(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半極性面を主面として有するサファイア基板と、前記主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、前記主面に垂直な方向での平面視において、前記サファイア基板の<0002>方向と、前記III族窒化物半導体層の<10−10>方向とのなす角が44.5°以上45.5°以下であるIII族窒化物半導体基板を準備する準備工程と、
前記III族窒化物半導体層の上に、III族窒化物半導体をエピタキシャル成長する成長工程と、
を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
主面が、{10−10}面をa面と平行になる方向に0.0°より大、10.5°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面であるサファイア基板を準備するサファイア基板準備工程と、
窒化処理を行いながら、前記サファイア基板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記サファイア基板上に、NH3は供給せず、Alを含むガスを供給する前工程と、
前記前工程の後、800℃以上950℃以下の成長温度で、前記主面上にバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、
前記バッファ層の上に、III族窒化物半導体層を形成するIII族窒化物半導体層形成工程と、
を有し、
前記III族窒化物半導体層形成工程で形成された前記III族窒化物半導体層の<10−10>方向と、前記サファイア基板の<0002>方向とのなす角が44.5°以上45.5°以下であるIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のIII族窒化物半導体基板、及び、III族窒化物半導体基板の製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。なお、図はあくまで発明の構成を説明するための概略図であり、各部材の大きさ、形状、数、異なる部材の大きさの比率などは図示するものに限定されない。
【0012】
図1のフローチャートは、本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法の処理の流れの一例を示す。図示するように、本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法は、準備工程S10と、成長工程S20とを有する。
【0013】
準備工程S10では、半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、が積層したIII族窒化物半導体基板(テンプレート基板)を準備する。当該III族窒化物半導体基板は、サファイア基板の主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とが直交しないという特徴を有する。半極性面は、極性面(c面)、及び、無極性面(a面及びm面)と異なる面である。
【0014】
以下、準備工程S10で準備するIII族窒化物半導体基板(以下、「テンプレートIII族窒化物半導体基板」という)について詳細に説明する。
【0015】
図2に、テンプレートIII族窒化物半導体基板1の一例の側面模式図を示す。
図2に示すように、テンプレートIII族窒化物半導体基板1は、サファイア基板10及びIII族窒化物半導体層30を有する。テンプレートIII族窒化物半導体基板1は、サファイア基板10及びIII族窒化物半導体層30に加えて、その他の層を含んでもよい。図示する例では、サファイア基板10と、バッファ層20と、III族窒化物半導体層30とがこの順に積層している。
【0016】
なお、サファイア基板10とIII族窒化物半導体層30との間に、バッファ層20以外のその他の層が介在してもよい。以下で詳細を説明するが、
図2に示すテンプレートIII族窒化物半導体基板1の製造方法の一例において、サファイア基板10上にバッファ層20を形成する前に、Al、Ti、Cu、Vの中の何れかを含むガスを、サファイア基板10の主面11上に供給する工程を含むことができる。当該工程の結果、サファイア基板10とバッファ層20との間に、これら金属の膜、または、有機金属原料から生成するメタン、エチレン、エタン等の炭化水素化合物との反応膜である炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化銅や炭化バナジウムの炭化金属膜等が形成されてもよいし、されなくてもよい。当該金属の膜が形成される場合、当該金属の膜はサファイア基板10の主面11全体に一様に広がっていてもよいし、主面11上に点在してもよい。
【0017】
サファイア基板10の主面11は、半極性面である。例えば、主面11は、{10−10}面をa面と平行になる方向に0.0°より大、10.5°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面である。サファイア基板10の厚さは250μm以上である。また、サファイア基板10の直径は、1インチ以上である。
