(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置100は、PC等で構成される制御部10、モニタ12、線質変更部14、放射線発生器駆動部16、基板保持部駆動部18、検出器駆動部20、放射線発生器22、基板保持部24、検出器26、基板搬送ユニット46及び基板搬送ユニット駆動部48を含む。
【0013】
放射線発生器22は、X線等の放射線を発生させる装置であり、例えば加速させた電子をタングステンやダイアモンド等のターゲットに衝突させることで放射線を発生するものである。なお、
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置100における放射線発生器22は、放射線を下方に向かって放射するように配置されている。
【0014】
基板保持部24は、被検査体である基板を保持する。基板搬送ユニット46は、搬入口から搬入された基板を基板保持部24に移動させるとともに、検査が終了した基板を基板保持部24から搬出口へ移動させる。基板保持部24に保持された基板に放射線発生器22で発生させた放射線を照射し、基板を透過した放射線を検出器26で画像として撮像する。以下、検出器26で撮像された基板の放射線透過画像を「透過画像」と呼ぶ。
【0015】
検出器26で撮像された透過画像は、制御部10に送られ、接合部分のはんだの立体形状を含む画像に再構成される。そして、再構成された画像や透過画像は、制御部10内のストレージや、図示しない外部のストレージに記憶される。以下、透過画像に基づいて接合部分のはんだの立体形状を含む3次元画像に再構成された画像を「再構成画像」と呼ぶ。また、再構成画像から任意の断面を切り出した画像を「スライス画像」と呼ぶ。このような再構成画像およびスライス画像はモニタ12に出力される。
【0016】
線質変更部14は、放射線発生器22で発生される放射線の線質を変更する。放射線の線質は、ターゲットに衝突させる電子を加速するために印加する電圧(以下「管電圧」と呼ぶ)や、電子の数を決定する電流(以下「管電流」と呼ぶ)によって定まる。線質変更部14は、これら管電圧と管電流とを制御する部分である。この線質変更部14は変圧器や整流器等、既知の技術を用いて実現できる。
【0017】
放射線発生器駆動部16は、図示しないモータ等の駆動機構を有しており、放射線発生器22をその焦点を通る軸(光軸)に沿って上下に移動させることができる。これにより放射線発生器22と基板保持部24に保持される被検査対象(基板)との距離を変えて照射野を変更し、検出器26で撮像される透過画像の拡大率を変更することが可能となる。
【0018】
検出器駆動部20も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、検出器回転軌道30に沿って検出器26を回転移動させる。また、基板保持部駆動部18も図示しないモータ等の駆動機構を有しており、基板回転軌道28が設けられた平面上で、基板保持部24を平行移動させる。また、基板保持部24は、検出器26の回転移動と連動して、基板回転軌道28上を回転移動する構成となっている。これにより、基板保持部24が保持する基板と放射線発生器22との相対的な位置関係を変更させながら透過画像を撮像することが可能となる。また、基板搬送ユニット駆動部48も図示しないモータ等の駆動機構を有している。
【0019】
ここで、基板回転軌道28と検出器回転軌道30との回転半径は固定ではなく、自由に変更できる構成となっている。これにより、基板に配置される部品に照射する放射線の照射角度を任意に変更することが可能となる。
【0020】
このように、基板保持部24は、被検査体である基板を保持する基板支持部としての機能を有し、放射線発生器22及び検出器26は、基板の画像データを取得する撮像部としての機能を有している。
【0021】
制御部10は、上記の検査装置100の全動作を制御する。以下、制御部10の諸機能について
図2を用いて説明する。なお、図示されていないが、制御部10にはキーボードおよびマウスなどの入力装置が接続されている。
【0022】
