特許第6306688号(P6306688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306688
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】シラン含有カルボキシル末端化ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20180326BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20180326BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20180326BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C08C19/25
   C08F8/42
   C08L15/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】21
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-509375(P2016-509375)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公表番号】特表2016-518492(P2016-518492A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】EP2014057424
(87)【国際公開番号】WO2014173706
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】13165209.1
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト・シュタインハウザー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・グロース
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−010137(JP,A)
【文献】 特表2016−518493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00−19/44
C08F 8/00− 8/50
C08L 1/00−101/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端基官能化ポリマーであって、前記末端基官能化ポリマーが、ポリマー鎖の末端に式(I):
【化1】
[式中、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
Aは、二価の有機基であり、それは、CおよびHだけでなく、1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよい]
のシラン含有カルボキシル基を有し、
ジエンポリマーであることを特徴とする、末端基官能化ポリマー。
【請求項2】
前記末端基官能化ポリマーの末端基が、式(II):
【化2】
[式中、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
Aは、二価の有機基であり、それは、CおよびHだけでなく、1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
nは、1〜4の整数であり、
Mは、原子価1〜4の金属または半金属である]
のカルボキシレートとして存在することを特徴とする、請求項1に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項3】
式(V):
【化3】
の1種または複数種の二価の構造要素をさらに含み、
前記構造要素が、式(IV):
【化4】
[式中、式(IV)中のR、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよい]
のシクロシロキサンから誘導される、請求項1または2に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項4】
ポリブタジエンもしくはポリイソプレン、またはジエンをビニル芳香族モノマーと共重合させることによって得ることが可能なジエンコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項5】
前記末端基官能化ポリマーが、反応性ポリマー鎖末端を、シララクトンの形態にある1種または複数種の官能化剤と反応させることによって得ることができることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項6】
前記シララクトンが、式(III):
【化5】
[式中、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよく、
Aは、二価の有機基であり、それは、CおよびHだけでなく、1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよい]
の化合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項7】
前記末端基官能化ポリマーが、10000〜2000000g/molの平均モル質量(数平均、M)を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項8】
前記末端基官能化ポリマーが、−110℃〜+20℃のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマーを調製するためのシララクトンの使用。
【請求項10】
1種または複数種のシララクトンを、反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーに添加することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマーを調製するためのプロセス。
【請求項11】
前記シララクトンが、重合反応の完了後に添加されることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ポリマーの量を基準にして、シララクトンを、過剰量または当量または不足量で使用することを特徴とする、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記シララクトンの量が、前記ポリマーの量を基準にして、0.005〜2重量%であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記重合反応に続いて、式(IV):
【化6】
[式中、式(IV)中のR、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子またはSiを含んでいてもよい]
