特許第6306885号(P6306885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6306885-皮膚の抗老化治療 図000025
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306885
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】皮膚の抗老化治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20060101AFI20180326BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20180326BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180326BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20180326BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20180326BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20180326BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20180326BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A61K38/08ZNA
   A61K8/64
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K9/107
   A61K9/12
   A61K9/14
   A61K9/48
   A61K9/70 401
   A61K9/72
   A61K38/10
   A61K38/16
   A61K47/34
   A61K47/50
   A61P17/00
   A61P43/00 121
   A61Q1/00
   A61Q1/02
   A61Q1/04
   A61Q1/10
   A61Q1/14
   A61Q19/08
【請求項の数】15
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2013-513575(P2013-513575)
(86)(22)【出願日】2011年6月8日
(65)【公表番号】特表2013-533226(P2013-533226A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011002799
(87)【国際公開番号】WO2011154126
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月6日
【審判番号】不服2016-10763(P2016-10763/J1)
【審判請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】12/797,222
(32)【優先日】2010年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510230218
【氏名又は名称】リポテック,エセ.ア.
【氏名又は名称原語表記】LIPOTEC,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】セブリアン プチェ,フアン
(72)【発明者】
【氏名】アルミニャーナ ドメネク,ヌリア
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ゴンサレス,ラケール
【合議体】
【審判長】 田村 聖子
【審判官】 關 政立
【審判官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/049945(WO,A1)
【文献】 特表2008−534658(JP,A)
【文献】 Int.J.Cosmet.Sci.,2002,24(5):303−10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00-35/76,38/00-38/58,8/00-8/99
CAPLUS/REG/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔および/または首の皮膚の領域に対して投与されたボツリヌス毒素による粗さおよび/またはしわの減少を得るための美容組成物の製造のための、ペプチドおよび少なくとも1つの美容的に許容可能な賦形剤または補助剤の使用において、
当該ペプチドが、美容的に有効な量の、配列番号11、配列番号4、または配列番号4中に含有される7〜12個の隣接するアミノ酸の配列の少なくとも1つから選択され、
当該配列が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、
一般式(I):
−AA−R
(I)
(式中、
AAは、配列番号11、配列番号4、または配列番号4中に含有されて配列番号11のアミノ酸配列を含む7〜12個の隣接するアミノ酸の配列からなる群から選択される配列であり;
は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR−C(O)−からなる群から選択され;
は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から選択され;
ここで、RおよびRは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され;
ここで、Rは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)、
その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的に許容可能な塩に従うことを特徴とする使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用において、Rが、H、一般式(III)
(式中、nは1〜100の範囲である)のポリマー、およびR−CO−(式中、Rは、置換または非置換C〜C24アルキルラジカル、置換または非置換C〜C24アルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24アルキニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニルラジカル、置換または非置換C〜C30アリールラジカル、置換または非置換C〜C24アラルキルラジカル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリルラジカル、2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキルラジカルからなる群から選択され、前記アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)からなる群から独立して選択されることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項1に記載の使用において、RおよびRが、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニル、置換または非置換C〜C30アリール、置換または非置換C〜C24アラルキル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリル、および2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(ここで、前記アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)、ならびに一般式(III)のポリマー(ここで、nは1〜100の範囲である)からなる群から独立して選択されることを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項1に記載の使用において、AAが、配列番号4、配列番号8、配列番号11、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26からなる群から選択される隣接するアミノ酸の配列であることを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、配列番号33または配列番号34で定義されるエンケファリンペンタペプチドのアミノ酸配列とは0、1または2つのアミノ酸が異なっているアミノ酸配列を有する一般式(II):
(式中、
XおよびYは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
R’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR−C(O)−からなる群から選択され、
R’は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
の美容的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的に許容可能な塩をさらに含有することを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項に記載の使用において、一般式(II)中に含有される隣接するアミノ酸の配列が、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38からなる群から選択される配列であることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、一般式(IV):
R’’−A−B−AA−AA−AA−AA−AA−AA−C−D−R’’
(IV)
(式中、
AAは、−Asp−、−Glu−および−Pro−からなる群から選択され、
AAは、−Asp−であり、
AAは、−Tyr−および−Arg−からなる群から選択され、
AAは、−Phe−および−Tyr−からなる群から選択され、
AAは、−Arg−および−Lys−からなる群から選択され、
AAは、−Leu−および−Met−からなる群から選択され、
A、B、CおよびDは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
p、r、sおよびtは独立して選択され、そして0〜1の範囲であり、
R’’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR’−C(O)−からなる群から選択され、
R’’は、−NR’R’、−OR’および−SR’からなる群から選択され、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、R’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
の美容的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的に許容可能な塩をさらに含有することを特徴とする使用。
【請求項8】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、局所経路、経皮経路、非経口経路、接着または非接着パッチ、経口、経鼻または吸入経路によって、あるいは皮内、筋肉内または皮下注射、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス、エレクトロポレーション、機械的圧力、浸透圧勾配、閉塞治療、マイクロインジェクション、針を用いない圧力注入、マイクロエレクトリックパッチによって投与されることを特徴とする使用。
【請求項9】
請求項1に記載の使用において、一般式(I)および/または(II)の前記ペプチドが、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、ミニ粒子、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体脂質ナノ粒子、ナノ構造脂質キャリア、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤−リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、マイクロエマルジョンおよびナノエマルジョンからなる群から選択される送達系または徐放系に取り込まれることを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、クリーム、多重エマルジョン、無水組成物、水性分散体、油、乳液、バルサム、フォーム、ローション、ジェル、クリームジェル、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、ヒドロゲル、リニメント、セッケン、シャンプー、コンディショナー、軟膏、ムース、ポマード、パウダー、バー、ペンシル、スプレーおよびエアロゾルからなる群から選択される製剤をもたらすことを特徴とする使用。
【請求項11】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、カプセル、バイアル、シリンジ、プレロードシリンジ、アンダーアイコンシーラー、メイクアップファンデーション、メイクアップ除去ローション、メイクアップ除去乳液、アイシャドー、口紅、リップグロス、リッププロテクターおよびパウダーからなる群から選択される製品に取り込まれて見出されることを特徴とする使用。
【請求項12】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、布、不織布、衣類または医療デバイスに取り込まれることを特徴とする使用。
【請求項13】
請求項1に記載の使用において、前記美容組成物が、環状アデノシン一リン酸合成刺激剤、エラスターゼ阻害剤、基質メタロプロテイナーゼ阻害剤、メラニン合成刺激剤または阻害剤、美白剤または脱色剤、着色促進剤、セルフタンニング剤、抗老化剤、NO−シンターゼ阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、リジルヒドロキシラーゼおよび/またはプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャーおよび/または大気汚染に対する薬剤、反応性カルボニル種スカベンジャー、抗糖化剤、抗ヒスタミン剤、抗ウィルス剤、抗寄生虫剤、乳化剤、皮膚軟化剤、有機溶媒、液体噴射剤、スキンおよび/またはヘアコンディショナー、湿潤剤、水分を保持する物質、アルファヒドロキシ酸、ベータヒドロキシ酸、保湿剤、上皮加水分解酵素、ビタミン、顔料または着色剤、色素、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、軟化剤、抗しわ剤、目の下のクマを低減または治療可能な薬剤、剥脱剤、抗菌剤、抗真菌剤、静真菌剤、殺菌剤、静菌剤、真皮または上皮の巨大分子合成を刺激する薬剤および/またはこれらの分解を阻害もしくは防止することができる薬剤、コラーゲン合成刺激剤、エラスチン合成刺激剤、デコリン合成刺激剤、ラミニン合成刺激剤、デフェンシン合成刺激剤、シャペロン合成刺激剤、アクアポリン合成刺激剤、ヒアルロン酸合成刺激剤、フィブロネクチン合成刺激剤、サーチュイン合成刺激剤、脂質および角質層成分の合成を刺激する薬剤、セラミドの合成を刺激する薬剤、コラーゲン分解を阻害する薬剤、エラスチン分解を阻害する薬剤、カテプシンGなどのセリンプロテアーゼを阻害する薬剤、線維芽細胞増殖を刺激する薬剤、ケラチノサイト増殖を刺激する薬剤、脂肪細胞増殖を刺激する薬剤、メラノサイト増殖を刺激する薬剤、ケラチノサイト分化を刺激する薬剤、脂肪細胞分化を刺激する薬剤、アセチルコリンエステラーゼを阻害する薬剤、皮膚弛緩剤、アセチルコリン受容体凝集を阻害する薬剤、筋収縮を阻害する薬剤、グリコサミノグリカン合成刺激剤、抗過角化剤、面皰溶解剤、抗乾癬剤、DNA修復剤、DNA保護剤、安定剤、抗掻痒剤、敏感肌の治療および/またはケアのための薬剤、固化剤、抗ストレッチマーク剤、結合剤、皮脂産生を制御する薬剤、脂肪分解剤または脂肪分解を刺激する薬剤、抗セルライト剤、制汗剤、治癒を刺激する薬剤、コアジュバント治癒剤、再上皮化を刺激する薬剤、コアジュバント再上皮化剤、サイトカイン成長因子、鎮静剤、抗炎症剤、麻酔剤、毛細血管循環および/または微小循環に作用する薬剤、血管新生を刺激する薬剤、血管透過性を阻害する薬剤、静脈強壮剤、細胞代謝に作用する薬剤、真皮−上皮接合部を改善する薬剤、発毛を誘発する薬剤、発毛阻害または遅延剤、防腐剤、芳香剤、キレート剤、植物抽出物、精油、海洋抽出物、バイオ発酵プロセスから得られる薬剤、無機塩、細胞抽出物および日焼け止め、紫外線Aおよび/またはBに対して活性な有機または無機光防護剤、ならびに/またはこれらの混合物の群から選択される美容的に有効な量の少なくとも1つの活性剤をさらに含むことを特徴とする使用。
