナプキン1の備える吸収体4を肌対向面側から見た平面図が示されている。
【0012】
本実施形態では、ナプキン1は、図1図3に示すように、吸収体4と、吸収体4を挟持する表面シート2及び裏面シート3とを具備する吸収性本体10を有している。言い換えれば、吸収性本体10は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。本実施形態では、ナプキン1の吸収体4は、吸収性シートから形成されており、具体的には、図2及び図3に示すように、吸収性シートが複数層厚み方向に重なった構造となっている。ナプキン1では、吸収性シートから形成された吸収体4は、高吸収性ポリマー及び構成繊維を含有している。
【0013】
ナプキン1の吸収性本体10は、図1に示すように、着用時に着用者の排泄部である膣口に対向配置される排泄部対向部を含む中間部Mと、該中間部Mよりも着用者の前側寄りに配される前方部Fと、該中間部Mよりも着用者の後側寄りに配される後方部Rとを有しており、前後方向に長い形状となっている。ナプキン1及び吸収性本体10は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、該縦方向Xに直交する横方向Yと、厚み方向Zとを有する。即ち、吸収性本体10は、前後方向である縦方向Xに沿って、前方部F、中間部M及び後方部Rを有し、該順番で区分される。
また、ナプキン1は、ナプキン1の横方向Y中心を通る縦方向Xに延びる仮想二等分線である縦中心線CLに対して左右対称形となっている。
【0014】
また、本明細書において、肌対向面は、ナプキン1又はその構成部材(例えば表面シート2)における、ナプキン1の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、ナプキン1又はその構成部材における、ナプキン1の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、縦方向Xは、ナプキン1及び吸収性本体10の長手方向に一致し、横方向Yは、ナプキン1及び吸収性本体10の幅方向(長手方向に直交する方向)に一致する。
【0015】
本実施形態では、ナプキン1は、図1及び図3に示すように、吸収性本体10に加えて、吸収性本体10における中間部Mよりも後方である後方部Rに、吸収性本体10の縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対の後方フラップ部10H,10Hを有している。また、ナプキン1では、図1及び図2に示すように、吸収性本体10における中間部Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部10W,10Wを有している。
【0016】
尚、本発明の吸収性物品において、中間部Mとは、本実施形態のナプキン1のようにウイング部10Wを有する場合には、縦方向Xにおいてウイング部10Wを有する領域(一方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域)を意味する。また、ウイング部を有しない吸収性物品の場合には、吸収性物品が個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向Yに横断する折曲線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向Xの前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域を意味する。
【0017】
本実施形態のナプキン1では、表面シート2は、図1図3に示すように、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に表面シート2の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、後述する防漏カフ形成用シート5と共にサイドフラップ部10Sを形成している。表面シート2の肌対向面に固定された防漏カフ形成用シート5と裏面シート3とは、吸収体4の縦方向Xの両端縁からの延出部分において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。尚、表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。
【0018】
ナプキン1では、防漏カフ形成用シート5は、図1図3に示すように、吸収性本体10の肌対向面に配された表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部に配され固定されている。好適には、防漏カフ形成用シート5は、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、吸収性本体10の縦方向Xの全長に亘って配され固定されている。防漏カフ形成用シート5は、例えば、自由端部側を折り返し、折り返して形成された折り返し部分の内部に防漏カフ形成用弾性部材を配してもよい。このように防漏カフ形成用弾性部材を配すると、防漏カフ形成用弾性部材の収縮力により、折り返し部分が着用者の肌側に向かって起立する、防漏カフが形成されるようになる。このように防漏カフが形成されると、肌対向面に排泄された経血の横漏れを防止することができる。
【0019】
ナプキン1では、サイドフラップ部10Sは、図1に示すように、中間部Mにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部10W,10Wが延設されている。また、サイドフラップ部10Sは、図1に示すように、後方部Rにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の縦方向Xに沿う左右両側に、一対の後方フラップ部10H,10Hが延設されている。
【0020】
