(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の浴室用床材の平面図であり、
図2は、浴室用床材の1つの凹凸パターン領域の平面図である。
図4乃至
図7は、浴室用床材を厚み方向で切断した端面図であるが、
図7では、より拡大して浴室用床材の層構成を図示し、
図4乃至
図6では、その層構成を図示していない。
なお、本明細書において、「AAA〜BBB」という記載は、「AAA以上BBB以下」を意味する。
【0011】
[浴室用床材の概要]
図1乃至
図6において、浴室用床材1は、床材本体2と、その床材本体2の表面に設けられた複数の凸部3及び凹部4からなる凹凸パターン領域5と、を有する。前記複数の凸部3は、縦横に隣接して配置され、前記複数の凹部4は、隣接する凸部3,3の間に形成されている。
浴室用床材1は、
図2に示す複数の凸部3及び凹部4からなる凹凸パターン領域5を1つのユニットとし、
図1に示すように、そのユニット単位が床材本体2の表面に縦横複数配置されて構成されている。従って、床材本体2の表面には、凹凸パターン領域5の凹凸が縦横に繰り返し形成されている。なお、
図1の一点鎖線で囲んだ部分が、1つの凹凸パターン領域5からなるユニット単位である。
前記凹凸パターン領域5を構成する凸部3及び凹部4の数は、特に限定されず、任意に設定できる。凸部3の数は、例えば、パターン領域が縦横13cm角の平面視正方形状である場合には、16〜256個であり、好ましくは、36〜169個であり、より好ましくは、49個〜100個である。図示例では、パターン領域が縦横10cm角〜20cm角の平面視正方形状で、縦横にそれぞれ8つの凸部3が形成され(計64個の凸部3)、隣接する凸部3,3間にそれぞれ凹部4が形成されている。
本発明の浴室用床材1は、その平面形状が床タイルのように矩形状又は多角形状に形成されていてもよいし、長尺状に形成されていてもよい。床材1が長尺状に形成され且つ後述するように柔軟性を有する場合には、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供される。長尺状の床材1の形状は、特に限定されず、例えば、幅500mm〜3000mmで、長さ1m〜300mの細長長方形などが挙げられる。
【0012】
[床材本体]
床材本体2は、柔軟性を有するものでもよく、容易に曲がらない柔軟性を有さないものでもよい。床材1を簡易に保管・運搬でき、施工時に浴室内に容易に搬入できるようにするため、床材本体2は、ロールに巻き取ることができるような柔軟性を有するシートから形成されていることが好ましい。床材本体2は、非発泡体のみから構成されていてもよいが、発泡体を含むものが好ましい。発泡体を含む床材本体2を有する浴室用床材1は、クッション性に優れ、さらに、浴室床面に膝を付いた際などの痛みを緩和できる上、浴室におけるヒートショックの低減し、温感を高めることもできる。また、一般に浴室内は音が響きやすいが、発泡体を含んでいることにより、洗面器などを床面に落下させた場合でも、衝撃音を抑制できる。特に、床材本体2が発泡体を含むシートの場合、その表面における柔軟性も高くなるため、前記痛みを緩和する効果及び衝撃音の抑制効果も良好となる。
床材本体2がシートから形成されている場合、そのシートの厚みは、例えば、1.5mm〜10mmであり、好ましくは、1.8mm〜7mmである。
床材本体2の層構成は、特に限定されないが、例えば、
図7に示すように、床材本体2は、本体層21と、補強層22と、本体層21の表面側に設けられた表層23と、を有する。必要に応じて、表層23と本体層21の間に、中間層24を設けてもよい。
図示例では、本体層21は、上層211と下層212の2層からなり、上層211と下層212の間に、補強層22が設けられている。また、必要に応じて、前記補強層22に加えて下層212の裏面にさらに別個の補強層を設けてもよい(図示せず)。
【0013】
本体層21は、床材本体2を主として構成する層である。本体層21の形成材料は、特に限定されず、軟質合成樹脂、半硬質合成樹脂、硬質合成樹脂、ゴム、FRPなどが挙げられる。前記軟質、半硬質及び硬質は、JIS K6900(1994)のプラスチック−用語に記載の通りである。好ましくは、本体層21は、柔軟性を有する床材1を構成するために、軟質合成樹脂、半硬質合成樹脂、ゴムなどから形成される。