【請求項14】
皮膚の抗老化治療のためのキットにおいて、
a. ボツリヌス毒素と、
b. 配列番号11、配列番号4、または配列番号4中に含有されて配列番号11のアミノ酸配列を含む7〜12個の隣接するアミノ酸の配列からなる群から選択され、一般式(I):
−AA−R
(I)
(式中、
AAは、配列番号11、配列番号4、または配列番号4中に含有されて配列番号11のアミノ酸配列を含む7〜12個の隣接するアミノ酸の配列からなる群から選択される配列であり、
は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR−C(O)−からなる群から選択され、
は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
に従う美容的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的に許容可能な塩と、
少なくとも1つの美容的に許容可能な賦形剤または補助剤と
を含む、顔および/または首における粗さおよび/またはしわの減少を得るための少なくとも1つの美容組成物と
を含むことを特徴とするキット。
【請求項15】
請求項14に記載のキットにおいて、前記美容組成物が、配列番号33または配列番号34で定義されるエンケファリンペンタペプチドのアミノ酸配列とは0、1または2つのアミノ酸が異なっているアミノ酸配列を有する一般式(II):
(式中、
XおよびYは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
R’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR−C(O)−からなる群から選択され、
R’は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
の美容的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的に許容可能な塩
および/または、一般式(IV):
R’’−A−B−AA−AA−AA−AA−AA−AA−C−D−R’’
(IV)
(式中、
AAは、−Asp−、−Glu−および−Pro−からなる群から選択され、
AAは、−Asp−であり、
AAは、−Tyr−および−Arg−からなる群から選択され、
AAは、−Phe−および−Tyr−からなる群から選択され、
AAは、−Arg−および−Lys−からなる群から選択され、
AAは、−Leu−および−Met−からなる群から選択され、
A、B、CおよびDは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
p、r、sおよびtは独立して選択され、そして0〜1の範囲であり、
R’’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR’−C(O)−からなる群から選択され、
R’’は、−NR’R’、−OR’および−SR’からなる群から選択され、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、R’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
の美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩
をさらに含有することを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚の抗老化治療のための方法に関し、美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのSNAP−25タンパク質由来のペプチドおよび/または少なくとも1つのエンケファリン由来のペプチドと、少なくとも1つの美容的または薬学的に許容可能な賦形剤または補助剤とを含む美容または医薬組成物の投与と併用して、ボツリヌス毒素を顔および首の皮膚の領域に投与することを含む。併用治療は、ボツリヌス毒素注射の抗老化効果の時間を長引かせる。
【背景技術】
【0002】
表情じわは、顔の皮膚上に顔の表情を引き起こす原因である顔面筋の収縮によって加えられるストレスから生じるしわである。表情じわは、通常、額、眉の間、口の周りおよび/または目の周りにある。顔の形、表情の頻度およびチック(1つまたはいくつかの筋肉、この場合は顔面筋の不随意性収縮によって引き起こされ、頻繁に繰り返される痙攣運動)の存在に応じて、表情じわは青年期の間にも現れ得る。日光への曝露などの外部要因は、しわの深さおよび視認性を際立たせる。
【0003】
これらの顔のしわの形成の基盤またはメカニズムは、皮膚を内側に引っ張る上皮の筋肉の緊張である。この筋肉の緊張は、顔面筋を支配する神経の活動亢進の結果である。神経の活動亢進は、筋繊維を興奮させる神経伝達物質の制御されない過剰な放出によって特徴付けられる。このため、神経細胞エキソサイトーシスを調節する分子は、筋肉の緊張を緩和し、その結果、しわを除去することに寄与する。
【0004】
ボツリヌス毒素注射、特に、血清型A(BOTOX(登録商標)Cosmetic/Vistabel,Allergan Inc.、Dysport(商標),Ipsen Biopharm,Ltd.およびAzzalure(登録商標),Galderma S.A.)は、このような目的のために広く使用されている[Carruthers,A.,Kiene,K.and Carruthers,J.(1996)”Botulinum A exotoxin use in clinical dermatology”J.Am.Acad.Dermatol.34,788−797、Cheng,C.M.(2007)“Cosmetic use of botulinum toxin type A in the elderly”Clin.Interv.Aging.2,81−83、Ascher,B,Talarico,S.,Cassuto,D.,Escobar,S.,Hexsel,D.,Jaen,P.,Monheit,G.,Rzany,B.,Viel,M.(2010)“International consensus recommendations on the aesthetic usage of botulinum toxin type A (Speywood Unit)−part I:upper facial wrinkles”J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol]。このような技術は、毒素を筋肉内に送達して局所効果を生じる。ボツリヌス神経毒素は、小胞に蓄積されたアセチルコリンの放出を指示および調節するSNARE複合体を構成するタンパク質のいずれかを切断することによって、神経筋接合部(神経−筋肉シナプス)における神経細胞エキソサイトーシスを阻害し、従って、近くの筋肉の脱力が起こる。
【0005】
毒素の麻痺効果は、しわの重症度および治療される筋肉の強度に応じて、平均3〜4か月間の持続期間で可逆的である[Rzany,B.,Ascher,B.,Monheit,G.D.(2010)“Treatment of glabellar lines with botulinum toxin type A(Speywood Unit):a clinical overview”J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.24,S1,1−14]。ボツリヌス毒素注射後の最大効力は、投与後最初の1か月の間に得られ、次の2〜3か月間に急激に低下する。すなわち、ボツリヌス毒素注射の2か月後には、しわ減少平均は、しわ減少平均の最大値の約40%であり、注射の4か月後には約20%である。そのため、治療は度重なるボツリヌス毒素の注射を必要とし、これは免疫応答を誘発することがあり、最後には治療効力の明らかな損失を引き起こすであろう。ボツリヌス毒素による治療効力のこの損失は、その後の治療で投与量を増大する必要性を伴い、そして次に免疫応答の増強を引き起こす。ボツリヌス毒素血清型Aによる治療に代わる手段として、血清型B、血清型Fおよび血清型Eなどの異なる血清型のボツリヌス毒素の使用が考えられた。それでもやはり、遅かれ早かれ免疫反応は再度起こり得るので、異なる血清型の適用が問題の解決になるとは考えられない。さらに、美的な改善のためのボツリヌス毒素による治療は副作用を免れず、注射部位反応および頭痛が最も頻繁に報告されている(10%以上の発生率)が、下垂、顔面不全麻痺、流涙増大またはドライアイ、眼瞼の浮腫、眼精疲労および目の周りの筋攣縮も無視できない発生率(1%以上〜10%未満)である。このような副作用は一時的なものであり、中程度の強度であるが、数週間持続することもあり、しわが再び現れたらすぐに志願者が毒素を再注射することを妨げ得る。ボツリヌス毒素の再注射の頻度は、利益と、治療により発現する潜在的な副作用との間のバランスを取らなければならない医師により同意されなければならない。通常の医学的な実践として、医師は6か月に1回の再注射を推奨する。
【0006】
美容産業は、ボツリヌス毒素の麻痺効果を模倣するが、より簡単でより安定な分子構造を有し、免疫応答を誘発せず、その製造コストが経済的である新しい分子を開発するために多大な努力をしてきた。ペプチドタイプの分子はこれらの特性に適合し、ボツリヌス毒素による治療がもたらす問題を解決する。特に、欧州特許第1180524B1号明細書および国際特許出願第2008/049945A1号パンフレット(Lipotec,S.A.)には、神経細胞エキソサイトーシスを阻害し、従って抗しわ効果を有するSNAP−25タンパク質のアミノ末端断片に由来するペプチドが記載されている。また、国際公開第97/34620A1号パンフレットには、SNAP−25タンパク質、特にそのカルボキシ末端のアミノ酸配列、または神経細胞エキソサイトーシスを阻害することができるシナプトブレビンもしくはシンタキシンのアミノ酸配列に由来するペプチドが記載されている。
【0007】
筋収縮を阻害するための異なるアプローチは、シナプス後レベルで作用することによって達成されるものである。これは、Lipotecにより販売され、アセチルコリン受容体のクラスター形成を妨害するInyline(商標)[INCI:アセチルヘキサペプチド−30]、またはPentapharm/DSMにより販売され、アセチルコリン受容体のアンタゴニストであるVialox(登録商標)[INCI:ペンタペプチド−3]およびSyn(登録商標)−Ake[INCI:ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドジアセテート]などのいくつかの市販の表情じわ防止ペプチドのアプローチである。
【0008】
表情じわの低減および/または除去のために記載されるその他の方法は、カルシウムチャネルアンタゴニスト、特に、マンガンの塩(仏国特許第2809005A1号明細書)、アルベリン(仏国特許第2798590A1号明細書)もしくはグルコン酸マグネシウム(仏国特許第2846885A1号明細書)の使用、または塩素イオンチャネルアゴニスト、例えば、グリシン(仏国特許第0704210A2号明細書)またはアイリス・パリダ(Iris pallida)抽出物(仏国特許第2746641A1号明細書)などの使用を伴う。
【0009】
神経細胞エキソサイトーシスを阻害するための異なる作用メカニズムは、欧州特許出願第1892247A1号明細書(Lipotec,S.A.)に記載されている。この文書には、顔のしわ、特に表情じわの低減および/または除去において有効なエンケファリン配列に由来するペプチドのファミリーが記載されており、ニューロン内のK電流を活性化して過分極効果を引き起こし、その結果、Ca2+依存性の神経細胞エキソサイトーシスの減少をもたらすことによって作用する。
【0010】
欧州特許出願第1892247A1号明細書(Lipotec,S.A.)には、SNAP−25由来のペプチドと、エンケファリン由来のペプチドとの組み合わせの効果も記載されている。筋収縮を弱めるための両方の相補的なメカニズムの組み合わせは、表情じわの低減において増強された持続的な効力を提供する。
【0011】
ボツリヌス毒素治療の実施における改善が依然として必要とされており、特に、治療から得られる利益を長引かせ、そして/あるいは美容的または薬学的に顕著な結果のための多重治療の必要性を最小限にすることが必要である。
【0012】
意外にも、本発明者らは、神経細胞エキソサイトーシスを遮断するSNAP−25タンパク質に由来するペプチド、および/またはCa2+依存性の神経細胞エキソサイトーシスを低減するエンケファリン由来のペプチドを含む美容または医薬組成物の、顔および/または首の皮膚の領域での投与は、ボツリヌス毒素注射の抗老化効果の時間を長引かせることを見出した。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、上記の必要性に対する解決法を提供する。本発明は、美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのSNAP−25タンパク質由来のペプチドおよび/または少なくとも1つのエンケファリン由来のペプチドと、少なくとも1つの美容的または薬学的に許容可能な賦形剤または補助剤とを含む美容または医薬組成物の投与と併用して、ボツリヌス毒素を顔および首の皮膚の領域に投与することを含む、皮膚の抗老化治療のための方法を提供する。皮膚の抗老化治療は、顔および/または首の皮膚のしわを低減または除去するための治療である。
【0014】
本発明は、ボツリヌス毒素注射による治療の一時的な効果の時間を長引かせるための簡単、有効かつリスクのない解決法を提供する。SNAP−25タンパク質に由来するペプチドおよび/またはエンケファリン由来のペプチドを含有する美容または医薬組成物の投与は、ボツリヌス毒素の投与の利益を通常の平均3〜4か月を超えて保持し、ボツリヌス毒素注射の頻度を1年に2回以下まで減少させることを可能にする。ボツリヌス毒素注射の抗しわ効果は次のボツリヌス毒素投与までより良く保持され、次のボツリヌス毒素の投与も遅延させることができ、このようにして、ボツリヌス毒素の度重なる投与の結果としての患者の免疫応答の可能性および治療の有効性の損失が低減される。本発明の治療は、しわ減少平均の最大値に対して、2か月後に50%よりも高く、4か月後に25%よりも高く、6か月後に10%よりも高いしわ減少平均を提供する。
【0015】
定義
本発明の理解を容易にするために、本発明との関連において使用される場合のいくつかの用語および語句の意味が含まれる。
【0016】
