(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1バイアス回路は、前記第1端子の電圧と前記第2端子の電圧に追従して、前記第1トランジスタのゲート電圧を調節可能に構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体スイッチ。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスが正常に動作するかを試験し、あるいはその不良箇所を特定するために、半導体試験装置(以下、単に試験装置、あるいはATE:Automatic Test Equipment)が利用される。一般的に試験装置は、AC試験とDC試験を行う。
【0003】
AC試験では、パターン発生器、タイミング発生器によりテストパターンを発生し、ドライバによってテストパターンに応じたパターン信号(試験信号)を生成して被試験デバイス(DUT)に供給する。パターン信号を受けたDUTは、所定の信号処理を行い試験装置に対して出力する。試験装置は、タイミングコンパレータによってDUTからの信号レベルを判定し、判定結果を期待値と比較することによってDUTの機能の良否を判定する。
DC試験では、直流試験ユニットによって直流電圧(DC電圧)または電流信号をDUTに供給し、DUTの入出力インピーダンス、漏電電流をはじめとするDC特性を試験する。
【0004】
ドライバ、タイミングコンパレータおよびDC試験を行うPMUは、ピンカード(ピンエレクトロニクスカード)、デジタルモジュールあるいはインタフェースカードと称されるボード上に設けられ、試験装置の本体と切り離し可能に構成される場合が多い。
【0005】
図1は、一般的なピンカードの構成を示す図である。
図1には、1つのデバイスピンに対応する1チャンネルのみが示されるが、実際には数百〜数千チャンネルが並列的に設けられる。
【0006】
ピンカード200のI/O端子Pioは、DUT1の対応するデバイスピンとケーブルおよび図示しないデバイスチャックを介して接続される。ピンカード200は、ドライバDR、タイミングコンパレータTCP、直流試験ユニットPMUに加えて、2つのスイッチ(リレー)SW1、SW2を備える。スイッチSW1、SW2は、AC試験とDC試験を切りかえるために利用される。
【0007】
AC試験時にはスイッチSW1がオン、スイッチSW2がオフされる。このときドライバDRおよびタイミングコンパレータTCPがDUT1と接続され、直流試験ユニットPMUがDUT1から切り離される。
反対にDC試験時にはスイッチSW1がオフ、スイッチSW2がオンされる。このときドライバDRおよびタイミングコンパレータTCPがDUT1と切り離され、直流試験ユニットPMUがDUT1と接続される。
【0008】
スイッチSWには、機械式リレーではなく、半導体スイッチが用いられる場合が多い。
図2は、本発明者等が検討した半導体スイッチ80の回路図である。半導体スイッチ80は、トランジスタ82およびその制御電極(ゲート)の電圧を制御するバイアス回路84と、を含む。トランジスタ82は、エンハンスメント型のNチャンネルトランジスタであり、たとえばMIS(Metal Insulator Semiconductor)−HEMT(High Electron Mobility Transistor)などが用いられる。
【0009】
図3(a)、(b)は、HEMTの電流電圧特性の一例を示す図である。HEMTは、制御電極(ゲート)Gと、第1電極E1、第2電極E2を有する。第1電極と第2電極のうち、電位の高い方はドレインD、低い方はソースと称される。HEMTはドレインソース間の電流のオン、オフを制御可能なデバイスであり、そのゲートソース間電圧が、所定のしきい値V
THを超えると、ターンオンする。
図3(a)はエンハンスメント型の、
図3(b)はデプレッション型の電流電圧特性である。
【0010】
図2に戻る。バイアス回路84は、電源電圧V
DD、V
SSを受け、トランジスタ82のオン、オフを指示する制御信号V
CNTに応じて、トランジスタ82のゲートソース間電圧V
GSを制御する。
【0011】
具体的にはバイアス回路84は、制御信号V
CNTが第1レベル(たとえばハイレベル)であるときに、トランジスタ82のゲートソース間にしきい値電圧V
THを超える電圧を印加する。また制御信号V
CNTが第2レベル(たとえばローレベル)であるときに、トランジスタ82のゲートソース間に、しきい値電圧V
THより小さな電圧(たとえば0V)を印加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
バイアス回路84は、正常な電源電圧V
DD、V
SSが供給されているときには、制御信号V
CNTに応じて、トランジスタ82を適切にオン、オフすることができる。ところが、電源電圧V
DD、V
SSが供給されていないとき(無電源状態という)には、バイアス回路84の出力はハイインピーダンス状態となり、その出力電圧、言い換えればトランジスタ82のゲート電圧V
