特許第6307041号(P6307041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307041
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】排液管及び排液管付き貯留槽
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   B01J4/00 103
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-95971(P2015-95971)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-209815(P2016-209815A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 尚希
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−271587(JP,A)
【文献】 特開昭54−011564(JP,A)
【文献】 特開2006−241713(JP,A)
【文献】 特開昭57−099386(JP,A)
【文献】 特開2010−115599(JP,A)
【文献】 特開2009−034558(JP,A)
【文献】 特開2000−079314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00−17/12
B01D 47/00−47/18
B01D 53/14−53/18
B01J 4/00−4/04
C02F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延び、少なくともその上端部が、貯留槽内の液体に液没する液没管部と、前記液没管部の上端面に対向配置され、前記液没管部の上端開口の全体を覆う天井盤と、前記天井盤と前記液没管部の上端面との間に形成されて側方に向かって開口する側方開口とを有し、サイフォン現象により前記側方開口から液体を吸引する排液管において、
前記天井盤の下面は、前記液没管部の上端面より全側方に大きくかつ前記液没管部の上端面との対向領域から外縁に至るまで連続して徐々に迫り上がるように湾曲している排液管。
【請求項2】
前記液没管部の上端部には、側方に張り出す上端フランジが備えられている請求項1に記載の排液管。
【請求項3】
前記液没管部に設けられて、上下に伸縮可能な伸縮部と、
前記液没管部に取り付けられて前記液体から浮力を受け、前記天井盤の湾曲した下面の上下方向の途中位置に前記液体の液面が位置するように前記伸縮部を伸縮させるフロートとを備え、
前記液没管部により上方に前記液体から浮力を受ける部品を有しない請求項1又は2に記載の排液管。
【請求項4】
前記フロートは、上方に向かって縮径するテーパー部を有し、上端の外径より下端の外径が大きくなっている請求項3に記載の排液管。
【請求項5】
前記液没管部は、上下方向の途中位置に下方に向かうに従って縮径するテーパー部を有し、
前記フロートは、前記液没管部のうち前記テーパー部より上側の大径管部の外側に嵌合されると共に前記テーパー部全体を受容している請求項4に記載の排液管。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の排液管を内部に備え、外部から液体が供給される排液管付き貯留槽。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の排液管を内部に備えかつ、ワーク又はガスの洗浄に使用された液体が貯留されている排液管付き貯留槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留槽内の液体に液没し、上端部から液体を取り込んで貯留槽外へと排出する排液管及びそのような排液管を有する排液管付き貯留槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の貯留槽として、例えば塗装工場の空調ダクト内に配置されて水を貯留しているものが知られている。その貯留槽内の水は、吸い上げられて噴霧され、空気の加湿に使用される。また、噴霧された水の大部分は貯留槽に回収される。さらには、貯留槽には冷却水が供給されると共に、貯留槽の底面から起立した排液管を通して貯留槽内の水が排出されるようになっている。