制御部10は、情報記憶部32、再構成画像生成部34、画像バッファ制御部36、放射線発生器制御部38、基板保持部制御部40、検出器制御部42、最適経路計算部44、基板搬送ユニット制御部50を有して構成されている。これらの各機能ブロックは、各種演算処理を実行するCPU、データの格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0023】
基板搬送ユニット制御部50は、基板搬送ユニット駆動部48により基板搬送ユニット46の作動を制御して、検査対象の基板を搬入口から基板保持部24に移動させるとともに、検査が終了した基板を基板保持部24から搬出口に移動させる。
【0024】
情報記憶部32は基板の透過画像を撮像するための撮像条件や、被検査体である基板の設計等の情報を記憶する。情報記憶部32はまた、基板の透過画像や再構成画像、断面画像を記憶する。情報記憶部32はさらに、放射線発生器駆動部16が放射線発生器22を駆動する速度、基板保持部駆動部18が基板保持部24を駆動する速度および検出器駆動部20が検出器26を駆動する速度も格納されている。情報記憶部32には画像バッファ制御部36が制御対象とするバッファ36aが保持することのできる最大のデータ容量や、透過画像の1枚あたりのデータ容量等も格納されている。
【0025】
ここで「基板の設計情報」とは、ガーバーデータ(Gerber data)およびCAD(Computer Aided Design)データのことをいう。はんだ接合部分の座標を記録した情報をガーバーデータといい、搭載部品の種類および搭載位置の座標を記録した情報をCADデータという。はんだの接合部分および部品の搭載位置の座標は基板上に設定されたXY座標系の座標として記載される。ガーバーデータおよびCADデータを参照することで、基板上に存在する部品の種類やその大きさ、部品やはんだ接合部分の位置を得ることができる。また、「撮像条件」とは、ある部品と基板とを接合するはんだの再構成画像を計算するのに必要な透過画像を撮像するに際して、検査装置100に設定されるパラメータのことをいう。これは例えば、基板上に実装された部品から見た放射線発生器22の仰角、再構成に要する透過画像の枚数、透過画像の拡大率、照射すべき放射線の線質等である。
【0026】
部品から見た放射線発生器22の仰角は基板回転軌道28の回転半径を変更することで調整が可能である。また、再構成に要する透過画像の枚数は基板回転軌道28上の撮像ポイント(放射線を照射して透過画像を撮像するポイント)の数を変更することで調整が可能である。また、透過画像の拡大率は基板と放射線発生器22との距離を変更することで調整が可能である。さらに、照射すべき放射線の線質は管電圧および管電流を変更することで調整が可能である。
【0027】
ここで、放射線の線質は、放射線の輝度と硬さ(放射線のスペクトル分布)とで定まる。管電流を大きくすればターゲットに衝突する電子の数が増え、発生する放射線の光子の数も増える。その結果、放射線の輝度が大きくなる。例えばコンデンサ等の部品の中には他の部品と比較して厚みがあるものもあり、これらの部品の透過画像を撮像するには輝度の大きな放射線を照射する必要がある。このような場合に管電流を調整することで放射線の輝度を調整する。また、管電圧を高くするとターゲットに衝突する電子のエネルギーが大きくなり、発生する放射線のエネルギー(スペクトル)が大きくなる。一般に、放射線のエネルギーが大きいほど物質の貫通力が大きくなり、物質に吸収されにくくなる。そのような放射線を用いて撮像した透過画像はコントラストが低くなる。このため、管電圧は透過画像のコントラストを調整するのに利用できる。また、透過画像の拡大率を変更するために放射線発生器22を上下に移動した場合、放射線発生器22と基板との距離の違いにより透過画像のコントラストに変化が生じる。この場合には、放射線の線質を変更することで透過画像のコントラストを調整する必要がある。
【0028】
画像バッファ制御部36はバッファ36aを有し、検出器26が撮像した透過画像を一時的に記憶する。画像バッファ制御部36はバッファ36aに記憶された透過画像のデータ量を後述の最適経路計算部44に出力する。画像バッファ制御部36はまた、バッファ36aに記憶された透過画像を情報記憶部32に転送する。
【0029】
