(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通常時電圧特性線、前記異常時電圧特性線及び前記判定電圧特性線は、各々、正の傾きを有する直線であり、前記判定電圧特性線は、前記通常時電圧特性線及び前記異常時電圧特性線から等距離にある電圧値の集合からなる直線であることを特徴とする請求項2記載の内燃機関用制御装置。
所定のアイドリングストップ条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後、前記ブレーキスイッチ判定部が前記ブレーキスイッチがオフ状態であると判定した場合に前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御部を更に備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内燃機関用制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1における構成では、ブレーキスイッチの接点が被水した場合には、ブレーキスイッチがオフであっても、ブレーキスイッチにリーク電流が流れてブレーキの状態を正確に判定することができない傾向が考えられる。かかる場合には、ブレーキランプに電流が流れてそれが点灯したり、運転者がブレーキレバーを握った状態でスタータを駆動させようとしているにもかかわらず始動不能になり、また、スタータを駆動しようとしていないにもかかわらず始動されてしまうことになるため、運転者に違和感を与える事態にもつながってしまう。
【0006】
また、付言すれば、バッテリの電圧は、経年劣化や、インジェクタや点火コイル等の負荷を駆動させた場合、又はジェネレータで発電した場合に変動する傾向にあるため、かかる場合にも、ブレーキの状態を正確に判定することができない傾向が考えられる。
【0007】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、ブレーキの作動状態を正確に判定することができ、運転者に与える違和感を抑制することができる内燃機関用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するべく、本発明は、バッテリの電圧を算出する電源電圧算出部と、ブレーキが作動した際にオン状態になるブレーキスイッチに対して印加される電圧に基づいて、ブレーキスイッチのオン/オフ状態を判定するブレーキスイッチ判定部と、前記ブレーキスイッチ判定部が前記ブレーキスイッチが前記オン状態であると判定した場合に、スタータモータの駆動を許可するスタータ駆動許可部と、を備えた内燃機関用制御装置において、
前記バッテリの前記電圧が所定下限値以上の範囲内にあるか否かを検出する劣化判定部と、前記
ブレーキスイッチに対して印加される前記電圧に応じて前記内燃機関用制御装置に入力されるブレーキスイッチ入力電圧の判定値を設定する判定値設定部
と、を更に備え、
前記判定値設定部は、前記劣化判定部が前記バッテリの前記電圧が前記所定下限値以上の前記範囲内にあることを検出した場合には、前記ブレーキスイッチがリークしていない状態でオン状態である場合における、前記バッテリの前記電圧及び前記ブレーキスイッチ入力電圧の関係を示す通常時電圧特性と、前記ブレーキスイッチがリークした状態でオフ状態である場合における、前記バッテリの前記電圧及び前記ブレーキスイッチ入力電圧の関係を示す異常時電圧特性と、の間の判定電圧特性が示す値に基づいて、前記バッテリの前記電圧に応じた前記判定値を設定し、前記ブレーキスイッチ判定部は、前
記ブレーキスイッチ入力電圧が前記判定値以上である場合には、前記ブレーキスイッチが前記オン状態であると判定し、前記ブレーキスイッチ入力電圧が前記判定値未満である場合には、前記ブレーキスイッチがオフ状態であると判定することを第1の局面とする。
【0009】
また、本発明は、第1の局面に加えて、前記判定値設定部は、前記バッテリの前記電圧及び前記ブレーキスイッチ入力電圧とで規定される直交座標系
で、前記通常時電圧特性を示す通常時電圧特性線
と、前記異常時電圧特性を示す異常時電圧特性線と、に挟まれた領域を通
って前記判定電圧特性を示す判定電圧特性線に基づいて、前記判定値を設定することを第2の局面とする。
【0010】
また、本発明は、第2の局面に加えて、前記通常時電圧特性線、前記異常時電圧特性線及び前記判定電圧特性線は、各々、正の傾きを有する直線であり、前記判定電圧特性線は、前記通常時電圧特性線及び前記異常時電圧特性線から等距離にある電圧値の集合からなる直線であることを第3の局面とする。
【0011】
また、本発明は、第1から第3のいずれかの局面に加え
て、前記判定値設定部は、前記劣化判定部が前記バッテリの前記電圧が
前記所定下限値以上の前記範囲内にないことを検出した場合には、所定の固定値を前記判定値として設定することを第4の局面とする。
【0012】
また、本発明は、第1から第4のいずれかの局面に加え
て、前記スタータ駆動許可部は、前記劣化判定部が前記バッテリの前記電圧が前記