ウイング部10Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面側に折り返されて用いられるものである。ナプキン1では、ウイング部10Wは、図1に示すように、平面視において、下底(上底よりも長い辺)が、吸収性本体10の縦方向Xに沿う側部側に位置する略台形形状を有している。ウイング部10Wの非肌対向面には、該ウイング部10W(ナプキン1)をショーツ等の着衣(図示せず)に固定するズレ止め部材であるウイング部粘着部10W1が配されており、このウイング部粘着部10W1によって、使用時に、着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されたウイング部10Wを、該クロッチ部に粘着固定できるようになされている。ウイング部粘着部10W1は、縦方向Xに延びるように配されている。ナプキン1では、ウイング部粘着部10W1の形状は、縦方向Xに長い矩形状であり、縦中心線CLに平行に延びている。また、吸収性本体10の非肌対向面にも、吸収性本体10を、ショーツ等の着衣に固定するための本体粘着部(図示せず)が形成されている。
【0021】
後方フラップ部10Hは、着用時にショーツ等の着衣の肌対向面側に配されるものである。後方フラップ部10Hの非肌対向面には、該後方フラップ部10Hをショーツ等の着衣(図示せず)に固定するズレ止め部材である後方フラップ部粘着部10H1が配されており、この後方フラップ部粘着部10H1によって、使用時に、着衣の肌対向面(内面)上に後方フラップ部10Hが粘着固定できるようになされている。後方フラップ部粘着部10H1は、縦方向Xに延びるように配されている。ナプキン1では、後方フラップ部粘着部10H1の形状は、縦方向Xに長い矩形状であり、縦中心線CLに平行に延びている。
【0022】
ナプキン1は、図1図3に示すように、吸収体4を挟持する表面シート2及び裏面シート3を具備し、肌対向面に、表面シート2及び吸収体4が一体となった、裏面シート3側に底部を有する溝9を備えている。具体的には、吸収性本体10の肌対向面(表面シート2の肌対向面)に、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥されてなる線状の溝9を備えている。したがって、溝9は、表面シート2及び吸収体4に関して、構成部材である各々の繊維の密度が、溝の周囲部の密度よりも高い溝となっている。線状の溝9における「線状」とは、溝(凹陥部)の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含んでいることを意味する。尚、各線は、連続線でも破線等のような不連続線でもよい。例えば、溝9は、不連続な多数の点エンボスのなす列から構成されていてもよい。
【0023】
ナプキン1では、図1に示すように平面視して、溝9は、前方部F及び後方部Rに、それぞれ横方向Yに延びる第1横圧搾溝91と、ナプキン1の縦方向Xの両側部に、前方部F、中間部M及び後方部Rに亘って縦方向Xに延びる縦圧搾溝92とを有している。ナプキン1では、前方部F及び後方部Rの第1横圧搾溝91は、縦方向X外方に向けて凸の曲線状を形成しながら横方向Yに延びている。ナプキン1では、前方部Fの第1横圧搾溝91、一方の縦圧搾溝92、後方部Rの第1横圧搾溝91、及び他方の縦圧搾溝92が繋がってリング状の全周溝を形成している。また、ナプキン1では、溝9は、前方部Fの第1横圧搾溝91よりも縦方向X内方に、横方向Yに延びる第2横圧搾溝93を有している。また、また、ナプキン1では、溝9は、後方部Rであって、該後方部Rにおける一対の縦圧搾溝92,92及び第1横圧搾溝91で囲まれた領域内に、縦方向X外方に向けて凸の曲線状を形成しながら延びている第3圧搾溝94を有している。尚、ナプキン1では、第2横圧搾溝93及び第3圧搾溝94は、いずれも、図1に示すように、一対の縦圧搾溝92,92と繋がっていないが、繋がっていてもよい。このように形成された溝9は、表面シート2上を平面方向に流れる体液の拡散を抑制して、ナプキン1の周囲から液漏れを効果的に防止することができる。
【0024】
本発明の吸収性物品の備える吸収体は、中間部Mの肌対向面側に、他の部分よりも厚みの厚い中高部を有している。本実施形態のナプキン1では、吸収体4は、図1及び図2に示すように、吸収性シートから形成されており、具体的には、吸収性シートが複数層厚み方向Zに重なった構造となっている。ナプキン1では、吸収性シートから形成された吸収体4は、高吸収性ポリマー及び構成繊維を含有している。吸収体4を構成する1枚の吸収性シートは、三次元に分散配置された高吸収性ポリマー及び構成繊維を有している。吸収性シートとしては、湿潤状態の高吸収性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維どうしの間や高吸収性ポリマーと構成繊維との間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。なお、吸収性シートとは、シート状に成型されている吸収体のことであり、一般的に吸収性材料を積もらせた積繊タイプの構造の吸収体とは区別される。吸収性シートの代表的なものとしては、特許2963647号記載のものや、特許2955223号記載のものなどが挙げられる。
【0025】
ナプキン1では、吸収体4は、図2及び図3に示すように、吸収性シートで形成された多層構造となっている。ここで、前記形成された多層構造は、吸収性シートを複数枚重ね合わせて形成されたものであってもよいし、1枚の吸収性シートを折り重ねて形成されたものであってもよいし、これらを複合して形成されたものであってもよい。ナプキン1では、吸収体4は、図2に示すように、中間部Mに吸収性シートで形成された中央吸収性シート42と、中央吸収性シート42を覆う本体吸収性シート41とで構成されている。即ち、ナプキン1の吸収体4は、本体吸収性シート41及び中央吸収性シート42からなる多層構造が形成されており、中間部Mに中高部43を形成している。ナプキン1の吸収体4の多層構造は、1枚の本体吸収性シート41の折り畳み構造の内部に中央吸収性シート42が内包された構造を有し、この中央吸収性シート42が中高部43に配されている。
【0026】
好適に、ナプキン1では、図1図3に示すように、本体吸収性シート41は、ナプキン1よりも横方向Yの長さ(幅)が長い、1枚のシートからなり、該本体吸収性シート41の縦方向Xに沿う両側部を裏面シート3側に折り返して2層構造とし、且つその縦方向Xに沿う両側縁どうしを横方向Yの中央にて重ね合わせて、吸収体4の外形を形成している。中央吸収性シート42は、1枚の平面視矩形形状のシートからなり、該中央吸収性シート42を横方向Yに3つ折りした3層構造となっている。中央吸収性シート42を3層構造とする際には、中央吸収性シート42を縦方向Xに横断する2本の折り曲げ線において、横方向Yの自由端から数えての2本目の折り曲げ線にて裏面シート3側に折り曲げ、更に横方向Yの自由端から数えての1本目の折り曲げ線にて表面シート2側に折り曲げ、横方向Yの自由端が3層構造の内部に配されるように、渦巻き状に折り畳む。このように中央吸収性シート42は、渦巻き状に3つ折りされた3層構造となっている。中高部43は、3層構造の中央吸収性シート42を、2層構造の本体吸収性シート41の間に挟んで5層構造に形成されている。中高部43は、中間部Mのみに形成され、前方部F及び後方部Rには形成されていない。図2及び図3に示すように、中高部43の周囲における吸収体4を構成する吸収性シートの積層枚数が2枚であるのに対し、中高部43における吸収体4を構成する吸収性シートの積層枚数が5枚と積層枚数が多く、厚みが中高部43の周囲よりも大きい部分となっている。このため、中高部43は、中間部Mに、表面シート2側(ナプキン1の肌対向面側)に突出した隆起部となっている。
