(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空回転部材または前記音響反射部に設けられたポジションマーカと、前記超音波探触子に連設固定された、前記ポジションマーカを検出するセンサとを有する回転センサを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の超音波検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置においては、センサホルダが円筒ケーシングの軸心位置に配置され、厚み測定センサつまり超音波探触子が当該センサホルダに直交して取り付けられているため、管内で、超音波探触子の径方向への突出量が大きい。したがって、平行リンク機構の突出量を最も少なくした場合であっても、コンパクトさに欠ける。
【0007】
特許文献2の装置は、水ジェットノズルによる回転駆動機構が用いられるため、径が変化する管に適用することは設計上不可能である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、管内での拡縮が自在であり、且つ、最も小さく縮径した場合にさらにコンパクト化された超音波検査装置およびそれを用いた超音波検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
本発明は、管の内部検査に利用することができる超音波検査装置である。本発明の超音波検査装置は、軸部と、拡縮アームと、走行部と、伸縮部と、伸縮制御部と、中空軸モータと、超音波探触子と、音響反射部とを含む。
拡縮アームは、軸部の外周部から突設される。さらに、拡縮アームは、軸部の軸心を中心とした放射方向に拡縮可能である。
走行部は、拡縮アームに設けられる。
さらに、伸縮制御部により伸縮部を遠隔操作して拡縮アームの拡縮を行うことができる。このため、管内での縮径および拡径が自在となる。
中空軸モータは、中空回転部材と、中空回転部材を囲繞する非回転部材とを含む。
超音波探触子は、非回転部材に連設固定される。さらに、超音波探触子は、軸部の軸心方向に超音波を発信するように配置される。
音響反射部は、中空回転部材と連動して回転可能に設けられる。さらに、音響反射部は、超音波探触子から発信された超音波を、軸心方向から放射方向に反射させる。
【0010】
本発明の超音波検査装置が管内へ挿入された場合、拡縮アームが管内壁へ向かって突っ張るように拡張し、拡縮アームに設けられた走行部が管内壁へ接触する。これにより、超音波検査装置が保持される。また、伸縮部を伸縮させて拡縮アームの拡縮を行うことができる。このため、管内での縮径および拡径が自在となる。
なお、本発明の超音波検査装置は、管の内部へ挿入される内部移動部(具体的には、(1)の場合、拡縮アーム、走行部、伸縮部、中空軸モータ、超音波探触子、音響反射部)と、管の外部で操作する外部操作部(具体的には、(1)の場合、伸縮制御部)とを含み、本明細書において、超音波検査装置が管内へ挿入されると記載する場合、内部移動部が管内へ挿入されることをいう。
【0011】
なお、本発明の超音波検査装置が挿入される管は、超音波検査の対象となりうるものであれば特に限定されず、たとえば、金属管、樹脂管、およびモルタルなどの多孔質または樹脂などでライニングされた金属管が挙げられる。
【0012】
また、超音波を反射する音響反射部が回転可能に設けられることにより、超音波探触子を固定された状態で設けることができる。これによって、超音波検査装置の、軸部の軸心を中心とした放射方向の大きさ(特に、拡縮アームが最も縮小する場合の大きさ)をコンパクトにすることができる。たとえば、当該放射方向に延在するように超音波探触子を設けるとともに、軸心を中心として超音波探触子自体を回転させる場合に比べて効率よくコンパクト化を図ることができる。
【0013】
さらに、音響反射部の回転に中空軸モータを用いることによって、中空回転部材の中空部内を超音波が伝搬するように構成されるため、超音波探触子自体を軸心方向に配設することができる。これによっても、超音波検査装置の放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0014】
なお、本明細書において、連設固定とは、他の部材を介さずに直接的に固定される態様と、他の部材を介して間接的に固定される態様との両方を意味する。また、本明細書において、管の寸法に関して記載される径とは、特に断りがない限り内径を意味する。
【0015】
また、超音波が軸部の軸心方向に発信されるとは、超音波が軸心上に発信されることに限定されず、軸心に平行かつ軸心から放射方向へ±5mm以内、好ましくは±3mm以内のずれをもって発信されること、および、軸心から±5度、好ましくは±3度傾斜した方向へのずれをもって発信されることの両方を含む。
たとえば、音響反射部によって超音波を軸心方向から放射方向に反射させる位置は軸心上であることが好ましいが、当該位置は、軸心から放射方向へ±5mm以内であればよく、±3mmであることがより好ましい。これによって、好ましい感度を得ることができる。たとえば、エコー高さの低減を最大で半分(具体例として最大6dB分減少)程度に留まらせることができる。
さらに、音響反射部によって反射させた超音波は管の内壁の接線に対して90度で入射することが好ましいが、入射角は、85度以上95度以下であればよい。さらに、当該入射角が88度以上92度以下、特に90度であれば、感度の観点からより好ましい。たとえば、エコー高さの低減を最大で半分(具体例として最大6dB分減少)程度に留まらせることができる。
【0016】
(2)
本発明の超音波検査装置は、拡縮アームを拡縮させる伸縮部を含んでよい。伸縮部の可動部は、軸部の軸心方向に移動するように設けられることができる。
【0017】
この場合、拡縮アームは伸縮部の伸縮に伴って拡縮し、伸縮部の伸縮方向は軸部の軸心方向である。これによって、超音波検査装置の、軸部の軸心を中心とした放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。たとえば、当該放射方向に伸縮するように伸縮部が配設される場合に比べて効率よくコンパクト化を図ることができる。
【0018】
(3)
上記(1)に記載の本発明の超音波検査装置において、伸縮部は、軸部の軸心方向に伸縮するように、軸部の外周部に配設されていてよい。
【0019】
この場合、伸縮部の伸縮方向が軸部の軸心方向であるため、伸縮部自体が軸部の外周部に設けられていても、超音波検査装置の、当該軸心を中心とした放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。たとえば、軸部の外周部に、当該放射方向に伸縮するように伸縮部が配設される場合に比べ、効率よくコンパクト化を図ることができる。
【0020】
(4)
上記(1)および(2)に記載の本発明の超音波検査装置において、伸縮部は、軸部の少なくとも一部を構成してよい。
【0021】
この場合、軸部の少なくとも一部に伸縮部の機能を担わせるため、軸部の外周部に、比較的大きな寸法の伸縮部を設けない構造が可能となる。たとえば、軸部の外周部に伸縮部を全く設けないことも可能であるし、軸部の外周部に伸縮部の動作を補助する補助バネなどの補助部材(当該補助部材も伸縮部の構成要素とする。)のみを設けることも可能である。したがって、超音波検査装置の、軸部の軸心を中心とした放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0022】
(5)
本発明の超音波検査装置は、拡縮アームが収容部を有し、拡縮アームが最も縮小した場合に、伸縮部が収容部内に収容されるように構成されてよい。
【0023】
これによって、超音波検査装置の、軸部の軸心を中心とした放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0024】
(6)
本発明の超音波検査装置は、少なくとも中空軸モータを収容する筐体部を含んでよい。この場合、拡縮アームが最も縮小した場合に、筐体部の、軸心方向への投影に、拡縮アームの全部が重なることが好ましい。
【0025】
この場合、拡縮アームが最も縮小した場合における超音波検査装置の当該放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0026】
(7)
複数の拡縮アームそれぞれの基端は、軸心方向における、軸部の一端の側と他端の側との2箇所に軸着されていることが好ましい。この場合、一端の側に配置される拡縮アームと、他端の側に配置される拡縮アームとは、軸心方向の向きが互いに反対である。
なお、複数の拡縮アームそれぞれの基端は、軸心方向の所定の位置において軸心周りに等間隔で配置され、拡縮アームは、当該基端を中心として放射方向に90度を超えない角度で回転可能であるように構成されている。
【0027】
この場合、拡縮アームは、最も縮小した場合に軸体の軸心にほぼ沿って延在し、拡張時には、所定の位置に配置された当該基端を中心とし、先端が軸心から当該反射方向に離れるように立ち上がり、縮小時には、当該先端が軸心に近づくように倒れる。従って、拡縮アームそれぞれの構造をシンプルにすることができ、超音波検査装置の、軸部の軸心を中心とした放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
さらにこの場合において、拡縮アームの当該基端を中心とする回転角は90度を超えない。このように、シンプルな構造の拡縮アームが軸心方向において所定の可動域内で動くため、超音波検査装置の、軸部の軸心方向の大きさもコンパクトにすることができる。
従って、拡縮アームの動作の軌跡が占める空間を小さくすることができる。このため、チーズ型配管のような分岐管の中の方向変換が容易となる。
【0028】
さらに、管内での軸体の調芯が安定的に行われるため、超音波検査装置が管内で安定的に保持される。
【0029】
(8)
上記(1)から(7)に記載の本発明の超音波検査装置においては、拡縮アームが、先端に走行部が配設された長アーム片と、当該長アーム片より短い短アーム片とがリンク機構を形成したものであってよい。このリンク機構においては、短アーム片は、基端は伸縮部の可動部に、先端は長アーム片の先端と基端との間にそれぞれ回転自在に固定される。
