特許第6307002号(P6307002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307002
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】地盤削孔方法及び地盤削孔装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 6/00 20060101AFI20180326BHJP
   E21B 7/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   E21B6/00
   E21B7/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-210667(P2014-210667)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-79631(P2016-79631A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一也
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康成
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 保幸
(72)【発明者】
【氏名】西岡 和則
(72)【発明者】
【氏名】横尾 敦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 孝
(72)【発明者】
【氏名】十川 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 大介
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−188176(JP,A)
【文献】 特開2004−036204(JP,A)
【文献】 特開2003−239672(JP,A)
【文献】 特開昭60−141987(JP,A)
【文献】 特開2014−077286(JP,A)
【文献】 特開平10−311193(JP,A)
【文献】 特開2005−163434(JP,A)
【文献】 米国特許第05050688(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0137874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削岩装置を利用した地盤削孔方法において、
前記削岩装置は、ガイドシェル上を移動可能に設けられた削岩機に着脱自在に取り付けられるシャンクロッドと、前記シャンクロッドに対して回転力を付与する油圧式回転機構と、前記シャンクロッドに対して打撃力を付与する油圧式打撃機構と、を備え、
前記削岩装置の前記シャンクロッドに、第1のビットを有する第1のロッドを接続した後に、前記油圧式回転機構から付与される回転力と前記油圧式打撃機構から付与される打撃力とにより前記第1のビットを駆動することによって、前記地盤に第1の長孔を形成する工程と、
前記削岩装置の前記シャンクロッドに、第2のビットを有すると共に前記第2のビットに打撃力を付与する水圧式打撃機構が先端に配置された中空構造の第2のロッドを接続した後に、前記油圧式回転機構から付与される回転力と前記水圧式打撃機構から付与される打撃力とにより前記第2のビットを駆動することによって、前記地盤に前記第1の長孔よりも深い第2の長孔を形成する工程と、を有する地盤削孔方法。
【請求項2】
前記第2のロッドの外径は、前記第1のロッドの外径よりも大きい、請求項1に記載の地盤削孔方法。
【請求項3】
前記地盤に第2の長孔を形成する工程では、
前記削岩機に、前記シャンクロッドとして取り付けられる第2のシャンクロッドを取り付け、
前記第2のシャンクロッドに形成されたネジ部に、第2の連結部の一端側を螺合し、
前記第2の連結部の他端側に、前記第2のロッドに形成されたネジ部を螺合し、
前記第2のシャンクロッドにおけるネジ部のネジ径は、前記第2のロッドにおけるネジ部のネジ径以上である、請求項1又は2に記載の地盤削孔方法。
【請求項4】
前記削岩機に前記シャンクロッドとして取り付けられる第2のシャンクロッドの外径は、前記削岩機に前記シャンクロッドとして取り付けられる第1のシャンクロッドの外径よりも大きい、請求項1〜3の何れか一項に記載の地盤削孔方法。
【請求項5】
前記第2の長孔を形成する工程を実施した後に前記第1の長孔を形成する工程を複数回実施する、請求項1〜4の何れか一項に記載の地盤削孔方法。
【請求項6】
地盤に長孔を削孔する地盤削孔装置において、
ガイドシェル上を移動可能に設けられた削岩機に着脱自在に取り付けられるシャンクロッドと、
前記シャンクロッドに対して回転力を付与する油圧式回転機構と、
前記シャンクロッドに対して打撃力を付与する油圧式打撃機構と、を備え、
前記シャンクロッドに、第1のビットを有する第1のロッドを接続した第1の態様と、
前記シャンクロッドに、第2のビットを有すると共に前記第2のビットに打撃力を付与する水圧式打撃機構が先端に配置された中空構造の第2のロッドを接続した第2の態様と、
を有し、
前記第1の態様では、前記油圧式回転機構から付与される回転力と前記油圧式打撃機構から付与される打撃力とにより前記第1のビットを駆動することによって、地盤に第1の長孔を形成し、
