特許第6306961号(P6306961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306961
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】食品切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20180326BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20180326BHJP
【FI】
   B26D3/28 620F
   A23L17/00 102Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-145549(P2014-145549)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-20023(P2016-20023A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141509
【氏名又は名称】株式会社紀文食品
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】名古屋 和彰
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3017087(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3041626(JP,U)
【文献】 実開平5−37497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/26 − 3/28
B26D 1/14
B26D 3/08
B26D 3/12
B26D 7/06
A23L 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工食品のベルトコンベアによる搬送経路途中に設置され、該加工食品をスライスして予め定められた幅間隔で同時に略垂直面に沿った複数の切り目を形成する食品切断装置において、
前記ベルトコンベアによる搬送方向と直交する方向に延びる中心ロールに予め定められた等間隔で互いに平行に同軸状に固定された複数枚の同一径の円盤状回転刃と、
前記中心ロールに連通する回転軸を介して前記複数の円盤状回転刃を前記ベルトコンベアの搬送方向と同方向に回転駆動させる駆動装置と、
前記円盤状回転刃による切断下端位置を決定する前記中心ロールのベルトコンベア表面からの高さ位置を調整する切断位置調整機構と、
前記食品のスライス時の前記円盤状回転刃の回転速度がその周端速度を前記ベルトコンベアの搬送速度より高速とするように前記駆動装置の駆動制御を行う制御部と、を備え、
前記円盤状回転刃による前記食品の切断開始点から終了点までを含む搬送経路にわたって配置されるベルトコンベアは、載置搬送される加工食品が前記円盤状回転刃が食い込み始めた切断開始点から該回転刃による付勢力により進行方向へスライド可能なベルト表面を有し、予め定められた等間隔毎に、ベルト表面を滑る前記加工食品が当接してそれ以上の移動を規制するベルト幅方向に延びる突条が前記円盤状回転刃の切断下端位置に達しない高さで該ベルト表面に一体的に設けられていることを特徴とする食品切断装置。
【請求項2】
前記ベルト表面の対ステンレス鋼摩擦係数が0.4未満であることを特徴とする請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項3】
前記円盤状回転刃による食品の切断領域に亘るベルトコンベアの両側に、ベルトコンベアの搬送方向と直交する幅方向で該食品を両側面から押さえる左右ガイド手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品切断装置。
【請求項4】
前記円盤状回転刃による食品の切断領域に亘って、食品の頭頂部を押さえる上部ガイド手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工食品に切り目を付けるための食品切断装置に関し、詳しくは、板付き蒲鉾製品に予め切り目を付けておくための切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒲鉾は、一般的に魚肉すり身を主原料とし、擂潰後に板上に成形して加熱することで板付き蒲鉾となり、包装して製品となる。このような板付き蒲鉾製品は、板上で所望の間隔で平行に切り目を入れ、板から切り離されて食卓に供される。