本体層21は、発泡体又は非発泡体の何れでもよいが、上述のように発泡体を含むことが好ましい。本体層21が、上層211及び下層212のような複層で構成されている場合、そのうちの少なくとも上層211が発泡体からなることが好ましく、全ての層が発泡体からなることがより好ましい。
本体層21が上層211及び下層212のような複層で構成されている場合、それらは、同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。例えば、上層211及び下層212は、合成樹脂を含む層から形成される。上層211及び下層212を形成する樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;オレフィンエラストマー、スチレンエラストマーなどの各種エラストマーなどの熱可塑性樹脂が用いられる。優れた柔軟性を有し、且つ表層23との密着性に優れることから、本体層21の主たる樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
ここで、本明細書で、ある層の主たる樹脂成分とは、層中に含まれる樹脂成分全体に対して(樹脂成分全体を100質量%とした場合)、60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上を占める樹脂を意味する。
【0014】
上層211及び下層212が発泡体からなる場合、それらは同じ発泡倍率でもよいし、異なる発泡倍率でもよい。上層211及び下層212の発泡倍率は、特に限定されないが、通常、それぞれ独立して、1.05倍〜5.0倍であり、好ましくは1.1倍〜3.5倍である。発泡倍率が低すぎると、床材1に十分なクッション性を付与できないおそれがある。発泡倍率が高すぎると、入浴者が乗ったときに凹みやすく、却って使用感が悪くなるおそれがある。
上層211及び下層212の厚みは、特に限定されず、例えば、上層211の厚みは、0.2mm〜1.5mmであり、下層212の厚みは、1.4mm〜2.6mmである。
なお、前記床材1の本体層21は、2層構造に限られず、単一層構造でもよいし、3層以上の複層構造でもよい。
【0015】
前記補強層22は、床材本体2の剛性を高め、且つ床材本体2に寸法安定性を付与するための層である。補強層22は、本体層21が複層構造からなる場合には、通常、上層211と下層212の間のように本体層21の中間に埋設される。本体層21が単一層からなる場合には、補強層22は、本体層21の裏面に設けられる。
補強層22としては、繊維を含んでいれば特に限定されないが、例えば、ガラスマット、ガラスネット、樹脂製マット、樹脂製ネット、無機繊維又は有機繊維からなる不織布又はフェルト、及び、織布などが挙げられる。補強層22に用いられる繊維は、本体層21との接着性が高いものが好ましく、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維を例示できる。特に、強度に優れ且つ寸法変化が小さいことから、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いる場合、10g/m
2〜100g/m
2のガラス繊維織布又は不織布がより好ましい。また、例えば、ポリエステルなどの他の繊維を用いた織布又は不織布の目付量についても、ガラス繊維と同程度の目付量が好ましい。
補強層22の厚みは、通常、0.1mm〜0.4mm程度である。
【0016】
中間層24は、非発泡層からなり、必要に応じて設けられる。中間層24は、前記表層23の表面に現れる凹凸形状が潰れないようにその形状を保持する作用を有する。中間層24は、上記本体層21の欄で例示したような熱可塑性樹脂から形成される。中間層24の主たる樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
中間層24の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05mm〜0.3mmである。
【0017】