これにより、貯留槽内の水の温度上昇を防ぐと共に、貯留槽内の水面が排液管の上端面の近傍に維持される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−245928号公報(図1,段落[0032])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の排液管では、その上端開口が深く水没しない限り、排液管に流れ込む水に大きな水圧が作用せず(即ち、大きな吸引力が発生せず)、水面近傍の水が排液管の内面伝いに少しずつ流下するに留まる。このため、貯留槽に供給される水量が変動した場合に、その変動量に排水量が追従しきれず、貯留槽内の液面が大きく上下動するという不具合が生じ得た。また、水面上に浮遊している異物の排除に上記した従来の排液管を使用した場合、吸引力が小さいために、排液管の上端開口に極めて近い範囲の異物しか排除することができないという問題も生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より大きな吸引力で液体を吸引することが可能な排液管及び排液管付き貯留槽の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、上下に延び、少なくともその上端部が、貯留槽内の液体に液没する液没管部と、前記液没管部の上端面に対向配置され、前記液没管部の上端開口の全体を覆う天井盤と、前記天井盤と前記液没管部の上端面との間に形成されて側方に向かって開口する側方開口とを有し、サイフォン現象により前記側方開口から液体を吸引する排液管において、前記天井盤の下面は、前記液没管部の上端面より全側方に大きくかつ前記液没管部の上端面との対向領域から外縁に至るまで連続して徐々に迫り上がるように湾曲している排液管である。
【0007】
請求項2の発明は、前記液没管部の上端部には、側方に張り出す上端フランジが備えられている請求項1に記載の排液管である。
【0008】
請求項3の発明は、前記液没管部に設けられて、上下に伸縮可能な伸縮部と、前記液没管部に取り付けられて前記液体から浮力を受け、前記天井盤の湾曲した下面の上下方向の途中位置に前記液体の液面が位置するように前記伸縮部を伸縮させるフロートとを備え、前記液没管部により上方に前記液体から浮力を受ける部品を有しない請求項1又は2に記載の排液管である。
【0009】
請求項4の発明は、前記フロートは、上方に向かって縮径するテーパー部を有し、上端の外径より下端の外径が大きくなっている請求項3に記載の排液管である。
【0012】
請求項の発明は、前記液没管部は、上下方向の途中位置に下方に向かうに従って縮径するテーパー部を有し、前記フロートは、前記液没管部のうち前記テーパー部より上側の大径管部の外側に嵌合されると共に前記テーパー部全体を受容している請求項4に記載の排液管である。
【0013】
請求項の発明は、請求項1〜に記載の排液管を内部に備え、外部から液体が供給される排液管付き貯留槽である。
【0014】
請求項の発明は、請求項1〜に記載の排液管を内部に備えかつ、ワーク又はガスの洗浄に使用された液体が貯留されている排液管付き貯留槽である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の排液管は、貯留槽内で液没する液没管部の上端開口の全体を天井盤で覆い、液没管部の上端面と天井盤との間に側方開口を設けたので、液没管部への液体の実質的な入口が側方開口になる。そして、その側方開口が液体で満たされ、サイフォン現象により従来より強い吸引力で液体を吸引することができるようになる。しかも、天井盤の下面は、液没管部の上端面より全側方に大きくかつ液没管部の上端面との対向領域から外縁に至るまで連続して徐々に迫り上がるように湾曲しているので、液面に浮遊している異物を側方開口に取り込み易くなる。
【0016】
請求項2の排液管では、上端フランジにより側方開口の周囲の波が静められ、波の影響によるサイフォンブレイクの発生が抑えられる。
【0017】
請求項3の排液管では、伸縮部とフロートとにより側方開口の位置が液面の上下動に応じて上下し、安定して液面に浮遊している異物を側方開口に取り込むことができる。
【0021】
請求項の排液管付き貯留槽では、天井盤の下面より上側に位置する液体が強い吸引力で吸引されて早急に取り除かれ、液面位置の上下動の振幅が抑えられる。即ち、従来より液面位置が安定する。
【0022】
請求項の排液管付き貯留槽では、ワーク又は空気の洗浄によって排液管付き貯留槽内に浮遊している異物を排液管により従来より強い吸引力で吸引して効率良く排除することができる。



【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る排液管付き貯留槽を有する空調装置の斜視図
図2】排液管付き貯留槽を有するワッシャの概念図