本発明との関連において、「老化」および「皮膚老化」という用語は、皮膚の外観の目に見える変化および手触りにより知覚できる変化の出現、例えばそして非限定的な意味で、しわ、小じわ、粗さ、表情線、ストレッチマーク、不連続性、深いしわ、弛緩症、皮膚のたるみ、例えば、頬のたるみ、目の下たるみ、二重顎、毛穴のサイズの増大、弾性の喪失、回復力の喪失、堅さの喪失、弾力線維症、異常分化、過剰な角質化、角化症、皮膚の変色(例えば、斑点、発赤または目の下のくまなど)、色素過剰領域の形成(例えば、しみ、肝斑またはそばかすなど)、滑らかさの喪失、オレンジピールスキン、コラーゲン構造の喪失、および角質層、真皮、上皮、脈管系(例えば、くも状静脈の形成または毛細血管拡張症)または皮膚に近い組織のその他の組織学的変化などを説明するために使用される。皮膚老化は、2つの主要な成分:時間の経過による経時的な老化と、紫外線(UV)放射への暴露レベルによる、光老化としても知られている光誘起性の老化とを有するプロセスである。タバコの煙への曝露、汚染への曝露、ならびに寒気および/または風のような気象条件などのいくつかの環境要因の総和も皮膚老化の原因となる。
【0017】
本発明との関連において、「皮膚の抗老化治療」は、ヒトの皮膚の老化を防止、遅延および/または低減するための治療である。
【0018】
本発明において、アミノ酸に対して使用される略語は、Eur.J.Biochem.,1984,138:9−37およびJ.Biol.Chem.,1989,264:633−673において指定されるIUPAC−IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclatureの規則に従う。従って、例えば、GlyはNH−CH−CO−OHを表し、Gly−はNH−CH−CO−を表し、−Glyは−NH−CH−CO−OHを表し、そして−Gly−は−NH−CH−CO−を表す。従って、ペプチド結合を表すハイフンは、記号の右側にある場合にはアミノ酸の1−カルボキシル基からOHを除去し(本明細書では、従来の非イオン化形態で表される)、記号の左側にある場合にはアミノ酸の2−アミノ基からHを除去し、両方の修飾が同じ記号に適用されてもよい。
【0019】
略語「Ac−」は、本明細書の記載では、アセチル(CH−CO−)基を指定するために使用され、略語「Palm−」は、パルミトイル(CH−(CH14−CO−)基を指定するために使用される。
【0020】
本発明との関連において、「非環状脂肪族基」と言いう用語は、本発明では、例えば(これらに限定されない)、線状または分枝状のアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を包含するために使用される。
【0021】
「アルキル基」という用語は、本発明では、1〜24個、好ましくは1〜16個、さらにより好ましくは1〜14個、さらにより好ましくは1〜12個、さらにより好ましくは1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された線状または分枝状の飽和基を指し、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ラウリル、ヘキサデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシル、2−メチルブチル、5−メチルヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「アルケニル基」という用語は、本発明では、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合、好ましくは1、2または3個の炭素−炭素二重結合(共役または非共役)と共に、2〜24個、好ましくは2〜16個、さらにより好ましくは2〜14個、さらにより好ましくは2〜12個、さらにより好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された線状または分枝状の不飽和基を指し、例えば、ビニル、オレイル、リノレイル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「アルキニル基」という用語は、本発明では、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合、好ましくは1、2または3個の炭素−炭素三重結合(共役または非共役)と共に、2〜24個、好ましくは2〜16個、さらにより好ましくは2〜14個、さらにより好ましくは2〜12個、さらにより好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された線状または分枝状の不飽和基を指し、例えば、エチニル基、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、ペンチニル、例えば、1−ペンチニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「アリシクリル基」という用語は、本発明では、例えば(これらに限定されない)、シクロアルキルまたはシクロアルケニルまたはシクロアルキニル基を包含するために使用される。
【0025】
「シクロアルキル」という用語は、本発明では、3〜24個、好ましくは3〜16個、さらにより好ましくは3〜14個、さらにより好ましくは3〜12個、さらにより好ましくは3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された単環式または多環式飽和脂肪族基を指し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロフェナレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「シクロアルケニル」という用語は、本発明では、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合、好ましくは1、2または3個の炭素−炭素二重結合(共役または非共役)と共に、5〜24個、好ましくは5〜16個、さらにより好ましくは5〜14個、さらにより好ましくは5〜12個、さらにより好ましくは5または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された単環式または多環式非芳香族脂肪族基を指し、例えば、シクロペンタ−1−エン−1−イル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「シクロアルキニル」という用語は、本発明では、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合、好ましくは1、2または3個の炭素−炭素三重結合(共役または非共役)と共に、8〜24個、好ましくは8〜16個、さらにより好ましくは8〜14個、さらにより好ましくは8〜12個、さらにより好ましくは8または9個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された単環式または多環式の非芳香族脂肪族基を指し、例えば、シクロオクタ−4−エン−2−イニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「アリール基」という用語は、本発明では、6〜30個、好ましくは6〜18個、さらにより好ましくは6〜10個、さらにより好ましくは6または10個の炭素原子を有し、炭素−炭素結合を介して連結されるかあるいは縮合された1、2、3または4個の芳香環で構成された芳香族基を指し、例えば、特に、フェニル、ナフチル、ジフェニル、インデニル、フェナントリルまたはアントラニル、あるいはアラルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「アラルキル基」という用語は、本発明では、7〜24個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りの部分に結合された、芳香族基で置換されたアルキル基を指し、例えば、−(CH1〜6−フェニル、−(CH1〜6−(1−ナフチル)、−(CH1〜6−(2−ナフチル)、−(CH1〜6−CH(フェニル)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「ヘテロシクリル基」という用語は、本発明では、3〜10個の環員(環原子のうちの1つまたは複数、好ましくは1、2または3個の環原子は、例えば、窒素、酸素または硫黄などの炭素とは異なる元素である)を有し、飽和または不飽和であり得る炭化水素環を指す。本発明の目的のために、複素環は、環式、単環式、二環式または三環式系であってもよく、縮合環系を含むことができ、場合により、ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素または硫黄の原子は酸化されていてもよく、窒素原子は、場合により、4級化されていてもよく、ヘテロシクリルラジカルは部分的または完全に飽和であっても芳香族であってもよい。より好ましくは、ヘテロシクリルという用語は5または6員環を指す。飽和ヘテロシクリル基の例は、ジオキサン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリンおよびチオモルホリンである。複素芳香族基としても知られている芳香族ヘテロシクリル基の例は、ピリジン、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、イミダゾリン、キノレイン、キノリン、ピリダジンおよびナフチリジンである。
【0031】
「ヘテロアリールアルキル基」という用語は、本発明では、単結合を介して分子の残りの部分に結合された、置換または非置換芳香族ヘテロシクリル基で置換されたアルキル基(アルキル基は、1〜3個の炭素原子を有し、芳香族ヘテロシクリル基は、2〜24個の炭素原子および1〜3個の炭素以外の原子を有する)を指し、例えば、−(CH1〜6−イミダゾリル、−(CH1〜6−トリアゾリル、−(CH1〜6−チエニル、−(CH1〜6−フリル−(CH1〜6−ピロリジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本技術分野において理解されるように、上記で定義された基には、ある程度の置換が存在し得る。従って、本発明の基のいずれかにおいて置換が存在してもよい。本発明の基において置換された基に対する本明細書での言及は、指定されるラジカルが、1つまたは複数の置換基によって1つまたは複数の利用可能な位置で、好ましくは1、2または3つの位置で、より好ましくは1または2つの位置で、さらにより好ましくは1つの位置で置換され得ることを示す。このような置換基としては、例えば、C〜Cアルキル、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシル、アミノ、C〜Cアミノアルキル、C〜Cカルボニルオキシル、C〜Cオキシカルボニル、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素およびヨウ素など)、シアノ、ニトロ、アジド、C〜Cアルキルスルホニル、チオール、C〜Cアルキルチオ、アリールオキシル(フェノキシルなど)、−NR(C=NR)NR(ここで、RおよびRは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜C10シクロアルキル、C〜C18アリール、C〜C17アラルキル、3〜10員を有する複素環式、またはアミノ保護基からなる群から独立して選択される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の方法
第1の態様では、本発明は、皮膚の抗老化治療のための方法を指し、
a. 有効な量のボツリヌス毒素を顔および首の皮膚の領域に投与するステップと、
b. 配列番号1で定義されるSNAP−25タンパク質のアミノ酸配列中に含有される6〜40個の隣接するアミノ酸の配列を含有し、一般式(I):
−AA−R
(I)
(式中、AAは、アミノ酸配列番号1中に含有される6〜40個の隣接するアミノ酸の配列である)
に従う美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩と、そして/あるいは
一般式(II):
(式中、
XおよびYは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR−C(O)−からなる群から独立して選択され、
およびR’は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から独立して選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
の少なくとも1つのエンケファリン由来のペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩と、
少なくとも1つの美容的または薬学的に許容可能な賦形剤または補助剤と
を含む美容または医薬組成物を1週間に1回〜1日に10回投与するステップと
を含む。
【0034】
、R’およびR、R’基はそれぞれ、ペプチド配列のアミノ末端(N−末端)およびカルボキシ末端(C−末端)の端部で結合される。
【0035】
1つの特定の実施形態では、皮膚の抗老化治療は、顔および/または首の皮膚のしわ、好ましくは表情じわを低減または除去するための治療である。
【0036】
別の特定の実施形態では、一般式(II)で表されるペプチドの好ましい構造は、Xが−Gly−、−Ala−または−Ser−であり、より好ましくは−D−Ala−または−D−Ser−である構造である。
【0037】
別の特定の実施形態では、一般式(II)で表されるペプチドの好ましい構造は、Yが−Leu−または−Met−であり、より好ましくは−L−Leu−または−L−Met−である構造である。
【0038】
別の特定の実施形態では、RおよびR’は、H、一般式(III)
(式中、nは1〜100、好ましくは1〜5の範囲である)のポリマー、およびR−CO−(式中、Rは、置換または非置換C〜C24アルキルラジカル、置換または非置換C〜C24アルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24アルキニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニルラジカル、置換または非置換C〜C30アリールラジカル、置換または非置換C〜C24アラルキルラジカル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリルラジカル、2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキルラジカルからなる群から選択され、ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)からなる群から独立して選択される。好ましくは、RおよびR’は、H、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘニル、オレオイルおよびリノレオイルからなる群から独立して選択される。より好ましくは、RおよびR’は、H、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルからなる群から独立して選択される。
【0039】