Gは、0V(接地電圧)に固定される(もしくは不定となる)。
【0013】
図2の半導体スイッチ80において、出力端子P2が0Vであり、入力端子P1に可変電圧V
INが入力されるものとする。またHEMTのしきい値電圧V
THを1Vとする。
【0014】
V
IN>0V(たとえば5V)であるとき、第1電極E1の電位(5V)が第2電極E2の電位(0V)より高くなるため、第1電極E1がドレイン、第2電極E2がソースとなる。この場合、V
GS=V
G−V
S=0Vとなり、V
GS<V
THであるからトランジスタ82はオフとなる。
【0015】
反対にV
IN<0V(たとえば−5V)であるとき、第1電極E1の電位(−5V)が第2電極E2の電位(0V)より低くなるため、第1電極E1がソース、第2電極E2がドレインとなる。この場合、V
GS=V
G−V
S=5Vとなり、V
GS>V
THであるからトランジスタ82はオンとなる。
【0016】
このように、
図2の半導体スイッチ80では、無電源状態において、オン、オフ状態が入力端子P1、出力端子P2の電位に依存し、不定となる。しかしながら、たとえば
図1のピンカード200では、スイッチSW1、SW2は無電源状態においてオフしていることが好ましい。ピンカード200以外にも、無電源状態においてオフとなることが要求されるスイッチは多く存在する。
【0017】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、無電源状態において確実にオフとなる半導体スイッチの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のある態様は、第1端子と第2端子の間の導通、遮断が切りかえ可能な半導体スイッチに関する。半導体スイッチは、第1端子と第2端子の間に設けられたエンハンスメント型の第1トランジスタと、電源電圧が供給されているとき、制御信号に応じたゲート電圧を第1トランジスタのゲートに印加可能に構成された第1バイアス回路と、電源電圧が供給されない無電源状態において、第1端子と第2端子それぞれの電圧のうち低い方に応じた電圧を、第1トランジスタのゲートに印加可能に構成された第2バイアス回路と、を備える。
【0019】
この態様によると、無電源状態において、第1端子、第2端子の電圧の高低にかかわらず、第1トランジスタのゲートソース間電圧を、しきい値電圧より低くすることができ、確実にオフすることができる。
【0020】
第2バイアス回路は、無電源状態において、第1端子と第2端子それぞれの電圧を通過させるゲート回路と、ゲート回路を通過した第1端子と第2端子それぞれの電圧のうち低い方に応じた電圧を第1トランジスタのゲートに印加する比較回路と、を含んでもよい。
【0021】
ゲート回路は、その第1電極が第1端子と接続され、無電源状態においてオンするようにそのゲートがバイアスされた第2トランジスタと、その第1電極が第2端子と接続され、無電源状態においてオンするようにそのゲートがバイアスされた第3トランジスタと、を含んでもよい。比較回路は、第2トランジスタの第2電極の電圧と、第3トランジスタの第2電極の電圧のうち低い方を選択し、選択された一方に応じた電圧を第1トランジスタのゲートに印加してもよい。
【0022】
第2トランジスタ、第3トランジスタはデプレッション型であり、第2トランジスタ、第3トランジスタそれぞれのゲートは、下側の電源電圧が供給される電源ラインと接続されるとともに、抵抗を介して接地ラインと接続されてもよい。
【0023】
比較回路は、カソードが第2トランジスタの第2電極と接続され、アノードが第1トランジスタのゲートと接続された第1ダイオードと、カソードが第3トランジスタの第2電極と接続され、アノードが第1トランジスタのゲートと接続された第2ダイオードと、を含んでもよい。
【0024】
第1バイアス回路は、第1端子の電圧と第2端子の電圧に追従して、第1トランジスタのゲート電圧を調節可能に構成されてもよい。
【0025】
第1バイアス回路は、第1端子の電圧と第2端子の電圧に追従するトラッキング電圧を生成するトラッキング回路と、制御信号を、トラッキング電圧に応じたハイレベル電圧と所定のローレベル電圧の2値にレベルシフトするレベルシフタと、を含んでもよい。
【0026】
本発明の別の態様は、半導体試験装置に関する。半導体試験装置は、上述のいずれかの半導体スイッチを備えてもよい。
【0027】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のある態様によれば、無電源状態において確実にオフとなる半導体スイッチを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0031】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
図4は、実施の形態に係る半導体スイッチ10の回路図である。半導体スイッチ10は、第1端子P1、第2端子P2、制御端子CNTを有し、制御端子CNTに入力される制御信号V
