特許第6306784号(P6306784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6306784
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】粉砕茶葉を含有する緑茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   A23F3/16
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-132750(P2017-132750)
(22)【出願日】2017年7月6日
(62)【分割の表示】特願2017-42238(P2017-42238)の分割
【原出願日】2017年3月6日
【審査請求日】2017年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-9011(P2017-9011)
(32)【優先日】2017年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】小林 真一
(72)【発明者】
【氏名】上本 倉平
(72)【発明者】
【氏名】田口 若奈
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−000135(JP,A)
【文献】 特開2011−072321(JP,A)
【文献】 特開2011−115165(JP,A)
【文献】 特表2001−504704(JP,A)
【文献】 特開2016−039789(JP,A)
【文献】 特表2009−523016(JP,A)
【文献】 特開2011−125224(JP,A)
【文献】 J. Agric. Food Chem.,2001年,Vol.49, No.3,pp.1394-1396
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00 − 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)カテキン類 200〜700ppm
(B)ヘキサナール 2.0〜19ppb
を含有し、かつ
(C)濁度が0.05〜2.0
であり、平均粒子径が20〜80μmの粉砕茶葉を含有する容器詰緑茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕茶葉を含有する緑茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体を多く配合した飲料は、飲用時に粉っぽさやざらつき感を感じるという問題を抱えている。このような問題の対策として、乳化処理、均質化処理等の製造工程上の処理で改善する方法や、粉っぽさの要因となっている物質を予めより細かくする方法や、ざらつき感を低減しうる成分を配合する方法などが実施されている。
【0003】
例えば、抹茶や粉砕した緑茶葉等の粉砕茶葉を配合した緑茶飲料の場合、抹茶の粒子径をより細かくしてざらつき感を低減する方法(特許文献1、特許文献2)、粒子径7μm以上20μm以下の粒子の数の割合が60%〜90%となるように抹茶の粒子径と分布を制御して抹茶の香り立ちを保持しながらざらつき感を低減する方法(特許文献3)、テアニン及び/又はグルタミン酸濃度を特定範囲に調整して高濃度に含有する茶葉由来粒子のざらつき感を低減する方法(特許文献4)、抹茶の粒子径を細かくし、かつグリセロ糖脂質を含有させることによりざらつき感を低減する方法(特許文献5)等が提案されている。
【0004】
一方、ヘキサナール等の脂肪族アルデヒドは、食品や飲料中の香味阻害物質として知られている(特許文献6、特許文献7)。特許文献6には、フレッシュな風味を損なう酸化臭や青臭い香気を呈するヘキサナール及び2,4−ヘプタジエナールを所定の含有量(20.0ppb以下、好ましくは0〜10.0ppb)に制限した烏龍茶飲料が開示されている。また、ヘキサナールの効果に関する記載はないが、ヘキサナールを26ppbの濃度で含有するレディトゥドリンクティーも開示されている(特許文献8)。ヘキサナールを用いて飲食品の香味を改善する方法としては、食酢飲料、スープ等の酢酸含有飲食物における酢酸臭低減に利用することが提案されている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−234301号公報
【特許文献2】WO2004/110161号パンフレット
【特許文献3】特開2014−68635号公報
