特許第6306905号(P6306905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306905
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20180326BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F24H4/02 N
   F24H1/18 301Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-45077(P2014-45077)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169383(P2015-169383A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 基
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 慶介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 亮
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3498671(JP,B2)
【文献】 特開2013−087961(JP,A)
【文献】 特開2011−007393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 4/02
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に接続された給水管と、前記貯湯タンク上部に接続された出湯管と、前記貯湯タンク下部から前記貯湯タンク上部に湯水を循環させる加熱循環回路と、前記加熱循環回路途中に設けられて前記貯湯タンク内の湯を加熱するヒートポンプ式加熱手段と、給水温度を検出する給水温度センサまたは外気温度を検出する外気温度センサと、前記貯湯タンクに複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、
給湯負荷に応じて算出された目標貯湯量を特定の時間帯以外の時間帯に沸き上げ、前記特定の時間帯の開始時になると前記貯湯温度センサで貯湯量を確認し、この貯湯量と前記目標貯湯量とから不足量を算出し、この不足量を沸き増すのに要する予測沸き増し時間を算出し、前記特定の時間帯において前記複数の貯湯温度センサのうち、特定の貯湯温度センサが所定温度以下となった沸き増し開始条件を満たしたことを検知すると前記ヒートポンプ式加熱手段を作動させて貯湯量を増加させる沸き増し動作を行い、沸き増し動作の作動時間を前記予測沸き増し時間から減算する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記予測沸き増し時間の残り時間があり、かつ給水温度または外気温度が前記所定値より低い場合、前記所定値以上の場合の前記特定の貯湯温度センサよりも低い位置に設けられた貯湯温度センサを前記特定の貯湯温度センサとすることで、前記所定値以上の場合よりも沸き増し開始しやすい方向に沸き増し開始条件を変更し、
前記予測沸き増し時間の残り時間が無い場合には、前記特定の貯湯温度センサよりも上部の前記貯湯温度センサが所定温度を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件とするようにしたことを特徴とするヒートポンプ貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内にためられたヒートポンプ式加熱手段で沸き上げた湯を用いて給湯するヒートポンプ貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ貯湯式給湯装置においては、湯水を貯湯する貯湯タンクと、貯湯タンク下部から貯湯タンク上部に湯水を循環させる加熱循環回路の途中に設けられて貯湯タンク内の湯を加熱するヒートポンプ式加熱手段と、昼間の時間帯において貯湯タンクの貯湯温度が所定の沸き増し開始判定温度よりも低くなるとヒートポンプ式加熱手段を作動させて沸き増し動作を行う沸き増し制御手段とを備え、貯湯温度が急激に温度低下したときは、所定の沸き増し開始判定温度を高い温度に変更するようにしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3498671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこの従来