【0003】
しかしながら、一般家庭において、包丁等で等間隔にしかもそれぞれ平坦な切断面で切り目を入れることは非常に難しく、多くの消費者において予め切れ目を入れた蒲鉾が望まれている。そこで、加熱処理後の蒲鉾を所定間隔で自動的にスライスできる切断装置が考えられている。
【0004】
例えば、線部材を水平方向に走行させながら蒲鉾を切断する食品スライスカッタ装置がある(特許文献1参照)。このスライスカッタ装置では、線部材が二本のガイドロールにまたがるようにその螺旋状ガイド溝で巻回されてガイドロールの長手方向に所定ピッチをもって順次ずれた位置で走行案内されると共に、スライスされるべき蒲鉾が載置された昇降可能で蒲鉾長手方向に移動可能な受台が線部材領域を上昇することによって、蒲鉾が走行線部材でそのピッチ毎に剪断される。
【0005】
一方、製造者においては、このような切り目入りの蒲鉾製品の製造で、切り目を入れる工程を増やすことによるコスト高を抑えるため、蒲鉾自体の製造ライン上で包装工程直前に連続的な切断工程を設ける方法、即ちベルトコンベアによる搬送途中で、成形加熱済の蒲鉾に対して所望の厚み相当の所定幅間隔で一度に切断を行い、その後そのままベルトコンベアでの搬送が続けられる方法が望まれる。
【0006】
しかしながら、上記のスライスカッタ装置では、専用の昇降台上に蒲鉾を載置しなければならず、また、線部材による走行裁断中は台による上昇が行われているため、この方式は、ベルトコンベアによる搬送途中での蒲鉾切断に採用することはできない。
【0007】
そこで、ベルトコンベアによる搬送経路中で蒲鉾の切断を行う蒲鉾用のスライス装置も考えられている。例えば、略上下方向に伸びて左右に複数並設された帯状の切刃が、搬送方向に沿って設置された二つのベルトコンベアの間の隙間を通って配置される切断機を備えたものがある(特許文献2参照)。
【0008】
この切断機は、蒲鉾がその長手方向を搬送方向と直交する配置として上流側のベルトコンベアで搬送され、次の下流側のベルトコンベアへと隙間を渡る際に、刃先が上流側に向けられた切刃をエンジン駆動により前記隙間で上下方向に往復動作させることによって該蒲鉾をスライスし、所定厚みの複数の蒲鉾片とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−57798号公報
【特許文献2】特開2006−110648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ベルトコンベアによる搬送経路中で蒲鉾切断が可能な前述のスライス装置では、帯状切刃を上下方向に往復動させる切断機において、切刃が蒲鉾の設置面を越えて駆動するものであるため、そのための空間を搬送途中に形成する必要から、二つのベルトコンベアを隙間を空けて設置するという複雑で煩雑なコンベアシステムとなってしまうだけでなく、板付きのまま蒲鉾に切り目を付ける切断はできない。また、その刃先を搬送面から浮かせて帯状切刃を上下動させようとしても、切断深さを調整するのは非常に困難で現実的ではない。
【0011】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、板付きのままの蒲鉾のみに対して一度に所定間隔で切り目を入れる切断処理を、ベルトコンベアによる搬送経路中で連続的に行うことが可能な食品切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る食品切断装置は、加工食品のベルトコンベアによる搬送経路途中に設置され、該加工食品をスライスして予め定められた幅間隔で同時に略垂直面に沿った複数の切り目を形成する食品切断装置において、
前記ベルトコンベアによる搬送方向と直交する方向に延びる中心ロールに予め定められた等間隔で互いに平行に同軸状に固定された複数枚の同一径の円盤状回転刃と、
前記中心ロールに連通する回転軸を介して前記複数の円盤状回転刃を前記ベルトコンベアの搬送方向と同方向に回転駆動させる駆動装置と、
前記円盤状回転刃による切断下端位置を決定する前記中心ロールのベルトコンベア表面からの高さ位置を調整する切断位置調整機構と、