【0030】
この場合、拡縮アームの動作の軌跡が占める空間を小さくすることができるとともに、簡易な構造のリンク機構により、伸縮部の伸縮動作を拡縮アームの拡縮動作に連動させることができる。なお、短アーム片は、長アーム片の先端近傍に設けられることが、拡縮アームの安定性等の観点から好ましい。
【0031】
(9)
本発明の超音波検査装置においては、超音波探触子の少なくとも一部が、中空回転部材の中空部内に配設されていることが好ましい。
【0032】
これによって、超音波検査装置の、軸部の軸心方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0033】
(10)
上記(1)から(9)に記載の本発明の超音波検査装置において、伸縮部は、拡縮アームの動作を補助する補助バネを有してよい。
【0034】
これによって、補助バネによって拡縮アームの動作が補助されるため、拡縮アームの動作がよりスムーズになる。
【0035】
(11)
上記(1)から(10)に記載の本発明の超音波検査装置において、伸縮部は、気圧により駆動されるものであってよい。
【0036】
この場合、媒体が空気であるため、万一媒体の漏れが発生した場合であっても、管内の汚染、引火、感電等の危険性が回避される。
【0037】
(12)
上記(11)に記載の本発明の超音波検査装置において、伸縮部はエアシリンダであってよい。
【0038】
これによって、簡易な構造によって伸縮部の伸縮動作を拡縮アームの拡縮動作に連動させることができる。
【0039】
(13)
本発明の超音波検査装置においては、中空回転部材または音響反射部に設けられたポジションマーカと、超音波探触子に連設固定された、ポジションマーカを検出するセンサとを有する回転センサを含むことが好ましい。
【0040】
これによって、超音波により検査すべき管内壁の周方向の位置を正確に判断することができる。
【0041】
(14)
本発明の超音波検査方法は、上記(1)から(13)に記載の超音波を用いて、管の内部を超音波検査する。
これによって、小口径から管内に挿入後、管内を走行しつつ、管内壁の径変化に応じて拡縮アームを拡縮し、管内壁に超音波を発信することで、管の内部を超音波検査することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によって、管内での拡縮が自在であり、且つ、最も小さく縮径した場合にさらにコンパクト化された超音波検査装置およびそれを用いた超音波検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の要素には同一の符号を付しており、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0045】
[第1実施形態−超音波検査装置100]
図1は、第1実施形態にかかる超音波検査装置のブロック図である。
図2は、第1実施形態にかかる超音波検査装置の、拡径時における模式的側断面図および模式的側面図である。
図2においては、管内に挿入された状態の超音波検査装置を示し、図中の一点鎖線によって管の内壁面Lを示す(以下の図において同様)。
図2における拡縮アームを含む要部は、上半分に、後述の
図4のA−A線断面が示され、下半分に、当該断面図として記載した要部の外観に相当する図が模式的に示される。
図3は、第1実施形態にかかる超音波検査装置の模式的正面図である。正面とは、進行方向側から管の軸心方向に超音波検査装置を見た場合の外観をいう。
図4は、第1実施形態にかかる超音波検査装置の模式的正断面図である。具体的には、
図2のB−B線断面を示す。
図5は、第1実施形態にかかる超音波検査装置の、縮径時における模式的側断面図および模式的側面図である。
図5は、拡縮態様が異なることを除いて、
図2と同様に表示している。
【0046】
なお、以下においては、説明の便宜上、矢印F(
図2、
図5参照)の方向を進行方向、矢印Fと反対の方向を退行方向、内壁面Lの軸心O(
図3、
図4参照)を軸心、内壁面Lの径方向を径方向と記載する場合がある。
【0047】
[構成概要]
図1に示すように、本実施形態にかかる超音波検査装置100は、内部移動部110と外部操作部120とを含む。内部移動部110と外部操作部120とは、ケーブル130で物理的および電気的に接続されている。
【0048】
内部移動部110は、管内に挿入されて管の軸心方向に走行する部分であり、筒部(軸部)200、エアシリンダ300、拡縮アーム400、車輪500を有する。その他に、内部移動部110は、中空軸モータ610、方向変換部620及び検知部700を有する。内部移動部110については
図2から
図5を、検知部700については
図2、
図3、
図6、
図7を用いて詳述する。なお、これら図においては、内部移動部110と接続されるケーブル130の図示を省略する。
【0049】
外部操作部120は、管外で操作される部分であり、伸縮制御部121、その他モータ制御部122、方向制御部123および検知条件制御部124といった入力部と、検知情報解析部125と、出力部126を有する。
【0050】
伸縮制御部121は、エアシリンダ300の伸縮を制御する。具体例として、エアシリンダ300を構成する部品の1つであるソレノイドバルブ(後述)を制御するシーケンサ等が挙げられる。モータ制御部122は、車輪500の走行速度を制御する。また、モータ制御部122は、中空軸モータ610を制御する。方向制御部123は、車輪500の走行方向を変換する。検知条件制御部124は、検知部700に対し、測定条件等の入力情報の制御および測定結果等の出力情報に基づくフィードバック制御等の制御を行う。検知情報解析部125は、検知部700による出力情報の解析を行う。出力部126は、検知部700による出力情報を出力する。
【0051】
[筒部]
図2及び
図4に示すように、内部移動部110は、正面視中央に筒部200を有する。筒部200は、管の内壁面Lの軸心方向に延在し、軸筺体部210と、軸筺体部210の外周面上に設けられた連結用部材220とから構成される。
【0052】
軸筺体部210内には、所望の部材を収容することができる。たとえば、エアシリンダ300の関連部品(後述)を収容することができる。その他、
図1に示した方向変換部620およびケーブル130等を収容することができる。
【0053】
連結用部材220は、筒部200と他の部材を連結する。本実施形態では、エアシリンダ300および拡縮アーム400を連結する。連結用部材220は、拡縮アーム400の拡縮機構に応じた態様で設けられる。
【0054】
本実施形態では、連結用部材220は、軸筺体部210の外周面を軸心方向に摺動可能となるように設けられた摺動リング221と、軸筺体部210の外周面に固定された固定リング222,223,225とを含む。軸心方向において進行方向F側から順に、固定リング223、固定リング225、摺動リング221および固定リング222が設けられる。
【0055】
摺動リング221は、拡縮アーム400の基部を軸着する。これにより、拡縮アーム400の基部が回転自在且つ軸方向に移動可能な状態で連結される。
固定リング222,223も、拡縮アーム400の基部を軸着する。これにより、拡縮アーム400の基部が回転自在に固定された状態で連結される。
一方固定リング225は、エアシリンダ300を保持するよう固定する。
【0056】
[エアシリンダ]
エアシリンダ300は、空気の圧力を利用して駆動するアクチュエータである。従って、ピストン310およびシリンダ320、その他図示しない関連部品で構成される。関連部品としては、空気流通に必要な部品、具体的にはエア配管および圧縮空気源等が挙げられる。そのほか、関連部品として、動作に必要な部品、具体的には、速度を調節するスピードコントローラ、ピストン位置を検知するセンサ、および空気の方向を切り替えるソレノイドバルブ等が挙げられる。
【0057】
エアシリンダ300は、
図2に示すように、軸心方向に延在するように配置される。これによって、エアシリンダ300の伸縮方向が軸心方向となる。シリンダ320の部分が固定リング225に固定される一方、エアシリンダ300のピストン310のロッド311は摺動リング221に固定される。したがって、エアシリンダ300の伸縮動作によって摺動リング221が軸心方向に摺動し、これにより、後に詳述するように、摺動リング221と連結する拡縮アーム400を動作させることができる。
【0058】
[拡縮アームおよび車輪]
図2および
図4に示すように、拡縮アーム400は、筒部200の連結用部材220に連結されることにより、筒部200の軸心を中心とする放射方向、つまり管の径方向に突設される。拡縮アーム400の先端つまり拡縮アーム400のうち筒部200から最も離間した部分には、車輪500が設けられる。本実施形態においては、拡縮アーム400および車輪500のセットは、軸心まわりに等間隔となるように3セット設けられる。
【0059】
拡縮アーム400は、主アーム片411と、リンクアーム片412と、副アーム片413と、同期アーム片414とを含む。これらは、連結用部材220およびエアシリンダ300と相まって、エアシリンダ300の伸縮動作を拡縮アーム400の拡縮動作に連動させるリンク機構を構成する。
【0060】
図4に示すように、主アーム片411、リンクアーム片412、副アーム片413および同期アーム片414は、車輪500の車軸を両持ちするように車軸500の両端部に一対ずつ設けられ、対をなすアーム片の間にはフリースペースSが形成される。
【0061】
図2に示すように、主アーム片411は基端部が摺動リング221に軸着されることにより、軸着部分を中心として、軸心に対する角度が変化するように回転動作できる。主アーム片411先端部は後述のように同期アーム片414を介して車輪500に連結しているため、当該回転動作により、車輪500の筒部200からの離間量を物理的に規定する。
【0062】
主アーム片411は、摺動リング221の軸心方向の移動に伴って基端位置が軸心方向に移動可能である。摺動リング221は前述のようにエアシリンダ300のロッド311を固定している。つまり、主アーム片411の基端位置は、エアシリンダ300伸縮動作に伴って移動する。