のものでは、急激に温度低下したときに沸き増し動作を開始しても、すでに貯湯タンク内の貯湯量が大夫減っている状況となっているため、沸き増し動作による貯湯量増加が間に合わずに湯切れが生じる恐れが高いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク下部に接続された給水管と、前記貯湯タンク上部に接続された出湯管と、前記貯湯タンク下部から前記貯湯タンク上部に湯水を循環させる加熱循環回路と、前記加熱循環回路途中に設けられて前記貯湯タンク内の湯を加熱するヒートポンプ式加熱手段と、給水温度を検出する給水温度センサまたは外気温度を検出する外気温度センサと、前記貯湯タンクに複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサと、給湯負荷に応じて算出された目標貯湯量を特定の時間帯以外の時間帯に沸き上げ、前記特定の時間帯の開始時になると前記貯湯温度センサで貯湯量を確認し、この貯湯量と前記目標貯湯量とから不足量を算出し、この不足量を沸き増すのに要する予測沸き増し時間を算出し、前記特定の時間帯において前記複数の貯湯温度センサのうち、特定の貯湯温度センサが所定温度以下となった沸き増し開始条件を満たしたことを検知すると前記ヒートポンプ式加熱手段を作動させて貯湯量を増加させる沸き増し動作を行い、沸き増し動作の作動時間を前記予測沸き増し時間から減算する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記予測沸き増し時間の残り時間があり、かつ給水温度または外気温度が前記所定値より低い場合、前記所定値以上の場合の前記特定の貯湯温度センサよりも低い位置に設けられた貯湯温度センサを前記特定の貯湯温度センサとすることで、前記所定値以上の場合よりも沸き増し開始しやすい方向に沸き増し開始条件を変更し、前記予測沸き増し時間の残り時間が無い場合には、前記特定の貯湯温度センサよりも上部の前記貯湯温度センサが所定温度を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件とするようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給水温度または外気温度が所定値よりも低い場合は、貯湯タンクからの出湯量が多くなるため湯切れ発生の可能性が高く、このような場合に沸き増し開始のタイミングが早くなるように沸き増し開始条件を変更したので、湯切れ発生の可能性を低減できる。更に、全くお湯が使えない状況を回避するためだけの最低貯湯量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の概略構成図
図2】同一実施形態の作動を説明するためのフローチャート
図3】他の一実施形態の作動を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態のヒートポンプ貯湯式給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は貯湯タンクユニット、2はヒートポンプ式加熱手段を構成するヒートポンプユニット、3は給湯栓、4は浴槽、5はリモートコントローラである。
【0011】
<貯湯タンクユニット1>
6は湯水を貯湯するステンレス製の貯湯タンク、7は貯湯タンク6の底部に給水する給水管、8は貯湯タンク6の頂部から出湯する出湯管、9は給水管7から分岐された給水バイパス管、10は出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水を混合する混合弁、11は混合弁10で混合された湯を給湯栓3に導く給湯管、12は給湯管11を流れる湯の流量を検出する給湯流量センサ、13は給湯管11を流れる湯の温度を検出する給湯温度センサ、14は給水管7を流れる給水の温度を検出する給水温度センサ、15は貯湯タンク6の側面上下に複数設けられてそれぞれ貯湯温度を検出する貯湯温度センサ、16は給水管7途中に設けられ給水圧を減圧する減圧弁、17は貯湯タンク6上部に連通してもうけられ貯湯タンク6内の湯水の膨張による過圧を逃がす過圧逃がし弁である。
【0012】
18は貯湯タンク6内の上部に配置された蛇管状に巻回されたステンレス管よりなる風呂熱交換器、19は浴槽4と風呂熱交換器18とを浴槽水が循環可能に接続する風呂循環回路、20は浴槽水を循環させる風呂循環ポンプ、21は風呂循環回路19をバイパスする風呂バイパス管、22は風呂循環回路19の風呂バイパス管21との分岐点または合流点に設けられ、浴槽水を風呂熱交換器18へ循環させるかバイパスさせるかを切り替える風呂三方弁、23は浴槽水の温度を検出する風呂温度センサ、24は一定量以上の流量が流れたことを検知する流水スイッチ、25は圧力を検出することで浴槽4内の水位を検出する水位センサである。
