(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306987
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】インクを用いる可変データデジタル印刷システムのための親水性画像化部材の表面材料、および親水性画像化部材の表面材料を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/14 20060101AFI20180326BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20180326BHJP
B41F 7/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
B41N1/14
B41M1/06
B41F7/00
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-178045(P2014-178045)
(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-57323(P2015-57323A)
(43)【公開日】2015年3月26日
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】14/028,330
(32)【優先日】2013年9月16日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ジェイ・ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン・ムーアラグ
【審査官】
村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−096537(JP,A)
【文献】
特開2013−095137(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0019997(US,A1)
【文献】
特開平11−334048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/00−99/00
B41M 1/00
B41F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを用いるデジタル印刷のための画像化部材であって、
再画像作成および切替が可能な親水性の画像化表面を含む画像化部材表面であって、この親水性画像化部材表面はプラズマ酸化された架橋したPDMSを含み、プラズマ酸化された架橋したPDMS画像化部材表面は、プラズマ処理により一時的な期間疎水性状態から切り替わった親水性状態にあり、一時的な期間の後は親水性状態から疎水性状態に戻るように構成されている、画像化部材表面を備える、画像化部材。
【請求項2】
前記画像化部材表面が、さらに、架橋したシリコーンポリマーを含み、このポリマー表面に、架橋したシリコーンの表面を親水性にする親水性基を有する、請求項1に記載の画像化部材。
【請求項3】
前記画像化部材表面が、さらに、共有結合した極性分子または帯電した分子を含む架橋したPDMSを含む、請求項2に記載の画像化部材。
【請求項4】
プラズマ酸化された架橋したPDMS画像化部材表面が、10秒間のプラズマ処理により疎水性状態から切り替わった一時的な親水性状態になっている、請求項1に記載の画像化部材。
【請求項5】
前記画像化部材表面が、さらに、フルオロシリコーンを含む、請求項1に記載の画像化部材。
【請求項6】
フルオロエラストマーコポリマーの2種以上のモノマーのうち、少なくとも1つがフッ化ビニリデン(VDF)である、請求項1に記載の画像化部材。
【請求項7】
プラズマ酸化された架橋したPDMSの水接触角が32°以下である、請求項1に記載の画像化部材。
【請求項8】
インクを用いるデジタル印刷システムであって、
再画像作成および切替が可能な親水性の画像化部材表面を有する画像化部材であって、この親水性画像化部材表面はプラズマ酸化された架橋したPDMSを含み、プラズマ酸化された架橋したPDMS画像化部材表面は、プラズマ処理により一時的な期間疎水性状態から切り替わった親水性状態にあり、一時的な期間の後は親水性状態から疎水性状態に戻るように構成されている、画像化部材と;
前記画像化部材表面に湿し液の層を塗布するための湿し液計量システムと;
湿し液のパターン形成のためのレーザー画像化システムと;
