(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307025
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】デバイス、放射放出デバイス、放射放出デバイスのアレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20180326BHJP
【FI】
H01L33/60
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-561502(P2014-561502)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公表番号】特表2015-510278(P2015-510278A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】GB2013000098
(87)【国際公開番号】WO2013136035
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】1204517.5
(32)【優先日】2012年3月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514087898
【氏名又は名称】ラムダ ガード テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】パリカラス、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】カロス、テモス
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−237547(JP,A)
【文献】
特表2007−529105(JP,A)
【文献】
特開2003−078206(JP,A)
【文献】
特開2006−128008(JP,A)
【文献】
特開2011−108748(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0231184(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0064493(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0029269(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射源と結合するよう構成されたデバイスであって、
周期的反射要素を有する光メタマテリアルであって、光を部分的に反射し且つ部分的に透過する光メタマテリアルと、
リフレクタと、を備え、
前記光メタマテリアルおよび前記リフレクタは、前記電磁放射源を受けるよう構成されたキャビティを形成するよう構成され、
前記光メタマテリアルの自己共振波長帯域は、前記キャビティの共振波長帯域と重複しており、それによって、前記光メタマテリアルの自己共振波長帯域と前記キャビティの共振波長帯域の重複帯域内の光波長で放射強度を増大させ、
前記周期的反射要素は、誘電体により支持されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記周期的反射要素は、反射素子の規則的アレイを備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記周期的反射要素は、規則的グリッドを備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光メタマテリアルは、実質的に平面状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
放射強度が増大する光波長は、電磁放射スペクトルの可視域内にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
放射強度の増大は、発光効率の増大であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