のシクロシロキサンを使用した後で、前記シララクトンを添加することを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記式(IV)のシクロシロキサンの量が、前記ポリマーの量を基準にして、0.002〜4重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
シララクトン対シクロシロキサンの比率が、20:1〜1:1であることを特徴とする、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
加硫可能なゴム組成物を製造するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー、請求項9に記載のシララクトンの使用により調製された末端基官能化ポリマー、または請求項10〜16のいずれか一項に記載のプロセスにより調製された末端基官能化ポリマーの使用。
【請求項18】
加硫可能なゴム組成物であって、
a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー、および
b)老化安定剤、オイル、充填剤、ゴムおよび/またはさらなるゴム助剤、
を含む加硫可能なゴム組成物。
【請求項19】
ケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベア用ベルト、ロールカバー、靴底、ガスケットリング、制震要素またはタイヤである成形物を製造するための、請求項18に記載の加硫可能なゴム組成物の使用。
【請求項20】
請求項19に従って得ることが可能な成形物。
【請求項21】
a)請求項1〜8のいずれか一項に記載の末端基官能化ポリマー、および
b)式(VI):
【化7】
の構造要素を有する直鎖状にカップリングしたポリマー鎖
を含むポリマー混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端基官能化ポリマー、ならびにそれらの調製および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドにおいて望ましい重要な性質としては、乾燥および湿潤表面に対する良好な密着性、低い転がり抵抗性、および高い摩耗抵抗性が挙げられる。転がり抵抗性および摩耗抵抗性を同時に悪化させることなく、タイヤの滑り抵抗性を改良することは極めて困難である。低転がり抵抗性は、燃料消費量を低下させるために重要であり、また高摩耗抵抗性は、タイヤの使用寿命を延長させるための決定的な因子である。
【0003】
タイヤトレッドの湿潤時の滑り抵抗性および転がり抵抗性は、そのブレンド物を製造する際に使用されるゴムの動的/機械的性質に大きく依存する。転がり抵抗性を低下させるためには、高温(60℃〜100℃)で高いレジリエンス(resilience)を有するゴムが、タイヤトレッドに使用される。その一方で、湿潤時の滑り抵抗性を改良するためには、低温(0〜23℃)で高い減衰率を有するか、または0℃〜23℃の範囲で低いレジリエンスを有するゴムが有利である。この複雑な要求性能を満足させるために、トレッドには各種のゴムの混合物が使用されている。通常、1種または複数種の比較的に高いガラス転移温度を有するゴム、たとえばスチレン−ブタジエンゴム等と、1種または複数種の比較的に低いガラス転移温度を有するゴム、たとえば高い1,4−cis含量を有するポリブタジエン、または低いスチレン含量および低いビニル含量を有するスチレン−ブタジエンゴム、または溶液重合で調製された、中程度の1,4−cis含量および低いビニル含量を有するポリブタジエン等と、の混合物が使用される。
【0004】
低転がり抵抗性を有するタイヤトレッドを製造するという点においては、アニオン重合された二重結合を含む溶液法のゴム、たとえば、溶液法ポリブタジエンおよび溶液法スチレン−ブタジエンゴムが、それらに相当するエマルション法のゴムよりも利点を有している。そのような利点は、なかんずく、ビニル含量ならびにそれに伴うガラス転移温度および分子の分岐度が調節可能である点にある。実使用においては、それらが、タイヤの湿潤時の滑り抵抗性と転がり抵抗性との間の関係において特に大きい利点を与える。タイヤトレッドにおけるエネルギーの散逸、ひいては転がり抵抗性に対する重要な寄与は、ポリマー鎖の自由末端と、タイヤトレッド混合物において使用された充填剤(通常はシリカおよび/またはカーボンブラック)によって形成される充填剤のネットワークの可逆的な形成および分解と、からもたらされる。
【0005】
ポリマー鎖の末端および/またはポリマー鎖の開始点に官能基を導入することによって、ポリマー鎖のそれらの末端および/または開始点の、充填剤の表面に対する物理的または化学的な結合が可能となる。そのことによって、それらの移動性が制限され、そのため、タイヤトレッドにおける動的応力下のエネルギー散逸が低下する。それと同時に、それらの官能基が、充填剤のタイヤトレッド内での分散性を改良し、それによって、充填剤のネットワークを弱め、そのため転がり抵抗性をさらに低下させることが可能となる。
【0006】
この目的のために、末端基変性のための多くの方法がこれまでに開発されてきた。たとえば、(特許文献1)には、官能化剤としての4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンまたはN−メチルカプロラクタムの使用が記載されている。エチレンオキシドおよびN−ビニルピロリドンの使用もまた、(特許文献2)から公知である。さらに可能な官能化剤の多くのものが、(特許文献3)に詳細に述べられている。官能性のアニオン重合開始剤によってポリマー鎖の開始点に官能基を導入するための方法が、たとえば、(特許文献4)および(特許文献5)(保護されたヒドロキシル基を有する重合開始剤)、(特許文献6)(チオエーテル含有重合開始剤)、ならびに(特許文献7)、(特許文献8)および(特許文献9)(重合開始剤としての二級アミンのアルカリ金属アミド)に記載されている。
【0007】
極性の強い二座配位子としてのカルボキシル基は、ゴム混合物の中においてシリカ充填剤の表面と特に良好に相互作用することができる。溶液中で調製されるジエンゴムのポリマー鎖にカルボキシル基を導入するための方法は、公知であり、たとえば、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)に記載されている。それらの方法には、たとえば、長い反応時間が必要となる、官能化剤の転換が極めて不完全である、分岐などの副反応の結果としてポリマー鎖の変化が起きるなど、いくつかの欠点がある。さらに、それらの方法では特に、ポリマー鎖の末端を効果的に官能化させることができない。
【0008】
