特許第6306893号(P6306893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306893
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ヒューズ機能付き抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20180326BHJP
   H01H 85/048 20060101ALI20180326BHJP
   H01H 85/36 20060101ALI20180326BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01H37/76 F
   H01H37/76 G
   H01H85/048
   H01H85/36
   H01C13/00 F
   H01C13/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-22940(P2014-22940)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-149253(P2015-149253A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(74)【復代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【復代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正樹
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭50−029717(JP,Y1)
【文献】 実開平05−060910(JP,U)
【文献】 特開昭57−107530(JP,A)
【文献】 実開昭49−104642(JP,U)
【文献】 実公昭47−034674(JP,Y1)
【文献】 特開昭61−024205(JP,A)
【文献】 特開2006−059568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76 , 69/02
H01H 85/00 − 87/00
H01C 1/00 − 1/16
H01C 11/00 − 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の絶縁基板と、
該絶縁基板の表面に前記絶縁基板の一部を覆うように配置した抵抗体と
前記絶縁基板の表面の前記抵抗体が配置されていない部分に配置した低融点金属を載置した低融点金属接合電極と、
前記低融点金属に一端を付勢した状態で固定したコイルばねと、
前記コイルばねの他端を固定した部分と前記抵抗体の一端の接続部分を直列に接続した、前記絶縁基板の長手方向に沿って延びた第1の電極と、
前記第1の電極と対向する、前記抵抗体の他端の接続部分と接続した第2の電極と、を備え
前記コイルばねの一端は、遮断時に前記絶縁基板に対して略平行な方向に移動するように配置したことを特徴とするヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項2】
前記抵抗体は前記絶縁基板の長手方向の略半分を覆うように配置され、他方の略半分の略中央部に前記低融点金属接合電極が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項3】
略長方形の金属ベースにその裏面を固定した第1および第2の絶縁基板と、
該第1の絶縁基板の表面に長手方向に偏って前記第1の絶縁基板の一部を覆うように配置した抵抗体と、
前記第2の絶縁基板の表面に配置した低融点金属を載置した低融点金属接合電極と、
前記低融点金属に一端を付勢した状態で固定したコイルばねと、
前記第1の絶縁基板の表面に配置した、前記コイルばねの他端を固定した部分と前記抵抗体の一端の接続部分を直列に接続した、前記第1の絶縁基板の長手方向に沿って延びた第1の電極、および、前記第1の電極と対向する、前記抵抗体の他端の接続部分と接続した第2の電極と、
前記第2の絶縁基板の表面に配置した、前記低融点金属接合電極と外部接続用端子を接続する第3の電極、を備えたことを特徴とするヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項4】
前記第1の絶縁基板の裏面に熱伝導部材を配置し、