放射強度が増大する光波長は、帯域幅を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスはパッシブであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記光メタマテリアルはさらに、放射強度が増大する光波長の放射を、更なる光波長に変換する蛍光体を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記更なる光波長は、可視波長であることを特徴とする請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記リフレクタは、完全な反射面であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記完全な反射面は、金属であることを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記リフレクタは、周期的反射要素を有する第2のメタマテリアルであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記リフレクタは、実質的に平面状であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のデバイス。
【請求項15】
前記光メタマテリアルおよび前記リフレクタは、方程式:
【数1】
により規定される距離Sにより空間的に分離される、ここでφ(θ)は、前記光メタマテリアルに対して放出された放射の角度θでの反射係数位相、λ
0は放射強度が増大する波長、およびmは整数である、ことを特徴とする請求項1から
14のいずれかに記載のデバイス。
【請求項16】
第1の光メタマテリアルに積層されたさらなる光メタマテリアルをさらに備え、前記さらなる光メタマテリアルは、前記電磁放射源からの、第2の光波長の放射の強度を高めるよう構成された周期的反射要素を有することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載のデバイス。
【請求項17】
第2の光メタマテリアルの周期的反射要素の周期は、第1の光メタマテリアルの周期的反射要素の周期と異なることを特徴とする請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
光メタマテリアルおよびリフレクタにより少なくとも部分的に区切られたキャビティであって、前記光メタマテリアルが光を部分的に反射し且つ部分的に透過する、キャビティと、
前記キャビティ内の電磁放射源と、を備え、
前記光メタマテリアルは、前記電磁放射源から放射を受けるよう構成された周期的反射要素を備え、
前記光メタマテリアルの自己共振波長帯域は、前記キャビティの共振波長帯域と重複しており、それによって、前記光メタマテリアルの自己共振波長帯域と前記キャビティの共振波長帯域の重複帯域内の光波長で放射強度を増大させ、
前記周期的反射要素は、誘電体により支持されることを特徴とする放射放出デバイス。
【請求項19】
前記周期的反射要素は、反射素子の規則的アレイ、または、規則的グリッドを備えることを特徴とする請求項18に記載の放射放出デバイス。
【請求項20】
前記リフレクタは、実質的に平面状であることを特徴とする請求項18または19に記載の放射放出デバイス。
【請求項21】
前記キャビティは、平面状、少なくとも部分的に球面状、半球面状、または少なくとも部分的に円筒状であることを特徴とする請求項18から20のいずれかに記載の放射放出デバイス。
【請求項22】
発光デバイスが平面状アレイまたは円筒状アレイに配置されたことを特徴とする請求項18から21のいずれかに記載の放射放出デバイスのアレイ。
【請求項23】
前記電磁放射源は、白熱電球、発光ダイオード、電球型蛍光灯およびレーザを含むグループから選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載のデバイス、放射放出デバイスまたは放射放出デバイスのアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁放射源の出力を高めるためのデバイスに関する。特に、本開示は、放射源からの所定波長の放射強度を高めるためのデバイスに関する。さらに特に、本開示は、光源の効率を高めるためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭/消費者レベルにおいては、主に3種類の光源が現在一般的に使用されている。白熱電球、電球型蛍光灯(CFL)、発光ダイオード(LED)である。
【0003】
種々の光源の光効率は、それらの発光効率に関して測定されうる。発光効率は、ルーメン毎ワット(lm/W)の単位を有する。これは、デバイスに供給される所与の壁コンセント電力に対して、光源から放出されたルーメンの量である。ろうそくは、0.3lm/W(これはスケールのローエンドである)の発光効率を有するが、一方で理想的な単色緑レーザは、約683lm/Wの発光効率を有する。このようなレーザは、最も効率的な光源であり、効率スケールのハイエンドを占める。小さな部屋を適切に照らすために光源に必要な光束量は、約1000ルーメンである。効率的な光源の目標は、最小限の電力を消費しながら、この光束量に到達することである。