ポリマー鎖のアニオン性末端をCOと反応させることによってジエンゴムの鎖末端へカルボキシル基を導入することも同様に、たとえば(特許文献14)に記述されている。この方法には欠点があり、ポリマーの溶液を気体のCOと接触させなければならず、その接触は、粘度が高く、その結果混合が不十分となるために困難であることが見いだされている。さらに、COの炭素原子においてポリマー鎖の2個以上の末端が反応する結果として、制御困難なカップリング反応が起きる。このカップリングは、第一にポリマー鎖のカルボアニオン末端をエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと反応させ、次いで、アルコキシド変性されたポリマー鎖の末端を環状無水物と反応させるという逐次反応によって回避することが可能である(特許文献15)。しかしながらこの場合もまた、気体状であり、その上きわめて高い毒性を有するエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを、高粘度のゴム溶液の中に導入しなければならないという欠点が存在している。さらには、アルコキシド性の鎖末端と環状無水物との反応によって、加水分解を受けやすいエステル結合が生成し、その結合は、後処理段階および後の使用段階で切断される可能性がある。
【0009】
特に、ケイ素上に合計して少なくとも2個のハロゲンおよび/またはアルコキシおよび/またはアリールオキシ置換基を有するシランおよびシクロシロキサンは、ジエンゴムの末端基官能化には良好な適合性を有しており、その理由は、ケイ素原子上の前記置換基の一つが、ポリマー鎖のアニオン性ジエン末端と急速な置換反応で容易に交換され得、Siの上のさらなる前述の置換基が、官能基として利用可能となり、場合によっては加水分解の後で、タイヤトレッド混合物の充填剤と相互作用することが可能となる。このタイプのシランの例は、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、および(特許文献19)に見いだすことができる。
【0010】
それらのシランは一般的に、ケイ素原子に直接結合されているか、またはスペーサーを介してSiに結合されている官能基を有しており、ゴム混合物の中のシリカ充填剤と相互作用することができる。それらの官能基は一般的には、Si上に直接結合したアルコキシ基またはハロゲン、およびスペーサーを介してSiに結合した三級アミノ置換基である。これらのシランの欠点は、シラン1分子あたりポリマー鎖の複数のアニオン性末端と反応する可能性と、後処理段階および貯蔵段階における、やっかいな成分の排除およびSi−O−Si結合を形成するカップリングの排除とである。これらのシランによってカルボキシル基を導入することは、これまで記述されていない。
【0011】
(特許文献20)には、ジエンポリマーに水酸化物末端基を導入するための官能化剤として、1−オキサ−2−シラシクロアルカンが記載されている。それらの1−オキサ−2−シラシクロアルカンは、上の段落で述べたシランの欠点、たとえば、シラン1分子あたりポリマー鎖の複数のアニオン性末端との反応、後処理段階および貯蔵段階における、やっかいな成分の排除およびSi−O−Si結合を形成するカップリングの排除といった欠点を有していない。しかしながら、それらの官能化剤もやはり、ポリマー鎖の末端にカルボキシル基を導入することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0180141A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0864606A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4417029号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0513217A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0675140A1号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20080308204A1号明細書
【特許文献7】米国特許第5792820号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0590490A1号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0594107A1号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第2653144A1号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1000971A1号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第1050545A1号明細書
【特許文献13】国際公開第2009034001A1号パンフレット
【特許文献14】米国特許第3242129号明細書
【特許文献15】米国特許第4465809号明細書
【特許文献16】米国特許第3244664号明細書
【特許文献17】米国特許第4185042号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第0778311A1号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第20050203251A1号明細書
【特許文献20】国際公開第2012/065908A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、取り組むべき問題点は、従来技術の欠点を有さず、より具体的には、ポリマー鎖のアニオン性末端を有するシランの良好な反応性の利用を可能とする、カルボキシル末端化ポリマーを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題点は、ポリマー鎖の末端に式(I):
【化1】
[式中、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール(alkaryl)、アルカリールオキシ(alkaryloxy)、アラルキル、またはアラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
Aは、二価の有機基であり、それは、CおよびHだけでなく、1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよい]
のシラン含有カルボキシル基を有する末端基官能化ポリマーの提案によって解決される。
【0015】
好ましくは、本発明の末端基官能化ポリマーは、式(II)
【化2】
[式中、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
Aは、二価の有機基であり、それは、CおよびHだけでなく、1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
nは、1〜4の整数であり、
Mは、原子価1〜4の金属または半金属、好ましくはLi、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、またはWである]