所定下限値以上の前記範囲内にないことを検出した場合には、前記スタータモータの駆動を許可することを第5の局面とする。
【0013】
また、本発明は、第1から第5のいずれかの局面に加えて、所定のアイドリングストップ条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後、前記ブレーキスイッチ判定部が前記ブレーキスイッチがオフ状態であると判定した場合に前記エンジンを再始動させるアイドルストップ制御部を更に備えることを第6の局面とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明の第1の局面にかかる内燃機関用制御装置によれば、
バッテリの電圧が所定下限値以上の範囲内にあるか否かを検出する劣化判定部と、ブレーキスイッチに対して印加される電圧に応じて内燃機関用制御装置に入力されるブレーキスイッチ入力電圧の判定値を設定する判定値設定部
と、を更に備え、
判定値設定部が、劣化判定部がバッテリの電圧が所定下限値以上の範囲内にあることを検出した場合には、ブレーキスイッチがリークしていない状態でオン状態である場合における、バッテリの電圧及びブレーキスイッチ入力電圧の関係を示す通常時電圧特性と、ブレーキスイッチがリークした状態でオフ状態である場合における、バッテリの電圧及びブレーキスイッチ入力電圧の関係を示す異常時電圧特性と、の間の判定電圧特性が示す値に基づいて、バッテリの電圧に応じた判定値を設定し、ブレーキスイッチ判定部
が、ブレーキスイッチ入力電圧が判定値以上である場合には、ブレーキスイッチがオン状態であると判定し、ブレーキスイッチ入力電圧が判定値未満である場合には、ブレーキスイッチがオフ状態であると判定するものであるため、ブレーキの作動状態を正確に判定することができ、運転者に与える違和感を解消することができる。
【0015】
また、本発明の第2の局面にかかる内燃機関用制御装置によれば、判定値設定部が、バッテリの電圧及びブレーキスイッチ入力電圧とで規定される直交座標系
で、通常時電圧特性を示す通常時電圧特性線
と、異常時電圧特性を示す異常時電圧特性線と、に挟まれた領域を通
って判定電圧特性を示す判定電圧特性線に基づいて、判定値を設定するものであるため、ブレーキスイッチにリーク等の異常が発生した場合であっても、ブレーキスイッチの接続状態を正確に判定することができる。
【0016】
また、本発明の第3の局面にかかる内燃機関用制御装置によれば、通常時電圧特性線、異常時電圧特性線及び判定電圧特性線が、各々、正の傾きを有する直線であり、判定電圧特性線が、通常時電圧特性線及び異常時電圧特性線から等距離にある電圧値の集合からなる直線であるものであるため、ブレーキスイッチにリーク等の異常が発生した場合であっても、ブレーキスイッチの接続状態を確実かつ正確に判定することができる。
【0017】
また、本発明の第4の局面にかかる内燃機関用制御装置によれ
ば、判定値設定部が、劣化判定部がバッテリの電圧が所定
下限値以上の範囲内にないことを検出した場合には、所定の固定値を判定値として設定するものであるため、所定の範囲内においてブレーキスイッチの接続状態を判定することができる。
【0018】
また、本発明の第5の局面にかかる内燃機関用制御装置によれ
ば、スタータ駆動許可部が、劣化判定部がバッテリの電圧が所定
下限値以上の範囲内にないことを検出した場合には、スタータモータの駆動を許可するものであるため、バッテリの電圧が劣化や消費電力の増加等により低下している場合であっても、スタータモータの駆動を可能としてエンジンを始動することができる。
【0019】
また、本発明の第6の局面にかかる内燃機関用制御装置によれば、所定のアイドリングストップ条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後、ブレーキスイッチ判定部がブレーキスイッチがオフ状態であると判定した場合にエンジンを再始動させるアイドルストップ制御部を更に備えるものであるため、アイドルストップ時においてもブレーキスイッチの接続状態を確実かつ正確に判定して、エンジンを始動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における内燃機関用制御装置につき、詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
〔内燃機関用制御装置の構成〕
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施形態における内燃機関用制御装置の構成につき、詳細に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態における内燃機関用制御装置の構成を示すブロック図である。また、
図2は、本実施形態における内燃機関用制御装置のバッテリの電圧に対するブレーキスイッチ入力電圧の各種の電圧特性線を示す図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における内燃機関用制御装置1は、内燃機関であるエンジンを動力源とする車両、典型的には自動二輪車に搭載されるマイクロコンピュータ等の演算処理装置であり、具体的にはECU(Electronic Control Unit)である。内燃機関用制御装置1は、メモリから必要な制御プログラム及び制御デー
