特許第6306988号(P6306988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6306988
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】搬送ユニットおよび成形装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 11/00 20060101AFI20180326BHJP
   C03B 35/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C03B11/00 C
   C03B35/00
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-182281(P2014-182281)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-56045(P2016-56045A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】福山 聡
(72)【発明者】
【氏名】松月 功
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−270846(JP,A)
【文献】 特開2009−120470(JP,A)
【文献】 特開2010−159170(JP,A)
【文献】 特開昭62−027336(JP,A)
【文献】 特開昭62−288119(JP,A)
【文献】 特表2004−517023(JP,A)
【文献】 特開平09−235125(JP,A)
【文献】 特開2000−239024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 11/00 − 11/16
C03B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形材を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材に設けられ、前記被成形材を接触加熱する加熱部と、を有し、
前記搬送部材は、前記被成形材を搬送するための載置部を有し、
前記載置部が凹部で構成されており、
前記搬送部材は、前記加熱部と、前記加熱部からの熱を遮断する断熱部と、を備えており、
前記凹部が、前記加熱部に設けられていることを特徴とする搬送ユニット。
【請求項2】
前記搬送部材は、
前記被成形材を搬送可能に保持する保持状態と、
前記被成形材の成形を行う金型に前記被成形材を供給する保持解除状態と、
を有するように複数に分割されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ユニット。
【請求項3】
複数に分割されている前記搬送部材のそれぞれの温度を測定する温度センサを有することを特徴とする請求項2に記載の搬送ユニット。
【請求項4】
前記搬送部材は、前記被成形材を成形温度より高い所定の温度まで加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の搬送ユニット。
【請求項5】
前記搬送部材は、前記被成形材を前記載置部に載置したときに、前記被成形材を調芯する調芯機能を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の搬送ユニット。
【請求項6】
前記凹部は、前記被成形材の少なくとも一部が表面接触するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の搬送ユニット。
【請求項7】
前記被成形材は球状に形成されており、
前記凹部の底面は、前記被成形材の半径と等しい曲率半径を有し、前記被成形材の表面の一部接触するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の搬送ユニット。
【請求項8】
記凹部の深さは、前記被成形材の外径よりも長く形成されていることを特徴とする請求項〜請求項7のいずれか1項に記載の搬送ユニット。
【請求項9】
求項〜請求項8のいずれか1項に記載の搬送ユニットで搬送された前記被成形材を成形する成形ユニットを有することを特徴とする成形装置
【請求項10】
前記成形ユニットの一つに対して前記搬送ユニットが複数設けられていることを特徴とする請求項9に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ユニットおよび成形装置に係り、特に、被成形材を搬送ユニットで加熱するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス素材を加熱炉等によって予備加熱し、この予備加熱されたガラス素材を、金型を用いて成形するガラス成形方法が知られている(たとえば、特許文献1〜特許文献8参照)。
【0003】
また、特許文献4(段落[0024]、[0026]、[0027]、図7等)、特許文献5(段落[0034]、[0035]、図3等)、特許文献6(段落[0020]、[0035]、[0036]、図3等)には、割型式浮上皿を用い、ガスによりガラス素材を浮上させて加熱炉内で予備加熱して搬送し、割型式浮上皿を離反させてガラス素材を金型に供給するものが示されている。
【0004】
また、特許文献8(段落[0025]、[0041]、[0042])には、加熱された窒素ガス(不活性ガス)を搬送アームの先端から吹き出すことでガラス素材を加熱しつつ搬送し、金型に供給するものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−024862号公報
【特許文献2】特開平06−048753号公報
【特許文献3】特開昭62−027334号公報
【特許文献4】特開平11−029333号公報
【特許文献5】特開2001−010829号公報