表層23は、例えば、樹脂を含む層から形成される。前記樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体などの種々な熱可塑性樹脂;不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物などの不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレートなどのメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレートなどのアクリレートなどの紫外線硬化樹脂;などが挙げられる。耐水性及び柔軟性に優れることから、表層23の樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、さらに、比較的安価で加工し易いことから、塩化ビニル樹脂を用いることがより好ましい。また、表層23の樹脂は、透明又は半透明が好ましい
前記表層23の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.05mm〜0.5mmであり、好ましくは、0.08mm〜0.3mmであり、より好ましくは、0.1mm〜0.2mmである。
なお、表層23の裏面に、装飾のため、印刷層が設けられていてもよい(図示せず)。印刷層は、上層211の表面に(中間層24が設けられている場合にはその表面に)、転写シートを用いて印刷模様を転写する、直接印刷する又は印刷の施された樹脂フィルムを積層するなどの方法によって形成できる。また、印刷層の形成に代えて、表層23又は上層211若しくは中間層24の形成材料に、着色剤などを配合し、表層23又は上層211若しくは中間層24そのものを装飾してもよい。
【0018】
[凹凸パターン領域]
床材本体2の表面に設けられた凹凸パターン領域5は、上述のように複数の凸部3及び凹部4からなる。
この凹凸パターン領域5は、通常、
図1に示すように、床材本体2の表面全体に亘って繰り返し設けられるが、必要に応じて、床材本体2の表面の一部分に、凹凸パターン領域5が設けられていない領域を有していてもよい(図示せず)。凹凸パターン領域5が設けられていない領域における床材本体2の表面は、平坦な面に形成される。
複数の凸部3は、縦方向及び横方向(縦横)に隣接して配置され、隣接する凸部3,3の間に、凹部4が形成されている。なお、凸部3と凹部4は、高低差に基づく相対的な概念である。
【0019】
凸部3は、少なくとも2つの角部を有する平面視形状に形成されている。なお、前記角部は、2つの線が交わって形成される部分をいい、その角部における角度は、鋭角、直角又は鈍角の何れでもよく、また、前記角部は、角取りされている場合を含む。本明細書において、角取りは、前記2つの線が交わる頂点が丸みを有していることであり、その2つの線の延長線は、前記鋭角、直角又は鈍角の何れの角度を為す。
例えば、凸部3は、平面視略正方形状、平面視略長方形状などの平面視略四角形状に形成されている。このような凸部3は、4つの角部を有する平面視形状である。図示例では、凸部3は、平面視略正方形状に形成されている。なお、前記略正方形状や略長方形状とは、厳密な意味での正方形や長方形だけでなく、図示例のように角部が角取りされているもの、特に図示しないが角部が85度〜95度であるものなどを含む意味である。
複数の凸部3の平面視形状は、全て同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、平面視略長方形状の凸部3と平面視略正方形状の凸部3とが混在していてもよい。好ましくは、図示例のように、全ての凸部3は、同じ形状とされており、例えば、平面視略正方形状とされている。なお、本明細書において、平面視は、床材本体2の表面に対して鉛直方向から見ることをいい、平面視形状は、平面視での輪郭をいう。
複数の凸部3は、その平面視形状の大きさが全て同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、比較的大面積の平面視略正方形状の凸部3とそれよりも小面積の平面視略正方形状の凸部3とが混在していてもよい。好ましくは、図示例のように、全ての凸部3は、平面視で、同形同大とされている。なお、本明細書において、「同形同大」は、全く同じ形状及び全く同じ面積という厳格な意味ではなく、当業者において許容される範囲を含む意味である。
