(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビスを前記断熱ボード及び前記構築面内に前進させることにより、前記ビス頭部が前記固定孔の周縁及び前記閉塞片に圧接可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載の配線装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の設置方法では、断熱壁に形成されたボックス設置空間に挿入設置された配線ボックスの底壁をビスで壁材(被固定部)に固定する。しかしながら、特許文献1において、配線ボックスがボックス設置空間に挿入設置された状態では、配線ボックスが物理的に支持されているわけではないため、配線ボックスがボックス設置空間から外れたり、あるいは、該ボックス設置空間から落下したりすることで設置作業に支障をきたす虞があった。特に、配線ボックスが薄型である場合などには、配線ボックスの仮置きが不安定となるため、ビスで固定するまでの間、配線ボックスを手で保持していなければならなかった。
【0008】
特許文献2の設置方法では、壁材(被固定部)に取付用台部材を固定した上で、該取付用台部材に配線用ボックスを取り付ける。これにより、特許文献1と比べて、配線用ボックスは取付用台部材に物理的に保持されるため、より安定的に配置される。しかしながら、特許文献2の取付構造では、配線用ボックスを設置するべく、事前に取付用台部材をビスで壁材に固定しなければならず、その作業負担が軽減されることはない。
【0009】
特許文献3の配線用ボックスの取付構造では、先が尖ったボックス当接体を配線用ボックスの背面に一体形成することにより、該ボックス当接体を断熱材に突き刺して、固定釘を打ち込む作業を安定した状態で行うことを可能とする。しかしながら、特許文献3の取付構造では、配線用ボックスは、断熱材にボックス当接体が垂直に刺さって支持されているだけであり、固定釘で固定する前の仮支持状態では、十分に安定であるとはいえない。すなわち、作業者が固定釘を扱って配線用ボックスを本固定する作業を行っている最中、又は、それ以前に、配線用ボックスにその前後方向の力が加えられた場合、ボックス当接体が断熱材から簡単に抜けて、配線用ボックスが落下してしまう虞があった。
【0010】
このように、従来の配線・配管ボックスの設置方法では、その設置における作業性が十分でないことが問題であり、その設置作業をより一層改善することが求められている。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被固定部に対して簡単且つ迅速に設置することが可能である、配線・配管ボックス、配線・配管装置及び該配線・配管ボックスの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の配線・配管ボックスは、底壁及び側壁からなる周壁により前面に開口を有し、周壁に形成された固定部を介して建築物の被固定部にビスで固定される配線・配管ボックスであって、
固定部は、ビスのビス軸部が通過可能であるとともにビスのビス頭部が通過不能な大きさに形成された固定孔と、該固定孔に連通するとともにビス頭部が通過可能な大きさに形成された通過孔と、(固定孔を閉塞せずに)該通過孔を開閉可能に形成された閉塞片と、を備えてなり、
閉塞片は弾性変形可能であり、該閉塞片によって通過孔が予め閉塞されており、
被固定部に突出状態で固定されたビスのビス頭部を通過孔からボックス内部に通過させ、ビス軸部を固定孔内に配置し、そして、
ビス軸部が固定孔を貫通するとともにビス頭部がボックス内部に配置された状態で閉塞片で通過孔を閉塞することにより、被固定部に対して支持可能であることを特徴とする。
【0013】
【0014】
請求項
2に記載の配線・配管ボックスは、請求項1
に記載の配線・配管ボックスにおいて、ビスを被固定部内に前進させることにより、ビス頭部が固定孔の周縁及び閉塞片に圧接可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項
3に記載の配線・配管ボックスは、請求項
1に記載の配線・配管ボックスにおいて、固定孔は長孔からなり、ビス軸部が固定孔内を移動可能であることを特徴とする。
【0016】
請求項
4に記載の配線・配管ボックスは、請求項1から
3のいずれかに記載の配線・配管ボックスにおいて、固定部が形成された周壁には、被固定部に係合可能に外方に突出する少なくとも1つの突出部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項
5に記載の配線装置は、底壁及び側壁からなる周壁により前面に開口を有し、且つ、底壁に固定部が形成された配線・配管ボックスと、
配線・配管ボックスの底壁外面に接して配置されるとともに建造物の構築面に固定される断熱ボードと、
固定部を介して配線・配管ボックス及び断熱ボードを構築面に固定するためのビスと、を備え、
固定部は、ビスのビス軸部が通過可能であるとともにビスのビス頭部が通過不能な大きさに形成された固定孔と、該固定孔に連通するとともにビス頭部が通過可能な大きさに形成された通過孔と、(固定孔を閉塞せずに)該通過孔を開閉可能に形成された閉塞片と、を備えてなり、
閉塞片は弾性変形可能であり、該閉塞片によって通過孔が予め閉塞されており、
構築面に固定された断熱ボードから突出するビス頭部を通過孔からボックス内部に通過させ、ビス軸部を固定孔内に配置し、そして、
ビス軸部が固定孔を貫通するとともにビス頭部がボックス内部に配置された状態で閉塞片で通過孔を閉塞することにより、配線・配管ボックスを断熱ボードに支持可能であることを特徴とする。
【0018】
【0019】
請求項
6に記載の配線装置は、請求項
5に記載の配線装置において、ビスを断熱ボード内に前進させることにより、ビス頭部が固定孔の周縁及び閉塞片に圧接可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項
7に記載の配線装置は、請求項
5又は6に記載の配線装置において、底壁には、断熱ボードに食い込むように外方に突出する少なくとも1つの突出部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項