前記食品のスライス時の前記円盤状回転刃の回転速度がその周端速度を前記ベルトコンベアの搬送速度より高速とするように前記駆動装置の駆動制御を行う制御部と、を備え、
前記円盤状回転刃による前記食品の切断開始点から終了点までを含む搬送経路にわたって配置されるベルトコンベアは、載置搬送される加工食品が前記円盤状回転刃が食い込み始めた切断開始点から該回転刃による付勢力により進行方向へスライド可能なベルト表面を有し、予め定められた等間隔毎に、ベルト表面を滑る前記加工食品が当接してそれ以上の移動を規制するベルト幅方向に延びる突条が前記円盤状回転刃の切断下端位置に達しない高さで該ベルト表面に一体的に設けられているものである。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る食品切断装置は、請求項1に記載の食品切断装置において、前記ベルト表面の対ステンレス鋼摩擦係数が0.4未満であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る食品切断装置は、請求項1又は2に記載の食品切断装置において、前記円盤状回転刃による食品の切断領域に亘るベルトコンベアの両側に、ベルトコンベアの搬送方向と直交する幅方向で該食品を両側面から押さえる左右ガイド手段を備えているものである。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る食品切断装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品切断装置において、前記円盤状回転刃による食品の切断領域に亘って、食品の頭頂部を押さえる上部ガイド手段を備えているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明による食品切断装置においては、板付き蒲鉾が載置搬送されるベルトコンベアのベルト表面が、進行方向に付勢された加工食品をスライドさせ得るもの、即ち従来よりも低摩擦係数のものとすると共に、ベルト表面上に予め定められた間隔毎に一体成形された突条を設けることによって、高速回転刃による切断領域にて搬送中の蒲鉾に回転刃が食い込み始めるとほぼ同時にその回転刃の付勢力によって蒲鉾がベルト表面を進行方向に前方の突条に当接するまでスライドされ、その間、蒲鉾は回転刃の周端速度とほぼ同一速度で滑りながら回転刃の回転に伴うブレのない良好な引き切り切断をその後端まで受け、そして突条で安定に固定された状態にて回転刃の高速切断により蒲鉾後端下部が最後まで綺麗に切断されることになるため、蒲鉾の短手方向全幅にわたって綺麗な切り口の切り目がつけられるものである。従って、本発明によれば、コンベアシステム自体に特別で複雑な機構を設けることなく、板付きのままの蒲鉾に綺麗な切り口で切り目を付ける切断工程を、板付き蒲鉾の包装工程までの搬送経路途中で連続的に実施することが可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例による食品切断装置の概略断面図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2図1の装置に装着されたガイドレールとガイドベアリングを示す部分斜視図である。
図3】板付き蒲鉾に対する高速回転刃による切断状況を説明する概略模式図である。
図4】本発明による板付き蒲鉾に対する高速回転刃による切断状況を各段階(a)〜(d)で説明する概略模式図である。
図5】切断時の蒲鉾の撓み方向を示す模式図である。
図6】本発明における各ガイド手段を説明する蒲鉾正面視での概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明においては、加工食品のベルトコンベアによる搬送経路途中に設置され、該加工食品をスライスして予め定められた幅間隔で同時に略垂直面に沿った複数の切り目を形成する食品切断装置において、ベルトコンベアによる搬送方向と直交する方向に延びる中心ロールに予め定められた等間隔で互いに平行に同軸状に固定された複数枚の同一径の円盤状回転刃と、前記中心ロールに連通する回転軸を介して前記複数の円盤状回転刃を前記ベルトコンベアの搬送方向と同方向に回転駆動させる駆動装置と、円盤状回転刃による切断下端位置を決定する前記中心ロールのベルトコンベア表面からの高さ位置を調整する切断位置調整機構と、食品スライス時の前記円盤状回転刃の回転速度がその周端速度をベルトコンベアの搬送速度より高速とするように前記駆動装置の駆動制御を行う制御部と、を備えたものである。