【特許文献6】特開2003−321228号公報
【特許文献7】特開2000−128551号公報
【特許文献8】特開2003−048724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のものでは、加熱炉の雰囲気中でガラス素材を加熱したり、ガスを用いてガラス素材を加熱しているので、予備加熱に要する時間が長いという問題がある。
【0007】
たとえば、特許文献5、特許文献6では、搬送のためのバケットを、別途設けられているヒータで所定時間予備加熱をしているので、ガラス素材を所定の温度まで予備加熱するのに要する時間が長くなってしまう。
【0008】
また、特許文献8では、不活性ガスとガラス素材との間の熱の移動量は非常に小さいので、ガラス素材を所定の温度まで予備加熱するのに要する時間が長くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス素材を短時間で効率良く予備加熱することができる搬送ユニットおよびこの搬送ユニットを用いた成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、被成形材を搬送する搬送部材と、前記搬送部材に設けられ、前記被成形材を接触加熱する加熱部と、を有し、前記搬送部材は、前記被成形材を搬送するための載置部を有し、前記載置部が凹部で構成されており、前記搬送部材は、前記加熱部と、前記加熱部からの熱を遮断する断熱部と、を備えており、前記凹部が、前記加熱部に設けられている搬送ユニットである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記搬送部材は、前記被成形材を搬送可能に保持する保持状態と、前記被成形材の成形を行う金型に前記被成形材を供給する保持解除状態と、を有するように複数に分割されている請求項1に記載の搬送ユニットである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、複数に分割されている前記搬送部材のそれぞれの温度を測定する温度センサを有する請求項2に記載の搬送ユニットである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記搬送部材は、前記被成形材を成形温度より高い所定の温度まで加熱するように構成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の搬送ユニットである。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記搬送部材は、前記被成形材を前記載置部に載置したときに、前記被成形材を調芯する調芯機能を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の搬送ユニットである。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記凹部は、前記被成形材の少なくとも一部が表面接触するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の搬送ユニットである。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記被成形材は球状に形成されており、前記凹部の底面は、前記被成形材の半径と等しい曲率半径を有し、前記被成形材の表面の一部に接触するように構成されている請求項〜請求項のいずれか1項に記載の搬送ユニットである。
【0019】
請求項に記載の発明は、前記凹部の深さは、前記被成形材の外径よりも長く形成されている請求項〜請求項のいずれか1項に記載の搬送ユニットである。
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の搬送ユニットで搬送された前記被成形材を成形する成形ユニットを有する成形装置である。
【0021】
請求項10に記載の発明は、前記成形ユニットの一つに対して前記搬送ユニットが複数設けられている請求項に記載の成形装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被成形材を短時間で効率良く予備加熱することができる搬送ユニットおよびこの搬送ユニットを用いた成形装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る成形装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る成形装置の搬送ユニットの要部を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る成形装置の成形ユニットのヒートサイクルを示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る成形装置の概略構成を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る成形装置の搬送ユニットの要部を示す平面図である。
図6図5におけるVI―VI断面を示す図である。
図7図6における状態から搬送部材が開いた状態を示す図である。
図8】変形例に係る搬送ユニットの要部を示す図である。
図9】試験結果を示す図である。
図10】変形例に係る搬送ユニットの要部を示す図である。
図11】変形例に係る搬送ユニットの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る成形装置1は、図1で示すように、ガラス素材3等の被成形材を加熱して成形し、レンズ等の成形品を製造するものであり、成形ユニット5、搬送ユニット(搬送装置)7、ガラス素材供給ユニット37、排出ユニット(図示せず)などで構成されている。
【0025】
搬送ユニット7によって成形ユニット5に供給されたガラス素材3が、成形ユニット5で成形され、この成形されたガラス素材(レンズ等の被成形品)が、図示しない排出ユニットによって成形ユニット5から搬出(排出)されるようになっている。