8に記載の配線・配管ボックスの設置方法は、底壁及び側壁からなる周壁により前面に開口を有し、且つ、被固定部にビスで固定するための固定部が周壁に形成された配線・配管ボックスを設置する方法であって、
固定部は、ビス軸部が通過可能であるとともにビス頭部が通過不能な大きさに形成された固定孔と、該固定孔に連通するとともにビス頭部が通過可能な大きさに形成された通過孔と、(固定孔を閉塞せずに)該通過孔を開閉可能に形成された閉塞片と、を備え、
閉塞片は弾性変形可能であり、該閉塞片によって通過孔が予め閉塞されており、
当該方法は、
被固定部にビスのビス軸部を部分的に埋め込んで、ビス頭部を被固定部から突出させて配置する工程と、
ビス頭部を通過孔からボックス内部に通過させて、ビス軸部を固定孔内に配置する工程と、
閉塞片で通過孔を閉塞する工程と、
ビスを被固定部内に前進させることにより、ビス頭部を固定孔の周縁
に圧接させて、配線・配管ボックスを被固定部に固定する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の配線・配管ボックスによれば、被固定部に突出状態で固定(螺合)したビスのビス頭部を、配線・配管ボックス周壁の通過孔からボックス内部に通過させて、ビス軸部を固定孔内に配置する。そして、ビス軸部が固定孔を貫通した状態で閉塞片で通過孔を閉塞することにより、配線・配管ボックスが被固定部に対して脱落しないようにビスで連結される。このように、ビス軸部が固定孔を貫通した状態で閉塞片が通過孔を閉塞するため、該閉塞片がビス頭部を係止して、該ビス頭部が通過孔を再度通過することが規制される。すなわち、閉塞片で通過孔を閉塞した状態では、配線・配管ボックス及び被固定部がビスに係止されて互いに離脱することを防止される。よって、本発明によれば、配線・配管ボックスを被固定部に対して簡単且つ迅速に取り付け可能であるとともに、配線・配管ボックスを被固定部に対して安定的に支持可能である。したがって、本発明は、配線・配管ボックスの設置容易性を大幅に改善する。
【0023】
請求項
1に記載の配線・配管ボックスによれば、
上記発明の効果に加えて、閉塞片が弾性変形可能であり、該閉塞片によって通過孔が予め閉塞されている。すなわち、ビス頭部を通過孔に挿入する際、ビス頭部が閉塞片に当接して通過孔が開放される。そして、ビス頭部が通過孔を通過した後にビス軸部を固定孔に移動させると、ビス頭部が閉塞片と離隔し、閉塞片が元の位置に弾性復帰して自動的に通過孔が閉塞される。したがって、本発明によれば、ビス頭部を通過孔に挿入して閉塞片で通過孔を閉塞するまでの一連の作業を簡易化することが可能であり、配線・配管ボックスの設置容易性をより一層改善する。
【0024】
請求項
2に記載の配線・配管ボックスによれば、請求項
1の発明の効果に加えて、ビスを螺進させるとビス頭部が固定孔の周縁及び閉塞片に圧接することにより、配線・配管ボックスのより強固な固定構造を簡単に構築することが可能である。すなわち、該閉塞片がビス頭部によって被固定部側に押しつけられることにより、該閉塞片が配線・配管ボックスの開口側に開放して配線・配管ボックスがビスから脱抜することを効果的に防止することができる。
【0025】
請求項
3に記載の配線・配管ボックスによれば、請求項
1の発明の効果に加えて、ビス軸部が長孔状の固定孔内を移動可能であることにより、閉塞片が通過孔を閉塞した支持状態でビス軸部を固定孔内で相対移動させて、該配線・配管ボックスの取付位置を固定孔の長手方向の範囲で簡単に調整することができる。
【0026】
請求項
4に配線・配管ボックスによれば、請求項1から
3のいずれかの発明の効果に加えて、配線・配管ボックスに少なくとも1つの突出部が設けられていることにより、配線・配管ボックス周壁を貫通するビスと被固定部に係合する当該突出部とが協働して、配線・配管ボックスがビスを軸として被固定部に対して回動することを防止する。すなわち、配線・配管ボックスが被固定部に対して回動不能に取り付けられるため、ビスの締結作業をより安定的に実施することができる。
【0027】
請求項
5に記載の配線・配管装置によれば、断熱ボードに突出状態で固定(螺合)したビスのビス頭部を、配線・配管ボックス底壁の通過孔からボックス内部に通過させ、ビス軸部を固定孔内に配置する。そして、ビス軸部が固定孔を貫通した状態で閉塞片で通過孔を閉塞することにより、配線・配管ボックスが断熱ボードに対して脱落しないようにビスで連結される。このように、ビス軸部が固定孔を貫通した状態で閉塞片が通過孔を閉塞するため、該閉塞片がビス頭部を係止して、該ビス頭部が通過孔を再度通過することが規制される。すなわち、閉塞片で通過孔を閉塞した状態では、配線・配管ボックス及び断熱ボードがビスに係止されて互いに離脱することが防止される。よって、本発明によれば、配線・配管ボックスを断熱ボード及び構築面に対して簡単且つ迅速に取り付け可能であるとともに、配線・配管ボックスを断熱ボード及び/又は構築面に対して安定的に支持可能である。したがって、本発明の配線・配管装置は、配線・配管ボックスの設置容易性を大幅に改善する。
【0028】
請求項
5に記載の配線・配管装置によれば、
上記発明の効果に加えて、閉塞片が弾性変形可能であり、該閉塞片によって通過孔が予め閉塞されている。すなわち、ビス頭部を通過孔に挿入する際、ビス頭部が閉塞片に当接して通過孔が開放される。そして、ビス頭部が通過孔を通過した後にビス軸部を固定孔にスライドさせると、閉塞片が元の位置に弾性復帰して自動的に通過孔が閉塞される。したがって、本発明によれば、ビス頭部を通過孔に挿入して閉塞片で通過孔を閉塞するまでの一連の作業を簡易化することが可能であり、配線・配管ボックスの設置容易性をより一層改善する。
【0029】
請求項
6に記載の配線・配管装置によれば、請求項
5の発明の効果に加えて、ビスを螺進させるとビス頭部が固定孔の周縁及び閉塞片に圧接することにより、配線・配管ボックスのより強固な固定構造を簡単に構築することが可能である。すなわち、該閉塞片がビス頭部によって断熱ボード側に押しつけられることにより、該閉塞片が配線・配管ボックスの開口側に開放して配線・配管ボックスがビスから脱抜することを効果的に防止することができる。
【0030】
請求項
7に配線・配管装置によれば、請求項