最適経路計算部44は、まず情報記憶部32から被検査体である基板の設計情報を取得する。次に取得した基板の設計情報に基づいて、その基板に実装されている部品の撮像条件を取得する。最後に、取得した部品の撮像条件に基づいて、再構成画像の計算に必要な透過画像を全て撮像するのに要する時間がなるべく短くなるような検査装置100の動作手順を計算する。ここで動作手順とは、透過画像を撮像するために放射線発生器22、基板保持部24、検出器26を移動させる経路を調整する順番、および管電圧と管電流とを調整する順番のことをいう。以後、再構成画像の計算に必要な透過画像を全て撮像するのに要する時間がなるべく短くなるような動作手順を「最適経路」と呼ぶ。
【0030】
放射線発生器制御部38は、最適経路計算部44が計算した最適経路に基づいて、線質変更部14に管電圧および管電流の値を指示する。また、放射線発生器制御部38は最適経路に基づいて放射線発生器駆動部16に放射線発生器22を移動するよう指示する。
【0031】
基板保持部制御部40は、最適経路に基づいて基板保持部駆動部18に基板の動作手順を指示する。また、検出器制御部42は最適経路に基づいて検出器駆動部20の動作手順を指示する。
【0032】
このように最適経路計算部44が計算した最適経路に基づいて一括して動作手順を管理することで、検査装置100全体として最適経路をたどるよう制御することが可能となる。
【0033】
再構成画像生成部34は、以上の最適経路にて撮像され情報記憶部32に記憶された透過画像を読み出して、再構成画像を生成する。これは、例えばフィルタ補正逆投影法(Filtered-Backprojection法、FBP法)や最尤推定法等、既知の技術を用いて実現できる。再構成アルゴリズムが異なると、得られる再構成画像の性質や再構成に要する時間も異なる。そこで、あらかじめ複数の再構成アルゴリズムやアルゴリズムに用いられるパラメータを用意しておき、ユーザに選択させる構成としてもよい。これにより、再構成に要する時間が短くなることを優先したり、時間はかかっても画質のよさを優先したりするなどの選択の自由度をユーザに提供することができる。
【0034】
なお、例えば再構成アルゴリズムとして、フィルタ補正逆投影法等のように再構成に必要な全ての放射線透過画像が揃わなくても再構成画像の計算を開始できるアルゴリズムが存在する。再構成画像のみが必要で透過画像を保存する必要がないときには、このようなアルゴリズムを用いれば透過画像を撮像しつつ並行して再構成画像の計算を開始することができる。これにより、再構成画像の計算に用いられた放射線透過画像はバッファ36aから削除することができ、バッファ36aを節約して使用することができる。
【0035】
次に、
図3を用いて、本実施形態に係る検査装置100の検査手順を説明する。本フローチャートにおける処理は、例えば検査装置100に設けられた検査開始のボタンがユーザによって押されたときに開始する。
【0036】
制御部10は、基板搬送ユニット46により基板を基板保持部24に移動させると、ワークエリアとして確保したRAM内に1ビットのフラグ(Flag)を用意し、当該Flagの値を0に設定する(ステップS200)。このフラグ(Flag)は画像バッファ制御部36が制御するバッファ36aに格納されている透過画像が所定量以下の場合は0に設定され、所定量を超えた場合には1に設定される。
【0037】
ここでバッファ36aの「所定量」とは、バッファ36aがオーバーフローしないようにするために設定される警戒量のことをいう。例えば画像を1枚単位で転送する場合には、バッファ36aが保持することのできる最大のメモリ容量から透過画像の1枚あたりのデータ容量を引いた容量を所定量とする。この場合、バッファ36aの容量が所定量を超えている場合には、バッファ36aに透過画像を追加することはできない。
【0038】
最適経路計算部44は情報記憶部32から基板の設計情報と撮像条件とを取得し基板を撮像するための最適経路を計算する(ステップS202)。最適経路が既に計算されて情報記憶部32に記憶されている場合には、最適経路計算部44は情報記憶部32から最適経路を読み出す。そして、最適経路計算部44は、取得した最適経路に基づいて、放射線発生器制御部38、基板保持部制御部40、検出器制御部42に指示を出し、検査装置100の撮像条件を設定する(ステップS204)。撮像条件を設定したら、放射線発生器22から基板に放射線を放射し、検出器26を用いて透過画像を撮像する(