前記第2の絶縁基板の裏面に前記熱伝導部材よりも熱伝導率の低い部材を配置したことを特徴とする請求項3に記載のヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項5】
略長方形の金属ベースにその裏面を固定した第1の絶縁基板および該第1の絶縁基板にその裏面を固定した第2の絶縁基板と、
前記第2の絶縁基板の裏面に配置した抵抗体と、
前記第1の絶縁基板の表面の前記第2の絶縁基板が配置されていない部分に配置した低融点金属を載置した低融点金属接合電極と、
前記低融点金属に一端を付勢した状態で、前記第2の絶縁基板の表面に配置したコイルばねと、
前記コイルばねの他端を固定した部分と前記抵抗体の一端の接続部分を直列に接続した、前記第1の絶縁基板の長手方向に沿って延びた第1の電極と、
前記第1の電極と対向する、前記抵抗体の他端の接続部分と接続した第2の電極と、を備えたことを特徴とするヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項6】
略長方形の金属ベースにその裏面を固定した絶縁基板と、
該絶縁基板の裏面に長手方向に偏って前記絶縁基板の一部を覆うように配置した抵抗体と、
前記絶縁基板の表面に配置した低融点金属を載置した低融点金属接合電極と、
前記低融点金属に一端を付勢した状態で固定したコイルばねと、
前記絶縁基板の裏面に配置した、前記コイルばねの他端を固定した部分と前記抵抗体の一端の接続部分を直列に接続した、前記絶縁基板の長手方向に沿って延びた第1の電極と、
前記第1の電極と対向する、前記抵抗体の他端の接続部分と接続した第2の電極と、を備えたことを特徴とするヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項7】
前記コイルばねの一端は、遮断時に前記金属ベース面に対して略平行な方向に移動することを特徴とする請求項乃至請求項6のいずれかに記載のヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項8】
前記抵抗体の上面を覆う金属カバーと、
少なくとも前記低融点金属と、コイルばねと、前記低融点金属接合電極の上面を覆う樹脂製ケースと、を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4、請求項6または請求項7のいずれかに記載のヒューズ機能付き抵抗器。
【請求項9】
前記金属カバーは、前記抵抗体と熱伝導部材を介して熱的に結合したことを特徴とする請求項8に記載のヒューズ機能付き抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器に係り、特にヒューズ機能を備えた抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
古くからヒューズ機能を備えた抵抗器が知られている。例えば、特許文献1に記載のヒューズ抵抗器は、電気絶縁性ケースの一隅に過電流で発熱する抵抗体を備え、この抵抗体の一端に発熱で溶融する低融点ハンダでばねを溶融接着し、ばねは付勢した状態でケースの他の隅に保持されている。このヒューズ抵抗器は、定格電流と異常電流が比較的小電流である場合には、素早く溶断させることが可能である。しかしながら、瞬間的な異常電流(パルス)でも溶断してしまうという問題がある。
【0003】
また、特許文献2に記載のヒューズ抵抗器は、絶縁基板の一方の面に抵抗体を形成し、抵抗体の一端部近傍に一部重畳するようにヒュージングエレメントを形成したものである。抵抗体は厚膜抵抗体で形成されていて、ヒュージングエレメントは蓄熱層(ガラス)によって覆われており、過電流でヒューズエレメントを溶断させる電流ヒューズ機能を備えている。しかしながら、所定の過電流以上の瞬間的な異常電流(パルス)で溶断してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−114101号公報
【特許文献2】特開平6−36675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば車載部品では、電子回路の保護のため、電子回路を損傷する恐れのある連続的な所定の過電流で確実に溶断し、一方で、電子回路を損傷しない瞬間的な大電流(パルス)では、上記所定の過電流以上でも溶断しないヒューズ機能を備えた抵抗器が望まれている。電子回路を損傷しない瞬間的な大電流(パルス)では溶断しないで、電子回路の安定動作を維持できることが必要だからである。また、係る用途の場合、高い周囲温度でも、安定に動作が可能で、且つ低背型の構造が好ましい。