【0026】
搬送ユニット7は、搬送部材9などで構成されている。搬送部材9には、図2で示すように、加熱部11が設けられている。そして、搬送ユニット7は、ガラス素材3を搬送しているときに加熱部11によってガラス素材3を接触加熱するように構成されている。
【0027】
さらに説明すると、搬送ユニット7は、供給された常温のガラス素材3を、搬送部材9で保持し加熱部11で加熱しつつ所定距離を搬送するようになっている。搬送し終えたガラス素材3は、上述したように、成形ユニット5によって所定の形状に成形されるようになっている。また、搬送し終えたときのガラス素材3の温度は、成形ユニット5での成形に必要な温度になっている。
【0028】
加熱部(ヒータ)11は、たとえば、熱伝導性に優れた材料(たとえば、窒化アルミニウム等のセラミックスやカーボン)内に発熱体である電熱線(図示せず)が埋め込まれているヒータ(たとえば、窒化アルミヒータ)で構成されている。そして、ガラス素材3がヒータ(窒化アルミニウム)11に接触している状態で加熱されるようになっている。すなわち、ガラス素材3がヒータ11によって接触加熱されるようになっている。なお、電熱線が窒化アルミニウムから突出している等して、ガラス素材3が電熱線に直接接触して加熱されるように構成されていてもよい。
【0029】
また、ガラス素材3は、加熱部11からの熱伝導の他、対流(ガラス素材3のまわりの窒素ガス等の気体であって加熱部11で加熱された気体の対流)、および、加熱部11からの熱の輻射によっても加熱されるようになっている。
【0030】
また、搬送部材9は、たとえば、第1の搬送部材9A、第2の搬送部材9Bという具合で、複数に分割されている。これらの分割されている第1、第2の搬送部材9A,9B同士が保持状態にあるときに、ガラス素材3が搬送のために保持されるように構成されている。保持状態では、たとえば、第1、第2の搬送部材9A,9B同士が接触状態(図2に示すようにお互いが接触して閉じた状態)にある。なお、ガラス素材3が搬送のために保持されるのであれば、第1、第2の搬送部材9A,9B同士がお互いに接触しておらず接近状態であってもよい。すなわち、第1、第2の搬送部材9A,9B同士が僅か、または、ガラス素材3が落ちない程度に離れていてもよい。
【0031】
また、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bが保持解除状態(分離状態)にあるときに、ガラス素材3の保持が解除されるように構成されている。排出状態では、たとえば、第1、第2の搬送部材9A,9Bが分離状態(ガラス素材3が落ちる幅以上に互いに開いた状態)になっている。
【0032】
ガラス素材3の保持が解除されることで、ガラス素材3が搬送部材9から離れ(たとえば、落下し)成形ユニット5に供給されるようになっている。
【0033】
搬送部材9は、ガラス素材3を搬送しているときにガラス素材3をこの成形温度より高い所定の温度まで加熱するように構成されている。すなわち、搬送ユニット7に供給された常温のガラス素材3を搬送部材9で保持し加熱部11で加熱しつつ所定距離を搬送し、この搬送をし終えたときのガラス素材3の温度が、ガラス素材3の成形温度よりも高く、たとえば、溶融温度よりも低くなっている。
【0034】
また、搬送部材9は、ガラス素材3を載置して搬送するように構成されており、ガラス素材3の載置部21が凹部で構成されている。また、搬送部材9は、断熱部23、加熱部11などで構成されており、載置部(凹部)21は、加熱部11に設けられている。
【0035】
また、凹部21の深さは、ガラス素材3の外径よりも長く形成されている。すなわち、凹部21は、搬送部材9の上面から下方に向かって凹んだ形状になっており、搬送部材9にガラス素材3が載置されたときには、ガラス素材3が凹部21内に入り込み、少なくとも底面に接触することでガラス素材3が、搬送部材9の上面から上方に突出しないようになっている。
【0036】
加熱部11は、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bのそれぞれに設けられている。すなわち、第1の搬送部材9Aには、第1の加熱部(第1のヒータ)11Aが設けられており、第2の搬送部材9Bには、第2の加熱部(第2のヒータ)11Bが設けられている。
【0037】
ヒータ11の出力密度は、1000W/cm以上(たとえば、1000W/cm〜2000W/cm、もしくは、1000W/cm〜5000W/cm、もしくは、1000W/cm〜10000W/cm)であることが望ましい。すなわち、高密度・高出力ヒータが採用されることが望ましい。
【0038】
温度センサ15は、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bのそれぞれに設けられている。すなわち、第1の搬送部材9Aには、第1の加熱部11Aの温度を測定する第1の温度センサ15Aが設けられており、第2の搬送部材9Bには、第2の加熱部11Bの温度を測定する第2の温度センサ15Bが設けられている。第1、第2の温度センサ15A,15Bは、たとえば、熱電対で構成されており、窒化アルミニウム内に埋め込まれている。
【0039】
温調部17は、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bのそれぞれに対応させて設けられている。すなわち、第1の搬送部材9Aを加熱する第1の加熱部11Aに対応させて第1の温調部17Aが設けられており、第2の搬送部材9Bを加熱する第2の加熱部11Bに対応させて第2の温調部17Bが設けられている。
【0040】