前記第2の態様では、前記油圧式回転機構から付与される回転力と前記水圧式打撃機構から付与される打撃力とにより前記第2のビットを駆動することによって、地盤に前記第1の長孔よりも深い第2の長孔を形成する、地盤削孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤削孔方法及び地盤削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、岩盤探査方法が記載されている。この探査方法では、油圧式削岩機の穿孔時に取得される油圧データを利用して、岩盤の探査を行う。特許文献2には、ボーリング削孔時における地盤判定方法が記載されている。この判定方法では、水力式ダウンザホールハンマーを利用したボーリングマシンを用いて削孔する。特許文献3には、前方地山の評価方法が記載されている。この評価方法では、ウォーターハンマーを利用した削岩機を用いて削孔する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−13381号公報
【特許文献2】特開2007−277940号公報
【特許文献3】特開2012−193592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル等の掘削作業には、掘削対象である地山の状態を評価する作業や、爆薬装填用の長孔を形成する作業等がある。これら作業では、それぞれの目的に対応させるため比較的浅い孔を削孔する場合や、比較的深い孔を削孔する場合がある。削孔方法には、特許文献1のように油圧式削岩機を利用する方法や、特許文献2のように水力式ダウンザホールハンマーといった水圧式削岩機を利用する方法がある。しかし、油圧式削岩機と水圧式削岩機とには、それぞれ有利な点と不利な点とがある。例えば、特許文献1の油圧式削岩機は、深い孔の形成には不向きである。また、特許文献2の水圧式削岩機は、設備が大掛かりになる傾向にあり、特に、トンネルの一般作業時における比較的短い孔を削孔する作業の繰り返しには不向きである。従って、種々の削孔作業に対応可能とし、地盤の掘削を効率よく実施可能な地盤削孔方法及び地盤削孔装置が望まれていた。
また、油圧式削岩装置、水圧式削岩装置にはそれぞれ専用の削岩機が必要であって、互換性のある削岩方法及び削岩機を用いた地盤削孔方法及び地盤削孔装置の開発が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、地盤の掘削を効率よく実施可能な地盤削孔方法及び地盤削孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、削岩装置を利用した地盤削孔方法である。削岩装置は、ガイドシェル上を移動可能に設けられた削岩機に着脱自在に取り付けられるシャンクロッドと、シャンクロッドに対して回転力を付与する油圧式回転機構と、シャンクロッドに対して打撃力を付与する油圧式打撃機構と、を備え、削岩装置のシャンクロッドに、第1のビットを有する第1のロッドを接続した後に、油圧式回転機構から付与される回転力と油圧式打撃機構から付与される打撃力とにより第1のビットを駆動することによって、地盤に第1の長孔を形成する工程と、削岩装置のシャンクロッドに、第2のビットを有すると共に第2のビットに打撃力を付与する水圧式打撃機構が先端に配置された中空構造の第2のロッドを接続した後に、油圧式回転機構から付与される回転力と水圧式打撃機構から付与される打撃力とにより第2のビットを駆動することによって、地盤に第1の長孔よりも深い第2の長孔を形成する工程と、を有する。
【0007】
この地盤削孔方法では、第1の長孔と、第1の長孔よりも深い第2の長孔とを、1台の削岩機を利用して形成することが可能であるので、第1の長孔と第2の長孔との形成において、削岩機自体を入れ替える必要がない。従って、第1の長孔を形成する工程から第2の長孔を形成する工程への切り替え、及び第2の長孔を形成する工程から第1の長孔を形成する工程への切り替えを短時間で行うことができる。また、第2の長孔を形成する工程では、その先端に配置された水圧式打撃機構によって第2のビットに打撃力が付与される。従って、第2のビットに対して効率よく打撃力を付与することが可能になるので、第1の長孔よりも深い第2の長孔を削孔する場合には、油圧式と水圧式の動力を併用できるので、長孔掘削に必要な動力を増強できる。従って、地盤の掘削を効率よく実施することができる。
【0008】
また、第2のロッドの外径は、第1のロッドの外径よりも大きくてもよい。削岩装置は、第2のロッドの一端が削岩機に取り付けられた片持ち梁構造を有しているので、鉛直下向きに撓む虞がある。ここで、第2のロッドの外径は、第1のロッドの外径よりも大きいので、第1のロッドよりも大きい断面係数を有する。従って、鉛直下向き方向への第2のロッドの撓みを抑制することができる。
【0009】
また、地盤に第2の長孔を形成する工程では、削岩機に、シャンクロッドとして取り付けられる第2のシャンクロッドを取り付け、第2のシャンクロッドに形成されたネジ部に、第2の連結部の一端側を螺合し、第2の連結部の他端側に、第2のロッドに形成されたネジ部を螺合し、第2のシャンクロッドにおけるネジ部のネジ径は、第2のロッドにおけるネジ部のネジ径以上であってもよい。この構成によれば、第2の連結部と第2のシャンクロッドとの間よりも、第2のロッドと第2の連結部との間の螺合状態が解除されやすくなるので、第2の連結部と第2のシャンクロッドの螺合状態を維持したまま、第2のロッドと第2の連結部との間の螺号状態を解除することができる。従って、第2の連結部から第2のロッドを切り離す作業において、第2の連結部を直接回転させる必要がなく、切り離し作業における作業数を削減できる。