【0027】
吸収性シート1枚あたりの厚みとしては、好ましくは0.1mm以上、特に0.3mm以上であり、また、好ましくは2mm以下、特に1.5mm以下であることが好ましい。より具体的には、0.1mm以上2mm以下、特に0.3mm以上1.5mm以下であることが、経血を吸収体4でスポット的に吸収しかつ装着感の良好な吸収性物品を得る点から好ましい。
【0028】
吸収体4は、中高部43における厚みが、好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下であり、より具体的には、好ましくは0.7mm以上5mm以下、更に好ましくは1mm以上4mm以下である。中高部43の厚みをこのような範囲とすることで、中高部43が形成されている中間部Mにおける良好な装着感と高い吸収性能を両立することが容易となる。また、本実施形態のナプキン1のように吸収性物品がウイング部を備えている場合には、装着時に中間部Mでの吸収体のヨレを抑制しやすくなる。また、吸収体は、中高部43以外の中高部43の周囲部分における厚みが、好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.5mm以下であり、より具体的には、好ましくは0.3mm以上3mm以下、更に好ましくは0.5mm以上2.5mm以下である。この範囲であることが、高い吸収性能と着用者の動きへの追従性を高める観点から好ましい。なお、吸収体及び吸収性シートの厚みは下記方法により測定される。
【0029】
<吸収性シート及び吸収体の厚みの測定方法>
測定対象物である吸収性シート又は吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm2の荷重下での厚みを測定する。本発明における厚みの測定には、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いた。このとき、厚み計の先端部と測定対象物における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm2となるようにプレートの大きさを調整する。
【0030】
本発明の吸収性物品の備える吸収体は、中高部43よりも縦方向Xの後方側に、縦方向Xに延びる後方スリットR1が配された後方スリット領域RSを有している。後方スリット領域RSは、吸収体4を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる仮想縦中心線である縦中心線CLを挟んで両側に一対配されている。本実施形態のナプキン1では、吸収体4は、図1及び図4に示すように、中間部Mの中高部43よりも縦方向Xの後方側に、横方向Yに分離した一対の後方スリット領域RSr,RSlを備えており、各後方スリット領域RSr、RSlは、縦方向Xに延びる後方スリットR1を有している。ここで、縦方向Xに延びる後方スリットR1の形状としては、縦方向Xに延びていれば直線のみならず、波線、曲線、破線等も含む意味である。また、縦方向Xに延びる後方スリットR1の傾斜角度としては、縦方向Xに延びる縦中心線CLに平行に延びるスリットのみならず、縦中心線CLに平行に延びる仮想線とのなす角度が45度未満となるスリットも含む。但し、後方スリットR1の傾斜角度は30度未満が好ましく、特に10度未満が好ましく、0度が最も好ましい。各後方スリット領域RSは、このような後方スリットR1を少なくとも1本有していることが好ましく、2本以上18本以下有していることが更に好ましく、4本以上14本以下有していることが特に好ましい。各後方スリット領域RSが後方スリットR1を複数本有している場合、後方スリットR1の形状及び傾斜角度が、全て同じスリットであってもよく、一部異なるスリットを含んでいてもよく、全て異なるスリットであってもよい。各後方スリット領域RSが後方スリットR1を複数本有している場合、各後方スリット領域RSには、縦方向Xに延びるスリット列が、横方向Yに2列以上形成されていることが好ましく、3列以上がより好ましい。また、個々のスリット列に含まれる後方スリットR1の本数は、好ましくは1本以上であり、より好ましくは2本以上である。ナプキン1では、図4に示すように、各後方スリット領域RSには、縦方向Xに延びるスリット列が、横方向Yに3列形成されており、各該スリット列に含まれる後方スリットR1の本数は2本である。ナプキン1では、2列のスリット列の間に配されるスリット列が、該2列のスリット列よりも吸収体4の中高部43側に配されて後方スリット領域RSが形成されている。
【0031】
ナプキン1では、図1及び図4に示すように、一対の後方スリット領域RSr,RSlそれぞれを構成する後方スリットR1は、縦中心線CLに対して左右対称に配されて一対の後方スリット領域RSr,RSlを形成している。そして、ナプキン1では、各後方スリット領域RSが、形状及び傾斜角度が全て同じ複数の後方スリットR1を有している。ナプキン1では、各後方スリットR1は、縦中心線CLに平行に直線で延びている。ナプキン1では、縦中心線CLに平行に直線に延びる後方スリットR1が、縦方向X及び横方向Yの両方向に分散した状態で配されて、後方スリット領域RSを形成している。ナプキン1の後方スリットR1は、吸収体4における中高部43の周囲に位置する本体吸収性シート41に配されている。後方スリットR1は、2層構造の本体吸収性シート41の少なくとも1層のみを貫通していればよいが、ナプキン1では、2層構造の本体吸収性シート41をその厚み方向Zに亘って全層貫通している。
【0032】