CNTに応じて、第1端子P1と第2端子P2の間の導通(オン)、遮断(オフ)が切りかえ可能に構成される。第1端子P1あるいは第2端子P2に入力される信号は、交流信号であってもよいし直流信号であってもよく、また電圧信号であると電流信号であるとを問わない。半導体スイッチ10は、電源ライン30H、30Lと接続されており、図示しない電源から電源電圧V
DD、V
SSが供給される。
【0033】
半導体スイッチ10は、第1トランジスタM1、第1バイアス回路12、第2バイアス回路14を備える。
【0034】
第1トランジスタM1は、エンハンスメント型のNチャンネルトランジスタであり、第1端子P1と第2端子P2の間に設けられる。具体的には第1トランジスタM1はMIS−HEMTであり、その第1電極E1は第1端子P1と接続され、その第2電極E2は第2端子P2と接続される。
【0035】
第1バイアス回路12は、電源電圧V
DD、V
SSが供給されているとき、制御信号V
CNTに応じて、第1トランジスタM1のゲート電圧V
Gを、ハイレベル電圧V
GH、ローレベル電圧V
GLの2値で切りかえ可能に構成される。第1バイアス回路12は、制御信号V
CNTが第1レベル(たとえばハイレベル)のとき、ハイレベルのゲート電圧V
GHを出力し、制御信号V
CNTが第2レベル(たとえばローレベル)のとき、ローレベルのゲート電圧V
GLを出力する。第1端子P1、第2端子P2に生じうる電圧V
P1、V
P2の最大値をV
MAXとするとき、トランジスタのしきい値電圧をV
THとするとき、ハイレベル電圧V
GHは、以下の式を満たすように定められる。
V
GH>V
MAX+V
TH
またローレベル電圧V
GLは、たとえば接地電圧V
GND(=0V)である。さらに第1バイアス回路12の出力は、電源電圧V
DD、V
SSが供給されない無電源状態において、ハイインピーダンスとなる。
【0036】
第1バイアス回路12の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。一般的には第1バイアス回路12は、バッファ回路、レベルシフト回路、インバータ回路、もしくはそれらの組み合わせとして把握される。
【0037】
一方、第2バイアス回路14は、無電源状態において、第1端子P1と第2端子P2の電圧V
P1、V
P2のうち低い方に応じた電圧を、第1トランジスタM1のゲートに印加可能に構成される。
【0038】
第2バイアス回路14は、ゲート回路16および比較回路18を含む。
ゲート回路16は、無電源状態において、第1端子P1と第2端子P2それぞれの電圧V
P1、V
P2を通過させる。本実施の形態では、電源電圧V
SSにもとづいて無電源状態か否かを検出するものとするが、本発明はそれにはされず、それに代えてあるいはそれに加えて、電源電圧V
DDにもとづいて無電源状態か否かを検出してもよい。つまりゲート回路16は、電源電圧V
DD、V
SSの少なくとも一方に応じて、通過と遮断が切りかえ可能であればよい。
【0039】
比較回路18は、ゲート回路16を通過した第1端子P1と第2端子P2それぞれの電圧V
P1、V
P2のうち低い方に応じた電圧を第1トランジスタM1のゲートに印加する。
【0040】
以上が半導体スイッチ10の基本構成である。
図5は、半導体スイッチ10の具体的な構成を示す回路図である。
ゲート回路16は、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3を含む。第2トランジスタM2の第1電極は、第1端子P1と接続される。第2トランジスタM2のゲートは、無電源状態においてオンするようにバイアスされている。第3トランジスタM3の第1電極が第2端子P2と接続され、無電源状態においてオンするようにゲートがバイアスされる。
【0041】
第2トランジスタM2、第3トランジスタM3のゲートバイアスについて説明する。第2トランジスタM2、第3トランジスタM3はデプレッション型であり、
図3(b)に示すように負のしきい値電圧V
THを有する。
【0042】
第2トランジスタM2、第3トランジスタM3のゲートは、負の下側電源電圧V
SS(<0)が供給される電源ライン30Lと接続される。またそれらのゲートは、抵抗R1を介して接地電圧V
GNDが与えられる接地ライン32と接続される。
【0043】
下側電源電圧V
SSが供給されていないときには、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3のゲートには、抵抗R1を介して接地電圧V
GND(=0V)が供給される。したがって無電源状態では、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3それぞれにおいてV
GS>V
THとなり、オンとなる。つまり無電源状態では、第2トランジスタM2の第2電極E2の電圧は、第1端子P1の電圧V
P1と実質的に等しくなり、第3トランジスタM3の第2電極E2の電圧は、第2端子P2の電圧V