【0010】
また、削岩機にシャンクロッドとして取り付けられる第2のシャンクロッドの外径は、削岩機にシャンクロッドとして取り付けられる第1のシャンクロッドの外径よりも大きくてもよい。この構成によれば、回転動力を効率よく伝達することができる。
【0011】
また、第2の長孔を形成する工程を実施した後に第1の長孔を形成する工程を複数回実施してもよい。この態様によれば、第1の長孔よりも深い第2の長孔を形成することにより、深い位置まで地盤の状態に関する情報を得ることができる。そして、地盤の状態に関する情報を得た後に、第1の長孔を形成する。第1の長孔は、例えば、爆薬装填や地盤補強の目的に利用される。従って、地盤削孔に関する爆薬装填や地盤補強を行う際には地盤の状態に関する情報が得られているので、地盤の状態に応じた対応を実施することが可能になる。この態様によれば、地盤の掘削作業の作業性を向上することができる。
【0012】
本発明の別の形態は、地盤に長孔を削孔する地盤削孔装置である。ガイドシェル上を移動可能に設けられた削岩機に着脱自在に取り付けられるシャンクロッドと、シャンクロッドに対して回転力を付与する油圧式回転機構と、シャンクロッドに対して打撃力を付与する油圧式打撃機構と、を備え、シャンクロッドに、第1のビットを有する第1のロッドを接続した第1の態様と、シャンクロッドに、第2のビットを有すると共に第2のビットに打撃力を付与する水圧式打撃機構が先端に配置された中空構造の第2のロッドを接続した第2の態様と、有する。第1の態様では、油圧式回転機構から付与される回転力と油圧式打撃機構から付与される打撃力とにより第1のビットを駆動することによって、地盤に第1の長孔を形成する。第2の態様では、油圧式回転機構から付与される回転力と水圧式打撃機構から付与される打撃力とにより第2のビットを駆動することによって、地盤に第1の長孔よりも深い第2の長孔を形成する。
【0013】
この地盤削孔装置では、第1の長孔と、第1の長孔よりも深い第2の長孔とを、1台の削岩機を利用して形成することが可能であるので、第1の長孔と第2の長孔との形成において、削岩機自体を入れ替える必要がない。従って、第1の長孔を形成する工程から第2の長孔を形成する工程への切り替え、及び第2の長孔を形成する工程から第1の長孔を形成する工程への切り替えを短時間で行うことが可能である。また地盤削孔装置では、その先端部に配置された水圧式打撃機構によって第2のビットに打撃力が付与される。従って、第2のビットに対して効率よく打撃力を付与することが可能になるので、第1の長孔よりも深い第2の長孔を削孔する場合には、油圧式と水圧式の動力を併用できるので、長孔掘削に必要な動力を増強でき効率よく削孔することができる。従って、地盤の掘削を効率よく実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地盤削孔方法及び地盤削孔装置によれば、地盤の掘削を効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る地盤削孔方法が実施される様子を示す側面図である。
図2図2(a)、(b)は第1の長孔を削孔する工程を示す側面図であり、図2(c)は第2の長孔を削孔する工程を示す側面図である。
図3】第1の態様に係る削岩装置の主要な構成部品を示す側面図である。
図4】第1の態様に係る削岩装置の主要な構成部品を示す分解図である。
図5】第2の態様に係る削岩装置の主要な構成部品を示す側面図である。
図6】第2の態様に係る削岩装置の主要な構成部品を示す分解図である。
図7】地盤探索用の長孔を削孔する工程の一部を示す側面図である。
図8図7に続いて、地盤探索用の長孔を削孔する工程の一部を示す側面図である。
図9図8に続いて、地盤探索用の長孔を削孔する工程の一部を示す側面図である。
図10図9に続いて、地盤探索用の長孔を削孔する工程の一部を示す側面図である。
図11】変形例に係る第2の態様における削岩装置の主要な構成部品を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示されるように、地盤削孔方法は、トンネル掘削現場等で実施される地盤削孔作業に用いられる。坑道100は略水平方向に延在し、坑道100の最深部には切羽101が露出している。なお、以下の記載において、説明の便宜上、切羽101側を「前」、坑道100の出入り口側を「後」として説明する。削孔作業には、地盤削孔装置1が利用される。また、坑道100内には、地盤削孔装置1に付帯する設備として、高水圧ポンプ91、ポンプ用電源92、水タンク93等が配置される。
【0018】
図2に示されるように、地盤削孔作業は、目的に応じた2種類の削孔作業を含む。まず、図2(a)及び(b)に示されるように、地盤削孔作業には、爆薬装填用の長孔(第1の長孔)を削孔する作業がある。この第1の長孔H1の削孔に供するビットは、例えば、直径が40mm〜50mm程度であり、一例として45mmである。第1の長孔H1の深さD1は、切羽101を基準として1m〜2m程度である。一例として、深さD1は、1.5mである。まず、地盤削孔装置1を用いて、複数の第1の長孔H1を形成する(図2(a)参照)。そして、当該第1の長孔H1に爆薬を装填し、所定領域A1を爆破掘削する。そして、地盤削孔装置1を前進させて(図2(b)参照)、再び第1の長孔H1を形成する。この作業を繰り返して、坑道100を形成する。また、図2(c)に示されるように、地盤削孔作業には、地盤探査用の長孔(第2の長孔)を削孔する作業がある。この第2の長孔H2の削孔に供するビットは、例えば、直径が50mm〜250mm程度であり、切羽101を基準とした深さD2が50mm〜100m程度である。すなわち、第2の長孔H2は、第1の長孔H1と比較すると、その深さD2が極めて大きい。