ナプキン1では、図1に示すように、一対の後方スリット領域RSr,RSlを構成する後方スリットR1の内、最も中高部43に近い位置に配されるもので、かつ最も横方向Yの内方に位置する一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの横方向Yの間隔d1は、中高部43における縦方向Xの後端部43Bの横方向Yの幅b3と同じか或いは該幅b3よりも広くなっている。ここで、各後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1の内、最も中高部43に近い位置に配された一対の近接スリットは、言い換えれば、後方スリットのうち、最も前方側に位置し、横方向Yに離間して存在する一対のスリットである。また、一対の後方スリットR1r,R1lどうしの間隔d2とは、一対の後方スリットR1r,R1lどうしの横方向Yの間隔の中で最も短い間隔のことを意味する。
【0033】
ナプキン1では、図1及び図4に示すように、吸収体4の中間部Mに中高部43を備えているので、着用者の液排泄部へのフィット性が向上する。そして、ナプキン1では、吸収体4に配された一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの横方向Yの間隔d1が中高部43の後端部43Bの幅b3と同じか或いは該幅b3よりも広くなっている。その為、就寝時に身体を仰向けにした姿勢をとったとしても、ナプキン1の両サイド方向から力が加わることによって一対の近接スリットR1ar,R1alを起点として、吸収体4における一対の近接スリット領域RSar,RSalどうしの間の部分が着用者側に隆起し易くなっている。このように一対の近接スリット領域RSar,RSalどうしの間の部分が着用者側に曲面状に隆起すると、着用者に違和感を与え難いにも拘わらず、肌との間に隙間が生じ難く、結果としてフィット性が向上し、体液が肌を伝って流れ難く、防漏性が向上する。このような効果を一層奏する観点から、一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの横方向Yの間隔d1が中高部43の後端部43Bの幅b3よりも広くなっていることが好ましい。
【0034】
上記効果を一層奏する観点から、後方スリットR1を平面視したときの幅b1(図4参照)は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上が更に好ましく、また、1mm以下が好ましく、0.8mm以下が更に好ましく、また、0.1mm以上1mm以下が好ましく、0.2mm以上0.8mm以下が更に好ましい。同様の観点から、後方スリットR1を平面視したときの長さ(縦方向X長さ)L1(図4参照)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上であり、また、好ましくは35mm以下、更に好ましくは25mm以下であり、また、好ましくは10mm以上35mm以下、更に好ましくは15mm以上25mm以下である。
上記効果を一層奏する観点から、各後方スリット領域RSr、RSlそれぞれに後方スリットR1を複数有する場合、横方向Yに最も近い後方スリットR1,R1どうしの間隔(幅方向間隔)d3は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、また、好ましくは18mm以下、更に好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは3mm以上18mm以下、更に好ましくは5mm以上15mm以下である。
【0035】
ナプキン1では、一対の後方スリット領域RSr,RSlそれぞれの、横方向Yに関して最も内側に位置する後方スリットR1r、R1lは、中高部43における縦方向Xの後端部の横方向Yの幅を5等分した際の中央1領域よりも横方向Yの外側に位置している。このために、上述した効果がより一層発揮され易くなっている。また、横方向Yの間隔が最も狭い位置に配された一対の後方スリットR1r,R1lどうしの横方向Yの間隔d2(図1参照)は、中高部43における縦方向Xの後端部43Bの横方向Yの幅を5等分した際の中央1領域の幅よりも広いことが好ましく、中高部43の後端部43Bの横方向Yの幅を3等分した際の中央1領域の幅よりも広いことが更に好ましい。また、各後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1が複数配されている場合には、横方向Yの間隔が最も狭い位置に配された一対の後方スリットR1r,R1lは、一対の近接スリットR1ar,R1alとは別のスリットであることが好ましく、当該一対の後方スリットR1r,R1lどうしの間隔d2(図1参照)は一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの間隔d1(図1参照)よりも狭いことが好ましい。一対の後方スリットR1r,R1lどうしの間隔d2(図1参照)とは、一対の後方スリットR1r,R1lどうしの横方向Yの間隔の中で最も短い間隔のことを意味する。
【0036】
なお、ナプキン1では、矩形状の中央吸収性シート42によって中高部43が形成されているので、中高部43の横方向Yの幅b3は一定である。これに対して、中高部43の後端部がそれより前方側よりも横方向Yの幅が小さくなっている場合には、一対の近接スリットR1ar、R1alの横方向Yの間隔は、前記中高部43を縦方向Xに5分割した際の最も後側の最後端分割域における横方向Yの最大長さと同じかそれより広いことが好ましく、該最後端分割域に隣り合う後側から2つ目の隣接分割域における横方向Yの最大長さと同じかそれより広いことが好ましい。ここで、前記「横方向Yの最大長さ」とは、中高部43を平面視して、最も横方向Yに長い位置での距離を意味する。このようにすることによって、上述した効果がより一層発揮され易くなる。
【0037】
また、ナプキン1では、一対の後方スリット領域RSr、RSlそれぞれの横方向Yの最も内側に位置した、横方向Yに隣り合う後方スリットR1r、R1l間の横方向Yの距離が、横方向Yに隣り合った中央スリットM1、M1間の横方向Yの距離よりも長くなっている。このため、中高部43は中間部Mに沿って変形し易くなっているが、その変形の影響を緩衝するように後方部Rは変形し易くなっている。したがって、上述した効果が一層発揮され易くなる。
【0038】
上記効果を一層奏する観点から、一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの間隔d1(図1参照)は、好ましくは25mm以上、更に好ましくは30mm以上、また、好ましくは55mm以下、更に好ましくは45mm以下であり、また、好ましくは25mm以上55mm以下、更に好ましくは30mm以上45mm以下である。