【0063】
さらに主アーム片411の先端部と基端部との間では、リンクアーム片412の先端部が回転自在に固定されている。リンクアーム片412は、基端部が、先端部の固定位置よりも退行方向側において固定リング222に軸着されている。したがって、リンクアーム片412は、主アーム片411の基端部との相対位置の変化に応じ、軸着部分を中心として主アーム片411と反対方向に回転動作するととともに、主アーム片411の先端部を、筒部200と近接または離間するように動作させる。
【0064】
副アーム片413は、主アーム片411と同形同大であり、基端部が固定リング223に軸着されることにより主アーム片411と同様の回転動作が可能である。さらに副アーム片413の先端部は、主アーム片411の先端部が回転可能に固定された同期アーム片414に、回転可能かつ軸心方向に摺動可能であるように連結される。したがって、副アーム片413は、同期アーム片414によって、主アーム片411の回転動作に同期して回転動作する。
【0065】
さらに、副アーム片413の先端部における当該回転動作とともに、連結位置が軸心方向に移動するため、同期アーム片414は動作の間一貫して、軸心と略平行の姿勢を保つ。同期アーム片414の軸心方向両端には車輪500が設けられているため、軸心に平行な内壁面Lに両車輪500が確実に接触できる。
なお、車輪500に関連する他の図示しない部材、たとえば駆動装置およびサスペンション等が設けられていてよい。
【0066】
[拡縮動作]
図2に示すように、拡径時においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作してエアシリンダ300を矢印Eの方向へ伸長させることに伴い、摺動リング221が矢印Eと同じ方向へ移動することで主アーム片411の基端位置も矢印Eと同じ方向へ移動する。これによって主アーム片411の基端部とリンクアーム片412の基端部との間が狭まるため、リンクアーム片412がその先端部を筒部200から離間する方向へ起こすとともに、主アーム片411を筒部200から離間する方向へ起こす。この主アーム片411の動作が同期アーム片414を介して副アーム片413を同様に起きるように動作させる。その結果、拡縮アーム400が矢印SUの方向へ拡長した態様となり、同期アーム片414の両端に設けられた車輪500を内壁面Lに対して突っ張らせる負荷を与える。
【0067】
この場合、伸縮制御部121(
図1参照)の操作により筒部200に対して設けられた全ての拡縮アーム400においてエアシリンダ300が同期伸長するため、全ての拡縮アーム400において、拡長の程度および拡長のタイミングが略等しくなる。このような拡縮アーム400の拡張動作によって、
図4に示すように、筒部200の軸心が内壁面Lの軸心に略一致するように調芯される。
【0068】
反対に、
図5に示すように、縮径時(最小限まで縮径させる時)においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作してエアシリンダ300を矢印Cの方向へ縮小させることに伴い、摺動リング221が矢印Cと同じ方向へ移動することで主アーム片411の基端位置も矢印Cと同じ方向へ移動する。これによって主アーム片411の基端部とリンクアーム片412の基端部との間が拡がるため、リンクアーム片412がその先端部を筒部200に近接する方向へ倒すとともに、主アーム片411を筒部200へ近づく方向へ倒す。この主アーム片411の動作が同期アーム片414を介して副アーム片413を同様に倒すように動作させる。その結果、拡縮アーム400が矢印SDの方向へ縮小した態様となる。この場合にも、拡縮アーム400は、同期アーム片414の両端に設けられた車輪500を内壁面Lに対して突っ張らせる負荷を与える。
【0069】
この場合、伸縮制御部121(
図1参照)の操作により筒部200に対して設けられた全ての拡縮アーム400においてエアシリンダ300が同期収縮するため、全ての拡縮アーム400において、縮小の程度および縮小のタイミングが略等しくなる。このような拡縮アーム400の縮小動作によっても、筒部200の軸心が内壁面Lの軸心に略一致するように調芯される。
【0070】
さらに
図5のように拡縮アーム400が最小限まで縮小された場合、拡縮アーム400に形成されたフリースペースS(
図4参照)の中にエアシリンダ300の一部が収容される。つまり、エアシリンダ300の存在が縮径に支障しない。このため、拡縮アーム400が最小限まで縮小された場合に超音波検査装置100の放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0071】
このような拡縮アーム400の拡縮が、外部操作部120の伸縮制御部121(
図1参照)により、エアシリンダ300の伸縮動作を遠隔操作することにより行われるため、管内での縮径および拡径が自在である。これによって、内壁面Lの径の変化の大きい部分であっても、内壁面Lの径の変化に応じて積極的に縮径および拡径することができる。さらに、チーズ形状の配管内での方向変換も容易になる。
【0072】
[モータおよび検知部]
図2に示すように、筒部200の進行方向F側の端部には、筺体部800に収容された中空軸モータ610、および検知部700が配設される。中空軸モータ610は回転する中空回転部材611と回転しない非回転部材612から構成され、検知部700は超音波探触子710と音響反射部720とから構成される。
【0073】
図3に示すように、中空回転部材611は、中空部を確保するための貫通孔615を有する正面視円形のパイプ状であり、筒部200の軸心Oと同軸に配置される。非回転部材612は中空回転部材611の外表面に対応する貫通孔を有する正面視略正方形のブロック状であり、当該貫通孔内に中空回転部材611を貫通させることにより中空回転部材611を回転可能に囲繞する。また、非回転部材612の当該略正方形の四隅近傍には固定用ねじ穴が凹設される。
【0074】
図6および
図7に示すように、中空軸モータ610を収容する筺体部800は、退行方向側が開口したケーシング部材810と、当該開口部分を密嵌するケーシングカバー部材820とから構成される。ケーシング部材810とケーシングカバー部材820との密嵌部分はガスケットにより封止される。ケーシング部材810とケーシングカバー部材820には、それぞれ、軸心Oと同軸の貫通孔813と貫通孔822とが穿設されている。また、ケーシングカバー部材820には、中空軸モータ610のモータケーブル136を貫通させるケーブル孔826が設けられており、モータケーブル136を筺体部800内部から外部へ配線させる。さらに、ケーシングカバー部材820には、中空軸モータ610の非回転部材612に設けられた固定用ねじ穴に対応する位置にねじ孔が穿設されており、非回転部材612をねじ止めにより固定する(
図6下半分表示参照)。
【0075】
このように非回転部材612に固定されたケーシングカバー部材820には、さらに、退行方向側で探触子固定部材750がねじ止め固定されている(
図6上半分表示参照)。
図6および
図7に示すように、探触子固定部材750には軸心Oと同軸かつ超音波探触子710を嵌通可能な径で貫通孔755が穿設されており、貫通孔755に超音波探触子710を嵌通させることにより超音波探触子710を固定する。これにより、超音波探触子710は、探触子固定部材750とケーシングカバー部材820とを介して、中空軸モータ610の非回転部材612に固定される。この場合、
図6に示すように、超音波探触子710の超音波伝搬部712は、ケーシングカバー部材820の貫通孔822内も貫通し、進行方向側の端が筺体部800内の中空軸モータ610の貫通孔615内(中空部内)に達するまで挿入される。これにより、超音波検査装置の軸心O方向の長さを短くすることができる。
なお、超音波探触子710の探触子ケーブル137は、軸筺体部210(
図2参照)内へ配線される。
【0076】
上記のように固定された超音波探触子710は、軸心Oと同軸配置となっているため、発信部711から発信され超音波伝搬部712内を伝搬された超音波は、軸Oに音軸が一致するように進行方向へ発信される。
一方、
図6に示すように、固定された超音波探触子710の進行方向側には、発信された超音波の伝搬方向を変更するための音響反射部720が回転可能な態様で設けられる。
図6および
図7に示すように、音響反射部720は、反射部材721と、反射部材721が取り付けられる回転ホルダ724とから構成される。
【0077】
回転ホルダ724は、反射部材721を挿嵌する進行方向側の径大筒部725と、中空回転部材611に固定される退行方向側の径小筒部726とを有する筒状部材である(
図7参照)。
図6に示すように、回転ホルダ724は、ケーシング部材810の貫通孔813を遊貫して筺体部800内部に挿入され、さらに径小筒部726が、中空回転部材611の貫通孔615内に嵌通される。この場合、回転ホルダ724の挿入量は、径大筒部725と径小筒部726との境界に形成される係止面729が、中空回転部材611の進行方向側の端面へ当接係止することにより決定される。これにより、径小筒部726の退行方向側の端部が、ケーシングカバー部材820の貫通孔内に遊挿され、かつ当該端部の最端面と、探触子固定部材750の当接面751との間にはクリアランス(たとえば、0.1mm以上0.5mm以下の隙間)を生じさせる。それとともに、径小筒部726の内部には超音波探触子710の超音波伝搬部712を遊挿させる。
【0078】
図6に示すように、回転ホルダ724は、径小筒部726が中空回転部材611の貫通孔615内に嵌通されることで中空回転部材611に固定されるため、中空回転部材611の回転駆動を受けて一体的に回転することができる。
【0079】
一方、
図6に示すように、回転ホルダ724の径大筒部725とケーシング部材810の貫通孔813との遊貫部分には、貫通孔813に刻設されたパッキン溝811(