【0019】
<地盤削孔装置>
まず、地盤削孔方法に利用される地盤削孔装置1について説明する。再び図1に示されるように、地盤削孔装置1は、本体車両2と、少なくとも1台の削岩装置3とを備えている。削岩装置3は、1台であってもよいし、2台であってもよいし、3台であってもよい。また、削岩装置3は、4台以上あってもよい。本体車両2は、タイヤ又はクローラといった移動機構を有し、坑道100内を自由に走行することができる。また、本体車両2は、アウトリガ2aを有し、削孔作業時における安定性を確保する。更に、本体車両2は、本体車両2の走行や削岩装置3を操縦するための操縦台2bを有する。また、本体車両2は、ブームの先端に取り付けられた作業台2cを有する。地盤削孔装置1は坑道100を自由に走行できるので、他のトンネル掘削作業(掘削土搬出、コンクリート吹付け、支保工建込等)の作業車両との入れ替えが自在に実施できる。
【0020】
削岩装置3は、所定方向に沿って延在する外形形状を呈する。削岩装置3は、ブーム2dを介して、本体車両2に連結されている。ブーム2dによれば、削岩装置3を所望の姿勢に保ちつつ、切羽101に対して所望の位置に移動させ得る。削岩装置3の姿勢は、削岩装置3の延在方向が水平方向に対して平行であってもよいし、水平方向に対して傾斜していてもよい。地盤削孔装置1は、一例として3台の削岩装置3を備えることにより、切羽101の所望の位置に少なくとも1台の削岩装置3を配置することが可能とされている。削岩装置3は、第1の長孔H1と削孔する工程と、第2の長孔H2と削孔する工程と、では一部の構成部品が異なっている。
【0021】
図3は、第1の長孔H1を削孔する削岩装置3Aの主要な構成を示す図である。図3に示された構成は、削岩装置3Aにおける第1の態様である。削岩装置3Aは、ガイドシェル4と、削岩機6と、第1のシャンクロッド7Aと、第1のロッド8Aと、を備えている。
【0022】
ガイドシェル4は、削岩装置3Aの本体をなし、所定方向E1に沿って延在している。ガイドシェル4は、所定方向E1に沿って延在するガイド4aと、ガイド4aに沿って摺動自在なキャリッジ4bとを有している。このキャリッジ4bは、例えば油圧シリンダ等の駆動源により駆動される。
【0023】
削岩機6は、キャリッジ4bに固定されている。従って、削岩機6は、所定方向E1に沿って移動可能である。図4に示されるように、削岩機6には、例えば、第1のシャンクロッド7Aが取り付けられる。削岩機6は、第1のシャンクロッド7Aを装着し及び取り外すことが可能な構成を有している。この削岩機6は、油圧式回転機構としてのオービットモータ11と、油圧式打撃機構としての打撃ピストン12とを有する。オービットモータ11は、第1のビット9Aに付与する回転力を発生させる。オービットモータ11は、回転速度及び回転方向が制御可能であり、高いトルクを発生させることができる。オービットモータ11の回転力は、シャフト11aとギヤ11bを介して第1のシャンクロッド7Aのギヤ7aに伝達される。打撃ピストン12は、第1のビット9Aに付与する打撃力を発生させる。打撃力は、所定方向E1に沿っている。打撃ピストン12は、第1のシャンクロッド7Aに同軸であって、第1のシャンクロッド7Aの後端部7e側に配置されている。そして、打撃ピストン12は、所定方向E1に沿って往復移動することにより、第1のシャンクロッド7Aの後端部7eに対して繰り返し衝突する。この衝突により所定方向E1に沿った打撃力が第1のシャンクロッド7Aに付与される。従って、打撃力の駆動源として、油圧式打撃機構を利用する場合には、打撃力は削孔位置よりも離れた位置に印加される。
【0024】
第1のシャンクロッド7Aは、オービットモータ11から付与された回転力と、打撃ピストン12から付与された打撃力を、第1のロッド8Aに伝達する。第1のシャンクロッド7Aは、35mm〜45mm程度の外径G1を有する。第1のシャンクロッド7Aの前端部7fには、スリーブ(第1の連結部)13を介して第1のロッド8Aが連結されている。第1のシャンクロッド7Aの前端部7fには、雄ネジ(ネジ部)14Aが形成され、この雄ネジ14Aがスリーブ13の雌ネジ13aに対して螺合している。第1のシャンクロッド7Aに形成された雄ネジ14Aは、35mm〜45mm程度のネジ径(有効径)を有する。本実施形態の雄ネジ14Aは、ネジ径が38mmである。
【0025】
第1のロッド8Aは、その前端に第1のビット9Aが連結されたドリルロッドである。第1のロッド8Aは、長筒状の形状を有し、その長さが3m〜4m程度であり、外径G2が35mm〜45mm程度である。第1のロッド8Aの後端部8eには、雄ネジ(ネジ部)15Aが形成され、この雄ネジ15Aがスリーブ13の雌ネジ13bに対して螺合している。雄ネジ15Aのネジ径は、第1のシャンクロッド7Aに形成された雄ネジ14Aのネジ径と同程度であってもよいし、雄ネジ14Aのネジ径よりも小さくてもよい。例えば、第1のロッド8Aに形成された雄ネジ15Aは、35mm〜45mm程度のネジ径を有する。本実施形態の雄ネジ15Aは、ネジ径が38mmである。第1のロッド8Aの前端には、第1のビット9Aが配置されている(図3参照)。この第1のビット9Aが回転及び所定方向に往復動することにより、地盤を削孔する。
【0026】