【特許文献4】特開2017−000071号公報
【特許文献5】特開2014−68636号公報
【特許文献6】特開2016−140305号公報
【特許文献7】特許第5955030号公報
【特許文献8】特表2009−523016号公報
【特許文献9】特許第5436843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、粉砕茶葉を含有するにもかかわらず、該粉砕茶葉由来のざらつき感を低減した容器詰緑茶飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。製造上の煩雑な工程を避けるため、配合でざらつき感を低減すべく種々の成分を検討した結果、香気成分であるヘキサ
ナールを含有させることにより、粉砕茶葉が含まれていても、飲用時に口内のざらつき感を感じにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、これに限定されるものではないが、以下に関する。
(1)次の成分(A)及び(B):
(A)カテキン類 200〜700ppm
(B)ヘキサナール 2.0〜19ppb
を含有し、かつ
(C)濁度が0.05〜2.0
である容器詰緑茶飲料。
(2)さらに、次のアミノ酸(D1)及び(D2):
(D1)アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択される1以上
(D2)セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、プロリン及びテアニンからなる群から選択される1以上
を含有し、(D1)と(D2)の重量比((D2)/(D1))が2.0〜6.0である、(1)に記載の飲料。
(3)さらに(E)リナロール 3.5〜30ppb
を含有する、(1)又は(2)に記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、粉砕茶葉を含有するにもかかわらず、好適な舌触りとのど越し感を奏し得る容器詰緑茶飲料が得られる。この容器詰緑茶飲料は、粉砕茶葉を含有するので、粉砕茶葉が持つコクと深い味わいを十分に味わうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書で使用する用語について説明する。
「濁度」とは、680nmにおける吸光度OD680を意味する。
「茶葉」とは、Camellia属(例えば、C. sinensis、C. assamica)やぶきた種それらの雑種から得られる葉を製茶加工したものを意味する。
【0010】
「粉砕茶葉」とは、抹茶や粉砕した緑茶葉等、茶葉を粉末状にしたものを意味する。大きさの分布を有する水に不溶な多くの固体粒子からなり、繊維状のものも含む。
「茶飲料」とは、茶葉の抽出液を主成分として含有する飲料を意味し、「緑茶飲料」とは、緑茶葉(煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶など)から水や熱水、抽出助剤を添加した水溶液で抽出した緑茶葉抽出液を配合した飲料の総称をいう。
【0011】
「カテキン類」とは、重合していない単量体のカテキン類((+)−カテキン(以下、「C」)、(−)−エピカテキン(以下、「EC」)、(+)−ガロカテキン(以下、「GC」)、(−)−エピガロカテキン(以下、「EGC」)、(−)−カテキンガレート(以下、「Cg」)、(−)−エピカテキンガレート(以下、「ECg」)、(−)−ガロカテキンガレート(以下、「GCg」)、(−)−エピガロカテキンガレート(以下、「EGCg」))をいい、カテキン類の含量をいうときは、これらの総量を指す。また、カテキン類のうちガレート基を有するもの(Cg,ECg,GCg,EGCg)をガレート型カテキン(本明細書中、(a2)とも表記する)とといい、ガレート型カテキンの含有量をいうときは、これらガレート型カテキンの合計量を表す。カテキン類のうち、ガレート基を有しないもの(C、EC、GC、EGC)を遊離型カテキン(本明細書中、(a1)とも表記する)といい、遊離型カテキンの含有量をいうときは、これら遊離型カテキンの合計量を表す。
【0012】
「口当たり」とは、口に入れた時の感覚、舌触りを意味し、「スッキリした口当たり」とは、ざらつき感などの不快な舌触りがない感覚をいう。
「ざらつき感」とは、ざらざらとした不快な食感をいう。
【0013】
「のど越し」とは、飲用した際に喉に引っ掛かる感じを意味し、「のど越しが良い」とは喉に引っ掛かる感じが全くない感覚をいう。