の末端基を有するカルボキシレートの形態にあってよい。
【0016】
本発明の末端基官能化ポリマーを調製するための好ましいポリマーは、ジエンポリマー、およびジエンとビニル芳香族モノマーとを共重合させることによって得ることが可能なジエンコポリマーである。
【0017】
好ましいジエンは、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、および/または1,3−ヘキサジエンである。1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを使用するのが特に好ましい。
【0018】
ビニル芳香族コモノマーとしては、たとえば、スチレン、o−、m−および/またはp−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルンゼンおよび/またはジビニルナフタレンなどが挙げられる。スチレンを使用するのが特に好ましい。
【0019】
それらのポリマーは、アニオン性溶液重合または配位触媒による重合によって調製することが好ましい。これに関連して、配位触媒は、Ziegler−Natta触媒、または単一金属触媒系を意味すると理解されたい。好適な配位触媒は、Ni、Co、Ti、Zr、Nd、V、Cr、Mo、W、またはFeをベースとするものである。
【0020】
アニオン性溶液重合のための重合開始剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をベースとするもの、たとえばメチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、オクチルリチウム、デシルリチウム、2−(6−リチオ−n−ヘキソキシ)テトラヒドロピラン、3−(tert−ブチルジメチルシロキシ)−1−プロピルリチウム、フェニルリチウム、4−ブチルフェニルリチウム、1−ナフチルリチウム、p−トリルリチウム、および三級N−アリルアミンから誘導されるアリルリチウム化合物、たとえば[1−(ジメチルアミノ)−2−プロペニル]リチウム、[1−[ビス(フェニルメチル)アミノ]−2−プロペニル]リチウム、[1−(ジフェニルアミノ)−2−プロペニル]リチウム、[1−(1−ピロリジニル)−2−プロペニル]リチウム、二級アミンのリチウムアミド、たとえばリチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウム1−メチルイミダゾリジド、リチウム1−メチルピペラジド、リチウムモルホリド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジベンジルアミド、リチウムジフェニルアミド、である。これらのアリルリチウム化合物およびこれらのリチウムアミドは、有機リチウム化合物と、それぞれの三級N−アリルアミン、またはそれぞれの二級アミンとの反応によって、その場で調製することもできる。さらに、二官能および多官能の有機リチウム化合物、たとえば1,4−ジリチオブタン、ジリチウムピペラジドを使用することも可能である。n−ブチルリチウムおよびsec−ブチルリチウムを使用することが好ましい。
【0021】
さらに、ポリマーの微細構造のための公知のランダマイザー(randomizer)および調節剤を使用することもまた可能であり、そのようなものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)プロパン、ジオキサン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジピペリジノエタン、1,2−ジピロリジノエタン、1,2−ジモルホリノエタン、ならびに、アルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸のカリウム塩およびナトリウム塩。
【0022】
そのような溶液重合は公知であり、たとえば以下の文献に記載されている:I.Franta,Elastomers and Rubber Compounding Materials,Elsevier,1989,p.113〜131;Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry],Thieme Verlag,Stuttgart,1961,volumeXIV/1,p.645〜673またはvolumeE20(1987),p.114〜134およびp.134〜153;Comprehensive Polymer Science,Vol.4,Part II(Pergamon Press Ltd.,Oxford,1989),p.53〜108。
【0023】
好ましいジエンホモポリマーおよびジエンコポリマーの調製は、溶媒中で実施することが好ましい。重合のために使用する溶媒は、不活性な非プロトン性溶媒が好ましく、たとえば以下のものである:パラフィン系炭化水素、たとえば、異性体も含めた、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンもしくは1,4−ジメチルシクロヘキサン、またはアルケン、たとえば1−ブテン、または芳香族炭化水素、たとえば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、またはプロピルベンゼン。これらの溶媒は、個別に使用しても、組み合わせて使用してもよい。シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびn−ヘキサンが好ましい。極性溶媒とブレンドすることも、同様に可能である。
【0024】
本発明によるプロセスにおける溶媒の量は、使用するモノマーの全体量100gを規準にして、典型的には100〜1000gの範囲、好ましくは200〜700gの範囲である。しかしながら、溶媒を存在させずに、使用するモノマーを重合させることも可能である。
【0025】
重合は、モノマーおよび溶媒を最初に仕込み、次いで重合開始剤または触媒を添加することによって重合を開始させるような方法で実施することができる。フィードプロセスにおける重合もまた可能であり、その場合、モノマーおよび溶媒を重合反応器に添加により充填し、重合開始剤または触媒は、最初に仕込んでおくかまたはモノマーおよび溶媒と共に添加する。反応器に溶媒を初期仕込みし、重合開始剤または触媒を添加し、その後モノマーを添加するなどの変形も可能である。さらに、連続モードで重合させることも可能である。すべての場合において、重合の途中または最後にモノマーおよび溶媒をさらに添加することも可能である。
【0026】
重合時間は、数分から数時間まで、広い範囲で変化させることができる。典型的には10分〜8時間、好ましくは20分〜4時間の時間で重合を実施する。標準圧力で実施することも、または高圧(1〜10bar)で実施することもできる。
【0027】
驚くべきことには、官能化剤として1種または複数種のシララクトンを使用すると、従来技術の欠点を有さないカルボキシル末端化ポリマーを製造することができることが見いだされた。
