(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、特許文献1に記載の方法では、有機EL層の膜厚を面内で変えている。このため、発光層の光学干渉特性に面内分布が生じてしまう。この場合、色度や視野角に面内分布が生じてしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、発光装置において、発光層の光学干渉特性及び輝度に面内分布が生じることを抑制することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
基材と、
前記基材の上に位置する第1電極と、
前記第1電極
よりもシート抵抗が低い第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に位置する発光層と、
前記基材の第1辺に設けられ、前記第1電極に接続している第1端子と、
前記第1辺と交わる第2辺に設けられ、前記第2電極に接続している第2端子と、
を備え、
前記第2電極は、
前記第1端子から離れる方向に沿って複数のサブ電極に分割されており、
さらに、前記複数のサブ電極と前記第2端子
のそれぞれの間に
それぞれ異なる抵抗値の複数の抵抗部を備える発光装置である。
【0008】
請求項6に記載の発明は、
基材と
前記基材の上に位置する第1電極と、
前記第1電極
よりもシート抵抗が低い第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に位置する発光層と、
前記基材の第1辺に設けられ、前記第1電極に接続している第1端子と、
前記第1辺とは交差しない第2辺に設けられ、前記第2電極に接続している第2端子と、
を備え、
前記第2電極は前記第1端子から離れる方向に沿って膜厚が変化している発光装置である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発光装置10の構成を示す平面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。本実施形態に係る発光装置10は、基材100、第1電極110、発光層120、第2電極130、第1端子140、第2端子150、及び抵抗部170を備えている。第2電極130は第1電極110と対向している。発光層120は、第1電極110と第2電極130の間に位置している。第1電極110、発光層120、及び第2電極130は、基材100に設けられている。第1端子140は基材100の第1辺101に設けられており、第1電極110に接続している。第2端子150は基材100の第2辺102に設けられており、第2電極130に接続している。基材100の第2辺102は、基材100の第1辺101と交わっている。第2電極130は、第1電極110よりもシート抵抗が低い。そして第2電極130は、第1端子140から離れる方向に沿って、複数のサブ電極132に分割されている。抵抗部170は、複数のサブ電極132のそれぞれと第2端子150の間に設けられている。複数の抵抗部170それぞれの抵抗値は、その抵抗部170に接続しているサブ電極132が第1端子140から離れるに従って変わっている。具体的には、抵抗部170それぞれの抵抗値は、第1端子140から離れるに従って小さくなっている。以下、詳細に説明する。
【0012】
基材100は、例えばガラス基板又は樹脂基板などの基板である。基材100は、他の材料によって形成されていても良い。基材100は、可撓性を有していても良い。基材100が可撓性を有している場合、基材100の厚さは、例えば0.5mm以上2mm以下である。本図に示す例において、基材100の平面形状は矩形である。そして、基材100は、第1辺101に対向する第3辺103を有している。
【0013】
第1電極110は、第2電極130よりも基材100側に形成されている。
図2に示す例では、第1電極110は、基材100の第1面の上に形成されている。基材100の第1面とは逆側の面(第2面)は光の射出面になっているため、第1電極110は、透明電極となっている。第1電極110は、例えばITO(Indium Thin Oxide)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)などの無機材料、またはポリチオフェン誘導体などの導電性高分子によって形成されている。第1電極110は、光が透過する程度に薄い金属薄膜であっても良い。第1電極110は、第1端子140に接続している。
【0014】
発光層120は、例えば、有機層であり、正孔輸送層、有機発光層、及び電子輸送層を積層したものである。なお、以下の説明において、正孔輸送層は第1電極110に接しており、電子輸送層は第2電極130に接している。このようにして、発光層120は第1電極110と第2電極130の間で挟持されている。
【0015】