ステップS206)。
【0039】
画像バッファ制御部36は、バッファ36aに格納された透過画像が所定量を超えたか否かを判定し、所定量を超えている場合には(ステップS208の「N」)、Flagに1を設定する(ステップS220)。バッファ36aに格納された透過画像が所定量を超えていない場合には(ステップS208の「Y」)、全ての撮像が終了したかどうかを判定する。判定の結果、全ての撮像が終了していない場合には(ステップS210の「N」)、ステップS204に戻り、透過画像の撮像を続行する。全ての撮像が終了した場合(ステップS210の「Y」)、あるいはバッファ36aの総量が所定量を超えている場合には、画像バッファ制御部36はバッファ36aに格納されている透過画像を情報記憶部32に転送する(ステップS212)。
【0040】
透過画像を情報記憶部32に転送した時点で、Flagの値が1の場合には(S214の「N」)、撮像の途中でバッファ36aの総量が所定量を超えたことを意味する。この場合には全ての撮像は終了していないので、バッファ36aを解放し(ステップS222)、本フローチャートにおける先頭の処理(ステップS200)に戻る。この場合、最適経路計算部44は、既に撮像を終えた経路を除いた残りの経路について、最適経路を再計算する(ステップS202)。
【0041】
検査対象の部品点数が多い場合や、再構成画像の計算に要する透過画像の枚数が多い場合には、撮像しなければならない透過画像の総数が多くなる。このような場合には、撮像しなければならない透過画像のデータ量が、バッファ36aが格納することができる容量を超えることが起こりうる。このような場合にはバッファ36aが所定量を超えた場合に進む経路(ステップS208の「N」の経路)をたどることになる。
【0042】
なお、上記の説明ではFlagの値が1のときは最適経路を再計算する(ステップS202)場合について説明したが、最適経路を再計算するか否かはユーザがオプションで選択できるようにしてもよい。最適経路を再計算しない場合には、再計算に要する時間が省略でき撮像に要する時間が短くなるという利点が得られる。この場合、処理の開始当初の最適経路が維持される。また、上記の説明ではバッファ36aに格納されている透過画像を情報記憶部32に転送するステップ(ステップS212)と最適経路を再計算するステップ(ステップS202)とが直列(前者が終了した後に後者を開始する)に実行される場合について説明したが、両者は並列に実行することができる。この場合、画像の転送中に最適経路の計算を開始できるため、撮像に要する時間を短縮することができる。これは画像バッファ制御部36にDMA(Direct Memory Access)の機能を持たせることで実現できる。
【0043】
透過画像を情報記憶部32に転送した時点で、Flagの値が0の場合には(ステップS214の「Y」)、全ての撮像が終了しているので、再構成画像生成部34は情報記憶部32に格納された透過画像に基づいて、再構成画像を計算し(ステップS216)。結果を情報記憶部32に格納する(ステップS218)。再構成画像の格納が終わると本処理は終了である。以上の処理フローにより、検査対象の部品点数が多い場合やバッファ36aの容量が少ない場合でも、再構成画像を計算するため必要な透過画像を全て撮像することができる。
【0044】
なお、制御部10は、撮像が終了した基板を、ステップS216、S218の実行と平行して、基板搬送ユニット46により基板保持部24から搬送口に移動させる。また、このとき、次の検査対象の基板があるときは、その基板を搬送口から基板保持部24に移動させる。
【0045】
本実施形態に係る検査装置100は、