【0019】
なお、このように搬送方向と同方向に高速回転する円盤状回転刃に、ベルトコンベア上を搬送されてくる蒲鉾が到達すると、蒲鉾の進行と共に該回転刃の刃先が蒲鉾に食い込むが、図3の側断面模式図で示すように、蒲鉾Kの断面において回転刃Sの当たる位置によってはその速度が互いに異なる。例えば、周端が当たる位置A1における回転速度r1ωの方が、中心寄りが当たる位置A2における回転速度r2ωより高速である。このように、同一回転刃による切断においても、蒲鉾断面位置で回転速度に差があるため、ベルトコンベアのベルトBの表面上に載置されただけで搬送されている蒲鉾においては、内部で互いに異なる回転速度で回転刃が当たる位置において異なる力が作用し、蒲鉾自体の弾性も加わって蒲鉾自体が不安定な状態となり、その後の切断面はがたついて平坦で綺麗な切り口が得られなくなってしまう。
【0020】
しかし、本発明においては、円盤状回転刃による食品の切断開始点から終了点までを含む搬送経路にわたって配置されるベルトコンベアのベルト表面を、従来の一般的なベルトコンベアのベルト表面より低摩擦にするなど、滑り易くすると共に、予め定められた等間隔毎にベルト幅方向に延在する突条が一体的に設けられているため、上記のようながたつきなく平坦で綺麗な切り口が得られる。
【0021】
即ち、図4の側断面模式図に示すように、速度V2で搬送されてきた蒲鉾Kに対して(図4(a))、切断開始時に円盤状回転刃Sが食い込み始めると、蒲鉾Kは直ちにその回転刃によって付勢されてベルトコンベアのベルトBの表面を進行方向にほぼ回転刃周端速度v1と同じ速度でスライドされる(図4(b))。そして、前方の予め定められた位置でベルト幅方向に延在するように一体的に設けられた突条Tに当接してそれ以上の移動が規制される(図4(c))。これによって、蒲鉾Kは、切断開始から突条Tに当接するまでの間、回転刃周端とほぼ同一速度でスライドしながら、回転刃の回転に伴ってブレのない良好な引き切り切断がその後端まで行われ得る。そして、突条Tに当接して安定した搬送状態となった蒲鉾Kに対して、円盤状回転刃Sによる高速回転切断で残りの蒲鉾後端下部が最後まで綺麗に切断され、結果として各回転刃毎に蒲鉾Kはその短手方向全幅にわたって平坦で綺麗な切断面が形成される(図4(d))。
【0022】
従って、突条Tの切断対象である食品に対する位置は、回転刃の中心軸直下より前方で且つ回転刃の前端投影位置よりは後方でスライドした食品の前端が当接するように、ベルトコンベアの搬送速度、食品の搬送方向幅、円盤状回転刃の径と回転速度等の各種設定に応じて決定される。
【0023】
また、本発明では、切断位置調整機構において、円盤状回転刃による切断下端位置が対象蒲鉾の板上面位置に合致する相当位置に前記中心ロールのベルトコンベア表面からの高さ位置を一度設定しておけば、現状の製造ラインにおいても板付き蒲鉾の板は厚みを含め均一な寸法に成形されているため、同一ライン上での蒲鉾切断において、板付きのままでも板を傷つけることなく蒲鉾のみに対して連続的に綺麗な切り目を入れることができる。即ち、本発明によれば、ベルトコンベアによる搬送経路中における蒲鉾切断工程において、従来のような特別で複雑なコンベアシステムを構築する必要がない。
【0024】
このような切断位置調整機構としては、中心ロールの両端を高さ調整可能に支持するもの、例えば、互いに同期駆動される一対のシリンダ機構を利用したものが簡便である。このようなシリンダ機構としては、エアや油圧等の作動流体によって駆動されるものが挙げられるが、同期駆動によって中心ロールを介して全円盤状回転刃を一体的に切断位置と切断を行わない退避位置との間で移動させることができる。また、切断位置の微調整のための機構、例えば、シリンダ自体の高さ位置を微調整する機構等を更に設けておくことが望ましい。
【0025】
なお、本発明において切断対象食品が載置されるベルト表面は、低摩擦で滑り易いほど、該食品に対するが回転刃による不均一な力が作用する期間が短縮され、そのがたつき切断が低減できる。従来の食品加工ラインにおけるベルトコンベアのベルト表面としては、例えばウレタン製が一般的であり、その対ステンレス鋼摩擦係数は0.4である。従って、対ステンレス鋼摩擦係数が0.4より低ければ、この従来のウレタン製ベルト表面の場合より良好な切断面を得ることができる。
【0026】