図3】排液管の側断面図
図4】排液管の一部を拡大した側断面図
図5】第2実施形態の排液管付き貯留槽の側断面図
図6】第3実施形態の排液管付き貯留槽の側断面図
図7】本発明の変形例に係る排液管の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1図4に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る排液管付き貯留槽20(以下、単に「貯留槽20」という)を有する空調装置10が示されている。図1に示すように、空調装置10は、水平方向に延びたダクト11を有し、そのダクト11の一端部にブロアー12が接続されている。一方、ダクト11の他端側はエアー導入口11Kになっていて、そこには防護用メッシュ11Mが張られている。また、ダクト11の内部には、防護用メッシュ11Mからブロアー12に向かって第1の加熱装置31、エアワッシャ40、冷却装置33及び第2の加熱装置32が順番に並べられている。そして、エアー導入口11Kから取り込んだ空気を所定の温度及び湿度に調整して図示しない塗装ブースに送給する。
【0025】
具体的には、第1及び第2の加熱装置31,32は、スチームパイプを屈曲させてなり、冷却装置33は、冷水パイプを屈曲させてなる。また、冷却装置33と第2の加熱装置32との間は区画23によって仕切られ、冷却装置33とエアワッシャ40との間、及び、第1の加熱装置31とエアワッシャ40との間は、それぞれエリミネータ22,22によって仕切られている。エリミネータ22は、複数の金属板を隙間を空けて重ねてラビリンス構造としたものであり、その隙間を通過する空気中の水滴を捕らえて後述する貯留槽20へと集める。
【0026】
エアワッシャ40は、貯留槽20にポンプ41を介して噴霧管44を接続した構造になっている。貯留槽20は、上面が開放した偏平箱形をなし、その上面開口にはメッシュ21が張られている。また、貯留槽20は、ダクト11の底壁に形成された矩形の取付孔(図示せず)に嵌め込まれ、図2に示すように、貯留槽20の上面がダクト11の底壁の内面と略面一になっている。さらに、貯留槽20の一側壁には、ポンプ41から水平に延びた吸引パイプ43が貫通している。そして、ポンプ41から鉛直上方に延びた送給パイプ42が、途中で直角に曲がってダクト11の一側壁の上部を貫通し、貯留槽20の上方で水平に延びている。
【0027】
噴霧管44は、送給パイプ42の水平部分から複数垂下され、隣り合った噴霧管44,44の対向部分に複数の噴霧部45が上下に等間隔に並べて設けられている。そして、ポンプ41により貯留槽20内から吸い上げられた水が複数の各噴霧管44の噴霧部45群から霧状になって噴出される。
【0028】
図2に示すように、貯留槽20には、冷水システム50が取り付けられている。この冷水システム50は、貯留槽20より下方に配置されたサブ貯留槽51と、そのサブ貯留槽51に取り付けられた冷却装置52と、サブ貯留槽51から貯留槽20へと水を送給する送給管路53と、貯留槽20からサブ貯留槽51に水を排水する排出管路54とからなる。
【0029】
サブ貯留槽51には、水が貯留されていて、その水が冷却装置52のポンプ52Pによりサブ貯留槽51の底部側から吸引されて冷却され、サブ貯留槽51に戻される。これにより、サブ貯留槽51内の水は、冷却水になっている。そして、その冷却水が送給管路53のポンプ53Pにより吸い上げられて、貯留槽20の底部に供給される。また、貯留槽20には、吸引パイプ43の吸引口より上側に基準貯水面が設定されていて、その基準貯水面をオーバーした分の水が、排出管路54を通してサブ貯留槽51内に排水される。そして、その排出管路54に、本発明に係る排液管55が備えられている。
【0030】
具体的には、排出管路54は、貯留槽20の下方で水平に延びかつ一端側が下方に屈曲してサブ貯留槽51内の冷却水に水没した幹管54Aを有する。また、幹管54Aの他端側は閉塞されていて、幹管54Aの水平部分における2箇所から上方に排液管55,55が延びている。そして、それら排液管55,55は、貯留槽20の底部を貫通して貯留槽20の底面から起立している。
【0031】
図3には、排液管55の詳細構造が示されている。排液管55は、液没管部55Hと天井盤58とからなる。液没管部55Hは、幹管54Aから鉛直に延びた本発明に係る小径管部56の上側に本発明に係る大径管部57を備えた構造になっている。また、貯留槽20の底壁には1対の貫通孔20K(図2参照)が貫通形成されていて、それら貫通孔20Kに各排液管55の小径管部56における軸方向の中間部分が挿通した状態に溶接されている。また、排液管55の大径管部57は、小径管部56の上端部から上方に向かって拡径したテーパー部57Tと、テーパー部57Tから上方に延びた円筒部57Eと、円筒部57Eの上端から側方に張り出した上端フランジ57Fとを有する。