複数の凸部3は、縦又は横に等間隔で規則的に配置されていてもよいし、不規則な間隔で配置されていてもよい。好ましくは、図示例のように、複数の凸部3は、縦方向及び横方向に等間隔で規則的に配置される。なお、複数の凸部3が縦横規則的に配置されることにより、隣接する凸部3の間に形成される複数の凹部4の平面視形状は、全て同形同大(平面視細長い長方形状)となる。
各凸部3を同形同大の平面視形状とし、或いは、凹部4を同形同大の平面視形状とすることによって複数の凸部3又は凹部4の形状が均一化されるので、排水性及び防滑性のバラツキが小さい浴室の床を構築できる。よって、本発明の床材1を様々な形状の床施工面上に敷設しても、前記バラツキが小さく、所定水準以上の排水性を有する浴室の床を構築できる。
【0020】
複数の凹部4は連続して排水溝を成しており、この排水溝は、各凸部3を取り囲むように平面視格子状に形成されている。なお、浴室用床材1の裏面を水平面上に載せた状態で、各凹部4の底面の高さは、排水性のバラツキを小さくするために、略同一であることが好ましい。この場合、各凹部4の底面を含む平面は、前記水平面と平行である。前記凹部4の底面は、凹部4の中の最も低い部分である。また、凹部4は、例えば、幅0.5mm〜4mmに形成され、好ましくは、幅1mm〜3mmに形成される。前記凹部4の幅は、隣接する2つの凸部間の形成間隔に相当する。凹部4の幅が小さすぎると、水の流れが悪くなって排水性が低下するおそれがあり、それが大きすぎると、床材本体2の表面に対する凸部3の占める面積割合が相対的に小さくなり、凸部3に起因する防滑性及び排水性が低下するおそれがある。
【0021】
各凸部3は、突出端に略平坦な面を有し、この略平坦な面が凸部3の頂面3aである。
図7に示すように、各凸部3の頂面3aは、その全体が略平坦に形成されている。全体が略平坦状に形成されていることにより、凸部3の頂面3aに付着した水を、頂面3aの傾斜に従い1つの方向に流すことができるので、排水性が向上する。また、各凸部3の頂面3aから凹部4に曲がる部分は角取りされている。前記角取りによって、水が凸部3の頂面3aから凹部4へと流れ易くなる。
凸部3の頂面3aは、少なくとも2つの角部を有する平面視形状に形成されている。前記角部は、上述の凸部3の平面視形状の欄と同じ意味である。各凸部3は、1つの角部における突出高がもう1つの角部における突出高よりも大きい。
例えば、凸部3の頂面3aは、平面視略正方形状、平面視略長方形状などの平面視略四角形状に形成されている。好ましくは、頂面3aの平面視形状は、凸部3の平面視形状と同形同大又は相似形である。
本発明の浴室用床材1においては、前述のように1つの角部における凸部3の突出高がもう1つの角部における凸部3の突出高よりも大きく、前記凹部4の底面を含む平面を基準とした場合に、その基準平面に対して傾斜した傾斜面とされていることを特徴としている。浴室用床材1の裏面を水平面上に載せた状態で、前記各凹部4の底面を含む平面が前記水平面と平行である場合には、各凸部3の頂面3aは、前記水平面に対して傾斜している。前記基準平面は、各凹部4の底面を結んで形成される、観念上の1つの平面をいう。
【0022】
1つの凹凸パターン領域5に含まれる各凸部3は、その頂面3aの傾斜方向が全て同じでもよいが、好ましくは、前記凹凸パターン領域5は、頂面3aの傾斜方向が異なる少なくとも2つの凸部3を含み、より好ましくは、頂面3aの傾斜方向が互いに異なる3つ以上の凸部3を含み、さらに好ましくは、頂面3aの傾斜方向が異なる少なくとも2つの凸部3であって凹部4を挟んで縦方向又は/及び横方向に隣接する少なくとも2つの凸部3を含み、特に好ましくは、頂面3aの傾斜方向が互いに異なる3つ以上の凸部3であって凹部4を挟んで縦方向及び横方向に隣接する3つ以上の凸部3を含むことが好ましい。つまり、1つの凹凸パターン領域5には、頂面3aの傾斜方向が異なる複数の凸部3が形成されていることが好ましい。傾斜方向が異なる複数の凸部3を形成することにより、その床材1を床施工面に敷設した後、凸部3の頂面3aから流れ落ちる水が複数の凹部4に分散するので、排水性が良好となる。また、凸部3の頂面3aと凹部4の底面との間に生じる段差によって足裏へのグリップ性が向上するが、頂面3aの傾斜方向が異なる複数の凸部3を有することによって、床面全体において、防滑性の偏りを少なくでき、防滑