図5は、第2の長孔H2を削孔する削岩装置3Bの主要な構成を示す図である。図5に示された構成は、削岩装置3Bにおける第2の態様である。削岩装置3Bは、上述した第1の長孔H1を削孔する場合の削岩装置3Aと共通のガイドシェル4と、削岩機6と、を備える。すなわち、削岩装置3Bは、第2のシャンクロッド7Bと、スイベル(第2の連結部)16と、第2のロッド8Bと、ウォーターハンマー19と、第2のビット9Bと、を有する点で削岩装置3Aと相違する。
【0027】
図6に示されるように、第2のシャンクロッド7Bは、第1のシャンクロッド7Aに対して、外径G3が異なっている。第2のシャンクロッド7Bの外径G3は、例えば45mm〜55mmである。従って、第2のシャンクロッド7Bの外径G3は、第1のシャンクロッド7Aの外径G1よりも大きい。また、第2のシャンクロッド7Bは、第1のシャンクロッド7Aに対して、前端部7fに形成された雄ネジ(ネジ部)14Bのネジ径も異なっている。第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bは、ネジ径が45mm〜55mm程度である。本実施形態の雄ネジ14Bは、ネジ径が51mmである。従って、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bは、第1のシャンクロッド7Aの雄ネジ14Aよりもネジ径が大きい。第2のシャンクロッド7Bの前端部7fには、スイベル16が取り付けられている。
【0028】
スイベル16は、第2のシャンクロッド7Bと、第2のロッド8Bとを機械的に連結する。スイベル16は、第2のシャンクロッド7Bに付与された回転力を第2のロッド8Bに伝達する。また、スイベル16は、第2のロッド8Bの内部に水を供給する。スイベル16は、内筒部17と外筒部18とを有する。内筒部17は、その両端に形成された雌ネジ17a,17bを有する。雌ネジ17aには、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bが連結される。また、第2のシャンクロッド7Bには、雌ネジ17aとの間の緩み止めとして、アダプタ20が取り付けられる。雌ネジ17bには、第2のロッド8Bの雄ネジ15Bが連結される。すなわち、内筒部17は、スリーブ13と同等の機能を有する。従って、内筒部17は、第2のシャンクロッド7Bに付与された回転力を、第2のロッド8Bに伝達するため、回転運動を行う。なお、スイベル16と第2のロッド8Bとの連結のためにスイベル16の一端に雌ネジ17bが形成されているが、雄ネジであってもよい。
【0029】
外筒部18は、内筒部17における外周の一部を覆うように配置される。外筒部18は、水供給口18aを有する。水供給口18aには、高水圧ポンプ91(図1参照)に接続されたパイプが取り付けられる。従って、外筒部18は、内筒部17に対して機械的に切り離されており、内筒部17の回転とは連動しない。一方、供給された水の漏れを抑制するために、外筒部18は、内筒部17に対するシール構造を有する。具体的には、シール構造は、内筒部17が挿通された貫通孔18bの内周面上に複数の溝18cと、溝18cに圧入されたシールリング18dとを含む。このシール構造により、内筒部17と外筒部18とは、機械的に絶縁されると共にシール性を確保することができる。
【0030】
第2のロッド8Bは、ウォーターハンマー19へ水を供給する機能を有し、筒状の中空構造をなす中空ケーシングロッドである。第2のロッド8Bは、第1のロッド8Aに対して外径G4が異なっている。第2のロッド8Bの外径G4は、55mm〜65mm程度である。従って、第2のロッド8Bの外径G4は、第1のロッド8Aの外径G2よりも大きい。また、第2のロッド8Bは、一端部に雄ネジ15Bが形成され、他端部には雌ネジ(不図示)が形成されている。単短尺ロッドである第2のロッド8Bは、一端部の雄ネジ15Bに他端部の雌ネジを螺合することにより、長尺状の連結ロッドを形成することができる。第2のロッド8Bは、例えば、1m〜2m程度の長さを有し得る。最後端側の第2のロッド8Bは、雄ネジ15Bがスイベル16の雌ネジ17bに連結されている。第2のロッド8Bに形成された雄ネジ15Bは、40mm〜50mm程度のネジ径を有する。本実施形態の雄ネジ15Bは、ネジ径が41mm〜43mmである。すなわち、第2のロッド8Bに形成された雄ネジ15Bは、第2のシャンクロッド7Bに形成された雄ネジ14Bのネジ径よりも小さい。なお、第2のロッド8Bに形成された雄ネジ15Bは、第1のシャンクロッド7Aに形成された雄ネジ(ネジ部)15Aのネジ径と同程度としてもよい。
【0031】
図5に示されるように、最前端側の第2のロッド8Bには、水圧式打撃機構としてのウォーターハンマー19が連結されている。ウォーターハンマー19は、いわゆる水力式ダウンザホールハンマー方式を利用した打撃機構である。ウォーターハンマー19は、高水圧ポンプ91から供給された高圧水を駆動源とし、削孔速度が速く、大気中への粉じんや潤滑油の排出がないといった特徴を有する。ウォーターハンマー19の先端には、第2のビット9Bが連結されている。従って、第2のビット9Bには、第2のロッド8Bを介することなく、ウォーターハンマー19から直接に打撃力が付与される。
【0032】