【0013】
26は給湯管11から分岐されて風呂循環回路19に連通する湯張り管、27は湯張り管26の流路を開閉する湯張り開閉弁、28は湯張り管26を流れる湯の流量を検出する湯張り流量センサである。
【0014】
29は貯湯タンク6の底部とヒートポンプユニット2と貯湯タンク6の上部とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路、30は給湯流量センサ12、給湯温度センサ13、給水温度センサ14、貯湯温度センサ15、風呂温度センサ23、流水スイッチ24、水位センサ25の検出値が入力され、混合弁10、風呂循環ポンプ20、風呂三方弁22、湯張り開閉弁27の作動を制御すると共に、ヒートポンプユニット2およびリモートコントローラ5と必要な情報を送受信可能に接続された貯湯制御手段である。ここで、貯湯制御手段30は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0015】
<ヒートポンプユニット2>
31は冷媒を圧縮する圧縮機、32は一次側に圧縮機31からの冷媒が流通し二次側が加熱循環回路29に接続された水熱交換器、33は水熱交換器32から流出した冷媒を減圧膨張する減圧膨張弁、34は減圧膨張弁33で減圧膨張して低温低圧となった冷媒を蒸発させる蒸発器、35は圧縮機31と水熱交換器32と減圧膨張弁33と蒸発器34とを冷媒が循環可能に接続する冷媒循環回路、36は蒸発器34に熱源としての空気を送風する送風機である。
【0016】
冷媒循環回路35には、R410AなどのHFC冷媒や、R32冷媒などのCO2冷媒に比べて低圧で作動する冷媒が用いられ、給水を約65℃程度の温度まで効率よく加熱可能なものとしている。なお、高圧で作動するCO2冷媒を用いて約90℃程度の温度まで加熱可能な構成としてもよい。
【0017】
37は水熱交換器32入口側の加熱循環回路29に設けられた加熱循環ポンプ、38は圧縮機31から吐出された冷媒の温度を検出する吐出温度センサ、39は水熱交換器32に流入する水の温度を検出する入水温度センサ、40は水熱交換器32で加熱された湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサ、41は外気温度を検出する外気温度センサ、42は吐出温度センサ38、入水温度センサ39、沸き上げ温度センサ40、外気温度センサ41の検出値が入力され、圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37の作動を制御すると共に、貯湯タンクユニット1の貯湯制御手段30と必要な情報を送受信可能に接続された加熱制御手段である。ここで、加熱制御手段42は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0018】
<リモートコントローラ5>
43は給湯に関する各種の情報(給湯設定温度、風呂設定温度、タンク残湯量、給湯装置の作動状態、日時等)を表示するドットマトリクス液晶型の表示部、44は給湯設定温度、風呂設定温度、湯張り設定量等の設定を行う十字キー、45は風呂自動運転を行わせる風呂自動キー、46は浴槽水の追い焚き運転を行わせる追い焚きキー、47は給湯装置の作動状態を表示部43に表示させたり、各操作キーの操作に応じた情報を表示部43に表示させるよう制御すると共に、貯湯タンクユニット1の貯湯制御手段30と必要な情報を送受信可能に接続されたリモコン制御手段である。ここで、リモコン制御手段47は、MPU等の論理回路を有してメモリを参照しつつ予め記憶されているプログラムに従って作動を制御するものである。
【0019】
<給湯動作>
次に、給湯時の動作について説明する。給湯栓3が開かれると、貯湯タンク6底部に給水管7からの水が流入すると共に、出湯管8から貯湯タンク6上部の高温の湯が流出し、混合弁10によって給水バイパス管9からの水と混合されて給湯管11から流出する。そして、給湯流量センサ12が給湯の開始を検知すると、貯湯制御手段30は給湯温度センサ13が検知する給湯温度が給湯設定温度と一致するように混合弁10の開度をフィードバック制御して、給湯栓3が閉じられるまで給湯設定温度の給湯が行われる。
【0020】
このとき、貯湯制御手段30は給湯に消費された湯量(熱量)を、給湯流量、給湯温度、給水温度から算出して当日分の給湯負荷として積算して記憶するようにしている。そして、貯湯制御手段30は一日ごと複数日(ここでは7日間)分の積算給湯負荷を複数日(ここでは7日間)にわたり記憶するようにしている。