よって、さらに摩擦係数が低いベルト表面であることが望ましく、例えば、高硬度ポリウレタンであれば対ステンレス綱摩擦係数が0.25〜0.35のものがあり、容易に実現できる。また、表面素材の選択によってさらなる低摩擦のものを得ることは可能である。例えば、テフロン(登録商標)で知られるポリテトラフルオロエチレンであれば、対ステンレス綱摩擦係数が0.15であり、さらなる低摩擦で滑り易いベルト表面が得られる。
【0027】
以上のように、本発明の切断装置によれば、蒲鉾のような弾性を有する加工食品に対して良好な引き切り切断を行えるものであるため、蒲鉾に限らず、その他の弾性を有する加工食品、例えば、さつま揚げ、伊達巻、はんぺん等の魚肉すり身を原料とするもの、肉団子等の畜肉を原料とするもの、あるいはコンニャク、ゼリー系食品など、様々な加工食品に対しても同様に、一度に所望の一口幅間隔で綺麗に小分け切断することができる。もちろん、このような弾性をもたない食品に対する切断においても対応できることは言うまでもない。しかしながら、本発明は、特に板付き蒲鉾を対象物として板に付いたままの状態で蒲鉾のみを切断するという特殊な状況に適応できる点で最も特徴的と言える。
【0028】
なお、それ自体弾性を有する食品を対象とする場合には、切断が進む間、特に回転刃の並列方向である食品長手方向の左右横方向への撓みが生じ易いことから、左右両側から対象物を支持するガイド手段を設けておくことが望ましい。例えば蒲鉾Kの場合、図5の正面模式図中の矢印で示すように、その長手方向である左右横方向への撓みが生じ易いことから、板I上の蒲鉾Kに対して、図6に示すようにその長手方向で互いに対向する両側面で撓みを抑える左右ガイド手段G1を設ける構成が好適である。
【0029】
このようなガイド手段としては、ベルトコンベアの両サイドの切断領域に亘ってその接触部が切断前の蒲鉾Kの長手方向幅を維持するように取りつけられるものが簡便であるが、蒲鉾側面を実質的に押さえることになる接触部は、蒲鉾搬送に支障するような抵抗を生じないものとする。例えば、複数個の玉軸受等のベアリングを回転自在に並べて設置する構成が挙げられる。回転ベルトによる押さえも可能ではあるが、スライド時など蒲鉾の進行速度の変化に対応し易い点でベアリングの並設構成が好ましい。
【0030】
また、板付き蒲鉾全体の、搬送方向と直交するベルト幅方向(左右横方向)での位置安定化のために、蒲鉾板Iを両側から規制する板ガイド手段G2も設けておくことが望ましい。さらに、蒲鉾Kの上下方向の弾性変形を抑えて良好な切断に寄与するために、切断領域に亘って各回転刃同士間で蒲鉾頭頂部を押さえる上部ガイド手段G3を設けることも望ましい。これらのガイド手段による押さえ効果で、弾性を有する蒲鉾に対する切断がよりスムーズに行える。
【実施例】
【0031】
本発明の一実施例による食品切断装置を図1の概略構成を示す断面図をもって以下に説明する。図1(a)は正面図、(b)は側面図である。本実施例による食品切断装置1は、加熱処理により完成された板付き蒲鉾がベルトコンベアにより包装工程へ搬送されるまでの経路途中に設けられるものである。本食品切断装置1の主要な駆動部分はフードFに覆われている。
【0032】
該ベルトコンベアのベルト2は、対ステンレス鋼摩擦係数0.25〜0.35(23℃、湿度50%の環境条件下でのSUSに対する測定結果)という従来のベルトコンベアより低摩擦係数である高硬度ポリウレタン樹脂表面を備えたものであり、搬送方向に15cm間隔で、ベルト幅方向に横幅80mm、縦幅3mmで延在する高さ7mmの突条3が同じ高硬度ポリウレタン樹脂でベルト2の表面上に一体成形で設けられている。
【0033】
ベルトコンベアの左右両側の所定位置には、一対のシリンダ4が設置されており、各シリンダ4のロッド上端に固定された一対のアーム5の間に、支持部6を介して複数枚の円盤状回転刃8が同軸状に固定された中心ロール7の両端が回転自在に軸支されている。円盤状回転刃8は、同一径のものが、所望の蒲鉾K切り目間隔に対応した間隔を持って互いに平行に装着固定されている。
【0034】
中心ロール7の一方の端部には、駆動装置としての電動モータ10の回転軸9が連結されており、電動モータ10の制御部30からの指令に応じた駆動により、回転軸9、中心ロール7を介して各円盤状回転刃8が一体的に予め定められた回転速度で高速回転される。制御部30は、一対のシリンダ4の駆動制御も行うものであり、切断工程開始前に、中心ロール7をベルト2の上方から下降させ、各円盤状回転刃8を退避位置から切断位置へと位置決めする。