なお、第1電極110と正孔輸送層との間には正孔注入層が形成されても良いし、第2電極130と電子輸送層との間には電子注入層が形成されてもよい。また、上記した各層の全てが必要ということではない。例えば電子輸送層内でホールと電子の再結合が生じている場合、電子輸送層が有機発光層の機能を兼ねているため、有機発光層は不要となる。また、これら第1電極110、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、及び第2電極130のうち、少なくとも1つは、インクジェット法などの塗布法を用いて形成されていても良い。また、発光層120と第2電極130との間には、LiFなどの無機材料で構成される電子注入層を設けても構わない。
【0016】
第2電極130は、発光層120に電気的に接続している。例えば第2電極130は、発光層120上に形成されていても良いし、発光層120の上に形成された導電層の上に形成されていても良い。第2電極130は、例えばAgやAlなどの金属材料で形成された金属層である。
【0017】
上記したように、第2電極130は、複数のサブ電極132に分割されている。サブ電極132は、第1辺101に沿う方向に、互いに平行に延在している。サブ電極132の一端は、第2端子150に対向している。
【0018】
複数のサブ電極132のそれぞれと第2端子150の間には、抵抗部170が設けられている。抵抗部170は、例えばサブ電極132を形成する材料よりも抵抗が大きい材料、例えば第1電極110と同じ材料によって形成されている。複数の抵抗部170の抵抗値は、第1端子140から離れるに従って変化している。例えば抵抗部170の抵抗値は、第1端子140から離れるに従って小さくなっている。例えば抵抗部170が第1電極110と同じ材料によって形成されている場合、抵抗部170の抵抗値は、例えば抵抗部170の幅によって調整されている。このようにすると、抵抗部170を第1電極110と同一工程で形成することができる。
【0019】
図3は、
図1及び
図2に示した発光装置10の等価回路図である。
図4は、発光層120の第1電極110側の面に加わる電位と第2電極130側の面に加わる電位の、第1端子140からの距離依存性を示す図である。
図5は、発光層120の輝度の第1端子140からの距離依存性を示す図である。これらの図は、第1電極110が陽極で第2電極130が陰極の場合を示している。
【0020】
第1電極110と第2電極130の間に電圧を印加すると、第1電極110から発光層120を経由して第2電極130に電流が流れ、これにより発光層120は発光する。ここで、発光装置10が面発光装置となっている場合、
図3に示すように、発光装置10は、第1端子140と第2端子150の間に、複数の発光ダイオードを並列に配置した構成と見なすことができる。ここで、第1電極110の抵抗はある程度大きいため、発光層120の第1電極110側の面に加わる電圧は、第1端子140から離れるに従って、ある程度低下する。このため、第2電極130が低抵抗のままでは、発光層120に加わる電圧は、第1端子140から離れるに従って小さくなってしまう。この現象を
図3の等価回路図を用いて説明すると、図中左側から右側に行くにつれて、各発光ダイオードに加わる電圧は徐々に小さくなっていく。この場合、
図5の比較例で示すように、発光装置10の輝度は、第1端子140から離れるに従って小さくなってしまう。
【0021】
これに対して本実施形態では、第2電極130を複数のサブ電極132に分割し、複数のサブ電極132のそれぞれと第2端子150の間に、抵抗部170を設けている。抵抗部170の抵抗値は、第1端子140から離れるに従って小さくなっている。このため、抵抗部170における電圧のロス量は、第1端子140から離れるに従って小さくなっている。
【0022】
その結果、第1電極110から発光層120に加わる電位が第1端子140から離れるに従って小さくなっても、発光層120に加わる電圧の第1端子140からの距離依存性(すなわち
図4における第1電極110と第2電極130の電位差)は小さくなる。従って、
図5に示すように、発光装置10の輝度の面内分布は小さくなる。また、第1電極110及び発光層120の膜厚に分布を持たせる必要がないため、発光層の光学干渉特性に面内分布が生じることも抑制できる。
【0023】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る発光装置10の構成を示す平面図である。
図7は、
図6のB−B断面を示す図である。本実施形態に係る発光装置10は、以下の点を除いて第1の実施形態と同様の構成である。
【0024】
まず、第2端子150は、基材100のうち第1辺101とは交わらない辺103(第2辺)に設けられている。本図に示す例では、基材100は矩形であるため、辺103は、第1辺101に対向する辺となっている。
【0025】
そして、
図7の断面図に示すように、第2電極130の膜厚は、第1端子140から離れるに従って膜厚が変化している。具体的には、第2電極130の膜厚は、第1端子140から離れるに従って厚くなっている。
【0026】
