(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306724
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】非球面およびその他の非平坦面のトポグラフィの測定
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20180326BHJP
G01B 9/02 20060101ALI20180326BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20180326BHJP
G01M 11/00 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B9/02
G02B21/00
!G01M11/00 L
【請求項の数】45
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-545928(P2016-545928)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-505434(P2017-505434A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】US2015010628
(87)【国際公開番号】WO2015105980
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年9月12日
(31)【優先権主張番号】61/925,570
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598176743
【氏名又は名称】ザイゴ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ZYGO CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドレゼル、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リーゼナー、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート、ピーター ジェイ.
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−259509(JP,A)
【文献】
特開2001−066123(JP,A)
【文献】
特表2007−515641(JP,A)
【文献】
特開2013−145199(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0091566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01B 9/02
G02B 21/00
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡を使用して試験対象物の非平坦面の合成画像を生成する方法であって、
前記顕微鏡を用いて、前記非平坦面の異なる領域の複数の3次元画像を取得するステップであって、各3次元画像は、少なくとも1つの隣接した画像と重なり合う領域を含み、前記顕微鏡は、前記非平坦面上の、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である微細構造を3次元で前記重なり合う領域に結像するのに十分な解像度を有する、前記取得するステップと、
各重なり合う領域について、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である対応する微細構造を特定するステップと、
前記複数の3次元画像のそれぞれについて、前記画像の試験対象物の位置および向きを共通の座標系に関連付けする剛体パラメータのセットを決定するステップであって、前記剛体パラメータのセットは、前記画像の重なり合う領域において解像された前記微細構造を、隣接した画像の重なり合う領域の対応する前記微細構造とフィッティングすることによって決定され、
前記画像の重なり合う領域において解像された前記微細構造を、隣接した画像の重なり合う領域の中の対応する前記微細構造とフィッティングさせるステップが、一連の隣接した画像のペアについて順次実行され、
それぞれの隣接した画像のペアについて、前記フィッティングすることにより、前記ペアの画像間で前記試験対象物の相対位置および向きを関連付けする剛体パラメータの中間的なセットが生成される、前記剛体パラメータのセットを決定するステップと、
グローバル最適化を実行して、前記剛体パラメータの中間的なセットと最も良く適合する剛体パラメータの最終的なセットを取得するステップと、
前記剛体パラメータの最終的なセットに基づいて前記複数の画像を組み合わせて、前記非平坦面の合成画像を生成するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記非平坦面が、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれ有する少なくとも2つの場所を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、少なくとも2つの平行移動座標および少なくとも2つの角度座標を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、少なくとも5つの座標を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、6つの座標を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、少なくとも2つの場所の向きを互いに関連付けするのに十分であり、
前記少なくとも2つの場所は、10度超、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれ有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、3つの直交回転角度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の3次元画像の異なる領域は、
10度超、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれ有する少なくとも2つの場所を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記顕微鏡で前記画像を取得するステップは、
前記場所が、前記顕微鏡の軸に実質的に平行な法線をそれぞれ有するように、前記試験対象物を順次配向するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記顕微鏡は、
前記試験対象物を保持し、前記場所の法線を順次前記顕微鏡の軸に実質的に平行にするのに十分な配向範囲にわたって前記試験対象物を配向するように構成されたマウントを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記合成画像の領域が、前記顕微鏡の視野よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試験対象物が、連続する画像について前記顕微鏡に対して平行移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試験対象物が、連続する画像について前記顕微鏡に対して回転する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記試験対象物が、前記非平坦面の曲率に基づいて回転して、前記顕微鏡を使用して結像するために前記顕微鏡の視野で前記非平坦面の一部を適切に配向する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも前記画像のいくつかについての前記試験対象物の相対回転が、10°以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記非平坦面が、1nm以下のRMS表面粗度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記非平坦面が、光学的に平滑な表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記試験対象物が、非球面レンズである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記剛体パラメータのセットを決定するステップは、
解像された微細構造をフィッティングする前に前記複数の3次元画像を較正するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の3次元画像を較正するステップは、
前記顕微鏡を使用して参照ミラーの画像を取得するステップと、
前記3次元画像のそれぞれから前記参照ミラーの画像を差し引くステップと、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の3次元画像を取得するステップは、
多素子検出器を使用して前記画像を検出するステップを含み、
前記複数の3次元画像を較正するステップは、
前記多素子検出器において、あらかじめ決められた周期的な表面パターンを備える参照サンプルの画像を検出するステップと、
測定された前記参照サンプルの画素パターンの誤差を決定するステップと、
前記画素パターンの誤差について前記3次元画像のそれぞれを補償するステップと、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の3次元画像を取得するステップは、
多素子検出器を使用して前記画像を検出するステップを含み、
前記複数の3次元画像を較正するステップは、各3次元画像に対して、
2つの直交する方向に沿った表面傾斜を前記3次元画像の各画素について決定するステップと、
対応するリトレース誤差関数を前記3次元画像の各画素について計算するステップと、
前記3次元画像の対応する前記画素から前記リトレース誤差関数を差し引くステップと、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
光学顕微鏡を使用して、前記複数の3次元画像を取得するステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項24】
コヒーレンス走査干渉法顕微鏡、位相シフト干渉法顕微鏡、共焦点顕微鏡、焦点走査顕微鏡、デジタルホログラフィ顕微鏡、構造化照明顕微鏡、またはクロマティック共焦点顕微鏡を使用して、前記複数の3次元画像を取得するステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の3次元画像を取得するステップは、
コヒーレンス走査干渉法を使用して、前記非平坦面の異なる領域のそれぞれのトポグラフィマップを取得するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の3次元画像を取得するステップは、
スタイラスを使用して、前記非平坦面の異なる領域のそれぞれのトポグラフィマップを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記合成画像が3次元画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
試験対象物の非平坦面の合成画像を生成するためのシステムであって、
顕微鏡であって、前記非平坦面上の、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である微細構造を3次元で結像するのに十分な解像度を有する前記顕微鏡と、
前記顕微鏡に対して前記試験対象物を配列するためのステージであって、前記顕微鏡に対して少なくとも1つの回転自由度を有し、かつ、前記顕微鏡に対して前記試験対象物の角度の向きを変えるために、10°以上の角度範囲を有する前記ステージと、
前記顕微鏡と通信する電子プロセッサと、を備え、