【0028】
シララクトンは、式(III):
【化3】
[式中、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
Aは、二価の有機基であり、それは、CおよびHだけでなく、1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、
好ましくは、
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、(C〜C24)−アルキル、(C〜C24)−アルコキシ、(C〜C24)−シクロアルキル、(C〜C24)−シクロアルコキシ、(C〜C24)−アリール、(C〜C24)−アリールオキシ、(C〜C24)−アルカリール、(C〜C24)−アルカリールオキシ、(C〜C24)−アラルキル、または(C〜C24)−アラルコキシ基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよく、および
、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、(C〜C24)−アルキル、(C〜C24)−シクロアルキル、(C〜C24)−アリール、(C〜C24)−アルカリール、または(C〜C24)−アラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよい]
の化合物である。
【0029】
式(III)の化合物の例としては、以下のものが挙げられる:
2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(1)、2,2,4−トリメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(2)、2,2,5−トリメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(3)、2,2,4,5−テトラメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(4)、2,2−ジエチル−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(5)、2,2−ジエトキシ−1−オキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(6)、2,2−ジメチル−1,4−ジオキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(7)、2,2,5−トリメチル−1,4−ジオキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(8)、2,2,3,3−テトラメチル−1,4−ジオキサ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(9)、2,2−ジメチル−1−オキサ−4−チア−2−シラシクロヘキサン−6−オン(10)、2,2−ジエチル−1−オキサ−4−チア−2−シラシクロヘキサン−6−オン(11)、2,2−ジフェニル−1−オキサ−4−チア−2−シラシクロヘキサン−6−オン(12)、2−メチル−2−エテニル−1−オキサ−4−チア−2−シラシクロヘキサン−6−オン(13)、2,2,5−トリメチル−1−オキサ−4−チア−2−シラシクロヘキサン−6−オン(14)、2,2−ジメチル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(15)、2,2,4−トリメチル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(16)、2,4−ジメチル−2−フェニル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(17)、2,2−ジメチル−4−トリメチルシリル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(18)、2,2−ジエトキシ−4−メチル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサン−6−オン(19)、2,2,4,4−テトラメチル−1−オキサ−2,4−ジシラシクロヘキサン−6−オン(20)、3,4−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1H−2,3−ベンズオキサシリン−1−オン(21)、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン−5−オン(22)、2,2,3−トリメチル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン−5−オン(23)、2,2−ジメチル−4−フェニル−1−オキサ−2−シラシクロペンタン−5−オン(24)、2,2−ジ(tert−ブチル)−1−オキサ−2−シラシクロペンタン−5−オン(25)、2−メチル−2−(2−プロペン−1−イル)−1−オキサ−2−シラシクロペンタン−5−オン(26)、1,1−ジメチル−2,1−ベンズオキサシロル−3(1H)−オン(27)、2,2−ジメチル−1−オキサ−2−シラシクロヘプタン−7−オン(28)。
【化4A】
【化4B】
【0030】
そのようなシララクトンの合成は、たとえば以下の文献に記載されている:米国特許第2,635,109号明細書;M.Wieber,M.Schmidt,Chemische Berichte,1963,96(10),2822〜5;J.M.Wolcott,F.K.Cartledge,Journal of Organic Chemistry,1974,39(16),2420〜4;M.P.Sibi,J.W.Christensen,Tetrahedron Letters,1995,36(35),6213〜6;T.Linker,M.Maurer,F.Rebien,Tetrahedron Letters,1996,37(46),8363〜6;M.Shindo et al.,Angewandte Chemie,International Edition,2004,43(1),104〜6。
【0031】
本発明の末端基官能化ポリマーは、ポリマー鎖の反応性末端を、シララクトンと反応させ、場合によっては次いで、その生成したカルボキシレート末端基をプロトン化してカルボキシル末端基が得られるようにすることによって、調製することができることが見いだされた。
【0032】
したがって、本発明はさらに、式(I)または(II)の末端基を有する本発明の末端基官能化ポリマーを調製するための官能化剤としての、シララクトンの使用も提供する。
【0033】