図7参照)にパッキンが嵌着され、回転ホルダ724の径小筒部726とケーシングカバー部材820の貫通孔822との遊挿部分においては、貫通孔822に刻設されたパッキン溝824にパッキンが嵌着される。なお、パッキンとしては回転運動用シール材であればよく、一例としてオイルシールが挙げられる。
さらに、回転ホルダ724の径小筒部726と超音波伝搬部712との遊挿部分においては、径小筒部726の内壁728と、超音波伝搬部712の外表面との間にクリアランス(たとえば、0.1mm以上0.5mm以下の隙間)が生じている。
【0080】
このように回転ホルダ724を中空回転部材611以外の部材に固定されないように設けることによって、中空回転部材611と一体的に回転自在としながら、筺体部800および超音波探触子710には中空回転部材611の回転駆動を伝えることなく、非回転部材612と共に非回転状態を維持することができる。
【0081】
回転ホルダ724の径大筒部725の開口端に挿嵌されて固定される反射部材721は、退行方向側に、超音波を反射可能な傾斜面723を有する。具体的には、傾斜面723は、側面視で軸心Oに対して45度をなすように形成されており、径大筒部725内で、超音波探触子710から軸心O方向に発信された超音波を軸心O上で反射しその伝搬方向を垂直に変化させる。なお、傾斜面723における反射部材721の素材は、音響インピーダンスの値が、超音波探触子710からの超音波の伝搬媒質(本実施形態においては、水)の音響インピーダンスの値に対して大きな差を有する金属材料、樹脂材料、セラミック材料などから構成される。
回転ホルダ724の径大筒部725の側面には、傾斜面723により伝搬方向が変更された超音波の外部への出口となる出口孔727が設けられる。
【0082】
これにより、
図2の点線で示すように、超音波探触子710から発信された超音波は、傾斜面723で伝搬方向を変更され、出口孔727内を通って外部へ伝搬し、管の内壁Lへ垂直に入射する。
さらに、回転ホルダ724が中空軸モータ610の回転により軸心Oを中心として回転すると、反射部材721の傾斜面723も一体的に回転する。これによって、管の内壁Lへの入射角度を保ったまま、入射位置を管の周方向に沿って回転移動させることができる。したがって、管の周方向の内壁面Lをまんべんなく走査することができる。
【0083】
さらに、筺体部800の内部には、
図6に示すように、一回転センサ770が設けられる。一回転センサ770は、中空回転部材611に固定されたポジションマーカ771と、ケーシングカバー部材820に固定されたセンサ772とから構成される。ポジションマーカ771は、永久磁石など、センサ772によって検知されるものであり、中空回転部材611とともに回転する。一方、センサ772は、ホール素子など、ポジションマーカ771の特性に応じて選択されるセンサであり、非回転部材612とともに非回転状態が維持される。
【0084】
したがって、回転するポジションマーカ771の位置が図示される位置に一致した時にセンサ772が検知することで、中空回転部材611の一回転の時間を検出する。さらに詳細なポジションマーカの位置は、センサ772の検出タイミング(周期T)とポジションマーカ771の回転時間(<T)とから導出することができる。
【0085】
[第2実施形態−超音波検査装置100a]
図8は、第2実施形態にかかる超音波検査装置の模式的背面図である。背面とは、装置を、退行方向側から管の軸心方向に見た場合の外観をいう。
図9は、第2実施形態にかかる超音波検査装置の、拡径時における模式的一部側断面図である。
図9においては、
図8のD−D線断面を模式的に示し、中空軸モータ610、検知部700および筺体部800は第1実施形態と同様につき省略する。
図10は、第2実施形態にかかる超音波検査装置の、縮径時における模式的一部側断面図である。
図10は、拡縮態様が異なることを除いて、
図9と同様に表示している。
【0086】
第2実施形態においては、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、同様の部分については説明を省略する。
図8から
図10に示す超音波検査装置100aの内部移動部110aは、第1実施形態と異なるリンク機構を有する拡縮アーム400a、および補助車輪510aを有する。
【0087】
[連結用部材]
連結用部材220aは、拡縮アーム400aに応じた態様で設けられる。本実施形態では、連結用部材220aは、軸筺体部210の外周面を軸心方向に摺動可能となるように設けられた摺動リング221aと、筒部200aの軸筺体部210の外周面に固定された固定リング224a,225aとを含む。軸心方向において進行方向F側から順に、固定リング224a、摺動リング221aおよび固定リング225aが設けられる。
【0088】
[エアシリンダ]
エアシリンダ300は、固定リング225aに固定され、ロッド311が摺動リング221aに固定される。したがって、エアシリンダ300の伸縮動作によって摺動リング221aが軸心方向に摺動し、これにより、後に詳述するように、摺動リング221aと連結する拡縮アーム400aを動作させることができる。
【0089】
[拡縮アーム]
拡縮アーム400aは、主アーム片411aおよび主アーム片411aより短い長さで構成されたリンクアーム片412aを含む。これらは、連結用部材220aおよびエアシリンダ300と相まって、エアシリンダ300の伸縮動作を拡縮アーム400aの拡縮動作に連動させるリンク機構を構成する。
【0090】
図8に示すように、主アーム片411aおよびリンクアーム片412aは、車輪500aの車軸を両持ちするように車軸500の両端部に一対ずつ設けられるため、対をなすアーム片の間にはフリースペースSaが形成される。
【0091】
図9に示すように、主アーム片411aは基端部が固定リング224aに軸着されることにより、軸着部分を中心として、軸心に対する角度θが変化するように回転動作できる。主アーム片411a先端には車輪500aが連結しているため、当該回転動作により、車輪500aの筒部200aからの離間量を物理的に規定する。角度θは、90度を越えなければよい。さらに、拡縮アーム400aが最も拡径した場合の超音波検査装置100aの安定性の観点から60度以下、または45度以下であってよい。
【0092】
さらに主アーム片411aの先端部と基端部との間では、リンクアーム片412aの先端部が回転自在に固定されている。リンクアーム片412aは、基端部が、先端部の固定位置よりも進行方向F側において摺動リング221aに軸着されている。これにより、軸着部分を中心として、軸心に対する角度が変化するように回転動作できるとともに、摺動リング221aの軸心方向の移動に伴って基端位置が軸心方向に移動可能である。したがって、リンクアーム片412aは、主アーム片411aの基端部との相対位置の変化に応じ、軸着部分を中心として主アーム片411と同じ方向に回転動作するととともに、主アーム片411aの先端部を、筒部200aと近接または離間するように動作させる。
【0093】
なお、主アーム片411aは一対の補助車輪510aを有する。一対の補助車輪510aは、基端部と先端部との間、本実施形態では基端部近傍に軸着される。補助車輪510aは、車輪軸が主アーム片411aの短手方向に摺動可能であり、側面視において主アーム片411aから内壁面L側へ露出する方向に付勢されている。車輪軸は、主アーム片411aの先端部が筒部200aに近接して補助車輪510aが内壁面Lに接する場合に、付勢力に抗って摺動する。
【0094】
[拡縮動作]
図9に示すように、拡径時においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作してエアシリンダ300を矢印C方向へ収縮させることに伴い、摺動リング221aが矢印Cと同じ方向へ移動することでリンクアーム片412aの基端位置も矢印Cと同じ方向へ移動する。これによってリンクアーム片412aの基端部と主アーム片411aの基端部との間が広がるため、リンクアーム片412aがその先端部を筒部200aから離間する方向へ起こすとともに、主アーム片411aを筒部200aから離間する方向へ起こす。その結果、拡縮アーム400aが矢印SUの方向へ拡長した態様となり、主アーム片411aの先端部に設けられた車輪500aを内壁面Lに対して突っ張らせる負荷を与える。
【0095】
この場合、伸縮制御部121(
図1参照)の操作により筒部200aに対して設けられたすべての拡縮アーム400aにおいてエアシリンダ300が同期収縮するため、全ての拡縮アーム400aにおいて、拡長の程度および拡長のタイミングが略等しくなる。このような拡縮アーム400aの拡張動作によって、筒部200aの軸心が内壁面Lの軸心に略一致するように調芯される。
【0096】
反対に、
図10に示すように、縮径時(最小限まで縮径させる時)においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作してエアシリンダ300を矢印Eの方向へ伸長させることに伴い、摺動リング221aが矢印Eと同じ方向へ移動することでリンクアーム片412aの基端位置も矢印Eと同じ方向へ移動する。これによってリンクアーム片412aの基端部と主アーム片411aの基端部との間が狭まるため、リンクアーム片412aがその先端部を筒部200aに近接する方向へ倒すとともに、主アーム片411aを筒部200aへ近づく方向へ倒す。その結果、拡縮アーム400aが矢印SDの方向へ縮小した態様となる。この場合にも、拡縮アーム400aは、車輪500aを内壁面Lに対して突っ張らせる負荷を与える。
【0097】
この場合、伸縮制御部121(
図1参照)の操作により筒部200aに対して設けられたすべての拡縮アーム400aにおいてエアシリンダ300が同期伸長するため、全ての拡縮アーム400aにおいて、縮小の程度および縮小のタイミングが略等しくなる。このような拡縮アーム400aの縮小動作によっても、筒部200aの軸心が内壁面Lの軸心に略一致するように調芯される。
【0098】
さらに
図10のように拡縮アーム400aが最小限まで縮小された場合、拡縮アーム400aを構成するアーム片が軸心と平行となるまで折り畳まれる。このとき、主アーム片411aの基端部近傍に設けられた補助車輪510aが内壁面Lに接触することにより、超音波検査装置100aのバランスをとる。さらに、拡縮アーム400aに形成されたフリースペースSa(