【0018】
バッファ層20は、例えばAlN層、TiN層である。バッファ層20の厚さは、例えば、20nm以上300nm以下である。
【0019】
III族窒化物半導体層30は、サファイア基板10の主面11上に、バッファ層20を介して位置する。III族窒化物半導体層30は、III族窒化物半導体結晶(例:GaN結晶)で構成される。III族窒化物半導体層30の厚さは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0020】
III族窒化物半導体層30の成長面31(露出面)は、−C面から−a面方向に38.0°以上53.0°以下かつ、m面方向に−16.0°以上16.0°以下傾いた半極性面である。例えば、成長面31は、{11−23}面(例:(−1−12−3)面)をm面と平行になる方向に−16.0°以上16.0°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面である。
【0021】
図3に、テンプレートIII族窒化物半導体基板1の一例の平面模式図を示す。当該図は、サファイア基板10の主面11に垂直な方向での平面視で、テンプレートIII族窒化物半導体基板1をIII族窒化物半導体層30側から観察した様子を示す。図には、当該平面視で観察されるサファイア基板10の<0002>方向と、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向とが示されている。図示する矢印は、サファイア基板10の<0002>方向、及び、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向各々を、主面11に平行な面上に投影した方向を示している。
【0022】
図示するように、テンプレートIII族窒化物半導体基板1は、主面11に垂直な方向での平面視において、サファイア基板10の<0002>方向(<0002>方向を主面11に平行な面上に投影した方向)と、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向(<10−10>方向を主面11に平行な面上に投影した方向)とが直交しないという特徴を有する。
【0023】
主面11に垂直な方向での平面視におけるサファイア基板10の<0002>方向と、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向とのなす角は、直交でなければよいが、例えば、以下の実施例で示すように、44.5°以上45.5°以下にすることができる。
【0024】
図1に戻り、成長工程S20では、III族窒化物半導体層30の成長面31上に、III族窒化物半導体(例:GaN結晶)をエピタキシャル成長する。結果、
図4に示すように、テンプレートIII族窒化物半導体基板1のIII族窒化物半導体層30上にIII族窒化物半導体層40が形成されたIII族窒化物半導体基板を得ることができる。
【0025】
成長工程S20におけるIII族窒化物半導体の成長方法は設計的事項である。III族窒化物半導体の成長方法は、例えば、気相エピタキシャル成長(例:HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy))、液相エピタキシャル成長、固相エピタキシャル成長等を選択することができる。成長条件は、従来技術に準じたものとすることができる。
【0026】
なお、以下の実施例で示すように、本実施形態のテンプレートIII族窒化物半導体基板1上にIII族窒化物半導体を厚膜成長しても、クラックや剥がれ等の不都合が発生しにくい。このため、成長工程S20では、III族窒化物半導体を厚膜成長することができる。III族窒化物半導体層40の厚さは、例えば50μm以上1000μm以下、好ましくは100μ、以上1000μm以下、さらに好ましくは500μm以上1000μm以下とすることができる。
【0027】
半極性面であるIII族窒化物半導体層30の成長面31上にエピタキシャル成長して得られたIII族窒化物半導体層40は、成長面41が同様に半極性面となっている。例えば、成長面41は、{11−23}面(例:(−1−12−3)面)をm面と平行になる方向に0°より大10.0°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面である。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法によれば、サファイア基板10と、III族窒化物半導体層30とが積層したテンプレートIII族窒化物半導体基板1(さらに、バッファ層20等が積層してもよい)上に、III族窒化物半導体層40を形成したIII族窒化物半導体基板(
図4参照)を製造することができる。
【0029】
また、本実施形態の製造方法では、サファイア基板10の<0002>方向と、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向との相対的な向き関係が特徴的な関係(主面11に垂直な方向での平面視で、互いに直交しない)となっているテンプレートIII族窒化物半導体基板1上に、III族窒化物半導体層40を形成する。