別の特定の実施形態では、RおよびR’は、−NR、−ORまたは−SRからなる群から独立して選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニル、置換または非置換C〜C30アリール、置換または非置換C〜C24アラルキル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリル、および2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)、ならびに一般式(III)のポリマー(ここで、nは1〜100、好ましくは1〜5の範囲である)からなる群から独立して選択される。場合により、RおよびRは飽和または不飽和炭素−炭素結合により結合されて、窒素原子と共に環を形成することができる。好ましくは、RおよびR’は、−NRまたは−ORからなる群から独立して選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C10シクロアルキル、置換または非置換C〜C15アリールおよび置換または非置換ヘテロシクリル(3〜10員)、置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(3〜10員の環および1〜6個の炭素原子のアルキル鎖を有する)、ならびに一般式(III)のポリマー(ここで、nは1〜100、好ましくは1〜5の範囲である)からなる群から独立して選択される。より好ましくは、RおよびRは、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、RはHであり、Rは、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態によると、RおよびR’は、−OHおよび−NHからなる群から独立して選択される。
【0040】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれるペプチドは、立体異性体または立体異性体の混合物として存在することができ、例えば、これらを構成するアミノ酸は、互いに独立して、L−配置、D−配置を有するか、あるいはラセミ体であり得る。従って、不斉炭素の数および存在する異性体または異性体混合物に応じて、異性体混合物、およびラセミ体またはジアステレオマー混合物または純粋なジアステレオマーもしくはエナンチオマーを得ることが可能である。本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれるペプチドの好ましい構造は、純粋な異性体、すなわち、エナンチオマーまたはジアステレオマーである。例えば、他に記載されない限り、1つのアミノ酸が−Ala−であり得ると示される場合、これは、−L−Ala−、−D−Ala−、または両方のラセミもしくは非ラセミ混合物から選択されると理解される。本明細書に記載される方法は、適切な立体配置を有するアミノ酸を選択することによって、当業者が本発明のペプチド誘導体の立体異性体のそれぞれを得ることができるようにする。
【0041】
本発明との関連では、「SNAP−25タンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列」は、配列番号1で定義されるSNAP−25タンパク質のアミノ酸配列の任意のアミノ酸配列もしくは断片、または少なくとも1つのアミノ酸の突然変異、挿入、欠失もしくは置換によって、あるいは遺伝暗号の縮退によって(ただし、SNAP−25タンパク質の活性を有するペプチドに相当することを条件とする)、配列番号1とは異なる任意のアミノ酸配列を意味する。
【0042】
突然変異、挿入または置換は、遺伝的にコードされたアミノ酸またはコードされないアミノ酸(天然または非天然)、例えば(これらに限定されない)、特に、シトルリン、オルニチン、サルコシン、デスモシン、ノルバリン、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、2−アミノイソ酪酸、6−アミノへキサン酸、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、2−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−クロロフェニルアラニン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸、シクロセリン、カルニチン、シスチン、ペニシラミン、ピログルタミン酸、チエニルアラニン、ヒドロキシプロリン、allo−イソロイシン、allo−スレオニン、イソニペコチン酸、イソセリン、フェニルグリシン、スタチン、ベータ−アラニン、ノルロイシン、N−メチルアミノ酸、ベータ−またはガンマ−アミノ酸、およびこれらの誘導体よって起こり得る。非天然アミノ酸アミノ酸の一覧は、“The Peptides”,Vol 5 (1983),Chapter VI,Gross,E.and Meienhofer,J.,Eds.,Academic Press,New York,USAにおけるRoberts D.C.およびVellaccio F.による論文“Unusual amino acids in peptide synthesis”において、あるいは特に、NeoMPS、Bachem、Novabiochem、Sigma−Aldrich、Peptides International、Advanced ChemTech、Chem−Impex、Maybridge Chemical、Chirotech Technology、Peninsula LaboratoriesまたはRSP Amino Acid Analoguesなどのこの分野を専門とする会社の販売カタログにおいて見出すことができる。
【0043】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれる配列番号1で定義されるSNAP−25のアミノ酸配列に由来するペプチドの中で、好ましい配列は、配列番号2で定義されるSNAP−25タンパク質のアミノ末端領域または配列番号3で定義されるSNAP−25タンパク質のカルボキシ末端領域の配列中に含有される、より好ましくは、配列番号4で定義される残基10〜22の間の領域中、または配列番号5で定義される残基25〜40の間の領域中に含有される、または配列番号6で定義される残基65〜81の間の領域中に含有される、または配列番号7で定義される残基181〜206の間の領域中に含有される、より正確には、配列番号8で定義される残基12〜19の間の領域中に含有される、または配列番号9で定義される残基26〜38の間の領域中に含有される、または配列番号10で定義される残基68〜79の間の領域中に含有される、または特に、配列番号11で定義される残基12〜17の間の領域中に含有される隣接するアミノ酸の配列、および配列番号4中に含有される7〜12個の隣接するアミノ酸の配列(前記配列は、配列番号11のアミノ酸配列を含む)を有するものである。
【0044】
特に、好ましいアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32からなる群から選択される配列である。より好ましくは、アミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号11および配列番号26からなる群から選択される配列である。
【0045】
さらに、本発明の方法の美容または医薬組成物は、不可逆的に化学修飾されたSNAP−25タンパク質のアミノ酸配列に由来するペプチドと実質的に相同であるペプチドも含む。「実質的に相同であるペプチド」は、本発明では、前述の配列のいずれかに対して少なくとも60%、好ましくは80%、そしてより好ましくは95%同一であるアミノ酸配列を意味する。「同一性の割合」は、2つの比較されるアミノ酸配列の最適アライメントの後、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を指し、この割合は純粋に統計的なものであり、2つのアミノ酸配列間の差異は、配列に沿ってランダムに分配される。「最適アライメント」という用語は、より高い割合の同一性をもたらすアミノ酸配列のアライメントを意味する。同一性の割合は、比較される2つの配列においてアミノ酸が同一である同一位置の数を決定し、同一位置の数を比較される位置の数によって割り、その結果に100を掛けることによって計算され、2つの配列間の同一性の割合が得られる。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、手作業で行うこともできるし、あるいは、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/のサイトでオンライによって入手可能なBLASTアルゴリズム(Basic Local Alignment Search Tool)などのソフトウェアによって行うこともできる。
【0046】
本発明との関連では、「エンケファリン由来のペプチド」は、配列番号33または配列番号34で定義されるエンケファリンペンタペプチドのアミノ酸配列とは0、1または2つのアミノ酸が異なっているアミノ酸配列を有する一般式(II)のペンタペプチドを意味する。
【0047】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれる一般式(II)で定義されるペプチドの中で、好ましいアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38からなる群から選択される配列である。より好ましくは、アミノ酸配列は、配列番号33および配列番号35からなる群から選択される配列である。
【0048】
本発明の方法の美容または医薬組成物は、さらに、一般式(IV):
R’’−A−B−AA−AA−AA−AA−AA−AA−C−D−R’’
(IV)
の美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩を含むことができ、式中、
AAは、−Asp−、−Glu−および−Pro−からなる群から選択され、
AAは、−Asp−であり、
AAは、−Tyr−および−Arg−からなる群から選択され、
AAは、−Phe−および−Tyr−からなる群から選択され、
AAは、−Arg−および−Lys−からなる群から選択され、
AAは、−Leu−および−Met−からなる群から選択され、
A、B、CおよびDは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
p、r、sおよびtは独立して選択され、そして0〜1の範囲であり、
R’’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR’−C(O)−からなる群から選択され、
R’’は、−NR’R’、−OR’および−SR’からなる群から選択され、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、R’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される。
【0049】
R’’およびR’’基はそれぞれ、ペプチド配列のアミノ末端(N−末端)およびカルボキシ末端(C−末端)の端部で結合される。
【0050】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、およびR’−CO−からなる群から選択され、ここで、R’は、置換または非置換C〜C24アルキルラジカル、置換または非置換C〜C24アルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24アルキニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニルラジカル、置換または非置換C〜C30アリールラジカル、置換または非置換C〜C24アラルキルラジカル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリルラジカル、2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキルラジカルからなる群から選択され、ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する。好ましくは、R’’は、H、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘニル、オレオイルおよびリノレオイルからなる群から選択される。より好ましくは、R’’は、H、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルである。
【0051】
別の特定の実施形態では、R’’は−NR’R’、−OR’または−SR’であり、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニル、置換または非置換C〜C30アリール、置換または非置換C〜C24アラルキル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリル、および2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキル基からなる群から独立して選択され、ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する。場合により、R’およびR’は飽和または不飽和炭素−炭素結合により結合されて、窒素原子と共に環を形成することができる。好ましくは、R’’は−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C10シクロアルキル、置換または非置換C〜C15アリールおよび置換または非置換ヘテロシクリル(3〜10員)、置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(3〜10員の環および1〜6個の炭素原子のアルキル鎖を有する)からなる群から独立して選択される。より好ましくは、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、R’はHであり、R’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態によると、R’’は、−OHおよび−NHから選択される。
【0052】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Leu−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0053】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Pro−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Lys−であり、AAは−L−Leu−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0054】
別の特定の実施形態では、R’’はH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Phe−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Met−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0055】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Met−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルまたはヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくはR’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0056】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され,AAは−L−Pro−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Met−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0057】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、好ましくは、R’’は、H、アセチルおよびパルミトイルからなる群から選択され、そしてR’’は、−OHまたは−NHからなる群から選択される。