【0021】
<風呂動作>
次に、リモートコントローラ5の風呂自動キー45が操作された場合の風呂動作について説明する。風呂自動キー45が操作されると、貯湯制御手段30は、風呂三方弁22を風呂バイパス管21側にした状態で風呂循環ポンプ20を駆動し、流水スイッチ24で流水を検出するか否かによって浴槽4内の残り湯の有無を検出する。
【0022】
流水スイッチ24がONしないことを確認すると、浴槽4に残り湯なしとして、湯張り開閉弁27を開弁すると共に混合弁10を風呂設定温度となるように制御して、湯張り設定量の湯張りを開始する。
【0023】
湯張り流量センサ28が湯張り設定量をカウントすると、湯張り開閉弁27を閉弁した後、風呂循環ポンプ20を駆動して流水スイッチ24で流水があることを確認し、風呂温度センサ23で検出する浴槽水の温度が風呂設定温度より低い場合は、風呂三方弁22を風呂熱交換器18側に切り替えて、浴槽水の追い焚き動作を行い、浴槽水の温度が風呂設定温度に上昇すると、湯張り完了をリモートコントローラ5で報知する。
【0024】
このとき、貯湯制御手段30は湯張りに消費された湯量(熱量)を、給湯流量、給湯温度、給水温度から算出して当日分の給湯負荷として積算して記憶するようにしている。
【0025】
一方、風呂自動キー45が操作されたときに、浴槽4内に前日の残り湯があった場合は、あるいは追い焚きキー46が操作されると、残り湯の有無の確認時に流水スイッチ24で流水を検知すると、残り湯ありのために風呂三方弁22を風呂熱交換器18側に切り替えて、浴槽水の追い焚き動作を行い、風呂温度センサ23が検出する浴槽水の温度が風呂設定温度に達すると、風呂循環ポンプ20の駆動を停止して追い焚き完了をリモートコントローラ5で報知する。
【0026】
<沸き上げ動作>
次に、沸き上げ動作について説明する。
深夜時間帯の開始時刻になると、貯湯制御手段30は、記憶していた過去複数日分の積算給湯負荷から翌日の給湯負荷を予測し、目標貯湯量を算出する。貯湯温度センサ15で検出する現在の貯湯タンク6の貯湯量を目標貯湯量から減算し、深夜時間帯の間に沸き上げる沸き上げ目標量を算出する。沸き上げ目標量と、予め定められた沸き上げ目標温度と、貯湯タンク6最下部の貯湯温度センサ15で検出する給水温度と、予め数値として記憶しているヒートポンプユニット2の加熱能力とから沸き上げ必要時間を算出する。深夜時間帯の終了時刻から沸き上げ必要時間を遡って沸き上げ開始時刻を算出する。
【0027】
そして、沸き上げ開始時刻が到来すると、貯湯制御手段30は、加熱制御手段42に対して沸き上げ運転の開始指示を出力し、加熱制御手段42は、沸き上げ温度センサ40で検出する温度が沸き上げ目標温度と一致するように圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動して、ヒートポンプサイクルによる沸き上げ運転を開始する。
【0028】
貯湯タンク6最下部の貯湯温度センサ15が所定の沸き上げ終了温度以上を検出すると、沸き上げが終了したと判断して、貯湯制御手段30は沸き上げ運転の停止指示を加熱制御手段42に対して出力し、加熱制御手段42は圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動停止処理してヒートポンプサイクルによる沸き上げ運転を停止する。なお、沸き上げが終了する前に深夜時間帯の終了時刻となると、沸き上げ運転を停止するようにしている。
【0029】
<沸き増し動作>
次に、沸き増し動作について図2のフローチャートに基づいて説明する。
特定の時間帯の開始時刻である深夜時間帯の終了時刻になると、貯湯制御手段30は貯湯温度センサ15で検出する現在の貯湯量を確認し(ステップS1)、この貯湯量と給湯負荷に応じて算出された目標貯湯量から減算して不足量を算出し、この不足量と、沸き上げ目標温度と、給水温度と、加熱能力とから、不足分を昼間時間帯に沸き増すのに要する時間(予測沸き増し時間)を算出する(ステップS2)。
【0030】
続くステップS3では、貯湯制御手段30は、給水温度センサ14で検出していた前日の給水温度を確認し、給水温度が予め定められた所定値(ここでは10℃)より低いか否かを判定し、所定値より低い場合にはステップS4に進み、沸き増し動作を開始する条件を予め定められた沸き増し開始条件1とし、所定値以上である場合にはステップS5に進み、沸き増し動作を開始する条件を予め定められた沸き増し開始条件2とする。
【0031】