動作中に、前記顕微鏡が前記非平坦面の異なる領域の複数の3次元画像を取得し、
各画像が、少なくとも1つの隣接した画像と重なり合う領域を含み、
前記画像の少なくともいくつかが、対物レンズに対する前記試験対象物の異なる角度の向きについて取得され、
前記電子プロセッサが、
前記顕微鏡から前記画像を受け取ること、
各重なり合う領域について、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である対応する微細構造を特定すること、
前記画像のそれぞれについて、前記試験対象物の位置および向きを共通の座標系に関連付けする剛体パラメータのセットを決定することであって、
前記剛体パラメータのセットが、
前記画像の重なり合う領域の解像された前記微細構造を、一連の隣接した画像のペアについて、隣接した画像の重なり合う領域の対応する前記微細構造とフィッティングすることであって、それぞれの隣接した画像のペアについて、前記フィッティングにより、前記ペアの画像間で前記試験対象物の相対位置および向きを関連付けする剛体パラメータの中間的なセットが生成される、前記フィッティングすること、
グローバル最適化を実行して、前記剛体パラメータの中間的なセットと最も良く適合する剛体パラメータの最終的なセットを取得すること、によって決定される、前記剛体パラメータのセットを決定すること、
前記剛体パラメータの最終的なセットに基づいて前記複数の画像を組み合わせて前記非平坦面の合成画像を生成すること、を実行するようにプログラムされる、システム。
【請求項29】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、少なくとも2つの平行移動座標および少なくとも2つの角度座標を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、少なくとも5つの座標を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、6つの座標を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記剛体パラメータの最終的なセットが、前記非平坦面の少なくとも2つの場所の向きを互いに関連付けするのに十分であり、
前記少なくとも2つの場所は、10度超、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれ有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記試験対象物の非平坦面の場所が、前記顕微鏡の測定軸に実質的に平行な法線をそれぞれ有するように、前記試験対象物を順次配向することにより、前記顕微鏡が前記複数の3次元画像を取得するように構成された、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記顕微鏡および前記ステージが、前記試験対象物上の場所の法線を前記顕微鏡の光軸に実質的に平行にするのに十分な配向範囲にわたって前記試験対象物を順次配向するように構成された、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記顕微鏡および前記ステージが、前記複数の3次元画像の連続する画像間で互いに対して前記試験対象物を平行移動させるように構成された、請求項28に記載のシステム。
【請求項36】
前記ステージが、前記顕微鏡に対して前記試験対象物を平行移動させるための1つまたは複数のアクチュエータを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記顕微鏡および前記ステージが、前記複数の3次元画像の連続する画像間で互いに対して前記試験対象物を回転させるように構成された、請求項28に記載のシステム。
【請求項38】
前記ステージが、前記顕微鏡に対して前記試験対象物を回転させるための1つまたは複数のアクチュエータを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記顕微鏡が、前記複数の3次元画像を検出するための多素子検出器をさらに備え、
前記電子プロセッサが、前記多素子検出器によって検出された前記複数の3次元画像を較正するように構成された、請求項28に記載のシステム。
【請求項40】
前記顕微鏡が光学顕微鏡である、請求項28に記載のシステム。
【請求項41】
前記顕微鏡が、CSI顕微鏡である、請求項28に記載のシステム。
【請求項42】
前記顕微鏡が、PSI顕微鏡、共焦点顕微鏡、焦点走査顕微鏡、デジタルホログラフィ顕微鏡、構造化照明顕微鏡、またはクロマティック共焦点顕微鏡である、請求項28に記載のシステム。
【請求項43】
前記顕微鏡が、前記試験対象物のトポグラフィマップを測定するように構成されたスタイラスを備える、請求項28に記載のシステム。
【請求項44】
前記顕微鏡が、
前記微細構造を検出するように構成された第1のセンサと、前記試験対象物の表面形状を検出するように構成された第2のセンサと、を備える、請求項28に記載のシステム。
【請求項45】
前記合成画像が、3次元画像である、請求項28に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非球面およびその他の非平坦面のトポグラフィの測定に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化されたカメラを利用するモバイルデバイス(例えば携帯電話)の製造および販売が、近年著しく増加している。このようなカメラには、通常小型の非球面レンズを含むレンズアセンブリが必要である。非球面レンズは、片面あるいは両面の形状が、球面状でも円柱状でもないレンズを含む。非球面レンズは、金型をダイヤモンド旋削し、次に、射出成形してこれらの金型のプラスチック複製品を作ることにより大量生産することができる。現在の業界の慣習では、機械的な座標測定機(CMMs:coordinate measuring machines)を用いて金型およびレンズを測定することが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
携帯電話のレンズアセンブリに見られるような、非球面レンズの表面(およびその他の非平坦面)の光学的測定は、非常に難度が高い場合がある。携帯電話のレンズアセンブリで現在使用される非球面の多くは、ガルウィング型またはパンケーキ型の形状である。これらは表面傾斜が大きく、かつ/または表面積が比較的大きいため、このようなレンズは、従来の光学的計測学の技法では十分にプロファイリングすることができない。干渉縞投影システム、コヒーレンス走査干渉法、位相シフト干渉法のような技法、シャックハルトマン(Shack−Hartmann)センサなどの波面センサまたはシヤリング干渉計などの技法は、表面のトポグラフィの空中2
1/2−d(2.5次元)測定結果を送達することができるが、これらの技法に基づいたシステムは、傾斜の受け入れ範囲が制限されるだけでなく、視野もまた制限される。この「2
1/2−d測定結果」という用語は、本明細書では、1つの測定結果、例えば高さ値を横方向位置の所与のグリッドの各点に割り当てる測定結果を指す。光学プロファイラでは、例えば、傾斜性能は、多くの要因のなかでも特に、結像システムの受け入れアパーチャによって制限される。一般的に、これは1mmの小視野の場合でさえ、数度しかない。表面の多くは、計器の視野範囲もしくは傾斜範囲のいずれか、またはその両方の範囲を超える。モバイルデバイス用非球面の光学プロファイリング作業は、さらに複雑になる。なぜなら、非球面と、レンズアセンブリ内の非球面の集積、整合に用いられる周囲の補助面との間の関連する測定結果の提供が必要な場合が多いからである。場合によっては、光学プロファイリングシステムの視野を拡張することが可能であるが、その代償として傾斜の受け入れが狭くなり、その逆の場合には逆の結果となる。最も難度の高い表面には、大きな視野および高い受け入れ角度の両方が必要である。そのため、表面全体を測定するには、通常1回の空中測定では十分ではない。
【0004】
計器の視野を小さくしたり、傾斜範囲を広げたりすることによって、カメラの充分に満たされた視野に相当する、試験対象物の表面に関するデータの連続的なパッチを測定する妥協点を見出すことが可能である。もし、これらの測定された表面パッチ間に十分な重なりがあれば、複数の表面の視像をソフトウェアにおいて融合することにより、計器の視野を大きくすることができる。それでも、表面傾斜が急であり、および/または表面が非常に平滑である場合には、やはり非平坦面のプロファイリングが複雑になる場合がある。特に、傾斜が急であれば、測定の不確かさの要件が厳格な用途では、試験対象物の正確な相対的平行移動座標および/または回転座標を提供することは困難、かつ費用がかかる。さらに、隣接した表面パッチの特徴部分間のマッチング誤差は、たとえ数ナノメートルでも、相当な誤差が生じる場合がある。特に、測定されている表面の粗度が低い場合(例えば傷のない研磨された表面)では、これは懸念される事柄である。なぜなら、位置マーカとして使うことができる引っ掻き傷のような傷がまったくなく、隣接した画像の向きの決定が困難になるからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の主題は、高解像度を有する領域面トポグラフィ顕微鏡を、最大6つまでの自由度に沿って、かつ、大きな角度範囲(例えば約30°以上のチップチルト(tip−tilt)範囲)にわたって試験対象物を顕微鏡に対して相対的に動かすことが可能なステージングと組み合わせることにより、上記課題に対処する。顕微鏡と通信する電子プロセッサが、試験対象物の表面の、異なる領域の複数の3次元画像を単一の大きな表面の画像に組み合わせる。ステージングによって角度範囲が大きくなり、自由度が追加されることにより、試験対象物の非平坦面に対して結像システムの傾斜の受け入れを大きくすることができる。さらに、顕微鏡の横方向の解像度が高いことにより、研磨された表面の重なり合う画像の場合であっても、共通の高周波表面特徴部分(例えば、結像システムの逆解像度と同程度の空間周波数を有する表面特徴部分)を識別することによって組み合わせることができる。実際、場合によっては、試験対象物の最終的な合成画像は、超精密ステージ座標を必要とせずに得ることができる。加えて、画像および/またはシステムを慎重に較正、補償することで、高周波特徴部分の正確なマッチングが保証される。
【0006】
概して、いくつかの態様では、本開示の主題は、領域トポグラフィ測定顕微鏡と、トポグラフィ測定顕微鏡に対して試験対象物の位置および向きを調節するための機械的ステージングと、データ処理ユニットと、を含む装置において具体化することができる。トポグラフィ測定顕微鏡は、表面形状、湾曲面の微細構造および/または表面のうねりの両方を見るのに十分な横方向の解像度を有する。微細構造は、通常は表面の粗度および性状に対応付けられたトポグラフィレジームにある。
【0007】
他の態様では、本開示の主題は、顕微鏡の視界内に試験対象物を配置した後に、試験対象物表面の第1の部分またはサブアパーチャの領域トポグラフィを測定するステップを含む方法において具体化することができる。続いて、機械的ステージングを用いて、試験対象物の相対位置および向きが、トポグラフィ測定顕微鏡に対して調節される。次に、第1のサブアパーチャとは異なる試験対象物表面の第2の部分またはサブアパーチャの領域トポグラフィが、測定される。このプロセスは、2つ以上のサブアパーチャに対して繰り返すことが可能で、その結果、部分的に重なり合っているサブアパーチャのトポグラフィ測定結果のライブラリが得られることになる。次のステップでは、データ処理ユニットが、重なり合う領域におけるサブアパーチャの測定結果間の微細構造トポグラフィ上の差異を部分的に最小化する方法を用いて、部分的に重なり合っているサブアパーチャのトポグラフィ測定結果を分析して、剛体パラメータのセットを決定する。次に、データ処理ユニットは、剛体パラメータのセットをサブアパーチャのトポグラフィ画像と一緒に組み合わせ、部品表面の最終的な3次元(3D)表面トポグラフィマップを生成する。
【0008】