ヒータ出力調整部19は、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bのそれぞれに対応させて設けられている。すなわち、第1の搬送部材9Aを加熱する第1の加熱部11Aに対応させて第1のヒータ出力調整部19Aが設けられており、第1のヒータ出力調整部19Aは、第1の温度センサ15Aの測定結果に応じた第1の温調部17Aの出力によって、第1の加熱部11Aの温度を調整するように構成されている。また、第2の搬送部材9Bを加熱する第2の加熱部11Bに対応させて第2のヒータ出力調整部19Bが設けられており、第2のヒータ出力調整部19Bは、第2の温度センサ15Bの測定結果に応じた第2の温調部17Bの出力によって、第2の加熱部11Bの温度を調整するように構成されている。
【0041】
成形ユニット5は、搬送部材9で加熱され搬送されてきたガラス素材3を、上金型25Aと下金型25Bとで構成される金型25を用いて成形するようになっている。
【0042】
搬送ユニット7から成形ユニット5へのガラス素材3の受け渡しは、上金型25Aが下金型25Bから離れている状態で、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bを開き、ガラス素材3を下金型25Bの上に落下させることでなされる。
【0043】
成形ユニット5は、枠体27を備えており、枠体27の外周には仕切り壁が設けられており、枠体27の内側の空間(仕切り壁内の空間;二点鎖線L1で囲まれた空間)28内は窒素ガスN等の不活性ガスで満たされている。
【0044】
枠体27内の下方には、下金型支持体29が設けられており、下金型25Bは、下金型支持体29の上端に設置されている。枠状の枠体27内の上方には、上金型支持体31が設けられており、上金型25Aは、上金型支持体31の下端に設置されている。これにより、上金型25Aと下金型25Bとは上下方向で対向している。
【0045】
また、下金型支持体29は、駆動モータ33等のアクチュエータで駆動する下プレス駆動機構34を有している。これにより、下金型25Bは、上金型25Aの下方で、上下方向で移動自在になっており、上金型25Aに対して接近しもしくは離反する方向で移動自在になっている。なお、下金型25Bを上下方向で移動することに代えてもしくは加えて上金型25Aを上下方向で移動するように構成してもよい。
【0046】
また、成形ユニット5には、金型加熱部35が設けられている。金型加熱部35は、筒状に形成されている。金型加熱部35は、常態では、上金型25Aの上方に位置しているが、金型25でガラス素材3を成形するときには、図1に二点鎖線で示す位置まで下降し、上金型25Aと下金型25Bとを覆って、金型25とガラス素材3とを成形のために加熱するようになっている。
【0047】
搬送ユニット7は、枠体27内に設置されている。搬送部材9(9A,9B)は、下金型25Bの真上の位置(下金型25Bが下降端に位置しているときに下金型25Bと上金型25Aとの間に形成される空間)と、下金型25Bの真上の位置から所定の距離だけ離れた位置との間を、枠体27内で水平方向に移動自在になっている。
【0048】
上述した下金型25Bの真上の位置から所定の距離だけ離れた位置(ガラス素材3を受け取るガラス素材受け取り位置)の上部には、ガラス素材供給ユニット37が設けられている。
【0049】
ガラス素材供給ユニット37は、ガラス素材設置管39、ゲート弁41などで構成されている。ゲート弁41は、ガラス素材受け取り位置の真上に位置する枠体27仕切り壁の部位に設けられており、ガラス素材設置管39は、ゲート弁41のところから、枠体27仕切り壁の外側で上方に延出している。
【0050】
そして、搬送部材9がガラス素材受け取り位置にあるときにゲート弁41が開くことで、ガラス素材3が搬送部材9に供給されるようになっている。
【0051】
搬送部材9についてさらに詳しく説明する。搬送部材9は、上述したように、断熱部23、加熱部11などで構成されている。断熱部23には、円柱状等の柱状の貫通孔が上下方向で貫通して設けられている。加熱部11は、断熱部23の貫通孔に嵌り込んでいる。また、搬送部材9の加熱部11には、円柱状等の柱状であり上方が開口している凹部(載置部)21が形成されている。また、凹部21の上端部には、ガラス素材3が凹部21に入るときにガラス素材3をガイドする第1の傾斜面(第1の面取り)51Aおよび第2の傾斜面(第2の面取り)51Bで構成される傾斜面(面取り)51が形成されている。
【0052】
また、搬送部材9が、この中心を含み上下方向に展開している平面で2つに分割されていることで、第1の搬送部材9Aと第2の搬送部材9Bとが生成されている。これにより、断熱部23も、たとえば、第1の断熱部23A、第2の断熱部23Bという具合で、複数に分割されている。
【0053】
なお、ガラス素材3は、たとえば、球状に形成されており、搬送部材9の凹部21は円柱状に形成されており、凹部21の内径は、ガラス素材3の直径よりも僅かに大きくなっており、凹部21の深さの値は、ガラス素材3の直径の値よりも大きくなっている。そして、ガラス素材3が搬送部材9に保持されている状態では、ガラス素材3が、凹部21に入り込み凹部21の少なくとも底面に接触している。
【0054】
なお、凹部21の底面は、ガラス素材3の半径よりも曲率半径が大きい球面(下方に凹んだ球面)の一部で構成されているが、平面で構成されていてもよい。また、凹部21の形状が、四角柱等の柱状であってもよい。また、断熱部23の一部が、加熱部11の下面を覆っていてもよい。
【0055】
第1の搬送部材9Aと第2の搬送部材9Bとは、リニアガイドベアリングを介して支持材43に支持されている。支持材43は、枠体27に一体的に設けられているベース部材45に、リニアガイドベアリングを介して支持されている。また、支持材43は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータにより、下金型25Bの真上の位置(金型25へのガラス素材供給位置)とガラス素材受け取り位置との間を、水平方向で移動するようになっている。
【0056】
第1の搬送部材9Aと第2の搬送部材9Bとは、図示しない空気圧シリンダ等のアクチュエータと、リンク機構やカム機構等を用いた同期機構とにより、お互いが同期して水平方向に移動するようになっている。