【0004】
白熱電球は、これまでに発明された最初の電球であり、電気を光に変換する。その主な技術は、金属フィラメント(通常タングステン)を光るまで非常に高い温度に加熱することに依存している。この技術は、200年以上前に初めて開発され、19世紀後半に商品化された。白熱電球は、人間の目に非常に快適な光(スペクトル)の種類を提供する。白熱電球のスペクトルは、我々の目が日頃慣れている太陽から放出される光のスペクトルに類似しているからである。これは、黒体放射体のスペクトルである。
【0005】
しかしながら、白熱電球は、生成する光出力に対して電力消費が極めて高いため、非常に効率の悪い光源である。例えば、60Wの白熱電球は、約15lm/Wの発光効率を有し、従って約900ルーメンの光を放出する。白熱電球の効率は、起こる加熱プロセスが原因でとても低い。入力電力の大部分(約90%)は、有用な可視光としてよりも、赤外周波数で熱として放出される。
【0006】
電球型蛍光灯(CFL:Compact Fluorescent Lamp)は、白熱電球に取って代わることを目的として設計され、紫外(UV)光から可視光への変換である発光現象に基づいて動作する。CFLは一般的に、水銀およびアルゴンなどの不活性ガスが入っている。ガスが入っているチューブの端部に電気が供給されると、それによりガス化合物中の水銀原子がUV波長でエネルギーを放射する。このUV光は、チューブの特別な化学コーティングにより吸収され、可視光としての発光により再放射される。化学コーティングは、1つ以上の種類の蛍光物質から成り、それぞれが異なる波長範囲での発光に関与する。
【0007】
この方法は、加熱を必要とせず、従ってCFLの発光効率は、約70lm/Wであり、白熱電球の4倍以上高い効率である。同時に、その寿命は白熱電球と比較して10倍長い。しかしながら、CFLの光質は、白熱電球から放出される光の光質には遠く及ばない。これは、CFLから放出される光のスペクトルは白熱電球により生成されるより自然な光と比較して全く異なるためである。利用できる最新型の電球は、LEDである。これは、小さな直流電圧(DC)がその端子を横切って印加されたときに光を放出する固体素子である。この技術は数十年の間利用可能であり、低出力のLED灯は、明るい白色光が必ずしも必要とされないエレクトロニクスなどの特定の市場で定常的に用いられている。過去十年、LEDは、消費者用照明製品向けに売り込みをかけており、近い将来に最も確立した照明技術になりそうである。これは、LEDの発光効率が理論上最大300lm/W、これは白熱電球と比べて20倍高く且つCFLと比べて5倍以上高い、に到達できるためである。同時に、LEDは、30年に至る寿命を有し、それ故良好なLEDランプを購入することは、消費者の視点から見ると安全な長期的な投資である。
【0008】
今日利用可能な消費者用LEDランプは、低いワット数、主として「40ワット相当」、に限定されている。これは、このようなLEDランプが、約5〜10Wの電力を消費するだけであるが、40Wの白熱電球と同じ光(光度)を放出することを意味する。現在実用的なLEDランプの一般的な発光効率は、約70〜100lm/Wであり、CFLの発光効率と比べても遜色ない。全てのLEDは、指向性がある。そのため、製造業者は、家庭および他の照明アプリケーション用に光をまき散らすために、リフレクタと、様々な光拡散コーティングまたは樹脂ハウジングとを追加しなければならない。
【0009】
これらの種類の光源のそれぞれは、欠点を有している。白熱電球は、効率が非常に低く、その光出力と比べると不釣り合いなほど大量の電力を消費する。CFLは、効率が改善されているが、光質を犠牲にしており、長期にわたる照射後に不快にさせる。LEDは、優れた効率を有するが、その絶対的な光量は他の種類の光源と比べると低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、従来の光源における現状の制限のいくつかを解決することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の態様は、添付の独立請求項に規定される。
【0012】
白熱電球や発光ダイオード(LED)などの電磁放射源と結合するよう構成されたデバイスが提供される。該デバイスは、反射素子の規則的アレイや規則的グリッドなどの周期的反射要素を備える。周期的反射要素は、サブ波長の寸法を有する。
【0013】