概して、別の態様では、本開示の主題は、試験対象物非平坦面の異なる領域の複数の3次元画像であって、少なくとも1つの隣接した画像と重なり合う領域をそれぞれが含む画像を、顕微鏡であって、非平坦面上の、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である微細構造を3次元で結像するのに十分な解像度を有する顕微鏡を使用して取得するステップと、画像のそれぞれについて、画像の試験対象物の位置および向きを共通の座標系に関連付けする剛体パラメータのセットであって、画像の重なり合う領域において解像された微細構造を、隣接した画像の重なり合う領域の対応する微細構造とフィッティングすることによって決定される剛体パラメータのセットを決定するステップと、剛体パラメータのセットに基づいて複数の画像を組み合わせて、表面の合成画像を生成するステップと、を含む方法において具体化することができる。
【0009】
概して、別の態様では、本開示の主題はシステムであって、顕微鏡であって、試験対象物の非平坦面上の、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である微細構造を3次元で結像するのに十分な解像度を有する顕微鏡と、顕微鏡に試験対象物を配列するためのステージであって、顕微鏡に対して少なくとも1つの回転自由度を有し、かつ、顕微鏡に対して試験対象物の角度の向きを変えるために、10°以上の角度範囲を有するステージと、顕微鏡と通信する電子プロセッサと、を備えるとともに、動作中に、顕微鏡が非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得し、各画像が少なくとも1つの隣接した画像と重なり合う領域を備え、画像の少なくともいくつかが、対物レンズに対する試験対象物の異なる角度の向きについて取得され、電子プロセッサが顕微鏡から画像を受け取り、かつ、画像のそれぞれについて、試験対象物の位置および向きを共通の座標系に関連付けする剛体パラメータのセットを決定するようにプログラムされ、剛体パラメータのセットが、画像の重なり合う領域の解像された微細構造を隣接した画像の重なり合う領域の対応する微細構造とフィッティングして、剛体パラメータのセットに基づいて複数の画像を組み合わせて表面の合成画像を生成することによって決定されるシステムにおいて具体化することができる。
【0010】
装置、方法およびシステムの様々な実施態様が可能である。例えば、いくつかの実施態様では、非平坦面の異なる領域の複数の画像は、3次元画像である。いくつかの実施態様では、合成画像は、3次元画像である。
【0011】
いくつかの実施態様では、領域面トポグラフィ顕微鏡は、本明細書では光学プロファイラと呼ばれる、位相シフト干渉法(PSI:phase shifting interferometry)顕微鏡、コヒーレンス走査干渉法(CSI:coherence−scanning interferometry)顕微鏡、共焦点顕微鏡、焦点走査顕微鏡、デジタルホログラフィ顕微鏡、構造化照明顕微鏡、またはクロマティック共焦点顕微鏡のような光学機器を含む。
【0012】
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、断面のプロファイルではなく領域面トポグラフィを測定することができるスタイラス式(stylus−type)計器を含む。
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、常に最適焦点位置でデータを取得するように構成された光学機器を含む。
【0013】
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、可視波長で、または他の選択肢として紫外線波長もしくは赤外線波長で動作する光学機器を含む。
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、幅1〜10ミクロンおよび表面高さ0.1〜10nmの特徴部分を十分測定できるだけの感度を有する。このような値は、約0.4ミクロンから0.8ミクロンまでの可視波長において光学的に平滑な表面または研磨された表面として一般に理解されているものと矛盾しない。
【0014】
いくつかの実施態様では、顕微鏡は2つ以上のセンシング技術を組み込んでおり、例えば、1つの技術を用いて微細構造を測定または検出し、別の技術を用いて表面形状を測定または検出する。
【0015】
いくつかの実施態様では、ステージングは、1つの運動軸、例えば回転軸、または横方向の変位を回転運動と組み合わせた数個の運動軸を有する。
いくつかの実施態様では、ステージングは、部品だけ、顕微鏡だけを調節するか、または、部品および顕微鏡の両方を調節する。
【0016】
いくつかの実施態様では、ステージングは、光学エンコーダまたは干渉計のような追加の計測学を組み込んで、精度を向上させる。
いくつかの実施態様では、データ処理は、ステージ位置情報ではなく顕微鏡トポグラフィ画像に依拠して、最終的な3D表面マップを生成する。
【0017】
いくつかの実施態様では、データ処理は、ステージ位置情報と共に顕微鏡トポグラフィ画像に依拠して、最終的な3D表面マップを生成する。
いくつかの実施態様では、方法は、分離した表面を測定し、それらを寸法的に互いに関連付けするステップを含む。例えば、透明な物体の後面に対して前面を、または部品の操作面に対して取り付け面を関連付けする。
【0018】
いくつかの実施態様では、方法は、系統誤差を補償する1つまたは複数の較正ステップを含む。
いくつかの実施態様では、データ処理は、すべての測定結果の同時グローバルフィットを含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、データ処理は、1つの測定結果と次の測定結果とのシーケンシャルフィットを含み、その結果、最終的な3Dトポグラフィが得られることになる。
いくつかの実施態様では、データ処理は、重なり合う測定結果のペアの間のフィッティングを含み、その結果、生じた剛体パラメータはグローバル最適化を受ける。
【0020】
いくつかの実施態様では、試験対象物表面のトポグラフィは、平坦面、球面、非球面および自由曲面表面を含む。
いくつかの実施態様では、試験対象物のサイズは、任意の1次元の最大サイズとして約0.1mmから約10mmまでを有する微視的であるか、または任意の1次元の最大サイズとして約10mmから約1000mmまでを有する巨視的である。
【0021】
いくつかの実施態様では、非平坦面は、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれが有する少なくとも2つの場所を含む。
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットは、少なくとも2つの平行移動座標および少なくとも2つの角度座標を含む。
【0022】
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットは、少なくとも5つの座標を含む。
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットは、6つの座標を含む。
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットは、非平坦面の少なくとも2つの場所であって、10度超、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれが有する少なくとも2つの場所の向きを互いに関連付けするのに十分である。
【0023】
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットは、3つの直交回転角度を含む。
いくつかの実施態様では、非平坦面の異なる領域の複数の画像の異なる領域は、10度超、20度超、30度超、45度超、または60度超である角度を形成する法線をそれぞれが有する少なくとも2つの場所を含む。顕微鏡で画像を取得するステップは、その場所が、顕微鏡の軸に実質的に平行な法線をそれぞれ有するように、その試験対象物を順次配向するステップを含むことができる。顕微鏡は、試験対象物を保持し、その場所の法線を順次顕微鏡の軸に実質的に平行にするのに十分な配向範囲にわたって試験対象物を配向するように構成されたマウントを含むことができる。いくつかの実施態様では、顕微鏡およびステージは、試験対象物上の場所の法線を順次顕微鏡の光軸に実質的に平行にするのに十分な配向範囲にわたって試験対象物を配向するように構成されている。いくつかの実施態様では、顕微鏡およびステージは、非平坦面の異なる領域の複数の画像の連続する画像間で互いに対して試験対象物を平行移動させるように構成されている。ステージは、顕微鏡に対して試験対象物を平行移動させるための1つまたは複数のアクチュエータを含むことができる。いくつかの実施態様では、顕微鏡およびステージは、複数の画像の連続する画像間で互いに対して試験対象物を回転させるように構成されている。ステージは、顕微鏡に対して試験対象物を回転させるための1つまたは複数のアクチュエータを含むことができる。
【0024】
いくつかの実施態様では、合成画像の領域が、顕微鏡の視野よりも大きい。
いくつかの実施態様では、試験対象物は、連続する画像について顕微鏡に対して平行移動する。
【0025】
いくつかの実施態様では、試験対象物は、連続する画像について顕微鏡に対して回転する。
いくつかの実施態様では、試験対象物は、非平坦面の曲率に基づいて回転して、顕微鏡を使用して結像するために顕微鏡の視野で非平坦面の一部を適切に配向する。
【0026】
いくつかの実施態様では、少なくとも画像のいくつかについての試験対象物の相対的回転が、10°以上である。
いくつかの実施態様では、非平坦面が、1nm以下のRMS表面粗度を有する。
【0027】
いくつかの実施態様では、非平坦面は、光学的に平滑な表面である。
いくつかの実施態様では、試験対象物は、非球面レンズである。
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットを決定するステップは、解像された微細構造をフィッティングする前に非平坦面の異なる領域の複数の画像を較正するステップを含む。複数の画像を較正するステップは、顕微鏡を使用して参照ミラーの画像を取得するステップと、非平坦面の領域の画像のそれぞれから参照ミラー画像を差し引くステップと、を含むことができる。非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得するステップは、多素子検出器を使用して画像を検出するステップを含むことができるとともに、複数の画像を較正するステップは、多素子検出器において、あらかじめ決められた周期的な表面パターンを備える参照サンプルの画像を検出するステップと、測定された参照サンプルの画素パターンの誤差を決定するステップと、画素パターンの誤差について画像のそれぞれを補償するステップと、を含む。非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得するステップは、多素子検出器を使用して画像を検出するステップを含むことができるとともに、複数の画像を較正するステップが、各画像について、2つの直交する方向に沿った表面傾斜を画像の各画素について決定するステップと、対応するリトレース誤差関数を画像の各画素について計算するステップと、画像の中の対応する画素からリトレース誤差関数を差し引くステップと、を含む。
【0028】
いくつかの実施態様では、方法は、光学顕微鏡を使用して非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得するステップを含む。
いくつかの実施態様では、方法は、コヒーレンス走査干渉法顕微鏡、位相シフト干渉法顕微鏡、共焦点顕微鏡、焦点走査顕微鏡、デジタルホログラフィ顕微鏡、構造化照明顕微鏡、またはクロマティック共焦点顕微鏡を使用して、非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得するステップを含む。
【0029】
いくつかの実施態様では、非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得するステップは、コヒーレンス走査干渉法を使用して、非平坦面の異なる領域のそれぞれのトポグラフィマップを獲得するステップを含む。