性を向上できる。
各頂面3aの傾斜角度は、適宜設定できるが、余りに小さいと、頂面3aに付着した水が凹部4の方へ流れ難くなり、余りに大きいと、足裏に感じる凹凸感が増し、入浴者に違和感を与えるおそれがある。このような観点から、各頂面3aの傾斜角度は、tan
−1(1/100)度〜tan
−1(10/100)度の範囲が好ましく、tan
−1(2/100)度〜tan
−1(8/100)度の範囲がより好ましく、tan
−1(3/100)度〜tan
−1(7/100)度の範囲がさらに好ましい。なお、頂面3aの傾斜角度は、浴室用床材1の裏面を水平面上に載せた状態で、水平面と頂面3aの成す角度をいう。
【0023】
具体的には、頂面3aが傾斜した凸部3としては、その頂面3aの傾斜方向に従って、例えば、次の(1)乃至(4)に示すような態様が挙げられる。
ただし、第1角部は、平面視略四角形状の凸部3の4つの角部のうちの任意の1つであり、第2角部は、同凸部3の残る3つの角部のうちの任意の1つであり、第3角部は、同凸部3の残る2つの角部のうちの任意の1つであり、第4角部は、同凸部3の残る1つの角部である。前記第1角部と第3角部、及び、第2角部と第4角部は、それぞれ対角線上に位置する角部同士である。第1角部及び第3角部は、それぞれ第2角部及び第4角部の隣り合う角部であり、第2角部及び第4角部は、それぞれ第1角部及び第3角部の隣り合う角部である。
【0024】
(1)1つの対角線上にある2つの角部のうち一方の角部における突出高が最も大きく且つ他方の角部における突出高が最も小さく、さらに、もう1つの対角線上にある2つの角部における突出高が前記最大突出高と最小突出高の中間で且つ同じとなるように傾斜された頂面3aを有する凸部3(以下、このような頂面3aを有する凸部3のグループを第1凸部という)。
このような第1凸部としては、第1角部の突出高が最大で、第3角部の突出高が最小で、第2角部及び第4角部の各突出高がそれらの中間で且つ同じとなるように傾斜された頂面3aを有する凸部3が例示できる。この第1凸部の頂面3aの各角部における突出高は、第1角部の突出高>第2角部の突出高=第4角部の突出高>第3角部の突出高となっている。
第1凸部は、その頂面3aが、第1角部から第3角部の方向に斜め下がりに傾斜している。従って、第1凸部の頂面3aの4つの辺は、何れも水平面に対して平行でない、すなわち、水平面に対して傾斜している。
【0025】
(2)1つの対角線上にある2つの角部のうち一方の角部における突出高が最も大きく且つ他方の角部における突出高が最も小さく、さらに、もう1つの対角線上にある2つの角部における突出高が前記最大突出高と最小突出高の中間で且つ一方の角部における突出高が他方の角部における突出高よりも大きくなるように傾斜された頂面3aを有する凸部3(以下、このような頂面3aを有する凸部3のグループを第2凸部という)。
このような第2凸部としては、第1角部の突出高が最大で、第3角部の突出高が最小で、第2角部及び第4角部の各突出高がそれらの中間で、第2角部の突出高が第4角部の突出高よりも大きく傾斜された頂面3aを有する凸部3が例示できる。この第2凸部の頂面3aの各角部における突出高は、第1角部の突出高>第2角部の突出高>第4角部の突出高>第3角部の突出高となっている。
第2凸部は、その頂面3aが、第1角部から第3角部の方向に斜め下がりに且つ第2角部から第4角部の方向に斜め下がりに傾斜している。従って、第2凸部の頂面3aの4つの辺は、何れも水平面に対して平行でない、すなわち、水平面に対して傾斜している。
【0026】
(3)1つの対角線上にある2つの角部のうち一方の角部における突出高が最も大きく且つ他方の角部における突出高が最も小さく、さらに、もう1つの対角線上にある2つの角部における突出高が前記最大突出高と最小突出高の中間で且つ他方の角部における突出高が一方の角部における突出高よりも大きくなるように傾斜された頂面3aを有する凸部3(以下、このような頂面3aを有する凸部3のグループを第3凸部という)。
このような第3凸部としては、第1角部の突出高が最大で、第3角部の突出高が最小で、第2角部及び第4角部の各突出高がそれらの中間で、第4角部の突出高が第2角部の突出高よりも大きくなるように傾斜された頂面3aを有する凸部3が例示できる。この第2凸部の頂面3aの各角部における突出高は、第1角部の突出高>第4角部の突出高>第2角部の突出高>第3角部の突出高となっている。