ここで、沸き増し開始条件1は、貯湯タンク6の上から4番目の貯湯温度センサ15が50℃を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件とし、沸き増し開始条件2は貯湯タンク6の上から3番目の貯湯温度センサ15が50℃を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件としており、沸き増し開始条件1の方が貯湯タンク6からの出湯量が少ない状態で沸き増し開始されるため沸き増し開始条件2よりも沸き増し開始しやすい条件としている。
【0032】
次に、ステップS6では、予測沸き増し時間があるか否かを確認し、予測沸き増し時間がある場合には、YesでステップS7へ進み、ステップS4またはステップS5で定めた沸き増し開始条件が成立するか否かを監視する。
【0033】
給湯や風呂運転によって貯湯タンク6内の熱量が消費され、沸き増し開始条件が成立すると(ステップS7でYes)、貯湯制御手段30は、加熱制御手段42に対して沸き増し運転の開始指示を出力し、加熱制御手段42は、沸き上げ温度センサ40で検出する温度が沸き上げ目標温度と一致するように圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動して、ヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を開始する(ステップS8)。このとき、貯湯制御手段30は沸き増し運転の作動時間を計測し、予測沸き増し時間から減算するようにしている。
【0034】
そして、貯湯制御手段30は、沸き増し動作によって沸き増し停止条件が成立したか否かを監視し(ステップS9)、沸き増し停止条件が成立すると、貯湯制御手段30は沸き増し運転の停止指示を加熱制御手段42に対して出力し、加熱制御手段42は圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動停止処理してヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を停止する(ステップS10)。
【0035】
ここで、沸き増し停止条件は、貯湯タンク6の最下部の貯湯温度センサ15が50℃以上となるか、予測沸き増し時間の残り時間が0になるか、特定の時間帯の終了時刻である深夜時間帯の開始時刻になるかのいずれかの条件が成立したことを条件としている。
【0036】
ここで、ある任意の給湯温度で給湯した場合に、給水温度が低い方が給水温度が高い場合に比べて貯湯タンク6からの出湯量が多くなるため、同じ給湯量であっても貯湯量の減少速度が速いが、沸き増し開始条件1の方が貯湯タンク6からの出湯量が少ない状態で沸き増し開始されるようにしているので、給水温度が低い場合に沸き増し開始のタイミングが早くなって、湯切れ発生の可能性を低減することができる。
【0037】
他方、給水温度が高い場合は、同じ給湯量であっても貯湯量の減少速度が遅いため、給水温度が低い場合に比べて沸き増し開始のタイミングを遅くすることによって、湯切れを防止しながらも貯湯タンク6からの放熱量を減少させて総合的な運転効率を向上させることができる。
【0038】
沸き増し動作を停止した後は、前記ステップS6に戻り、予測沸き増し時間の残り時間があるか否かを確認し、予測沸き増し時間がある場合には、YesでステップS7へ進み、上記の動作を行い、予測沸き増し時間の残り時間が0である場合には、NoでステップS11へ進み、沸き増し動作を開始させる条件を沸き増し開始条件3とする。
【0039】
ここで、沸き増し開始条件3は、貯湯タンク6内の湯が空っぽになってしまうことを防止するために最低貯湯量を確保する条件で、ここでは貯湯タンク6の最上部の貯湯温度センサ15が50℃を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件としており、上記の沸き増し開始条件1および2よりも沸き増し開始し難い条件としている。
【0040】
沸き増し開始条件3が設定された後は、沸き増し開始条件3が成立すると(ステップS7でYes)、貯湯制御手段30は、加熱制御手段42に対して沸き増し運転の開始指示を出力し、加熱制御手段42は、沸き上げ温度センサ40で検出する温度が沸き上げ目標温度と一致するように圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動して、ヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を開始する(ステップS8)。
【0041】