タを読み出して、スタータモータ制御処理を含むエンジン制御処理用等の制御プログラムを実行する。内燃機関用制御装置1は、自動二輪車に搭載された電源であるバッテリ32の電力を利用して動作する。
【0025】
具体的には、内燃機関用制御装置1は、自動二輪車のブレーキスイッチ11の一方の端子に電気的に接続するブレーキスイッチ入力回路12、各種のA/D変換器13a〜13c、ブレーキスイッチ11の他方の端子及びバッテリ32に電気的に接続するバッテリ電圧入力回路14、各種の入力回路15a〜15d、点火コイル34用の点火回路17、インジェクタ35用の駆動回路18、スタータモータ36用の駆動回路19、ROM20、RAM21、波形成形回路22、及びCPU(Central Processing Unit)30を備えている。
【0026】
ブレーキスイッチ入力回路12は、ブレーキスイッチ11に印加される入力電圧を、抵抗R1と抵抗R2とで構成される分圧回路により分圧したブレーキスイッチ入力電圧としてA/D変換器13aに供給する。ここで、ブレーキスイッチ入力回路12からA/D変換器13aに出力されるブレーキスイッチ入力電圧は、バッテリ32の電圧(典型的には開放時の端子間電圧値であり、バッテリ電圧、電源電圧とも記す)に(抵抗R2の抵抗値)/(抵抗R1の抵抗値+抵抗R2の抵抗値)を乗算した値となる。なお、ブレーキスイッチ11は、自動二輪車のブレーキレバーの操作に応じてオン/オフ動作するものであり、具体的には、ブレーキレバーが閉じられた際にオン状態になり、ブレーキレバーが解放された際にオフ状態になる。ブレーキスイッチ11がオン状態であるときには、バッテリ32からブレーキランプ31に電流が流れてブレーキランプ31が点灯し、ブレーキスイッチ11がオフ状態であるときには、バッテリ32からブレーキランプ31に電流が流れずブレーキランプ31は点灯しない。また、CPU30の構成やその演算処理上で許容される場合には、抵抗R2は省略することも可能である。
【0027】
A/D変換器13aは、ブレーキスイッチ入力回路12から入力されたアナログ形態の電圧信号をデジタル信号に変換した後にCPU30に出力する。
【0028】
バッテリ電圧入力回路14は、バッテリ32の電圧を取得し、所得した電圧をアナログ形態の電圧信号としてA/D変換器13bに出力する。
【0029】
A/D変換器13bは、バッテリ電圧入力回路14から入力されたアナログ形態の電圧信号をデジタル形態の電圧信号に変換した後にCPU30に出力する。
【0030】
入力回路15aは、自動二輪車のエンジンの回転数(エンジン回転数)を検出するためにクランクセンサ23から出力される電圧信号を取得し、取得した電圧信号を波形整形回路22に出力する。
【0031】
波形整形回路22は、入力回路15aから出力された電圧信号を整形した後にCPU30に出力する。
【0032】
入力回路15bは、自動二輪車のスロットルの開度(スロットル開度)を検出するためにスロットル開度センサ24から出力される電圧信号を取得し、取得した電圧信号をA/D変換器13cに出力する。
【0033】
A/D変換器13cは、入力回路15bから出力されたアナログ形態の電圧信号をデジタル形態の電圧信号に変換した後にCPU30に出力する。
【0034】
入力回路15cは、自動二輪車の車速を検出するために車速センサ25から出力される
パルス信号を取得し、取得したパルス信号をCPU30に出力する。
【0035】
入力回路15dは、自動二輪車のスタータスイッチ26の通電状態を検出するためにスタータスイッチ26から出力される電圧信号を取得し、取得した電圧信号をCPU30に出力する。
【0036】
点火回路17は、CPU30からの制御信号に従って点火コイル34によるエンジンの点火動作を制御する。
【0037】
駆動回路18は、CPU30からの制御信号に従ってインジェクタ35によるエンジンへの燃料供給動作を制御する。
【0038】
駆動回路19は、CPU30からの制御信号に従ってスタータモータ36によるエンジンのクランキング動作を制御する。
【0039】
ROM20は、不揮発性の記憶装置によって構成され、CPU30が実行する各種処理に関係する制御プログラムや制御データを記憶する。
【0040】
RAM21は、揮発性の記憶装置によって構成され、CPU30が実行中の処理に関係する制御プログラムや制御データを一時的に記憶するCPU30のワーキングエリアとして機能する。
【0041】
CPU30は、ROM20内に記憶されている制御プログラム及び制御データを用いて内燃機関用制御装置1全体の動作を制御するものであり、電源電圧算出部40、劣化判定部41、判定値設定部42、ブレーキスイッチ判定部43、スタータ駆動許可部44及びアイドルストップ制御部45を制御プログラムの実行時の機能ブロックとして備える。なお、これらは、CPU30外の電気回路として実現されてもよい。