【0030】
以下の実施例で示すように、サファイア基板10の<0002>方向と、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向とが、主面11に垂直な方向での平面視で直交している場合、III族窒化物半導体層40を50μm以上の厚膜に成長すると、III族窒化物半導体層30及びIII族窒化物半導体層40にクラックが入りやすい。そして、当該クラックに起因して、III族窒化物半導体層30及びIII族窒化物半導体層40がバラバラになり、意図せずサファイア基板10から剥離するという不都合が発生しやすくなる。
【0031】
サファイア基板10の<0002>方向と、III族窒化物半導体層30の<10−10>方向とが、上記特徴的な関係となっているテンプレートIII族窒化物半導体基板1上にIII族窒化物半導体層40を形成する本実施形態の場合、III族窒化物半導体層40を50μm以上1000μm以下と厚膜に成長しても、III族窒化物半導体層30及びIII族窒化物半導体層40にクラックが発生しにくい。
【0032】
すなわち、本実施形態によれば、サファイア基板10と、半極性面を露出面(成長面31)として有するIII族窒化物半導体層30とが積層したテンプレートIII族窒化物半導体基板1の当該露出面(成長面31)上に、III族窒化物半導体を厚膜成長することが可能となる。
【0033】
本実施形態の製造方法で得られたIII族窒化物半導体基板は、例えば、光デバイスや電子デバイス等のデバイスを形成するための基板として利用することができる。また、本実施形態の製造方法で得られたIII族窒化物半導体基板は、例えば、任意の手段でIII族窒化物半導体層40をサファイア基板10等から切り離し、III族窒化物半導体層40を自立基板として利用することができる。
【0034】
次に、本実施形態のテンプレートIII族窒化物半導体基板1の製造方法の一例を説明する。
図5のフローチャートは、本実施形態のIII族窒化物半導体基板の製造方法の処理の流れの一例を示す。図示するように、本実施形態のテンプレートIII族窒化物半導体基板1の製造方法は、サファイア基板準備工程S11と、加熱工程S12と、前工程S13と、バッファ層形成工程S14と、III族窒化物半導体層形成工程S15とを有する。例えば、
図1に示す準備工程S10が、これらの工程を含んでもよい。
【0035】
なお、以下で説明するテンプレートIII族窒化物半導体基板1の製造方法はあくまで一例である。準備工程S10で準備するテンプレートIII族窒化物半導体基板1は、上述した要件を備えていればよく、当該製造方法で得られたものに限定されない。
【0036】
サファイア基板準備工程S11では、
図6(1)に示すように、主面11が半極性面であるサファイア基板10を準備する。例えば、サファイア基板準備工程S11では、主面11が、{10−10}面をa面と平行になる方向に0.0°より大、10.5°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面であるサファイア基板10を準備する。
【0037】
サファイア基板10の直径は、例えば、1インチ以上である。また、サファイア基板10の厚さは、例えば、250μm以上である。
【0038】
加熱工程S12では、窒化処理を行いながら、サファイア基板10を加熱する。例えば、以下の条件で、サファイア基板10を加熱する。
【0039】
温度:800℃以上1200℃以下
圧力:50torr以上250torr以下
熱処理時間:15分
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:8.5slm以上9.5slm以下
N
2(キャリアガス)供給量:1.0slm以上2.0slm以下
NH
3供給量:15slm以上20slm以下
【0040】
前工程S13では、加熱工程S12の後、サファイア基板10上に、NH
3は供給せず、Al、Ti、Cu、Vの中の何れかを含むガス(前処理ガス)を供給する。前処理ガスは、例えば、トリメチルアルミニウム等である。例えば、以下の条件で、当該ガスを供給する。
【0041】
温度:500℃以上1000℃以下
圧力:30torr以上200torr以下
処理時間:10秒
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:8.5slm以上9.5slm以下
N
2(キャリアガス)供給量:1.0slm以上2.0slm以下
NH
3供給量:0slm
前処理ガス(例:トリメチルアルミニウム)供給量:85ccm以上95ccm以下
【0042】
バッファ層形成工程S14では、前処理工程S13の後、
図6(2)に示すように、サファイア基板10の主面11上にバッファ層20を形成する。バッファ層20をAlN層とする場合、例えば、以下の条件でAlN結晶をエピタキシャル成長させ、バッファ層20を形成する。結果、膜厚20nm以上300nm以下のバッファ層20が形成される。
【0043】
成長方法:MOCVD法
成長温度:800℃以上950℃以下
圧力:30torr以上200torr以下
V/III比:4000以上6000以下