第3凸部は、その頂面3aが、第1角部から第3角部の方向に斜め下がりに且つ第4角部から第2角部の方向に斜め下がりに傾斜している。従って、第3凸部の頂面3aの4つの辺は、何れも水平面に対して平行でない、すなわち、水平面に対して傾斜している。
【0027】
(4)隣り合う2つの角部における突出高が最も大きく、且つ残る2つの角部における突出高が最も小さくなるように傾斜された頂面3aを有する凸部3(以下、このような頂面3aを有する凸部3のグループを第4凸部という)。
このような第4凸部としては、第1角部及び第2角部の突出高が最も大きく、且つ第3角部及び第4角部の突出高が最も小さく傾斜された頂面3aを有する凸部3を例示できる。この第3凸部の頂面3aの各角部における突出高は、第1角部の突出高=第2角部の突出高>第3角部の突出高=第4角部の突出高となっている。
第4凸部は、その頂面3aが、第1角部及び第2角部から第3角部及び第4角部の方向に斜め下がりに傾斜している。換言すると、第1角部と第2角部との間の辺から第3角部と第4角部との間の辺の方向に斜め下がりに傾斜している。従って、第4凸部の頂面3aの4つの辺のうち、第1角部と第2角部との間の辺及び第3角部と第4角部との間の辺は、何れも水平面に対して平行であり、第1角部と第4角部との間の辺及び第2角部と第3角部との間の辺は、何れも水平面に対して平行でない、すなわち、水平面に対して傾斜している。
【0028】
なお、上記各グループの凸部3は、上述のように、頂面3aの傾斜方向が同じであるが、例えば、角部の突出高を僅かに変えることによって、頂面3aの傾斜方向が同じで且つ傾斜角度が異なる凸部3を形成できる。各グループの凸部3(第1乃至第4凸部)には、このように頂面3aの傾斜方向が同じで且つ傾斜角度が若干異なる凸部3も含まれる。
【0029】
例えば、
図3は、傾斜方向がそれぞれ異なる傾斜面3aを有する4つの凸部を表した斜視図であり、
図4は、その一部をIV−IV線の位置で厚み方向に切断した端面図である。図中、符号31は第1凸部を、符号32は第2凸部を、符号33は第3凸部を、符号34は第4凸部を示す。また、符号K1は、各凸部の第1角部を、符号K2は、各凸部の第2角部を、符号K3は、各凸部の第3角部を、符号K4は、各凸部の第4角部を示す。
図3において、第1凸部31は、紙面の下を第1角部K1とし、それと対角線の関係にある紙面の上を第3角部K3とし、
図4においては、紙面の左を第1角部K1とし、それと対角線の関係にある紙面の右を第3角部K3としている。第1凸部31は、上述のように、その第1角部K1における突出高h1が、他の角部における突出高よりも大きく、第3角部K3における突出高h3が、他の角部における突出高よりも小さい。また、第1凸部31の第2角部K2及び第4角部K4は、第1角部K1と第3角部K3の中間の高さであって、互いに同じ高さである。
図3において、第2凸部32は、紙面の上を第1角部K1とし、紙面の下を第3角部K3としており、上述のように、第1角部K1の突出高が最も大きく且つ第3角部K3における突出高が最も小さい。また、第2凸部32の第2角部K2及び第4角部K4は、第1角部K1と第3角部K3の中間の高さであって、第2角部K2の方が、第4角部K4よりも突出高が大きい。
図3において、第3凸部33は、紙面の下を第1角部K1とし、それと対角線の関係にある紙面の上を第3角部K3とし、
図4においては、紙面の左を第1角部K1とし、それと対角線の関係にある紙面の右を第3角部K3としている。第3凸部33は、上述のように、その第1角部K1における突出高が、他の角部における突出高よりも大きく、第3角部K3における突出高が、他の角部における突出高よりも小さい。また、第3凸部33の第2角部K2及び第4角部K4は、第1角部K1と第3角部K3の中間の高さであって、第2角部K2の方が、第4角部K4よりも突出高が小さい。
図3において、第4凸部34は、紙面の左を第1角部K1とし、それと対角線の関係にある紙面の右を第3角部K3としている。第4凸部34は、上述のように、その第1角部K1の突出高と第2角部K2の突出高が同じであって、これらの突出高は、第3角部K3及び第4角部K4の各突出高よりも大きい。また、第3角部K3の突出高と第4角部K4の突出高は、同じである。