【0058】
別の特定の実施形態では、一般式(IV)のペプチドは、Ac−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Leu−NH、Palm−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Leu−NH、Ac−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Lys−L−Leu−NH、Palm−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Lys−L−Leu−NH、Ac−L−Glu−L−Asp−L−Arg−L−Phe−L−Arg−L−Met−NH、Palm−L−Glu−L−Asp−L−Arg−L−Phe−L−Arg−L−Met−NH、Ac−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NH、Palm−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NH、Ac−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NH、およびPalm−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NHからなる群から選択される。
【0059】
本発明の範囲内には、本発明の方法の美容または医薬組成物のペプチドの美容的または薬学的に許容可能な塩も含まれる。「美容的または薬学的に許容可能な塩」という用語は、本発明では、動物、より詳細にはヒトにおける使用のために一般に承認されている塩を意味し、例えば(これらに限定されない)、特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛もしくはアルミニウムなどの無機塩、または、例えば(これらに限定されない)、特に、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジンもしくはピペラジンなどの有機塩のいずれかである塩基付加塩か、あるいは、例えば(これらに限定されない)、特に、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩、オレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(pamoate)もしくはグルコン酸塩などの有機塩、または、例えば(これらに限定されない)、特に、塩化物、硫酸塩、ホウ酸塩もしくは炭酸塩などの無機塩のいずれかである酸付加塩を形成するために使用される塩が含まれる。塩の性質は重要でないが、ただし、美容的または薬学的に許容可能であることを条件とする。本発明の方法の美容または医薬組成物のペプチドの美容的または薬学的に許容可能な塩は、最新技術で周知の従来の方法によって得ることができる[Berge,S.M.,Bighley,L.D.,and Monkhouse,D.C.(1977)“Pharmaceutical Salts”J.Pharm.Sci 66:1−19]。
【0060】
さらに、本発明の方法の美容または医薬組成物のペプチドは、可逆的な化学修飾を受けて、その生物学的利用能を高め、血液脳関門または上皮組織の通過を容易にすることができる。
【0061】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれるペプチドは、哺乳類、好ましくはヒトの体内においてペプチドとその作用部位との接触を生じる任意の手段によって投与することができる。美容または医薬組成物は、当業者に知られている従来の方法によって調製することができる[“Harry’s Cosmeticology”,Eight[sic]edition(2000)Rieger M.M.,ed.,New York Chemical Pub.,NY,US、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Twentieth edition(2003)Genaro A.R.,ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,US]。
【0062】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれるペプチドは、その配列の性質またはこれらが有するそのアミノ末端および/またはカルボキシ末端において可能な修飾に応じて、水中で異なる溶解度を有する。従って、ペプチドは、水溶液によって美容または医薬組成物中に取り込むことができ、水に不溶性ものは、例えば(これらに限定されない)、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコールまたはポリエチレングリコールまたはこれらの任意の組み合わせなどの美容的または薬学的に許容可能な従来の溶媒中に可溶化させることができる。
【0063】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれるペプチド、その立体異性体、これらの混合物またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩の有効な量、およびその投薬量は、年齢、被験者の状態、経路、投与頻度および使用されるペプチドの特定の性質を含むいくつかの因子に依存するであろう。
【0064】
「有効な量」は、非毒性であるが所望の効果を提供するのに十分な量の少なくとも1つのペプチドを意味する。本発明の方法の美容または医薬組成物の一般式(I)および/または(II)の任意のペプチドは、所望の効果を達成するのに有効な濃度、好ましくは、組成物の全重量に関して、0.00000001%(重量で)と20%(重量で)との間、好ましくは0.000001%(重量で)と20%(重量で)との間、より好ましくは0.0001%(重量で)と10%(重量で)との間、そしてさらにより好ましくは0.0001%(重量で)と(重量で)との間の濃度で使用される。
【0065】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれる一般式(I)および/または(II)のペプチドは、送達系および/または徐放系に取り込むこともできる。
【0066】
「送達系」という用語は、本発明のペプチド誘導体が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはキャリアを指す。これらのキャリアは、例えば(これらに限定されない)、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、硫酸エーテル、硫酸塩、ベタイン、グルコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキシノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロース、グリセロール、ジギトニンなどの石油、動物、植物または合成起源のものを含む、水、油および界面活性剤などの液体であり得る。E.W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Sciences”には、適切なキャリアとして、希釈剤、補助剤または賦形剤が記載されている。
【0067】
「徐放」という用語は従来の意味で使用され、化合物をある期間徐々に放出させる、前記化合物のための送達系を指し、好ましくは、化合物の放出レベルはある期間にわたって一定であるが、必ずしもそうとは限らない。
【0068】
送達系または徐放系の例は、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、ミニ粒子(miniparticle)、ミリ粒子(milliparticle)、マイクロ粒子(microparticle)、ナノ粒子および固体脂質ナノ粒子、ナノ構造脂質キャリア、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤−リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェアおよびナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、ならびにマイクロエマルジョンおよびナノエマルジョンであり、これらは、活性成分のより高い浸透を達成するため、そして/あるいはその薬物動態学的および薬力学的な特性を改善するために添加することができる。
【0069】
徐放系は、従来技術において既知の方法によって調製することができ、これらを含有する組成物は、例えば、局所投与(接着パッチ、非接着パッチおよびマイクロエレクトリックパッチを含む)によって、あるいは全身投与(例えば、体の特定の部位への皮下移植もしくは皮下注射、または直接移植もしくは直接注射)によって投与することができ、好ましくは、比較的一定の量の本発明のペプチドを放出すべきである。徐放系に含有されるペプチドの量は、例えば、組成物が投与される部位、本発明の方法の美容または医薬組成物のペプチドの放出の動態学および持続期間、ならびに使用されるペプチドの投与の頻度および特定の性質に依存するであろう。
【0070】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれるペプチドは、特に、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプンまたはマルトデキストリンなどの(限定はされない)固体有機ポリマーまたは固体無機キャリアに吸着させることもできる。
【0071】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物は、皮膚と直接接触する布、不織布および医療デバイスが、布、不織布または医療デバイスへの固定システムの生分解によって、あるいはこれらと身体との接触、身体の水分、皮膚のpHによって、あるいは体温によってペプチドを放出するように、布、不織布および医療デバイスに取り込むこともできる。同様に、布および不織布を使用して、身体に直接接触する衣類を作ることができる。
【0072】
上記の送達系および/または徐放系を含む、布、不織布、衣類、医療デバイスおよびこれらにペプチドを固定する手段の例は文献に記載されているのを見出すことができ、最新技術で知られている[Schaab C.K.(1986)”Impregnating Fabrics With Microcapsules”,HAPPI May 1986、Nelson G.(2002)“Application of microencapsulation in textiles”Int.J.Pharm.242:55−62、“Biofunctional Textiles and the Skin”(2006)Curr.Probl.Dermatol.V.33,Hipler U.C.and Elsner P.,eds.S.Karger AG,Basel,Switzerland、Malcom R.K.,McCullagh S.D.,Woolfson A.D.,Gorman S.P.,Jones D.S.and Cuddy J.(2004)“Controlled release of 3a model antibacterial drug from a novel self−lubricating silicone biomaterial”J.Cont.Release 97:313−320]。好ましい布、不織布、衣類および医療デバイスは、包帯、ガーゼ、ワイプ、接着パッチ、非接着パッチ、マイクロエレクトリックパッチおよび/またはフェイスマスクである。
【0073】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物は、所望の剤形の処方に必要である許容可能な賦形剤を場合により含有し得る、局所適用または経皮適用のための種々のタイプの製剤において使用することができる[Fauli i Trillo C.(1993)in“Tratado de farmacia Galenica”,Luzan 5,S.A.Ediciones,Madrid]。
【0074】
美容または医薬組成物は、任意の固体、液体または半固体製剤で製造することができ、例えば、クリーム、多重エマルジョン(例えば、水中油および/またはシリコーンエマルジョン、油および/またはシリコーン中水エマルジョン、水/油/水または水/シリコーン/水型エマルジョン、および油/水/油またはシリコーン/水/シリコーン型エマルジョンであるが、これらに限定されない)、無水組成物、水性分散体、油、乳液、バルサム、フォーム、ローション、ジェル、クリームジェル、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、ヒドロゲル、リニメント、血清(sera)、セッケン、シャンプー、コンディショナー、血清(serums)、多糖フィルム、軟膏、ムース、ポマード、パウダー、バー(bar)、ペンシル(pencil)およびスプレーまたはエアロゾル(スプレー)などであるがこれらに限定されず、つけたままのタイプ(leave−on)および洗い流すタイプ(rinse−off)の製剤が含まれる。これらの製剤は、当業者に既知の技術を用いて、カプセル、バイアル、シリンジ、プレロードシリンジ、ワイプ、接着パッチ、非接着パッチ、マイクロエレクトリックパッチまたはフェイスマスクなどの(これらに限定されない)種々のタイプの固体付属品に取り込むこともできるし、あるいは、特に、メイクアップファンデーション(液体ファンデーションおよびコンパクトファンデーションなど)、メイクアップ除去ローション、メイクアップ除去乳液、アンダーアイコンシーラー、アイシャドー、口紅、リッププロテクター、リップグロスおよびパウダーなどの種々のメイクアップ製品に取り込むこともできる。
【0075】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物は、さらに、例えば(これらに限定されない)、特に、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)、アルコール、アセトン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどの、一般式(I)および/または(II)のペプチド、その立体異性体、これらの混合物および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩の局所適用または経皮適用のために経皮吸収を高める薬剤を含むことができる。さらに、本発明の方法の美容または医薬組成物は、本発明の方法の美容または医薬組成物のペプチドのより高い浸透を達成するために、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス、エレクトロポレーション、マイクロエレクトリックパッチ(microelectric patch)、機械的圧力、浸透圧勾配、密封(occlusive)治療、マイクロインジェクション、もしくは圧力を用いる無針注射(例えば、酸素圧による注射など)、またはこれらの任意の組み合わせによって、治療すべき局所領域に局所適用または経皮適用で適用することができる。
【0076】
本発明の方法の組成物は、局所経路または経皮経路に加えて、任意の他の適切な手段によって、例えば、経腸経路または非経口経路によって投与することもでき、所望の剤形での処方に必要である許容可能な賦形剤を含み得る。活性成分の種々の剤形およびこれらを得るために必要とされる賦形剤の概説は、例えば、“Tratado de Farmacia Galenica”,C.Fauli i Trillo,1993,Luzan 5,S.A.Ediciones,Madridにおいて見出すことができる。