図8参照)の中にエアシリンダ300が収容される。つまり、エアシリンダ300の存在が縮径に支障しない。このため、拡縮アーム400aが最小限まで縮小された場合に超音波検査装置100aの放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0099】
[第3実施形態−超音波検査装置100b]
図11は、第3実施形態にかかる超音波検査装置の模式的正面図である。
図12は、第3実施形態にかかる超音波検査装置の模式的側断面図である。
図12においては、
図11のE−E線断面を示す。
【0100】
図11および
図12に示す超音波検査装置100bの内部移動部110bは、補助車輪510aを有しないことを除いて第2実施形態の拡縮アーム400aおよび車輪500aと同じ拡縮アーム400bおよび車輪500bを有する。拡縮アーム400bは、筒部200bの連結用部材220bに連結されることにより、筒部200bの軸心を中心として放射状に突設される。拡縮アーム400bの先端つまり拡縮アーム400bのうち筒部200bから最も離間した部分には、車輪500bが設けられる。
【0101】
本実施形態においては、
図11に示すように、拡縮アーム400bおよび車輪500bのセットは、軸心まわりに等間隔となるように6セット設けられる。
図12に示すように、隣り合う拡縮アーム400bは、軸心方向の向きが互い違いになるように配設される。このため、進行方向F側と対向方向側の両方で常に車輪500bが内壁面Lに接している。したがって、管内において超音波検査装置100bを常に安定に保持することができる。
【0102】
拡縮アーム400bが、主アーム片411bと、主アーム片411bより短い長さで構成されたリンクアーム片412bとを含むこと、および、これらが連結用部材220bおよびエアシリンダ300と相まって、エアシリンダ300の伸縮動作を拡縮アーム400bの拡縮動作に連動させるリンク機構を構成することは、第2実施形態の内部移動部110aにおけるものと同じである。従って、拡縮アーム400bの動作および機能も、第2実施形態の内部移動部110aにおけるものと同じである。
【0103】
[第4実施形態−超音波検査装置100c]
図13は、第4実施形態にかかる超音波検査装置の拡径時における模式的一部側断面図である。
図14は、第4実施形態にかかる超音波検査装置の縮径時における模式的一部側断面図である。
【0104】
図13および
図14に示す超音波検査装置100cは、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bの変形態様である。具体的には、内部移動部110cにおいて、拡縮アーム400cおよびその構成アーム片(主アーム411cおよびリンクアーム412c)、車輪500c、フリースペースScは、それぞれ、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bの内部移動部110bにおける、拡縮アーム400bおよびその構成アーム片(主アーム411bおよびリンクアーム412b)、車輪500b、フリースペースSbと同じである。一方、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bの軸筺体部210およびエアシリンダ300の代わりに、それぞれ、軸筺体部210cおよびエアシリンダ300cを有する。
【0105】
本実施形態においては、連結用部材220cとして、進行方向側から、固定リング224c、摺動リング221c、摺動リング226c、および固定リング227cが設けられている。固定リング224c,227cは軸筺体部210cに固定され、摺動リング221c,226cは、軸筺体部210c表面を軸心方向に摺動可能となるように設けられる。軸筺体部210cは、後述のエアシリンダ300cの一部(エアタンク330c)を構成する。
【0106】
主アーム片411cの基端部は、固定リング224cに軸着される。リンクアーム片412cの基端部は、固定リング224cより退行方向側に設けられた、軸方向に手動可能な摺動リング221cに軸着される。摺動リング221cと固定リング224cとは、それぞれがリンクアーム片412cおよび主アーム片411cの軸着部を有するとともに、両者が後述のエアシリンダ300cの一部(追従部340c)を構成するように形成されている。
【0107】
[エアシリンダ]
エアシリンダ300cは、エアタンク330c、追従部340cおよび補助バネ350cを含む。
エアタンク330cは、拡縮アーム400cの動作源となる空気の送入および排出がなされるものであり、軸筺体部210cによって構成される。エアタンク330cには、空気の送入および排出のための図示しないエアチューブが連結されている。
【0108】
追従部340cは、エアタンク330cへの空気の送入およびエアタンク330cからの排出に伴って動作が追従するように伸縮機構を構成する。つまり、エアシリンダ300cの伸縮動作は、この追従部340の伸縮動作に起因する。
【0109】
追従部340cは、摺動リング221cと固定リング224cとによって構成される。より具体的には、摺動リング221cが進行方向F側に開口するハウジング部を有し、固定リング224cが、退行方向に延出する延出部を有し、摺動リング221cの内周側面に固定リング224cの延出部の外周面が摺動可能に密着することにより、伸縮機構を構成する。さらに、ハウジング部内の空間ARとエアタンク330c内の空間とは、エアタンク300cに設けられた連通孔によって連通する。これによって、エアタンク330cへの空気の送入およびエアタンク330cからの空気の排出動作が、ハウジング部内の空間ARの体積を変化させるとともに、追従部340cの伸縮動作を生じさせる。
【0110】
以下において、エアシリンダ300cの伸縮に関する説明のため、固定リング224cをエアシリンダ300cの固定部324c、摺動リング221cをエアシリンダ300cの可動部321cと記載する場合がある。
【0111】
補助バネ350cは、摺動リング221cの退行方向側に、軸心方向に延在するように設けられ、一方が摺動リング226cに、他方が固定リング227cに固定される。さらに、摺動リング221cと摺動リング226cとは互いに固定されているため、補助バネ350cは、摺動リング221cの移動に伴って動く。
【0112】
[拡縮動作]
図13に示すように、拡径時においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作し、エアシリンダ300cのエアタンク330c内に空気を送り込む。これにより、送り込まれた空気はエアタンク330cの連通孔内を図中矢印FLの方向へ移動し、空間AR内に空気が流れ込む。これに伴い、可動部321cが摺動リング226cと共に移動するため、リンクアーム片412cの基端位置が退行方向へ移動する。これによってリンクアーム片412cと主アーム片411cとの間が広がるため、リンクアーム片412cがその先端部を筒部200cから離間する方向へ起こすとともに、主アーム片411cを筒部200cから離間する方向へ起こす。その結果、拡縮アーム400cが矢印SUの方向へ拡長した態様となり、主アーム片411cの先端部に設けられた車輪500cを内壁面Lに対して突っ張らせる負荷を与える。
一方で、補助バネ350cは、摺動リング226cの移動とともに収縮する。
筒部200cの軸心が内壁面Lの軸心と略一致するように調芯された状態で拡径されることは、上述の実施形態と同様である。
【0113】
反対に
図14に示すように、縮径時(最小限まで縮径させる時)においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作し、エアシリンダ300cのエアタンク330cから空気を排出する。これにより、空間AR内の空気がエアタンク330cの連通孔内を図中矢印FLの方向へ移動し、空間ARから空気が排出される。これに伴い、可動部321cが摺動リング226cと共に移動するため、リンクアーム片412cの基端位置が進行方向へ移動する。同時に、拡径によって収縮していた補助バネ350cが戻る力が可動部321cに加わるため、当該摺動動作がスムーズに起きる。
【0114】
これによってリンクアーム片412cと主アーム片411cとの間が狭まるため、リンクアーム片412cがその先端部を筒部200cに近接する方向へ倒すとともに、主アーム片411cを筒部200cへ近づく方向へ倒す。その結果、拡縮アーム400cが矢印SDの方向へ縮小した態様となる。この場合にも、拡縮アーム400cは、車輪500cを内壁面Lに対して突っ張らせる負荷を与える。
筒部200cの軸心が内壁面Lの軸心と略一致するように調芯された状態で縮径されることは、上述の実施形態と同様である。
【0115】
さらに
図14のように拡縮アーム400cが最小限まで縮小された場合、拡縮アーム400cに形成されたフリースペースScの中に補助バネ350cが収容される。つまり、補助バネ350cの存在が縮径に支障しない。このため、拡縮アーム400cが最小限まで縮小された場合に超音波検査装置100cの放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0116】
なお、本実施形態では、補助バネ350cが、軸心方向において摺動リング221cに対し固定リング224cとは反対側に配設されている例を挙げたが、この態様に限定されるものではない。たとえば、補助バネ350cが固定リング224cと摺動リング221cとの間にそれぞれ両端が固定された状態で配設されてよい。この場合、拡径時においては補助バネが伸長し、縮径時においては当該伸長した補助バネが戻る力により拡縮アーム400cの復帰動作を補助することができる。
【0117】
[第5実施形態−超音波検査装置100d]
図15は、第5実施形態にかかる超音波検査装置の拡径時における模式的一部側断面図である。
図16は、第5実施形態にかかる超音波検査装置の模式的一部断面図である。
図17は、第5実施形態にかかる超音波検査装置の縮径時における模式的一部側断面図である。
【0118】