【0030】
いくつかの実施態様では、非平坦面の異なる領域の複数の画像を取得するステップは、スタイラスを使用して非平坦面の異なる領域のそれぞれのトポグラフィマップを測定するステップを含む。
【0031】
いくつかの実施態様では、剛体パラメータのセットを決定するステップは、画像の重なり合う領域を横断して解像された微細構造のグローバルフィットを適用して、各画像について最適化された剛体パラメータのセットを得るステップを含む。グローバルフィットを適用するステップは、複数の画像の重なり合う領域を横断して解像された微細構造のベストフィットを得るステップを含むことができる。
【0032】
いくつかの実施態様では、画像の重なり合う領域において解像された微細構造を、隣接した画像の重なり合う領域の中の対応する微細構造とフィッティングさせるステップは、一連の隣接した画像のペアについて順次実行される。それぞれの隣接した画像ペアについて、フィッティングするステップにより、ペアの画像間で試験対象物の相対位置および向きを関連付けする剛体パラメータの中間的なセットが生じ、かつ、剛体パラメータのセットを決定するステップが、グローバル最適化を実行して、パラメータの中間的なセットをベストマッチさせる剛体パラメータの最終的なセットを得るステップをさらに含むことができる。
【0033】
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、非平坦面の異なる領域の複数の画像を検出するための多素子検出器を含むとともに、プロセッサは、多素子検出器によって検出された複数の画像を較正するように構成される。
【0034】
いくつかの実施態様では、電子プロセッサは、複数の画像の重なり合う領域を横断して解像された微細構造のグローバルフィットを適用して、各画像について最適化された剛体パラメータのセットを得るようにプログラムされている。電子プロセッサは、複数の画像の重なり合う領域を横断して解像された微細構造のベストフィットを得るようにプログラムすることができる。
【0035】
いくつかの実施態様では、電子プロセッサは、画像の重なり合う領域において解像された微細構造を、一連の隣接した画像のペアについて、隣接した画像の重なり合う領域の対応する微細構造とシーケンシャルフィッティングするようにプログラムされ、それぞれの隣接した画像ペアについて、このフィッティングにより、ペアの画像間で試験対象物の相対位置および向きを関連付けする剛体パラメータの中間のセットが生じ、電子プロセッサが、グローバル最適化を実行して、パラメータの中間的なセットをベストマッチさせる剛体パラメータの最終的なセットを得るようにさらにプログラムされる。
【0036】
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、微細構造を検出するように構成された第1のセンサと、試験対象物の表面形状を検出するように構成された第2のセンサと、を含む。
1つまたは複数の実施形態の詳細が添付の図面および以下の説明に示される。その他の特徴および利点は説明、図面および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】コヒーレンス走査顕微鏡の一例を図示する概略図である。
【
図2】顕微鏡の対物レンズのヘッドの真下のスタック型回転ステージの一例を図示する概略図である。
【
図3】試験対象物を結像し、試験対象物の3D表現を生成するためのプロセスフロー300を描くフローチャートである。
【
図4】光学プロファイラのセンサヘッドおよび/または試験対象物ステージの回転経路の一例を図示する概略図である。
【
図5】グローバルメリット関数および表面のトポグラフィマップの最適化を使用した、3Dスティッチングの原理を図示する概略図である。
【
図6】実際の試験対象物サンプルについてのスティッチングのフィッティング品質を示す、実験から得られた相互相関プロットである。
【
図7】本明細書に開示された技法を使用してプロファイリングすることが可能なレンズの一例を図示する概略図である。
【
図8】微細構造を検出するための複屈折顕微鏡を、全体的形状を高速で測定するための干渉縞投影顕微鏡と組み合わせたシステムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
高い曲率を示す表面領域を有する試験対象物を結像するために、光学プロファイラなどの領域面のトポグラフィ顕微鏡の視野を小さくすることにより、該プロファイラの傾斜の受け入れを大きくすることができる。試験対象物が、同様に小さくした視野よりも大きい表面積もまた有する場合には、試験対象物表面全体の画像は、複数の領域を小さくした視野で結像(「表面パッチ(surface- patches)」または「サブアパーチャ(sub-aperture)」)し、電子プロセッサを使用して、測定された画像を1つに融合することにより得られ、これにより、計器の視野を人為的に増加させる。
【0039】
試験対象物の様々なサブアパーチャ画像の測定結果を得るには、試験対象物の表面上の様々な位置が表面に関して適切なセンサの向きで測定されるように、顕微鏡のセンサヘッドに対して試験対象物を操作することが必要である。適切なステージングおよび専用の再構成アルゴリズムを用いて、この手法は、従来の光学プロファイラ技法に関連した視野および傾斜の制限を克服することができる。すなわち、表面の幾何学的配置が半球を越えて延在していても、2
1/2−dデータだけを送達する計器を用いて測定が可能になる場合がある。
【0040】
この原理の一例は、
図1に示されるCSI顕微鏡100のような干渉顕微鏡を用いて説明することができる。
図1のCSI顕微鏡100のような干渉結像システムは、測定対象となっている表面から反射される測定波面を、参照表面から反射される参照波面と組み合わせて干渉縞を生成する。干渉パターンの強度プロファイルの空間的変動は、参照表面に対する物体表面のプロファイルの変動により生じた、組み合わされた測定波面と参照波面との間の位相差に相当する。測定された位相差に基づいて、干渉結像システムを用いて、薄膜などの複雑な表面構造、異種材料の離散構造、または干渉顕微鏡の光学解像度では十分に解像されない離散構造を有する物体の表面トポグラフィおよび/または他の特徴を測定する。
【0041】
結像システムの参照区間と測定区間との間の光路長差(OPD:optical path length difference)を走査して、カメラの画素それぞれについて走査干渉信号を生成する。特定の時点についてカメラを横断して生成された干渉パターンは、干渉像に相当する。低コヒーレンス走査干渉計では、光路長差は、干渉波面のコヒーレンス長と同等の範囲、または干渉波面のコヒーレンス長よりも大きい範囲にわたって走査される。制限されたコヒーレンス長は、例えば、白色光源を用いることによって、走査干渉結像システムで生成することができる。これは、走査白色光干渉法(SWLI:scanning white light interferometry)、またはさらに一般的には、コヒーレンス走査干渉法と呼ばれる。代表的なCSI信号は、ゼロOPD位置付近に局在化される数個の縞である。この信号は典型的に、釣鐘形の縞コントラスト包絡線を有する正弦波の搬送波変調(「縞」)によって特徴付けられる。CSI結像システムでは、最適焦点の位置は通常、縞包絡線のピークまたは中心、すなわちOPDがゼロである位置に一致する。
【0042】
図1に示されるCSI顕微鏡100は、ミロー(Mirau)型の干渉結像システムである。本例の目的上、
図1のy軸は、紙面(page)に対して垂直であると仮定される。光源モジュール105が照明光106をビームスプリッタ140に供給し、ビームスプリッタ140は、偏光光学系180を介して、照明光106をミロー型干渉対物レンズアセンブリ108に誘導する。平面145は、アセンブリ108の瞳面に相当する。アセンブリ108は、測定対物レンズ150と、その小さな中央部に反射コーティングを有し、参照ミラー115を規定する参照平面112と、ビームスプリッタ113と、を含む。動作中に、対物レンズ150が、参照平面112を介して試験対象物109に向かって照明光を集束する。ビームスプリッタ113が、集束光の第1の部分を参照ミラー115に反射して参照光122を規定し、集束光の第2の部分を試験対象物109に透過して測定光124を規定する。次に、ビームスプリッタ113は、試験対象物109から反射された(または散乱された)測定光を参照ミラー115から反射された参照光と再度組み合わせ、対物レンズ150および結像レンズ130が、組み合わされた光を結像して検出器(例えば多素子CCD、またはCMOS検出器)125上で干渉させる。
【0043】
検出器125は、多素子(すなわち多画素)カメラであり、試験対象物および参照ミラー上の種々の点に対応する測定光と参照光との間の干渉を独立して測定する(すなわち、干渉パターンについての空間解像度を与える)。検出器125は、試験対象物の相対的な位置が走査されているときに、検出器の1つまたは複数の画素における光学的干渉の強度を測定し、こうした情報を分析のためにコンピュータ128に送る。分析の間、コンピュータ128(または電子プロセッサを有する他のシステム)は、波長によって変わる試験表面の複素反射率を、走査干渉信号から決定する。例えば、各検出素子における走査干渉信号をフーリエ(Fourier)変換し、波長に関する信号の大きさおよび位相を求めることができる。この信号の大きさおよび位相情報から、コンピュータ128は、サンプルに関する高さ情報を得る。次に、各検出素子からの高さ情報は、結像された領域についての高さ/トポグラフィマップに含まれる。
【0044】
光源モジュール105は、光源(例えば、点光源または空間的に延長された光源)110と、レンズ102および103によって形成される望遠鏡と、レンズ102の後部焦点面(それはレンズ103の前部焦点面と一致する)に配置される絞り120と、を含む。この配列は、光源をミロー型干渉対物レンズアセンブリ108の瞳面145上に結像し、それはケーラー(Koehler)型照明の一例である。絞り120のサイズは試験対象物109上の照明野のサイズを制御する。他の実施形態では、光源モジュールは、光源が試験対象物上に直接結像される配列を含むことができ、それはクリティカル照明として知られている。
【0045】
他の選択肢としての走査干渉結像システムは、例えば、マイケルソン(Michelson)型およびリンニク(Linnik)型干渉対物レンズを含む。ミロー型の幾何学的配置とは対照的に、リンニク型およびマイケルソン型干渉対物レンズのいずれにおいても、参照ビームの経路は、試験ビームの経路に垂直である。リンニク型の場合には、試験ビームと参照ビームとを分離し再度組み合わせるビームスプリッタが、測定対物レンズおよび参照対物レンズに先立って設置される。マイケルソン型の場合には、試験ビームと参照ビームとを分離し再度組み合わせるビームスプリッタが、単一の対物レンズの後に続く。
【0046】
走査干渉結像システムは、次の特徴のいずれかを含んでもよい。いくつかの実施形態では、走査干渉信号の生成に使用される光が白色光源、またはより一般的には、スペクトル的に広帯域の光源に基づいている。他の実施形態では、光源が、単色光源であるか、またはより一般的には、スペクトル的に狭帯域の光源であってもよい。光源の例としては、発光ダイオードまたはレーザ、アーク灯、および白熱電球などの熱源が含まれる。様々な開口数(NA:numerical aperture)値を有する測定干渉対物レンズが、走査干渉結像システムにおいて使用される場合がある。例えば、干渉対物レンズは、約0.01超から約0.9までの間のNAを規定することができる。使用可能な干渉対物レンズの例としては、ガラス、油浸/水浸型および固浸型レンズが含まれる。光源によって供給される光は、非偏光か、または直線偏光、円偏光、構造化された偏光を含む偏光とすることができる。光は、電磁スペクトルの可視波長内、紫外線波長内または赤外線波長内とすることができる。いくつかの実施態様では、干渉結像システムは、試験対象物に入射する光および試験対象物から出ていく光にとって望ましい偏光を選択する偏光光学系を含むことができる。走査干渉結像システムについてのさらなる説明は、例えば、米国特許第7,106,454号明細書および米国特許第7,271,918号明細書に記載されており、それぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