図4に示すように、放射線発生器22を囲むように筐体52が設けられている。この筐体52は、放射線発生器22から放射された放射線が外部に漏出しないように、その内壁は放射線を吸収する材質(例えば鉛等)で構成されている。また、この筐体52の対向する側面の上部には、検査対象である基板を検査装置100内に搬入する搬入口54と、搬出する搬出口56とが設けられている。また、この筐体52の内部には、搬入口54の下方に、搬入側遮蔽部材58が取り付けられ、搬出口56の下方に、搬出側遮蔽部材60が取り付けられている。これらの搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60も放射線を吸収する部材で構成されている。そして、これらの搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60の間には、開口部62が形成されており(言い換えると遮蔽部材に開口部62が設けられており)、搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60により上下に分割された筐体52の内部空間は、この開口部62により連通されている。また、
図4に示すように、搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60で分割された空間のうち、上側の空間(以下、「搬送空間」と呼ぶ)には搬入口54及び搬出口56が設けられ、下側の空間(以下、「検査空間」と呼ぶ)には放射線発生器22が配置されている。
【0046】
ここで、
図4に示すように、放射線発生器22は、下方に放射線を放射するように配置されている。そのため、境界線L1の下側の領域(右上がりの斜線で示される領域)は、放射線発生器22から放射された放射線(以下、「1次放射線」と呼ぶ)が直接入射する領域となる(以下、「1次放射線領域」と呼ぶ)。この1次放射線領域の1次放射線は、筐体
52の内壁に入射すると、ほとんどが吸収されるが、吸収されなかった放射線は反射して境界線L1より上方の領域に入射する(この放射線を「2次放射線」と呼ぶ)。上述したように、筐体52の内部空間は、搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60により上下に分割されているため、2次放射線は開口部62を通って検査空間から搬送空間に入射する。すなわち、境界線L2の上側の領域を含む右下がりの斜線で示される領域が2次放射線が入射する領域となる(以下、「2次放射線領域」と呼ぶ)。この2次放射線も、筐体52の内壁や搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60に入射するとそのほとんどが吸収される。
図4に示すように、上述した搬入口54及び搬出口56は、2次放射線領域の外側(搬送空間のうち、検査空間で反射した2次放射線が搬入側遮蔽部材58及び搬出側遮蔽部材60により遮蔽される領域)に配置されているため、これらの搬入口54及び搬出口56から放射線が外部に放射されることはほとんどない。
【0047】
図5に示すように、搬入口54から搬入された基板2を基板保持部24に移動させ、また、検査が終了した基板2を基板保持部24から搬出口56に移動させる基板搬送ユニット46は、第1搬送部64、第2搬送部66及び第3搬送部68で構成されている。
【0048】
第1搬送部64は、搬入口54から搬入された基板2を、検査空間内で第2搬送部66に移動させる機能を有している。この第1搬送部64は、例えば、図示しないモータで駆動される2組の搬送ベルトで構成されている。また、第2搬送部66は、搬送空間内の基板2を検査空間内に移動させると共に、検査空間内の基板2を搬送空間内の第3搬送部68に移動させる機能を有している(詳細については後述する)。さらに、第3搬送部68は、検査が終了した基板2を第2搬送部66から搬出口56に移動させる機能を有している。この第3搬送部68も、例えば、図示しないモータで駆動される2組の搬送ベルトで構成されている。
【0049】
この基板搬送ユニット46における第2搬送部66の構成について
図6及び
図7を併せて用いて詳細に説明する。第2搬送部66は、図示しないモータで回転するサンギア70、このサンギア70を囲むように固定されたリングギア72、サンギア70及びリングギア72と噛合するプラネタリギア74、プラネタリギア74に取り付けられた脚部76、及び、脚部76に取り付けられ、基板2を保持する支持部78から構成されている。また、プラネタリギア74に対して支持部78は固定されており、プラネタリギア74が最も高い位置(以下「最上位置I」と呼ぶ)にあるときに、脚部76は上方に延びるように配置されている。さらに、支持部78は、プラネタリギア74の位置(脚部74の向き)に拘わらず、常に基板載置面が上方を向くように(基板2の上面が上方を向いた状態を維持するように)構成されている。