上記効果を一層奏する観点から、横方向Yの間隔が最も狭い位置に配された一対の後方スリットR1l、R1rと一対の近接スリットR1ar、R1alとが異なる場合、一対の後方スリットR1r、R1lどうしの間隔d2(図1参照)は、好ましくは8mm以上、更に好ましくは15mm以上、また、好ましくは40mm以下、更に好ましくは30mm以下であり、また、好ましくは8mm以上40mm以下、更に好ましくは15mm以上30mm以下である。
【0039】
また、ナプキン1では、図1及び図4に示すように、一対の後方スリット領域RSr,RSlに加えて、中高部43に縦方向Xに延びる中央スリットM1が縦方向X及び横方向Yに分散して配された中央スリット領域MSを有している。ここで、縦方向Xに延びる中央スリットM1とは、上述した縦方向Xに延びる後方スリットR1と同様に、その形状としては、縦方向Xに延びていれば直線のみならず、波線、破線、曲線等も含む意味であり、その傾斜角度としては、縦方向Xに延びる縦中心線CLに平行に延びるスリットのみならず、縦中心線CLに平行に延びる仮想線とのなす角度が45度未満となるスリットも含む意味である。但し、傾斜角度は30度未満が好ましく、特に10度未満が好ましく、0度が最も好ましい。中央スリット領域MSは、このような中央スリットM1を、10本以上40本以下有していることが好ましく、20本以上30本以下有していることが更に好ましい。中央スリット領域MSには、縦方向Xに延びる中央スリットM1が横方向Yに間欠的に配されたスリット列が、縦方向Xに3列以上形成されていることが好ましく、4列以上がより好ましく、5列以上が更に好ましい。また、個々のスリット列に含まれる中央スリットM1の本数は、好ましくは2本以上であり、より好ましくは3本以上である。中央スリット領域MSを構成する複数の中央スリットM1は、その形状及び傾斜角度が、全て同じスリットであってもよく、一部異なるスリットを含んでいてもよく、全て異なるスリットであってもよい。
【0040】
ナプキン1では、図1に示すように平面視して、各後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1が、溝9と重なる部分を有している。好適に、ナプキン1では、各後方スリット領域RSを構成する複数の後方スリットR1の内の一部が、溝9を構成する後方部Rに配された縦圧搾溝92或いは第3圧搾溝94と重なる部分を有している。このように後方スリットR1が溝9と重なる部分を有していると、溝9及び後方スリットR1の相乗効果によってナプキン1のフィット性が更に向上する。また、後方スリットR1が溝9と重なる部分を有していると、該重なる部分において表面シート2が後方スリットR1から吸収体4の内部に入り込み易く、表面シート2上に流れる体液が吸収体4に吸収され易い。
【0041】
ナプキン1では、各後方フラップ部10Hは、その非肌対向面に縦方向Xに延びるズレ止め部材である後方フラップ部粘着部10H1を有している。そして、図1に示すように平面視して、各後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1は、後方フラップ部粘着部10H1の縦方向Xの後端部よりも後方に配されていない。言い換えれば、ナプキン1では、各後方スリット領域RSを構成する複数の後方スリットR1の内の最も縦方向Xの後方に位置する後方スリットR1の後端部が、後方フラップ部粘着部10H1の縦方向Xの後端部よりも縦方向Xの前方に位置している。このような位置に後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1が配されていると、着用者の身体に沿ってナプキンが変形する際、後方フラップ部10Hが後方フラップ部粘着部10H1を介してショーツ等の着衣に固定され易いため、後方スリットR1に起因する皺の発生が抑えられ、防漏性が向上する。
【0042】
ナプキン1では、図1及び図4に示すように、一対の後方スリット領域RSに加えて、中高部43に縦方向Xに延びる中央スリットM1が縦方向X及び横方向Yに分散して配された中央スリット領域MSを有している。その為、中央スリットM1によって中央スリット領域MSが着用者の身体に沿って変形し易く、ナプキン1のフィット性が向上し、防漏性や、装着感が更に向上する。
【0043】
上記効果を一層奏する観点から、中央スリットM1を平面視したときの幅b2(図4参照)は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上が更に好ましく、また、1mm以下が好ましく、0.8mm以下が更に好ましく、また、0.1mm以上1mm以下が好ましく、0.2mm以上0.8mm以下が更に好ましい。
上記効果を一層奏する観点から、中央スリットM1を平面視したときの長さ(縦方向X長さ)L2(図4参照)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上であり、また、好ましくは35mm以下、更に好ましくは25mm以下であり、また、好ましくは10mm以上35mm以下、更に好ましくは15mm以上25mm以下である。
上記効果を一層奏する観点から、最も近い中央スリットM1,M1どうしの間隔(幅方向間隔)d4は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは7mm以上、また、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは3mm以上20mm以下、更に好ましくは7mm以上15mm以下である。
【0044】
ナプキン1では、図1及び図4に示すように、吸収体4の中間部Mの中高部43に、縦中心線CLに平行に延びる中央スリットM1が、縦方向X及び横方向Yの両方向に縦中心線CLに対して左右対称に分散した状態に配されて中央スリット領域MSを形成している。ナプキン1の中央スリットM1は、吸収体4における中高部43を構成する5層構造の吸収性シート(2層構造の本体吸収性シート41及び3層構造の中央吸収性シート42)の内、少なくとも1層のみを貫通していればよいが、ナプキン1では、5層構造の吸収性シートをその厚み方向に亘って全層貫通している。
【0045】