TMAl供給量:20ccm以上500ccm以下
NH
3供給量:2.5slm以上7.5slm以下
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:8.5slm以上9.5slm以下
N
2(キャリアガス)供給量:1.0slm以上2.0slm以下
【0044】
III族窒化物半導体層形成工程S15では、
図6(3)に示すように、バッファ層20の上に、III族窒化物半導体層30を形成する。例えば、以下の成長条件でIII族窒化物半導体結晶(例:GaN)をエピタキシャル成長させ、III族窒化物半導体層30を形成する。結果、膜厚10μm以上15μm以下のIII族窒化物半導体層30が形成される。
【0045】
成長方法:MOCVD法
成長温度:800℃以上1025℃以下
圧力:30torr以上200torr以下
V/III比:200以上500以下
TMGa供給量:50ccm以上1000ccm以下
NH
3供給量:9.0slm以上11.0slm以下
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:13.0slm以上14.0slm以下
N
2(キャリアガス)供給量:1.0slm以上2.0slm以下
【0046】
以上により、上述した特徴を有する本実施形態のテンプレートIII族窒化物半導体基板1が得られる。このようなテンプレートIII族窒化物半導体基板1を利用することで、サファイア基板10と、半極性面を露出面(成長面31)として有するIII族窒化物半導体層30とが積層した基板(テンプレートIII族窒化物半導体基板1)の当該露出面(成長面31)上にIII族窒化物半導体(III族窒化物半導体層40)を厚膜成長することが可能となる。
【実施例】
【0047】
(1)「III族窒化物半導体基板の準備」
実施例1、比較例1及び比較例2各々に対応するテンプレートIII族窒化物半導体基板を準備した。
【0048】
<実施例1>
半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、当該主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは「直交しない」テンプレートIII族窒化物半導体基板を準備した。具体的には、以下のようにして、III族窒化物半導体基板を製造した。
【0049】
まず、以下のサファイア基板を用意した(サファイア基板準備工程S11)。
【0050】
主面(露出面):(10−10)面をa面と平行になる方向に2.0°傾斜した面
厚さ:430μm
直径:2インチ
【0051】
用意したサファイア基板を、以下の条件で加熱した(加熱工程S12)。
【0052】
温度:1000℃〜1050℃
圧力:200torr
熱処理時間:15分
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:9slm
N
2(キャリアガス)供給量:1.5slm
NH
3供給量:20slm
【0053】
加熱工程S12後のサファイア基板に、以下の条件で、前工程S13を行った。
【0054】
温度:900〜930℃
圧力:100torr
処理時間:10秒
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:9slm
N
2(キャリアガス)供給量:1.5slm
NH
3供給量:0slm
前処理ガス(トリメチルアルミニウム)供給量:90sccm
【0055】
熱処理後、サファイア基板の主面(露出面)上に、以下の条件で、膜厚150nmのAlN層(バッファ層)を形成した。
【0056】
成長方法:MOCVD法
成長温度:900〜930℃
圧力:100torr
V/III比:5184
TMAl供給量:90ccm
NH
3供給量:5slm
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:9slm
N
2(キャリアガス)供給量:1.5slm
【0057】
その後、バッファ層20の上に、以下の条件で、膜厚15μmのGaN層(III族窒化物半導体層)を形成した。
【0058】
成長方法:MOCVD法
成長温度:900〜1020℃(連続変化)
圧力:100torr
V/III比:321
TMGa供給量:50〜500sccm(連続変化)
NH
3供給量:5〜10slm(連続変化)
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:13.5slm
N
2(キャリアガス)供給量:1.5slm
【0059】
以上のようにして、実施例1のテンプレートIII族窒化物半導体基板を製造した。
【0060】
図7に、サファイア基板の主面に垂直な方向での平面視における、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層(GaN)の<10−10>方向との関係(極点座標測定結果)を示す。図示するように、実施例1では、「互いに直交しない」関係となっている。これらのなす角は、44.5°以上45.5°以下であった。
【0061】
<比較例1>