表面にパターン形成された湿し液が配置された前記画像化部材表面にインクを塗布するためのインク付与システムとを備える、インクを用いるデジタル印刷システム。
【請求項9】
前記画像化部材表面の材料が、さらに、二酸化ケイ素、シラノール基、カルボン酸および/またはヒドロキシル基を含む基から選択される露出した基を含む、プラズマ酸化された架橋したPDMSを含む、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項10】
前記画像化部材表面の材料は、さらに、化学修飾された親水性フルオロシリコーンを含む、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項11】
前記画像化部材表面の材料は、さらに、化学修飾された親水性フルオロエラストマーを含む、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項12】
前記画像化部材表面の材料が、さらに、ポリエーテル−エステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタン−ポリエーテルおよびコポリマー混合物から選択される親水性の特徴を有するポリマーを含む、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項13】
前記画像化部材表面の材料が、さらに、プラズマ酸化された架橋したPVMSを含む、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項14】
フルオロエラストマーコポリマーの2種以上のモノマーのうち、少なくとも1つがフッ化ビニリデン(VDF)である、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項15】
プラズマ酸化された架橋したPDMSの水接触角が32°以下である、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【請求項16】
プラズマ酸化された架橋したPDMS画像化部材表面が、10秒間のプラズマ処理により疎水性状態から切り替わった一時的な親水性状態になっている、請求項8に記載のデジタル印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクを用いる可変データデジタル印刷に有用な画像化部材の表面材料に関する。特に、本開示は、画像化部材表面を作製するのに有用な親水性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを用いるデジタル印刷システムは、画像化表面を有する画像化部材(例えば、プレートまたはブランケット)を備えている。画像化表面は、インクを用いる高速の可変データデジタル印刷を可能にするためにある範囲の要求事項を満たさなければならない。関連分野のシステムでは、例えば、画像化表面は、表面を湿し液で濡らし、表面に湿し液を固定するような構成でなければならない。画像化表面は、画像化部材表面に塗布した後に、レーザー画像化システムから光の放射を吸収し、インクを濡らし、インクを固定し、表面からインクを放出するような構成でなければならない。
【0003】
湿し液は、印刷しない領域またはバックグラウンド領域または画像がない領域で、プレートにインクが移るのを防ぐ。印刷する領域は、画像化部材表面のうち、塗布した湿し液の層に放射線をあてた後に、湿し液が蒸発する領域である。印刷しない領域は、画像化部材表面のうち、湿し液が残っており、放射線に露光した区域の外側にある領域である。インクを用いるデジタル印刷に有用であることがわかっている例示的な画像化部材表面材料としては、疎水性ポリマー、例えば、シリコーン、部分的または完全にフッ素化したフルオロシリコーンおよびFKMフルオロエラストマーが挙げられる。上述の画像化部材表面材料を濡らすのに適合し、インクを用いるデジタル印刷に適することがわかっている例示的な湿し液としては、疎水性液、例えば、炭化水素、フルオロカーボン、フルオロエーテル、オルガノシロキサン、フルオロ−オルガノシロキサンが挙げられる。これらの疎水性液を使用することに関する問題は、揮発する液が、環境に排出されない場合があり、または、印刷される物質の上にかなりの量が残らないように防ぐことができない場合があり、この揮発する液の混入および捕捉に関係がある。水は、安価であり、環境に優しいため、揮発した液を再び捕捉したり、印刷物の上の疎水性液を監視したりする必要がないので、オフセット印刷に望ましい湿し液である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