「コク」とは、濃厚で深い味わいをいう。
【0014】
「レトロネーザルアロマ」とは、飲料を飲み込んだ後に喉から鼻を通じて戻ってきた香りをいう。
「飲用性」とは、1回の飲用時で飲み干される飲料の容量を意味する。
【0015】
なお、本明細書における「ppb」又は「ppm」は、質量/容量(w/v)の濃度を表す。
(茶飲料)
本発明は、特定量の(A)カテキン類を含有し、かつ(C)濁度が0.05〜2.0である緑茶飲料を対象とする。飲料中に含まれるカテキン類の濃度は200〜700ppmが好ましく、250〜600ppmがより好ましく、300〜500ppmがさらに好ましい。カテキン類は可溶性成分であるが、その濃度が700ppmを超えると、カテキン類由来のざらつき感が生じる場合がある。カテキン類由来のざらつき感は、飲用後に舌や歯に残るざらつきであり、後述する本発明の粉砕茶葉由来のざらつき感の低減効果が損なわれることがある。また、カテキン類が下限値の200ppm未満であると、本発明の効果が十分に得られないことがある。
【0016】
カテキン類の種類に特に制限はないが、遊離型カテキン(a1)の濃度をガレート型カテキン(a2)の濃度よりも高くする、すなわち(a1)>(a2)となるように調整することが好ましい。より好ましくは、遊離型カテキン(a1)とガレート型カテキン(a2)の比率[(a2)/(a1)+(a2)]が0.25〜0.50、さらに好ましくは0.30〜0.50の比率となるように調整する。上記範囲となるように調整すると、本発明のざらつき感の低減効果をより一層強く発現させることができ、よりスッキリした口当たりやのど越しを実現できる。なお、飲料中のカテキン類含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定・定量される。
【0017】
本発明の緑茶飲料は、粉砕茶葉を含有する。粉砕茶葉の含有度合いは、濁度を指標とすることができ、本発明の飲料における(C)濁度は0.05〜2.0、好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.3〜1.2、さらに好ましくは0.4〜1.0である。
【0018】
一般に、粉砕茶葉を含有する緑茶飲料において、粒子径は大きくなるほどそれ自体の風味を強く感じられるが、ざらつき感が強く出てしまう傾向にある。一方で、粒子径は小さくなるほど滑らかな口当たりとなるが、風味が感じられなくなる傾向にある。本発明の粉砕茶葉を含有する飲料の含有粒子径は、0.1〜80μmが好ましく、0.2〜65μmがより好ましく、0.5〜60μmがさらに好ましい。ここで、含有粒子径が80μm以下とは、粒子の全て(100%)が80μm以下であることを要求するものではなく、飲料中に含有される粒子の90%以上、好ましくは95%以上の粒子の粒子径が80μm以下であればよい。また、含有粒子径が0.1μm以上とは、粒子の全て(100%)が0.1μm以上であることを要求するものではなく、飲料中に含有される粒子の5%以上、好ましくは10%以上の粒子の粒子径が0.1μm以上であればよい。ここで、粉砕茶葉の粒子径は、粒子の長径を測定したものであり、具体的にはベックマン・コールター社製のレーザ回折・散乱法粒度分布測定装置LS 13 320によって測定した値である。
【0019】
粉砕茶葉の粒子径の調整は、原材料の段階や、原料混合後の液状下で、ミル、ミキサー、ホモジナイザー、ラインミキサー、エマルダー、マイルダー、チョッパー、パルパーフ
ィッシャー等の破砕機または摩砕機を使用することにより行うことができる。
【0020】
粉砕茶葉としては、抹茶や、煎茶、かぶせ茶、玉露等の緑茶葉の粉砕物を1以上、好ましくは複数種類を併用して用いることができる。
本発明は、粉砕茶葉を含有する緑茶飲料において、香り成分である(B)ヘキサナール(Hexanal)を特定量含有させることで、粉砕茶葉由来のざらつき感を低減することを特
徴とする。ヘキサナールにより粉砕茶葉由来のざらつき感を低減できるメカニズムは不明であるが、脂肪族アルデヒドであるヘキサナールが粉砕茶葉に吸着して該粉砕茶葉の表面を滑らかにしていると推測される。香気成分、しかも香味阻害物質として知られているヘキサナールを用いて食感の改善を図ることは、本発明者らが初めて見出したことである。
【0021】
本発明の飲料中の(B)ヘキサナール濃度は、2.0〜19ppbであり、好ましくは2.0〜15ppbであり、より好ましくは2.0〜10ppbである。ヘキサナールをこの濃度範囲で含有することにより、粉砕茶葉由来のざらつき感が低減され、好適な舌触りとのど越し感を奏する緑茶飲料が得られる。なお、茶飲料中のヘキサナール濃度は、質量分析計付きのガスクロマトグラフィー(GC/MS)を用いて測定することができる。