【0057】
そして、第1の搬送部材9Aと第2の搬送部材9Bとのそれぞれが、図2に示す保持状態(接触状態、接近状態)と、分離状態との間を移動するようになっている。分離状態では、図2に示す状態から、第1の搬送部材9Aが所定の距離だけ左側に移動し、第2の搬送部材9Bが第1の搬送部材9Aと同じ所定の距離だけ右側に移動し、搬送部材9からガラス素材3か落下するようになっている。なお、第1の搬送部材9Aまたは第2の搬送部材9Bの一方が支持材43に対して移動することで、保持状態と分離状態とが生成されるようになっていてもよい。
【0058】
次に、成形装置1の動作について説明する。
【0059】
成形装置1は、図示しない制御部(CPUを備えている制御装置)の制御の下、制御装置のメモリに予め格納されているプログラムにしたがって次の動作をする。
【0060】
まず、初期状態として、枠体27の内側が不活性ガスで満たされており、ゲート弁41が閉じており、ガラス素材設置管39内には、複数個のガラス素材3が上下方向で重なって入っており、図3で示す時刻tm0で金型25の温度がTH1になっており、下金型25Bが下降して、下金型25Bと上金型25Aとの間には空間が存在しており、金型加熱部35は上昇しオフしており、各搬送部材9A,9Bは閉じて、ガラス素材受け取り位置に位置しており、加熱部11はオフしている。
【0061】
上記初期状態において、図示しないスタートスイッチが押されると、ゲート弁41が開かれ、搬送部材9の凹部21内に1つのガラス素材3が供給される。
【0062】
この後、ゲート弁41を閉じるとともに、加熱部11をオンして搬送部材9でガラス素材3を加熱しながら搬送部材9をガラス素材受け取り位置からガラス素材供給位置(下金型25Bの真上の位置)に移動する。このとき、ガラス素材3は、図3の破線で示すように、成形温度TH2よりも高い温度TH3になっている。このように、ガラス素材3を成形温度TH2よりも高い温度TH3に加熱するのが望ましいが、ガラス素材3の加熱温度は、成形温度TH2と同等、あるいは、成形温度TH2よりも少し低い温度であってもよい。
【0063】
続いて、各搬送部材9A,9Bを開き、ガラス素材3を落下させて下金型25Bに供給し、各搬送部材9A,9Bを閉じて、加熱部11をオフし、搬送部材9をガラス素材供給位置(下金型25Bの真上の位置)からガラス素材受け取り位置へ移動する。なお、下金型25Bに供給されたガラス素材3から下金型25Bに熱量が移動することで、下金型25Bに供給されたガラス素材3の温度は、成形がされるまでの間に下降する。
【0064】
搬送部材9の移動を開始し、搬送部材9が金型加熱部35と干渉しない位置まで移動した直後に、金型加熱部35を下降し、金型加熱部35をオンし金型25とガラス素材3の加熱を開始する。この時の時刻は図3で示すtm1である。金型25とガラス素材3との加熱を時刻tm2まで行い、金型25とガラス素材3が成形温度TH2になったとき、時刻tm2と時刻tm3との間で、金型25を用いガラス素材3を成形する。
【0065】
時刻tm3が到来したとき、金型加熱部35を上昇し金型加熱部35を停止する。
【0066】
時刻tm4が到来し、金型25とガラス素材3の温度がTH1になったとき、図示しない排出ユニットで成形されたガラス素材3を排出し上記初期状態に戻る。
【0067】
なお、温度TH1は、成形されたガラス素材3を変形させることなく取り出せる温度である。また、上記動作において、加熱部11や金型加熱部35を常にオンしておいてもよい。
【0068】
成形装置1によれば、搬送部材9の加熱部11によってガラス素材3を接触加熱するように構成されているので、不活性ガスを吹き付けることなく、ガラス素材3が加熱部11からの熱伝導等によって効率良く加熱され、ガラス素材3を短時間で効率良く予備加熱することができる。たとえば、加熱部11により、直径が4mmのガラス素材3であれば、数秒で600℃まで加熱可能になっている。
【0069】
そして、ガラス素材3の加熱に要する電力の消費量を低減することができ、成形ユニット5での成形のタクトタイムを短くすることができる。
【0070】
なお、特許文献8で示すものでは、高温の不活性ガスを大量にガラス素材の周囲に放散させるので、バケット周辺の温度が高温になり、これを抑制するために冷却機構が必要になり、また、不活性ガスの温度を安定させることが困難であり、高温の不活性ガスを供給する手段が複雑になり、さらに、高温の不活性ガスでは、周囲の温度で加熱効果が異なり、再現性に乏しくなるという問題がある。しかし、成形装置1では、ガラス素材3が加熱部11に接触して加熱されるので、上述した問題の発生を回避することができる。
【0071】
また、特許文献5、特許文献6等で示すものでは、搬送のためのバケットを別途用意されたヒータ上に所定時間設置することで加熱しているが、バケットをヒータから離脱させた瞬間からガラス素材の冷却が始まり、成形ユニットの金型にガラス素材が供給されたときのガラス素材の温度が正確に把握できず、成形品質が低下するおそれがあるという問題がある。
【0072】
しかし、成形装置1では、搬送部材9(9A,9B)が複数に分割されており、搬送ユニット7から成形ユニット5へのガラス素材3の受け渡しが、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9Bを開きガラス素材3を僅かな距離落下させて下金型25Bの上に載置することでなされるので、受け渡しに要する時間が短くなっており、これにより、成形ユニット5の金型25に供給されたときのガラス素材3の温度が正確なものになる。また、下金型25Bの正確な位置にガラス素材3を供給することができる。
【0073】
さらに、大口径レンズを成形で製作する場合、特許文献5、特許文献6等で示すものでは、ガラス素材の温度が上昇するまで長い時間を要してしまう。これに対して、成形装置1では、ガラス素材3が加熱部11に接触して加熱されるので、ガラス素材3の加熱時間を短くすることができ、大口径レンズの成形におけるタクトタイムを短くし、生産性を向上させることができる。