図15から
図17に示す超音波検査装置100dは、第4実施形態にかかる超音波検査装置100cの変形態様である。具体的には、内部移動部110dにおいて、拡縮アーム400dおよびその構成アーム片(主アーム411dおよびリンクアーム412d)、車輪500d、軸筺体部210d、固定リング224d(固定部324d)、摺動リング221d(可動部321d)、摺動リング216d、エアシリンダ300dおよびその構成部材(エアタンク330d、追従部340d、補助バネ350d)、フリースペースSdは、それぞれ、第4実施形態にかかる超音波検査装置100cの内部移動部110cにおける、拡縮アーム400cおよびその構成アーム片(主アーム411cおよびリンクアーム412c)、車輪500c、軸筺体部210c、固定リング224c(固定部324c)、摺動リング221c(可動部321c)、摺動リング216c、エアシリンダ300cおよびその構成部材(エアタンク330c、追従部340c、補助バネ350c)、フリースペースScと同じである。一方、第4実施形態にかかる超音波検査装置100cの固定リング227cの代わりに、摺動リング228dおよび固定リング229dを有する。
【0119】
摺動リング228dは、補助バネ350dの他端が固定され、かつ、軸筺体部210表面を軸心方向に摺動可能となるように設けられる。固定リング229dは、軸筺体部210に固定される。
【0120】
[拡縮動作]
図15に示すように、拡径時においては、第4実施形態と同様に、調芯された状態で、矢印SUの方向へ拡縮アーム400dの拡長が起こる。
一方で、補助バネ350dは、摺動リング226d,228dの移動とともに退行方向へ移動する。
【0121】
図16(a)および
図16(b)は、
図15の状態からさらに拡径された場合について説明するものである。
本実施形態においては、固定リング229dが、摺動リング228dの退行方向側の端壁228Hdを突き当てる当接壁229Hdを有する。
ここで、
図15の状態からさらに伸縮制御部121(
図1参照)を操作し、エアタンク330dに空気を送り込むことによって追従部340d内の空間ARにさらに空気を流れ込ませると、補助バネ350dも同様に移動するとともに、
図16(a)に示すように、当接壁229Hdに摺動リング228dの退行方向側の端壁228Hdが突き当る。これにより、補助バネ350dの他端が固定される。
【0122】
この場合、可動部321dの加速度合い等によっては、
図16(b)に示すように、可動部321dが、さらに図中矢印の方向へ動くことがある。この場合、すでに他端が固定された補助バネ350dが収縮することでクッションとなる。
【0123】
反対に
図17に示すように、縮径時(最小限まで縮径させる時)においても、第4実施形態と同様に、調芯された状態で、矢印SDの方向へ拡縮アーム400dの縮小が起きる。この場合、補助バネ350dは、摺動リング226c,228dの移動とともに進行方向Fへ移動する。
【0124】
さらに
図17のように拡縮アーム400cが最小限まで縮小された場合、フリースペースSdの中に補助バネ350dが収容される点も第4実施形態と同様である。
【0125】
[第6実施形態−超音波検査装置100e]
図18は、第6実施形態にかかる超音波検査装置の拡径時における模式的一部側断面図である。
図19は、第6実施形態にかかる超音波検査装置の縮径時における模式的一部側断面図である。
【0126】
図18および
図19に示す超音波検査装置100eは、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bの変形態様である。具体的には、内部移動部110eにおいて、拡縮アーム400eおよびその構成アーム片(主アーム411片eおよびリンクアーム片412e)、車輪500e、フリースペースSeは、それぞれ、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bの内部移動部110bにおける、拡縮アーム400bおよびその構成アーム片(主アーム411bおよびリンクアーム412b)、車輪500b、フリ−スペースSbと同じである。一方、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bの軸筺体部210b、エアシリンダ300の代わりに、軸筺体部210e、エアシリンダ300eを有する。
【0127】
本実施形態においては、連結用部材220eとして、進行方向F側から、固定リング224e、摺動リング221eが設けられている。固定リング224eは軸筺体部210eに固定され、摺動リング221eは、軸筺体部210eを軸心方向に摺動可能となるように設けられる。
【0128】
主アーム片411eの基端部は、固定リング224eに軸着される。リンクアーム片412eの基端部は、摺動リング221eに軸着される。
【0129】
[エアシリンダ]
本実施形態では、軸筺体部210eの一部がエアシリンダ300eを構成する。具体的には、軸筺体部210eの端部がシリンダ部を形成し、当該シリンダ部内周壁に密着可能に軸心方向に摺動するピストン部321eが、軸筺体部210eの側面に形成されたスリット孔を通じて摺動リング221eに連設している。これによって、ピストン部321eの移動とともに摺動リング221eが移動可能となる。
【0130】
固定リング224eと摺動リング221eとの間には、軸心方向に延在する補助バネ350eが設けられ、補助バネ350eの一端が固定リング224eに、他端が摺動リング221eに固定される。このため、補助バネ350eは、摺動リング221eの移動に伴って伸縮する。
【0131】
[拡縮動作]
図18に示すように、拡径時においては、伸縮制御部121(
図1参照)を操作し、エアシリンダ300e内の空間ARに空気を送り込むことによって、矢印Eの方向へ伸長させる。これに伴い、ピストン部321eが摺動リング221eと共に移動するため、リンクアーム片412eの基端位置が矢印Eと同じ方向へ移動する。これと同時に、補助バネ350eが伸長される。
したがって、第3実施形態と同様に、調芯された状態で、矢印SUの方向へ拡縮アーム400eの拡長が起こる。
【0132】
反対に
図19に示すように、縮径時(最小限まで縮径させる時)においても、第3実施形態と同様に、調芯された状態で、矢印SDの方向へ拡縮アーム400eの縮小が起きる。同時に、補助バネ350eは、拡径によって伸長していた補助バネ350cが戻る力がピストン部321eに加わるため、縮径動作がスムーズに起きる。
【0133】
さらに
図19のように拡縮アーム400eが最小限まで縮小された場合、フリースペースSeの中に補助バネ350eが収容される点も第3実施形態と同様である。
【0134】
なお、本実施形態では、補助バネ350eが固定リング224eと摺動リング221eとの間に配設されている例を挙げたが、この態様に限定されるものではない。たとえば、補助バネ350eが、軸心方向において摺動リング221eに対して固定リング224eとは反対側に配設されていてもよい。この場合、補助バネの一方が摺動リング221eに固定され、他方が筒部200eの外周部に固定される。この場合、拡径時においては補助バネが収縮し、縮径時においては当該収縮した補助バネが戻る力により拡縮アーム400eの復帰動作を補助することができる。
【0135】
[第7実施形態−超音波検査装置100i]
図20は、第7実施形態にかかる超音波検査装置の模式的一部側面図である。
図21は、第7実施形態にかかる超音波検査装置の模式的正面図である。
図20に示す超音波検査装置100iを構成する各部(内部移動部110i、拡縮アーム400i、車輪500i)は第6実施形態にかかる超音波検査装置eの各部(内部移動部110e、拡縮アーム400e、車輪500e)と同様である。
【0136】
図20に示す超音波検査装置100iは、筺体部800iには車輪850が設けられている。
図20において、超音波検査装置100iは、拡縮アーム400iが最小限に縮小した状態である。筺体部800iに設けられた車輪850が内壁面Lに接することにより、内壁面L内における超音波検査装置100iを安定に保持する。
【0137】
さらに、超音波検査装置100iが
図20の態様である場合、
図21に示すように、筺体部800iを進行方向F(
図20参照)側から軸心方向へ投影すると、当該投影に、拡縮アーム400iの全てが重なる。このため、拡縮アーム400iが超音波検査装置100iの放射方向の大きさに支障しない。
【0138】
[第8実施形態−超音波検査装置100e’]
図22は、第8実施形態にかかる超音波検査装置100e’の拡径時の外観図である。
図23は、超音波検査装置100e’のケーブル部分の外観図である、
図24は、超音波検査装置100e’の縮径時の外観図である。
図25は、
図24におけるF−F線断面図である。
【0139】
図22に示す超音波検査装置100e’を構成する各部(内部移動部110e’、筒部200e’、軸筺体部210e’、摺動リング221e’、固定リング224e’、エアシリンダ300e’、補助ばね350e’(破線図示にて省略)、拡縮アーム400e’、主アーム片411e’、リンクアーム片412e’、車輪500e’)は第6実施形態にかかる超音波検査装置eの各部(内部移動部110e、筒部200e、軸筺体部210e、摺動リング221e、固定リング224e、エアシリンダ300e、補助ばね350e、拡縮アーム400e、主アーム片411e、リンクアーム片412e、車輪500e)に対応する。超音波検査装置100e’においては、各部が、さらなるコンパクト化等のために適したサイズに変更されていることを除いて、超音波検査装置100eの各部と同様である。
【0140】
図22においては、超音波検査装置100e’のケーブル130の配線も示す。ケーブル130は、エアシリンダ300e’内に連通するエアケーブル133、中空軸モータ610のモータケーブル136、および超音波探触子710の探触子ケーブル137を含む。
【0141】
図22に示すように、エアケーブル133は、軸筺体部210e’の退行方向端面から外に配線される。筺体800から外部に出たモータケーブル136は、筒部200e’に沿って退行方向へ向かって配線される。探触子ケーブル137は、軸筺体部210e’内を通り、退行方向端面から配線されたエアケーブル133の中に挿入される。