【0042】
具体的には、電源電圧算出部40は、A/D変換器13bから入力された電圧信号を読み込んでバッテリ電圧VBATTを算出する。
【0043】
劣化判定部41は、電源電圧算出部40が算出したバッテリ電圧VBATTが所定範囲内であるか否かを判定する。ここで、かかる所定範囲は、バッテリ電圧VBATTがバッテリ32の使用時の劣化によりその電圧が低下することを考慮して定められた規準下限電圧値以上の範囲に設定され、規準下限電圧値はROM20から読み出して用いる。また、必要に応じて、かかる所定範囲に上限値を設けてもかまわない。劣化判定部41は、バッテリ電圧VBATTが所定範囲内である場合には、バッテリ32の電圧が正常であると判定する一方で、バッテリ電圧VBATTが所定範囲外である場合には、バッテリ32の電圧が異常であると判定する。
【0044】
判定値設定部42は、劣化判定部41が得た判定結果に基づき、バッテリ32の電圧が正常であるか否かを判定する。判定値設定部42は、バッテリ32の電圧が正常である場合には、A/D変換器13aから入力された電圧信号を読み込んでブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWを算出し、電源電圧算出部40が算出したバッテリ電圧VBATTとブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWとに基づいて判定値VBRKJDを設定する一方で、バッテリ32の電圧が異常である場合には、固定値VBRKXJDをROM20から読み出し、これを判定値VBRKJDとして設定する。
【0045】
詳しくは、
図2に示すように、バッテリ32の電圧VBATTを横軸にとり、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWを縦軸にとって、これらで規定される直交座標系で、ブレ
ーキスイッチ11が被水していない状態でオン状態である場合における、バッテリ32の電圧VBATT及びブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWの関係を示す通常時電圧特性線S1と、ブレーキスイッチ11が被水した状態でオフ状態である場合における、バッテリ32の電圧VBATT及びブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWの関係を示す被水時電圧特性線S2と、に挟まれた領域を通る判定電圧特性線D1が、判定値VBRKJDとすべき電圧値の集合として予め設定されてROM20内に記憶されている。
【0046】
ここで、通常時電圧特性線S1は、正の傾きを有し、かかる座標系の原点を通る直線である。被水時電圧特性線S2は、ブレーキスイッチ11が被水することにより、ブレーキスイッチ11自体はオフ状態であってもそれにリーク電流が流れることに起因して現れるものであり、正の傾きを有し、かかる座標系の原点を通る直線であるが、被水の影響により、その傾きが通常時電圧特性線S1のものよりも小さくなっている。この被水時電圧特性線S2は、ブレーキスイッチ11を含む電気回路系に何らかの異常があって、ブレーキスイッチ11自体はオフ状態であっても被水時と同様にそれにリーク電流が流れる場合にも適用可能である。このような場合には、被水時電圧特性線S2は、異常時電圧特性と表現することもでき、かかる座標系において、通常時電圧特性線S1よりも下方領域に規定されるものであれば、必ずしも直線でなくともよい。また、判定電圧特性線D1は必ずしも直線でなくともよいが、かかる座標系の原点を通るものである。
【0047】
また、通常時電圧特性線S1及び被水時電圧特性線S2の各々の傾きは、(抵抗R2の抵抗値)/(抵抗R1の抵抗値+抵抗R2の抵抗値)であるため、特に抵抗R2の値を調整することによりかかる各々の傾きを調整することができる。また、バッテリ32の電圧が正常である際に判定値VBRKJDを設定する確実性を考慮すれば、判定電圧特性線D1は、通常時電圧特性線S1及び被水時電圧特性線S2から等距離にある電圧値の集合からなる直線であることが好ましい。なお、ブレーキスイッチ11が被水していない状態でオフ状態である場合には、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWは0であり、これを同じ直交座標系でバッテリ電圧VBATTに対してプロットすれば、バッテリ32の電圧VBATT及びブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWの関係を示す通常時電圧特性線S3となる。
【0048】
つまり、判定値設定部42は、バッテリ32の電圧が正常である場合には、バッテリ電圧VBATTとブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWとに基づいて、ROM20内に記憶されている判定電圧特性線D1上の対応する電圧値を検索して、その検索した電圧値を読み出して判定値VBRKJDを設定する。
【0049】