5又は6の発明の効果に加えて、配線・配管ボックスに少なくとも1つの突出部が設けられていることにより、配線・配管ボックス底壁を貫通するビスと断熱ボードに係合する当該突出部とが協働して、配線・配管ボックスがビスを軸として断熱ボードに対して回動することを防止する。すなわち、配線・配管ボックスが断熱ボードに対して回動不能に取り付けられるため、ビスの締結作業をより安定的に実施することができる。
【0031】
請求項
8に記載の配線・配管ボックスの設置方法によれば、被固定部に突出状態で固定(螺合)したビスのビス頭部を、配線・配管ボックス周壁の通過孔からボックス内部に通過させ、ビス軸部を固定孔内に配置する。そして、ビス軸部が固定孔を貫通した状態で閉塞片で通過孔を閉塞することにより、配線・配管ボックスを被固定部に対して簡単且つ迅速に取り付けることができる。このように、ビス軸部が固定孔を貫通した状態で閉塞片が通過孔を閉塞するため、該閉塞片がビス頭部を係止して、該ビス頭部が通過孔を再度通過することが規制される。すなわち、閉塞片で通過孔を閉塞した状態では、配線・配管ボックス及び被固定部がビスで係止されて互いに離脱することが防止される。この支持状態では、配線・配管ボックスが被固定部に安定的に支持されているため、ビスを簡単に操作して螺進させることができる。そして、ビスを螺進させると、ビス頭部が固定孔周縁及び閉塞片に圧接することにより、配線・配管ボックスのより強固な固定構造を簡単に構築することが可能である。また、該閉塞片がビス頭部によって被固定部側に押しつけられることにより、該閉塞片が配線・配管ボックスの開口側に開放して配線・配管ボックスがビスから脱抜することを効果的に防止することができる。したがって、本発明の設置方法は、配線・配管ボックスの設置作業性を大幅に改善する。
さらに、閉塞片が弾性変形可能であり、該閉塞片によって通過孔が予め閉塞されている。すなわち、ビス頭部を通過孔に挿入する際、ビス頭部が閉塞片に当接して通過孔が開放される。そして、ビス頭部が通過孔を通過した後にビス軸部を固定孔にスライドさせると、閉塞片が元の位置に弾性復帰して自動的に通過孔が閉塞される。したがって、本発明によれば、ビス頭部を通過孔に挿入して閉塞片で通過孔を閉塞するまでの一連の作業を簡易化することが可能であり、配線・配管ボックスの設置容易性をより一層改善する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
【0034】
(実施例1)
本発明の配線・配管装置、配線・配管ボックスの一実施形態として、電気ケーブルを配線するための配線装置100及び配線ボックス110について説明する。ただし、本発明の配線・配管装置、配線・配管ボックスは、配線用途に限定されるものでなく、電気ケーブルの代わりに可撓管等の配管材を配管する配管装置及び配管ボックスを含む概念である。また、本実施例では、配線ボックス110が固定される被固定部は、断熱ボード130及び構築面W1を示すが、被固定部は、断熱層、造営材、ボックス固定具等を含む概念であり、配線・配管ボックスが固定されうる対象全般を意味し、本実施例によって限定解釈されることはない。
【0035】
図1は、本実施形態の配線装置100の分解斜視図である。該配線装置100は、配線ボックス110を断熱状態で構築面W1に設置して配線を行うための装置である。
図1に示すとおり、配線装置100は、壁裏のケーブルCを配線するための筐体状の配線ボックス110と、該配線ボックス110の背面と構築面W1との間に配置される直方体状の断熱ボード130と、これら配線ボックス110及び断熱ボード130を構築面W1に連結するための(ビス頭部151及びビス軸部152からなる)ビス150とを備えてなる。以下、配線装置100を構成する配線ボックス110及び断熱ボード130について詳細に説明する。
【0036】
まず、
図2から
図4を参照して、本発明の一実施形態の配線ボックス110の構成を説明する。
図2(a)、(b)は、該配線ボックス110の前方斜視図及び後方斜視図である。
図3(a)から(d)は、該配線ボックス110の正面図、背面図、側面図及び平面図である。
図4は、
図3(a)の配線ボックス110のA−A断面図である。
【0037】
図2に示すとおり、一実施形態の配線ボックス110は、底壁111a及び側壁111bからなる周壁111により前面に開口112を有する薄型配線ボックスである。当該配線ボックス110において、開口112は、周壁111の前端をなす開口縁部112aによって縁取られている。また、開口縁部112aの上下には、コンセントやスイッチなどの配線器具Eを取り付けるための一対の器具取付孔121が設けられている。さらに、配線ボックス110の側壁111bのうちの上壁及び下壁には、ケーブルCを挿通するための挿通孔122が穿設されている(
図3(d)参照)。各挿通孔122は、側壁111bから底壁111aにかけて切り欠かれており、平面視矩形状を有している。
【0038】
また、
図2及び
図3(a)に示すとおり、ビス150が配線ボックス110の側壁111bに設けられた第1ビス保持部118によって一時的に保持されている。ビス150は、径d1を有するビス頭部151と、径d2を有するビス軸部152とからなる。他方、第1ビス保持部118は、配線ボックス110の長辺側の両側壁111bに設けられている。第1ビス保持部118は、側壁111bを貫通するとともに該側壁111b外面に突出形成された対向する一対の突壁の間に設けられた溝からなる。ビス150のビス軸部152先端が溝内に螺合することにより、ビス150が第1ビス保持部118によって保持されている。
【0039】
当該配線ボックス110は、周壁111のうちの底壁111aに形成された固定部を介して建築物の被固定部(本実施形態では断熱ボード130及び構築面W1)にビス150で固定されるように構成されている。該配線ボックス110の固定部(又は固定機構)は、後述する固定孔113、通過孔114及び閉塞片115を備えてなる。
【0040】