CSI顕微鏡が
図1に示されているが、他の光学プロファイラを使用してもまたよい。光学プロファイラは、例えば、PSIを使用して試験対象物を結像する位相シフト干渉(PSI)顕微鏡、共焦点顕微鏡、焦点走査顕微鏡、デジタルホログラフィを使用して試験対象物を結像するデジタルホログラフィ顕微鏡、構造化照明顕微鏡、またはクロマティック共焦点顕微鏡を含んでもよい。いくつかの実施態様では、顕微鏡は、スタイラス式計器(例えば、原子力プローブ計器)であり、スタイラスを使用して、断面プロファイルではなく、領域面トポグラフィを測定することができる。使用される光学プロファイラは、試験部品表面上の、横方向の寸法が10ミクロン以下であり高さが10nm以下である微細構造を3次元で結像するのに十分な解像度を有することが好ましい。
【0048】
CSI顕微鏡100は、6つの異なる運動自由度に沿って顕微鏡対物レンズに対して試験対象物を配置するように構成することができる。この度合が異なる運動には、ピストン(例えば、z軸に沿った、試験対象物と対物レンズとの間のオフセット)、x平行移動、y平行移動、回転、xチルトおよびyチルトが含まれる。干渉顕微鏡100では、ピストン運動は、ミロー干渉対物レンズアセンブリ108に結合されたアクチュエータ/変換器(例えば、圧電変換器(PZT:piezoelectric transducer))107を使用して実現することができる。アクチュエータ/変換器107は、対物レンズ150の光軸に沿って試験対象物109に対してアセンブリ108全体を走査して、カメラの画素のそれぞれにおける走査干渉データを提供するように構成されている。この場合、ζは走査座標で、hは試験対象物の表面の相対的な高さである。あるいは、アクチュエータ/変換器は、アセンブリ108ではなく、試験対象物を保持するステージ170に結合され、その間に相対的な動きを与えることができる。他の実施形態では、走査は、対物レンズの光軸に沿って試験対象物に対して顕微鏡全体を動かす直線ステージによって行うことができる。さらなる実施形態では、走査は、対物レンズ150の光軸に沿って、参照ミラー115およびビームスプリッタ113の一方、または両方を対物レンズ150に対して動かすことにより行うことができる。変換器(例えば、CSI顕微鏡100に取り付けられたアクチュエータ/変換器、およびステージ170に取り付けられた変換器)をそれぞれ、コンピュータ128に結合することで、コンピュータ128が、変換器の速度および動作を制御することができるようになる。
【0049】
試験対象物ステージ170は、他の自由度に沿って試験対象物を平行移動させるように構成することができる。例えば、いくつかの実施態様では、試験対象物ステージ170は、スタック型ステージのセットを含むことができる。スタック型ステージはそれぞれ、1つまたは複数の異なる自由度に沿って試験対象物を動かすことが可能である。
図2は、回転対称表面サンプル206を測定する場合についての、スタック型ステージ200の一例を図示する概略図である。ここでは、スタック型ステージ200、およびステージに載せられたサンプルは、測定光208でサンプル206を照らすCSI顕微鏡の顕微鏡対物レンズヘッド108の真下に位置している。
図1の場合のように、x軸およびz軸は、紙面において伸びているが、一方y軸は、紙面の中へと、そして紙面の中から外へと(すなわち紙面に対する法線に沿って)伸びている。スタック型ステージ200は、第2の外側のステージ204に結合された第1の内側のステージ202を含む。内側のステージ202は、回転軸(
図2に示される概略図の平面に伸びるC軸、すなわち内側のステージ202の中心を通って伸びる線)を中心として部品を回転(R
θ)させることができる。内側のステージアセンブリ202は、外側の回転ステージ204上に載せられている。外側の回転ステージ204は、CSI顕微鏡100によって結像されている現在の表面パッチの法線を(B軸を中心として、すなわち
図2の紙面から外に伸びるy軸に平行に)回転(R
u)させることで、法線がセンサヘッド108を指すようにすることが可能になる。いくつかの実施態様では、アセンブリ200は、(例えば、x軸および/またはy軸に沿って)直線平行移動させる第3のステージを含むことで、ヘッドが試験対象物上の様々な半径方向の位置に対処できるようになる。アセンブリの各ステージ(例えば、内側のステージ202および外側のステージ204)は、作動用変換器を含むことができる。
【0050】
いくつかの実施態様では、
図2に示されるように、顕微鏡対物レンズヘッド108は、x軸および/またはy軸に沿って直線的に平行移動することが可能であるように構成される。例えば、いくつかの実施態様では、変換器を対物レンズヘッド108に据え付けて、変換器が、x軸および/またはy軸に沿って対物レンズ108を平行移動させることができるようにしてもよい。対物レンズヘッド108をz軸に沿って移動させ、表面を計器の高さ取り込み範囲内にすることもまた可能である。z軸に沿った対物レンズ108の平行移動は、x軸および/またはy軸に沿って平行移動させる変換器と同じ変換器によって行うことができる。あるいは、別個の変換器を使用してもよい。概して、試験対象物ステージおよび/または顕微鏡は、複数の自由度に沿って試験対象物を結像するように構成することができる。ステージは、顕微鏡に対する少なくとも1つの回転自由度を有し、顕微鏡に対する試験対象物の角度の向きを変えるために、10°以上の角度範囲を有することが好ましい。以下でさらに説明するように、様々な用途に対してステージの幾何学的配置の他の選択肢が実行可能である。
【0051】
顕微鏡対物レンズおよび試験対象物を互いに複数の自由度に沿って配置し、次に、走査顕微鏡を使用して、試験サンプルの複数の様々な表面パッチを結像する。例えば、
図1の顕微鏡100を参照すると、顕微鏡100の視界内に試験対象物を配置した後に、試験対象物表面の第1の部分(「第1の表面パッチ」)の領域のトポグラフィが、記録された干渉データから高さマップを得ることにより結像される。表面パッチの画像は、最適焦点の位置に相当する場所で得られる。次のステップでは、ステージングは、CSI顕微鏡100の対物レンズヘッド108に対して部品の相対位置および向きを、(例えば、試験対象物表面上の局所的な平坦領域の法線が対物レンズ108の光軸に平行に配向されるように)調節する。次のステップでは、顕微鏡は、第1の表面パッチとは異なる第2の表面経路の領域のトポグラフィを測定する。ここでは、第2の表面パッチは第1の表面パッチと部分的に重なり合っている。重なり合いの量は変えてもよく、例えば、2つの画像の重なり合いの約10%〜50%の間の量を含むことができる。このプロセスは、少なくとも2つの表面パッチについて繰り返すことが可能で、その結果、トポグラフィマップ/表面パッチ画像のライブラリが得られることになる。一旦表面パッチの画像が得られると、コンピュータ128または他の電子プロセッサは、表面パッチをさらに大きな画像へと組み合わせ(または「スティッチング(stitching)」)する。特に、コンピュータ128は、各画像のトポグラフィ測定結果を分析して、剛体パラメータ(rigid body parameter)のセットを決定および精緻化する。
【0052】
剛体パラメータは、画像の試験対象物の位置および向きを、グローバル座標系(例えば、最終的なスティッチングされた画像が表現されることになる座標系)に関連付けする。剛体パラメータの精緻化は、線形または非線形フィッティングルーチンを適用することにより達成することができ、これらのルーチンは、サブアパーチャ画像間の重なり合う領域のトポグラフィ上の差異を最小化することを目的として剛体パラメータを繰り返し修正する。他の選択肢として、または、上記フィッティングルーチンを補助する中間ステップとして、重なり合っているサブアパーチャの高周波数成分間の相関分析結果(相関結果の一例が
図6に示されている)に基づいて、可能性としては、平面フィッティングルーチンと組み合わせて剛体パラメータを精緻化してもよい。剛体パラメータは、平行移動座標(例えば、x座標、y座標、またz座標)および/また角度座標(例えば、ピッチ、ヨーおよびロール)を含んでもよい。いくつかの実施態様では、剛体座標は、少なくとも4つの座標(例えば、少なくとも2つの平行移動座標および少なくとも2つの角度座標)を含む。いくつかの実施態様では、剛体座標は、5つの座標(例えば、3つの平行移動座標および2つの角度座標)を含む。いくつかの実施態様では、剛体座標は、6つの座標(3つの平行移動座標および3つの角度座標)を含む。剛体パラメータのセットが、6つのパラメータの完全なセットよりも小さい実施態様は、ステージングに依拠して、1つまたは複数の自由度において十分に正確な動きを与えることができる。精緻化された剛体運動パラメータのセットに基づいて、コンピュータ128は、サブアパーチャのトポグラフィ画像を組み合わせて、部品表面の最終的な三次元(3D)または2
1/2Dの表面トポグラフィマップを生成する。
【0053】
原則として、ステージングが十分な精度で平行移動精度および回転移動が可能であるという前提で、画像の重なり合いが必要なスティッチングアルゴリズムを使用せずに、コンピュータ記憶装置のデータを融合させることが可能である。この手法は、測定の不確かさの要件が厳密でない用途、および/または他の要因によって達成可能な精度が制限される用途において、例えば、マクロ的な部品上の画素サイズが、例えば約100μm以上であれば、実現可能である場合がある。しかしながら、不確かさの要件が厳格な用途については、求められる座標を適切なステージングによって提供することは、ますます困難になり、かつ、ますます費用がかかってしまう。特定の顕微鏡用途については、画素は、せいぜい200nmかそれよりも小さく、数nmのマッチング誤差が、外見上問題となる場合がある。機械的ステージを集積してこの数の何分の1かに対する外部座標を提供することになれば、最高精度の空気軸受けおよびエンコーダシステムの場合でさえ技術的に非常に難しくなる。
【0054】
本発明者らは、現在利用可能な最高品質のスーパー研磨面であっても高周波の表面性状を示すことを認めた。このため、光学プロファイラ(例えば、干渉顕微鏡)の解像度が十分に高い場合には、光学プロファイラは、この高周波の表面性状を検出し、これを用いて、ステージングから得られる超精密座標はもとより、ステージングから得られるどんな座標にも依拠する必要なく、表面の複数の視像同士をスティッチングするための指標を提供することができる。これは、コンピュータ128または他の電子プロセッサを使用した副画素精度を用いて行うことができる。すなわち、コンピュータ128は、2つ以上の隣接したサブアパーチャ画像の同じ高周波特徴を識別し、この識別された特徴を用いて隣接した画像の適切な調節(例えば、平行移動、回転、チップまたはチルト)を決定し、画像同士をスティッチングするためのベストマッチを得る。例えば、いくつかの実施態様では、顕微鏡は、幅1〜10ミクロンおよび表面高さ0.1〜10nmの特徴部分を十分測定できるだけの感度を有する。このような値は、約0.4ミクロンから0.8ミクロンまでの可視波長において光学的に平滑な表面または研磨された表面として一般に理解されているものと矛盾しない。試験対象物の表面から得られる形状および高周波情報を用いて個々の表面パッチを組み立てることにより、本方法は、完全に自己参照的となり、すなわち、ステージングの位置決め/配向に関する情報が必要ではなくなる。もっと正確に言えば、トポグラフィマップから得られた情報だけを用いて、個々の表面マップを一緒に保持し、全体として表面を描写するスカフォード(scaffold)を再構成する。いくつかの実施態様(例えば、ごくわずかな表面特徴に依拠せずにトポグラフィ画像を互いに適合させる場合)では、試験対象物の最終的な表面マップを構成する際には、やはり電子プロセッサによってステージの位置決めに関する情報を用いてもよい。
【0055】