上記地盤削孔装置1では、第1の長孔H1と、第1の長孔H1よりも深い第2の長孔H2とを、1台の削岩装置3を利用して形成することが可能である。このため、第1の長孔H1と第2の長孔H2との形成において、地盤削孔装置1の入れ替えが発生しない。具体的には、第1のシャンクロッド7Aと第2のシャンクロッド7B、第1のロッド8Aと第2のロッド8B、スリーブ13とスイベル16とをそれぞれ交換するだけで、第1の態様と第2の態様とを切り替えることができる。従って、その他の要素は、第1の態様と第2の態様とで共通である。これにより、第1の長孔H1を形成する工程から第2の長孔H2を形成する工程への切り替え、及び第2の長孔H2を形成する工程から第1の長孔H1を形成する工程への切り替えを短時間で行うことが可能になる。また、地盤削孔装置1では、その前端に配置されたウォーターハンマー19によって第2のビット9Bに打撃力が付与される。従って、第2のビット9Bに対して効率よく打撃力を付与することが可能になるので、第1の長孔H1よりも深い第2の長孔H2を削孔する工程では、油圧式と水圧式の動力を併用できるので、長孔掘削に必要な動力を増強でき効率よく削孔することができる。従って、地盤の掘削を効率よく実施することができる。また、第2のロッドの外径は、第1のロッドの外径より大きいので、回転動力を効率よく伝達できる。
【0033】
<地盤削孔方法>
続いて、坑道100の掘削作業を例に、上記地盤削孔装置1を利用した地盤削孔方法について説明する。
【0034】
第2の長孔H2を形成する工程を実施する。まず、図7(a)に示されるように、削岩機6をガイドシェル4の後端まで移動させる。続いて、削岩機6に第2のシャンクロッド7Bを設置する。続いて、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bに、スイベル16を取り付ける。このとき、スイベル16の内筒部17を保持し、オービットモータ11を用いて第2のシャンクロッド7Bを正回転させて、スイベル16の雌ネジ17aに第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bをねじ込む。なお、正回転とは、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bがスイベル16の雌ネジ17aに螺合する回転方向をいう。以後、雄ネジが雌ネジに対して螺合する回転方向を正回転方向とする。換言すると、雄ネジが雌ネジに対して緩む回転方向を逆回転方向とする。
【0035】
続いて、スイベル16の雌ネジ17bに第2のロッド8Bを取り付ける。このとき、第2のロッド8Bを保持し、オービットモータ11を用いて第2のシャンクロッド7Bを正回転させる。そうすると、スイベル16の内筒部17が正回転するので、スイベル16の雌ネジ17bに第2のロッド8Bの雄ネジ15Bがねじ込まれる。この際、複雑な構造のスイベル16を直接回転させる必要はない。
【0036】
続いて、第2のロッド8Bにウォーターハンマー19を取り付ける。このとき、ウォーターハンマー19を保持し、オービットモータ11を用いて第2のシャンクロッド7Bを正回転させる。そうすると、スイベル16の内筒部17を介して第2のロッド8Bが正回転するので、第2のロッド8Bにウォーターハンマー19がねじ込まれる。
【0037】
図7(b)に示されるように、削岩機6をガイドシェル4の前端まで移動させながら、第2の長孔H2を削孔する。このとき、第2のビット9Bには、削岩機6のオービットモータ11から回転力(正転)が付与され、ウォーターハンマー19から打撃力が付与される。特に、打撃力は、第2のロッド8Bを介することなく、第2のビット9Bに直接に付与される。従って、打撃力の減衰が低減されるので、第2のビット9Bに対して効率よく打撃力を付与することができる。ここで、第2の長孔H2を削孔している間に、地盤の状態を評価するためのデータを取得する。例えば、取得されるデータには、削岩機6の送り速度、回転圧力、ウォーターハンマー19に供給される圧力水の水圧及び水量がある。
【0038】
図7(c)に示されるように、スイベル16から第2のロッド8Bを切り離し、削岩機6をガイドシェル4の後端まで移動させる。具体的には、まず、第2のロッド8Bを固定する。続いて、オービットモータ11により第2のシャンクロッド7Bを逆回転(螺合を解除する方向に回転)させる。そうすると、第2のロッド8Bの雄ネジ15Bとスイベル16の雌ネジ17bとの間、及びスイベル16の雌ネジ17aと第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bとの間のそれぞれに螺合状態を解除する方向のトルクが作用する。
【0039】
ここで、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bのネジ径は、第2のロッド8Bの雄ネジ15Bのネジ径より大きいので、スイベル16と第2のシャンクロッド7Bとの間よりも、第2のロッド8Bとスイベル16との間の螺合状態が解除されやすい。
【0040】
続いて、図8(a)に示されるように、別の第2のロッド8Bをスイベル16に取り付ける。この取り付け作業は、図7(a)に示されたスイベル16への第2のロッド8Bの取り付けと同じ手順により行われる。要するに、取り付け作業では、別の第2のロッド8Bを保持して、オービットモータ11を正回転させる。続いて、図8(b)に示されるように、別の第2のロッド8Bを取り付けた削岩機6を前方に移動させる。別の第2のロッド8Bの前端を、第2のロッド8Bの後端に取り付ける。この取り付け作業では、地盤側の第2のロッド8Bを保持して、オービットモータ11を正回転させる。そして、図8(c)に示されるように、削岩機6をガイドシェル4の前端まで移動させながら、第2の長孔H2を削孔する。このとき、地盤の状態を評価するためのデータを取得する。