図3(a)に示すとおり、該配線ボックス110の正面視において、底壁111aの略中央に固定孔113が穿設されている。この固定孔113は、上方の半円形状と下方の矩形状とが組み合わさってなり、横幅s1と縦幅s2(s1<s2)とを有する。該固定孔113は、ビス150のビス軸部152が通過可能であるとともにビス頭部151が通過不能な大きさに形成されている。本実施形態では、固定孔113の横幅s1、縦幅s2は、ビス頭部151の径d1よりも小さく、且つ、ビス軸部152の径d2よりも大きい(d1>s1,s2>d2)。なお、後述するとおり、固定部を長孔形状としてもよく、固定孔の横幅s1、縦幅s2のいずれか一方がビス頭部151よりも小さければ、ビス頭部151の通過を規制できる。
【0041】
また、該配線ボックス110の底壁111aにおいて、該固定孔113の下端縁に連通してビス150が通過可能な通過孔114が穿設されている。この通過孔114は、上方の半円形状と下方の長尺矩形状とが組み合わさってなり、横幅t1と縦幅t2(t1<t1)とを有する。該通過孔114は、ビス150のビス頭部151及びビス軸部152が通過可能な大きさに形成されている。すなわち、通過孔114の横幅t1、縦幅t2は、ビス頭部151の径d1及びビス軸部152の径d2よりも大きい(t1、t2>d1、d2)。
【0042】
そして、
図3(a)及び
図4に示すように、該通過孔114を閉塞するように閉塞片115が設けられている。この閉塞片115は、通過孔114と対応する細長い薄板形状を有しており、通過孔114の(隙間を除いた)ほぼ全体を覆うが、固定孔113までは延在していない。そして、該閉塞片115は、その基端部115aで通過孔114の固定孔113の反対側の周縁に一体的に形成されている。他方、閉塞片115の側端部及び先端部115bは、底壁111aに結合しておらず、通過孔114周縁と閉塞片115外周との間に僅かな隙間が設けられている。すなわち、閉塞片115の基端部115aが固定端となり、且つ、その先端部115bが自由端となっている。
図4に示すとおり、閉塞片115は、基端部115bにおいて薄肉となっており、固定端を支点として弾性変形可能である。つまり、該閉塞片115は、その固定端を軸としてその自由端が前後に回動自在である。本実施形態では、閉塞片115は、その初期位置で底壁111aと平行に延在して通過孔114を閉塞し、弾性変形して回動することで通過孔114を開放し、そして、通過孔114の開放後に弾性復帰して初期位置に戻って通過孔114を再度閉塞するように構成されている。なお、後述するとおり、本発明の閉塞片は、初期位置で通過孔を開放するように構成されてもよく、尚且つ、弾性変形可能でなくてもよい。
【0043】
また、
図3(a)に示すとおり、配線ボックス110の底壁111a内面の右上の角隅部には、器具取付用の一対のビス121aを保持するための第2ビス保持部124が設けられている。第2ビス保持部124は、底壁111aから内方(前方)に突出した3つの突起124aと、該突起124aの間に穿設された2つの孔124bとからなり、器具取付用の2本のビス121aを配線ボックス110内に保持可能である。ビス121aは、その軸部が突起124aに挟み込まれることによって保持されている。そして、突起124a基端近傍の孔124bを介して、底壁111a外面からビス121a軸部を前面側に押すことにより、ビス121aを簡単に第2ビス保持部124から取り外すことができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、配線ボックス底壁111aの固定孔113の両脇に一対のビス孔123が穿設されている。この一対のビス孔123は、配線ボックス110を被固定部にビスで固定すべく任意に用いられる。
【0045】
そして、
図3(b)、(c)に示すとおり、配線ボックス110の底壁111a外面の四隅には、ピン状の突出部116が外方にそれぞれ突出している。該突出部116は配線ボックス底壁111aに一体的に形成されている。この突出部116は、被固定部である断熱ボード130に食い込んで、該断熱ボード130に係合可能に構成されている。この突出部116は、少なくとも1つあれば十分であり、後述するように、ビス150と協働して配線ボックス110の回動を係止するように機能する。他方、
図3(a)に示すとおり、配線ボックス110の開口縁部112aの四隅には、嵌合孔117がそれぞれ設けられている。4つの嵌合孔117は、4つの突出部116に対応する位置に配置されている。そして、各嵌合孔117は各突出部116に対応する大きさで穿設されている。すなわち、
図5に示すように、複数の配線ボックス110を積み重ねると、各突出部116が各嵌合孔117に嵌合し、互いにずれないように積層される。これにより、該配線ボックス110の保管、出荷時における省スペース化が可能となる。
【0046】
なお、本実施形態の配線ボックス110は、合成樹脂から成形されてなる。しかしながら、本発明の配線ボックスの材質、形状寸法は上記実施形態に限定されることなく、当業者であれば、任意に選択可能である。
【0047】
次に、
図6を参照して、本発明の一実施形態の配線装置100の断熱ボード130を説明する。
図6に示すとおり、該断熱ボード130は、直方体状の発泡プラスチック、発泡ゴム等の断熱材料で直方体状に成形されている。この断熱ボード130は、ビス150で構築面Wに固定するときの力で押圧変形しないように、硬質な発泡材料で形成されることが好ましい。例えば、本実施例では、断熱ボード130は、硬質ポリウレタンフォームからなる。この断熱ボード130は、その前面及び後面形状において配線ボックス底壁111bと略同形状(寸法)を有していることが好ましい。また、該断熱ボード130の厚みは、配線ボックス110の厚み(開口縁部112aから底壁111a裏面までの距離)と合わせて、構築面W1と(立設される)内壁W3との間の距離と等しくなるように定められることが好ましい。すなわち、断熱ボード130の介在により、配線ボックス110の設置箇所における断熱性能の低下が軽減される。さらに、断熱ボード130の前面及び後面には、両面接着層131、132がそれぞれ貼着されている。これら両面接着層131、132により、断熱ボード130の前後面が配線ボックス110の底壁111b外面及び構築面W1にそれぞれ粘着され、ビス150による連結が補助される。配線ボックス110及び断熱ボード130の設置前では、両面接着層131、132には、利便上、剥離シート133が貼り付けられている。
【0048】
