(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306709
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】同軸ケーブルをストリップラインに結合するためのコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
H01P5/08 B
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-538083(P2016-538083)
(86)(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公表番号】特表2017-500802(P2017-500802A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】CN2014092264
(87)【国際公開番号】WO2015085865
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年7月27日
(31)【優先権主張番号】201310659556.7
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515353143
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント シャンハイ ベル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ル カム,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ユ,リン
【審査官】
岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−320208(JP,A)
【文献】
特開平08−340207(JP,A)
【文献】
特表2012−518963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルをストリップラインに結合するためのコネクタであって、
前記同軸ケーブルの中心導体がはんだ付けされる前記ストリップラインの導体の上方に配置される第1のプレートを備え、
前記第1のプレートが、
前記同軸ケーブルの編組がはんだ付けされる第1のはんだ部分と、
前記第1のはんだ部分に隣接して形成され、前記第1のはんだ部分と前記同軸ケーブルの前記編組のはんだポイントの熱伝播を防ぎ、前記ストリップラインの前記導体と前記同軸ケーブルの前記中心導体のはんだポイントを露出させるように構成された開口部とを含み、
前記開口部の最大寸法は最大周波数の波長の5%よりも小さくなるように形成され、
第2のプレートの第2のはんだ部分が、前記第1のプレートの前記第1のはんだ部分にはんだ付けされ、
前記同軸ケーブルの前記編組が前記第2のはんだ部分にはんだ付けされる、
コネクタ。
【請求項2】
前記開口部の下方の前記ストリップラインの前記導体の一部分が、前記開口部によって生じるインピーダンスの劣化を補償するように形成される、前記ストリップラインの前記導体をさらに含む、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ストリップラインの前記導体の前記一部分が、インピーダンスの劣化を補償するために、拡幅される、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記開口部が、前記ストリップラインの前記導体と前記同軸ケーブルの前記中心導体の前記はんだポイントの上方に形成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1のはんだ部分が2つのはんだパットを含み、前記開口部が前記2つのはんだパットの間に形成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2のはんだ部分が、前記同軸ケーブルが通る孔を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記開口部が長方形である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1のプレートが前記ストリップラインの蓋板である、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記第2のプレートが前記ストリップラインの底板である、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電気コネクタに関し、詳細には同軸ケーブルをストリップラインに結合するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
基地局アンテナは、いくつかの放射素子のアレイを伴って建設され、伝送線によって配電網(例えば、電力分配器、移相器、など)に接続される。典型的には、伝送線は同軸ケーブルであり、ストリップラインが高性能であること(例えば、挿入損失が少なく、寸法が適度で、ラインの保護に優れていること、など)から、配電網はストリップライン・デバイスで形成される。具体的には、
図1を参照すると、基地局アンテナの放射素子が同軸ケーブル114によってストリップライン・デバイス110のストリップライン112に接続されており、ストリップライン・デバイス110の蓋板116と底板118の間にストリップライン112が配置されている。
【0003】
同軸ケーブルをストリップラインにインターフェイス接続する、いくつかの構造は既存であり、主に2つに分類される。
【0004】
第1の分類では、同軸ケーブルの中心導体がストリップライン導体にはんだ付けされる。同軸ケーブルの編組がインターフェイス部分にはんだ付けされる。このインターフェイス部分はストリップラインの蓋板および底板に螺子またはナット部品を伴うボルトを使用して接続される。この分類では、インターフェイスにおいて以下のような問題が起こり得る。