そして、貯湯制御手段30は、沸き増し動作によって沸き増し停止条件が成立したか否かを監視し(ステップS9)、沸き増し停止条件が成立すると、貯湯制御手段30は沸き増し運転の停止指示を加熱制御手段42に対して出力し、加熱制御手段42は圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動停止処理してヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を停止する(ステップS10)。
【0042】
ここで、沸き増し停止条件は沸き増し開始条件3が設定されている場合は、貯湯タンク6の上から2番目の貯湯温度センサ15が50℃以上となることを沸き増し停止条件として、全くお湯が使えない状況を回避するためだけの最低貯湯量を確保するようにしている。
【0043】
以上のように、給水温度が所定値よりも低い場合は、貯湯タンク6からの出湯量が多くなるため湯切れ発生の可能性が高く、このような場合に沸き増し開始のタイミングが早くなるように沸き増し開始条件を変更したので、湯切れ発生の可能性を低減できる。
【0044】
なお、この実施形態では、給水温度センサ14を独立して設けた構成としているが、これに限られず、貯湯タンク6の最下部の貯湯温度センサ15を給水温度センサとして用いて給水温度を検出するようにしてもよいものである。
【0045】
<他の一実施形態>
次に、本発明の他の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、先の一実施形態では、給水温度に応じて沸き増し開始条件を変更するようにしていたが、この一実施形態では、外気温度に応じて沸き増し開始条件を変更するようにした点が異なるものであり、先の一実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
<沸き増し動作>
次に、この一実施形態の沸き増し動作について図3のフローチャートに基づいて説明する。
特定の時間帯の開始時刻である深夜時間帯の終了時刻になると、貯湯制御手段30は貯湯温度センサ15で検出する現在の貯湯量を確認し(ステップS12)、この貯湯量と給湯負荷に応じて算出された目標貯湯量から減算して不足量を算出し、この不足量と、沸き上げ目標温度と、給水温度と、加熱能力とから、不足分を昼間時間帯に沸き増すのに要する時間(予測沸き増し時間)を算出する(ステップS13)。
【0047】
続くステップS14では、貯湯制御手段30は、外気温度センサ41で検出していた前日の最低外気温度を確認し、外気温度が予め定められた所定値(ここでは10℃)より低いか否かを判定し、所定値より低い場合にはステップS15に進み、沸き増し動作を開始する条件を予め定められた沸き増し開始条件1とし、所定値以上である場合にはステップS16に進み、沸き増し動作を開始する条件を予め定められた沸き増し開始条件2とする。
【0048】
ここで、沸き増し開始条件1は、貯湯タンク6の上から4番目の貯湯温度センサ15が50℃を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件とし、沸き増し開始条件2は貯湯タンク6の上から3番目の貯湯温度センサ15が50℃を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件としており、沸き増し開始条件1の方が貯湯タンク6からの出湯量が少ない状態で沸き増し開始されるため沸き増し開始条件2よりも沸き増し開始しやすい条件としている。
【0049】
次に、ステップS17では、予測沸き増し時間があるか否かを確認し、予測沸き増し時間がある場合には、YesでステップS18へ進み、ステップS15またはステップS16で定めた沸き増し開始条件が成立するか否かを監視する。
【0050】
給湯や風呂運転によって貯湯タンク6内の熱量が消費され、沸き増し開始条件が成立すると(ステップS18でYes)、貯湯制御手段30は、加熱制御手段42に対して沸き増し運転の開始指示を出力し、加熱制御手段42は、沸き上げ温度センサ40で検出する温度が沸き上げ目標温度と一致するように圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動して、ヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を開始する(ステップS19)。このとき、貯湯制御手段30は沸き増し運転の作動時間を計測し、予測沸き増し時間から減算するようにしている。
【0051】
