【実施例】
【0024】
[重合度の測定]
JIS K 6726:1994に準じて、ポリビニルアルコールを水酸化ナトリウムにて完全にケン化した後、粘度計を用いて水との相対粘度を求め、計算によって平均重合度を求めた。
[ケン化度の測定]
JIS K 6726:1994に準じて、ポリビニルアルコールを溶解後、滴定法により残存酢酸基の定量を行い、計算によってケン化度を求めた。
[粘度の測定]
JIS K 7117−1:1999に準じて、B型粘度計にて、20℃、4.0質量%のポリビニルアルコール水溶液の粘度を測定した。
[残存酢酸ナトリウム濃度の測定]
JIS K 6726:1994に準じて、ポリビニルアルコールを溶解後、指示薬を添加し、塩酸滴定法により測定した。単位は原試料に対する質量%である。
[重量平均分子量の測定]
テトラヒドロフランを溶媒としてポリスチレン系樹脂を溶解し、2質量%の溶液を作製し測定サンプルとした。カラムとしてPL gel MIXED−B(Polymer Labolatories社製)を3本直列でつなぎ、移動相としてテトラヒドロフランを使用し、SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)を使って、40℃にて重量平均分子量を測定した。
[シート成膜性の評価]
φ40mmのシート押出し機(田辺プラスチック機械社製)で樹脂を240℃で溶融混練し、T−ダイより押出し、無延伸シートを得た。得られた無延伸シートを、二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、ビカット軟化点+30℃の温度、300mm/minの速度で縦横に延伸してシートを得た。なお、ビカット軟化点は、JIS K 7206:1999に準じて、昇温速度50℃/h、荷重50Nの条件で求めることができる。得られたシートの状態を目視にて下記A〜Eの5段階で評価した。
A:透明かつ平滑なシートである
B:平滑だがわずかに不透明なシートである
C:平滑ではない
D:延伸および冷却時に割れや破断が生じる
E:延伸および冷却時に割れや破断が生じシートが得られない
[配向緩和応力の測定]
ASTM D1504に準じて、ポリスチレン系樹脂シートのシート押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の配向緩和応力を測定した。
[引裂き強度の評価]
JIS K 7128−2:1998に準じて、シート押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の最大引き裂き荷重を測定した。縦横の平均値を求め、下記A〜Cの3段階で評価した。
A:1500N/cm以上
B:1300N/cm以上、1500N/cm未満
C:1300N/cm未満
[耐折性の評価]
ASTM D2176に準じて、シート押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の耐折曲げ強さを測定した。縦横の平均値を求め、下記A〜Cの3段階で評価した。
A:10回以上
B:5回以上、10回未満
C:5回未満
[塗工外観の評価]
ポリスチレン系樹脂シートにコーティング液を塗工した後、塗工面の外観を、下記A〜Cの3段階で評価した。
A:塗工面は平滑で透明である
B:不透明さがあるが、シートを通して反対側を視認可能である
C:シートを通して反対側を視認不良である
[防曇性の評価]
(株)脇坂エンジニアリング社製の熱板成形機(HPT−460S)を用いて、ポリスチレン系樹脂シートを、弁当蓋の形状の金型(天面200×150mm、高さ30mm)で成形した。
得られた蓋容器に対応する容器本体に、1cm間隔の格子柄のシート(格子の線の太さは2mm)を貼付け、水300gを入れた後、得られた蓋容器をかぶせ、出力1500Wの電子レンジで1分間加熱した。加熱後に蓋容器を通した格子柄の見えやすさを、目視にて下記A〜Dの4段階で評価した。
A:格子柄がはっきり見える
B:わずかに格子柄が揺らいで見える
C:格子柄の揺らぎが多く、ぎらつく
D:全体的に曇った状態で、格子柄がはっきり見えない
[熱変形率の評価]
防曇性の評価にて成形した弁当蓋の容器の縦、横の寸法を測定し、110℃に設定したオーブンに30分間入れた。オーブン加熱後の容器の縦、横の寸法を測定し、縦、横それぞれについて、加熱前の寸法に対する、加熱前後での寸法差の割合を求め、熱変形率とした。縦、横の熱変形率のうち大きい方の値により、熱変形率を下記A〜Cの3段階で評価した。
A:変形率が2%未満
B:変形率が2%以上〜5%未満
C:変形率が5%以上
[臭気の評価]
防曇性の評価にて成形した弁当容器を使い、容器本体に水300gを入れ、蓋容器をかぶせて出力1500Wの電子レンジで1分間加熱した後、蓋を開けたときの臭いを官能評価した。
A:まったく酢酸の臭いはしない
B:わずかに酢酸の臭いを感じる
C:鼻につくほどの酢酸の臭いを感じる
[電子レンジ使用適性の評価]
防曇性の評価にて成形した弁当容器を使い、蓋の内側中央に2×2cmで中鎖脂肪酸油(花王(株)製 ココナードML)を付けた。容器本体に水300gを入れ、蓋容器をかぶせて出力1500Wの電子レンジで1分間加熱した後、中鎖脂肪酸油付着部分の様子を目視にて下記A〜Cの3段階で評価した。
A:変化なし
B:白化あり
C:穴あき
【0025】
[実施例1]
メタクリル酸含有量が10.0質量%のスチレン−メタクリル酸共重合体(重量平均分子量20万)をφ40mmのシート押出し機(田辺プラスチック機械社製)に供給し280℃で溶融混練し、T−ダイより押出し無延伸シートを得た。得られた無延伸シートを、二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、ビカット軟化点+30℃の温度にて、300mm/minの速度で縦、横方向にそれぞれ2.5倍延伸した後、厚みが0.3mmのポリスチレン系樹脂シートを得た。得られたシートの最大配向緩和応力は縦横ともに0.6MPa、最大配向緩和応力のピーク温度は131℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂シートの片方の面に、ポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度98モル%、4.0質量%での粘度28mPa・s(20℃)、酢酸ナトリウム残存率0.5質量%以下)を、1.0質量%の濃度でバーコーターにて塗工し、90℃で乾燥して、300mg/m
2の塗膜を形成し、耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得た。
得られた耐油性ポリスチレン系樹脂シートについて、成膜性、引裂き強度、耐折性、塗工外観、防曇性、熱変形率、臭気、電子レンジ使用適性を評価した。
ポリスチレン系樹脂の特性値およびシート物性、コーティング液、耐油性ポリスチレン系樹脂シートの性能評価については、表1に記載した。
[実施例2]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が8.0質量%、重量平均分子量が20万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が127℃であるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例3]
延伸倍率を変えて、縦方向に1.5倍、横方向に1.5倍とし、最大配向緩和応力が縦0.3MPa、横0.2MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例2と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例4]
延伸時の温度条件を変えて成膜し、最大配向緩和応力が縦0.8MPa、横0.9MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例2と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例5]
スチレン−メタクリル酸系共重合体の重量平均分子量が15万であるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例6]
スチレン−メタクリル酸系共重合体の重量平均分子量が20万であるポリスチレン系樹脂シートを用いて、重合度が2600、ケン化度が99モル%、4.0質量%での粘度(20℃)が64mPa・sであるポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例7]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が6.0質量%、重量平均分子量が40万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が123℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.7MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例8]