図8は、第2電極130に膜厚分布を持たせる方法の第1例を示す図である。本図に示す例において、第2電極130は、蒸着法を用いて形成される。そして蒸着源200と基材100の間には、シャッター300が設けられている。そして、蒸着中にシャッター300を徐々にスライドさせていくことによって、第2電極130の膜厚には分布が生じる。
【0027】
図9は、第2電極130に膜厚分布を持たせる方法の第2例を示す図である。本図に示す例において、基材100は蒸着源200に対して斜めに設けられている。具体的には、辺103から蒸着源200までの距離は、第1辺101から蒸着源200までの距離よりも短い。このため、第2電極130の膜厚には分布が生じる。
【0028】
本実施形態によれば、第2電極130の抵抗の単位面積当たりの抵抗は、第1端子140から離れるに従って小さくなっている。従って、第1の実施形態と同様の理由により、発光装置10の輝度の面内分布は小さくなる。また、第1電極110及び発光層120の膜厚に分布を持たせる必要がないため、発光層の光学干渉特性に面内分布が生じることも抑制できる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
図10は、実施例1に係る発光装置10の構成を示す図である。本実施例は、第1の実施形態に係る発光装置10の実施例であり、以下の点を除いて、第1の実施形態に説明した発光装置10と同様の構成である。
【0030】
まず、第1端子140は、第1辺101のほかに、第1辺101に対向する第3辺103にも設けられている。そして第1電極110は、2つの第1端子140のそれぞれに接続している。
【0031】
また、第2端子150及び抵抗部170は、第2辺102のみではなく第4辺104にも設けられている。そして第2電極130は、2つの第2端子150に接続している。同一のサブ電極132に接続している2つの抵抗部170は、互いに同一の抵抗値を有しているのが好ましい。
【0032】
このため、第1電極110及び第2電極130に、互いに対向する2つの方向から電位を与えることができる。これにより、第1電極110及び第2電極130それぞれにおける電力のロスを小さくすることができる。
【0033】
図11は、
図10のC−C断面を示している。本図に示す例において、第2端子150及び抵抗部170は、透明電極層162の上に低抵抗層164を積層した構成を有している。透明電極層162は、第1電極110と同一の材料によって形成されており、第1電極110と同一工程で形成されている。低抵抗層164は、例えば第2電極130と同一の材料によって形成されており、第2電極130と同一工程で形成されている。
【0034】
第1電極110と透明電極層162の間には絶縁層180が設けられている。絶縁層180は、例えばポリイミド系樹脂などの感光性の樹脂である。なお、絶縁層180はポリイミド系樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂であっても良い。
【0035】
そして第2電極130は、発光層120の上から絶縁層180の上を通って、抵抗部170に接続している。
【0036】
そして、複数の抵抗部170は、透明電極層162に対する低抵抗層164の面積比率が互いに異なっている。具体的には、抵抗部170の抵抗値を低くする場合には、透明電極層162のうち第2端子150となる部分のほぼ全面に、低抵抗層164が設けられている。一方、抵抗部170の抵抗値を高くする場合には、透明電極層162のうち抵抗部170となる領域には、低抵抗層164が一部のみに設けられている。そして低抵抗層164の長さL及び幅の少なくとも一方は、複数の抵抗部170のそれぞれで異なっている。これにより、複数の抵抗部170の抵抗値は互いに異なっている。
【0037】
図12は、発光層120の第1電極110側の面に加わる電位と第2電極130側の面に加わる電位の、第1辺101及び辺103からの距離依存性を示す図である。
図13は、発光層120の輝度の第1辺101及び辺103からの距離依存性を示す図である。
【0038】
上記したように、本実施形態では、第1電極110には、第1辺101側及び第3辺103側のそれぞれから電位が印加されている。このため、第1電極110の電位は、第1辺101から第3辺103までの間の中間点で最も小さくなる。
【0039】
これに対して本実施例において、抵抗部170の抵抗は、第1辺101から第3辺103までの間の中間点で最も小さくなっており、そこから第1辺101(又は第3辺103)に近づくにつれて大きくなっている。このため、
図13に示すように、抵抗部170を設けない場合(比較例)と比較して、実施例に係る発光装置10の輝度の面内分布は小さくなる。
【0040】
また、複数の抵抗部170の抵抗値は、低抵抗層164の長さL及び幅の少なくとも一方によって調整されている。従って、抵抗部170の抵抗値の調整を容易に行える。
【0041】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。