特に、効率を高めるなど出力を増大するために、既知の電磁放射源と結合、電磁放射源を受けるまたは電磁放射源と関与することのできるデバイスが提供される。さらに進んで、デバイスはキャビティを形成するよう構成されてもよい。有利には、デバイスは、特定の波長または波長帯域で共振するよう調整されてもよい。さらに有利には、デバイスはパッシブであり、それによってエネルギー効率を高める。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の実施の形態は、添付の図面を参照して説明される。
【
図1】辺の長さLx×Lyの長方形、または直径Lの円板を含む周期的反射要素のためのユニットセルのいくつかの実施例を示す。
【
図2】xおよびy方向にそれぞれDxおよびDyの空間的周期で周期的な2次元アレイに配置されたユニットセルを含む、本開示に係る光メタマテリアルの実施例を示す。
【
図3】完全な反射面の隣に位置する放射源(左)およびメタマテリアルが存在しない状態で反射面の隣に位置する放射源(右)の隣に設置された平面状光メタマテリアルの表面を示す。
【
図4】反射素子で球状の配置に取り囲まれた、基板上に設置されたLEDダイを含む球面状キャビティの実施例であり、反射素子は透明支持部材の上に設置されている。
【
図5】反射要素で円筒状の配置に取り囲まれた、基板上に設置されたLEDダイを含む円筒状キャビティの実施例を示す。
【
図6】PRS素子で平面状の配置に取り囲まれた、基板上に設置されたLEDダイを含む平面状キャビティの実施例を示す。
【
図7A】リフレクタ/基板と反射遅しのアレイとの間の分離距離Sを示す、平面状キャビティの実施例の側面図である。
【
図7B】メタマテリアルの多層から成る平面状キャビティの実施例の側面図である。
【
図8A】平面状メタマテリアルセルの円筒状アレイの実施例である。
【
図9】円筒状キャビティの円筒状アレイの実施例を示す。
【
図10】球状キャビティの円筒状アレイの実施例を示す。
【
図11A】円筒状セルの平面状アレイの実施例を示す。
【
図11B】平面状セルの平面状アレイの実施例を示す。
【
図12A】球状キャビティの平面状アレイの実施例を示す。
【
図12B】平面状キャビティの球状アレイの実施例を示す。
【0015】
図面において、同じ参照符号は同じ部分を示す。
【0016】
メタマテリアルは、負の屈折率や電磁クローキングなどの自然界に生じることのない電磁的性質を得ることのできる人工的に生成された物質である。メタマテリアルの理論特性は1960年代に最初に説明されたが、過去10〜15年にこのような物質のデザイン、エンジニアリングおよび製造において大きな進展があった。メタマテリアルは、一般的に、多数のユニットセル、すなわち多数の個別要素から成る。それらは、それぞれ、動作波長よりも非常に小さいサイズを有する。これらのユニットセルは、顕微鏡で見ると金属および誘電体などの従来の物質で構成される。しかしながら、それらの正確な形状、ジオメトリー、サイズ、オリエンテーションおよびアレンジメントは、共振または巨視的な誘電率および透磁率に関する異常値を生じるなど、巨視的に従来と異なる方式で光に影響を及ぼすことができる。
【0017】
利用可能なメタマテリアルのいくつかの例は、負屈折率メタマテリアル、対掌性メタマテリアル、プラズモンメタマテリアル、フォトニックメタマテリアルなどである。それらのサブ波長性のため、マイクロ波周波数で機能するメタマテリアルは、数ミリメータの典型的なユニットセルサイズを有するが、一方でスペクトルの可視域で機能するメタマテリアルは、数ナノメータの典型的なユニットセルを有する。メタマテリアルは、特定の狭周波数帯域で強力に光を吸収することができる。
【0018】
従来の物質に関し、透磁率および誘電率などの電磁パラメータは、物質を通過中の電磁波に対する、物質を構成する原子または分子の応答から生じる。メタマテリアルの場合は、これらの電磁的性質は、原子または分子レベルで決まらない。その代わりとして、これらの性質は、メタマテリアルを構成する一群の小物体の選択および配置により決定される。このような一群の物体およびその構造は、従来の物質と同様に原子レベルでは「見る」ことができないが、メタマテリアルは、それにもかかわらず、電磁波があたかも従来の物質を通過しているかのようにそこを通過するよう設計できる。さらに、メタマテリアルの性質がこのような小(ナノスケール)物体の組成および構造から決めることができるので、誘電率や透磁率などのメタマテリアルの電磁的性質は、非常に小さいスケールに正確に調整することができる。
【0019】
放射線増強のための光メタマテリアル
電磁放射源から放出された所定波長の放射の強度を高めるために配置された、周期的反射要素を有する光メタマテリアルが提供される。周期的反射要素は、所定波長未満の寸法を有する。周期的反射要素は、「サブ波長」寸法を有するといえるかもしれない。