なお、本実施形態では、両面接着層131、132は、配線ボックス110の設置作業を容易にするために、断熱ボード130を配線ボックス110及び構築面W1に簡易的(又が一時的)に接着することに使用される。最終的に、ビス150で配線ボックス110を断熱ボード130及び構築面W1に連結すれば十分であるため、前面側の両面接着層131を省略してもよい。他方、断熱ボード130と構築面W1とを接着する後面側の両面接着層132は、設置時又は設置後において、断熱ボード130が構築面W1に対してビス150を軸として回動することを防止する回動防止手段としても機能する。
【0049】
図7は、本実施形態の配線装置100及び配線ボックス110を構築面W1及び内壁W3の間に設置した配線構造10を示している。本実施形態では、構築面W1は、建築物を構成するコンクリート外壁の内壁面であり、且つ、内壁W3は、石膏ボード又はベニヤ板からなる仕上げ壁である。そして、壁表空間と外側環境との間に所望の断熱性能を担保すべく、構築面W1と内壁W3との間の壁裏空間には、所定厚の断熱層W2が一面に亘って設けられている。該断熱層W2の厚みは、構築面W1と内壁W3裏面との間の距離にほぼ等しい。この断熱層W2は、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂からなる。なお、本発明は、この形態に限定されず、断熱層W2を断熱ボード130の周囲のみに形成してもよい。
【0050】
図7に示すとおり、壁裏空間に配線装置100が設置されており、配線ボックス110及び断熱ボード130が構築面W1にビス150で固定されている。配線ボックス110の開口112の開口縁部112aが内壁W3裏面にほぼ当接するように配置されている。また、断熱ボード130は、配線ボックス110と構築面W1との間に位置している。より詳細には、該断熱ボード130の前面が両面接着層131を介して配線ボックス110の底壁111a外面に接触(粘着)し、且つ、その後面が両面接着層132を介して構築面W1に接触(粘着)している。そして、配線ボックス側壁111bと断熱ボード130側面がほぼ面一となっている。さらに、配線ボックス110の底壁111a外面から突出する4つの突出部116が断熱ボード130の内部に食い込んで、該断熱ボード130に係合している。
【0051】
そして、ビス150のビス軸部152が配線ボックス110の固定孔113及び断熱ボード130を貫通して構築面W1内に螺着(螺合)している。このとき、閉塞片115は、(固定孔113を閉塞せずに)通過孔114を閉塞しており、ビス頭部151と構築面W1との間に位置する。該配線構造10では、ビス軸部152が構築面W1内に深く螺入して、ビス頭部151が固定孔113周縁(底壁111a内面)及び閉塞片115の先端部115bに圧接している。つまり、閉塞片115が閉塞方向にビス頭部151によって強く押圧されることにより、通過孔114が開放することを防止するとともに、ビス軸部152を固定孔113内に安定的に維持している。さらに、少なくとも1つの突出部116が断熱ボード130に係合しているため、ビス150を軸として配線ボックス110が断熱ボード130に対して回動することが規制されている。したがって、当該配線構造10では、配線ボックス110及び断熱ボード130が構築面W1にビス150で強固に固定されている。なお、本実施形態では、固定孔113が通過孔114の上方に配置されているが、上下逆さまに配置してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、構築面W1と内壁W3との間の壁裏空間で所定厚の断熱層W2が充填され、配線装置100の周囲を覆っている。すなわち、本配線構造10では、断熱層W2が配線ボックス110の側壁111b外面及び断熱ボード130の外周側面にほぼ密接し、有意な隙間が形成されていない。また、この断熱層W2の一部が配線ボックス110のケーブル挿通部122上方で切り欠かれており、配線ボックス110内部にケーブルCを配線するための通路が形成されている。該配線構造10では、電源(図示せず)に接続されたケーブルCが該通路を介して壁裏に延線されている。
【0053】
そして、配線ボックス110の開口112の前方(壁表側)で内壁W1に壁孔Hが穿設されている。この壁孔Hを介して配線ボックス110の開口112とともに開口縁部112aに設けられた一対の器具取付孔121が壁表に臨んでいる。そして、コンセント、スイッチ等である配線器具Eが壁表側から一対の器具取付孔121にビス121aで固定されている。つまり、該配線器具Eは、配線ボックス110の一対の器具取付孔121を介して配線ボックス110の開口112を被覆するように固定されている。さらに、ケーブルCが配線ボックス110の側壁111bに穿設されたケーブル挿通孔122を貫通し、配線ボックス110内部に配線されている。そして、該ケーブルCの先端が、該配線ボックス110に器具取付孔121を介して取り付けられた配線器具Eに接続されている。すなわち、
図7の配線構造10では、壁裏空間に配置された断熱層W2が壁表空間と外部空間とを効果的に断熱した状態で、配線装置100(配線ボックス110及び断熱ボード130)が壁裏に設置されている。
【0054】
次に、
図8及び
図9を参照して、配線ボックス110及び/又は配線装置100を設置して配線構造10を構築する方法を説明する。
【0055】
まず、構築面W1の面内における配線ボックス110を設置する位置を定め、該構築面W1に配線ボックス110の取付位置をけ書く。断熱ボード130を該け書き線に位置合わせしつつ、断熱ボード130後面で(剥離シートを除去して)露出した両面接着層132を構築面W1に貼り付ける。そして、両面接着層132で仮止めした状態で、ビス150を断熱ボード130前面の略中心に打ち込む。ビス150のビス軸部152先端を構築面W1の内部に螺進させて、断熱ボード130を構築面W1にビス150で固定する。このとき、
図8(a)のように、ビス軸部152基端を断熱ボード130の前面から突出させるとともに、ビス頭部151を断熱ボード130前面から離隔させるように配置する。なお、ビス頭部151と被固定部との間の距離は、ビス頭部151を通過孔114に通過させて配線ボックス底壁111aをこれらの間に少なくとも配置可能であればよい。
【0056】