【0041】
上述したように、掘削と地盤データの取得作業(図7(b)参照)と、スイベル16からの第2のロッド8Bの切り離し(図7(c)参照)と、第2のロッド8Bの取り付け(図8(a)参照)と、第2のロッド8B同士の連結(図8(b)参照)と、をこの順に繰り返すことにより、第2の長孔H2が形成されると共に、切羽101から50m以上、望ましくは100m前方までの地盤の状態を示す情報が得られる。
【0042】
続いて、第2の態様である削岩装置3Bを第1の態様である削岩装置3Aに切り替える。態様の切替作業に先立って、削岩機6から全ての第2のロッド8Bとウォーターハンマー19とを取り外す。
【0043】
第2の長孔H2を形成した(図9(a)参照)後に、図9(b)に示されるように、削岩機6を、第2のロッド8B同士の連結部が切羽101から露出するまでガイドシェル4の後方側に移動させる。続いて、第2のロッド8B同士の連結部の近傍において、ウォーターハンマー19側の第2のロッド8Bを保持する。つまり、スイベル16に連結された第2のロッド8Bは保持しない。この状態において、オービットモータ11を用いて第2のシャンクロッド7Bを逆回転させる。そうすると、第2のシャンクロッド7Bと、保持された第2のロッド8との間で逆回転方向のトルクが発生する。前述したように、逆回転方向のトルクによれば、雄ネジと雌ネジの螺合状態が解除され得る。
【0044】
ここで、第2のシャンクロッド7Bと、保持された第2のロッド8Bとの間には、第2のシャンクロッド7Bとスイベル16との螺合部、スイベル16と第2のロッド8Bとの螺合部8a、第2のロッド8Bと保持された第2のロッド8Bとの螺合部8b、が存在する。これら螺合部に逆回転方向のトルクが作用した場合、ネジ径が大きい第2のシャンクロッド7Bとスイベル16との螺合部が最も外れにくい。従って、トルクの付与により、スイベル16と第2のロッド8Bとの螺合部8a、第2のロッド8Bと保持された第2のロッド8Bとの螺合部8bの何れか一方において螺合状態が解除される。この実施形態では、螺合部8bにおいて、螺合状態が解除されたとする。続いて、図9(b)に示されるように、削岩機6をガイドシェル4の後端まで移動させる。なお、螺合部8aにおいて、螺合状態が解除された場合には、削岩機6をガイドシェル4の後端まで移動させるとともに、再度スイベル16側の第2のロッド8を逆回転させて、螺合部8bにおける螺合状態を解除する。また、スイベル16と第2のロッド8Bとの螺合部8aに相互の螺合状態を維持する固定金具を使用して螺合部8bの螺合状態を解除してもよいが、作業数は増える。
【0045】
図10(a)に示されるように、スイベル16から第2のロッド8Bを取り外す。この作業は、第2のロッド8Bを固定した後に、オービットモータ11により第2のシャンクロッド7Bを逆回転させる。この逆回転によって、スイベル16と第2のロッド8Bとの螺合状態が解除される。上述したように、逆回転によるトルクは、スイベル16と第2のシャンクロッド7Bとの間にも作用するが、第2のシャンクロッド7Bのネジ径が第2のロッド8Bのネジ径よりも大きいので、スイベル16と第2のロッド8Bとの螺合部よりも解除され難くなっている。
【0046】
図10(b)に示されるように、削岩機6をガイドシェル4の前端まで移動させる。そして、第2のロッド8Bを固定して、オービットモータ11を正回転させる。そうすると、スイベル16に第2のロッド8Bが連結される。図10(c)に示されるように、削岩機6をガイドシェル4の後端側に移動させて、第2のロッド8Bを引き抜く。
【0047】
上述したように、第2のロッド8Bの引き抜き(図9(b)、図10(c)参照)と、第2のロッド8B同士の切り離し(図9(c)参照)と、スイベル16からの第2のロッド8Bの取り外し(図10(a)参照)と、スイベル16への第2のロッド8Bの連結(図10(b)参照)と、をこの順に繰り返すことにより、削岩機6から全ての第2のロッド8Bとウォーターハンマー19とが取り外される。
【0048】
続いて、スイベル16の内筒部17を固定し、オービットモータ11を逆回転させる。そうすると、第2のシャンクロッド7Bとスイベル16の内筒部17との螺合状態が解除される。その後に、第2のシャンクロッド7Bを第1のシャンクロッド7Aに交換する。そして、第1のシャンクロッド7Aの前端部7fにスリーブ13を連結し、スリーブ13に第1のロッド8Aを連結する。以上の作業により、地盤削孔装置1が、第2の態様から第1の態様に切り替わる。
【0049】
続いて、第1の態様に切り替えられた地盤削孔装置1を利用して、第1の長孔H1を形成する工程を実施する。そして、第1の長孔H1に爆薬を装填し、切羽101を掘削する。ここで、第1の長孔H1を削孔する際には、その都度地盤の状態を示す情報を参照する。そして、掘削する領域が、前処理の必要な領域であると判断される場合には、所定の処理が実行される。これら、地盤情報の参照と、第1の長孔H1の削孔と、切羽101の掘削とを繰り返し、坑道100を形成する。
【0050】
この地盤削孔方法では、第1の長孔H1と、第1の長孔H1よりも深い第2の長孔H2とを、1台の削岩装置3を利用して形成することが可能であるので、第1の長孔H1と第2の長孔H2との形成において、地盤削孔装置1自体を入れ替える必要がない。従って、第1の長孔H1を形成する工程から第2の長孔H2を形成する工程への切り替え、及び第2の長孔H2を形成する工程から第1の長孔H1を形成する工程への切り替えを短時間で行うことが可能である。また、第2の長孔H2を形成する工程では、その前端部に配置されたウォーターハンマー19によって第2のビット9Bに打撃力が付与される。従って、第2のビット9Bに対して効率よく打撃力を付与することが可能になるので、第1の長孔H1よりも深い第2の長孔H2を効率よく削孔することができる。従って、地盤の掘削を効率よく実施することができる。