併せて、所定の固定値VBRKXJDが、予め設定されてROM20内に記憶されている。かかる所定の固定値VBRKXJDを、同じ直交座標系でバッテリ電圧VBATTに対してプロットすれば、所定の固定値VBRKXJDの点の集合である判定電圧特性線D2として示される。ここで、バッテリ32の電圧が異常である場合に判定値VBRKJDを設定する確実性を考慮すれば、判定電圧特性線D2は、バッテリ32の定格電圧(例えば12V)とバッテリ32の充電時の電圧(例えば14.5V)との間で、被水時電圧特性線S2と交差する交点Pを持つことが好ましい。
【0050】
つまり、判定値設定部42は、バッテリ32の電圧が異常である場合には、ROM20内に記憶されている所定の固定値VBRKXJDを読み出して、それを判定値VBRKJDを設定する。
【0051】
ブレーキスイッチ判定部43は、判定値設定部42が算出したブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが、判定値設定部42が設定した判定値VBRKJD以上であるか否かを判定する。ブレーキスイッチ判定部43は、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが判
定値VBRKJD未満である場合には、ブレーキスイッチ11がオフ状態であると判定する一方で、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが判定値VBRKJD以上である場合には、ブレーキスイッチ11がオン状態であると判定する。
【0052】
スタータ駆動許可部44は、エンジンが始動済みであるか否かを判定する。スタータ駆動許可部44は、エンジンが始動済みでない場合には、入力回路15dからの電圧信号に基づきスタータスイッチ26がオン状態であるか否か、及びブレーキスイッチ11がオン状態であるか否かを各々判定し、スタータスイッチ26がオン状態、かつブレーキスイッチ11がオン状態である場合には、駆動回路19に所定の駆動制御信号を出力してスタータモータ36の駆動を許可し、駆動回路19を介してスタータモータ36を駆動する。スタータ駆動許可部44は、エンジンが始動済みである場合、及びエンジンが始動済みではないがスタータスイッチ26がオフ状態であるか、ブレーキスイッチ11がオフ状態である場合には、駆動回路19に所定の駆動制御信号を出力してスタータモータ36の駆動を不許可にし、スタータモータ36を駆動せずに停止させたままにする。
【0053】
アイドルストップ制御部45は、所定のアイドリングストップ条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後、ブレーキスイッチ判定部43がブレーキスイッチ11がオフ状態であると判定した場合に、点火コイル34、インジェクタ35及びスタータモータ36を作動してエンジンを再始動させる。なお、所定のアイドリングストップ条件には、例えば、車速センサ25から出力され入力回路15cを介してアイドルストップ制御部45に入力されるパルス信号から、自動二輪車の車速が所定値以下になる場合等が挙げられる。
【0054】
このような構成を有する内燃機関用制御装置1は、以下に示すスタータモータ制御処理を実行することにより、ブレーキの状態を正確に判定して、運転者に与える違和感を抑制する。以下、
図3を参照して、本実施形態における内燃機関用制御装置1のスタータモータ制御処理の流れにつき、詳細に説明する。
【0055】
〔スタータモータ制御処理〕
図3は、本実施形態における内燃機関用制御装置1のスタータモータ制御処理の流れを示すフロー図である。
【0056】
図3のフローチャートに示すように、本実施形態におけるスタータモータ制御処理は、自動二輪車に搭載されたバッテリ32から内燃機関用制御装置1に対して電力が供給されたタイミングで開始となり、スタータモータ制御処理はステップS1の処理に進む。かかるスタータモータ制御処理は、内燃機関用制御装置1に電力が供給されている間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0057】
まず、ステップS1の処理では、電源電圧算出部40が、A/D変換器13bから入力された電圧信号を読み込んでバッテリ電圧VBATTを算出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップS2の処理に進む。
【0058】
ステップS2の処理では、CPU30が、波形整形回路22から出力された電圧信号を用いてエンジンの回転数を算出し、エンジンが始動済みであるか否か判定する。この判定の結果、エンジンが始動済みである場合には、CPU30はスタータモータ制御処理をステップS3の処理に進める。一方で、エンジンが始動済みでない場合には、CPU30はスタータモータ制御処理をステップS6の処理に進める。
【0059】
ステップS3の処理では、劣化判定部41が、規準下限電圧値をROM20から読み出し、ステップS1の処理で算出されたバッテリ電圧VBATTが規準下限電圧値以上であ