そのポリマー鎖に極めて反応性の高い求核性末端を有するポリマーを式(III)の化合物と反応させると、そのポリマー鎖は、官能化剤のケイ素原子に結合できるだけではなく、それに加えて、カルボニル炭素原子上に結合がさらに生成する可能性もある。それによって、ポリマー鎖の直鎖状カップリングがもたらされる(スキーム1)。この場合においては、ポリマーの混合物が存在することとなる。そのポリマー鎖に極めて反応性の高い末端を有するポリマーとしては、たとえばアニオン重合によるか、または配位触媒を用いて調製された、ジエンホモポリマーおよびジエンコポリマーがある。
【化5】
【0034】
いくつかの場合においては、多分散性を向上させ、それによってそのポリマーのレオロジー的性質、たとえばムーニー粘度およびコールドフローに影響を与える目的で、このタイプのカップリング反応が望ましい。また別な場合においては、それらのポリマーを含む加硫物の動的−機械的特性に有利に影響するように、ポリマー鎖の官能化された末端の数を最大にする目的で、そのカップリング反応を抑制することが有利である可能性もある。
【0035】
驚くべきことには、第一の工程において、そのポリマー鎖に極めて反応性の高い求核性末端を有するポリマーを、シラノールまたはシラノレート末端基を有するポリマーをもたらす反応剤と反応させ、第二の工程において、シラノールまたはシラノレート末端基を有するそれらのポリマーを、式(III)の化合物と反応させる場合には、スキーム1に従うカップリング反応を実質的に完全に(ポリマーの全量を基準にして5重量%未満に)抑制することが可能であることが今や見いだされた(スキーム2)。同様にして、第一の工程において、シラノールまたはシラノレート末端基を有するポリマーをもたらす反応剤を、そのポリマー鎖のきわめて反応性の高い求核性末端の全部とは反応させないことにより、制御された方法でカップリングを所望のレベルに設定することもまた可能である。
【化6】
【0036】
その第一の工程において使用されるこのタイプの反応剤は、直接的または間接的(たとえば、その後のSi−Cl基の加水分解を経由)に、シラノールまたはシラノレート末端基へと導くことができる。しかしながら、直接的な反応でシラノレート末端基を与える反応剤が好ましい。式(IV):
【化7】
[式中、スキーム2および式(IV)中のR、Rは、同一であるかまたは異なっていて、それぞれH、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり、それらは1個または複数のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、またはSiを含んでいてもよい]
のシクロシロキサンが極めて好ましい。
【0037】
好ましいのは、以下のものである:ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ならびに異なった環サイズのシクロシロキサンの混合物。
【0038】
スキーム2で得ることが可能な中間体は、当業者に公知の方法で単離することができる。
【0039】
本発明の末端基官能化ポリマーは、10000〜2000000g/mol、好ましくは100000〜1000000g/molの平均モル質量(数平均、M)と、−110℃〜+20℃、好ましくは−110℃〜0℃のガラス転移温度と、10〜200、好ましくは30〜150ムーニー単位のムーニー粘度[ML 1+4(100℃)]と、を有しているのが好ましい。
【0040】
本発明はさらに、本発明の末端基官能化ポリマーを調製するためのプロセスも提供し、そこでは、式(III)の1種または複数種の化合物を、純物質として、溶液として、または懸濁液として添加して、ポリマー鎖に反応性の末端を有するポリマーを得る。その添加は、重合が完結した後に行うのが好ましいが、モノマーが完全に転化する前に実施してもよい。式(III)の化合物と、そのポリマー鎖に反応性の末端を有するポリマーとの反応は、重合で通常使用される温度で実施する。式(III)の化合物とポリマー鎖の反応性末端との反応のための反応時間は、数分から数時間の間であってよい。
【0041】
それらの化合物の量は、ポリマー鎖の反応性末端全部が式(III)の化合物と反応するように選択することができ、またはそれらの化合物が不足するような使用法も可能である。使用する式(III)の化合物の量は、広い範囲を包含することができる。好ましい量は、ポリマーの量を基準にして、0.005〜2重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜1重量%の範囲内である。
【0042】
本発明はさらに、第一に、(アニオン重合または配位触媒を用いた重合によって得られた)カルボアニオン性鎖末端を有するポリマーと、式(IV)のシクロシロキサンとの反応、および次の工程における、カルボキシレート末端化ポリマーを得るための、その第一の工程で得られたシラノレート末端化ポリマーと、式(III)の化合物との反応も提供する。式(IV)のシクロシロキサンは、純粋な形態で使用することも可能であり、または各種のシクロシロキサンの混合物として使用することも可能である。シクロシロキサンの量は、ポリマー鎖の反応性末端が全部、式(IV)のシクロシロキサンと反応するように選択することもでき、またはそれらの化合物が不足するような使用法も可能である。使用する式(IV)のシクロシロキサンの量は、広い範囲を包含することができる。好ましい量は、ポリマーの量を基準にして、0.002〜4重量%の範囲内、より好ましくは0.005〜2重量%の範囲内である。それに続く工程における式(III)の化合物の量は、ありとあらゆる存在しているポリマー鎖のカルボアニオン性末端、およびポリマー鎖のシラノレート末端化された末端の全部が、式(III)の化合物と反応するように選択するのが理想的である。シララクトン対シクロシロキサンの好ましい比率は、20:1〜1:1、特に好ましくは10:1〜1:1の比率、極めて特に好ましくは3:1〜1:1の比率である。
【0043】
式(III)の化合物および式(IV)のシクロシロキサンに加えて、ポリマー鎖の反応性末端と反応させるために、アニオン性ジエン重合において典型的なカップリング剤を使用することもまた可能である。そのようなカップリング剤の例としては以下のものが挙げられる:四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジブチルスズジクロリド、テトラアルコキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、および1,2,4−トリス(クロロメチル)ベンゼン。そのようなカップリング剤は、式(III)の化合物より前か、それと同時か、またはそれより後に添加することができる。
【0044】
式(III)の化合物および場合によってはカップリング剤を添加した後で、本発明のシラン含有カルボキシレート末端化ポリマーの後処理の前またはその途中に、慣用される老化安定剤、たとえば立体障害フェノール、芳香族アミン、ホスファイト、チオエーテルなどを添加することが好ましい。さらに、ジエンゴムのために慣用されるエクステンダー油を添加することも可能であり、そのようなものとしてはたとえば以下のものが挙げられる:DAE(留出物芳香族抽出物)、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)、MES(軽度抽出溶媒和物)、RAE(残留芳香族抽出物)、TRAE(処理残留芳香族抽出物)、ナフテン油および重質ナフテン油。充填剤、たとえば、カーボンブラックおよびシリカ、ゴムおよびゴム助剤を添加することもまた可能である。