−PIM(パッシブ・インターモジュレーション)レベルが締付トルクの安定性により変化すること。
−同軸ケーブルとストリップラインの中心導体の接点に問題があった場合、修理できるように、例えば中心導体を点検し、または再度はんだ付けするために、ストリップラインのカバーを取り除かなければいけないこと。
【0005】
第2の分類では、締付トルクの差異によりPIMに起こり得る問題を解消するために、同軸ケーブルおよびストリップラインの中心導体は、やはり互いにはんだ付けされるが、同軸ケーブルの編組も、プレートの特別な形状を利用して、ストリップラインのプレートに直接はんだ付けされる。この場合、プレートは良好にはんだ付けできる物質(例えば、真鍮、銅、錫めっきした鋼、など)から作られる。この分類では、構造に関して以下の問題がある。
−はんだ付け部分周囲の広範な領域にわたる熱拡散のため、プレートとの良好なはんだ付けを得ることが難しいこと。
−中心導体のはんだ付けに問題があった場合、修理するためにカバーを取り除かなければならないこと。すべての接続部分がはんだ付けされているので、螺子で留められている第1の分類よりも、カバーを取り除くことがさらに困難である。一般に、はんだをはがしたカバーは大きく変形するので、破棄し、交換しなければならず、労働時間および材料において余分な費用がかかる。
【発明の概要】
【0006】
上述の問題に基づいて、同軸ケーブルの編組とストリップラインの蓋板の間のはんだ付け性能を改善できる、同軸ケーブルをストリップラインに結合するためのコネクタを実現すること、および、解体せずに、ストリップラインの導体と同軸ケーブルの中心導体を再びはんだ付けできることは有利である。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、同軸ケーブルをストリップラインに結合するためのコネクタを提供し、コネクタは、
同軸ケーブルの中心導体がはんだ付けされるストリップラインの導体の上方に配置される第1のプレートを含み、第1のプレートは、
同軸ケーブルの編組がはんだ付けされる第1のはんだ部分と、
第1のはんだ部分に隣接して形成され、第1のはんだ部分と同軸ケーブルの編組のはんだポイントの熱伝播を防ぎ、ストリップラインの導体と同軸ケーブルの中心導体のはんだポイントを露出させるように構成された開口部とを含み、開口部の最大寸法は最大周波数の波長の5%よりも小さくなるように形成される。
【0008】
開口部が第1のはんだ部分に隣接して形成されることで、ヒート・ブレイク(heat break)が形成され、第1のはんだ部分と同軸ケーブルの編組のはんだポイントにおける広範な領域への熱伝播を防ぎ、したがって、同軸ケーブルの編組と第1のプレート(例えば、ストリップラインの蓋板)の間のはんだ付け性能が達成できる。さらに、ストリップラインの導体と、同軸ケーブルの中心導体のはんだポイントが露出することにより、解体せずに、ストリップラインの導体と同軸ケーブルの中心導体を再度はんだ付けすることが可能になる。
【0009】
開口部が第1のプレート(例えば、ストリップラインの蓋板)に形成されることで、同軸ケーブルとストリップラインとのインターフェイスにインピーダンスの劣化が生じる。有利には、開口部の下方のストリップラインの導体の一部分が、開口部によって生じるインピーダンスの劣化を補償するように形成される。例えば、ストリップラインの導体の一部分はインピーダンスの劣化を補償するために、拡幅できる。
【0010】
有利には、開口部は、ストリップラインの導体と同軸ケーブルの中心導体のはんだポイントの上方に形成される。
【0011】
有利には、第1のはんだ部分は2つのはんだパットを含み、開口部は2つのはんだパットの間に形成される。
【0012】
有利には、第2のプレートの第2のはんだ部分は、第2のプレートの第1のはんだ部分にはんだ付けされ、第2のはんだ部分は、同軸ケーブルが通る孔を有し、同軸ケーブルの編組が第2のはんだ部分にはんだ付けされる。
【0014】
有利には、第1のプレートはストリップラインの蓋板であり、第1のプレートはストリップラインの底板である。
【0015】
本発明の、上記および他の目的と特徴は、以下に続く、添付の図面に関して考察される詳細な説明によって、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】同軸ケーブルがストリップラインに接続されている、ストリップライン・デバイスの等角図である。
【
図2a】本発明の1つの実施形態による、第1のプレートの等角図である。
【
図2b】本発明の1つの実施形態による、同軸ケーブルがストリップラインに接続されている、第1のプレートの等角図である。
【
図3】開口部を有さない、同軸ケーブルとストリップラインとのインターフェイスの模式図、およびそのリターンロスを示す図である。
【
図4】開口部を有する、同軸ケーブルとストリップラインとのインターフェイスの模式図、およびそのリターンロスを示す図である。
【
図5】開口部および補償を有する、同軸ケーブルとストリップラインとのインターフェイスの模式図、およびそのリターンロスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の図面において、類似の参照番号は、類似の、同様の、対応する特徴または機能を参照させるものであると理解されよう。
【0018】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部を構成する添付の図面に対して言及される。添付の図面は、説明の目的で、本開示を実施できる具体的な実施形態を示している。図示された実施形態は本開示による、すべての実施形態を網羅するものではない。本開示の範囲からはずれることなく、別な実施形態が利用でき、構造上、または論理的に変更できることが理解される。したがって、以下の詳細な説明は、狭義に受け取られるべきではなく、本発明の範囲は、後に添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0019】