インクを用いるデジタル印刷の画像化部分を作製するのに適していることがわかっている親水性材料は、水または他の親水性材料および/または水溶液を湿し液材料として使用することができるだろう。費用対効果が高く、インクを用いる高品質の高速デジタル印刷を可能にするために、改良されたプレート材料が望ましい。親水性プレート材料を含む、画像化部材表面またはプレート材料、これを作製する方法、およびデジタルオフセット印刷システムが提供される。親水性プレート材料によって、親水性または極性の湿し液または給湿液、例えば、水、エチレングリコールまたは水溶液を使用することができる。実施形態の方法によって、プラズマ酸化によって、疎水性材料から親水性表面を直接作製してもよい。したがって、再書き込み可能なプレート表面が作製されてもよく、酸化された表面は、一時的である。または、プレートは、後酸化による改変によって、永久的に親水性になってもよい。後酸化による改変としては、限定されないが、新しく酸化された表面に、極性分子または帯電した分子を共有結合させ、表面を永久的に親水性にすることを含む。
【0005】
一実施形態では、インクを用いるデジタル印刷の画像化部材は、親水性画像化表面を含む画像化部材表面を備えていてもよい。
【0006】
一実施形態では、インクを用いるデジタル印刷システムは、親水性画像化部材表面を有する画像化部材と;画像化部材表面に湿し液の層を塗布するための湿し液計量システムと;湿し液のパターン形成のためのレーザー画像化システムと;表面にパターン形成された湿し液が配置された画像化部材表面にインクを塗布するためのインク付与システムとを備えていてもよい。
【0007】
一実施形態では、極性または親水性の湿し液を用い、インクを用いるデジタル印刷のための画像化部材を作製するための方法は、疎水性表面材料を酸化することによって、疎水性画像化部材表面材料を親水性画像化部材表面材料に変換することを含んでいてもよい。
【0008】
例示的な実施形態を本明細書に記載する。しかし、本明細書に記載するシステムの特徴を組み込んだ任意のシステムが、例示的な実施形態の範囲および精神に包含されることが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、関連技術のインクを用いるデジタル印刷システムの側面略図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態の画像化部材表面を作製するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施形態は、本明細書に記載する装置およびシステムの精神および範囲に含まれ得るように、あらゆる代替物、改変物、等価物を包含することを意図している。
【0011】
ある量と組み合わせて用いられる「約」という修飾語は、述べられている値を含み、その内容によって示されている意味を有し(例えば、特定の量の測定に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。具体的な値とともに用いられる場合、その値も開示していると考えるべきである。
【0012】
画像化部材表面材料およびこの材料を作製する方法が有用であるような画像化部材を備えるシステムを用いたインクを用いるデジタル印刷のためのシステムを理解しやすいように、図面を参照する。
【0013】
「可変データリソグラフィー印刷」または「インクを用いるデジタル印刷」または「デジタルオフセット印刷」は、基材の上に、画像作成プロセスで基材の上にある画像のそれぞれの後に続くレンダリングを用いて変えることができる画像を製造するための可変データ画像のリソグラフィー印刷である。「可変データリソグラフィー印刷」は、リソグラフィーインクを用いたインク画像のオフセット印刷を含み、画像は、画像ごとに変わり得るのではなく、デジタル画像データに基づく。インクを用いるデジタル印刷は、可変データリソグラフィー印刷システムまたはデジタルオフセット印刷システムを使用する。「可変データリソグラフィーシステム」は、リソグラフィーインクを用い、画像ごとに変えてもよいデジタル画像データに基づくリソグラフィー印刷のために構成されたシステムである。
【0014】
このような系は、Stoweらによって2011年4月27日に出願された米国特許出願第13/095,714号(「714号出願」)、表題「Variable Data Lithography System」に開示され、この開示内容は、本明細書に全体的に参考として組み込まれる。714号出願に開示されたシステムおよび方法は、真に有効な可変のデジタルデータリソグラフィー印刷を達成するための湿し液の可変のパターン形成に由来する、すでに企てられた可変データ画像化リソグラフィーのマーキング概念に関する種々の態様での改良に関する。