る所定範囲内であるか否かを判定する。この判定の結果、バッテリ電圧VBATTが所定範囲内である場合には、劣化判定部41はスタータモータ制御処理をステップS4の処理に進める。一方で、バッテリ電圧VBATTが所定範囲外である場合には、劣化判定部41はスタータモータ制御処理をステップS5の処理に進める。
【0060】
ステップS4の処理では、劣化判定部41が、バッテリ32の電圧が正常であると判定する。これにより、ステップS4の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップS6の処理に進む。
【0061】
ステップS5の処理では、劣化判定部41が、バッテリ32の電圧が異常であると判定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップS6の処理に進む。
【0062】
ステップS6の処理では、判定値設定部42が、ステップS4の処理及びステップS5の処理で各々得られた判定結果に基づき、バッテリ32の電圧が正常であるか否かを判定する。この判定の結果、バッテリ32の電圧が正常である場合には、判定値設定部42はスタータモータ制御処理をステップS7の処理に進める。一方で、バッテリ32の電圧が異常である場合には、判定値設定部42はスタータモータ制御処理をステップS9の処理に進める。
【0063】
ステップS7の処理では、判定値設定部42が、A/D変換器13aから入力された電圧信号を読み込んでブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWを算出する。これにより、ステップS7の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップS8の処理に進む。
【0064】
ステップS8の処理では、判定値設定部42が、ステップS1の処理で算出されたバッテリ電圧VBATTに基づいて判定値VBRKJDを設定する。これにより、ステップS8の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップS10の処理に進む。
【0065】
ステップS9の処理では、判定値設定部42が、固定値VBRKXJDをROM20から読み出し、これを判定値VBRKJDとして設定する。これにより、ステップS9の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップ10の処理に進む。
【0066】
ステップS10の処理では、ブレーキスイッチ判定部43が、ステップS7の処理で算出したブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが、ステップS8の処理及びステップS9の処理で各々設定した判定値VBRKJD以上であるか否かを判定する。この判定の結果、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが判定値VBRKJD未満である場合には、ブレーキスイッチ判定部43はスタータモータ制御処理をステップS11の処理に進める。一方で、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが判定値VBRKJD以上である場合には、ブレーキスイッチ判定部43はスタータモータ制御処理をステップS12の処理に進める。
【0067】
ステップS11の処理では、ブレーキスイッチ判定部43が、ブレーキスイッチ11がオフ状態であると判定する。これにより、ステップS11の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップ13の処理に進む。
【0068】
ステップS12の処理では、ブレーキスイッチ判定部43が、ブレーキスイッチ11がオン状態であると判定する。これにより、ステップS12の処理は完了し、スタータモータ制御処理はステップS13の処理に進む。
【0069】
ステップS13の処理では、スタータ駆動許可部44が、ステップS2の処理で得られ
た判定結果からエンジンが始動済みであるか否かを判定する。この判定の結果、エンジンが始動済みでない場合には、スタータ駆動許可部44はスタータモータ制御処理をステップS14の処理に進める。一方で、エンジンが始動済みである場合には、スタータ駆動許可部44はスタータモータ制御処理をステップS17の処理に進める。
【0070】
ステップS14の処理では、スタータ駆動許可部44が、入力回路15dからの電圧信号に基づきスタータスイッチ26がオン状態であるか否か判定する。この判定の結果、スタータスイッチ26がオン状態である場合には、スタータ駆動許可部44はスタータモータ制御処理をステップS15の処理に進める。一方で、スタータスイッチ26がオフ状態である場合には、スタータ駆動許可部44はスタータモータ制御処理をステップS17の処理に進める。
【0071】
ステップS15の処理では、スタータ駆動許可部44が、ステップS11の処理及びステップS12の処理で各々得られた判定結果に基づき、ブレーキスイッチ11がオン状態であるか否かを判定する。この判定の結果、ブレーキスイッチ11がオン状態である場合には、スタータ駆動許可部44はスタータモータ制御処理をステップS16の処理に進める。一方で、ブレーキスイッチ11がオフ状態である場合には、スタータ駆動許可部44はスタータモータ制御処理をステップS17の処理に進める。