【0142】
さらに
図23に示すように、モータケーブル136と、探触子ケーブル137が挿入されたエアケーブル133とは、中継器135を介し、エアケーブル133と連通するエアケーブル134内にモータケーブル136と探触子ケーブル137との両方が挿入された状態で配線されなおす。エアケーブル134は、コンプレッサに接続される。
なお、エアケーブル134の材質としては、可撓性のある樹脂チューブが用いられてよい。適宜、エアケーブル134の内部または外周部に金属ワイヤなどのこしが強い可撓性を有する軸体をさらに沿わせてもよい。これより、エアケーブル134部分を持って、超音波検査装置100e’を管内に挿入しやすくなる。
【0143】
図24および
図25に示すように、最も縮径された時の超音波検査装置100e’は、筺体部800の軸心方向への投影に、拡縮アーム400e’と車輪500e’との全てが重なるほどにコンパクト化される。この場合、筺体部800から外部に配線されたモータケーブル136は、筒部200e’の外周部において、折り畳まれた拡縮アーム400e’の間に位置するため、超音波検査装置100e’のコンパクト性に支障しない。なお、超音波検査装置100e’は、最も縮径された時において、当該投影から車輪500e’の一部がはみ出す程度に、
図24に示した態様よりわずかに拡径させ、管内での拡縮アームの拡径動作をより容易にしてもよい。
【0144】
図26において、一例として超音波検査装置100e’を挙げて、チーズ型管内を方向変換する態様を説明する。
図26において、超音波検査装置100e’が挿入される管Tは、たとえば消火栓に用いられるチーズ型配管である。管Tの挿入口は、たとえば内径φ75mmの小径管である。超音波検査装置100e’は最も縮径した状態で当該挿入口から挿入され、管Tの分岐部に達すると、当該縮径状態を保って方向変換する。超音波検査装置100e’に例示される本発明の超音波検査装置は、軸心に対する放射方向および軸心方向の両方向でコンパクトに設計されることにより、管内での90度方向変換が可能となる。
【0145】
[他の例]
他の例においては、図示しない変形例について説明する。
【0146】
[軸筺体部の変形例]
上述の実施形態では、軸部が軸筺体部210を有する筒部200,200a,200bである態様を挙げたが、これに限定されるものではない。たとえば、軸部は中実の棒状であってもよい。また、上述の実施形態および他の例では、軸筺体部210の断面が円形である例を挙げたが、断面の形状はこれに限定されるものではない。たとえば、四角形、六角形などの多角形およびそれらの変形形状等、任意の形状が許容される。
【0147】
さらに、上述の実施形態では、連結用部材220,220a,220b,220d,220e,220e’が断面円形のリング部に軸着部が設けられた態様であるものを挙げたが、この態様に限定されるものではない。たとえば、リング部の断面外周は四角形、六角形などの多角形およびそれらの変形形状等、任意の形状が許容される。また、摺動しない連結用部材の代わりに、軸筺体部210に軸着部のみが固定されていてもよい。
【0148】
[伸縮部の変形例]
上述の実施形態では、伸縮部が、伸縮制御部121によって制御可能なエアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’である例を挙げたが、伸縮制御部121によって遠隔操作が可能な伸縮機構を有するものであれば特に限定されるものではない。たとえば、油圧シリンダ、空気ばね、可動部を電気的制御により駆動させるコイルばねであってもよい。この場合のコイルばねは、軸心が筒部200,200a,〜,200e,200i,200e’の外周部に配設されてもよいし、軸筐体部210の軸心と同軸となるように配設されてもよい。いずれも、管内での縮径および拡径が自在である。
【0149】
上述の実施形態では、エアシリンダ300が軸心方向に延在する態様を挙げたが、これに限定されるものではない。たとえば、エアシリンダ300が放射方向に延在するように設けられることを許容する。この場合、エアシリンダの両端はそれぞれ、摺動しない連結用部材と、拡縮アーム400,400a,400bを構成するいずれかのアーム片とに固定されて連結される。
【0150】
[拡縮アームの変形例]
上述の実施形態では、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’の数が3または6である態様を挙げたが、これに限定されるものではない。拡縮アームの数は複数であればよい。
【0151】
上述の実施形態では、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’が特定のリンク機構を有する態様を挙げたが、これに限定されるものではない。エアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’の伸縮動作を拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’の拡縮動作に連動させるリンク機構であれば、他の任意の機構が許容される。
【0152】
[伸縮部と拡縮アームとの組み合わせの変形例]
たとえば、第1実施形態にかかる超音波検査装置100、第2実施形態にかかる超音波検査装置100a、第3実施形態にかかる超音波検査装置100bのエアシリンダ300の代わりに、第4実施形態にかかる超音波検査装置100cのエアシリンダ300c、第5実施形態にかかる超音波検査装置100dのエアシリンダ300d、第6実施形態から第8実施形態にかかる超音波検査装置100e,100i,100e’のエアシリンダ300e,300e’のいずれかを任意に組み合わせることができる。
【0153】
[走行部の変形例]
上述の実施形態では、走行部が車輪500,500a,〜,500e,500i,500e’である態様を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、キャタピラであってもよい。その場合、例えば同期アーム片414の軸方向の両端それぞれにおいて、同期アーム片414をはさむように一対の歯車を同軸で軸着し、それぞれの歯車に、キャタピラを巻きつける。
また、車輪は、駆動機構を有する自走式であってもよい。さらに、走行部は水噴射機構により走行可能とするものであってもよい。
【0154】
[検出部の変形例]
上述の実施形態では、超音波探触子710(具体的には超音波伝搬部712)の一部が中空回転部材611の中空部内に挿入された態様を挙げたが、超音波探触子710の挿入量はこの態様に限定されるものではない。超音波探触子710の全てが中空回転部材611の中空部内に挿入されていてもよいし、反対に超音波探触子710の全てが中空回転部材611の中空部外に配設されてもよい。後者の場合、超音波探触子710は、軸筐体部210内に固定されてもよい。
【0155】
[回転センサの変形例]
上述の実施形態では、ポジションマーカ771が中空回転部材611に固定された態様を挙げたが、ポジションマーカ771は、センサ772によって検出可能な位置である限り、音響反射部720の回転ホルダ724に固定されてもよい。また、上述の実施形態では、回転センサが一回転センサ770である態様を挙げたが、これに限定されるものではない。たとえば、ロータリーエンコーダであってもよい。
【0156】
[筐体部の変形例]
上述の実施形態では、筐体部800,800iが検知部700を具備する態様を挙げたが、さらに他の構成要素が具備されてもよい。他の構成要素としては、たとえば、撮像装置および照明(一例としてLED)が挙げられる。これらの構成要素は、筐体部800,800iの進行方向側の端部に設けられることができる。これによって、管内を照らしながら撮影を行いつつ、超音波検査を行うことができる。
【0157】
筐体部800,800iの進行方向側の端部に設けられる当該他の構成要素としては、上述の他、連結可能部も挙げられる。連結可能部は、たとえば、連結用部材に係合または嵌合等により着脱可能に連結することができる部位である。このような連結可能部の使用態様の一例を説明すると、以下のとおりである。
【0158】
測定すべき管の、超音波検査装置が挿入される入口とは別の、進行方向側に位置する開口端から、連結用部材(一例としてフック)付きケーブルなどの牽引部材を管内へ挿入し、当該連結用部材を筐体部800,800iに設けられた連結可能部に連結させた後、牽引部材を上述の開口端の外へ引っ張ることにより、超音波検査装置を進行方向に進行させることができる。
【0159】
[内部移動部の変形例]
上述の実施形態では、1の超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’につき1の内部移動部110,110a,〜,110e,110i,110e’を有する例を挙げたが、この態様に限定されるものではない。1の超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’につき複数の互いに連結された内部移動部110,110a,〜,110e,110i,110e’を有してもよい。
【0160】
[実施形態および他の例により奏される効果]
超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’は、管内へ挿入された場合、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’が内壁面Lへ向かって突っ張るように拡張し、車輪500,500a,〜,500e,500i,500e’が内壁面Lへ接触する。これにより、超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’が保持される。エアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’の伸縮により拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’の拡縮を行うことができる。このため、管内での縮径および拡径が自在となる。