【0022】
ヘキサナールは、化学合成品を用いてもよいし、精油などの天然の食品原料を用いて茶飲料中の濃度を調整することが可能である。その他、これらの成分を多く含む食品原料を用いてもよい。最も好ましいのは、緑茶葉抽出物を用いる方法である。
【0023】
本発明の緑茶飲料の中でも、粒子径が20μm以上となる比較的大きい粉砕茶葉を含有する飲料では、ざらつき感が低減されるだけでなく、レトロネーザルアロマが強化されるという効果も有するので、緑茶の風味の余韻を味わうことができる飲料となる。したがって、飲料中に含有される粒子の1%以上、好ましくは5%以上の粒子が20μm以上となるように調整された飲料は、本発明の好適な態様の一例である。
(その他成分)
飲料中の特定のアミノ酸バランスが本発明の効果に影響することを見出している。
【0024】
一般に、緑茶飲料には、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、テアニン(Theanine)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、プロリン(Pro)が含まれることが知られている。これらアミノ酸のうち、本発明のざらつき感低減効果に寄与するアミノ酸は、(D1)アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群と、(D2)セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、プロリン及びテアニンからなる群に分類されるアミノ酸である。(D1)はカルボキシル基(−COOH)を2つもつ酸性アミノ酸であり、(D2)は側
鎖に芳香族、硫黄、分岐鎖を含まない中性アミノ酸又はテアニンである。
【0025】
ざらつき感の低減には、これら(D1)に分類されるアミノ酸の含有量と、(D2)に分類されるアミノ酸の含有量の重量比((D2)/(D1))が重要である。すなわち、本発明の茶飲料は、(D1)アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択される1以上と、(D2)セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、プロリン及びテアニンからなる群から選択される1以上を含有し、(D1)と(D2)の重量比((D2)/(D1))が2.0〜6.0であることが好ましい。より好ましい(D1)と(D2)の重量比は2.5〜5.5、さらに好ましい重量比は3.0〜5.0である。ここで、(D1)の含有量をいうときは、(D1)に分類されるアミノ酸の合計量を表す。また、(D2)の含有量をいうときは、(D2)に分類されるアミノ酸の合計量を表す。
【0026】
これら(D1)及び(D2)に分類されるアミノ酸の重量比を上記範囲に調整すること
により、ざらつき感の低減効果をより一層高めることができ、粒子径が大きい粉砕茶葉を含有するにもかかわらず、スッキリした口当たりとのど越しの良い緑茶飲料となる。(D1)に分類される2種類のアミノ酸、及び(D2)に分類される6種類のアミノ酸を全て含有する飲料は、最も好ましい飲料である。
【0027】
本発明のざらつき感低減効果には、(D1)と(D2)の重量比が重要であり、その含有量は特に制限されないが、通常、アミノ酸D1の総量は5〜60ppm、好ましくは10〜50ppm、より好ましくは12〜40ppmであり、アミノ酸D2の総量は20〜150ppm、好ましくは30〜120ppm、より好ましくは40〜100ppmである。アミノ酸は、ほぼ純品のものが食品原料として市販されているので、これを用いて茶飲料中の濃度を調整することが可能である。その他、これらの成分を多く含む食品原料を用いて調整してもよい。最も好ましいのは、緑茶葉抽出物を用いる方法である。一番茶の抽出物はアミノ酸を多く含み、(D1)及び(D2)の比率が上記範囲と近似しているため、好適に用いられる。
【0028】