【0074】
また、成形装置1によれば、分割されている第1、第2の搬送部材9A,9B(第1、第2の加熱部11A,11B)のそれぞれの温度を測定する温度センサ15(15A,15B)が設けられているので、ガラス素材3の加熱温度を正確な温度にすることができ、成形品質が向上する。
【0075】
また、成形装置1によれば、搬送部材9がガラス素材3をこの成形温度より高い所定の温度まで加熱するように構成されているので、搬送ユニット7から成形ユニット5への受け渡しにより、ガラス素材3の温度がごく僅かに下がって成形温度になり、成形ユニット5での成形を直ちに開始することができ、成形のタクトタイムを短くすることができる。
【0076】
また、成形装置1によれば、搬送部材9がガラス素材3を載置して搬送するように構成されており、ガラス素材3の載置部21が凹部で構成されているので、簡素な構成で安定してガラス素材3を保持することができる。
【0077】
また、成形装置1によれば、載置部21が加熱部11に設けられているので、加熱部11からガラス素材3への熱の伝達がさらに一層促進される。
【0078】
また、成形装置1によれば、載置部21の深さがガラス素材3の外径よりも長く形成されているので、搬送部材9でガラス素材3を保持しているとき、ガラス素材3が載置部21内に完全に入り込み、ガラス素材3を万遍なく均一に加熱することができる。このように構成されていても、搬送部材9が分割されているので、ガラス素材3の搬送部材9から成形ユニット5への受け渡しは、しやすくなっている。
【0079】
また、成形装置1では、金型25の温度が、図3で示すようなヒートサイクルで変化し、温度TH1も高い温度になっている。この高い温度TH1の金型25にいきなり常温のガラス素材3を供給すると、ガラス素材3に割れ等の不具合が発生する。しかし、成形装置1によれば、搬送ユニット7でガラス素材3を予備加熱してから金型25に供給するので、上記不具合の発生を無くすことができる。
【0080】
図2に示すものでは、載置部(凹部)21の底面が、球状のガラス素材3の半径よりも大きい曲率半径を持つ球面の一部で構成されており、ガラス素材3が、載置部21の底面と側面とに点接触している。ここで、図8(a)で示すように、載置部(凹部)21の底面を、球状のガラス素材3の半径と等しい曲率半径を持つ半球面で構成し、載置部(凹部)21に設置されたガラス素材3の少なくとも一部(たとえば、下側の半面)が、加熱部11に表面接触するように構成されていてもよい。
【0081】
これにより、加熱部11からガラス素材3への熱の伝達が一層促進され、加熱に要する時間を一層短くすることができる。
【0082】
さらに、図8(b)で示すように、載置部(凹部)21の底面に、ガラス素材3の半径よりも小さい曲率半径の穴部53を設けてもよい。その際、載置部(凹部)21内のガラス素材3が、前記穴部53の開口部の縁に接触するように保持してもよい。これにより、載置部(凹部)21内のガラス素材3がふらついたり、ずれたりすることがなくなり、載置部(凹部)21に対するガラス素材3の位置が安定する。載置部(凹部)21の中心軸と前記穴部53の中心軸とはお互いに一致している。
【0083】
また、前記穴部53は貫通していてもよい。
【0084】
なお、凹部21の底面をガラス素材3の半径よりも曲率半径が大きい球面の一部で形成したり(図2参照)、凹部21の底面を球状のガラス素材3の半径と等しい曲率半径を持つ球面の一部で構成したり(図8(a)参照)、凹部21の底面にガラス素材3の半径よりも小さい曲率半径の穴部53を設ける(図8(b)参照)ことで、ガラス素材3を載置したときに搬送部材9に対してガラス素材3の位置を調芯する調芯機能を搬送部材9が有するのである。
【0085】
ところで、成形装置1において、搬送ユニット7によるガラス素材3の加熱および搬送に要するタクトタイムが、成形ユニット5でのガラス素材3の成形に要するタクトタイムがよりも長い場合、成形ユニット5におけるあそび時間(被稼働時間;アイドルタイム)が発生することを防止するために、1つの成形ユニット5に対して搬送ユニット7を複数設けてもよい。
【0086】
このように構成した場合、各搬送ユニット7におけるガラス素材3の搬送開始位置はお互いに異なっているが、搬送終了位置はお互いが一致しているものとする。
【0087】
さらに説明すると、搬送ユニット7からガラス素材3への熱流量を定量的に推測(解析)することで、搬送ユニット7での搬送によるガラス素材3の昇温に要する(加熱に要する)時間を特定し、この特定した昇温時間に応じて、成形ユニット5におけるあそび時間を無くすために、搬送ユニット7の数を調整することが望ましい。
【0088】
このように、成形ユニット5の一つに対して搬送ユニット7を複数設ければ、ガラス素材3の加熱時間が長くても、成形ユニット5におけるガラス素材3の成形タクトを短くすることができる。
【0089】
また、上記説明では、1つの搬送ユニット7に1つの凹部21を設け、1つの凹部21で1つのガラス素材3を保持しているが、1つの凹部21で複数のガラス素材3を保持してこれらの複数のガラス素材3を1つの下金型25Bに供給するように構成してもよい。
【0090】
さらに、図10(a)で示すように、1つの搬送ユニット7に複数の凹部21を設け、これらの凹部21のそれぞれでガラス素材3を保持し、これらのガラス素材3のそれぞれを、複数の下金型25Bのそれぞれに供給するように構成してもよい。
【0091】
図10(a)で示す搬送ユニット7は、凹部21を構成する複数の貫通孔を備えた搬送ユニット本体部47、この搬送ユニット本体部47の貫通孔の底を塞ぐ搬送ユニット底板部49などで構成されている。そして、図10(b)で示すように、搬送ユニット底板部49を水平方向にずらすことで、ガラス素材3を落下させ、下金型25Bに供給するように構成されている。