【0015】
714号出願は、例えば、
図1に示されるインクを用いるデジタル印刷のための例示的な可変データリソグラフィーシステム100を記載する。
図1に示される例示的なシステム100の一般的な記載をここに与える。
図1の例示的なシステム100に示される個々の要素および/またはサブシステムに関するさらなる詳細は、714号出願の中に見つけられるだろう。
【0016】
図1に示されるように、例示的なシステム100は、画像化部材110を備えていてもよい。画像化部材110は、
図1に示す実施形態ではドラムであるが、この例示的な記載は、画像化部材110が、ドラム、プレートまたはベルト、または別の現在知られていないか、または将来開発される形態を含む実施形態を排除するものであると解釈すべきではない。
【0017】
画像化部材110を使用し、転写爪112で、画像受け入れ媒体基材114にインク画像を塗布する。画像転写機構160の一部としてインプレッションローラー118によって転写爪112が作られ、転写爪112は、画像化部材110の方向に圧力を加える。画像受け入れ媒体基材114は、任意の特定の組成(例えば、紙、プラスチックまたはコンポジットシート膜)に限定されると考えるべきではない。多種多様な画像受け入れ媒体基材の上に画像を製造するために、例示的なシステム100を使用してもよい。714号出願は、顔料密度が10重量%より大きなマーキング材料を含め、使用可能なマーキング(印刷)材料の広い自由度も説明する。714号出願と同様に、本開示は、例示的なシステム100によって塗布され、画像受け入れ媒体基材114の上に出力画像を製造し得るインク、顔料および他の材料であると一般的に理解されるものを含め、広範囲の印刷材料またはマーキング材料を指すために、インクという用語を使用するだろう。
【0018】
714号出願は、構造的に取り付ける層の上に作られる再画像作成可能な表面層で構成される画像化部材110を含め、例えば、円柱形コア、または円柱形コアの上にある1つ以上の構造的な層であってもよい画像化部材110の詳細を図示し、記載する。
【0019】
システム100は、一般的に、画像化部材110の再画像作成可能な表面を湿し液で均一に濡らすための一連のローラーを備える湿し液システム120を含む(湿し液ローラーまたは湿し液ユニットと考えてもよい)。湿し液システム120の目的は、一般的に均一な制御された厚みを有する湿し液の層を、画像化部材110の再画像作成可能な表面に運ぶことである。湿し液システム120は、アニロックス、蒸着、または湿し液の薄層を塗布するための現在知られているか、または将来開発される任意の他のプロセスによって、湿し液を計量するように構成されたシステムを備えていてもよい。
【0020】
上述のように、湿し液(例えば、給湿液)が、主に水を含んでいてもよいことが知られており、以下にかなり詳細に記載されるように、表面張力を下げ、その後のレーザーによるパターン形成を補助するために必要な蒸発エネルギーを下げるために、場合により、少量のイソプロピルアルコールまたはエタノールを加えてもよい。同様に、給湿液に少量の特定の界面活性剤を加えてもよい。または、他の適切な湿し液を用い、インクを用いるデジタルリソグラフィーシステムの性能を高めてもよい。例示的な湿し液としては、水、Novec 7600(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、CAS番号870778−34−0を有する)およびD4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)が挙げられる。他の適切な湿し液が、一例として、同時係属中の2011年10月28日に出願された米国特許出願第13/284,114号、表題「Dampening Fluid For Digital Lithographic Pringint」に開示されており、その開示内容は、本明細書に全体的に参考として組み込まれる。
【0021】
画像化部材110の再画像作成可能な表面で湿し液を計量したら、湿し液の厚みを、センサー125を用いて測定してもよく、センサー125が、湿し液システム120によって、画像化部材110の再画像作成可能な表面の上にある湿し液の計量を制御するためのフィードバックを与えてもよい。
【0022】