P2と実質的に等しくなる。
【0044】
反対に電源電圧V
SSが供給されているときには、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3のゲートには、負電圧V
SSが供給される。下側電源電圧V
SSは、しきい値電圧V
THより低く、したがって第2トランジスタM2、第3トランジスタM3はオフとなる。
【0045】
比較回路18は、第2トランジスタM2の第2電極E2の電圧(つまりV
P1)、第3トランジスタM3の第2電極E2の電圧(つまりV
P2)のうち低い方を選択し、選択された一方に応じた電圧を第1トランジスタM1のゲートに印加する。
【0046】
比較回路18の機能は、いわゆる最小値選択回路により実現可能である。たとえば最小値選択回路は、2つのダイオードD1、D2の組み合わせで構成できる。第1ダイオードD1のカソードは、第2トランジスタM2の第2電極E2と接続され、第2ダイオードD2のカソードは、第3トランジスタM3の第2電極E2と接続される。第1ダイオードD1、第2ダイオードD2のアノードは、第1トランジスタM1のゲートと接続される。この構成では、無電源状態において第1トランジスタM1のゲート電圧V
Gは、min(V
P1,V
P2)+V
Fとなる。min()は小さい方を選択する関数を表す。V
Fは、ダイオードの順方向電圧であり、シリコンダイオードの場合0.6V程度となる。
【0047】
なお第2バイアス回路14の構成は
図5のそれに限定されず、当業者であれば、同等の機能を有する別の回路を設計可能である。
【0048】
以上が半導体スイッチ10の構成である。続いてその動作を、電源電圧V
DD、V
SSが供給される通常状態と、電源電圧V
DD、V
SSが供給されない無電源状態に分けて説明する。
【0049】
(通常状態)
通常状態では、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3のゲートに、下側電源電圧V
SS(<V
TH)が供給され、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3はオフする。したがって第2バイアス回路14の出力はハイインピーダンスとなり、第1トランジスタM1のゲート電圧には影響を与えない。
【0050】
そして第1トランジスタM1のゲート電圧は、第1バイアス回路12によってハイレベル電圧V
GH、ローレベル電圧V
GLの2値で切りかえられ、それにより第1トランジスタM1のオン、オフが制御される。
【0051】
(無電源状態)
無電源状態では、第1バイアス回路12の出力はハイインピーダンスとなる。一方、第2バイアス回路14においては、第2トランジスタM2、第3トランジスタM3がオンとなり、第1端子P1と第2端子P2のうち低い方の電圧が選択される。
【0052】
V
P1>V
P2であるとき、第1トランジスタM1は、第1電極E1がドレイン、第2電極E2がソースとなる。そして第1トランジスタM1のゲートには、V
P2に応じた電圧V
P2+V
Fが印加される。このとき第1トランジスタM1のゲートソース間電圧V
GS=V
G−V
S=(V
P2+V
F)−V
P2=V
Fとなり、電圧V
P2には依存しない。これは、第1トランジスタM1のゲートソース間がダイオードによりクランプされていると把握することもできる。V
F=0.6V、V
TH=1Vとすると、V
F<V
THであるから、第1トランジスタM1は、電圧V
P2にかかわらずオフとなる。
【0053】
反対にV
P1<V
P2であるとき、第1トランジスタM1は、第1電極E1がソース、第2電極E2がドレインとなる。そして第1トランジスタM1のゲートには、V
P1に応じた電圧V
P1+V
Fが印加される。このとき第1トランジスタM1のゲートソース間電圧V
GS=V
G−V
S=(V
P1+V
F)−V
P1=V
Fとなる。V
F<V
THであるから、第1トランジスタM1は電圧V
P1にかかわらずオフとなる。
【0054】
以上が半導体スイッチ10の動作である。
【0055】
半導体スイッチ10によれば、通常状態では、制御電圧V
CNTに応じて第1トランジスタM1のオン、オフを切りかえることができる。反対に無電圧状態では、第1端子P1、第2端子P2の電圧V
P1、V
P2の大小関係、およびそれらの電圧レベルにかかわらず、第1トランジスタM1を確実にオフすることができる。
【0056】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0057】
(第1変形例)
図6は、第1変形例に係る半導体スイッチ10aの回路図である。
図4、
図5の半導体スイッチ10では、第1バイアス回路12が通常状態において生成するハイレベル電圧V
GHが所定値であるものとした。これに対して、
図6の変形例において第1バイアス回路12aは、ハイレベル電圧V
GHを第1端子P1、第2端子P2の電圧V
P1、V
P2に追従可能に構成される(トラッキング機能という)。