【0051】
この地盤削孔方法では、第2のロッド8Bが片持ち梁構造とされている。第2のロッド8Bは、第1のロッド8Aの外径よりも大きいので、第1のロッド8Aよりも大きい断面係数を有する。従って、鉛直下向き方向への第2のロッド8Bの撓みを抑制することができる。
【0052】
第2のシャンクロッド7Bにおける雄ネジ14Bのネジ径は、第2のロッド8Bにおける雄ネジ15Bのネジ径より大きい。換言すると、雄ネジ15Bのネジ径は、雄ネジ14Bのネジ径よりも小さい。このネジ径の関係によれば、スイベル16と第2のシャンクロッド7Bとの間よりも、第2のロッド8Bとスイベル16との間の螺合状態が解除されやすくなるので、スイベル16と第2のシャンクロッド7Bの螺合状態を維持したまま、第2のロッド8Bとスイベル16との間の螺号状態が解除される。スイベル16と第2のシャンクロッド7Bとの間よりも、第2のロッド8Bとスイベル16との間の螺合状態を解除するトルクの方が小さくなるためであると予想される。従って、スイベル16から第2のロッド8Bを切り離す作業において、複雑な構造のスイベル16を直接回転させる必要がなく、切り離し作業における作業数を削減できる。
【0053】
この地盤削孔方法によれば、第1の長孔H1よりも深い第2の長孔H2を形成することにより、地盤の状態に関する情報を得ることができる。そして、地盤の状態に関する情報を得た後に、第1の長孔H1を形成する。第1の長孔H1は、爆薬装填に利用される。従って、地盤削孔に関する爆薬装填用の削孔作業を行う際には地盤の状態に関する情報が得られているので、地盤の状態に応じた前処理を実施することが可能になる。従って、地盤削孔作業の作業性を向上することができる。
【0054】
要するに、この地盤削孔方法によれば、2種類の長孔を削孔する場合に削岩機6におけるシャンクロッドを取り換えるだけで対応することが可能であること、また、より深い長孔H2を削孔する場合に水圧式削岩機を利用するため効率の良い打撃力の利用が可能であること、更に、地盤削孔に関する爆薬装填用の削孔作業を行う際には地盤の状態に関する情報が得られているので地盤の状態に応じた前処理を実施することが可能であること、から効率のよい地盤掘削が可能になる。
【0055】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0056】
第1の長孔H1は爆薬装填用の長孔として利用したが、これに限定されない。例えば、第1の長孔H1は地盤補強用のロックボルトを埋め込む長孔として利用してもよい。また、第2の長孔H2は地盤探索用の長孔として利用したが、これに限定されない。例えば、第2の長孔H2は水抜き用の長孔として利用してもよい。
【0057】
また、第2の態様に係る削岩装置3Bでは、第2のシャンクロッド7Bとスイベル16とは、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bをスイベル16の雌ネジ17aにねじ込むことにより連結していた。第2のシャンクロッド7Bとスイベル16とを連結する構成は、これに限定されることはない。例えば、図11に示されるように、雄ネジ14Bと雌ネジ17aとの螺合に加え、ボルトBを用いた連結構成としてもよい。スイベル16Aの内筒部17Aには、ボルトBがねじ込まれるネジ穴17cが設けられている。ネジ穴17cは、内筒部17Aにおける雌ネジ17a側に形成されている。内筒部17Aには、3個のネジ穴17cが設けられている。それぞれのネジ穴17cは、内筒部17Aの中心軸の方向から見ると、内筒部17Aの外周面において120度間隔をもって等間隔に配置されている。ネジ穴17cは、内筒部17Aの中心軸に対して直交する中心軸を有し、内筒部17Aの外周面から雌ネジ17a側に貫通している。
【0058】
このようなスイベル16Aでは、第2のシャンクロッド7Bの雄ネジ14Bが雌ネジ17aにねじ込まれる。そして、ネジ穴17cのそれぞれにボルトBがねじ込まれる。ボルトBをねじ込むことにより、ボルトBの端部が雄ネジ14Bの外周面をネジ穴17cの中心軸に沿って押圧する。なお、第2のシャンクロッド7Bにアダプタ20(図6参照)を更に追加してもよい。このような構成によれば、第2のシャンクロッド7Bとスイベル16Aとを強固に連結すると共に、第2のシャンクロッド7Bとスイベル16Aの連結を容易に解除することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…地盤削孔装置、3,3A,3B…削岩装置、4…ガイドシェル、4a…ガイド、4b…キャリッジ、6…削岩機、7A…第1のシャンクロッド、7B…第2のシャンクロッド、8A…第1のロッド、8B…第2のロッド、9A…第1のビット、9B…第2のビット、11…オービットモータ(油圧式回転機構)、12…打撃ピストン(油圧式打撃機構)、13…スリーブ(第1の連結部)、16…スイベル(第2の連結部)、18d…シールリング、19…ウォーターハンマー(水圧式打撃機構)、100…坑道、101…切羽、E1…所定方向、H1…第1の長孔、H2…第2の長孔。
図1
図2
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