湿し液システム120によって、画像化部材110の再画像作成可能な表面上に正確で均一な量の湿し液が与えられた後、光によってパターン形成するサブシステム130を使用し、例えば、レーザーエネルギーを用い、湿し液の層を画像になるようにパターン形成することによって、均一な湿し液の層に潜像を選択的に作成してもよい。典型的には、湿し液は、光学エネルギー(IRまたは可視光)を効果的に吸収しないだろう。画像化部材110の再画像作成可能な表面は、理想的には、湿し液の加熱によるエネルギーの無駄使いを最小限にし、高い空間解像能を維持するために、熱の横方向への広がりを最小限にするため、表面付近で、光によってパターン形成するサブシステム130から放出されるレーザーエネルギー(可視光または不可視光、例えば、IR)のほとんどを吸収すべきである。または、入射光レーザーエネルギーの吸収を助けるために、適切な放射線感受性要素を湿し液に加えてもよい。光によってパターン形成するサブシステム130を、レーザーエミッターとして上に記載したが、湿し液をパターン形成するために光学エネルギーを運ぶために、さまざまな異なるシステムを使用してもよいことを理解すべきである。
【0023】
例示的なシステム100の光によってパターン形成するサブシステム130によって行われるパターン形成プロセスで操作中の機構を、714号出願の
図5を参照して詳細に記載する。簡単に言うと、光によってパターン形成するサブシステム130からの光学パターン形成エネルギーの適用によって、湿し液の層の一部を選択的に除去する。
【0024】
光によってパターン形成するサブシステム130によって湿し液の層をパターン形成した後、画像化部材110の再画像作成可能な表面の上のパターン形成された層は、インク付与サブシステム140に送り出される。インク付与サブシステム140を使用し、湿し液の層の上と、画像化部材110の再画像作成可能な表面の上に均一なインク層を塗布する。インク付与サブシステム140は、画像化部材110の再画像作成可能な表面の層と接触する1つ以上のインク作製ローラーの上にあるオフセットリソグラフィーインクを計量するために、アニロックスローラーを使用してもよい。別個に、インク付与サブシステム140は、再画像作成可能な表面にインクを正確な供給速度で与えるために、他の従来の要素(例えば、一連の計量ローラー)を備えていてもよい。インク付与サブシステム140は、再画像作成可能な表面のうち、画像が作成された部分をあらわすポケットにインクを堆積させつつ、湿し液が初期化されていない部分にあるインクが、これらの部分に付着しないようにしてもよい。
【0025】
画像化部材110の再画像作成可能な層に残留するインクの凝集性および粘度を、多くの機構によって変えてもよい。あるこのような機構は、レオロジー(複素粘弾性)を制御するサブシステム150の使用を含んでいてもよい。レオロジーを制御するシステム150は、例えば、再画像作成可能な表面層に対するインクの結合強度を上げるために、再画像作成可能な表面に部分的に架橋するインクのコアを作製してもよい。硬化機構は、光学的な硬化または光硬化、熱硬化、乾燥または化学的に硬化させる種々の形態を含んでいてもよい。複数の物理的な冷却機構によって、また、化学的な冷却によって、冷却を利用してレオロジーを変えてもよい。
【0026】
次いで、インクを、転写サブシステム160を用い、画像化部材110の再画像作成可能な表面から、画像受け入れ媒体の基材114に転写する。基材114が、画像化部材110とインプレッションローラー118の間にある爪112を通過するにつれて転写が起こり、画像化部材110の再画像作成可能な表面の空洞内にあるインクが基材114と物理的に接触する。レオロジーを制御するシステム150によって改質されたインクが付着すると、インクの付着を変えることによって、インクが基材114に接着し、画像化部材110の再画像作成可能な表面から分離する。転写爪112での温度条件および圧力条件を注意深く制御することによって、画像化部材110の再画像作成可能な表面から基材114へのインク転写効率を95%より高くすることができるだろう。ある程度の湿し液が、基材114を濡らしてもよいが、このような湿し液の体積は最小限であり、すばやく蒸発するか、または基材114によって吸収されるだろう。
【0027】
特定のオフセットリソグラフィーシステムでは、オフセットローラー(
図1に示していない)が、まず、インク画像のパターンを受け入れ、次いで、インク画像のパターンを、既知の間接的な転写方法によって基材に転写してもよいことを理解すべきである。
【0028】