【0035】
制御部30は、ベルトコンベアのベルト2の駆動も制御するものとし、ベルト移動速度の入力および駆動開始・停止の指令入力と、シリンダ4に対する退避位置・切断位置との間の駆動指令、さらに電動モータ10の回転数の入力および駆動開始・停止の指令入力とを、同じ制御盤で行える構成とし、作業効率を高めた。
【0036】
尚、一対のシリンダ4の設置部11への取付は、上下方向に若干変更可能な機構とし、円盤状回転刃8の下端位置としての切断位置を微調整可能とした。例えば、設置部11に形成されたボルト穴に対するボルト止めでの取付機構とした場合、ボルト穴を長穴とすることで、その取付位置の変更による微調整が可能となる。
【0037】
また、本実施例における食品切断装置1においては、図2に示すように、ベルトコンベアのベルト2の両側に切断領域に亘って、蒲鉾板Iのベルト幅方向の位置ズレを抑える板ガイド手段としての一対のガイドレール12を設置すると共に、このガイドレール12の上方で蒲鉾Kの左右横方向の撓みを抑えるための左右ガイド手段として、搬送方向にわたって回転自在に並設された複数個の玉軸受からなるベアリングガイド13を設置した。さらに、蒲鉾Kの上方への撓みを抑えるための上部ガイド手段として、搬送方向に切断領域に亘って且つほぼベルト幅のわたって延在するガイド板14を吊設した。
【0038】
なお、このガイド板14は、一枚板に、各円盤状回転刃8が通過可能なスリットを設けたものであり、回転刃8の各間隔において蒲鉾のKの頭頂部に当接する。そしてその当接面がベルト2の表面とほぼ平行となるように設置されるものであるが、搬送されてくる蒲鉾Kを受け入れ易くするために、切断開始位置より上流側に、ベルト表面より離反する上方向に曲げられた開放部15を備えたものとした。本実施例においては、板付き蒲鉾Kを長手方向にわたって8等分間隔で切り目を入れるために7枚の円盤状回転刃8を装着固定した場合の切断装置1を例示した。
【0039】
以上の構成を備えた本実施例による食品切断装置1により、以下の通り、搬送方向(短手方向)の幅が約5cmの板付き蒲鉾Kを前後の突条3の間で上流側の突条3に寄せて載置した搬送にて連続切断工程を実施した。この切断工程においては、切断装置1に装備された7枚の円盤状回転刃8は、各々直径が250mmであり、ベルトコンベアのベルト2の移動速度3.5m/minに対して、電動モータ10の駆動による回転数35r/minにより、その周端速度を27.5m/minという高速回転に設定した。
【0040】
ベルトコンベアで搬送される各蒲鉾Kは、切断位置に達して回転刃8が食い込み始めると同時に、ベルト2表面の滑り易さから、回転刃8の回転付勢力が作用してベルト2の表面上を前方、下流側の突条3に当接するまでスライドされながら、同時に7箇所でのほぼ完全な引き切りがなされ、当該突条3に当接して後端下部の最後まで切断されることにより、蒲鉾部分のみの切断が完了してさらに前方工程へと搬送された。得られた各切断面は、平坦で綺麗な切り口となり、蒲鉾板Iに傷はなく、切り目だけが付けられた板付き蒲鉾製品が連続的に得られた。
【0041】
このような連続切断工程において、同じベルト移動速度にて回転数30〜40r/minの範囲、即ち上記円盤状回転刃8の周端速度23.6〜31.4m/minの範囲においては同様に良好な蒲鉾切断が行えた。
【0042】
以上のように、本実施例による食品切断装置によれば、コンベアシステム自体に特別に複雑な構成を備えることなく、板付き蒲鉾に連続的に綺麗な切り口で切り目を入れる切断工程を、製品包装工程への搬送経路途中で実施することが可能となった。
【0043】
なお、本食品切断装置は、円盤状回転刃の切断下端位置やその間隔、また各ガイド手段を設置位置等を適宜変更することによって、板付き蒲鉾以外の弾性を有する様々な食品に対して良好なスライス処理が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1:食品切断装置
B,2:ベルト
T,3:突条
4:シリンダ
5:アーム
6:支持部
7:中心ロール
S,8:円盤状回転刃
9:回転軸
10:電動モータ
11:シリンダ設置部
12:ガイドレール
13:ガイドベアリング
14:ガイド板
15:開放部
30:制御部
K:蒲鉾
I:蒲鉾板
G1:左右ガイド手段
G2:板ガイド手段
G3:上部ガイド手段
F:フード
図1
図2
図3
図4
図5
図6