【0006】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、高い周囲温度でも動作が可能で、且つ小型コンパクト化した構造で、且つ瞬間的な大電流(パルス)に対しては溶断せず、所定の連続的な過電流に対して溶断するヒューズ機能を備えた抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヒューズ機能を備えた抵抗器は、略長方形の絶縁基板と、該絶縁基板の表面に前記絶縁基板の一部を覆うように配置した抵抗体と、絶縁基板の表面の抵抗体が配置されていない部分に配置した低融点金属を載置した低融点金属接合電極と、低融点金属に一端を付勢した状態で固定したコイルばねと、コイルばねの他端を固定した部分と抵抗体の一端の接続部分を直列に接続した、絶縁基板の長手方向に沿って延びた第1の電極と、第1の電極と対向する、抵抗体の他端の接続部分と接続した第2の電極と、を備え、前記コイルばねの一端は、遮断時に前記絶縁基板に対して略平行な方向に移動するように配置したことを特徴とする。
【0008】
これにより、定格電流以上の過電流でも瞬間的な大電流(パルス)に対しては、抵抗体の発熱時間が短く、発生した熱は絶縁基板および金属ベースに吸収され、低融点金属部分での温度上昇は小さく、低融点金属は溶融せず、従って、コイルばねは開かず、ヒューズは溶断に至らず、電子回路の安定動作を維持することができる。また、平均で定格電流以上の所定の過電流が連続して通電された時には、抵抗体からの発熱により、絶縁基板および金属ベースの温度が上昇し、低融点金属がその融点に到達すると、溶融し、コイルばねが開き、電流を遮断するヒューズ機能が働く。そして、略長方形の金属ベースにその裏面を固定した絶縁基板の表面を覆う抵抗体と、該抵抗体から離れた位置に低融点金属に一端を付勢した状態で固定したコイルばねを備えるので、高い周囲温度でも動作が可能で、且つ小型コンパクト化した構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1実施例のヒューズ機能付き抵抗器の平面図である。
図1B図1AのAA線に沿った断面図である。
図2】上記ヒューズ機能の動作例を示す説明図である。
図3】上記ヒューズ機能付き抵抗器の変形例の平面図である。
図4】上記ヒューズ機能付き抵抗器の他の変形例の平面図である。
図5A】本発明の第2実施例のヒューズ機能付き抵抗器の平面図である。
図5B図5AのAA線に沿った断面図である。
図6】上記ヒューズ機能付き抵抗器の変形例の断面図である。
図7A】本発明の第3実施例のヒューズ機能付き抵抗器の図7Bおよび図7CのAA線に沿った断面図である。
図7B図7Aの抵抗器の第1の基板の表面および第2の基板の裏面の透視平面図である。
図7C図7Aの抵抗器の上面図である。
図8A】本発明の第4実施例のヒューズ機能付き抵抗器の(a)は図8Bおよび図8Cの(a)矢視断面図であり、(b)は図8Bおよび図8Cの(b)矢視断面図である。
図8B図8Aの抵抗器の第1の基板の表面および第2の基板の裏面の透視平面図である。
図8C図8Aの抵抗器の上面図である。
図9】上記ヒューズ機能付き抵抗器の抵抗体形状の変形例の平面図である。
図10】上記ヒューズ機能付き抵抗器の電極形状の変形例の平面図である。
図11】上記ヒューズ機能付き抵抗器の他の電極形状の変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1A乃至図11を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1A−1Bは本発明の第1実施例のヒューズ機能付き厚膜抵抗器の構成例を示す。略長方形のアルミや銅等の金属ベース21にその裏面を固定したアルミナ等の絶縁基板11が配置されている。基板11の表面には銀系または銀パラジウム系からなる厚膜電極12,13,14が配置され、電極12,13に接続して、厚膜抵抗体15が基板11に密着して固定されている。すなわち、長方形の基板11の表面には、抵抗体15が基板11の略半分以上の表面を占有して覆うように、本図で言うところの基板右側に長手方向に偏って配置されている。
【0012】