【0032】
図3に示すように、天井盤58は、液没管部55Hの上方に配置されている。天井盤58は、上端フランジ57Fより外径が大きな円板であって、液没管部55Hの上端開口55K全体を上方から覆い、上端フランジ57Fより側方に張り出している。また、上端フランジ57Fには、天井盤58を固定するための複数の螺子孔57Nが周方向の複数箇所(例えば、4箇所)に貫通形成されている。また、それら螺子孔57N群の同軸上において、天井盤58には、複数のボルト挿通孔58Nが形成され、天井盤58と上端フランジ57Fとの間には、円筒状のスペーサ59Sが挟まれている。そして、天井盤58の上方から各ボルト挿通孔58N及びスペーサ59Sにボルト59Bが通されて螺子孔57Nに締め付けられ、これにより天井盤58が上端フランジ57Fに固定されている。
【0033】
上端フランジ57Fと天井盤58との間で側方に向かって開口した部分は、本発明に係る側方開口60になっている。そして、側方開口60の開口面積は、小径管部56における水の通過断面積以上になっている。詳細には、上端フランジ57Fの上面57Jの外縁部を通過しかつ天井盤58の下面58Jと直交する上端フランジ57F周りの帯状面のうちスペーサ59Sによって閉塞された部分を除いた面が側方開口60の開口面になっていて、その側方開口60の開口面の面積である側方開口60の開口面積が、小径管部56の中空部分の断面積である通過断面積以上になっている。また、側方開口60の高さは、小径管部56の内径より小さくなっている(具体的には、小径管部56の内径の1/4〜3/4倍になっている)。
【0034】
なお、その他の部位に関しては、小径管部56の内径をD1、小径管部56の軸長をH1、大径管部57の最大内径をD2、大径管部57の軸長をH2とすると、以下の関係になっている。
【0035】
5・D1<H1<10・D1 ・・・(1)
1.5・D1<D2<3・D1 ・・・(2)
【0036】
本実施形態の貯留槽20及び排液管55の構成に関する説明は以上である。次に、これら貯留槽20等の作用効果について説明する。上述したように貯留槽20には、サブ貯留槽51から送給される冷却水と、噴霧部45から噴霧されて回収される水とが、随時、流れ込んでいるが、貯留槽20内の水は、その貯留槽20の底面から起立している排液管55の上端部から貯留槽20外に排出されるので、貯留槽20の水面は、排液管55の上端部に相当する基準水面位置に保持される。
【0037】
ところで、貯留槽20に流れ込む水量が何らかの事情により急増した場合、排液管55が従来のように、単に上方が開放しただけのパイプ構造であると、排液管55からの排水量が貯留槽20に流れ込む水量に追従できず、貯留槽20から水が溢れる事態が起こり得る。
【0038】
しかしながら、本実施形態の排液管55では、天井盤58を有した特殊な構造になっているのでサイフォン現象を利用した強い吸引力で水を吸引することができ、貯留槽20に流れ込む水量に追従した排水を行うことができる。詳細には、本実施形態の排液管55では、貯留槽20内で水没している液没管部55Hの上端開口55Kの全体を天井盤58で覆い、天井盤58と液没管部55Hの上端面57Jとの間に側方開口60を設けたので、液没管部55Hへの水の実質的な入口は、側方開口60になる。そして、その側方開口60は、側方に向かって開口しているから容易に水で満たされ、しかも、側方開口60の開口面積は、小径管部56の通過断面積以上になっているので、側方開口60を通過した水で小径管部56が容易に満たされる。これにより、容易にサイフォン現象が発生し、水面が天井盤58の下面58Jより僅かに上昇しただけで、サイフォン現象による強い吸引力で水を吸引することができる。そして、天井盤58の下面58Jより上側に位置する水を早急に取り除き、貯留槽20内の液面位置を、天井盤58の下面58Jの近傍位置に安定させることができる。
【0039】
ここで、天井盤58が排液管55の上端開口55Kと同じ大きさであるとすると、図4(A)に示すように、水面が天井盤58の下面58Jより僅かに上方に位置しただけでは、水が上端開口55Kに向かって斜めに流下して、側方開口60が水で満たされない事態が起こり得る。しかしながら、本実施形態の排液管55では、図4(B)に示すように、天井盤58は、上端開口55Kより全側方に大きくなっているので、水面が天井盤58の下面58Jより僅かに上方に位置しただけで、側方開口60が容易に水で満たされ、サイフォン現象が生じる。
【0040】