【0161】
また、音響反射部720が回転可能に設けられることにより、超音波探触子710を固定された状態で設けることができる。これによって、超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’の、筒部200,200a,〜,200e,200e’の軸心を中心とした放射方向の大きさ(特に、拡縮アーム拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’が最も縮小する場合の大きさ)をコンパクトにすることができる。
【0162】
さらに、音響反射部720の回転に中空軸モータ610を用いることによって、中空回転部材611の中空部内を超音波が伝搬するように構成されるため、超音波探触子710自体を筒部200,200a,〜,200e,200i,200e’と同軸に配設することができる。これによっても、超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’の放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0163】
エアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’のロッド311、エアシリンダ300c,300dの可動部321c,321d、エアシリンダ300e,300e’のピストン321eは、筒部200,200a,〜,200e,200i,200e’の軸心方向に移動するように設けられているため、拡縮アームが最も縮小した場合における超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’の放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0164】
エアシリンダ300は、筒部200,200a,200bの軸心方向に伸縮するように連結用部材220,220a,220bに固定されているため、放射方向つまり拡縮アーム400,400a,400bの拡縮方向SU,SDに伸縮しない。したがって、エアシリンダ300が筒部200,200a,200bの外周部に配置されていても、拡縮アームが最も縮小した場合における超音波検査装置100,100a,100bの放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0165】
エアシリンダ300c,300dは、軸筺体部210c,210d全体を含み、エアシリンダ300e,300e’は、軸筺体部210eの一部を含むため、超音波検査装置100c,100d,100e,100i,100e’の放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0166】
超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’においては、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400e’がフリースペースS,Sa,〜,Seを有するため、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400e’が最も縮小した場合に、エアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’の少なくとも一部がフリースペースS,Sa,〜,Se内に収容される。このため、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400e’が最も縮小した場合における超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’の放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0167】
超音波検査装置100,100a,〜,100i,100e’は、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’が最も縮小した場合に、筺体部800,800iの、軸心方向への投影に、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’が重なるため、放射方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0168】
拡縮アーム400a,〜,400e,400i,400e’は、最も縮小した場合に筒部200a,〜,200e,200e’の軸心Oにほぼ沿って延在し、固定リング224a,224c〜224e,224e’の軸着部を中心とし、90度を超えない回転角で回転運動するシンプルな構造を有するため、放射方向の大きさをコンパクトにすることができるとともに、軸心O方向の大きさもコンパクトにすることができる。従って、拡縮アーム400a,〜,400e,400i,400e’の動作の軌跡が占める空間を小さくすることができるため、チーズ型配管Tのような分岐管の中の方向変換が容易となる。
【0169】
さらに、拡縮アーム400b,〜,400e,400i,400e’は、固定リング224c〜224e,224e’が軸心O方向の進行方向側と退行歩行側との2箇所に設けられ、それぞれの箇所に軸着される拡縮アーム400b,〜,400e,400i,400e’が軸心O方向の向きが反対であるため、拡縮アーム400b,〜,400e,400i,400e’の動作の軌跡が占める空間を小さくすることができるとともに、管内で超音波検査装置100b,〜,100e,100i,100e’が管内で安定的に保持される。
【0170】
拡縮アーム400a,〜,400e,400i,400e’は、先端に車輪500a,〜,500e,500i,500e’が配設された主アーム片411a,〜,411e,411e’と、より短いリンクアーム片412a,〜,412e,412e’とがリンク機構を形成したものであるため、このように、簡易な構造のリンク機構により、エアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’の伸縮動作を拡縮アーム400a,〜,400e,400i,400e’の拡縮動作に連動させることができる。
【0171】
超音波探触子710は、その一部が中空回転部材611の中空部内に配設されるため、超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’の軸心方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0172】
エアシリンダ300c,300d,300e,300e’は、拡縮アーム400c,400d,400e,400i,400e’の拡長動作からの復帰を補助する補助バネ350c,350d,350e,350e’を有するため、拡縮アーム400c,400d,400e,400i,400e’の動作がよりスムーズになる。
【0173】
超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’は、伸縮部が気圧により駆動するエアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’であるため、万一漏れが発生した場合にも、管内の汚染、引火、感電等の危険性が回避され、かつ、簡易な構造による拡縮動作が可能である。
【0174】
超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’は、管内挿入後に、伸縮制御部121によりエアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’を操作できるため、拡縮アームを遠隔操作により自在に拡縮することができる。
【0175】
超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’は、回転センサ770を含むことによって、超音波により検査すべき管内壁Lの周方向の位置を正確に判断することができる。
【0176】
[実施形態および他の例における各部と請求項の各構成要素との対応関係]
本発明においては、超音波検査装置100,100a,〜,100e,100i,100e’が「超音波検査装置」に相当し、伸縮制御部121が「伸縮制御部」に相当し、筒部200,200a,〜,200e,200i,200e’が「軸部」に相当し、連結用部材220,220a,〜,220eが「外周部」に相当し、エアシリンダ300,300c,300d,300e,300e’が「伸縮部」に相当し、ロッド311、可動部321c,321d、およびピストン321eが「可動部」に相当し、補助バネ350c,350d,350e,350e’が「補助バネ」に相当し、拡縮アーム400,400a,〜,400e,400i,400e’が「拡縮アーム」に相当し、主アーム片411a,〜,411e,411e’が「長アーム片」に相当し、リンクアーム片412a,〜,412e,412e’が「短アーム片」に相当し、車輪500,500a,〜,500e,500i,500e’が「走行部」に相当し、中空軸モータ610が「中空軸モータ」に相当し、中空回転部材611が「中空回転部材」に相当し、非回転部材612が「非回転部材」に相当し、超音波探触子710が「超音波探触子」に相当し、音響反射720が「音響反射部」に相当し、一回転センサ770が「回転センサ」に相当し、ポジションマーカ771が「ポジションマーカ」に相当し、センサ772が「ポジションマーカを検出するセンサ」に相当し、筺体部800,800iが「筺体部」に相当し、フリースペースS,Sa,〜,Seが「収容部」に相当し、軸心Oが「軸心」に相当し、進行方向Fが「進行方向」に相当する。
【0177】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨と範囲とから逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。さらに、本実施形態において述べられる作用および効果は一例であり、本発明を限定するものではない。