また、粒子径が20μm以上となる大きい粉砕茶葉を含有する飲料は、レトロネーザルが強化される観点でも好ましい態様である。特に、(B)ヘキサナールに加えて、(E)リナロールを含有させた場合に、レトロネーザルがより顕著に感じられるようになる。好ましいリナロール濃度は、3.5〜30ppbであり、好ましくは4.0〜25ppbであり、より好ましくは5.0〜20ppbであり、さらに好ましくは6.0〜20ppbである。なお、茶飲料中のリナロール濃度は、質量分析計付きのガスクロマトグラフィー(GC/MS)を用いて測定することができる。リナロールは、化学合成品を用いてもよいし、精油などの天然の食品原料を用いて茶飲料中の濃度を調整することが可能である。その他、これらの成分を多く含む食品原料を用いてもよい。最も好ましいのは、緑茶葉抽出物を用いる方法である。リナロールを多く含む深蒸し茶の抽出物は、本発明のリナロール原料として好適である。リナロールを多く含む緑茶葉抽出物は、例えば特許文献8(特
表2009−523016号公報)に記載の方法で得ることができる。
(容器詰緑茶飲料)
本発明の飲料は、高い飲用性(drinkability)を有し、喉の渇きを癒すため一気に大量をゴクゴク飲むことができる、すなわち茶飲料を大量に飲んでも飲み飽きずにまだ美味しく飲める性質を有する。ここで大量とは、具体的には、成人男性1回当たりの飲用量が350mL〜2000mL、好ましくは500mL〜1000mLをいう。本発明の飲料は、350mL〜2000mL、好ましくは500mL〜1000mL容量の容器詰め飲料の形態として提供できる。
【0029】
使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などである。PETボトル等の透明容器は、本発明の特徴である濃い濁り茶の外観を楽しむことができるので、好ましい容器の一例である。
【0030】
また、粒子径が20μm以上の大きい粉砕茶葉を含有する飲料は、レトロネーザルアロマを強く感じることができるという特徴を有することから、PETボトルのような狭い開口部に直接口をつけて飲用することができるような容器に詰めるのに適している。
【0031】
開口部の狭い容器とは、飲み口となる開口部が1200mm以下、好ましくは1000mm以下、より好ましくは900mm以下、特に好ましくは800mm以下の容器をいう。そのような開口部の狭い飲料用容器としては、キャップ(φ28mm、φ38mm)を備えたPETボトルやボトル缶、プルタブ式又はステイオンタブ式など蓋の一部のみが開口するパーシャルオープンエンドの缶蓋を備えるアルミ缶やスチール缶、ストローが付けられた紙パック、同じくストローが付けられたチルドカップなどが挙げられる。
通常、PETボトルやボトル缶のような開口部の狭い容器に飲料を詰めて飲用する場合には、コップのような開口部の広い容器を用いた場合と比べて、飲料の表面からの香りが鼻に直接には入りにくいため、香りが弱く感じられる傾向があるが、本発明の飲料は、開口部の狭い容器に詰められた場合であっても、急須で淹れた茶飲料を湯呑みで飲んだときのような緑茶のフレッシュな香りが感じられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(飲料中の香気成分の定量方法)
飲料(試料溶液)中のヘキサナールとリナロールの濃度(ppb)を以下の方法により測定した。
【0033】
バイアル瓶(容量20ml)に試料溶液を10ml入れ3gのNaClを加え、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGCMS(アジレント社
製)に導入した。以下に示す条件で分析を行った。
・装置:GC:Agilent Technologies社製 GC7890B
MS : Agilent Technologies 社製 5977A
HS:Gestel 社製 MPS,
Tube:Tenax TA, Carbon bx1000
・カラム:HP-INNOWAX 60m x 0.25mmi.d. df=0.25μm
・定量イオン:ヘキサナール 56.0m/z、リナロール 93m/z
・温度条件 40℃(4分)〜5℃/分〜260℃
・キャリアガス流量He 1.5ml/分
・注入法:スプリットレス
・イオン源温度260℃
(カテキン類濃度の定量方法)
試料となる茶飲料をメンブレンフィルター(孔径0.45μm、十慈フィールド株式会社
水系未滅菌13A)で固形分を除去した後、HPLC分析に供して測定した:
・HPLC装置:TOSOH HPLCシステム LC8020 modelII
・カラム:TSKgel ODS80T sQA(4.6mm×150mm)
・カラム温度:40℃
・移動相A:水-アセトニトリル-トリフルオロ酢酸(90:10:0.05)
・移動相B:水-アセトニトリル-トリフルオロ酢酸(20:80:0.05)
・検出:UV275nm
・注入量:20μL
・流速:1mL/min.