【0030】
1つの凹凸パターン領域5において、上記第1凸部乃至第4凸部の配置は、ランダムである。
図2に、第1凸部乃至第4凸部の配置を参考的に示すが、各凸部の配置は、これに限定されず、様々に変更できる。
図2において、符号31は第1凸部を、符号32は第2凸部を、符号33は第3凸部を、符号34は第4凸部を示す。また、
図2において、紙面の右上の角部を第1角部とする第1凸部、第2凸部、第3凸部及び第4凸部には、符号「RU」を付し、紙面の右下の角部を第1角部とする第1凸部、第2凸部、第3凸部及び第4凸部には、符号「RD」を付し、紙面の左上の角部を第1角部とする第1凸部、第2凸部、第3凸部及び第4凸部には、符号「LU」を付し、紙面の左下の角部を第1角部とする第1凸部、第2凸部、第3凸部及び第4凸部には、符号「LD」を付している。
【0031】
前記各凸部3の頂面3aの平面視における縦長さ及び横長さは、特に限定されない。例えば、凸部3の平面視における縦長さ及び横長さは、それぞれ独立して、8mm〜30mmに設定され、好ましくは、10mm〜20mmに設定され、より好ましくは、13mm〜18mmに設定される。前記縦長さ及び横長さが大きすぎると、単位面積あたりの角部の数が減少して防滑性が低下するおそれがあり、それらが小さすぎると、相対的に頂面3aの面積が小さくなり、防滑
性が低下するおそれがある。
頂面3aの平面視における縦長さは、その縦方向の長さであり、頂面3aの平面視における横長さは、その横方向の長さであり、縦長さ及び横長さが計測箇所によって異なる場合には、前記縦長さ及び横長さは、その最大長さをいう。
【0032】
前記凸部3の突出高は、特に限定されず、頂面3aの大きさ及び傾斜角度を考慮して適宜設定できる。凸部3の最小突出高は、例えば、0mm〜0.1mmであり、好ましくは、実質的に0mmである。凸部3の最大突出高は、例えば、0.3mm〜3mmであり、好ましくは、0.5mm〜2mmであり、より好ましくは、0.6mm〜1mmである。
前記凸部3の最大突出高が大きすぎると、床材1を製造し難くなり、特にシート状に形成することが困難となり、凸部3の最大突出高が小さすぎると、排水性や防滑性が低下するおそれがある。
また、前記凸部3の最大突出高と最小突出高の差(最大突出高−最小突出高)は、特に限定されないが、好ましくは、0.5mm〜3mmであり、より好ましくは、0.6mm〜1mmである。このような凸部3を形成することにより、1つの角部からもう1つの角部までの突出高の差が比較的大きくなり、傾斜した頂面3aを流れ落ちる水の落差が大きくなり、排水性を高めることができる。また、突出高の大きい角部と凹部が隣接し、且つそれらの高低差も大きくすることが可能となるので、防滑性を向上させることができる。
なお、前記凸部3の最小突出高が0mmの場合は、凸部3と凹部4の底面との間に高低差が存在せず、厳密には突出した部分(凸部)とは言えないが、実施上、僅かに突出した凸部3と凹部4の底面との境界は判別できないので、突出高が0mmの場合も便宜上、凸部3の概念に包含するものとする。
前記凹凸パターン領域5は、例えば、床材本体2をエンボスロールに通すことによって床材本体2の表面に形成できる。
【0033】
上記浴室用床材1は、例えば、浴室の床施工面に施工されて使用される。浴室は、新築又は改築の何れでもよい。なお、通常、浴室用床材1を施工する床施工面は、排水トラップ側に水を流すために僅かな勾配が付与されており、その勾配(傾斜角度)は、例えば、約tan
−1(2/100)度である。
本発明の浴室用床材1は、複数の凸部3の頂面3aが、基準平面(各凹部4の底面を含む平面)に対して傾斜した傾斜面とされているので、この床材1を床施工面に施工することにより、滑り難く、さらに、良好に排水できる床面を構築できる。
【0034】