【0092】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る成形装置1aは、ガラス素材供給ユニット37aの構成が異なっている点、下金型支持体29の代わりに上金型支持体31が移動するように構成されている点が本発明の第1の実施形態に係る成形装置1と異なり、その他の点は、本発明の第1の実施形態に係る成形装置1とほぼ同様に構成されている。
【0093】
本発明の第2の実施形態に係る成形装置1aは、図4に示すように、成形ユニット5、搬送ユニット7、ガラス素材供給ユニット37a、排出ユニット55などで構成されている。なお、図4等において、第1の実施形態に係る成形装置1と同様に構成されているものには、同じ符号を付すことにする。
【0094】
上金型支持体31は、駆動モータ33A等のアクチュエータで駆動する上プレス駆動機構34Aを有している。これにより、上金型25Aは、下金型25Bの上方で、上下方向で移動自在になっており、下金型25Bに対して接近しもしくは離反する方向で移動自在になっている。
【0095】
金型加熱部(金型加熱ユニット)35は、前記金型25を加熱時に覆う中空部材91(例えば、筒状の石英管など)と、前記金型25を加熱する熱源93(例えば、赤外線ランプなど)と、前記熱源93からの熱を効率よく前記金型25へ反射する反射材95などにより構成されている。
【0096】
ガラス素材供給ユニット37aは、ガラス素材ストッカ57、搬入ロボット59、搬入側ロードロック室構成材61、ガラス素材吸着ユニット63、搬入ステージ65などで構成されている。
【0097】
ガラス素材ストッカ57は、複数のガラス素材3を載置できるようになっている。搬入ロボット59は、ガラス素材3を真空吸着等によって保持し、ガラス素材3を水平方向で搬送することができるようになっている。
【0098】
搬入側ロードロック室構成材61は、第1の空気圧シリンダ67等のアクチュエータにより上下方向で移動自在になっている。そして、搬入側ロードロック室構成材61が下降しているときに、密閉された搬入側ロードロック室69が形成され、搬入側ロードロック室構成材61が上昇しているときに、搬入側ロードロック室69が開放されるようになっている。
【0099】
ガラス素材吸着ユニット63は、ガラス素材3を真空吸着等によって保持し、第2の空気圧シリンダ71等のアクチュエータにより、ガラス素材3を上下方向に搬送することができるようになっている。
【0100】
搬入ステージ65は、ガラス素材3を載置できるようになっているとともに、第3の空気圧シリンダ73等のアクチュエータで上下方向に移動自在になっている。そして、搬入ステージ65が下降しているときに、搬入側ロードロック室69と成形ユニット5の空間28とがお互いにつながり、搬入ステージ65が上昇しているときに、搬入側ロードロック室69と成形ユニット5の空間28とが、搬入ステージ65で遮断されるようになっている。
【0101】
排出ユニット55は、第1の搬出ロボット75、搬出ステージ77、搬出側ロードロック室構成材79、第2の搬出ロボット(図示せず)、成形品ストッカ(図示せず)などで構成されている。
【0102】
第1の搬出ロボット75は、ガラス素材3から成形された成形品81を真空吸着等によって保持し、成形品81を水平方向で搬送することができるようになっている。
【0103】
搬出側ロードロック室構成材79は、第4の空気圧シリンダ83等のアクチュエータにより上下方向で移動自在になっている。そして、搬出側ロードロック室構成材79が下降しているときに、密閉された搬出側ロードロック室85が形成され、搬出側ロードロック室構成材79が上昇しているときに、搬出側ロードロック室85が開放されるようになっている。
【0104】
搬出ステージ77は、成形品81を載置できるようになっているとともに、第5の空気圧シリンダ87等のアクチュエータにより上下方向に移動自在になっている。そして、搬出ステージ77が下降しているときに、搬出側ロードロック室85と成形ユニット5の空間28とがお互いにつながり、搬出ステージ77が上昇しているときに、搬出側ロードロック室85と成形ユニット5の空間28とが、搬出ステージ77で遮断されるようになっている。
【0105】
図示しない第2の搬出ロボットは、成形品81を真空吸着等によって保持し、成形品81を水平方向で搬送することができるようになっている。図示しない成形品ストッカは、複数の成形品81を載置できるようになっている。
【0106】
搬送ユニット7には、第1の実施形態に係る成形装置1の場合と同様にして搬送部材9(凹部21)が2つ設けられている。
【0107】
図5は本発明の第2の実施形態に係る成形装置の搬送ユニットの要部を示す平面図、図6図5におけるVI―VI断面を示す図、図7図6における状態から搬送部材が開いた状態を示す図である。なお、図5図7において、第1の実施形態に係る成形装置1と同様に構成されているものには、同じ符号を付すことにする。
【0108】
搬送ユニット7は、2つの搬送部材9などで構成されている。そして、各搬送部材9は、例えば、第1の搬送部材9Aと、第2の搬送部材2Bとに分割されている。
【0109】
第1の搬送部材9Aは、図5図6に示すように、第1の加熱部11Aと、この第1の加熱部11Aの外側に一体的に設けられた第1の発熱部89Aと、この第1の発熱部89Aの、第1の加熱部11Aと反対側に一体的に設けられた第1の断熱部23Aとで構成されている。また、第2の搬送部材9Bは、図5図6に示すように、第2の加熱部11Bと、この第2の加熱部11Bの外側に一体的に設けられた第2の発熱部89Bと、この第2の発熱部89Aの、第2の加熱部11Bと反対側に一体的に設けられた第2の断熱部23Bとで構成されている。なお、発熱部89は、第1の発熱部89Aと、第2の発熱部89Bとで構成されている。
【0110】
これにより、搬送ユニット7によるガラス素材3の加熱および搬送に要するタクトタイムが、成形ユニット5でのガラス素材3の成形に要するタクトタイムより長くても、成形ユニット5におけるあそび時間(被稼働時間;アイドルタイム)が発生することを防止するようになっている。