・グラジエントプログラム:
時間(分) %A %B
0 100 0
5 92 8
11 90 10
21 90 10
22 0 100
29 0 100
30 100 0
・標準物質:カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレート(栗田高純度試薬)
(アミノ酸濃度の定量方法)
飲料中のアミノ酸濃度(ppm)をHPLCを用いて、以下の方法により測定した:
・HPLC装置:Waters アミノ酸分析装置2695
・カラム:AccQ-Tagカラム(3.9mm×150mm)
・カラム温度:40℃
・移動相A:AccQ-TagA(pH5.8)
・移動相B:アセトニトリル
・移動層C:水/メタノール=9/1
・検出:EX250nm EM395nm Gain100
・注入量:5μL
・グラジエントプログラム:
時間(分) 流速(ml/min) %A %B %C
0 1 100 0 0
1 1 99 1 0
16 1 97 3 0
25 1 94 6 0
35 1 86 14 0
40 1 86 14 0
50 1 82 18 0
51 1 0 60 40
54 1 100 0 0
75 1 0 60 40
110 0 0 60 40
・標準物質:アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、プロリン、テアニン)
・上記の方法にて測定したアミノ酸について、(D1)アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群と、(D2)セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、プロリン及びテアニンからなる群に分類し、(D1)と(D2)の重量比((D2)/(D1))を算出した。ここで、(D1)の含有量をいうときは、(D1)に分類されるアミノ酸の合計量を表す。また、(D2)の含有量をいうときは、(D2)に分類されるアミノ酸の合計量を表す。
1.粉砕茶葉含有液の調製
碾茶を石臼で挽いて製造された抹茶を約20倍量の水に懸濁させ、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより10MPaの圧力で処理した後に遠心分離(6000rpm、10分)を行って粗大な粉砕茶を除去して、平均粒子径が20μm以下となる粉砕茶葉懸濁液を得た。さらに、これに20重量部の煎茶粉砕物(20μm以上の粒子を含む)を配合して、平均粒子径が20μmとなるような粉砕茶葉含有液を調製した(粉砕茶葉含有液B)。2.茶飲料のベースとなる緑茶葉抽出液の調製
煎茶葉の乾燥重量に対して30重量部の水を抽出溶媒として用いた。60℃の水で5分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶葉抽出液を得た(緑茶葉抽出液A)。
3.評価
以下の茶飲料について、専門パネラー3人で飲用し評価した(評価は、協議の上決定した)。
【0034】
[比較例1〜6]
緑茶抽出液Aに、種々の割合で粉砕茶葉含有液Bを添加して濁度が異なる6種類の茶飲料を調製した(配合割合は表1〜5に記載)以下、表中の緑茶抽出液もしくは粉砕茶葉含有液の表中の単位はg/Lとする)。500mLずつをPETボトルに充填し、容器詰緑茶飲料を得た。目視によると、粉末茶葉無添加の比較例1は濁りがなく、比較例2〜6は濁
りを有する茶飲料であった。これら茶飲料について、濁りのない比較例1を対照としてざらつき感を評価した。
<評価基準>
◎:ざらつき感を感じない(対照と同程度)
〇:少しざらつき感を感じる
×:ざらつき感がある
表1から明らかなとおり、ヘキサナール濃度が0.6〜0.7ppbの場合、粉末茶葉に由来するざらつき感を低減することはできず、のど越しの悪い飲料であった。
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例1〜4、比較例7〜8]
比較例1〜6に市販のヘキサナール(関東化学株式会社製;型番07126-30)を添加して500mLずつをPETボトルに充填し、ヘキサナール濃度2.0ppbの容器詰緑茶飲
料を得た。目視によると、粉末茶葉無添加の比較例7は濁りがなく、実施例1〜4及び比較例8は濁りを有する茶飲料であった。これら茶飲料について、濁りのない比較例7を対照としてざらつき感を評価した。濁度が0.2〜2.0となる粉末茶葉を含有する飲料では、該粉末茶葉由来のざらつき感は、2.0ppbのヘキサナールを含有させることで低減させることができ、スッキリしたのど越しを有する飲料であった。特に、濁度が0.40〜0.80の茶飲料ではざらつき感がより低減されており、対照と同等レベルであった。一方、濁度が2.5となると、ヘキサナールでのざらつき感低減効果は十分でなく、のど越しの悪い飲料であった。また、実施例1〜4の飲料について、PETボトルに直接口をつけて飲用したところ、豊かなレトロネーザルアロマを有し、飲用後まで茶の香りの余韻を味わうことができた。