【0020】
ある実施形態では、周期的反射要素は、反射素子の規則的アレイから成り、各反射素子は、所定の光波長以下の第1寸法を有する。
【0021】
ある実施形態では、周期的反射要素は、ユニットセルの2次元周期的アレイから成る。これらのユニットセルは、平面状に配置され、反射要素101から成る。反射要素101は、例えば長方形状または円形状である(
図1a参照)。ユニットセルは、主形状(すなわち長方形または円盤)だけでなく、いくらかの周囲スペース103も有する。この周囲スペースは、反射素子のための支持構造としての機能も果たす誘電体から成る。これは、
図2により明らかに図示されている。
図2には、互いに対してD
xおよびD
yの距離で設置されたN
x×N
yの要素201から成る全体のアレイが図示されている。これらの幾何学的パラメータもまた、「曲線因子(fill factor)」を規定する。これは、アレイにより覆われる表面積の一部である。これは、
図2に図示された実施例において、f=(D
xD
y)/(L
xL
y)に等しい。
【0022】
他の実施形態では、周期的反射要素は、所定の光波長以下の1次元の周期性を有する規則的グリッドから成る。換言すれば、相補的設計もまた利用可能である、すなわちユニットセルは、反射グリッド107により囲まれた誘電スペース105から成る。換言すれば、アレイの反射要素および誘電体要素が入れ替えられている。
【0023】
反射要素は、ブラッグ反射器を含む複合材料およびナノ複合材料のみならず金属などの均質物質(homogeneous material)を含む任意の反射性材料から形成されてよい。反射要素は、例えば、銀、金および/またはアルミナ、または光周波数でのプラズモン共鳴をサポートする任意の他の金属から形成されてよい。
【0024】
反射要素は、それ自身が反射性(独立型)である物質から形成されてもよいが、当然のことながら物質は固有のパーセンテージで反射する。例えばある周波数での銀層の反射率は99.999%である。言い換えると、物質は完全なリフレクタとして振る舞う。当業者であれば、誘電体支持構造上にナノスケール反射要素を生成するための任意の適切な技術が適していることを理解するであろう。ある実施形態では、エッチングまたは電子ビームリソグラフィなどのリソグラフィ技術が用いられる。他の実施形態では、自己集合化学プロセスが用いられる。ある実施形態では、反射要素は、支持構造内に埋め込まれてもよい。
【0025】
図1および
図2は、ほんの一例として長方形素子を示す。任意の他の規則正しい形状が適当である。
【0026】
ある実施形態では、支持構造は、プレキシガラスまたはパースペクスなどの熱可塑性物質である。他の実施形態では、支持構造は、ポリカーボネート、(例えばSiO
2と熱可塑性物質の)複合体、ガラスまたはシリカである。しかしながら、他の熱的に安定な物質も同様に適している。
【0027】
光周波数において、金属は非常に損失が多く、従ってある実施形態では、金属誘電体(metallodielectric)および/または誘電体および低損失と高温安定性を同時に達成する複合体が好適である。
【0028】
典型的に、本開示に従うLxおよびLyは、所定の波長などの他の設計パラメータにもよるが、20nmから2000nmである。反射要素の厚さは、典型的には、関心波長の1/50以上である。ある実施形態では、反射要素は、その表皮厚さよりも大きい厚さを有する。
【0029】
当然のことながら、メタマテリアルは「曲線因子(fill factor)」を有する。すなわち、メタマテリアルの表面積の一部が反射性である。例えば、メタマテリアルは、表面積の半分が反射性の場合、50%の曲線因子を有する。メタマテリアルの全体的な反射率または透過率は、曲線因子によって決まる。それ故、周期的反射要素のパラメータを選択することによりメタマテリアルの全体的な反射率を決定可能な構成が提供される。
【0030】
本開示の実施形態は、効率を改善するために可視波長を増強することに関する。増幅または増大のための所定の波長は、従って、典型的に2000nm以下である。しかしながら、本開示は、100nmから30000nmの範囲の波長に対して同様に適用可能である。
【0031】
有利には、適切に設置されたとき、実施形態に従う光メタマテリアルは、所定波長の放射強度を高めることが分かっている。これは、光メタマテリアルの特異的性質を調整する能力によるものである。とりわけ、本発明者は、本開示に従って構成された光メタマテリアルは所定波長の光源からの光を増幅するために用いることができ、例えば効率を高めるために用いることができることを認識した。
【0032】