【0111】
成形装置1aの搬送ユニット7について、さらに説明する。
【0112】
搬送ユニット7の加熱部11を構成するヒータの発熱部89(第1、第2の発熱部89A,89B)として、12mm×12mm×5mmの矩形な平板状のものを使用している。最大出力は、1枚で1kWである。発熱部89(第1、第2の発熱部89A,89B)自体は、2秒で常温から650℃になる。
【0113】
ガラス素材3を搬送する搬送部材9も図4図7で示すように極力小型化してある。これにより、最大投入電力密度(加熱エネルギー密度)として1.4kW/cmを実現している。
【0114】
搬送ユニット7を用いて昇温テストを実施した。結果を図9に示す。発熱部89、搬送部材9、ガラス素材3の3箇所の温度をφ0.25mmのシース熱電対で同時に測定した。
【0115】
なお、φ6mmのガラス素材(L−BAL35)3の温度を測定することは難しいので、ガラス素材3と同等な熱容量を備えたSUS304の円柱を代用した。両者の熱容量は11.0×10−5J/K°である。
【0116】
図9に線図G1で示すものはヒータの発熱部89の温度変化であり、図9に線図G2で示すものは搬送部材9の温度変化であり、図9に線図G3で示すものはSUS304の円柱の温度変化であり、図9に線図G4で示すものはG1とG3との差の変化を示している。
【0117】
図9から理解されるように、ヒータ自体は、10秒で80℃から650℃まで昇温されているが(線図G1参照)、搬送部材(搬送バケット)9は、80℃から650℃まで昇温されるのに20秒を要し(線図G2参照)、ガラス素材(SUS304の円柱)は、80℃から650℃まで昇温されるのに、20秒よりもさらに長い60秒を要している(線図G3参照)。
【0118】
以上の結果から、ガラス素材3の加熱時間として60秒以上、たとえば、80秒を確保すべく2セットのヒータユニットおよびガラス素材3を2個保持(収容)できる搬送部材9を採用している。
【0119】
次に、ガラス素材供給ユニット37aの動作を説明する。
【0120】
初期状態として、搬入側ロードロック室構成材61が上昇しており、搬入ステージ65が上昇しているものとする。また、搬送ユニット7の搬送部材9は、図4で示すようにストロークの中間位置に位置しているものとする。
【0121】
上記初期状態において、搬入ロボット59で、ガラス素材ストッカ57上の1つのガラス素材3をピックアップし、搬入ステージ65まで搬送し、搬入ステージ65上に設置する。
【0122】
続いて、搬入側ロードロック室構成材61を下降して搬入側ロードロック室69を形成し、搬入側ロードロック室69内を窒素置換しつつ、ガラス素材吸着ユニット63でガラス素材3を吸着する。
【0123】
続いて、搬入ステージ65を下降し、搬送ユニット7の搬送部材9を図4の左側に移動し、ガラス素材吸着ユニット63を下降した後、ガラス素材吸着ユニット63によるガラス素材3の吸着を解除し、搬送ユニット7の搬送部材9の凹部21内にガラス素材3を供給する。なお、搬送部材9の凹部21内のガラス素材3は、前述したように成形ユニット5による成形のために加熱されつつ搬送される。
【0124】
続いて、ガラス素材供給ユニット37aでは、ガラス素材吸着ユニット63が上昇し、搬入ステージ65が上昇し、搬入側ロードロック室構成61が上昇し、初期状態に戻り、別の1つのガラス素材3の搬送が繰り返される。
【0125】
次に、排出ユニット55の動作を説明する。
【0126】
初期状態として、ガラス素材3から成形された成形品81が下金型25Bに載置されており、搬出側ロードロック室構成材79が下降していることで、内部を窒素ガスで満たされた搬出側ロードロック室85が形成されており、搬出ステージ77が下降しているものとする。
【0127】
上記初期状態において、第1の搬出ロボット75で、下金型25Bに載置されている成形品81をピックアップし、搬出ステージ77まで搬送し、搬出ステージ77上に置く。
【0128】
続いて、搬出ステージ77を上昇して搬出側ロードロック室85を形成し、この後、搬出側ロードロック室構成材79が上昇する。
【0129】
続いて、図示しない第2の搬出ロボットで、搬出ステージ77上の成形品81を図示しない成形品ストッカまで搬送する。
【0130】
続いて、搬出側ロードロック室構成材79を下降して搬出側ロードロック室85を形成し、搬出側ロードロック室85内を窒素置換し搬出ステージ77を下降して上記初期状態に戻り、別の成形品81の搬送が繰り返される。
【0131】
図2に示した搬送部材9は、加熱部11(第1の加熱部11A、第2の加熱部11B)が発熱部と、素材保持部材とを兼ねている。図5図7に示した搬送部材9は、加熱部11(第1の加熱部11A、第2の加熱部11B)が素材保持部材を兼ね、発熱部89(第1の発熱部89A、第2の発熱部89B)が加熱部11(第1の加熱部11A、第2の加熱部11B)と別体とされている。そして、素材保持部材としての加熱部11(第1の加熱部11A、第2の加熱部11B)は、熱伝導性の良い材料で構成されている。
【0132】
そこで、図11に示すように、素材保持部材として機能する、熱伝導性の良い材料で構成されている加熱部11(第1の加熱部11A、第2の加熱部11B)内に、発熱部89(第1の発熱部89A、第2の発熱部89B)を封入(埋設)させて搬送部材9(第1の搬送部材9A、第2の搬送部材9B)としても、図2図5図7に示した搬送部材9と同様に機能させることができる。
【符号の説明】
【0133】
1 成形装置
3 被成形材
5 成形ユニット
7 搬送ユニット
9 搬送部材
9A 第1の搬送部材
9B 第2の搬送部材
11 加熱部
11A 第1の加熱部
11B 第2の加熱部
15 温度センサ
15A 第1の温度センサ
15B 第2の温度センサ
21 載置部
23 断熱部
23A 第1の断熱部
23B 第2の断熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11