【0037】
【表2】
【0038】
[実施例5〜12、比較例9〜18]
さらに、ヘキサナールを添加して、ヘキサナール濃度10ppb、18ppb及び20ppbの容器詰緑茶飲料を得た。目視によると、粉末茶葉無添加の比較例9、11及び1
3は濁りがなく、粉末茶葉を添加した飲料は濁りを有する茶飲料であった。これら茶飲料について、表3は比較例9、表4は比較例11、表5は比較例13を各々対照として、ざらつき感を評価した。結果を表3〜5に示す。
【0039】
濁度が0.2〜2.0となる粉末茶葉を含有する飲料では、ヘキサナールを10ppb又は18ppbの濃度で含有させることで粉末茶葉由来のざらつき感を低減させることができた。ヘキサナールを10ppbの濃度で含有する飲料は、濁度が0.40〜0.80の茶飲料ではざらつき感がより低減されており、対照(比較例9及び11)と同等レベルの口当たり及びのど越しであった。一方、濁度が2.5となると、ヘキサナールでのざらつき感低減効果はあるものの、それ以上に粉末茶葉を配合することによるざらつき感が増長され、飲用し難い飲料であった。ヘキサナールを20ppbの濃度で含有する飲料は、濁度に関わらずざらつき低減の効果は見られなかった。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
[実施例13]
実施例の飲料に市販のリナロールを添加し、ヘキサナール2ppb、リナロール6ppb、濁度0.4の容器詰緑茶飲料を得た。高濃度の粉砕茶葉を含有しているにもかかわらず、ざらつき感が全く感じられない、スッキリした口当たりとのど越しを有する茶飲料であった。PETボトルに直接口をつけて飲用したところ、豊かなレトロネーザルアロマを有し、飲用後まで茶の香りの余韻を味わうことができた。このレトロネーザルアロマは、実施例2よりも強かった。
[実施例14]
次の方法により、容器詰緑茶飲料を製造した。緑茶飲料の原料として、緑茶葉抽出液、粉砕茶葉懸濁液を用いた。緑茶葉抽出液は、ヘキサナール含有茶葉8gを、70℃の湯で5分間抽出した後、遠心分離機を用いて固液分離して調製した。粉砕茶葉含有液は、実施例1で用いたものと同様にして調製した。前記緑茶葉抽出液、粉砕茶葉含有液を任意の割合で混合し、濁度:0.49、ヘキサナール:3.2ppbとなる緑茶飲料を製造した。
【0044】
得られた茶飲料について、カテキン類及びアミノ酸類を分析するとともに、その香味を評価した。カテキン類の総量は、440ppmであった。このうち遊離型カテキン(a1)は270ppm、ガレート型カテキン類(a2)は170ppmであり、その比率[(a2)/(a1)+(a2)]は0.39であった。また、アミノ酸の分析結果を表6に示す。表中の値はppmである。
【0045】
【表6】
【0046】
この茶飲料は、粉砕茶葉を高濃度で含有するにもかかわらず、好適な舌触りとのど越し感を奏し得る緑茶飲料であった。粉砕茶葉を高濃度に含有するので、粉砕茶葉が持つコクと深い味わいを十分に味わうことができ、3名のパネラー全員が従来にない美味しさと評価した。以上より、カテキン類濃度が200〜700ppmであり、(D1)と(D2)の重量比((D2)/(D1))が2.0〜6.0である茶飲料は、本発明の好適な態様の一つであることが示唆された。
【0047】
[実施例15、比較例19〜20]
ここでは、新たに別の粉砕茶葉含有液を調製した。
碾茶を石臼で挽いて製造された抹茶を約20倍量の水に懸濁させ、この懸濁液を高圧ホモジナイザーにより10MPaの圧力で処理した後に遠心分離(6000rpm、10分)を行って粗大な粉砕茶を除去して、平均粒子径が20μm以下となる粉砕茶葉懸濁液を得た。さらに、これに20重量部の煎茶粉砕物(20μm以上の粒子を含む)を配合して、平均粒子径が80μmとなるような粉砕茶葉含有液を調製した(粉砕茶葉含有液D)。
【0048】
また、茶飲料のベースとなる緑茶葉抽出液も新たに調製した。
上記とは異なる煎茶葉を用い、煎茶葉の乾燥重量に対して30重量部の水を抽出溶媒として用いた。60℃の水で5分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶葉抽出液を得た(緑茶葉抽出液C)。
【0049】
緑茶抽出液Cに、種々の割合で粉砕茶葉含有液Dを添加して濁度が異なる3種類の茶飲料を調製した(配合割合は表7に記載)。市販のヘキサナール(関東化学株式会社;型番07126-30)を添加して500mLずつをPETボトルに充填し、ヘキサナール濃度10.