【0050】
ここで、サンギア70とプラネタリギア74のギア比は3:1になるように構成されている。そのため、サンギア70を回転させることにより、プラネタリギア74が上下方向の中間点(以下「中間位置II,IV」と呼ぶ)に位置するときは、脚部
76は左右方向外側に延び、プラネタリギア74が最も低い位置(以下「最下位置III」と呼ぶ)にあるときは、脚部
76は下方に延びる。またこのとき、支持部78が移動する軌跡は、最上位置Iから中間位置IIに至る経路、中間位置IIから最下位置IIIに至る経路、最下位置IIIから中間位置IVに至る経路、及び、中間位置IVから最上位置Iに至る経路の各々において、サンギア70の回転中心に向かって凸になるように構成されている。そのため、最上位置Iから中間位置IIに移動するときに、支持部78は、移動開始時は下方への移動量の方が左方への移動量より多くなるため、搬入側遮蔽部材58と干渉することなく開口部62を通って、搬送空間から検査空間に移動することができる。同様に、中間位置IVから最上位置Iに移動するときに、支持部78は、移動終了時は上方への移動量の方が左方への移動量より多くなるため、搬出側遮蔽部60と干渉することなく開口部62を通って、検査空間から搬送空間に移動することができる。
【0051】
また、この第2搬送部66の支持部78は、
図7に示すように、基板2の側部を支持し、この支持部78上で基板2を移動させる複数のローラから構成される(
図7においては3個のローラ82から構成される)ローラ群80と、このローラ群80を構成するローラ82の間に配置され、基板2を保持する複数の保持部86から構成される(
図7においては2つの保持部86から構成される)保持群84とを有している。さらに、保持部86は、上部材86a及び下部材86bから構成されている。また、ローラ群80は、筐体52側に取り付けられており、保持群84は支持部78側に取り付けられている。
【0052】
図6に示すように、第2搬送部66の支持部78が最上位置Iにあるときに、第1搬送部64及び第3搬送部68との基板2の受け渡しが行われる。ここでは、
図7を用いて、第1搬送部64から基板2が受け渡されるときの第2搬送部66の動作について説明する。
図7(a)に示すように、第1搬送部64から基板2を受け取る前は、ローラ群80のローラ82は、第1搬送部64の各々の搬送ベルトの延長線上に並んで配置されている。また、このとき、保持群84の保持部86は、上部材86aと下部材86bとが上下方向に離れた状態で、ローラ群80の外側に配置されている。なお、上部材86aは、ローラ群80上に基板2が載置されたときに、この基板2の上方に位置し、下部材86bは基板2の下方に位置している。そのため、第1搬送部64から基板2が受け渡されると、ローラ群80のローラ82を回転させて基板2をこの支持部78の略中央部まで移動させることができる。
【0053】
次に、
図7(b)に示すように、ローラ群80の各々のローラ82の間から保持群84の保持部86を内側に移動させる。そして、下部材86bを上方に移動させ、基板2の下面をこの下部材86bで上方に押し上げ、上部材86aに基板2の上面を当接させることにより、上部材86aと下部材86bとで基板2を挟持するように構成されている。このとき、下部材86bにより基板2が持ち上げられるため、ローラ群80のローラ82から基板2は離れる。さらに、ローラ群80のローラ82を外側へ移動させることにより、
図7(c)に示すように、保持群84により保持された基板2の上下方向の移動を可能にする。
【0054】
なお、検査が終了した基板2の第2搬送部66から第3搬送部68への受け渡しは、上述した手順の逆を行うことで可能である。また、支持部78が最下位置にあるときの、この支持部78から図示しない基板保持部24への受け渡しも、同様の構成で実現することが可能である。この際、
図5に示すように、最下位置にある支持部78から一旦搬送ベルトに受け渡すように構成してもよい。