そして、貯湯制御手段30は、沸き増し動作によって沸き増し停止条件が成立したか否かを監視し(ステップS20)、沸き増し停止条件が成立すると、貯湯制御手段30は沸き増し運転の停止指示を加熱制御手段42に対して出力し、加熱制御手段42は圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動停止処理してヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を停止する(ステップS21)。
【0052】
ここで、沸き増し停止条件は、貯湯タンク6の最下部の貯湯温度センサ15が50℃以上となるか、予測沸き増し時間の残り時間が0になるか、特定の時間帯の終了時刻である深夜時間帯の開始時刻になるかのいずれかの条件が成立したことを条件としている。
【0053】
ここで、ある任意の給湯温度で給湯した場合に、外気温度が低い方が給水温度が低く、給水温度が高い場合に比べて貯湯タンク6からの出湯量が多くなるため、同じ給湯量であっても貯湯量の減少速度が速いが、沸き増し開始条件1の方が貯湯タンク6からの出湯量が少ない状態で沸き増し開始されるようにしているので、外気温度が低い場合に沸き増し開始のタイミングが早くなって、湯切れ発生の可能性を低減することができる。
【0054】
他方、外気温度が高い場合は、給水温度も高く、同じ給湯量であっても貯湯量の減少速度が遅いため、外気温度が低い場合に比べて沸き増し開始のタイミングを遅くすることによって、湯切れを防止しながらも貯湯タンク6からの放熱量を減少させて総合的な運転効率を向上させることができる。
【0055】
沸き増し動作を停止した後は、前記ステップS17に戻り、予測沸き増し時間の残り時間があるか否かを確認し、予測沸き増し時間がある場合には、YesでステップS18へ進み、上記の動作を行い、予測沸き増し時間の残り時間が0である場合には、NoでステップS22へ進み、沸き増し動作を開始させる条件を沸き増し開始条件3とする。
【0056】
ここで、沸き増し開始条件3は、貯湯タンク6内の湯が空っぽになってしまうことを防止するために最低貯湯量を確保する条件で、ここでは貯湯タンク6の最上部の貯湯温度センサ15が50℃を下回ったことを沸き増し動作の開始の条件としており、上記の沸き増し開始条件1および2よりも沸き増し開始し難い条件としている。
【0057】
沸き増し開始条件3が設定された後は、沸き増し開始条件3が成立すると(ステップS18でYes)、貯湯制御手段30は、加熱制御手段42に対して沸き増し運転の開始指示を出力し、加熱制御手段42は、沸き上げ温度センサ40で検出する温度が沸き上げ目標温度と一致するように圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動して、ヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を開始する(ステップS19)。
【0058】
そして、貯湯制御手段30は、沸き増し動作によって沸き増し停止条件が成立したか否かを監視し(ステップS20)、沸き増し停止条件が成立すると、貯湯制御手段30は沸き増し運転の停止指示を加熱制御手段42に対して出力し、加熱制御手段42は圧縮機31、減圧膨張弁33、送風機36、加熱循環ポンプ37を駆動停止処理してヒートポンプサイクルによる沸き増し運転を停止する(ステップS21)。
【0059】
ここで、沸き増し停止条件は沸き増し開始条件3が設定されている場合は、貯湯タンク6の上から2番目の貯湯温度センサ15が50℃以上となることを沸き増し停止条件として、全くお湯が使えない状況を回避するためだけの最低貯湯量を確保するようにしている。
【0060】
以上のように、外気温度が所定値よりも低い場合は、貯湯タンク6からの出湯量が多くなるため湯切れ発生の可能性が高く、このような場合に沸き増し開始のタイミングが早くなるように沸き増し開始条件を変更したので、湯切れ発生の可能性を低減できる。
【0061】
なお、上記した二つの一実施形態において、沸き増し開始条件は上記の例に限定されず、例えば、複数の貯湯温度センサ15のうち、所定の位置の貯湯温度センサ15(ここでは貯湯タンク6の上から3番目の貯湯温度センサ15)が所定温度以下となったことを条件とし、給水温度または外気温度が所定値より低い場合は所定温度を55℃とし、給水温度または外気温度が所定値以上の場合は所定温度を50℃として、給水温度または外気温度が所定値よりも低い場合は高い場合よりも高い所定温度を条件とすることで沸き増し開始しやすい方向に沸き増し開始条件を変更するようにしてもよいものである。
【符号の説明】
【0062】
2 ヒートポンプユニット(ヒートポンプ式加熱手段)
6 貯湯タンク
7 給水管
8 出湯管
14 給水温度センサ
15 貯湯温度センサ
29 加熱循環回路
30 貯湯制御手段
図1
図2
図3