次に、配線ボックス110を把持して、配線ボックス110の底壁111a外面を断熱ボード130前面に近づける。このとき、剥離シートが剥離されて断熱ボード130前面の両面接着層131が露出している。そして、配線ボックス110をビス150に押し付けるように、断熱ボード130から突出したビス頭部151を(通過孔114を閉塞する)閉塞片115に当接させる。これにより、ビス頭部151が通過孔114に進入するとともに、閉塞片115がその基端部115aを軸として配線ボックス底壁111a内面側に回動するように弾性変形する(
図8(a)参照)。該ビス頭部151が通過孔114を完全に通過したら、配線ボックス110を下方にスライドさせることで、ビス軸部152が通過孔114から固定孔113に相対移動する。そして、ビス軸部152が固定孔113内に移動すると、閉塞片115とビス頭部151とが離隔する同時に、閉塞片115が弾性復帰して通過孔114を閉塞する。
【0057】
次いで、ビス軸部152が固定孔113に挿通された状態で、配線ボックス110の底壁111a外面を断熱ボード130前面に押し付けて、4つの突出部116を断熱ボード130内部に食い込ませることにより、該突出部116を断熱ボード130に係合させる。この係合と同時に、両面接着層131が配線ボックス底壁111a外面と断熱ボード130前面とを接着する。
【0058】
図8(b)に示すように、配線ボックス110がビス150で被固定部(断熱ボード130及び/又は構築面W1)に安定的に支持されて仮固定される。この
図8(b)の支持状態(取付状態)では、閉塞片115が通過孔114を閉塞しているため、ビス軸部152の通過孔114内への相対移動が規制され、配線ボックス110がビス頭部151から脱落することが防止される。そして、配線ボックス110が被固定部に支持された状態で、ビス150を増し締めし、ビス頭部151が固定孔113周縁及び閉塞片先端部115bに圧接するまでビス軸部152を構築面W1内に螺進させる。このとき、配線ボックス110の突出部116が断熱ボード130に係合しているため、ビス150の螺進とともに配線ボックス110が断熱ボード130に対して回動することが規制される。同様に、両面接着層132によって、断熱ボード130が構築面W1に対して回動されることが規制される。すなわち、
図8(b)の状態では、配線ボックス110が被固定部に安定的に支持されているとともに該配線ボックス110の回動が突出部116によって規制されているので、作業者は、配線ボックス110の脱落や位置(設置角度)のずれを気にすることなく、(片手で配線ボックス110を押さえないで)簡単且つ迅速に配線ボックス110(配線装置100)を構築面W1に本固定することが可能である。その結果、
図8(c)に示すように、配線ボックス110が被固定部に取り付けられる。なお、図示しないが、配線ボックス110の一対のビス孔123に他のビスを打ち込んで配線ボックス110をより強固に構築面W1に固定してもよい。
【0059】
図8(c)のように配線装置100を構築面W1に設置した後、断熱層W2及び内壁W3を設けて配線を行う。より具体的には、
図9(a)に示すように、配線ボックス110の開口112をマスキングテープMでマスキングした上で、構築面W1に亘って、配線装置100全体を包囲(被覆)するように吹付け発泡断熱材W2’を吹き付ける。これにより、配線ボックス110及び断熱ボード130が吹付け発泡断熱材W2’内に隙間なく埋設される。そして、マスキングテープMを開口112から除去するとともに、吹付け発泡断熱材W2’の一部を除去して、所定厚の断熱層W2を形成する。さらに、ケーブル(配線・配管材)Cを壁裏空間に配線すべく、断熱層W2の一部を削って配線用通路を設ける。なお、吹付け発泡断熱材W2’を断熱ボード130周囲のみに吹き付けてもよい。また、吹付け発泡断熱材W2’を形成する前にケーブルCを配線し、該ケーブルCを保護管に収容した後に、該保護管の上から吹付け発泡断熱材W2’を吹き付けて、ケーブルCごと配線装置100を断熱層W2に埋設させてもよい。
【0060】
次いで、
図9(b)に示すように、この配線用通路に沿って、ケーブルCを配線し、その先端を配線ボックス側壁111bのケーブル挿通部122に挿通する。ケーブルCの配線後、内壁W3を立設する。図示しないが、内壁W3は壁裏の造営材(例えば、柱材や胴縁材)を介して構築される。このとき、配線ボックス110の開口縁部112a及び断熱層W2前面が内壁W3裏面に当接するように、内壁W3を立設することが好ましい。
【0061】
続いて、壁表側から配線ボックス110の位置を探知し、配線ボックス110の開口112及び一対の器具取付孔121が壁表に臨むように、ホルソー等で(例えば、長円形状の)壁孔Hを穿設する。次に、ケーブルCの先端を壁表側に引き出して、コンセントやスイッチ等の配線器具Eに接続する。そして、配線器具Eを一対の器具取付孔121を介してビス121aで配線ボックス110に固定することによって、配線構造10を構築することができる。なお、ここで説明した配線・配管ボックスの設置方法は、一例にすぎず、当業者であれば、各工程の順序を入れ替え、状況に応じて不要な工程を変更又は省略し、あるいは、追加の工程を付加することも可能である。
【0062】
以下、本発明に係る一実施形態の配線装置100及び配線ボックス110における作用効果について説明する。
【0063】
本実施形態の配線装置100及び配線ボックス110によれば、被固定部の一部としての断熱ボード130及び構築面W1に突出状態で螺合したビス150のビス頭部151を、配線ボックス110の閉塞片115に当接させて通過孔114を弾性変形させて開放する。そして、該通過孔114からビス頭部151をボックス内部に通過させるとともにビス軸部152を固定孔113内に相対移動させて、弾性復帰した閉塞片115で通過孔114を閉塞することにより、配線ボックス110を被固定部に対して簡単且つ迅速に取り付けることができる。また、ビス軸部152が固定孔113を貫通した状態で閉塞片115が通過孔114を閉塞するため、該閉塞片115がビス頭部151を係止して、該ビス頭部151が通過孔114を再度通過することが規制される。すなわち、閉塞片115で通過孔114を閉塞した状態では、配線ボックス110及び断熱ボード130がビス150に係止され、互いに離脱することが防止される。これにより、配線ボックス110を断熱ボード130及び構築面W1に対して安定的に支持することができる。さらに、この支持状態において、配線ボックス110の底壁111a外面から突出した突出部116が断熱ボード130に係合することにより、該配線ボックス110の回動が規制される。これにより、作業者は、配線ボックス110の脱落や位置(設置角度)のずれを気にすることなく、簡単且つ迅速に配線ボックス110(配線装置100)を構築面W1に本固定することが可能である。したがって、本実施形態の配線装置10及び配線ボックス110は、その設置容易性及び作業効率を大幅に改善する。