また、図1及び図4に示すナプキン1のように、吸収体4が一対の後方スリット領域RS及び中央スリット領域MSを有している場合、中高部43の縦方向Xの後端部43B上に配置されたスリットが、後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1であるか、中央スリット領域MSを構成する中央スリットM1であるかの判断は、以下のようにして判断する。即ち、吸収体4を平面視して、中高部43の縦方向Xの後端部43Bの最後端を通る横方向Yに平行な仮想線ILを基準に、判断するスリットの縦方向Xの全長(AL)に対する、該スリットにおける中高部43の後端部43Bとの重なり部分の縦方向Xの長さ(BL)の割合((BL/AL)×100)が、10%以下である場合に後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1と判断し、10%より大きい場合に中央スリット領域MSを構成する中央スリットM1と判断する。
【0046】
また、ナプキン1では、図1及び図4に示すように、中央スリット領域MSを構成する中央スリットM1の内、中央スリット領域MSの幅方向(横方向Y)中央側に位置し且つ最も縦方向Xの後方側に位置する中央最後部スリットM1aの後端と、各後方スリット領域RSの近接スリットR1aの前端とは、ナプキン1を横方向Yから視て、重なっていない。中央最後部スリットM1aの後端と近接スリットR1aの前端との間の縦方向Xの間隔d5(図4参照)は、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは0mm以上20mm以下、更に好ましくは0mm以上15mm以下である。この範囲であれば、着用中にナプキン1の両サイド方向から力が加わることによって一対の近接スリットR1ar、R1alを起点として、吸収体4における一対の近接スリットR1ar、CR1alどうしの間の部分が着用者側に曲面状に更に隆起し易くなっている。
中央最後部スリットM1aの後端と近接スリットR1aの前端との間の縦方向Xの間隔d5(図4参照)は、後方スリットR1の長さ(縦方向X長さ)L1(図4参照)及び中央スリットM1の長さ(縦方向X長さ)L2(図4参照)の少なくとも一方よりも短いことが好ましい。
【0047】
上述した本実施形態のナプキン1の各構成部材の形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。また、裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。また、防漏カフ形成用シートとしては、耐水圧が高い撥水性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布等を用いることができる。
【0048】
吸収体4の有する高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでもよい。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでもよい。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
【0049】
吸収体4の有する構成繊維としては、合成繊維又はセルロース系繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば熱可塑性繊維であることが好ましい。熱可塑性繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の単一の合成樹脂を用いて形成された単一繊維、或いは、これら2種以上の複合体等の合成樹脂を用いて形成された複合繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、セルロースの分子内又は分子間を適当な架橋剤によって架橋させた架橋セルロース繊維(パルプ繊維)、或いはセルロースの結晶化度を向上させたレーヨン繊維等の再生セルロース繊維等が挙げられる。
【0050】
ナプキン1では、表面シート2と吸収体4との間、及び吸収体4と裏面シート3との間は、接着剤を塗布して固定されていることが好ましい。接着剤は、公知の手段、例えば、スロットコートガン、スパイラルスプレーガン、スプレーガン、或いはドットガンを用いて塗布することができ、ナプキン1では、スパイラルスプレーガンを用いてスパイラル状に塗布することが好ましい。塗布する接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が好ましく用いられる。ホットメルト接着剤の塗布量は、1.5g/m2以上10g/m2以下であることが好ましい。
【0051】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は前記実施形態のナプキン1に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、ナプキン1では、図4に示すように、吸収体4の各後方スリット領域RSには、縦方向Xに延びるスリット列が、横方向Yに3列形成されており、各該スリット列に含まれる後方スリットR1の本数は2本であるが、図5に示す吸収体4のように、各後方スリット領域RSには、縦方向Xに延びるスリット列が、横方向Yに3列形成されており、中央のスリット列に含まれる後方スリットR1の本数は2本であり、中央のスリット列の両側に入りする両側スリット列に含まれる後方スリットR1の本数は1本となっている。図5に示す吸収体4については、前述したナプキン1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、図4に示す吸収体4についての説明が適宜適用される。図5に示す吸収体4を有している生理用ナプキンであれば、図1に示すナプキン1と同様の効果が奏される。
【0052】
また、ナプキン1では、図3に示すように、吸収体4は、吸収性シートから形成されているが、吸収性シートではなく、積繊されたパルプ繊維を含む吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面をコアラップシートで被覆した積繊タイプの吸収体であってもよい。
【0053】
また、本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティーライナー(おりものシート)等であってもよい。
【0054】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の吸収性物品を開示する。
【0055】
<1>