大部分のインクを基材114に転写した後、任意の残留インクおよび/または残留する湿し液は、好ましくは、表面を傷つけたり、摩耗したりすることなく、画像化部材110の再画像作成可能な表面から除去されなければならない。残留する湿し液を除去するために、エアナイフを使用してもよい。しかし、ある程度の量のインク残留物が残っていてもよいことが予想される。このような残ったインク残留物の除去は、ある形態の洗浄サブシステム170を使用することによって達成されてもよい。714号出願は、少なくとも第1の洗浄部材(例えば、画像化部材110の再画像作成可能な表面と物理的に接触する粘着性または接着性の部材、残留するインクおよび任意の残った少量の界面活性剤化合物を、画像化部材110の再画像作成可能な表面の湿し液から除去する粘着性または接着性の部材)を備えるこのような洗浄サブシステム170の詳細を記載する。次いで、粘着性または接着性の部材を、平滑なローラーと接触させ、このローラーに、粘着性または接着性の部材から残留するインクが移動してもよく、その後、例えば、ドクターブレードによって、平滑なローラーからインクを剥がしてもよい。
【0029】
714号出願は、画像化部材110の再画像作成可能な表面の洗浄を促進し得る他の機構の詳細を示す。しかし、洗浄機構にかかわらず、画像化部材110の再画像作成可能な表面からの残留するインクおよび湿し液の洗浄は、提案されているシステムでの印刷剥がれを防止するのに必須である。洗浄したら、画像化部材110の再画像作成可能な表面を、再び湿し液システム120に送り、これによって、画像化部材110の再画像作成可能な表面に新しい湿し液の層を供給し、このプロセスを繰り返す。
【0030】
画像化部材の再画像作成可能な表面は、特に、ポリマー系エラストマー、例えば、シリコーンゴム、および/またはフルオロシリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含んでいてもよい。再画像作成可能な表面は、取り付ける層の上にある比較的薄い層から作られてもよく、この比較的薄い層の厚みは、印刷性能またはマーキング性能、耐久性および製造可能性のバランスを保つように選択される。
【0031】
「シリコーン」という用語は、当該技術分野で十分に理解されており、ケイ素原子および酸素原子から作られる骨格と、炭素原子および水素原子を含む側鎖とを有するポリオルガノシロキサンを指す。本出願の目的のために、「シリコーン」という用語は、フッ素原子を含有するシロキサンを除外するものとも理解すべきであり、一方、「フルオロシリコーン」という用語は、フッ素原子を含有するシロキサン群を包含するために用いられる。シリコーンゴム中に、他の原子(例えば、架橋中にシロキサン鎖を結合するために用いられるアミン基中の窒素原子)が存在していてもよい。ポリオルガノシロキサンの側鎖は、アルキルまたはアリールであってもよい。
【0032】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、完全に飽和した炭素原子と水素原子から完全に構成される基を指す。アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状の鎖を含んでいてもよい。例えば、直鎖アルキルラジカルは、一般的に、式−C
nH
2n+1を有する。
【0033】
「アリール」という用語は、完全に炭素原子と水素原子で構成される芳香族基を指す。アリールが、ある数値範囲の炭素原子と組み合わせて記述される場合、置換芳香族基を含むと解釈されるべきではない。
【0034】
実施形態の画像化部材表面およびインクを用いるデジタル印刷システムは、例えば、デジタルオフセット印刷プロセスで水または水性給湿液の使用を可能にする親水性画像化部材表面材料を備えている。特に、一実施形態のインクを用いるデジタル印刷システムは、親水性画像化表面を含む。任意の適切な親水性組成物を使用し、実施形態の画像化部材表面を作製してもよい。例えば、親水性の特徴を有するポリマーとしては、合成ゴム、例えば、ポリエーテル−エステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタン−ポリエーテルおよびコポリマー混合物を挙げることができる。PDMSまたはポリ(ビニルメチル)シロキサン(PVMS)の酸素プラズマ酸化を行い、親水性表面を得てもよい。架橋可能なシリコーン表面(例えば、PVMS)を、表面を親水性にするために、アミン、水酸化物、エーテル、イオン、酸または塩を含むある範囲の親水性官能基を含む反応性要素と反応させてもよい。好ましい実施形態では、酸化されたPDMSを用い、親水性である画像化部材表面を作製する。
【0035】