さらには、図3に示すように、液没管部55Hの上下方向の中間位置より下側が小径管部56をなし、上側が大径管部57になっているので、側方開口60から大径管部57に流れ込んだ水が小径管部56に集められて小径管部56が水で容易に満たされ、この点においてもサイフォン現象が容易に発生する。また、液没管部55Hの上端から水平側方に上端フランジ57Fが張り出し、天井盤58も水平になっているので、側方開口60の周囲の波が静められ、波の影響によるサイフォンブレイクの発生が抑えられる。なお、天井盤58と上端フランジ57Fとの間のスペーサ59Sを変更することで側方開口60の開口高さ及び開口面積を容易に変更することができる。
【0041】
[第2実施形態]
本実施形態の貯留槽20Vは、図5に示されている。この貯留槽20Vは、図示しないワークを洗浄するための、所謂、洗浄槽であって、図示しない供給路から洗浄水を供給されていて、一定量以上の洗浄水を貯留している。そして、図示しない搬送手段により順次搬送されてくるワークが貯留槽20V内の洗浄水に沈められて洗浄される。その結果、貯留槽20Vの液面には、油分が付着した鉄粉等の異物が浮遊しており、それら異物を貯留槽20Vから排除するために排液管55Vが設けられている。
【0042】
その排液管55Vは、前記第1実施形態の排液管55に対して天井盤58Vの構造のみが異なる。即ち、天井盤58Vは、皿状に湾曲していて下面58Jが外側に向かうに従って上方に迫り上がっている。なお、図5には、上端フランジ57Fと天井盤58Vとを連結するボルト59B及びスペーサ59S(図3参照)は省略されている。また、排液管55Vの小径管部56は、貯留槽20Vの底部を貫通しており、小径管部56の下端部は、貯留槽20Vの下方に備えた異物収容トレイ51Vに上方から臨んでいる。
【0043】
本実施形態の構成によれば、ワークの洗浄によって貯留槽20Vの液面に浮遊している異物を排液管55Vにより従来より強い吸引力で吸引して効率良く排除することができる。また、排液管55Vの天井盤58Vの下面58Jが、外側に向かうに従って上方に迫り上がっているので、天井盤58Vの下面58Jを側方開口60へのガイド面にして液面に浮遊している異物をスムーズに側方開口60に取り込むことができる。また、従来の排液管のように単に上方が開放しただけのパイプ構造であると大きな異物が異物収容トレイ51Vに流れ混み、異物収容トレイ51V内の洗浄水をポンプ移送する場合に、ポンプの故障の原因になり得るが、本実施形態の排液管55Vでは、側方開口60が狭くなっているので大きな異物を堰き止めてポンプの故障を防ぐこともできる。
【0044】
[第3実施形態]
本実施形態の貯留槽20Wは、図6に示されている。この貯留槽20Wは排液管55Wの構造のみが前記第1実施形態と異なり、その排液管55Wは、蛇腹パイプ61(本発明の伸縮部に相当する)とフロート62を備えている点のみが前記第2実施形態の排液管55Vと異なる。即ち、この排液管55Wは、貯留槽20W内に位置する小径管部56の中間部が分断されて蛇腹パイプ61で連絡された構造になっている。また、大径管部57の外側には、例えば発泡樹脂製のフロート62が嵌合装着されている。そして、フロート62が洗浄液から受ける浮力により蛇腹パイプ61が伸縮して、側方開口60が液面近傍に位置するようになっている。
【0045】
本実施形態の構成によれば、蛇腹パイプ61とフロート62とにより、側方開口60の位置が液面の上下動に応じて上下するので、安定して液面に浮遊している異物を側方開口60に取り込むことができる。
【0046】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0047】
(1)前記第1〜第3の実施形態の排液管55,55V,55Wは、液没管部55Hが軸方向で径が異なっていて、小径管部56と大径管部57とに分かれていたが、図7に示した排液管55Xのように、液没管部55Yが均一径となっていて、例えば、その液没管部55Yの上端部から起立した複数のピン59Pにて天井盤58を支持した構造としてもよい。
【0048】
(2)前記第1実施形態の排液管55の液没管部55H及び天井盤58は、平面形状が円形であったが非円形であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
20,20V,20W 貯留槽
55H,55Y 液没管部
55K 上端開口
56 小径管部
57 大径管部
57F 上端フランジ
58,58V 天井盤
60 側方開口
61 蛇腹パイプ(伸縮部)
62 フロート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7