着用者の前後方向に対応する縦方向と該縦方向に直交する横方向を備え、吸収体を有し、該縦方向に沿って前方部、中間部及び後方部を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、前記中間部の肌対向面側に、他の部分よりも厚みの厚い中高部を有しており、前記吸収体は、前記中高部よりも後方側に、前記縦方向に延びる後方スリットが配置された後方スリット領域を有し、該後方スリット領域は、前記吸収体を前記横方向に二分して前記縦方向に延びる仮想縦中心線を挟んで両側に一対配されており、一対の前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットの内、最も前記中高部に近い位置に配され、かつ最も横方向の内方に位置する近接スリットどうしの横方向の間隔は、該中高部における縦方向の後端部の横方向の幅と同じか或いは該幅よりも広い、吸収性物品。
<2>
前記近接スリットの横方向の間隔は、前記中高部を縦方向に5分割した際の最も後側の1つの横方向の最大長さと同じかそれより広い、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記吸収体は、前記中高部に、縦方向に延びる中央スリットが縦方向及び横方向に分散して配された中央スリット領域を有している、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記中央スリット領域を構成する前記中央スリットの内、最も後方側に位置する中央最後部スリットの後端と、各前記後方スリット領域の前記近接スリットの前端とは、前記吸収性物品を横方向から視て、重なっていない、前記<3>に記載の吸収性物品。
<5>
前記一対の後方スリット領域それぞれの横方向の最も内側に位置した、横方向に隣り合う後方スリット間の横方向の距離が、横方向に隣り合った前記中央スリット間の横方向Yの距離よりも長い、前記<3>又は<4>に記載の吸収性物品。
<6>
前記一対の後方スリット領域それぞれの、横方向の最も内側に位置する前記後方スリットは、前記中高部における縦方向の後端部の横方向の幅を5等分した際の中央1領域より横方向の外側に位置する、前記<1>〜<5>の何れか1に記載の吸収性物品。
<7>
前記吸収性物品は、前記吸収体を挟持する表面シート及び裏面シートを具備し、肌対向面に、前記表面シート及び前記吸収体が一体となった、前記裏面シート側に底部を有する溝を備え、前記吸収性物品を平面視して、各前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットが、前記溝と重なる部分を有している、請求項前記<1>〜<6>の何れか1に記載の吸収性物品。
<8>
前記吸収性物品は、前記吸収体と、該吸収体を挟持する表面シート及び裏面シートを具備する吸収性本体を有し、該吸収性本体における前記中間部よりも後方に、該吸収性本体の縦方向に沿う両側部それぞれから横方向の外方に延出する一対の後方フラップ部を有しており、各前記後方フラップ部は、その非肌対向面に縦方向に延びるズレ止め部材を有し、前記吸収性物品を平面視して、各前記後方スリット領域を構成する前記後方スリットは、前記ズレ止め部材の縦方向の後端部よりも後方に配されていない、前記<1>〜<7>の何れか1に記載の吸収性物品。
<9>
前記後方スリットの形状が、直線、波線、曲線又は破線である、前記<1>〜<8>の何れか1に記載の吸収性物品。
<10>
前記後方スリットは縦方向に平行に延びる前記仮想縦中心線とのなす角度が45度未満、好ましくは30度未満、更に好ましくは10度未満である、前記<1>〜<9>の何れか1に記載の吸収性物品。
<11>
前記後方スリットは、縦方向に沿って延びている、前記<1>〜<10>の何れか1に記載の吸収性物品。
<12>
各前記後方スリット領域には、縦方向に延びるスリット列が、好ましくは横方向に2列以上、より好ましくは3列以上存在する、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の吸収性物品。
<13>
各前記後方スリット領域には、縦方向に延びるスリット列が、好ましくは横方向に2列以上、より好ましくは3列以上存在し、個々の前記スリット列に含まれる後方スリットは、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上である、前記<1>〜<12>の何れか1に記載の吸収性物品。
<14>
前記後方スリットを平面視したときの幅は、0.1mm以上1mm以下、好ましくは0.2mm以上0.8mm以下である、前記<1>〜<13>の何れか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記後方スリットを平面視したときの縦方向長さは、10mm以上35mm以下、好ましくは15mm以上25mm以下である、前記<1>〜<14>の何れか1に記載の吸収性物品。
<16>
前記一対の後方スリット領域それぞれに前記後方スリットを複数有する場合、横方向に最も近い後方スリットどうしの横方向の間隔は、3mm以上18mm以下、好ましくは5mm以上15mm以下である、前記<1>〜<15>の何れか1に記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収体は、前記中高部に、縦方向に延びる中央スリットが縦方向及び横方向に分散して配された中央スリット領域を有し、該中央スリット領域を構成する前記中央スリットの内、前記中央スリット領域の横方向の中央側に位置し且つ最も縦方向の後方に位置する中央最後部スリットの後端と、前記近接スリットの前端とは、横方向から視て重なっていない、前記<1>〜<16>の何れか1に記載の吸収性物品。
<18>
前記中央最後部スリットの後端と前記近接スリットの前端との間の縦方向の間隔は、0mm以上20mm以下、好ましくは0mm以上15mm以下である、前記<1>〜<17>の何れか1に記載の吸収性物品。
<19>
前記吸収体は、吸収性シートで形成された多層構造である、前記<1>〜<18>の何れか1に記載の吸収性物品。
<20>
前記吸収体は、吸収性シートで形成された多層構造であり、該多層構造は、該吸収性シートを複数枚重ね合わせて形成されたもの、又は、1枚の吸収性シートを折り重ねて形成されたものである、前記<1>〜<19>の何れか1に記載の吸収性物品。
<21>