【0045】
溶媒を重合プロセスから、慣用される方法、たとえば、蒸留、水蒸気を用いたストリッピング、または場合によっては高温で減圧することによって除去することができる。
【0046】
本発明はさらに、加硫可能なゴム組成物を製造するための、本発明の末端基官能化ポリマーの使用も提供する。
【0047】
それらの加硫可能なゴム組成物が、さらなるゴム、充填剤、ゴム用薬品、加工助剤、およびエクステンダーオイルを含んでいることが好ましい。
【0048】
さらなるゴムとしては、たとえば、天然ゴムおよび合成ゴムが挙げられる。存在する場合、それらの量は、その混合物の中のポリマーの全量を基準にして、典型的には0.5〜95重量%の範囲内、好ましくは10〜80重量%の範囲内である。さらに添加されるゴムの量も、本発明の混合物のそれぞれの末端用途によって導き出される。このタイプの合成ゴムの例としては、以下のものが挙げられる:BR(ポリブタジエン)、アクリル酸−アルキルエステルコポリマー、IR(ポリイソプレン)、E−SBR(乳化重合によって調製したスチレン−ブタジエンコポリマー)、S−SBR(溶液重合によって調製したスチレン−ブタジエンコポリマー)、IIR(イソブチレン−イソプレンコポリマー)、NBR(ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分水素化または完全水素化NBRゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー)、およびこれらのゴムの混合物。自動車用タイヤを製造するためには、特に天然ゴム、−60℃より高いガラス転移温度を有するE−SBRおよびS−SBR、高いcis含量(>90%)を有し、Ni、Co、TiまたはNdをベースとする触媒を用いて調製したポリブタジエンゴム、および80%までのビニル含量を有するポリブタジエンゴム、ならびにそれらの混合物が興味深い。
【0049】
本発明のゴム組成物のために有用な充填剤としては、ゴム工業において使用されるあらゆる公知の充填剤が挙げられる。それらには、活性充填剤および不活性充填剤の両方が含まれる。
【0050】
たとえば、以下のものが挙げられるべきである:
− 微細シリカ、たとえばケイ酸塩の溶液を沈降させるか、またはハロゲン化ケイ素を火炎加水分解させて製造し、5〜1000、好ましくは20〜400m/g(BET表面積)の比表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。それらのシリカは、場合によっては、他の金属酸化物たとえば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物として存在させてもよい;
− 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属のケイ酸塩、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムであって、20〜400m/gのBET表面積と、10〜400nmの一次粒子直径とを有するもの;
− 天然のケイ酸塩、たとえばカオリン、モンモリロナイト、およびその他の天然産のシリカ;
− ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、ストランド)、またはガラスミクロスフィア;
− 金属酸化物、たとえば、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム;
− 金属炭酸塩、たとえば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛;
− 金属水酸化物、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム;
− 金属硫酸塩、たとえば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム;
− カーボンブラック:ここで使用されるカーボンブラックは、ランプブラック法、チャンネルブラック法、ファーネスブラック法、ガスブラック法、サーマルブラック法、アセチレンブラック法、またはライトアーク法によって製造され、9〜200m/gのBET表面積を有するカーボンブラックであり、たとえば、以下のものである;SAF、ISAF−LS、ISAF−HM、ISAF−LM、ISAF−HS、CF、SCF、HAF−LS、HAF、HAF−HS、FF−HS、SPF、XCF、FEF−LS、FEF、FEF−HS、GPF−HS、GPF、APF、SRF−LS、SRF−LM、SRF−HS、SRF−HM、およびMTカーボンブラック、またはASTMのN110、N219、N220、N231、N234、N242、N294、N326、N327、N330、N332、N339、N347、N351、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787、およびN990カーボンブラック;
− ゴムゲル、特にBR、E−SBRおよび/またはポリクロロプレンをベースとし、5〜1000nmの粒径を有するもの。
【0051】
使用する充填剤が微細シリカおよび/またはカーボンブラックであれば好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0052】
上述の充填剤は、単独で使用しても、または混合物として使用してもよい。特に好ましい実施形態においては、そのゴム組成物には、充填剤として、淡色の充填剤たとえば微細シリカとカーボンブラックとの混合物が含まれ、淡色の充填剤対カーボンブラックの混合比は、0.01:1〜50:1、好ましくは0.05:1〜20:1である。
【0053】
この場合、充填剤は、ゴム100重量部を基準にして、10〜500重量部の範囲の量で使用される。20〜200重量部の範囲内の量で使用することが好ましい。
【0054】
本発明のさらなる実施形態においては、ゴム組成物には、ゴム助剤、たとえば、そのゴム組成物の加工性能を改良するため、そのゴム組成物を架橋させるため、本発明のゴム組成物から製造される加硫物の物理的性質をその特定の最終用途に合わせて改良するため、ゴムと充填剤との間の相互作用を改良するため、または充填剤へのゴムの接着に役立たせるためのゴム助剤も含まれる。
【0055】
ゴム助剤は、たとえば以下のものである:架橋剤、たとえば硫黄または硫黄供与性化合物、およびさらには反応加硫促進剤、老化安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗オゾン剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エクステンダー、有機酸、シラン、遅延剤、金属酸化物、エクステンダー油たとえば、DAE(留出物芳香族抽出物)、TDAE(処理留出物芳香族抽出物)、MES(軽度抽出溶媒和物)、RAE(残留芳香族抽出物)、TRAE(処理残留芳香族抽出物)、ナフテン油および重質ナフテン油、および活性化剤。