【0064】
(実施例2)
本発明は、実施例1のように、断熱ボード130を介して構築面W1に配線ボックス110を固定する設置例に限定されない。
図10に示した実施例2の配線ボックス110は、構築面W1上に設けた断熱層W2前面に直接的に固定される。この実施例2の配線ボックス110は、実施例1と同じものである。本実施例では、ビス150のビス軸部152を被固定部としての断熱層W2及び構築面W1に螺入し、ビス頭部151を断熱層W2前面から離隔させて突出させる。そして、
図8で説明した実施例1と同様の方法で、ビス頭部115を通過孔114に通過させるとともに固定孔113にスライドさせることにより、配線ボックス110を断熱層W2前面に取り付けることが可能である。
【0065】
(実施例3)
本発明の被固定部は、造営材に固定されるボックス固定具であってもよい。
図11に示すとおり、被固定部としてのL字形状のボックス固定具230が壁裏に立設した造営材Pに固定されている。該ボックス固定具230は、造営材Pに固定される固定片231と、該固定片231から側方に延設され、配線ボックス210を取り付け可能な長手状の支持片232とからなる。該支持片232には、ビス250のビス軸部252を螺着可能な複数の長孔状の支持孔232aが形成されている。
【0066】
本実施例の配線ボックス210は、底壁211a及び側壁211bからなる周壁211により前面に開口212を有し、実施例1、2の配線ボックス110よりも厚型に構成されている。本実施例では、該配線ボックス210の底壁211a外面に、断熱ボードを配置することを想定していない。この配線ボックス210の底壁211aには、配線ボックス110と同様に、固定孔213、通過孔214及び閉塞片215からなる固定部が設けられている。また、配線ボックス210の底壁211a外面には、固定孔213の両側方で一対の突出部216が突出形成されている。すなわち、該一対の突出部216は、ボックス固定具230の支持片232(被固定部)に係合可能に構成されている。
【0067】
図12は、配線ボックス210をボックス固定具230に固定した配線構造20の模式図である。配線ボックス210の前後に前壁W2及び後壁W1が構築され、前壁W2に穿設された壁孔Hを介して配線器具Eが配線ボックス210の器具取付孔221にビス(図示せず)で固定されている。この配線構造20では、ビス頭部251が配線ボックス210の固定孔213周縁及び閉塞片215に圧接するように、ビス250によって配線ボックス210がボックス固定具230の支持片232に固定されている。そして、配線ボックス210の突出部216がボックス固定具230の支持孔232aに嵌入され、支持片232に係合(当接)している。つまり、突出部216が支持孔232a周縁の上下端面に係止され、配線ボックス210がビス250を軸としてボックス固定具230に対して回動することが規制されている。
【0068】
次に、
図13(a)〜(c)を参照して、配線ボックス210を設置して当該配線構造20を構築する方法を説明する。まず、配線ボックス210を固定する高さを定め、造営材P側面をけ書き、け書き線に沿ってボックス固定具230の固定片231を造営材Pに固定する。次いで、長手状の支持片232上の複数の支持孔232aのうちの1つを選択して、ビス頭部251が支持片232から前方に突出するようにビス軸部252を支持孔232aに螺合する。
【0069】
次に、
図13(a)に示すように、配線ボックス210を把持して、配線ボックス210の底壁211a外面を支持片232前面に近づける。そして、配線ボックス210をビス250に押し付けるように、支持片232から突出したビス頭部251を(通過孔214を閉塞する)閉塞片215に当接させる。これにより、ビス頭部251が通過孔214に進入するとともに、閉塞片215が配線ボックス210の底壁211a内面側に回動するように弾性変形する。該ビス頭部251が通過孔214を完全に通過したら、配線ボックス210を下方にスライドさせることで、ビス軸部252が通過孔214から固定孔213に相対移動する。そして、ビス軸部252が固定孔213内に移動すると、閉塞片215とビス頭部252とが離隔するとともに、閉塞片215が弾性復帰して通過孔214を閉塞する。次いで、ビス軸部252が固定孔213に挿通された状態で、一対の突出部216を支持孔232aに挿入することにより、該突出部216をボックス固定具230に係合させる。
【0070】
図13(b)に示すとおり、配線ボックス210がビス250で被固定部(ボックス固定具230)に安定的に支持されて仮固定されている。この
図13(b)の状態では、閉塞片215が通過孔214を閉塞しているため、ビス軸部252の通過孔214への相対移動が規制され、配線ボックス210がビス頭部251から脱落することが防止される。そして、配線ボックス210が被固定部に支持された状態で、ビス250を増し締めし、ビス頭部251が固定孔213周縁及び閉塞片215に圧接するまでビス軸部252を支持孔232a内に螺進させる。このとき、配線ボックス210の突出部216が支持片232に係合しているため、ビス250の螺進とともに配線ボックス210がボックス固定具230に対して回動することが規制される。その結果、
図13(c)に示すように、配線ボックス210が被固定部であるボックス固定具230に取り付けられる。そして、造営材Pを挟んで後壁W1及び前壁W2を構築し、配線ボックス210の開口212を壁表に臨ませるように壁孔Hを穿設し、該壁孔Hを介して配線器具Eを取り付けることにより、
図12の配線構造20を構築することができる。