基板11の表面の抵抗体15が配置されていない部分、本図で言うところの基板左側部分の略中央部には、低融点金属18を載置した低融点金属接合電極19が配置されている。低融点金属18には、付勢した状態のコイルばね17の一端が固定されている。コイルばね17の他端は電極13の端部13Aに溶接等により強固に固定されている。低融点金属18は、一例としてSn−Ag−Cu合金からなるハンダ材であり、融点が220℃程度であり、融点以上の温度で溶融する温度ヒューズを構成している。
【0013】
第1の電極13は、コイルばね17の他端を固定した部分13Aと前記抵抗体15の一端との接続部分を直列に接続し、絶縁基板11の長手方向に沿って延びている。すなわち、抵抗体15の一端は絶縁基板11の長手方向に沿って延びた第1の電極13に接続されている。
【0014】
第2の電極12は、第1の電極と対向する位置に配置され、抵抗体15の他端との接続部分と、外部接続用端子16bとの接続部分16Bを直列に接続し、基板11の長手方向に沿って延びている。すなわち、抵抗体15の他端は、第1の電極13と対向する、基板11の他方の長手方向に沿って延びた第2の電極12に接続されている。第3の電極14は、低融点金属接合電極19と、外部接続用端子16aとの接続部分16Aを直列に接続している。
【0015】
コイルばね17は一端が付勢された状態で低融点金属18に固定され、他端が電極13の端部13Aに固定されている。従って、外部接続用端子16a,16b間に流れる電流は、厚膜抵抗体15,コイルばね17、低融点金属18が直列に接続された回路を流れ、低融点金属18が溶融しコイルばね17が開かない限り厚膜抵抗器として動作する。
【0016】
基板11は熱伝導部材20を介して金属ベース21に接着固定され、金属ベース21にはネジ止め用穴22を備え、プリント基板やアルミダイキャスト等に固定することが可能となっている。従って、この構造によれば、抵抗器として動作する抵抗体15は基板11に密着し、また基板11は金属ベース21に密着するので、抵抗体15で発生した熱は基板11および金属ベース21に蓄熱され、これらの温度が緩やかに上昇する。
【0017】
一方で、低融点金属18も低融点金属接合電極19を介して絶縁基板11に密着するので、低融点金属18は金属ベース21に接合した基板11の温度に基づいて溶融動作する。すなわち、抵抗体15に定格電流以上の過電流が継続して流れ、発生した熱が基板11および金属ベース21に蓄熱され、絶縁基板11の温度が上昇し、基板11の抵抗体が配置されていない側部分の略中央部に配置した低融点金属18がその融点に到達すると、低融点金属18が溶融し、コイルばね17が開き、回路を遮断する。コイルばね17の一端は、遮断時に基板11の表面(金属ベース面)に対して略平行な方向に移動し、開離動作する。
【0018】
従って、定格電流以上の過電流でも瞬間的な大電流(パルス)に対しては、抵抗体15の発熱時間が短く、これにより発生した熱は基板11および金属ベース21に吸収され、低融点金属18部分での温度上昇は小さく、低融点金属18は溶断に至らず、電子回路の安定動作を維持することができる。
【0019】
これに対して、瞬間的な大電流(パルス)よりも小さい電流で、平均で定格電流以上の所定の過電流が連続して通電された時には、抵抗体15からの発熱により、絶縁基板11および金属ベース21の温度が上昇し、低融点金属18がその融点に到達すると、溶融し、コイルばね17が開き、電流を遮断するヒューズ機能が働く。
【0020】
図2はこのヒューズの動作例を示す。図中の実線は、瞬間的な大電流(パルス)として、600V、0.5A、300Wの直流電力を4秒間印加した例を示す。この例では、直流電力の印加により抵抗体15が発熱し、低融点金属部分の温度は急激に上昇するが、ヒューズ機能が作動する温度(低融点金属溶融温度)T迄上昇せず、ヒューズは作動しない。従って、このヒューズ抵抗器は上記条件の短時間の大電流(パルス)で溶断しない。
【0021】
これに対して、図中の破線は、平均して定格電流以上で、上記大電流(パルス)よりも小さい直流電流が連続して通電された例として、100Wの直流電力を連続的に印加した例を示す。この例では、低融点金属部分の温度は図示のように緩やかに上昇して、低融点金属18の動作温度(溶融温度)Tを越えて上昇し、低融点金属18は溶融し、コイルばね17が開き、電流を遮断する。
【0022】
従って、このヒューズ抵抗器は、瞬間的な大電流で溶断せず、平均して定格電流以上の過電流が連続的に流れ、基板11および金属ベース21に蓄熱し、低融点金属18の溶融温度に到達することで、確実に過電流を遮断できる。具体的には、一例として、0.5Aの直流電流が5秒間以内なら溶断せず、0.3Aの直流電流がtx秒以上継続して流れた時に溶断する動作が得られる。
【0023】