反射および透過素子の「サブ波長」の周期的配置により、周期的反射要素が共振周波数(または波長)において共振することが可能となる。当業者であれば、少なくとも部分的な共振が起こる共振周波数に中心が合わせられた狭周波数帯が存在することを理解するであろう。自己共振周波数は、入射角に依存する。ある実施形態では、周期的反射要素のパラメータは、メタマテリアルが所定波長で共振するように選択される。この共振は、メタマテリアルの「自己共振」と称される。共振周波数においては、共振周波数の放射はメタマテリアルにおいて少なくとも部分的に「捕捉」され、例えば建設的干渉により増幅が起こり得る。メタマテリアルは、「導波路」内の場(フィールド)が境界付けられており且つ抑制された、ある種の導波路を形成する。
【0033】
共振周波数においては、もちろん曲線因子が100%である場合を除いて、周期的反射要素の全体的な反射率が0〜10%に下がる(すなわち、透過率が90〜100%に上昇する)ことが分かっている。デバイスはそれ故、共振周波数において光源からの放射を増幅および放出する。従って、電磁放射源と結合され、所定の光波長の放射の強度を高めるよう配置されたデバイスが提供される。これは、所定波長以下の寸法を有する周期的反射要素を有する光メタマテリアルを提供することにより達成される。
【0034】
本発明者は、メタマテリアルが自己共振するために、最小数のユニットセルが必要であることを見いだした。有利には、本発明者は、メタマテリアルが1次元において少なくとも2.5λの長さを必要とする(ユニットセルがサブ波長である)ことを見いだした。
【0035】
ある実施形態では、デバイスは、例えばマルチバンドの光学性能を提供するためにメタマテリアルの追加層を備える。すなわち、一実施形態では、デバイスは少なくとも、第2の所定波長の光源からの放射の強度を高めるよう配置された周期的反射要素を有する第2の光マテリアルを備える。2つの光メタマテリアルは、例えば積層により結合される。ある実施形態では、第2のメタマテリアルの反射要素の周期性は、第1のメタマテリアルのそれと異なる。そのため、マルチバンドの光学性能が達成され得る。ある実施形態では、擬似的な広帯域応答を提供するために、部分的に重複する所定波長を有する複数の異なる光メタマテリアルが結合されてもよい。ある実施形態では、デバイスは高められた効率を提供するよう配置された複数の光メタマテリアルを含んでもよい。
【0036】
ある実施形態において、本発明者は、追加的なメタマテリアル層がmλ/2の間隔を空けて有利に配置されることを見いだした。ここで、mは整数である。当業者であれば、追加のメタマテリアルもまた、第1のメタマテリアルと同様に所定波長の強度の更なる増大をもたらすことを理解するであろう。
【0037】
デバイスは、例えばキャビティの内部または外部のどちらかに、紫外光および青色光を白色光に変換するリン光体などの蛍光物質をさらに組み入れてもよい。リン光体は、例えば異なる周波数応答を提供するために、メタマテリアルの非反射部分をコーティングしてもよい。蛍光物質はまた、支持部材に埋め込まれてもよい。
【0038】
光メタマテリアルを含むキャビティ
とりわけ、本発明者は、光メタマテリアルおよびリフレクタにより少なくとも部分的に区切られたキャビティを形成することにより、所定波長の強度がさらに高められることを見いだした。
【0039】
光メタマテリアルおよびリフレクタにより少なくとも部分的に区切られたキャビティと、キャビティ内の電磁放射源と、を備える発光デバイスが提供される。光メタマテリアルは、電磁放射源からの放射を受けて、所定の光波長の放射の強度を高めるよう配置された周期的反射要素を備える。
【0040】
ある実施形態では、「開(オープン)」平面キャビティが設けられる。この実施形態に係る平面キャビティの有効性が
図3のシミュレーションに示されている。
図3では、光メタマテリアルが平面構造においてリフレクタの上方に放射源に隣接して設置されるとき、電界振幅が高められている。
図3(左)は、リフレクタ(放射源の左側)と光メタマテリアル(放射源の右側)との間に埋め込まれた放射源を示す。
図3(右)では、光メタマテリアルがない。図面に図示されたグレイレベル(濃度)は、所定波長の放射の強度を示す(白が高強度を示す)。
【0041】
ある実施形態では、光メタマテリアルと反射面との間の最適距離は、
【数1】
により与えられる。ここで、λ
0は自由空間での波長、mは整数、およびΦ(θ)は光メタマテリアルの反射係数位相である。
【0042】
反射係数位相、すなわち反射係数の位相は、周知の専門用語である。それは、反射に起因する位相シフトについての情報を提供する。任意の物質に対し、それは、例えばネットワークアナライザを用いることにより、理論的または実験的に決定されてよい。反射係数位相は、入射角によって決まる。反射係数位相は、メタマテリアルの共振周波数についての情報を含む。