【0077】
本発明との関連では、「経腸または非経口」という用語は、経口、経鼻、吸入、直腸経路、接着または非接着パッチ、皮下、皮内、血管内注射、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、硝子体内、脊髄性、頭蓋内、関節内、くも膜下腔内および腹腔内など、ならびに任意の同様の注射または点滴技術を含む。
【0078】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物は、さらに、皮膚の治療および/またはケアのために組成物中で一般に使用される美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つの付加的な活性剤を含み、例えば、特に、cAMP(環状アデノシン一リン酸)合成刺激剤、エラスターゼ阻害剤、基質メタロプロテイナーゼ阻害剤、メラニン合成刺激剤または阻害剤、美白剤または脱色剤、着色促進剤(propigmenting agent)、セルフタンニング剤、抗老化剤、NO−シンターゼ阻害剤、5α−レダクターゼ阻害剤、リジルヒドロキシラーゼおよび/またはプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャーおよび/または大気汚染に対する薬剤、反応性カルボニル種スカベンジャー、抗糖化剤、抗ヒスタミン剤、抗ウィルス剤、抗寄生虫剤、乳化剤、皮膚軟化剤、有機溶媒、液体噴射剤、スキンおよび/またはヘアコンディショナー、例えば湿潤剤、水分を保持する物質、アルファヒドロキシ酸、ベータヒドロキシ酸、保湿剤、上皮加水分解酵素、ビタミン、顔料または着色剤、色素、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、軟化剤、抗しわ剤、目の下のクマを低減または治療可能な薬剤、剥脱剤、抗菌剤、抗真菌剤、静菌剤、殺菌剤、静菌剤、真皮または上皮の巨大分子合成を刺激する薬剤および/またはこれらの分解を阻害もしくは防止することができる薬剤、例えば、コラーゲン合成刺激剤、エラスチン合成刺激剤、デコリン合成刺激剤、ラミニン合成刺激剤、デフェンシン合成刺激剤、シャペロン合成刺激剤、アクアポリン合成刺激剤、ヒアルロン酸合成刺激剤、フィブロネクチン合成刺激剤、サーチュイン合成刺激剤、脂質および角質層成分(セラミド、脂肪酸など)の合成を刺激する薬剤、コラーゲン分解を阻害する薬剤、その他のエラスチン分解を阻害する薬剤、カテプシンGなどのセリンプロテアーゼを阻害する薬剤、線維芽細胞増殖を刺激する薬剤、ケラチノサイト増殖を刺激する薬剤、脂肪細胞増殖を刺激する薬剤、メラノサイト増殖を刺激する薬剤、ケラチノサイト分化を刺激する薬剤、脂肪細胞分化を刺激する薬剤、アセチルコリンエステラーゼを阻害する薬剤、皮膚弛緩剤、アセチルコリン受容体凝集を阻害する薬剤、筋収縮を阻害する薬剤、グリコサミノグリカン合成刺激剤、抗過角化剤、面皰溶解剤、抗乾癬剤、DNA修復剤、DNA保護剤、安定剤、抗掻痒剤、敏感肌の治療および/またはケアのための薬剤、固化剤(firming agent)、抗ストレッチマーク剤、結合剤、皮脂産生を制御する薬剤、脂肪分解剤または脂肪分解を刺激する薬剤、抗セルライト剤、制汗剤、治癒を刺激する薬剤、コアジュバント(coadjuvant)治癒剤、再上皮化を刺激する薬剤、コアジュバント再上皮化剤、サイトカイン成長因子、鎮静剤、抗炎症剤、麻酔剤、毛細血管循環および/または微小循環に作用する薬剤、血管新生を刺激する薬剤、血管透過性を阻害する薬剤、静脈強壮剤(venotonic agent)、細胞代謝に作用する薬剤、真皮−上皮接合部を改善する薬剤、発毛を誘発する薬剤、発毛阻害または遅延剤、防腐剤、芳香剤、キレート剤、植物抽出物、精油、海洋抽出物、バイオ発酵プロセスから得られる薬剤、無機塩、細胞抽出物および日焼け止め(紫外線Aおよび/またはBに対して活性な有機または無機光防護剤)などであるが、これらに限定されず、ただしこれらは、組成物の他の成分、そして特に、本発明の組成物中に含有される一般式(I)および(II)のペプチドと物理的および化学的に適合性であることを条件とする。さらに、これらの付加的な成分の性質は、本発明の方法の組成物のペプチドの利益を容認し難いほど変更してはならない。これらの付加的な成分の性質は合成であっても、植物抽出物などの天然であってもよく、あるいはバイオ発酵プロセスにより得られてもよい。さらなる例は、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook,12th Edition(2008)において見出すことができる。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物は、特に、ビティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)、ロサ・カニーナ(Rosa canina)、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)、アイリス・パリダ(Iris pallida)、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)、ギンクゴ・ビロバ(Ginkgo biloba)、レオントポジウム・アルピナム(Leontopodium Alpinum)またはドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)の抽出物などの(これらに限定されない)抗しわ剤および/または抗老化剤である美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つの抽出物、あるいは、それに加えて、Matrixyl(登録商標)[INCI:パルミトイルペンタペプチド−4]、Matrixyl 3000(登録商標)[INCI:パルミトイルテトラペプチド−7、パルミトイルオリゴペプチド]、Essenskin(商標)[INCI:ヒドロキシメチオニンカルシウム]、Renovage[INCI:テプレノン]またはDermaxyl(登録商標)[INCI:パルミトイルオリゴペプチド](Sederma/Crodaにより販売)、Vialox(登録商標)[INCI:ペンタペプチド−3]、Syn(登録商標)−Ake[INCI:ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミドジアセテート]、Syn(登録商標)−Coll[INCI:パルミトイルトリペプチド−5]、Phytaluronate[INCI:イナゴマメ(セラトニア・シリクア(Ceratonia Siliqua)ゴム)]またはPreregen(登録商標)[INCI:グリシン・ソヤ(Glycine Soja)(大豆)タンパク質、オキシドレダクターゼ](Pentapharm/DSMにより販売)、Myoxinol(商標)[INCI:加水分解ハイビスカス・エスクレンタス(Hibiscus Esculentus)抽出物]、Syniorage(商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−11]、Dermican(商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−9]またはDN−AGE(商標)LS[INCI:カッシア・アラタ(Cassia Alata)葉抽出物](Laboratoires Serobiologiques/Cognisにより販売)、Algisum C(登録商標)[INCI:マンヌロン酸メチルシラノール]またはHydroxyprolisilane CN(登録商標)[INCI:アスパラギン酸メチルシラノールヒドロキシプロリン](Exsymolにより販売)、Aldenine(登録商標)[INCI:加水分解小麦タンパク質、加水分解大豆タンパク質、トリペプチド−1]、Preventhelia(商標)[INCI:ジアミノプロピオノイルトリペプチド−33]、Decorinyl(商標)[INCI:トリペプチド−10シトルリン]、Trylagen(商標)[INCI:シュードアルテロモナス属発酵抽出物、加水分解小麦タンパク質、加水分解大豆タンパク質、トリペプチド−10シトルリン、トリペプチド−1]、Eyeseryl(登録商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−5]、ペプチドAC29[INCI:アセチルトリペプチド−30シトルリン]、Lipochroman−6[INCI:ジメチルメトキシクロマノール]、Chromabright(商標)[INCI:ジメチルメトキシクロマニルパルミテート]、Antarcticine(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス属発酵抽出物]、Vilastene(商標)[INCI:リジンHCl、レシチン、トリペプチド−10シトルリン]、Inyline(商標)[INCI:アセチルヘキサペプチド−30]、Relistase(商標)[INCI:アセチルアルギニルトリプトフィルジフェニルグリシン]、Thermostressine(商標)[INCI:アセチルテトラペプチド−22](Lipotecにより販売)、Kollaren(登録商標)[INCI:トリペプチド−1、デキストラン](Institut Europeen de Biologie Cellulaire/Unipex Groupにより販売)、Collaxyl(登録商標)IS[INCI:ヘキサペプチド−9]、Laminixyl IS(商標)[INCI:ヘプタペプチド]、Orsirtine(商標)GL[INCI:オリザ・サティバ(Oryza sativa)(米)抽出物]、D’Orientine(商標)IS[INCI:フォエニクス・ダクチリフェラ(Phoenix Dactylifera)(ナツメヤシ)種子抽出物]、Phytoquintescine(商標)[INCI:ヒトツブコムギ(トリチカム・モノコッカム(Triticum Monococcum))抽出物]またはQuintescine(商標)IS[INCI:ジペプチド−4](Vincience/ISPにより販売)、BONT−L−Peptide[INCI:パルミトイルヘキサペプチド−19](Infinitec Activosにより販売)、Deepaline(商標)PVB[INCI:パルミトイル加水分解小麦タンパク質]またはSepilift(登録商標)DPHP[INCI:ジパルミトイルヒドロキシプロリン](Seppicにより販売)、Gatuline(登録商標)Expression[INCI:アクメラ・オレラセア(Acmella oleracea)抽出物]、Gatuline(登録商標)In−Tense[INCI:スピランテス・アクメラ(Spilanthes Acmella]花抽出物]またはGatuline(登録商標)Age Defense 2[INCI:ジャグランス・レギア(Juglans Regia)(クルミ)種子抽出物](Gattefosseにより販売)、Thalassine(商標)[INCI:藻類抽出物](Biotechmarineにより販売)、ChroNOline(商標)[INCI:カプロオイルテトラペプチド−3]またはThymulen−4[INCI:アセチルテトラペプチド−2](Atrium/Unipex Innovationsにより販売)、EquiStat[INCI:ピルス・マルス(Pyrus Malus)果実抽出物、グリシン・ソヤ(Glycine Soja)種子抽出物]またはJuvenesce[INCI:エトキシジグリコールおよびカプリル酸トリグリセリド、レチノール、ウルソール酸、フィトナジオン、イロマスタット](Coleticaにより販売、Ameliox[INCI:カルノシン、トコフェロール、シリバム・マリアナム(Silybum Marianum)果実抽出物]またはPhytoCellTec Malus Domestica[INCI:マルス・ドメスティカ(Malus Domestica)果実細胞培養物](Mibelle Biochemistryにより販売)、Bioxilift[INCI:ピムピネルラ・アニスム(Pimpinella Anisum)抽出物]またはSMS Anti−Wrinkle(登録商標)[INCI:アンノナ・スクアモサ(Annona Squamosa)種子抽出物](Silabにより販売)、カルシウムチャネルアンタゴニスト、例えば(限定はされない)、アルベリン、マンガンまたはマグネシウム塩、グルコン酸マグネシウム、特定の第2級または第3級アミン、レチノールおよびその誘導体、イデベノンおよびその誘導体、補酵素Q10およびその誘導体、ボスウェル酸およびその誘導体、GHKおよびその誘導体、カルノシンおよびその誘導体、DNA修復酵素、例えば(限定はされない)、光回復酵素、T4エンドヌクレアーゼV、または塩素イオンチャネルアゴニストなどの(これらに限定されない)抗しわ剤および/または抗老化剤である少なくとも1つの合成化合物またはバイオ発酵製品をさらに含む。
【0080】
別の特定の実施形態では、本発明の方法の美容または医薬組成物は、さらに、所望の方法における組成物の投与のために必要な許容可能なキャリアおよび/または補助剤を含む。キャリアおよび/または補助剤の中には、当業者に知られている賦形剤、増粘剤、希釈剤、溶媒、分散剤または補助剤が含まれる。増粘剤としては、変性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコールまたはポリビニルピロリドンからなる群から選択されるものなどの水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。希釈剤および溶媒としては、エタノール、ポリエチレングリコール、グリコフロール、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ベンジルアルコールまたはジメチルスルホキシドからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。分散剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸のモノエステル(Tween(登録商標)、Emalex、Nikkol(登録商標)、Hodag、DacolまたはLiposorb(登録商標))、ソルビタンの脂肪酸モノエステル(Span(登録商標))、15−ヒドロキシステアレートポリエチレングリコール(Solutol(登録商標)HS15)、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(Crodet、Cithrol、Kessco(登録商標)、Nikkol(登録商標)、Mapeg(登録商標)、Myrj、Tagat(登録商標)、Aldo(登録商標)、Capmul(登録商標)、Glycerox、Lactomul(登録商標)、またはEmerest(登録商標))、グリコールポリオキシエチレンのエステル(Emulphor(登録商標))、ポリエトキシル化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)、Emalex、Eumulgin(登録商標)、Nikkol(登録商標)またはSimusol(登録商標))、ポリグリセロ−ルの脂肪酸エステル(Nikkol Decaglyn、Polymuls、Caprol(登録商標))、ポリエチレングリコールエーテル(VolpoまたはBrij(登録商標))、ポロキサマー(Lutrol(登録商標)またはPluronic(登録商標))、ポリオキシエチレンのフェニルエーテル(Triton(登録商標)またはIgepal(登録商標))、またはこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の方法の美容または医薬組成物は、湿潤剤、pH緩衝剤、防腐剤、殺菌および殺真菌剤、吸収遅延剤、吸収促進剤、または当業者に知られている任意の他の賦形剤などの1つまたは複数の許容可能な賦形剤も含有する。