【0072】
ステップS16の処理では、スタータ駆動許可部44が、駆動回路19に所定の駆動制御信号を出力してスタータモータ36の駆動を許可し、駆動回路19を介してスタータモータ36を駆動する。これにより、ステップS16の処理は完了し、今回の一連のスタータモータ制御処理は終了する。
【0073】
ステップS17の処理では、スタータ駆動許可部44が、駆動回路19に所定の駆動制御信号を出力してスタータモータ36の駆動を不許可にし、スタータモータ36を駆動せずに停止させたままにする。これにより、ステップS17の処理は完了し、今回のスタータモータ制御処理は完了する。
【0074】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における内燃機関用制御装置1では、電源電圧算出部40が算出したバッテリ32の電圧VBATTに基づいて判定値VBRKJDを設定する判定値設定部42を更に備え、ブレーキスイッチ判定部43が、ブレーキスイッチ11に対して印加される電圧に応じて内燃機関用制御装置1に入力されるブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが判定値VBRKJD以上である場合には、ブレーキスイッチ11がオン状態であると判定し、ブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWが判定値VBRKJD未満である場合には、ブレーキスイッチ11がオフ状態であると判定するものであるため、ブレーキの作動状態を正確に判定することができ、運転者に与える違和感を解消することができる。
【0075】
また、本実施形態における内燃機関用制御装置1では、判定値設定部42が、バッテリ32の電圧VBATT及びブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWとで規定される直交座標系で、ブレーキスイッチ11がリークしていない状態でオン状態である場合における、バッテリ32の電圧VBATT及びブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWの関係を示す通常時電圧特性線S1と、ブレーキスイッチ11がリークした状態でオフ状態である場合における、バッテリ32の電圧VBATT及びブレーキスイッチ入力電圧VBRKSWの関係を示す異常時電圧特性線S2と、に挟まれた領域を通る判定電圧特性線D1に基づいて、判定値VBRKJDを設定するものであるため、ブレーキスイッチ11にリーク等の異常が発生した場合であっても、ブレーキスイッチ11の接続状態を正確に判定することができる。
【0076】
また、本実施形態における内燃機関用制御装置1では、通常時電圧特性線S1、異常時電圧特性線S2及び判定電圧特性線D1が、各々、正の傾きを有する直線であり、判定電圧特性線D1が、通常時電圧特性線S1及び異常時電圧特性線S2から等距離にある電圧値の集合からなる直線であるものであるため、ブレーキスイッチ11にリーク等の異常が発生した場合であっても、ブレーキスイッチ11の接続状態を確実かつ正確に判定することができる。
【0077】
また、本実施形態における内燃機関用制御装置1では、バッテリ32の電圧VBATTが所定値以下に低下していることを検出する劣化判定部41を更に備え、判定値設定部42が、劣化判定部41がバッテリ32の電圧VBATTが所定値以下に低下していることを検出した場合には、所定の固定値VBRKXJDを判定値VBRKJDとして設定するものであるため、所定の範囲内においてブレーキスイッチ11の接続状態を判定することができる。
【0078】
また、本実施形態における内燃機関用制御装置1では、バッテリ32の電圧VBATTが所定値以下に低下していることを検出する劣化判定部41を更に備え、スタータ駆動許可部44が、劣化判定部41がバッテリ32の電圧VBATTが所定値以下に低下していることを検出した場合には、スタータモータ36の駆動を許可するものであるため、バッテリ32の電圧VBATTが劣化や消費電力の増加等により低下している場合であっても、スタータモータ36の駆動を可能としてエンジンを始動することができる。
【0079】
また、本実施形態における内燃機関用制御装置1では、所定のアイドリングストップ条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後、ブレーキスイッチ判定部43がブレーキスイッチ11がオフ状態であると判定した場合にエンジンを再始動させるアイドルストップ制御部45を更に備えるものであるため、アイドルストップ時においてもブレーキスイッチ11の接続状態を確実かつ正確に判定して、エンジンを始動することができる。
【0080】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。