【0071】
すなわち、本実施例によれば、配線ボックス210をボックス固定具230に対しても同様に簡単且つ迅速に取り付けて設置作業を改善することが可能である。
【0072】
(実施例4)
本発明の固定部は、周壁であれば(底壁に限定されず)任意の位置に形成してもよい。例えば、実施例4の配線ボックス310では、固定孔313、通過孔314及び閉塞片315からなる固定部が周壁311を構成する側壁311b上に設けられている。本実施例では、被固定部としての造営材Pの側面にビス350が螺着して、ビス頭部351が造営材Pの側方に突出している。このビス350及び造営材P側面に対して、配線ボックス310の側壁311bを近づけて、ビス頭部351を通過孔314に通過させることにより、上述した実施例と同様に、配線ボックス310を造営材P(被固定部)に取り付ける(又は支持させる)ことができる。
【0073】
(実施例5)
本発明の閉塞片は、上記実施例では、弾性変形可能であり、且つ、初期位置で通過孔を閉塞するように構成されているが、本発明はこれに限定されない。
図15に示す実施例5の配線ボックス410(配線装置400)では、初期位置で閉塞片415が通過孔414を開放しており、且つ、初期位置に弾性復帰するように構成されていない。なお、本実施例の配線装置400(配線ボックス410及び断熱ボード430)は、閉塞片415の形態を除いて、実施例1の配線装置100と同様の構成を有している。
【0074】
次に、実施例5の配線ボックス410を被固定部(断熱ボード430及び/又は構築面W1)に取り付ける工程を説明する。
図16(a)に示すとおり、該配線ボックス410を設置するには、断熱ボード430を構築面W1にビス450で固定した後、突出したビス頭部451を開放された状態の通過孔414に通過させて、ビス軸部452を固定孔413内に配置する。この通過孔414が開放された状態のまま、配線ボックス410の底壁411aを両面接着層432を介して断熱ボード430前面に貼り付けるとともに、突出部416を断熱ボード430に食い込ませる。そして、
図16(b)に示すように、ビス頭部451が配線ボックス底壁411aから浮いた状態で、閉塞片415を通過孔414内に押し込んで該通過孔414を閉塞する。このとき、閉塞片415は通過孔414内に嵌合し、初期位置に弾性復帰することはない。あるいは、閉塞片415を塑性変形可能な金属板等で形成してもよい。続いて、実施例1と同様に、ビス450を増し締めし、ビス頭部451が固定孔413周縁及び閉塞片415に圧接するまでビス軸部452を構築面W1内に螺進させることにより、配線装置400を構築面W1に対して設置可能である。
【0075】
本実施形態は、上記実施例と同様に、配線ボックス410を被固定部に対して簡単且つ迅速に取り付けて設置作業を改善するものである。
【0076】
(実施例6)
本発明の固定孔は、上記実施例では、ビスの軸径よりも僅かに大きく形成されているが、本発明はこれに限定されない。
図17(a)に示すとおり、配線ボックス510の固定部は、その底壁511a上で左右に延びる長手状の固定孔513と、該固定孔513に連通する通過孔514と、該通過孔514を開閉可能に閉塞する閉塞片515と、を備える。この固定孔513は、ビス550(図示せず)のビス軸部552が通過可能であるとともにビス頭部551が通過不能な大きさに形成されている。すなわち、本実施例では、固定孔513の横幅s1がビス頭部径d1及びビス軸部径d2よりも大きい(s1>d1、d2)。また、固定孔513の縦幅s2がビス頭部径d1よりも小さく、尚且つ、ビス軸部径d2よりも大きい(d2<s2<d1)。他方、通過孔514及び閉塞片515は、実施例1と同様の形状を有する。
【0077】
そして、固定孔513内にビス軸部552が挿通され、閉塞片515が通過孔514を閉塞した支持(仮止め)状態では、ビス軸部552が固定孔513内でその長手方向にスライド可能であるが、ビス頭部551が固定孔513を通過することができない。よって、本実施例では、ビス550で配線ボックス510を被固定部(例えば、断熱層、構築面、造営材等)に脱落防止に支持しつつ、固定孔513の長手方向に沿って、配線ボックス510の取付位置を自在に左右に調整可能である。これにより、配線ボックス510の設置作業を改善する。
【0078】
図17(b)に示した配線ボックス610では、
図17(a)と異なり、固定孔613が上下方向に延在している。この固定孔613は、ビス650(図示せず)のビス軸部652が通過可能であるとともにビス頭部651が通過不能な大きさに形成されている。すなわち、本実施例では、固定孔613の縦幅s2がビス頭部径d1及びビス軸部径d2よりも大きい(s2>d1、d2)。また、固定孔613の横幅s2がビス頭部径d1よりも小さく、尚且つ、ビス軸部径d2よりも大きい(d2<s1<d1)。すなわち、本実施例では、ビス650で配線ボックス610を被固定部(例えば、断熱層、構築面、造営材等)に脱落防止に支持しつつ、固定孔613の長手方向に沿って、配線ボックス610の取付位置を自在に上下に調整可能である。よって、本実施形態も、
図17(a)の形態と同様の作用効果を発揮するものである。
【0079】
(変形例)
本発明の配線・配管ボックスは、上記実施形態に限定されずに、例えば、以下のように変形可能である。
1)設置用途に応じて、配線・配管ボックスの形状、材質を任意に変更することができる。
2)上記実施例では、閉塞片が通過孔全体を閉塞しているが、閉塞片が通過孔を完全に閉塞しなくてもよい。すなわち、閉塞片がビス頭部を抜け止め防止に係止できるように、通過孔の一部のみを閉塞してもよい(
図18(a)の配線ボックス710参照)。
4)上記実施例では、閉塞片先端が固定孔に隣接して配置されているが、閉塞片の側端が固定孔に隣接するように配置してもよい(
図18(b)の配線ボックス810参照)。
3)上記実施例では、閉塞片が配線ボックス底壁に一体的に形成されているが、閉塞片を蓋体のような別体として設けてもよい。
4)本発明は、少なくとも上記課題を解決できればよく、本発明の配線・配管ボックスから突起部、ビス保持部等を省略してもよい。
【0080】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。