詳しくは、凸部3の頂面3aが傾斜面とされているので、足裏が各凸部3の頂面3aに接触した際に、足裏が凸部3の最大突出高の部分に強く密着する。つまり、入浴者の体重による荷重が、頂面3aのうち、凸部3の最大突出高の部分に大きく加わる。このため、足裏が凸部3に係合しやすくなり、足裏が滑り難くなる。特に、頂面3aの傾斜方向が異なる少なくとも2つの凸部3をランダムに配置した凹凸パターン領域5を有する浴室用床材1は、凸部3の最大突出高の部分がランダムに生じるので、その部分が規則的に配置されている場合に比して、足裏が凸部3に特に係合しやすくなり、あらゆる方向において足裏の滑りを効果的に防止できる。このような本発明の浴室用床材1は、特に、足腰が弱った高齢者の住宅浴室、介護施設の浴室、病院の浴室などに使用することが効果的である。
【0035】
また、凸部3の頂面3aが傾斜面とされているので、頂面3aに付いた水がその傾斜方向に流れていき易く、凸部3の頂面3aに水が残存することを防止できる。前記頂面3aから流れた水は凹部4(排水溝)を通じて排水トラップから排出される。特に、頂面3aの傾斜方向が異なる少なくとも2つの凸部3をランダムに配置した凹凸パターン領域5を有する浴室用床材1は、頂面3aに付いた水がその傾斜方向に従いランダムに凹部4に流れ落ちる。本発明の浴室用床材1は、前述のように凸部3の頂面3aがランダムに傾斜しているので、改修時によく見受けられる排水勾配の精度が悪い床施工面に施工した場合でも、頂面3aに付いた水が凹部4に流れ落ち易くなる。そして、凹部4に流れる水が排水トラップに達すると、表面張力により凹部4の水が排水トラップへ引き寄せられる。このように凸部3及び凹部4上の水が、良好に排出されるので、浴室用床シート1の上に水滴などの水の塊が残存しにくく、また、凹部4に僅かに存在する水も蒸発し易いので、乾燥性にも優れる。
なお、凸部3の頂面3aが傾斜面とされていることにより、外観上、浴室用床材1の表面に陰影が生じ、立体的で高級感のある浴室の床を構築できる。特に、頂面3aの傾斜方向が異なる少なくとも2つの凸部3をランダムに配置した凹凸パターン領域5を有する浴室用床材1は、前記陰影がランダムに生じるので外観的に優れる上、光の入射角度と一致する方向に傾斜した頂面3aにて光が反射するので、床面の位置を視認し易くなり、安全に歩行することができる。
また、凸部3の頂面3aが傾斜面とされていることにより、凹部4の底面に対する高低差が小さい部分、すなわち、凸部3の最小突出高の部分が生じるので、浴室の床をブラシなどの洗浄具で洗浄する際に、その部分に付着した汚れを簡単に除去できる。
【0036】
なお、上記実施形態では、凸部は、平面視略四角形状に形成されているが、これに限定されず、例えば、平面視略正六角形状などの平面視略六角形状、平面視略正三角形状などの平面視略三角形状などに形成されていてもよい(図示せず)。これらの形状に形成された凸部も、その頂面は傾斜面とされることは上記実施形態と同様である。もっとも、凸部は平面視略四角形状に形成されていることが好ましい。凸部を平面視略四角形状、特に、略正方形状又は略長方形状に形成することにより、複数の凹部が直線状となり全体として格子状の排水溝を形成することができるので、排水性が向上し、さらに、凸部及び凹部を形成するためにエンボス加工を行う際の加工性にも優れる。
【0037】
また、上記実施形態における浴室用床材の凸部3の頂面3aに、無数の微細突起が形成されていてもよい。
図3において、凸部3の頂面3aに付した無数のドットは、前記微細突起を示している。また、必要に応じて、凹部4の表面にも前記微細突起が形成されていてもよい(図示せず)。
この微細突起の突出高は、凸部の最大突出高よりも十分に小さいものであり、例えば、0.01mm〜0.2mmであり、好ましくは0.05mm〜0.15mmである。このような微細突起が形成されていることにより、さらに、防滑性に優れた浴室用床材を構成できる。このような微細突起が形成されていることにより、水の表面張力を弱めて水の接触角を小さくすることができ、水滴など水の塊が残存しにくくなり、排水性及び乾燥性に優れた浴室用床材を構成できる。また、凸部の頂面に形成される微細突起は、摩擦係数を増大させるので、床材の防滑性を向上させる。
さらに、上記実施形態における浴室用床材の凸部の頂面に、撥水処理が施されていてもよい。凸部の頂面に撥水処理を施すことにより、凸部の頂面の水が流れ落ち易くなる。また、上記実施形態における浴室用床材の凹部の表面に、親水処理が施されていてもよい。凹部に親水処理を施すことにより、凸部から凹部に流れた水を排水トラップへ良好に流すことができ、さらに、乾燥性も向上する。