【0056】
ゴム助剤の総量は、ゴム全体100重量部を基準にして、1〜300重量部の範囲内である。5〜150重量部の範囲内の量のゴム助剤を使用することが好ましい。
【0057】
加硫可能なゴム組成物は、一段プロセスでも、または多段プロセスでも製造することができ、2〜3段の混合段が好ましい。たとえば、硫黄と加硫促進剤とは、別の混合段、たとえばローラーの上で添加することも可能であり、その際の好ましい温度は30℃〜90℃の範囲である。硫黄および加硫促進剤は、最後の混合段で添加することが好ましい。
【0058】
加硫可能なゴム組成物を製造するのに好適な装置の例としては、ローラー、ニーダー、インターナルミキサー、または混合押出機が挙げられる。
【0059】
したがって、本発明はさらに、式(I)または(II)の末端基を有する末端基官能化ポリマーを含む、加硫可能なゴム組成物も提供する。
【0060】
本発明はさらに、ゴム加硫物を製造するため、特には、高い湿潤時の滑り抵抗性および摩耗抵抗性と組み合わせた、特に低い転がり抵抗性を有するタイヤ、特にタイヤトレッドを製造するための、本発明の加硫可能なゴム組成物の使用を提供する。
【0061】
本発明の加硫可能なゴム組成物は、成形物を製造するため、たとえばケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベア用ベルト、ロールカバー、靴底、ガスケットリング、および制震要素を製造するためにも好適である。
【0062】
以下の実施例は、本発明を説明するために役立つであろうが、その効果を限定するものではない。
【実施例】
【0063】
実施例1:官能化されていないスチレン−ブタジエンコポリマーの合成(比較例)
不活性化させた20Lの反応器に、8.5kgのヘキサン、1185gの1,3−ブタジエン、315gのスチレン、8.6mmolの2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)プロパン、および11.3mmolのブチルリチウムを仕込み、その内容物を加熱して60℃とした。撹拌しながら60℃で25分間かけて重合を行わせた。次いで、11.3mmolのセチルアルコールを添加して、そのポリマー鎖のアニオン性の末端を封止し、そのゴム溶液を取り出し、3gのIrganox(登録商標)1520(2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール)を添加することによって安定化させ、スチームを用いてストリッピングすることによって溶媒を除去した。そのゴムのかけら(crumb)を、減圧下65℃で乾燥させた。
【0064】
実施例2:シクロシロキサンと反応させることによる、シラノレート末端化スチレン−ブタジエンコポリマーの合成(比較例)
その手順は実施例1と同様であった。しかしながら、セチルアルコールに代えて、ブチルリチウムの量と等モルの量のヘキサメチルシクロトリシロキサンを(シクロヘキサン中の溶液として)添加し、次いでその反応器の内容物をさらに20分間60℃で加熱した。
【0065】
実施例3:シクロシロキサン、次いでシララクトンと反応させることによる、シラン含有カルボキシル末端化スチレン−ブタジエンコポリマーの合成(本発明実施例)
その手順は実施例2と同様であった。ヘキサメチルシクロトリシロキサンを添加してから20分後に、ブチルリチウムおよびヘキサメチルシクロトリシロキサンの量と等モルの量の2,2−ジメチル−1−オキサ−4−チア−2−シラシクロヘキサン−6−オンを(トルエン中の溶液として)添加し、その混合物をさらに20分間60℃で加熱した。
【0066】
実施例4:シクロシロキサン、次いでシララクトンと反応させることによる、三級アミノ基を鎖の開始点に有するシラン含有カルボキシル末端化スチレン−ブタジエンコポリマーの合成(本発明実施例)
その手順は実施例3と同様であった。しかしながら、ブチルリチウムを添加する前に、ブチルリチウムの量と等モルの量のピロリジンを添加した。
【0067】
実施例5:1−オキサ−2−シラシクロアルカンと反応させることによる、シラン含有ヒドロキシル末端化スチレン−ブタジエンコポリマーの合成(比較例)
その手順は実施例2と同様であった。しかしながら、ヘキサメチルシクロトリシロキサンに代えて、ブチルリチウムの量と等モルの量の2,2,4−トリメチル−1−オキサ−4−アザ−2−シラシクロヘキサンを添加した(ヘキサン中の溶液として)。
【0068】
実施例1〜5からのスチレン−ブタジエンコポリマーのポリマーの性質を表1にまとめた。表1から明らかなように、実施例3および4の本発明のシラン含有カルボキシル末端化ポリマーは、比較例1、2および5のポリマーと同等の分子量および多分散性のレベルを有しながらも、はるかに高いムーニー粘度およびはるかに低いコールドフロー値を有していることが明らかである。コールドフロー値が低いことは有利であり、その理由は、それに相当するゴムは流動する傾向が低く、そのために貯蔵時における寸法安定性が改良されるからである。
【0069】
実施例6a〜e:ゴム組成物
実施例1〜5のスチレン−ブタジエンコポリマーを含むタイヤトレッドゴム組成物を製造した。それらの構成成分を表2にまとめた。ゴム組成物(硫黄および加硫促進剤なし)は、1.5Lのニーダー中で製造した。次いで硫黄および加硫促進剤の構成成分を、ローラー上で40℃で混ぜ込んだ。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
実施例7a〜e:加硫物の性質
表2に記載の実施例6a〜eのタイヤトレッドゴム組成物を、160℃で20分かけて加硫させた。相当する加硫物の性質を実施例7a〜eとして表3に示した。官能化されていないスチレン−ブタジエンコポリマーを含む比較例7からの加硫サンプルの加硫物の性質に100の指数を与えた。表3において100を超える数値はすべて、それぞれの試験した性能におけるそれに相当する改良パーセントを意味している。
【0073】
【表3】
【0074】
60℃におけるレジリエンス、60℃における動的減衰tanδ、振幅掃引における最大tanδ、および振幅掃引における、低歪みと高歪みの間のモジュール差ΔGは、タイヤの転がり抵抗性の指標である。表3から明らかなように、本発明実施例7cおよび7dの加硫物は、これらの転がり抵抗性に関連した性質における特に高い改良を特徴としている。
【0075】
0℃における動的減衰tanδは、タイヤの湿潤時の滑り抵抗性の指標である。表3から明らかなように、本発明実施例7cおよび7dの加硫物は、この湿潤時の滑りに関連した性質における特に高い改良を特徴としている。
【0076】
DIN摩耗値は、タイヤトレッドの摩耗抵抗性の指標である。表3から明らかなように、本発明実施例7cおよび7dの加硫物は、この性質における特に高い改良を特徴としている。