以下の詳細な説明では、本発明が実施できる具体的な実施形態を説明する目的で示される、本明細書の一部を構成する添付の図面に対して言及される。これに関し、「左」「右」「上部」「底部」「前面」「背面」「先頭の」「前方の」「後続の」などの方向を示す用語は、記されている図面の方向に関連して使用される。本発明の実施形態の構成要素は複数の別の方向に配置できるので、方向を示す用語は説明の目的で使用され、限定されるものではない。本発明の範囲からはずれることなく、別な実施形態が利用でき、構造上、または論理的に変更できることが理解される。したがって、以下の詳細な説明は、狭義に受け取られるべきではなく、本発明の範囲は、後に添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0020】
以下、説明の目的のためにのみ、本発明の同軸ケーブルをストリップラインに結合するためのコネクタが、その利用ケースの一例として基地局アンテナを使用して示される。しかし、同軸ケーブルおよびストリップラインが使用されるいかなる利用ケースにおいても、コネクタが使用できることを当業者なら理解するであろう。
【0021】
図2aおよび
図2bを参照すると、本発明の例示的なコネクタ200は、第1のはんだ部分212、および第1のはんだ部分212に隣接して形成された開口部214を有する第1のプレート210含んでいる。例えば、第1のプレート210はストリップラインの蓋板の一部であってもよく、またはストリップライン全体の蓋板であってもよい。代替例において、第1のプレート212は分離した部分であって、ストリップラインの蓋板の上に取り付けることができる。
【0022】
第1のはんだ部分212は任意の適した構造であり得るが、
図2に示すように、概して2つのはんだパット212aと212bを含み、開口部214は典型的に2つのはんだパット212aと212bの間に形成される。
【0023】
さらに
図2bを参照すると、ストリップラインの導体220は第1のプレート212(例えばストリップラインの蓋板)と第2のプレート230(例えばストリップラインの底板)の間に配置される。第2のプレート230の第2のはんだ部分232は、第1のプレート210の第1のはんだ部分212にはんだ付けされ、かつ、同軸ケーブルが通るために形成される孔(図示せず)を有する。組立の際に、編組242が第2のはんだ部分232にはんだ付けされ、中心導体244がストリップラインの導体220にはんだ付けされた状態で、同軸ケーブル240は第2のはんだ部分232の孔を通る。
【0024】
開口部214は第1のはんだ部分212に隣接して形成されるので、ヒート・ブレイクが形成されて、ストリップラインの蓋板の第1のはんだ部分212のはんだポイント254、および同軸ケーブルの編組242(したがってストリップラインの底板の第2のはんだ部分232)から広範な領域に熱が伝播するのを防ぎ、したがって同軸ケーブルの編組とストリップラインの蓋板の間のはんだ付け性能が実現できる。
【0025】
有利には、ストリップラインの導体220、および同軸ケーブル240の中心導体244のはんだポイント252の上方に、開口部214が形成されて、はんだポイント252を露出させる。したがって、ストリップラインの導体220と同軸ケーブル240の中心導体244とは、解体することなく再度はんだ付けすることが可能になる。
【0026】
はんだポイント254の熱伝播を防ぐと共に、再度のはんだ付けのためにはんだポイント252を露出させるという目的を達成するように、開口部214は任意の適した形状、例えば長方形、円形、楕円形、台形、三角形などにすることができる。さらに、動作周波数において開口部214の放熱はごくわずかであると考えるため、開口部214の最大寸法は基地局アンテナの最大周波数の波長の5%よりも小さくすることができる。
【0027】
ストリップラインの蓋板に開口部214が形成されることで、同軸ケーブルとストリップラインとのインターフェイスにおいてインピーダンスが劣化する。例えば、
図4に示されるようにリターンロスは23デシベルに劣化し、それは
図3に示されるような開口部のない従来の構造と比較して10デシベルの劣化である(HFSSシミュレーションの結果、33デシベル)。この点に関して、有利には、開口部214の下方にある、ストリップラインの導体220の一部分262が、開口部によっておこるインピーダンスの劣化を補償するために形成される。例えば、ストリップラインの導体220の一部分は、インピーダンスの劣化を補償するために拡幅できる。ストリップラインの導体220の形状を正しく最適化することによって、
図5に示されるようにリターンロスが35デシベルよりも良い、同軸ケーブルとストリップラインとのインターフェイスにおける良好なインピーダンスを得ることが可能になる。
【0028】
上に示された実施形態は、本発明を限定するために示されているのではなく、当業者には容易に理解されるように、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、修正と変更がなされ得るということが理解できることに留意されたい。そのような修正と変更は、本発明、および後に添付の特許請求の範囲の範囲内であると考えられる。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲で定義される。さらに、特許請求の範囲内のいかなる参照番号も特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「comprise」とその変化形の使用は、特許請求の範囲で述べられた以外の要素またはステップの存在を除外しない。要素やステップの直前の不定冠詞「a」または「an」は、複数のそのような要素やステップの存在を除外するものではない。