実施形態の方法は、画像化部材表面材料を形成する有機ポリマーの表面部分(例えば、
図1に示すような画像化プレート表面)に親水性基を作ることによって、画像化部材表面材料を作製することを含んでいてもよい。例えば、PDMSの酸化によって、ポリマーの表面部分に親水性シリコーンジオキシドおよびシラノール基を作る。
【0036】
親水性画像化部材またはプレート材料によって、湿し液または給湿液として水、エチレングリコールまたは他の水溶液を使用することができる。例えば、水およびエチレングリコールは安価であり、容易に入手可能であり、環境に優しい湿し液の選択肢である。オフセット印刷のために構成された水性湿し液は、市販されており、オフセットインクとともに使用するように特定的に設計されている。水は、適切な非水性湿し液、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンの気化熱(44kJ/mol)に匹敵する気化熱(例えば、40.65kJ/mol)を有する。実施形態にしたがい、例えば、プラズマ酸化によって、疎水性画像化部材表面材料を親水性表面材料に変換してもよい。
【0037】
一例として、PDMSまたはジメチコーンは、シロキサンファミリーの鉱物−有機ポリマー(炭素、ケイ素および酸素を含む構造)であり、架橋したPDMSを作製するための要素は、容易に入手可能である。PDMSの化学式は、CH
3[Si(CH
3)
2O]
nSi(CH
3)
3であり、ここで、nは、繰り返しモノマーSiO(CH
3)
2]単位の数である。PDMSは、以下の構造式を有する。
【化1】
【0038】
架橋した後、PDMSは、疎水性エラストマーになる。極性溶媒(例えば、水)を使用し、架橋したPDMSで作られる表面を濡らしたら、溶媒は、ビーズ状になる傾向があり、広がらず、水は、インクを遮断するための湿し液として有効ではない。プラズマを使用してPDMSを酸化することによって、PDMSの表面化学を変え、シラノール末端および/または二酸化ケイ素末端を製造し、表面を親水性にしてもよい。したがって、プラズマ酸化は、PDMS表面およびPDMSで作られる材料表面を、親水性溶液または溶媒で濡れるように変えることができる。大気中の空気によるプラズマおよびアルゴンプラズマを典型的にはプラズマ酸化に用いる。いくつかの実施形態では、プラズマ酸化された架橋したPDMSは、限定されないが、二酸化ケイ素、シラノール基、カルボン酸および/またはヒドロキシル基を含む露出した基または表面基を有していてもよい。
【実施例】
【0039】
市販の(Dow Corning Corporation)塩基と硬化剤の2成分系を用い、架橋したPDMSを製造し、それぞれ10対1の比率で混合した。Harrick Plasma Cleaner/Sterilizer(PDC−32Gモデル)を用い、PDMS表面の酸化を達成した。
【0040】
接触角(CA)の測定によって、PDMSを10秒間プラズマ酸化したとき、疎水性表面から親水性表面への切り替わりを確認した。接触角は、液体界面が固体界面と出会う角度である。接触角は、表面疎水性の基準であり、これを使用し、表面の濡れ性を決定してもよい。接触角の測定値を表1に示す。
【表1】
【0041】
フルオロエラストマーおよびフルオロシリコーンのプラズマ酸化によって、水およびエチレングリコールによって濡れた親水性表面も製造した。
【0042】
ハンドローラー印刷試験を用い、インクを用いるデジタル印刷システムを特性決定した。試験は、先端に綿が付いた棒を用い、画像化プレートに湿し液を縞状に配置し、ハンドローラーにインクを付け、回転させて画像化プレートにインクを付与することからなっていた。次いで、プレートと接触する紙の背面に圧力を加えるために、第2のきれいなローラーを用い、インクをプレートから紙に移した。プレート材料が親水性湿し液で濡れ、湿し液が塗布された画像化しない領域を得る能力を調べるために、この試験を実施した。プレートから紙に転写されるインクの転写効率を特性決定するために、最初の転写の後に続けて、転写を行った。
【0043】