いくつかの実施態様では、顕微鏡は、2つ以上のセンシング技術を組み込んでいる。例えば、高周波の微細構造を検出するために、第1の検出技術を用いる一方で、別の検出技術を用いて試験対象物の表面形状、粗度および/またはうねりを検出する。表面粗度に特に感度の高いセンシング技術の例としては、位相差顕微鏡法、微分干渉差異顕微鏡検査法、位相変調たわみ測定法および焦点センシングが含まれる。表面形状の測定に好適な技術としては、前述した光学プロファイラ技術に加えて、干渉縞投影顕微鏡検査法、および赤外線走査顕微鏡検査法が含まれる。これらの技法のうちのいくつかについてのさらなる詳細は、例えば、M.プルタ(M.Pluta)著、「専門化された方法(Specialized Methods)」最先端光学顕微鏡検査法第2巻(Advanced Light Microscopy,Vol.2)、(エルゼビア社刊、アムステルダム、ワルシャワ、1989年(Elsevier,Amsterdam,Warsaw,1989))所収、「変調光を使用した非接触表面形状評価(NON−CONTACT SURFACE CHARACTERIZATION USING MOUDLATED ILLUMINATION)」と題するX.コロンナ デレーガ(X.Colonna De Lega)に対する米国特許出願公開第2012/0140243号明細書、および「赤外スキャニング干渉法による装置と方法(INFRARED SCANNING INTERFEROMETRY APPARATUS AND METHOD)」と題するX.コロンナ デレーガ(X.Colonna De Lega)らに対する米国特許第6,195,168号明細書に記載されており、それぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。表面形状、粗度、性状およびうねりに関する情報は、例えば、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)基準25178,4287、および10110に記載されている。
【0056】
デュアルセンサ技術の例示的な一実施形態として、
図8は、微細構造を検出するための複屈折顕微鏡1000と全体的な表面形状を高速で測定するための干渉縞投影顕微鏡とを組み合わせたシステムの一例を示す概略図である。
図8は、他の特徴の中でもとりわけ、2つの複屈折軸で図の平面に対して水平および垂直に配向された複屈折レンズ1010、コンピュータ制御の下で回転可能な直線偏光子1006、空間光変調器1050、焦点スキャナ1020、光源1015、ビームスプリッタ1060、および偏光移相器1040を示す。直線偏光について2つの向き、すなわち平面内の向き(1071)、および平面外の向き(1072)が示されている。
【0057】
干渉縞投影顕微鏡として動作する際に、コンピュータ制御1005が直線偏光子1006を回転させることで、平面内の偏光1071を有するビームだけがカメラへと通され、平面外の偏光ビーム1072は完全に拒絶されるようになる。対物レンズ1010の焦点走査時に、コンピュータ制御1005は、サンプル1090上に投影された干渉縞を生成するように空間光変調器1050に指示する。サンプル1090の画像が、これらの投影された干渉縞と共に、カメラ1099によって検出される。偏光移相器1040は作動していない。3D形状を生成するためのデータ取得および処理法は、「変調光を使用した非接触表面形状評価(Non−contact surface characterization using moudlated illumination)」と題するX.コロンナ デレーガ(X.Colonna De Lega)に対する米国特許出願公開第2012/0140243号明細書に詳述されている。この方法により、迅速な、通常はCSIよりも速い形状測定が可能になるが、低倍率で微細構造を検出するには高さ感度が不十分である。
【0058】
微細構造結像システムとして動作する際に、コンピュータ制御1005が直線偏光子1006を回転させて、図に対して垂直(1072)および水平(1071)両方の偏光を有するビームを組み合わせる。このためカメラ1099は、2つの画像を同時に見ており、これら2つの画像は、2つの異なる焦点構成、すなわち、1つは表面の正確な結像(1071におけるような図の平面内の偏光されたビーム)に相当する構成、そしてもう1つは完全にぼやけた(1072におけるような図の平面に垂直に偏光されたビーム)構成に相当し、互いに干渉し合う。コンピュータ制御1005は、直交偏光されているビーム1071および1072間の相対位相を変調するように偏光移相器1040に指示して、カメラ1099において干渉パターンが変調されるようにする。データ処理は、例えば、辻内(Tsujiuchi)らによる論文「表面プロファイリングのための二重集束レンズを使用した位相シフト共通路干渉法(Phase−shifting common−path interferometers using double−focus lenses for surface profiling)」(国際光工学会予稿集1720、133−141、1992年(Proc.SPIE 1720,133−141,1992))に記載されているように進行し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
上述したように、他の光学センシング技術を使用することが可能である。しかしながら、少なくとも以下の理由により、本明細書に開示したコヒーレンス走査干渉(CSI:coherence scanning interferometric)顕微鏡検査法が、光学プロファイリングプロセスに好適である。第1に、CSIは、球面状のくぼみを用いる干渉計の場合に一般的であるような、どの特定形状もデータから光学的に除去されていないことを含意する平坦と比較して測定された2
1/2−次元を送達するからである。第2に、原理として、CSI顕微鏡は常に最適焦点で各表面点を測定するからである。これは、CSIの自動焦点特性として知られている。このように部品の特徴が最適に解像され、これは特に、高空間周波数特徴を正確に取り込むために重要である。第3に、CSIにより、様々なインタフェースから生じる信号を分離することが可能になるからである。これは、(携帯電話レンズのような)透明または半透明のサンプルを測定する際に非常に重要である。大半の光学的技法には、被験レンズの後面からの反射という深刻な問題がある。この問題は、他の材料で後面を被覆することで反射を妨げることによってしか克服できない場合が多い。CSIを用いれば、この問題は、干渉信号を適切に処理することにより明解に解決され、その結果、被験サンプルの物理的な修正を必要とせずに後方反射を抑えることが可能になる。さらに、様々なインタフェースからの情報を同時に収集可能であることは、レンズを通して関連測定を実行することが可能になるので、他の機械類に勝る大きな利点となり得る。一例として、レンズの光軸に沿ってCSIを使用して、レンズの光学的厚さを片面から測定することができる。
【0060】
同一の表面の複数の視像をスティッチングする場合、合体させる前に個々のマップが可能な限り誤差がないようにすることにより、重なり合うデータ領域が、可能な限り矛盾がないようにするとよい。精度の高い測定結果を得るために、光学プロファイラシステムを慎重に較正、補償するとよい。したがって、トポグラフィマップ同士をスティッチングする前に、1つまたは複数の較正ステップに従ってデータを作成するとよい。CSIの場合には、顕微鏡較正は、少なくとも以下の静誤差源に対する較正を含むことができるが、これらに限定されない。
・参照ミラー表面形状の誤差:これらの誤差は、可能であれば平均化技法と共に基準平面を使用して、特徴付けることができる。最初に、参照ミラートポグラフィマップを入手する。次に、参照ミラートポグラフィマップは、測定された検出器データから差し引かれることにより、各CSI測定結果から誤差を除去する。
・歪み誤差/横方向の較正:歪みは、視野に依存する誤差であるが、瞳面には依存しない誤差であり、例えば、エッチングされた長方形状のウェルの厳密に周期的なグリッドのような、既知の周期的なパターン(横方向の較正基準)を測定することにより特徴付けることができる。このようなパターンのデータから、視野に依存する、パターン特徴が明らかな場所の横方向のシフトを計算して、後続のCSI測定結果をそれぞれこれらの誤差について訂正することが可能であり、その結果、歪みのない表面パッチが得られる。これらの計算とともに、計器の横方向の較正(すなわち物体空間内の画素間隔またはシステムの倍率)もまた同様に決定される。
・リトレース誤差:CSI顕微鏡検査法は、2光束干渉法に基づく。CSI顕微鏡検査法は、通常ミロー型またはマイケルソン型干渉対物レンズを被験部品の結像に使用する。高傾斜を有する表面パッチの測定の際に、これらのシステムにはリトレース誤差という問題がある。ゼロ以外の傾斜では、干渉は共通の経路の条件に反する。これは、測定ビームおよび参照ビームが、カメラ上で最終的に再度組み合わせられて干渉パターンを形成するまで、光学系を通る異なる経路に沿って移動することを意味する。これらの異なる経路に沿った光路差は、表面高さの結果を直接入力する。したがって、これらのリトレース誤差を特徴付けて、それらについて訂正することが重要である場合がある。リトレース誤差は、(表面傾斜が主光線傾斜角へと直接変換されるので)視野変数および傾斜変数の両方に依存する。すなわち、リトレース誤差関数は、
4次関数R=R(x,y,sx,sy)である。
【0061】
式中、Rは、リトレース誤差を表し、xおよびyは、視野座標であり、sxおよびsyは、表面傾斜を表している変数である。この4次関数を特徴付けるために使用可能な、様々な方法が存在する。(ユエ ツォウ、ヨウン−シク ジム、およびアンジェラ デービス(Yue Zhou,Young Sik Ghimc,Angela Davies)著「ランダムボールテストを使用した、光学輪郭測定法における傾斜依存誤差に対する自己較正(Self calibration for slope−dependent errors in optical Profilometry by using the random ball test)」国際光工学会予稿集8493番(2012年)(Proc.of SPIE Vol.8493(2012))を参照されたい。本文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。一旦この関数がわかれば、表面パッチをそれぞれ訂正することができる。最初に、表面データを数値的に微分し、各画素位置(x,y)に対するsxおよびsyを計算する。続いて、リトレース誤差関数が測定された表面マップから差し引かれる。
【0062】
【数1】
上記方程式では、S(x,y)は、測定された表面マップであり、
【0063】
【数2】
は、訂正された表面マップである。計器をより完全に較正する場合は、横方向にシフトされた場所で出現する表面特徴部分を生じるリトレース誤差もまた考慮する。この場合の2つの横方向のシフト量は、局所的な傾斜座標および視野座標に依存する。
【0064】
図3は、試験対象物を結像し、
図1のCSI顕微鏡100のような光学プロファイラを使用して試験対象物の3D表現を生成するためのプロセスフロー300を図示するフローチャートである。第1のステップ(302)では、プロセス300は、試験サンプルを載せて、顕微鏡対物レンズの視野内でサンプルの最初の位置決めを行うステップを含む。続いて、光学プロファイラを用いて、試験サンプルの様々なサブアパーチャ領域の複数のトポグラフィマップを取得する(304)。ここでは、隣接したサブアパーチャのトポグラフィマップが、互いに重なり合っている。様々なトポグラフィマップを取得するステップは、光学プロファイラに対して試験サンプルの相対的平行移動および回転を修正するステップを必然的に伴う。例えば、顕微鏡で画像を取得するステップには、試験対象物の表面上の場所が、顕微鏡の光軸に実質的に平行な法線をそれぞれ有するように、その試験対象物を順次配向するステップを含む場合がある。次に、コンピュータ128は、ステージング情報(例えば、各サブアパーチャ画像に対応付けられたステージング位置座標)に基づいて、それぞれの高さマップについて予備剛体運動パラメータを得る(306)。コンピュータ128はまた、高さマップの較正(308)を進行し、例えば、上述した較正手順のうちの1つ以上を用いて、訂正されたサブアパーチャのトポグラフィマップを得る。