半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、当該主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは「直交する」テンプレートIII族窒化物半導体基板を準備した。
【0062】
具体的には、主面(露出面)が(10−10)面を
a面と平行になる方向に2.0°傾斜した面であるサファイア基板を用い、バッファ層形成工程S14及びIII族窒化物半導体層形成工程S15を下記成長条件として、テンプレートIII族窒化物半導体基板を製造した。なお、加熱工程S12と前工程S13は実施例1と同じとした。
【0063】
「バッファ層形成工程S14」
成長方法:MOCVD法
成長温度:1050〜1075℃
圧力:100torr
V/III比:5184
TMAl供給量:90ccm
NH
3供給量:5slm
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:9slm
N
2(キャリアガス)供給量:1.5slm
【0064】
「III族窒化物半導体層形成工程S15」
成長方法:MOCVD法
成長温度:1075〜1100℃(連続変化)
圧力:100torr
V/III比:321
TMGa供給量:50〜500sccm(連続変化)
NH
3供給量:5〜10slm(連続変化)
キャリアガス:H
2、N
2
H
2(キャリアガス)供給量:13.5slm
N
2(キャリアガス)供給量:1.5slm
【0065】
図8に、サファイア基板の主面に垂直な方向での平面視における、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層(GaN)の<10−10>方向との関係(極点座標測定結果)を示す。図示するように、比較例1では、「互いに直交する」関係となっている。
【0066】
<比較例2>
半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、当該主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは「直交する」テンプレートIII族窒化物半導体基板を準備した。
【0067】
具体的には、主面(露出面)が(10−10)面をa面と平行になる方向に5.0°傾斜した面であるサファイア基板を用いて、比較例1と同等な製造方法でテンプレートIII族窒化物半導体基板を製造した。
【0068】
図9に、サファイア基板の主面に垂直な方向での平面視における、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層(GaN)の<10−10>方向との関係(極点座標測定結果)を示す。図示するように、比較例2では、「互いに直交する」関係となっている。
【0069】
(2)「III族窒化物半導体層を厚膜成長」
(1)で準備した実施例1、比較例1及び比較例2各々のテンプレートIII族窒化物半導体基板上に、以下の条件で、膜厚200μmのGaN層を形成した。
【0070】
成長方法:HVPE法
成長温度:1040℃
圧力:985hPa
V/III比:10
GaCl供給量:200sccm
NH
3供給量:2slm
キャリアガス:H
2
H
2(キャリアガス)供給量:8slm
【0071】
図10乃至
図12に、テンプレートIII族窒化物半導体基板上にGaN層を厚膜成長したIII族窒化物半導体基板の外観を示す。
図10が実施例1、
図11が比較例1、
図12が比較例2のIII族窒化物半導体基板を示す。
【0072】
図10乃至
図12より、実施例1はIII族窒化物半導体基板に全くクラックが発生していない。これに対し、比較例1及び比較例2は、III族窒化物半導体層にクラックが発生し、これに起因して、サファイア基板から剥離した箇所が確認された。なお、GaNの劈開面であるm面を起点として、III族窒化物半導体層にクラックが発生していた。
【0073】
また、比較例1及び比較例2は、サファイア基板の一部にもクラックが発生していた。
【0074】
以上の結果より、半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、当該主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは直交しないテンプレートIII族窒化物半導体基板上にIII族窒化物半導体を厚膜成長する場合と、これらが直交するテンプレートIII族窒化物半導体基板上にIII族窒化物半導体を厚膜成長する場合とでは、直交しないテンプレートIII族窒化物半導体基板上にIII族窒化物半導体を厚膜成長する方が、クラックや剥がれ等の不都合が発生しにくいことが分かる。
【0075】
また、実施例1の製造方法により、半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、当該主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは直交しないテンプレートIII族窒化物半導体基板を製造できることが分かる。
【0076】
以下、参考形態の例を付記する。
1. 半極性面を主面として有するサファイア基板と、