【0043】
上記方程式中のパラメータSは、キャビティの「共振距離」と見なされてよい。キャビティの共振とメタマテリアルの自己共振とを区別してもよい。
【0044】
上記方程式を満たすSの値において、キャビティの共振が達成され、放射がキャビティから放出される。Sが共振距離から増大または減少すると、放出される放射量が大幅に減少する。従って、必須の基準が満たされなければ放射を捕捉する一種の光スイッチまたはフィルタが設けられていると見なされてもよい。伝送帯域幅は、一般的に数nmである。
【0045】
例えば、反射係数位相の標準値が例えばφ=−150°、およびm=1に対し、λ
0=532nm周辺での動作のための最適な分離距離は、22.1nmである。
図3に示す実施形態では、D
x=99.3nm、D
y=227.0nm、L
x=92.2nmおよびL
y=216.3nmである。反射係数位相は、ユニットセルのSパラメータを測定することにより取り出される。パラメータmは整数であり、大きなmの値は、リフレクタと光メタマテリアル表面との間の距離Sを好適な値に調整するためにも使用できる。実施形態では、mは設計パラメータに応じて15未満である。
【0046】
このメタマテリアル・コンセプトは、特別な幾何パターン−例えば特定のサイズ、特定の距離間隔をおいた円形要素の2次元周期的配置−を適用することにより制御可能な反射率を提供する自由を設計者に与える。この配置は、一連の特別なパターン−例えば頃成る要素サイズ、形状、周期性など−でさらに実現されてよい。これは、光メタマテリアルの反射率の完全な制御−例えば50%、60%、99%反射など−を提供する。
【0047】
とりわけ、本発明者は、部分的に反射し且つ部分的に透過する光メタマテリアルを設けることにより、キャビティが形成可能であることを認識した。光メタマテリアル自身が所定の自己共振周波数および所定の反射率を提供するよう構成されてもよいことを上記内容ことから理解できる。本発明者は、キャビティの共振周波数がメタマテリアルの自己共振周波数と重複する場合、大きな増幅が達成されることを見いだした。2つの共振周波数が重複し且つその周波数においてキャビティが放射により励起されるとき、放射が蓄積し、放射がメタマテリアルを通り抜ける。当業者であれば、共振周波数と所定の周波数に対し言及されるとき、これらの周波数が帯域幅を含んでもよいことを理解するであろう。帯域幅は、比較的狭くてもよい。ある実施形態では、キャビティから「放出」された放射が狭帯域幅を有している。
【0048】
少なくとも上記の内容から、出射光ビームの放射角度θは、(平面アレイ軸に対する垂直線から)+/−60度の間に調整可能であることを理解できる。任意の望ましい放出角に対し、対応する反射係数位相が見つけられ得る。
【0049】
ある実施形態では、リフレクタは金属面などの完全は反射面である。他の実施形態では、リフレクタは、本開示に従う追加的な光メタマテリアルであってよい。他の実施形態では、リフレクタは、複合体、またはナノ複合体、またはブラッグ反射器である。
【0050】
ある実施形態では、メタマテリアルの反射要素は、光源の周囲に設置され、キャビティの形をしてそれを取り囲む。光源は、キャビティの底面に位置してもよいし、キャビティ容積内のどこかに位置してもよい。当業者であれば、デバイスの正確な動作がキャビティの反射率を変えることにより調整できることをこの開示から理解するであろう。
【0051】
球状または半球状キャビティ
ある実施形態では、球状または半球状キャビティが形成される。このセットアップは
図4に示されている。光源(例えばLEDダイ)401が平面反射基板403の上に設置されている。
【0052】
上記内容から理解できるように、平面基板は任意的であり、例えば反射性でなくてもよい。球形状の支持部材が基板およびLEDダイの上に設置されている。支持部材は、キャビティを満たしてもよい。そしてユニットセル(反射素子)405が球の中心に向かうように支持部材の上に設置されている。随意的に、蛍光体(リン光体)がキャビティの内部または外部のいずれかに含まれてもよい。ある実施形態では、基板および/または反射要素の反射面は、金属またはブラッグミラーのような低損失リフレクタを用いることにより形成されてもよい。当業者であれば、図示されたユニットセルの数は説明を目的とした単なる例示であり、任意の数のユニットセルが適合することを理解するである。ある実施形態では、正確な数は、添付の図面に図示されたものよりずっと多い。
【0053】
円筒状または半円筒状キャビティ
さらに別の実施形態が