図3に示されたフロープロセスの例では、較正手順は、取得された画像から未処理のサブアパーチャのトポグラフィマップを得るステップと、この未処理のトポグラフィマップを計器に固有の静誤差源について補償するステップと、次に、誤差補償の後に得た較正されたサブアパーチャのトポグラフィマップを提供するステップと、を含む。較正された高さマップを用いて、コンピュータは、隣接したサブアパーチャの重なり合う領域に生じる高周波微細構造をマッチング(例えば、フィッティング(fitting))させて、最終的な剛体運動パラメータを得ることにより、各サブアパーチャのマップについての予備剛体運動パラメータのセットを精緻化する(310)。続いて、コンピュータ128は、訂正されたサブアパーチャのマップを組み合わせる(312)。コンピュータ128は、次に、例えば、ビデオ画面に、試験対象物の3Dマップなどの最終的な表面の表現を出力する(314)。
【0065】
ステージング(Staging)
図1に関して上述したように、試験対象物は、複数の自由度に沿った動きを与えるステージに載せてもよい。これに替えて、またはこれに加えて、光学プロファイラは、対物レンズ/センサヘッドの位置を調節して、試験対象物とプロファイラとの間で相対的な位置決めが得られるように構成してもよい。概して、様々な調節可能なステージを用いることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステージは、個々のステージの集積されたセットであって、それぞれが1つまたは複数の自由度に沿った動きを与えるセットを含んでもよい。試験対象物用のステージには、電動直線ステージ、電動回転ステージ、および/または電動垂直ステージが含まれ得る。電動ステージは、電子プロセッサ(例えば、コンピュータ128)が受け取った命令に応答してステージの動きを駆動するアクチュエータに結合することができる。ステージは、顕微鏡が試験対象物の表面全体を横断して走査することが可能な、十分な領域を有する。例えば、直線ステージは、任意の1次元に対する最大サイズとして約0.1mmから約1000mmまでの間の(例えば、微視的対象物に対して約0.1mm〜約10mmまでの間、または巨視的対象物に対して約10mm〜約1000mmまでの間の)走査範囲を提供するように構成するとよい。直線平行移動ステージの動きの最小増分は、約0.0002ミクロンから約100ミクロンまでの範囲(例えば、少なくとも0.01ミクロン、少なくとも0.05ミクロン、少なくとも0.1ミクロン、少なくとも1ミクロン、または少なくとも10ミクロン)とすることができる。回転ステージはまた、十分な回転を供給して、マッピングされている各表面パッチを配向し、その表面法線がセンサ/対物レンズヘッドを指すように(例えば、対物レンズの光軸と軸合わせされるように)するとよい。例えば、回転ステージは、10度以上の(例えば、20度までの、30度までの、45度までの、90度までの、180度までの、または360度までの)回転範囲を提供するように構成するとよい。回転の最小増分は、約0.0002度から約1度まで(例えば、少なくとも約0.001度、少なくとも約0.01度、または少なくとも約0.1度)の範囲とすることができる。
【0066】
いくつかの実施態様では、試験対象物を載せるために使用されるステージは、1つの軸(例えば回転軸)に沿って、2つの軸(例えば、x軸およびロール(θz))に沿って、3つの軸(例えば、x軸およびy軸、ならびにロール(θz))に沿って、4つの軸(例えば、x軸、y軸、z軸、およびロール(θz))に沿って、5つの軸(例えば、x軸、y軸、z軸、ならびにピッチ(θx)およびロール(θz))に沿って、または6つの軸(例えば、x軸、y軸およびz軸、ならびにピッチ、ヨー、およびロール(θx、θy、θz))に沿って、対象物を位置決めする。電動ステージの駆動に使用されるアクチュエータは、特に、ステッピングモータ、DCサーボモータ、または圧電アクチュエータを含むことができる。電動ステージを用いて、ステージの移動を自動化してもよい。例えば、コンピュータ128は、サブアパーチャのトポグラフィマップを得ている間に、試験対象物と光学プロファイラとの間の相対位置を自動的に調節するようにプログラムしてもよい。あるいは、ユーザは、ステージについて所望する位置座標および動きをコンピュータ128に入力することもできる。
【0067】
いくつかの実施態様では、ステージは、電動ステージではなく手動で操作される。ステージは、このとき、微調整ネジおよび/またはマイクロメータを使用して調節することができる。
【0068】
様々な用途に応じて、この技術は様々なステージの幾何学的配置が求められる場合がある。以下は、複数の用途についていくつかの好適な形状を説明することで、可能性のイメージを与えるものである。しかしながら、多数の可能性のある順列を生成しながら各構成についてスタック型ステージの順序付けスキームおよび解体スキームを変更することができるので、この項で列挙されたものは、決して完全ではない。すべての例において、例えば、対象物に焦点を合わせるために、かつ/またはCSI測定原理の一部としてOPD走査を実行するために、対物レンズの光軸に沿って対物レンズを動かすことができる。
【0069】
いくつかの実施態様では、運動軸を1つ追加するだけで十分になる。例えば、弁座(または、それについてさらに言えば、多くの他のシール面)によって示されるような環帯の高解像度測定について考えてみる。この場合、環帯の第1の開始パッチに対物レンズのヘッドを位置決めすることで十分である。次に、環帯がセンサヘッドの下で回転して、対象表面全体を網羅する複数のタイル(tile)を取得する。
【0070】
別の用途は、棒状の対象物(例えば、断面が非球面のシリンダ)の測定である。例として、棒状の対象物が(シリンダ軸に沿って測定する時に)長すぎて一度に測定することができない場合であっても、その部品の断面は、光学プロファイラの視野の範囲内、および傾斜取り込み範囲に十分収まるくらいの大きさである場合がある。その場合、測定結果を重なり合わせて部品を完全に網羅するためには、1次元の平行移動軸に沿ってその部品またはセンサを動かすことで十分である。
【0071】
棒断面が取り込み範囲の外側にあれば、測定結果で部品全体を網羅するためには、棒の回転、棒の平行移動、およびzセンサの再位置決め(例えば、対物レンズの光軸に平行な軸に沿って再位置決めするなど)を組み合わせることが必要である。これにより、例えば、開き角度が大きい円柱レンズ(大口径円柱レンズ)を測定することが可能になる。
【0072】
回転対称表面を測定するための幾何学的配置の第1の例を
図2に示した。この用途用のステージの幾何学的配置の他の選択肢としての例が
図4に示されている。
図4の概略図で図示されるように、光学プロファイラのセンサヘッド(例えば、顕微鏡対物レンズ)400、またはサンプルステージ402は、(破線内の領域によって示された)経路404を辿ることにより、回転の間にセンサヘッド400が試験対象物の様々なサブアパーチャを結像することができるようになる。
図4に示される例では、サンプルステージ402は複数のサブステージ402a、402bを含み、これらはそれぞれ、追加の方向にサンプルの平行移動および/または回転を与えることもできる。
【0073】
最も一般的な場合は、自由曲面表面の場合である。他の表面はすべて、自由曲面表面の特殊なケースにすぎない。自由曲面表面の単純な例としては、円環状または双円錐などが挙げられる。この最も一般的な場合に対して適切なステージングを有する幾何学的配置を実現するとすれば、例えば、自在継手(カルダン継手、ジンバルマウント)に位置するセンサヘッドを使用することで、センサヘッドを空間のあらゆる方向に向けることができるようにすることであろう。真下にある部品は、2つの軸(x、y)のステージ上に載せられることで、その部品のあらゆる位置にわたってヘッドを位置決めできるようになる。
【0074】
アルゴリズム
上述した較正アルゴリズムに加えて、光学プロファイラシステムの電子プロセッサ(例えばコンピュータ128の電子プロセッサ)は、スティッチングアルゴリズム(stitching algorithm)を使用する際にサブアパーチャのトポグラフィマップをともに組み合わせる(
図3のステップ312を参照)。これを行う際に、プロセッサは、隣接した、サブアパーチャのトポグラフィマップの重なり合う領域に位置する表面特徴部分(例えば、高周波表面特徴部分)を識別し、ステージからはわからない試験対象物の座標を決定する。このため、測定された表面特徴部分は、試験対象物の形状および性状に基づいて識別される。その結果、非常に精度の高いステージ座標に対する要件を劇的に緩和することができる。
【0075】
サブアパーチャのトポグラフィマップはそれぞれ、3次元空間の位置に対応付けされて、この対応付けされた3D位置を操作することにより仮想3D空間のタイルのように動かすことができる。当面の用途およびステージの性能に応じて、各タイル位置につき最大6つまでの自由度を宣言することができる。種々の自由度が種々の剛体運動パラメータに対応する。特定の用途については、6段階未満の動きを使用することができるが、6つの自由度をすべて使用して、各タイルが3D空間内で制約なしに移動できるようにする場合が最も一般的である。
【0076】
数学的問題を、唯一の解を有する問題にするために、タイルのうちの1つ(いわゆる参照タイル)から自由度を除去することを選択して、タイルが空間において固定されるようにすることができる。他はすべて、固定された参照タイルを中心に動かすことができる。データ獲得段階からわかったステージ座標を使用して、すべての測定されたサブアパーチャの表面マップに適した開始位置を規定する。適切なステージングで、すべてのタイルの開始位置は、すでに数画素相当の高画質であり、場合によってはそれを上回ることすらある。
【0077】
続いて、数値最適化アルゴリズムが、タイル位置を操作(例えば、タイルに対応付けされた剛体運動パラメータを修正)し、フィッティングを実行して最良の配列を識別する。例えば、アルゴリズムは、グローバルメリット関数のようなグローバルフィットを使用してもよい。メリット関数は、重なり合う領域で近隣のタイル同士の適合を測定して、ベストフィットに相当するタイル位置および向きを決定する。グローバルメリット関数が最小になった時に、ベストフィットが生じる。メリット関数は、例えば、画素単位でトポグラフィマップに寄与する、2乗平均平方根(RMS:root−mean−square)差に依拠してもよい。
【0078】
いくつかの実施態様では、電子プロセッサは、トポグラフィマップがそれぞれぴったりと合うまで、1つのトポグラフィマップから次の隣接したマップまでシーケンシャルフィット(sequential fit)を実施してもよい。例えば、微細構造の識別に基づいた最適化は、隣接したタイル間だけで順次行われる結果、隣接したタイル内での試験対象物の相対位置および向きを描写する中間剛体パラメータが得られる。続いて、グローバル最適化ルーチン(global optimization routine)を実行する。グローバル最適化ルーチンは、シーケンシャルフィッティングから決定されたパラメータの中間セットとの最大限の整合性を提供するタイルについて、剛体パラメータの全セットを見つけようとするものである。グローバル最適化は、この場合、中間剛体パラメータにのみ適用され、試験対象物の表面微細構造に関する情報をさらに利用することはしない。最大限の整合性を決定するために、剛体パラメータの最適化されたセットが、剛体パラメータの中間セットと同じパラメータ空間に変換され比較される。
【0079】
シーケンシャルフィッティングおよび後続のグローバル最適化ルーチンにより、重なり合う領域のすべての微細構造を一度に適合させなければならないグローバル最適化ルーチンと比較して、計算時間の大幅な減少につなげることができる。これは、シーケンシャルフィッティングルーチンで最適化される剛体パラメータの総数が、自由度の数であるDの、重なり合っている画像領域の数であるN倍と等しいからである。対照的に、一度にすべての画像に対してグローバル最適化を適用する場合には、最適化されるパラメータの総数が大幅に増えて、処理時間が長くなってしまうおそれがある。特に、パラメータの数は、隣接したタイル間の重なり合う領域の数と、重なり合う領域の画素数と、の積によって決定される。
【0080】