ポリビニルアルコールを、重合度1700、ケン化度85モル%、4.0質量%での粘度(20℃)23mPa・s、酢酸ナトリウム残存率0.5質量%以下のものを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例9]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が13.0質量%、重量平均分子量が20万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が137℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.6MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例10]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が15.0質量%、重量平均分子量が20万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が141℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.5MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例11]
無水マレイン酸含有率が10.0質量%のスチレン−無水マレイン酸系共重合体(重量平均分子量が25万)であり、最大配向緩和応力のピーク温度が133℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.6MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例12]
ポリビニルアルコールの塗膜を1000mg/m
2形成した以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例13]
ポリビニルアルコールの塗膜を600mg/m
2形成した以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例14]
ポリビニルアルコールの塗膜を100mg/m
2形成した以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[実施例15]
ポリビニルアルコールの塗膜を30mg/m
2形成した以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例1]
ポリスチレン(重量平均分子量30万)を用いて、最大配向緩和応力のピーク温度が112℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.5MPaのポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例2]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が3.0質量%、重量平均分子量が20万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が117℃であるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例3]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が18.0質量%、重量平均分子量が20万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が147℃であるポリスチレン系樹脂を用いて、縦方向に2.5倍、横方向に2.5倍延伸し、シートを作製しようと試みたが、シートが脆く割れてしまい、成膜できなかった。
[比較例4]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が10.0質量%、重量平均分子量が10万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が131℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.5MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例5]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が10.0質量%、重量平均分子量が13万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が131℃、最大配向緩和応力が縦横ともに0.6MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例6]
スチレン−メタクリル酸系共重合体のメタクリル酸含有量が6.0質量%、重量平均分子量が45万であり、最大配向緩和応力のピーク温度が123℃であるポリスチレン系樹脂を用いて、縦方向に2.5倍、横方向に2.5倍延伸し、シートを作製したが、シートにゲルやブツが混入しており、透明平滑なシートが得られなかった。
[比較例7]
延伸倍率を変えて、縦方向に1.2倍、横方向に対し垂直な方向に1.2倍とし、シートを作製しようと試みたが、延伸および冷却時に割れが生じやすかった。かろうじて得られたシートの最大配向緩和応力は0.1MPaであった。延伸倍率と最大配向緩和応力以外は実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例8]
延伸倍率を変えて、縦方向に6.0倍、横方向に対し垂直な方向に6.0倍とし、最大配向緩和応力が縦横ともに1.2MPaであるポリスチレン系樹脂シートを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例9]
延伸時の温度条件を変えて成膜し、最大配向緩和応力が縦横とも0.1MPaであるポリスチレン系樹脂シートを作製しようと試みたが、延伸および冷却時に割れが生じやすかった。かろうじて得られたシートについて、最大配向緩和応力以外は実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例10]
重合度が2000、ケン化度が80モル%、4.0質量%での粘度(20℃)が35mPa・s、酢酸ナトリウム残存率0.5質量%以下であるポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例11]
重合度が1000、ケン化度が86モル%、4.0室量%での粘度(20℃)が9mPa・s、酢酸ナトリウム残存率0.5%以下であるポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例12]
ポリビニルアルコールの塗膜を20mg/m
2形成した以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例13]
ポリビニルアルコールの塗膜を3200mg/m
2形成した以外は、実施例1と同様にして耐油性ポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例14]
重合度が2000、ケン化度が88モル%、4.0質量%での粘度(20℃)が30mPa・s、残存酢酸ナトリウム濃度が5.0質量%であるポリビニルアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例15]
ポリビニルアルコールに代わりに、ポリエチレンエマルジョン(中央理化工業(株)製 アクアテックスEC−3500)を塗工した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例16]
ポリビニルアルコールに代わりに、ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成(株)製 アロンビスSX)の水溶液を塗工した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例17]
ポリビニルアルコールに代わりに、カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業(株)製 CMCダイセル1110)の水溶液を塗工した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例18]
ポリビニルアルコールに代わりに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製 60SH−50)の水溶液を塗工した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
[比較例19]
ポリビニルアルコールに代わりに、アクリル酸アルキル共重合体のエマルジョン(東亞合成(株)製 ジュリマーET−410)を塗工した以外は、実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂シートを得て、評価した。
【0026】
【表1】