図5に示されている。光源501(例えばLEDダイ)が平面基板503の上に設置されている。平面基板は、反射性であってもよいし、反射性でなくてもよい。円筒形状の支持部材が、基板およびLEDダイの上に設置されている。反射素子505が、中心に向かうように支持部材の上に設定されている。随意的に、蛍光体(リン光体など)がキャビティの内部または外部のいずれかに含まれてもよい。基板および/または反射要素の反射面は、金属またはブラッグミラーのような低損失リフレクタを用いることにより形成されてもよい。
【0054】
平面キャビティ
平面形状を備える実施形態が
図6に示されている。光源601(例えばLEDダイ)が平面基板603の上に設置されている。平面基板は、反射性であってもよいし、反射性でなくてもよい。長方形状の支持部材が、基板およびダイの上に設置されている。そして、反射素子605が支持部材の上に設定されている。随意的に、蛍光体(リン光体など)がキャビティの内部または外部のいずれかに含まれてもよい。基板および/または反射要素の反射面は、金属または例えばブラッグミラーのような低損失リフレクタを用いることにより形成されてもよい。
【0055】
上述したように、ある実施形態では、例えば広帯域応答などのマルチバンド応答を提供するために、追加的なメタマテリアルが付加層として追加されてもよい。
図7Aは、1つの光メタマテリアル(701)を備える平面キャビティの実施例の概略図を示す。
図7Bは、3つの光メタマテリアル(703,705,707)を有する平面キャビティの実施例の概略図を示す。当業者であれば、任意の数の光メタマテリアルが用いられてよいことを理解するであろう。
【0056】
本発明者は、メタマテリアルの反射率が高くなるほど、キャビティ内部の電界が強くなるが放出される放射の帯域が狭くなることを見いだした。とりわけ、本発明者は、66〜75%の反射率のメタマテリアルを用いることにより、帯域とキャビティ性能の有利なバランスが達成できることを見いだした。ある実施形態では、これは3倍から5倍のエネルギー利得増加をもたらすことを分かっている。
【0057】
本発明者は、多数キャビティ設計を提供することにより、利得と帯域のトレードオフをさらに解決した。
【0058】
多数キャビティ
ある実施形態では、多数の光源と平面キャビティを有するデバイスが提供される。多数のキャビティは、例えば円筒状基板の上に設置されてよい。各キャビティは、異なるジオメトリ、すなわち異なる形状および/またはサイズの反射素子を有してよい。これにより、各キャビティは、電磁スペクトルの異なる部分で光を放出することができ、その結果、全体的な出力が例えば白色光などの広帯域となる。各キャビティは、1次(m=1)共振を引き起こさず、高次の共振を利用してもよい。
【0059】
多数キャビティの実施形態が
図8から
図12に示されている。
【0060】
多数キャビティの実施形態では、各キャビティは、システムの全体的な帯域を高めるために、異なる形状およびサイズの周期的素子を利用してもよい。それ故、それぞれのキャビティが所与の光波長の周囲で最適に動作するよう調整された多数キャビティが提供されてもよい。全てのキャビティの合計光出力は、例えば、全可視スペクトルにわたる白色照明を作り出してよい。
【0061】
実施形態は、白熱電球およびLEDに関するが、本開示は、任意の単一指向性光源または全指向性光源を含む任意の光源に等しく適用可能である。
【0062】
有利には、実施形態に係るシステムは、既存の電磁放射源(例えば、白熱フィラメント&固体光源)に対する「追加(add-on)」要素として用いられてもよい。デバイスはパッシブである、すなわち、外部電源またはアクティブ制御システムを必要としない。
【0063】
実施形態に係るデバイスは、光スペクトルの特定の波長範囲にわたって発光パワーを高める。それは狭帯域光源(例えばレーザまたはLED)の明るさを高めるよう調整可能であり、あるいは全帯域にわたって広帯域光源の明るさを高めるよう調整可能である。実施形態は、発光効率を高めること、すなわち、デバイスがいかに良く入力ワットから光を生成するかに関する。これは、キャビティがない光源と比べて所与の方向において高効率、大きなルーメン毎ワットを実現できる単一キャビティジオメトリの構成(すなわち平面状、円筒状または球状の単一キャビティ)で達成されてよい。多数のこれらのキャビティが例えば平面状、円筒状、または球状のセットアップに集められたとき、多数の光ビームがそれぞれ高い発光効率を達成できる。これは、同様に、全光束を増大する。
【0064】
本開示での可視光に対する言及は単なる例示であり、本開示は赤外光、紫外光にも同様に適用可能である。
【0065】
態様および実施形態について上述したが、本明細書に開示された本発明の概念から逸脱することなく、変形が可能である。