前記吸収体は、前記中間部に吸収性シートで形成された中央吸収性シートと、該中央吸収性シートを覆う本体吸収性シートとで構成されており、該中央吸収性シートが前記中高部に配されている、前記<1>〜<20>の何れか1に記載の吸収性物品。
<22>
前記吸収体は、前記中高部における厚みが0.7mm以上5mm以下、好ましくは1mm以上4mm以下である、前記<1>〜<21>の何れか1に記載の吸収性物品。
<23>
前記吸収体は、前記中高部以外の該中高部の周囲部分における厚みが0.3mm以上3mm以下、好ましくは0.5mm以上2.5mm以下である、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の吸収性物品。
<24>
前記吸収性物品が生理用ナプキンである、前記<1>〜<23>の何れか1に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の吸収性物品を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例によって何ら制限されるものではない。
【0057】
<実施例1>
図4に示す吸収体を有する図1図3に示す生理用ナプキンと同様の基本構成を有する生理用ナプキンを作製し、これを実施例1のサンプルとした。表面シートとしては、坪量25g/m2のスパンボンド不織布を用いた。裏面シートとしては、坪量35g/m2の透湿性の樹脂フィルムを用いた。防漏カフ形成用シートとしては、坪量25g/m2のスパンボンド不織布を用いた。吸収体を構成する吸収性シートとしては、特許2963647号の実施例2に準じて作成した。吸収性シート1枚あたりの厚みとしては0.5mmであり、吸収体の中高部における厚みは2.3mmであり、中高部の後端部の横方向幅は35mmであった。なお、中高部は矩形状であった。
【0058】
吸収体に配されたスリットの詳細は次の通りである。
各後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1に関し、その幅b1は0.5mmであり、その長さL1は20mmであり、最も近い後方スリットR1,R1どうしの間隔d3は7mmであった。
一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの間隔d1は38mmであり、一対の後方スリットR1r,R1lどうしの間隔d2は24mmであった。
中央スリット領域MSを構成する中央スリットM1に関し、その幅b2は0.5mmであり、その長さL2は20mmであり、最も近い中央スリットM1,M1どうしの間隔d4は6mmであった。
中央最後部スリットM1aの後端と近接スリットR1aの前端との間の縦方向Xの間隔d5は0mmであった。
【0059】
<実施例2>
図4に示す吸収体に替えて、図5に示す吸収体を用いること以外は、実施例1で作成したサンプルと同様の基本構成を有する生理用ナプキンを作製し、これを実施例2のサンプルとした。図5に示す吸収体に配されたスリットの詳細は次の通りである。
吸収体に配された一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの横方向Yの間隔d1は、中高部43は矩形状であり、その後端部43Bの幅b1と同じ35mmであった。
各後方スリット領域RSを構成する後方スリットR1に関し、その幅b1は0.5mmであり、その長さL1は20mmであり、最も近い後方スリットR1,R1どうしの間隔d2は7mmであった。
一対の近接スリットR1ar,R1alどうしの間隔d1は38mmであり、一対の後方スリットR1r,R1lどうしの間隔d2は24mmであった。
中央スリット領域MSを構成する中央スリットM1に関し、その幅b2は0.5mmであり、その長さL2は20mmであり、最も近い中央スリットM1,M1どうしの間隔d4は6mmであった。
中央最後部スリットM1aの後端と近接スリットR1aの前端との間の縦方向Xの間隔d5は0mmであった。
【0060】
<比較例1>
図4に示す吸収体に替えて、図4に示す吸収体から一対の後方スリット領域RSを除いた吸収体を用いること以外は、実施例1で作成したサンプルと同様の基本構成を有する生理用ナプキンを作製し、これを比較例1のサンプルとした。
【0061】
〔評価〕
実施例1〜2のサンプル(生理用ナプキン)及び比較例1のサンプル(生理用ナプキン)について、縦方向の擬血の広がり距離を下記方法により測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0062】
<縦方向の擬血の広がり距離の測定方法>
排泄点から液を注入できる女性用下半身の人体モデルを用い、該モデルを直立させた状態で評価対象のサンプルを装着させた後、該モデルを仰向けに寝させた状態にした。次いで、速度調整機能付き液体排出ポンプを用いて、排泄点より擬血(馬血液)を1分ごとに3.0g注入し、合計6g、および9g注入した。6g注入直後から1分経過後に、該モデルからサンプルを取り外し、擬血(馬血液)の注入によってサンプルに生じた表面シート及び吸収体それぞれにおける縦方向の拡散距離を3回測定し、その平均値を縦方向の擬血(馬血液)の広がり距離とした。表面シート及び吸収体の何れにおいても、この体液の拡がり距離が短いほど、生理用ナプキンと着用者の肌との間に隙間が生じ難く、体液が肌を伝って流れ難いものと考えられ、高評価となる。
なお、疑血として、脱繊維馬血(日本バイオテスト(株)製)を使用した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、実施例1〜2の生理用ナプキンは、比較例1の生理用ナプキンに比べ、表面シートにおける擬血(馬血液)の縦方向の拡がり距離、及び吸収体における擬血(馬血液)の縦方向の拡がり距離が何れも小さいことがわかった。これらのことから、実施例1〜2の生理用ナプキンは、比較例1の生理用ナプキンに比べ、着用中に肌との間に隙間が生じ難く、フィット性が向上し、体液が肌を伝って流れ難く、防漏性が向上することが期待できる。
【符号の説明】
【0065】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
10 吸収性本体
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 本体吸収性シート
42 中央吸収性シート
43 中高部
5 防漏カフ形成用シート
RS 後方スリット領域
R1 後方スリット
MS 中央スリット領域
M1 中央スリット
9 溝
F 前方部
M 中間部
R 後方部
図1
図2
図3
図4
図5