0ppbの容器詰緑茶飲料を得た。目視によると、粉末茶葉無添加の比較例19は濁りがなく、実施例15と比較例20は濁りを有する茶飲料であった。これら茶飲料について飲用し、濁りのない比較例19を対照としてざらつき感を評価した。
【0050】
本例においても、濁度が0.4である粉末茶葉を含有する飲料では、ヘキサナールを10ppbの濃度で含有させることで粉末茶葉由来のざらつき感が低減され、対照(比較例19)と同等レベルであった。
【0051】
【表7】
【0052】
[実施例16、比較例21〜22]
緑茶抽出液Aに、種々の割合で粉砕茶葉含有液Dを添加して濁度が異なる3種類の茶飲料を調製した(配合割合は表8に記載)。市販のヘキサナールを添加して500mLずつ
をPETボトルに充填し、ヘキサナール濃度10.0ppbの容器詰緑茶飲料を得た。目視によると、粉末茶葉無添加の比較例21は濁りがなく、実施例16と比較例22は濁りを有する茶飲料であった。これら茶飲料について、専門パネラー3人で飲用し、ざらつき感を濁りのない比較例21を対照として評価した(評価は、協議の上決定した)。
【0053】
本例においても、濁度が0.4である粉末茶葉を含有する飲料では、ヘキサナールを10ppbの濃度で含有させることで粉末茶葉由来のざらつき感が低減され、対照(比較例21)と同等レベルであった。
【0054】
【表8】
【0055】
[実施例17〜19]
緑茶抽出液Aに、粉砕茶葉含有液Bを添加して濁度が2となる茶飲料を調製した(配合
割合は表9に記載)。市販のリナロール、ヘキサナールを添加して500mLずつをPE
Tボトルに充填し、リナロール濃度、ヘキサナール濃度が表9に記載の通りとなる容器詰緑茶飲料を得た。目視によると、すべての実施例は濁っていた。これら茶飲料について、専門パネラー3人で飲用し、ざらつき感を濁りのない実施例17を対照として評価した。実施例17のリナロール量を既に記載の方法で測定したところ、3.5ppbであった。
【0056】
本例においては、ヘキサナールに加えてリナロールを好ましい範囲内の濃度にて含有させることで、粉末茶葉由来のざらつき感が低減され対照(実施例17)と同等レベルであった。これは濁度とヘキサナールだけでなくリナロールを好適に調整することで本発明の好適な様態となることが示唆された。
【0057】
【表9】
【要約】      (修正有)
【課題】粉砕茶葉を含有するにもかかわらず、該粉砕茶葉由来のざらつき感を低減した容器詰緑茶飲料の提供。
【解決手段】(A)カテキン類200〜700ppm及び(B)ヘキサナール2.0〜19ppbを含有し、かつ(C)濁度が0.05〜2.0である容器詰緑茶飲料。更に、次のアミノ酸(D1)及び(D2)を含有し、(D1)と(D2)の重量比((D2)/(D1))が2.0〜6.0であることが好ましい前記飲料。更に(E)リナロール3.5〜30ppbを含有することがより好ましい前記飲料。(D1)アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される1以上、(D2)セリン、グリシン、トレオニン、アラニン、プロリン及びテアニンから選択される1以上
【選択図】なし