前記主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、
を有し、
前記主面に垂直な方向での平面視において、前記サファイア基板の<0002>方向と、前記III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは直交しないIII族窒化物半導体基板。
2. 1に記載のIII族窒化物半導体基板において、
前記主面は、{10−10}面をa面と平行になる方向に0.0°より大、10.5°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面であり、
前記III族窒化物半導体層は、−C面から−a面方向に38.0°以上53.0°以下かつ、m面方向に−16.0°以上16.0°以下傾いた半極性面を露出面として有するIII族窒化物半導体基板。
3. 1又は2に記載のIII族窒化物半導体基板において、
前記III族窒化物半導体層の上に、膜厚50μm以上1000μm以下のIII族窒化物半導体層をさらに有するIII族窒化物半導体基板。
4. 半極性面を主面として有するサファイア基板と、前記主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、前記主面に垂直な方向での平面視において、前記サファイア基板の<0002>方向と、前記III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは直交しないIII族窒化物半導体基板を準備する準備工程と、
前記III族窒化物半導体層の上に、III族窒化物半導体をエピタキシャル成長する成長工程と、
を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
5. 4に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記成長工程では、前記III族窒化物半導体層の上に、膜厚50μm以上1000μm以下のIII族窒化物半導体層を形成するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
6. 4又は5に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記準備工程は、
前記主面が、{10−10}面をa面と平行になる方向に0.0°より大、10.5°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面であるサファイア基板を準備するサファイア基板準備工程と、
窒化処理を行いながら、前記サファイア基板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記サファイア基板上に、NH
3は供給せず、Al、Ti、Cu、Vの中の何れかを含むガスを供給する前工程と、
前記前工程の後、前記主面上にバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、
前記バッファ層の上に、III族窒化物半導体層を形成するIII族窒化物半導体層形成工程と、
を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
7. 6に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記バッファ層形成工程では、800℃以上950℃以下の成長温度で、前記バッファ層を形成するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
8. 主面が、{10−10}面をa面と平行になる方向に0.0°より大、10.5°以下の中のいずれかの角度で傾斜した面であるサファイア基板を準備するサファイア基板準備工程と、
窒化処理を行いながら、前記サファイア基板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記サファイア基板上に、NH
3は供給せず、Al、Ti、Cu、Vの中の何れかを含むガスを供給する前工程と、
前記前工程の後、前記主面上にバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、
前記バッファ層の上に、III族窒化物半導体層を形成するIII族窒化物半導体層形成工程と、
を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
9. 8に記載のIII族窒化物半導体基板の製造方法において、
前記バッファ層形成工程では、800℃以上950℃以下の成長温度で、前記バッファ層を形成するIII族窒化物半導体基板の製造方法。
【解決手段】半極性面を主面として有するサファイア基板と、当該主面上に位置するIII族窒化物半導体層と、を有し、当該主面に垂直な方向での平面視において、サファイア基板の<0002>方向と、III族窒化物半導体層の<10−10>方向とは直交しないIII族窒化物半導体基板を準備する準備工程S10と、III族窒化物半導体層の上に、III族窒化物半導体をエピタキシャル成長する成長工程S20と、を有するIII族窒化物半導体基板の製造方法。