【0055】
また、
図6に示すように、サンギア70を挟んで2つのプラネタリギア74を配置し、それぞれのプラネタリギア74に脚部76及び支持部78の組を設ける構成も可能である。この場合、一方の支持部78が最上位置Iにあるときに、他方の支持部78が最下位置IIIに位置するように配置する。このように構成すると、最下位置IIIにある支持部78と基板保持部24との基板2の受け渡し及び検査を実行しているときに、最上位置Iにある支持部78上の検査済みの基板2を第3搬送部68で搬出口56に移動させるとともに、搬入口58から搬入された基板2を第1搬送部64から受け取ることができるので、搬入−検査(撮像)−搬出からなる検査時間を短縮することができる。
【0056】
なお、
図5では、サンギア70、リングギア72及びプラネタリギア74からなる遊星歯車機構を対向するように1対設けた構成で説明したが、
図8に示すように、同一形状の2対の遊技歯車機構を設け、各々のプラネタリギア74に取り付けられた脚部76で、支持部78を支持するように構成してもよい。すなわち、2つのローラ群80の一方側に配置された2つの遊星歯車機構の
2つの脚部76からなる組で支持部78の一方の端を支持し、他方のローラ群80側に配置された2つの遊星歯車機構の2つの脚部76からなる組で支持部78の他方の端を支持するように構成する。このように構成すると、各々のサンギア70を回転させてプラネタリギア74を移動させることにより、それぞれの組の脚部76が平行に移動するため、支持部78の上面(この支持部78で保持された基板2の上面)が常に上方を向いた状態で移動させることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る検査装置100の基板搬送ユニット46において、第2搬送部66を以上のように構成すると、第1搬送部64及び第3搬送部68とこの第2搬送部66との間で基板2を受け渡す位置(最上位置)から基板2の検査をするための基板保持部24に受け渡す位置(最下位置)まで基板2を移動させるときに、所定の基準位置(サンギア70の回転中心)の周りの少なくとも一部の区間を移動させることにより、被検査体である基板2を搬送空間と検査空間と間で移動させるとともに、少なくとも搬送空間の近傍における被検査体である基板2の移動時の軌道が、基準位置に向かって凸になるように構成されているため、少なくとも最上位置付近では、基板2を保持する支持部78(もしくはこの支持部78で保持されている基板2)の上下方向の移動量の方が左右方向の移動量より大きくなるため、支持部78を、搬入側又は搬出側遮蔽部材58,60と干渉させずに搬送空間と検査空間とをつなぐ開口部62を通過させることができる。上述したように、筐体52の内部空間に搬入側又は搬出側遮蔽部材58,60を設けることにより、搬入口54及び搬出口56からの1次放射線及び2次放射の放射を防止することができ、これらの搬入口54や搬出口56、また、放射線発生器22にシャッターを設ける必要がないため、検査装置100を小型化することができ、重量を軽くすることができる。また、シャッター開閉のための時間が不要となり、検査時間を短くすることができる。
【0058】
なお、上述した遊星歯車機構による第2搬送部66に代えて、基板2を上下方向に、直線上を移動する搬送機構とした場合、この搬送機構のために、検査空間における基板2の搬送方向(第2搬送部66から基板保持部24に搬送するための搬送方向であって、
図5のX方向)の基板2の幅の3倍の広さが必要となる。そのため、上記遊星歯車機構を用いることにより、この検査装置100のX方向を短くすることができる。また、搬送空間における基板2の搬送方向(
図5のY方向)は、上述した第1及び第3搬送部64,68を配置するために、検査空間の上下方向に所定のスペース(例えば、底面から90cm程度)が必要となるため、第2搬送部66の支持部78の移動のための空間としてこのスペースを利用することができる。
【0059】
また、以上の説明では、搬入口54から基板を搬入し、搬出口56から基板を搬出するように構成した場合について説明したが、搬入及び搬出を1つの開口部(搬入出口)から行うように構成することも可能である。