【0058】
第1バイアス回路12aは、トラッキング回路20およびレベルシフタ22を含む。
【0059】
トラッキング回路20は、第1端子P1の電圧V
P1と第2端子P2の電圧V
P2に追従するトラッキング電圧V
TRを生成する。試験装置2は、制御信号V
CNTをトラッキング電圧V
TRに応じたハイレベル電圧V
GHと所定のローレベル電圧V
GLの2値にレベルシフトする。
【0060】
図6のレベルシフタ22は、直列に接続されたデプレッション型のPチャンネルトランジスタDMP1、エンハンスメント型のNチャンネルトランジスタEMN1および抵抗R2を含む。トランジスタDMP1のゲートドレイン間は結線される(ダイオード接続)。制御信号V
CNTがハイレベルのときトランジスタEMN1はオンであり、レベルシフタ22の出力すなわち第1トランジスタM1のゲート電圧V
Gは、ローレベル電圧V
GLとなる。制御信号V
CNTがローレベルのとき、トランジスタEMN1はオフであり、レベルシフタ22の出力電圧V
Gは、トラッキング電圧V
TRに応じたハイレベル電圧V
GHとなる。
【0061】
なおレベルシフタ22は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のインバータをはじめとする公知回路であってもよい。
【0062】
トラッキング回路20は、第1ソースフォロア24、第2ソースフォロア26、出力バッファ28を含む。
【0063】
第1ソースフォロア24は、第1端子P1の電圧V
P1に応じた電圧V
P1’を出力する。第1ソースフォロア24は、デプレッション型のNチャンネルトランジスタDMN1、電流源CS1、エンハンスメント型のNチャンネルトランジスタEMP1を含む。トランジスタDMN1のゲートには、第1端子P1の電圧V
P1が入力され、そのソースには、負荷である電流源CS1が接続される。トランジスタEMP1は、電圧V
P1が過電圧となったときにトランジスタDMN1のゲートに大電流が流入するのを防止するための保護トランジスタである。
【0064】
第2ソースフォロア26は、第1ソースフォロア24と同様に構成され、第2端子P2の電圧V
P2に応じた電圧V
P2’を出力する。出力バッファ28は、電圧V
P1’、V
P2’のうち低い方を選択し、選択された電圧に応じたトラッキング電圧V
TRを出力する。たとえば出力バッファ28は、デプレッション型のPチャンネルトランジスタDMP2、DMP3、抵抗R3、R4、電流源CS3を含む。
【0065】
以上が変形例に係る半導体スイッチ10aの構成である。この半導体スイッチ10aによれば、通常動作時におけるハイレベル電圧V
GHが、第1端子P1と第2端子P2それぞれの電圧V
P1、V
P2のうち、低い方に追従して変化する。これにより、第1トランジスタM1のゲートソース間電圧が一定に保たれる領域を拡大でき、したがってオン抵抗が一定となる範囲を広げることができる。
【0066】
(第2変形例)
第1トランジスタM1やその他のトランジスタは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などで構成してもよく、トランジスタの種類は、半導体スイッチに要求される仕様、たとえば通過帯域等に応じて選択すればよい。
【0067】
(用途)
最後に半導体スイッチ10の用途を説明する。半導体スイッチ10は、
図1のピンカード200のスイッチSW1、SW2として好適に利用できる。
【0068】
そのほか、半導体スイッチ10は、複数個を組み合わせることで、セレクタやマルチプレクサを構成できる。
図7(a)、(b)は、半導体スイッチ10を備えるセレクタの回路図である。
図7(a)のセレクタ50aは、1入力N出力であり、第1端子P1が共通の入力端子INに接続された複数N個の半導体スイッチ10_1〜10_Nを備える。複数の半導体スイッチ10_1〜10_Nの第2端子P2は、対応する出力端子OUT1〜OUTNと接続される。
図7(a)には、N=3の、SP3T(Single Pole Triple Throw)のスイッチが示される。本発明はN=2のSPDT(Single Pole Double Throw)や、N=4のSP4Tなどにも適用可能である。
【0069】
図7(b)のセレクタ50bは、N入力1出力であり、第2端子P2が共通の出力端子OUTに接続された複数N個の半導体スイッチ10_1〜10_Nを備える。複数の半導体スイッチ10_1〜10_Nの第1端子P1は、対応する入力端子IN1〜INNと接続される。
図7(b)には、N=3の、DPST(Dual Pole Single Throw)のスイッチが示される。本発明はN=3の3PST(Triple Pole Single Throw)や、N=4の4PSTなどにも適用可能である。
【0070】
図7(a)、(b)のセレクタ50a、50bは、半導体試験装置のピンスイッチに好適に使用できる。
【0071】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。