オフセット印刷に用いられ得る組成を有し、当該技術分野でよく知られていることがわかっているポリエステルアクリレートUV硬化性インクを用い、ハンドロールによる印刷試験から結果を得た。試験したプレート材料は、(a)酸化されていないPDMSシリコーンと、(b)酸化されたPDMSシリコーンとを含んでいた。試験した湿し液は、(a)水と;(b)エチレングリコール(EG)と;(c)オクタメチルシクロテトラシロキサンとを含んでいた。結果は、オクタメチルシクロテトラシロキサンの機能によって、酸化していない(疎水性)シリコーンプレートの上に、UV−硬化性インクが画像化していない領域が得られることを示した。シリコーンに対してオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いる欠点は、プレート材料の寸法を変えてしまうプレート−湿し液の相互作用である。湿し液として使用するとき、水は、酸化されていないシリコーン表面を塗らさず、従って、UV硬化性インク存在下、画像化のために働くことはできない。さらに、エチレングリコールは、酸化されていないシリコーンプレート表面を濡らさず、UV硬化性インク存在下、画像化について機能を発揮しなかった。シリコーンプレートをプラズマ処理によって酸化させると、オクタメチルシクロテトラシロキサン、水およびエチレングリコールは、表面を濡らし、表面の画像化は、UV硬化性インクの塗布を用いて効果的に実施されるだろう。エチレングリコールおよび水の混合物(50:50、bp 約110℃;90:10、bp 約145℃)も、プラズマ酸化されたシリコーンを有効に濡らし、インクの遮断には、90:10混合物が非常に効果的であった。
【0044】
酸化されたシリコーンプレートと、(a)水;(b)エチレングリコール;および(c)Siltech Corporationから得た2% SILSURF水溶液を含む湿し液とを用い、ポリエステルアクリレートUV硬化性インクを用いたハンドロールによる印刷試験から、結果を得た。3種類の湿し液(水、エチレングリコールおよび2% SILSURF水溶液)それぞれが、酸化されたシリコーンプレートを濡らした。2% SILSURF水溶液およびエチレンは、画像化していない領域にバックグラウンドが存在することなく、画像化するUV硬化性インクで特に有効であることがわかった。
【0045】
フルオロシリコーンに対し、ポリエステルアクリレートUV硬化性インクを用いたハンドロールによる印刷試験から、以下のプレート材料を用いて結果を得た。(a)酸化されていないフルオロシリコーンおよび(b)酸化されたフルオロシリコーン。湿し液は、(a)水と、(b)2% SILSURF水溶液を含む酸化されたフルオロシリコーンとを含んでいた。水が、酸化されていないフルオロシリコーン表面を濡らさず、画像に対し、塗布されたインク層の機能を発揮しないことがわかった。水が、酸化されたフルオロシリコーンを濡らし、画像のインクを部分的に濡らすことがわかった。2% SILSURF水溶液は、酸化されたフルオロシリコーンを濡らし、塗布されたインク層の塗布を用い、画像を得る機能を発揮することがわかった。
【0046】
実施形態の画像化部材表面材料およびこのような材料を製造するための方法は、例えば、極性または親水性の湿し液を使用することが可能なデジタルオフセット印刷プレートを作製するのに有用である。親水性画像化部材表面材料が、インクおよび極性給湿液を用いた画像化部材表面またはプレートの十分な濡れを促進することがわかった。
【0047】
実施形態の画像化部材表面は、安価で市販され、堅牢性の高い材料から作られてもよい親水性プレート材料を含む。このようなプレートを、安価で環境に優しい極性給湿液(例えば、水、グリコール、例えば、エチレングリコール、アルコールまたは界面活性剤水溶液)とともに使用してもよい。
【0048】
親水性表面を有する画像化部材を作製するための方法は、疎水性画像化部材表面を親水性画像化部材表面に変換することを含んでいてもよい。例えば、
図2は、S2001で、濡らし、レーザー露光し、インク付与するのに適した疎水性画像化部材の表面材料ポリマーを与えることを含む、親水性画像化部材を作製する方法を示す。例えば、材料は、画像化部材表面を構築するように作られるシリコーンであってもよい。または、材料は、例えば、アルキルまたはアリールポリマー、フルオロシリコーンまたはフルオロエラストマーであってもよい。
【0049】
方法は、S2005で、疎水性ポリマー材料を、水性浸し液とともに用いるのに適した親水性プレート材料に変換することを含んでいてもよい。例えば、方法は、S2001で与えられる材料をプラズマ酸化によって処理し、材料ポリマーの表面に親水性末端基を作製することを含んでいてもよい。方法において、極性分子または帯電した分子をポリマー表面に共有結合させることによって、永久的に変換を行ってもよい。
【0050】
上述の開示された特徴および機能、および他の特徴および機能、またはその代替物を、望ましくは多くの他の異なるシステムまたは用途と組み合わせてもよいことが理解されるだろう。さらに、その後、当業者によって、種々の現時点では予測されていないか、または予期されていない代替物、改変物、等価物が作られてもよい。