このヒューズ機能付き抵抗器は、抵抗体として基板11に密着した厚膜抵抗体15を採用していて、コイルばね17および低融点金属18も薄く形成できるので、全体として低背型の部品にすることができる。そして、抵抗体15は基板11に密着し、基板11は金属ベース21に密着しているので、良好な放熱性が得られ、周囲温度90〜100℃でも使用可能である。なお、厚膜抵抗体15の上面に保護膜15aを設けても良く、また厚膜抵抗体15を保護する金属カバー23を設けても良い。金属カバー23は、抵抗体15および熱伝導部材23との間で熱伝導が行なわれるように抵抗体15と接している。つまり、金属カバー23と抵抗体15とは熱伝導部材23を介して熱的に結合している。
【0024】
次に、このヒューズ機能付き抵抗器の変形実施例について説明する。図3は、少なくとも低融点金属18と接合電極19部分およびコイルばね17全体の上面を樹脂製ケース26で覆う例を示す。これにより、電流遮断時に低融点金属18が周囲に飛散することを防止できる。また、抵抗体15部分の発熱をハンダやコイルばねに蓄熱しやすくなり、ヒューズ動作までにかかる時間が短縮できる。
【0025】
図4は、溶融した低融点金属18を移動させるためのランド27、またはスルーホール(図示なし)を形成した例を示す。すなわち、低融点金属接合電極19の周辺にランド27またはスルーホールを形成することで、溶融後の低融点金属は表面張力によってランド27またはスルーホールに移動する。これにより、電流遮断時に低融点金属が周囲に飛散することを防止できる。そして、低融点金属18が接合電極19上から移動するため、ヒューズ動作後の絶縁が容易に確保できる。
【0026】
次に、本発明の第2実施例について説明する。図5A−5Bは、低融点金属接合電極19と、コイルばね17の他端を固定した電極13との間で、絶縁基板11を第1の絶縁基板11aおよび第2の絶縁基板11bに分割した例を示す。すなわち、抵抗体15と第1の電極13と第2の電極12とが第1の絶縁基板11aの表面に配置され、低融点金属18を載置した低融点金属接合電極19および該電極に接続した第3の電極14とが第2の絶縁基板11bの表面に配置されている。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0027】
すなわち、第1実施例の1枚の絶縁基板11を2枚の絶縁基板11a、11bに分離し、その間に隙間を設けた。これにより、絶縁基板11を利用した熱の伝わりを阻害することができ、瞬間的な大電流(パルス)に対して、温度ヒューズ部分の温度上昇が遅くなり、温度ヒューズが溶断しない瞬間的な大電流(パルス)の電力または継続時間を大きくすることができる。
【0028】
また、金属ベース21を熱膨張の大きい材料により形成すると、絶縁基板11a、11bが分割された部分から左右に引っ張られ、ヒューズを確実に開くことができる。さらに、低融点金属接合電極19が配置された絶縁基板11bの下に熱伝導部材よりも熱伝導率の低い部材からなる断熱層30を形成し、抵抗体15が配置された絶縁基板11aの下に熱伝導部材20による放熱層を形成すると、放熱と蓄熱のバランスが取れるため、温度ヒューズが溶断しない瞬間的な大電流(パルス)の大きさと、温度ヒューズが溶断する連続的な過電流の大きさのバランスを調整することができる。
【0029】
また、厚膜抵抗体15から発生した熱は、その下の第1の絶縁基板11aを通って熱伝導部材20に伝わり、金属ベース21へと伝わることで放熱される。この構造では、低融点金属接合電極19の下には断熱層30があるため蓄熱効果が高まり、瞬間的な発熱が低融点金属18まで伝わりにくくなり、瞬間的な大電流(パルス)に対して耐性を高めることができる。
【0030】
図6は、低融点金属接合電極19の下部に位置する絶縁基板11に凹部31を形成し、その下の熱伝導部材20にも対応する穴20aを設けた例を示す。凹部31には断熱材を充填することが好ましい。これによっても、瞬間的な抵抗体15の発熱が低融点金属18まで伝わりにくくなり、瞬間的な大電流(パルス)に対して耐性を高めることができ、温度ヒューズが溶断しない瞬間的な大電流(パルス)の大きさと、温度ヒューズが溶断する連続的な過電流の大きさのバランスを調整することができる。
【0031】
次に、図7A−7Cは、本発明の第3実施例を示す。抵抗体15をアルミナ等の第2の絶縁基板32の裏面側に形成し、コイルばね17を第2の絶縁基板32の表面側に形成し、第2の絶縁基板32の裏面側を第1の絶縁基板11に接着剤33を介して固定している。コイルばね17の他端は絶縁基板32の開口Hを介して絶縁基板11の表面に設けた第1の電極13のコイルばね接続部分13Aに接続固定している。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0032】