RMSフィッティング以外の、例えば、最小2乗フィッティング技法を含むフィッティング技法を用いて、トポグラフィマップ同士をスティッチングしてもまたよい。
非平坦面に対応付けされ得る急な傾斜があるため、タイルの向きは、かなりの角度範囲にわたる操作が必要な場合がある。例えば、タイルのピッチ、ヨー、またはロールが少なくとも10度またはそれ以上修正される場合がある。
【0081】
図5は、グローバルメリット関数および、タイル位置の線形最適化または非線形最適化を使用した、3Dスティッチングの原理を図示する概略図である。
図5に示されるプロセスは、例えば、
図1に示される光学プロファイラのコンピュータ128を含めた、任意の適切なコンピュータシステムによって実行してもよい。
図5の例では、光学プロファイラは、(
図5では「表面タイル」として識別された)一連の重なり合っているサブアパーチャのトポグラフィマップ502を得ており、それぞれ試験対象物表面の異なる領域を表している。中心マップ502aが固定されている一方で、コンピュータの(「オプティマイザ」と表された)電子プロセッサ504は、その他の周囲のトポグラフィマップ502の位置および向きを(例えば、その他の周囲のトポグラフィマップの剛体運動パラメータを修正することによって)、各マップ502について平行移動/回転の複数の異なる軸508によって示されるように自由に操作することができる。(
図5では楕円で識別された)重なり合う領域の各点間の差異に基づいたメリット関数506が、プロセッサが最小を識別するまで、新たな配列のそれぞれについて計算しなおす。
【0082】
グローバルメリット関数の場合には、最小が識別された後には、コンピュータに格納された情報は、3D位置が最適化されたマップのセット、すなわちいわゆる全被験表面のアトラス表現をこの時点で含んでいる。最後に、アトラス表現は、完全な3D表現に、あるいは他の選択肢として適宜、再度組み合わせられた被験表面の2
1/2−d表現に描画することができる。
【0083】
次に、この表面の結果は、例えば、全体的な剛体運動を除去するか、または所与の表面設計式から測定された表面の偏差を計算することにより、さらに処理することができる。このような計算された表面偏差は、表面試験および製造プロセス品質管理における多数の用途に対する一次測定結果である。他の用途では、数値モデルを完全な表面データに対してフィッティングすることが必要な場合がある。これは、例えばリバースエンジニアリング用途では、重要なステップである。
【0084】
ある特定の実施態様では、タイルの線形最適化または非線形最適化を適用するかどうかの選択の要因となるのは、結像される表面の性質である。例えば、チップチルト誤差およびピストン誤差によって生じたサブアパーチャ画像の重なり合う領域のトポグラフィの差異は、線形である場合があるが、一方で、接線方向のずれまたは表面法線を中心とする回転によって生じたトポグラフィの差異は、マーカとして使用されている微細構造のランダム性および高周波性のため、高非線形である場合がある。いくつかの実施態様では、最初の剛体パラメータが正確に決定される(例えば、位置が<1μm誤差で報告される)場合には、その問題は線形になる場合がある。
【0085】
図6は、実際の試験対象物サンプルについてのスティッチングのフィット性を示す相互相関プロットであり、スティッチングは試験サンプルの微小粗度の識別に依拠している。この例における試験対象物は、極めて平滑であり、RMS粗度が0.06nmである。この試験サンプルの微小粗度は、高周波特性の一例である。この極めて平滑な部品の場合でさえ、相互相関プロットのピークによって示されるような、2つのトポグラフィマップの間でベストマッチする横方向のずれの剛体パラメータの決定に利用することができる、解像可能な構造が十分に存在した。計算は、相互相関プロットの右側に示された、プロット「測定1」および「測定2」のような、2つの100×100画素のトポグラフィマップに基づいて行った。本実験は、ザイゴ(Zygo)社製NewView(商標)CSI顕微鏡の特別低ノイズ測定モードで測定されたスーパー研磨面を用いて行われた。
図6の画像を得るために用いる実験中の計器の較正は、参照ミラーの形状誤差の補償に限定した。
【0086】
本明細書に開示した技法は、高傾斜を有する表面の測定に有用であるが、試験対象物表面のトポグラフィは、平坦面、球面、および/または自由曲面表面を含む非球面のうちのいずれかを含んでもよい。非球面の場合には、試験対象物表面は、10度超、20度超、30度超、45度超、60度超、75度超、および90度超を含めた角度を形成する法線をそれぞれが有する、少なくとも2つの場所を有することができる。
【0087】
図7は、本明細書に記載した技法を使用して結像することが可能な試験対象物700の一例の概略図である。試験対象物700は、携帯電話のカメラにおいて使用されるレンズに類似したレンズである。例でわかるように、対象物700は、互いに実質的に異なる角度に向いた、湾曲した領域および平坦な領域の両方を有する。本明細書に開示した、3D表面プロファイリングのための技法を用いて、様々な領域702間の側壁角度、様々な位置704における試験対象物の厚さ、表面偏差706、ならびに機能表面特徴、連動装置および側壁など、様々な表面特徴708間の関連測定を測定することができる。
【0088】
追加の実施態様
いくつかの実施態様では、光学プロファイラと試験対象物との間に相対的な動きを与えるために用いられるステージングは、精度を向上させるための追加的な計測学を組み込んでいる。例えば、ステージングは、光学エンコーダまたは干渉計を含むことができる。一例として、ステージは、1つまたは複数の側面に形成された1つまたは複数の1Dまたは2Dエンコーダ格子を含むことができる。エンコーダスケールの変位に関する非常に精度の高い位置情報データ、およびしたがってステージは、エンコーダスケールから回折した1つまたは複数のビームの位相情報に基づいて得ることができる。
【0089】
エンコーダスケールの1つまたは複数の変位方向の変化を正確に測定するエンコーダシステムは、異なる周波数を有する2つの、直線直交に偏光された成分を含む、周波数が安定した照明の光源ビームと、ステージに取り付けられたエンコーダスケール上に、1つまたは両方の成分を配向するための光学アセンブリと、エンコーダスケールから回折ビームの1つまたは両方の成分を受け取るための光学アセンブリと、両方の周波数成分を組み合わせ、混合して、ヘテロダイン信号を生成するための光学アセンブリと、電気測定信号を生成するための光電検出器を含む検出器モジュールと、測定信号からの測定された位相を表示するための位相計と、を含むことができる。測定された位相は、エンコーダスケールの回折構造および感応方向に沿ったエンコーダスケールの変位に関連付けされる。測定された位相から、完全3次元の動き(例えば、チップ、チルト、平行移動、回転)までのステージの動きの変化に関する情報を決定することができる。変位を追跡するためのエンコーダシステムの例は、「干渉計エンコーダシステム(INTERFEROMETRIC ENCODER SYSTEMS)」と題するレスリー L.デック(Leslie L.Deck)らに対する米国特許第8,300,233号明細書に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
いくつかの実施態様では、本方法は、分離した表面を測定し、それらを寸法的に互いに関連付けするステップを含む。例えば、透明な物体の後面に対して前面を、または部品の操作面に対して取り付け面を関連付けする。
【0091】
干渉結像システムは、誤差を低減する他の手順を用いてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、干渉結像システムは、振動に対する測定の感度を低減するための技術を使用することができる。このような実施態様は、製造施設内のような、大きな振動を受けやすい環境では特に有益である場合がある。コヒーレンス走査干渉法システムの振動感度を低減するための技術の例が、「結像干渉計を監視するためのファイバベースの干渉計システム(FIBER−BASED INTERFEROMETER SYSTEM FOR MONITORING AN IMAGING INTERFEROMETER)」と題するレスリー デック(Leslie Deck)らに対する米国特許第8,379,218号明細書、および「不均等にサンプリングされたデータのスペクトル分析を特徴とする干渉法システムおよび方法(INTERFEROMETRIC SYSTEMS AND METHODS FEATURING SPECTRAL ANALYSIS OF UNEVENLY SAMPLED DATA)」と題するヤン リーゼナー(Jan Liesener)らに対する米国特許第8,120,781号明細書に記載されており、それぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
用途
本明細書に記載された技法は、計測学の様々な領域において広く適用可能である。例えば、本明細書に記載された技法は、モバイル電子デバイス(例えば、携帯電話、タブレット、自動車用機器)で使用される結像システムのような、コンパクトな結像システムで使用されるレンズまたはレンズ金型の欠陥検査を実行するステップと、非球面の表面トポグラフィを測定するステップと、円柱および非円柱状の棒状の物体の表面トポグラフィを測定するステップと、円環状および非円環状の表面トポグラフィを測定するステップと、双円錐状および非双円錐状の表面トポグラフィを測定するステップと、自由曲面表面の全体的な特徴付けと、不連続表面を有するものを含めた、対象物の全体的な3Dプロファイリングと、を含むことができる。
【0093】
概して、上述した計測学分析方法はいずれも、コンピュータハードウェアもしくはソフトウェアを用いて、またはその両方を組み合わせて実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では、電子プロセッサは、コンピュータにインストール可能であり、かつ、1つまたは複数の干渉結像システムに結合することが可能なモジュールの一部とすることができ、干渉結像システムからの(例えば、多素子検出器、または変換器からの)信号の分析を実行するように構成することができる。分析は、本明細書に記載した方法および図に従う標準的なプログラミング手法を用いて、コンピュータプログラムにおいて実施することができる。プログラムコードは、本明細書に記載した機能を実行するためのデータを入力し、出力情報を生成するために適用される。出力情報は、ビデオ表示モニタなどの、1つまたは複数の出力デバイスに適用される。各プログラムは、高レベルの手続き指向型またはオブジェクト指向型プログラミング言語で実施し、コンピュータシステムと通信することができる。しかしながら、プログラムは、必要があれば、アセンブリまたはマシン言語で実施することができる。いずれにせよ、言語は、コンパイル型またはインタプリタ型言語とすることができる。さらに、プログラムは、その目的のためにあらかじめプログラムされた専用の集積回路上で実行することができる。
【0094】
各コンピュータプログラムはそれぞれ、汎用または専用のプログラム可能なコンピュータによって読み出し可能な記憶媒体またはデバイス(例えば、ROMまたは磁気ディスケット)に格納され、本明細書に記載した手順を実行するコンピュータがこの記憶媒体またはデバイスを読み出した時に、そのコンピュータを構成して動作させることが好ましい。コンピュータプログラムをプログラム実行時、キャッシュまたは主記憶装置に常駐させることもまた可能である。分析方法は、コンピュータプログラムを備えて構成されたコンピュータ読出可能記憶媒体として実施することもまた可能であり、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータに特定の、あらかじめ決められたやり方で本明細書に記載された機能を実行するように動作させる。
【0095】
多数の実施形態について説明してきた。それでもなお、当然ながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、様々な変更を加えることができる。他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内にある。