【0081】
本発明の方法の美容または医薬組成物の投与は、ボツリヌス毒素注射の実施の前に、前治療として、同時に、併用治療として開始されてもよいし、そして/あるいはボツリヌス毒素注射の実施の直後に、後治療として開始されてもよい。本発明の方法の美容または医薬組成物の投与の頻度は各被験者の必要性に応じて大きく異なり得るが、1週間に1回〜1日に10回、好ましくは1週間に2回〜1日に4回、より好ましくは1週間に3回〜1日に3回、さらにより好ましくは1日に1回または2回の範囲の投与が推奨される。最も好ましい実施形態では、本発明の方法は、ボツリヌス毒素の投与の後、次のボツリヌス毒素投与まで、本発明の方法の美容または医薬組成物の1日に2回の投与を含む。
【0082】
特定の実施形態では、本発明の方法によって得られる2か月間の治療の後のしわ減少平均は、しわ減少平均の最大値に対して50%よりも高く、特に、60%よりも高い。本発明の方法によって得られる4か月間の治療の後のしわ減少平均は、しわ減少平均の最大値に対して25%よりも高く、特に、35%よりも高い。本発明の方法によって得られる6か月間の治療の後のしわ減少平均は、しわ減少平均の最大値に対して10%よりも高く、特に、20%よりも高い。
【0083】
第2の態様では、本発明は皮膚の抗老化治療のためのキットを指し、このキットは、
a. ボツリヌス毒素と、
b. 配列番号1で定義されるSNAP−25タンパク質のアミノ酸配列中に含有される6〜40個の隣接するアミノ酸の配列を含有し、一般式(I)
−AA−R
(I)
(式中、AAは、アミノ酸配列番号1中に含有される6〜40個の隣接するアミノ酸の配列である)
に従う美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩と、そして/あるいは
一般式(II):
(式中、
XおよびYは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
およびR’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR−C(O)−からなる群から独立して選択され、
およびR’は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から独立して選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、Rは、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される)
の少なくとも1つのエンケファリン由来のペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩と、そして
少なくとも1つの美容的または薬学的に許容可能な賦形剤または補助剤と
を含む少なくとも1つの美容または医薬組成物と
を含む。
【0084】
、R’およびR、R’基はそれぞれ、ペプチド配列のアミノ末端(N−末端)およびカルボキシ末端(C−末端)の端部で結合される。
【0085】
1つの特定の実施形態では、皮膚の抗老化治療は、顔および/または首の皮膚のしわ、好ましくは表情じわを低減または除去するための治療である。
【0086】
別の特定の実施形態では、一般式(II)で表されるペプチドの好ましい構造は、Xが−Gly−、−Ala−または−Ser−であり、より好ましくは−D−Ala−または−D−Ser−である構造である。
【0087】
別の特定の実施形態では、一般式(II)で表されるペプチドの好ましい構造は、Yが−Leu−または−Met−であり、より好ましくは−L−Leu−または−L−Met−である構造である。
【0088】
別の特定の実施形態では、RおよびR’は、H、一般式(III)
(式中、nは1〜100、好ましくは1〜5の範囲である)のポリマー、およびR−CO−(式中、Rは、置換または非置換C〜C24アルキルラジカル、置換または非置換C〜C24アルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24アルキニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニルラジカル、置換または非置換C〜C30アリールラジカル、置換または非置換C〜C24アラルキルラジカル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリルラジカル、2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキルラジカルからなる群から選択され、ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)からなる群から独立して選択される。好ましくは、RおよびR’は、H、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘニル、オレオイルおよびリノレオイルからなる群から独立して選択される。より好ましくは、RおよびR’は、H、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルからなる群から独立して選択される。
【0089】
別の特定の実施形態では、RおよびR’は、−NR、−ORまたは−SRからなる群から独立して選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニル、置換または非置換C〜C30アリール、置換または非置換C〜C24アラルキル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリル、および2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)、ならびに一般式(III)のポリマー(ここで、nは1〜100、好ましくは1〜5の範囲である)からなる群から独立して選択される。場合により、RおよびRは飽和または不飽和炭素−炭素結合により結合されて、窒素原子と共に環を形成することができる。好ましくは、RおよびR’は、−NRまたは−ORからなる群から独立して選択され、ここで、RおよびRは、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換℃〜C10シクロアルキル、置換または非置換C〜C15アリールおよび置換または非置換ヘテロシクリル(3〜10員)、置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(3〜10員の環および1〜6個の炭素原子のアルキル鎖を有する)、ならびに一般式(III)のポリマー(ここで、nは1〜100、好ましくは1〜5の範囲である)からなる群から独立して選択される。より好ましくは、RおよびRは、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、RはHであり、Rは、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態によると、RおよびR’は、−OHおよび−NHからなる群から独立して選択される。
【0090】
本発明との関連では、「SNAP−25タンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列」は、配列番号1で定義されるSNAP−25タンパク質のアミノ酸配列の任意のアミノ酸配列もしくは断片、または少なくとも1つのアミノ酸の突然変異、挿入、欠失もしくは置換によって、あるいは遺伝暗号の縮退によって(ただし、SNAP−25タンパク質の活性を有するペプチドに相当することを条件とする)、配列番号1とは異なる任意のアミノ酸配列を意味する。
【0091】
本発明の方法の美容または医薬組成物中に含まれる配列番号1で定義されるSNAP−25のアミノ酸配列に由来するペプチドの中で、好ましい配列は、配列番号2で定義されるSNAP−25タンパク質のアミノ末端領域または配列番号3で定義されるSNAP−25タンパク質のカルボキシ末端領域の配列中に含有される、より好ましくは、配列番号4で定義される残基10〜22の間の領域中、または配列番号5で定義される残基25〜40の間の領域中に含有される、または配列番号6で定義される残基65〜81の間の領域中に含有される、または配列番号7で定義される残基181〜206の間の領域中に含有される、より正確には、配列番号8で定義される残基12〜19の間の領域中に含有される、または配列番号9で定義される残基26〜38の間の領域中に含有される、または配列番号10で定義される残基68〜79の間の領域中に含有される、または特に、配列番号11で定義される残基12〜17の間の領域中に含有される隣接するアミノ酸の配列、および配列番号4中に含有される7〜12個の隣接するアミノ酸の配列(前記ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を含む)を有するものである。
【0092】
特に、好ましいアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32からなる群から選択される配列である。より好ましくは、アミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号11および配列番号26からなる群から選択される配列である。
【0093】
本発明の方法のキットの美容または医薬組成物中に含まれる一般式(II)によって定義されるペプチドの中で、好ましいアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37および配列番号38からなる群から選択される配列である。より好ましくは、アミノ酸配列は、配列番号33および配列番号35からなる群から選択される配列である。
【0094】
本発明の方法のキットの美容または医薬組成物は、さらに、一般式(IV):
R’’−A−B−AA−AA−AA−AA−AA−AA−C−D−R’’
(IV)
の美容的または薬学的に有効な量の少なくとも1つのペプチド、その立体異性体、これらの混合物、および/またはこれらの美容的または薬学的に許容可能な塩を含むことができ、式中、
AAは、−Asp−、−Glu−および−Pro−からなる群から選択され、
AAは、−Asp−であり、
AAは、−Tyr−および−Arg−からなる群から選択され、
AAは、−Phe−および−Tyr−からなる群から選択され、
AAは、−Arg−および−Lys−からなる群から選択され、
AAは、−Leu−および−Met−からなる群から選択され、
A、B、CおよびDは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸からなる群から独立して選択され、
p、r、sおよびtは独立して選択され、そして0〜1の範囲であり、
R’’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、およびR’−C(O)−からなる群から選択され、
R’’は、−NR’R’、−OR’および−SR’からなる群から選択され、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換アラルキルからなる群から独立して選択され、
ここで、R’は、H、置換または非置換非環状脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される。
【0095】
R’’およびR’’基はそれぞれ、ペプチド配列のアミノ末端(N−末端)およびカルボキシ末端(C−末端)の端部で結合される。
【0096】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、(好ましくは、1〜5の間)、およびR’−CO−(ここで、R’は、置換または非置換C〜C24アルキルラジカル、置換または非置換C〜C24アルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24アルキニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニルラジカル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニルラジカル、置換または非置換C〜C30アリールラジカル、置換または非置換C〜C24アラルキルラジカル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリルラジカル、2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキルラジカルからなる群から選択され、ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する)からなる群から選択される。好ましくは、R’’は、H、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘニル、オレオイルおよびリノレオイルからなる群から選択される。より好ましくは、R’’は、H、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルである。
【0097】
別の特定の実施形態では、R’’は、−NR’R’、−OR’または−SR’であり、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキル、置換または非置換C〜C24シクロアルケニル、置換または非置換C〜C24シクロアルキニル、置換または非置換C〜C30アリール、置換または非置換C〜C24アラルキル、3〜10個の環員を有する置換または非置換ヘテロシクリル、および2〜24個の炭素原子を有すると共に1〜3個の炭素以外の原子を有する置換または非置換ヘテロアリールアルキル基からなる群から独立して選択され、ここで、アルキル鎖は1〜6個の炭素原子を有する。場合により、R’およびR’は飽和または不飽和炭素−炭素結合により結合されて、窒素原子と共に環を形成することができる。好ましくは、R’’は−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、置換または非置換C〜C24アルキル、置換または非置換C〜C24アルケニル、置換または非置換C〜C24アルキニル、置換または非置換C〜C10シクロアルキル、置換または非置換C〜C15アリールおよび置換または非置換ヘテロシクリル(3〜10員)、置換または非置換ヘテロアリールアルキル基(3〜10員の環および1〜6個の炭素原子のアルキル鎖を有する)からなる群から独立して選択される。より好ましくは、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、R’はHであり、R’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態によると、R’’は、−OHおよび−NHから選択される。