この構造によれば、ヒューズ動作後の抵抗体15とコイルばね17の絶縁の確保が容易である。そして、瞬間的な抵抗体15の発熱が低融点金属18まで伝わりにくくなり、瞬間的な大電流(パルス)に対して耐性を高めることができる。さらに、上述の第1実施例および第2実施例の構造と比較して、高さは少し高くなるが絶縁基板11の面積が少なくて良いため、小型化が可能となる。
【0033】
図8A−8Cは本発明の第4実施例を示し、抵抗体15を絶縁基板11の裏面側に形成し、コイルばね17と低融点金属18を載置した電極19を絶縁基板11の表面側に形成し、絶縁基板11の裏面側を金属ベース21に絶縁性接着剤34を介して固定した例を示す。なお、抵抗体15が接合された部分以外の部分には絶縁性接着剤34を配置せず、中空としてもよい。
【0034】
コイルばね17の他端は絶縁基板11の開口Hを介して絶縁基板11の裏面に設けた第1の電極13のコイルばね接続部分13Aに接続固定している。第1の電極13および第2の電極12は絶縁基板11の裏面側に設けられている。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0035】
この構造によれば、ヒューズ動作後の抵抗体15とコイルばね17の絶縁の確保が容易である。そして、抵抗体15の発熱を低融点金属18やコイルばね17に蓄熱しやすくなり、ヒューズ動作までにかかる時間が短縮でき、ヒューズが溶断する精度を向上できる。コイルばね17の一端は、遮断時に金属ベース21の面に対して略平行な方向に移動し、開離動作する。これにより、安定した遮断動作が可能となる。
【0036】
次に、抵抗体形状や電極形状を変更した変形実施例について説明する。図9は、第1実施例において、抵抗体15の一部をコイルばねの巻部分の下部迄拡張した拡大部15aを形成した例を示す。図9に示す電極12,13と抵抗体15の配置では、電極12,13間に流れる電流は、図中破線で囲む領域Cに集中する。そこで、抵抗体15に拡大部15aを設けることで、電流の集中を緩和できる。そして、低融点金属18に熱が伝わりやすい構造となり、ヒューズ動作までの時間が短縮される。さらに、抵抗体15で最も発熱する部分Cからは、低融点金属18が離れた構造であるため、瞬間的な大電流(パルス)に対して許容範囲を増加できる。
【0037】
図10は、電極の形状に変更を加えたものである。すなわち、電極12a、13aは外部接続用端子16a、16bから離れた位置で、対向する両電極の間隔が短くなるように、つまり絶縁基板11の低融点金属接合電極19から離れるにつれて電極幅が広くなる(抵抗体長さが短くなる)ように形成している。これにより、電流経路が分散されるため、抵抗体15の発熱箇所が分散され、瞬間的な大電流(パルス)に対する耐性が強くなる。
【0038】
図11は、電極12,13の抵抗体と重畳する部分の一部に凸パターン12b、13bを形成したものである。これにより、電極間距離が不均一になるようにして、電流が集中する箇所を抵抗体15の略中央部の領域Cに形成できる。このため、抵抗体の発熱箇所が低融点金属18から離れ、瞬間的な大電流(パルス)に対する耐性が強くなる。
【0039】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施例に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、金属カバー23は上述の実施例2および実施例4においても実施することができ、実施例2においては実施例1と同様に抵抗体15を金属カバー23と熱伝導部材23を介して熱的に結合させることができる。また、少なくとも低融点金属18と、コイルばね17と、低融点金属接合電極19の上面を覆う樹脂製ケース26は上述の実施例2、実施例3および実施例4においても実施することができ、実施例1、実施例2および実施例4においては金属カバー23と樹脂製ケース26の両方を設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、瞬間的な大電流(パルス)が流れる電子回路の保護に用いるヒューズ機能を備えた抵抗器に好適に利用可能である。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11