【0098】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Leu−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0099】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Pro−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Lys−であり、AAは−L−Leu−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0100】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Phe−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Met−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0101】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Met−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルまたはヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、R’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0102】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Pro−であり、AAは−L−Asp−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Tyr−であり、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Met−であり、そしてRは−NR’R’または−OR’であり、ここで、R’およびR’は、H、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から独立して選択され、好ましくは、R’’は−OHまたは−NHである。より好ましくは、R’’はアセチルまたはパルミトイルであり、そしてR’’は−NHである。さらにより好ましくは、p、r、sおよびtは0である。
【0103】
別の特定の実施形態では、R’’は、H、アセチル、ラウロイル、ミリストイルおよびパルミトイルからなる群から選択され、好ましくは、R’’は、H、アセチルおよびパルミトイルからなる群から選択され、R’’は、−OHまたは−NHからなる群から選択される。
【0104】
別の特定の実施形態では、一般式(IV)のペプチドは、Ac−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Leu−NH、Palm−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Leu−NH、Ac−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Lys−L−Leu−NH、Palm−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Lys−L−Leu−NH、Ac−L−Glu−L−Asp−L−Arg−L−Phe−L−Arg−L−Met−NH、Palm−L−Glu−L−Asp−L−Arg−L−Phe−L−Arg−L−Met−NH、Ac−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NH、Palm−L−Glu−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NH、Ac−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NH、およびPalm−L−Pro−L−Asp−L−Tyr−L−Tyr−L−Arg−L−Met−NHからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1図1は、異なる研究領域の平均のRa値を時間の関数として示す(総合効果、眼窩周囲および前額領域の総合効果の平均)。対照治療(ボツリヌス毒素A型および実施例1のプラセボ組成物による治療)対ボツリヌス毒素A型および実施例3の組成物による治療の比較効果を示す。
【実施例】
【0106】
本明細書において与えられる以下の特定の実施例は、本発明の性質を説明することが意図される。これらの実施例は説明のためだけのものであって、本明細書において請求される本発明に対する限定であると解釈されるべきではない。
【0107】
実施例1. インビボ研究のためのプラセボ組成物の調製
【0108】
相Aの成分を混合し、相Bを添加して、混合物を均質化した。相Cを、全部が取り込まれるまで攪拌しながら相A+Bに添加した。相Dの成分を65℃で融解させ、前述の混合物に攪拌下で添加した。最後に、香料(相E)を添加し、混合物を均質化した。必要な場合には、混合物のpHをトリエタノールアミン(相F)により調整した(最終pH:5.5〜6.5)。
【0109】
実施例2. ペプチドアセチル−配列番号11−NHを含む組成物の調製
【0110】
相Aの成分を混合し、相Bを添加して、混合物を均質化した。相Cを、全部が取り込まれるまで攪拌しながら相A+Bに添加した。相Dの成分を65℃で融解させ、前述の混合物に攪拌下で添加した。相Eを添加し、混合物を均質化した。最後に、香料(相F)を添加し、混合物を均質化した。必要な場合には、混合物のpHをトリエタノールアミン(相G)により調整した(最終pH:5.5〜6.5)。
【0111】
実施例3. ペプチドアセチル−配列番号11−NHおよびペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)を含む組成物の調製
【0112】
相Aの成分を混合し、相Bを添加して、混合物を均質化した。相Cを、全部が取り込まれるまで攪拌しながら相A+Bに添加した。相Dの成分を65℃で融解させ、前述の混合物に攪拌下で添加した。相EおよびFを添加し、混合物を均質化した。最後に、香料(相G)を添加し、混合物を均質化した。必要な場合には、混合物のpHをトリエタノールアミン(相H)により調整した(最終pH:5.5〜6.5)。
【0113】
実施例4. ペプチドアセチル−配列番号11−NHおよびペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)を含む組成物の調製
【0114】
相A、BおよびCの成分を攪拌下で溶解させた。別の容器において、相Dの成分を加熱して融解させた。次に、相Eの成分を添加し、相Dと混合した。混合物全体をタービンで攪拌して、相A+B+Cの成分を添加した。必要な場合には、トリエタノールアミン(相F)により混合物のpHを6.0〜7.0に調整した。
【0115】
実施例5. ペプチドアセチル−配列番号11−NHおよびペプチド配列番号33を含む組成物の調製
【0116】
相Aの成分を約75〜80℃に加熱した。別の容器において、相Bの成分を混合し、完全に溶解するまで攪拌してから、相Aに添加し、一緒に混合した。混合物を60℃に保持した。
【0117】
別個に、相Cの成分を混合し、シリコーンの分散が完了するまで攪拌した。次に、相A+Bを相Cの成分の混合物に添加した。最後に、香料および着色剤(相DおよびE)を添加した。
【0118】
実施例6. ペプチドアセチル−配列番号11−NHおよびペプチド配列番号33を含む組成物の調製
【0119】
相Aの成分を、融解するまで約75〜80℃に加熱した。別の容器において、相Bの成分を約75〜80℃の温度で溶解させた。相Bを相Aに攪拌下で添加し、混合物を60℃に保持した。
【0120】
別個に、相CおよびDを混合し、相A+Bの加熱した混合物に添加した。最後に、香料および着色剤(相EおよびF)を添加した。
【0121】
実施例7. ペプチドアセチル−配列番号8−NHおよびペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)を含む組成物の調製
【0122】
相Aの成分を混合し、相Bを添加して、混合物を均質化した。相Cを、全部が取り込まれるまで攪拌しながら相A+Bに添加した。相Dの成分を65℃で融解させ、前述の混合物に攪拌下で添加した。相EおよびFを添加し、混合物を均質化した。最後に、香料(相G)を添加し、混合物を均質化した。必要な場合には、混合物のpHをトリエタノールアミン(相H)により調整した(最終pH:5.5〜6.5)。
【0123】
実施例8. ペプチドアセチル−配列番号11−NHおよびペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)を含む組成物の調製
【0124】
相A、BおよびCの成分を溶解させた。別の容器において、相Dの成分を約80℃に加熱してから、相A+B+Cに添加し、一緒に混合した。相EおよびFを攪拌下で添加した。最後に、混合物のpHを相Gにより6.0〜7.0に調整した。
【0125】
実施例9. ペプチドアセチル−配列番号8−NHおよびペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)を含む組成物の調製
【0126】
相A、BおよびCの成分を混合し、均質化した。相D、EおよびFを相A+B+Cに連続的に添加し、一緒に混合した。相GおよびHを攪拌下で添加した。最後に、混合物のpHを相Eにより6.0〜7.0に調整した。
【0127】
実施例10. ペプチドアセチル−配列番号11−NH、ペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)およびペプチドアセチル−配列番号39−NHを含む組成物の調製
【0128】
相Aの成分を、融解するまで約75〜80℃に加熱した。別の容器において、相Bの成分を約75〜80℃の温度で溶解させた。相Bを相Aに攪拌下で添加し、混合物を60℃に保持した。
【0129】
別個に、相CおよびDを混合し、相A+Bの加熱した混合物に添加した。最後に、香料および着色剤(相EおよびF)を添加した。
【0130】
実施例11. アセチル−配列番号4−NHおよびペプチド配列番号33を含む組成物の調製
【0131】
相Aの成分を約75〜80℃に加熱した。別の容器において、相Bの成分を混合し、完全に溶解するまで攪拌してから、相Aに添加し、一緒に混合した。混合物を60℃に保持した。
【0132】
別個に、相Cの成分を混合し、シリコーンの分散が完了するまで攪拌した。次に、相A+Bを相Cの成分の混合物に添加した。最後に、香料および着色剤(相DおよびE)を添加した。
【0133】
実施例12. ボツリヌス毒素A型と、ペプチドアセチル−配列番号11−NHおよびペプチドH−L−Tyr−D−Ala−L−Gly−L−Phe−L−Leu−OH(配列番号35)を含む組成物との併用治療のインビボの抗しわ効力
モノセントリック(monocentric)な研究を二重盲検条件で実施して、ボツリヌス毒素A型注射の後の実施例2および3の組成物の抗しわ効果を評価した。ボツリヌス毒素A型および実施例1の組成物(プラセボ)による治療を対照治療として使用した。シリコンレプリカインプリントのプロフィロメトリー(Profilometric)分析を実施し、ボツリヌス毒素A型注射の2、4および6か月後(2M、4Mおよび6M)のしわの深さを分析した。
【0134】
研究は、平均年齢51歳の30人の白人女性において行った。全ての被験者は、各眼窩周囲領域(目尻のしわ、12.5単位、U)および前額領域(25U)においてボツリヌス毒素A型注射(Vistabel(登録商標)、Allergan)を受け、全部で50Uの毒素を受けた。
【0135】
注射の後、8人の志願者の群は実施例2の組成物の適用を開始し、別の9人の志願者の群は実施例3の組成物を受け、最後の13人の志願者の群は実施例1のプラセボ組成物を受けた。全ての志願者は実施例1、2または3の組成物を1日に2回適用した。
【0136】
ボツリヌス毒素A型注射の前(T0)と、実施例1のプラセボ組成物または実施例2もしくは実施例3の組成物の適用の2、4および6か月後(2M、4Mおよび6M)に、上記の治療にさらされた30人の志願者から、眼窩周囲領域(目尻のしわ)および前額領域からの皮膚のシリコンレプリカを得た。簡単に言うと、きれいなペトリ皿上でシリコンゴム材料(Silflo(登録商標))を、ペースト2mlにつきの触媒約3滴の割合で触媒と混合した。2つの成分を1分間慎重に混ぜ合わせ、最後に、眼窩周囲および前額領域の皮膚領域上に広げて、6×3cmの領域を被覆した。12〜15分乾燥した後、シリコーンレプリカを皮膚から剥がした。
【0137】
各時点で得られた領域当たりのレプリカの数は、表1に示される。
【0138】
研究レプリカの分析は共焦点プロフィロメトリーによって実施した。同じ志願者および研究領域(前額または眼窩周囲領域)からの治療前に得られたレプリカ(T0レプリカ)と、異なるサンプリング時点におけるレプリカとの間の共通領域を分析のために選択した。共焦点プロフィロメーター(PLμ、Industrial microscope Eclipse L150A、Nikon)で直接照明および反射信号により機械的に走査されたレプリカ表面を、CCD(電荷結合素子)アレイにより観察し、種々の画像データ処理アルゴリズムにより分析した。
【0139】
各志願者および各研究領域(前額または眼窩周囲)から、2つの独立した予め選択した領域(2つのしわ)を分析した。分析した領域は、同じ研究領域および同じ志願者について、全てのサンプリング時点で正確に同じ領域であった。
【0140】
それぞれのマクロな粗さ(またはしわ)のプロフィロメトリー分析から、プロファイロメーターのソフトウェアで粗さパラメータ(Ra:平均表面粗さ、評価したレリーフの算術平均からの偏差、RMS:評価したレリーフの二乗平均平方根粗さ平均、およびPV:山から谷まで(Peak−To−Valley)の距離、最大高さの点と、最小高さの点との間の距離)値を計算し、三次元画像を処理した。Ra平均は、T0におけるしわに関連される場合、しわ減少平均であると理解される。Ra最大値は、しわ減少平均の最大値であると理解される。
【0141】
結果
対照治療効果
ベースライン(T0)に対して、ボツリヌス毒素A型注射および実施例1のプラセボ組成物治療の適用の2、4、および6か月後(2M、4Mおよび6M)の粗さパラメータの平均減少の割合は表2に示される。
【0142】
図1は、異なる研究領域の平均のRa値を時間の関数として示す(総合効果:眼窩周囲および前額領域における効果の平均)。対照治療については、4か月後の抗しわ効果はわずか7.72%であり、ボツリヌス毒素A型注射の6か月後には抗しわ効果は完全になくなった。対照群のしわ減少平均の最大値(Ra最大値38.57%)は、ボツリヌス毒素A型の投与および実施例1のプラセボ組成物の適用後、最初の1か月間に観察された。
【0143】
実施例2の組成物の治療効果
ベースライン(T0)に対して、ボツリヌス毒素A型注射および実施例2の組成物の適用の2か月後(2M)の粗さパラメータの平均減少の割合は表3に示される。
【0144】
ボツリヌス毒素A型注射が実施例2の組成物による治療と併用される場合、2か月後の抗しわ効果は27.87%であった(同じ時点で対照治療により得られる値のほぼ2倍である)。実施例2の組成物を含む治療群の2か月後のしわ減少平均(Ra)は、対照治療(すなわち、ボツリヌス毒素A型注射およびプラセボ組成物)のしわ減少平均の最大値(Ra最大値)の72.3%であった。
【0145】
実施例3の組成物の治療効果
ボツリヌス毒素A型注射および実施例3の組成物の適用の2、4、および6か月後(2M、4Mおよび6M)の粗さパラメータの、ベースライン(T0)に対する平均減少の割合は表4に示される。
【0146】
ボツリヌス毒素A型注射が実施例3の組成物の適用と併用される場合、抗しわ効果は、ボツリヌス毒素A型注射および実施例3の組成物の適用の6か月後でも16.77%であった。
【0147】
実施例3の組成物を含む治療群の2か月後のしわ減少平均(Ra)は、対照治療のしわ減少平均の最大値(Ra最大値)の65.6%であり、4か月後にはRa最大値の44.4%であり、6か月後にはRa最大値の43.5%であった。
【0148】
対照治療に対する実施例3の組成物を含む治療
図1は、対照治療対実施例3の組成物による治療(いずれの場合も、ボツリヌス毒素A型注射の後)の比較効果を示す。ボツリヌス毒素A型および実施例3の組成物による治療は、対照治療の場合に観察された効果よりも良好な抗しわ効果を提示した。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]