(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307046
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ミーリングカッター
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23C5/10 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-117287(P2015-117287)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2016-117146(P2016-117146A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】103145031
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503295932
【氏名又は名称】張 新添
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】張 新添
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−107813(JP,A)
【文献】
実開平05−037411(JP,U)
【文献】
独国実用新案第20022045(DE,U1)
【文献】
特開昭49−85677(JP,A)
【文献】
特開平8−155736(JP,A)
【文献】
特開2010−179379(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/061933(WO,A1)
【文献】
特開平01−316110(JP,A)
【文献】
実開平3−88620(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーバーおよびカッターブレードを備え、
前記アーバーは、一端に凹溝が設置されており、本体の周壁に方形状或いは円弧状の螺旋溝が形成されており、前記螺旋溝の一端である溝端と前記凹溝とが連接し、
前記凹溝は、前記アーバーを切り欠いた第1面と第2面とによって区画されており、
前記カッターブレードは、前記凹溝の前記第1面に設置されており、前記アーバーの軸方向の一端側に形成され波浪形状をなす第1ブレードと、前記周壁側に形成され前記アーバーの軸方向にストレート形状をなす第2ブレードとを有し、
前記第1面は前記アーバーの軸方向に延びて形成される平面であり、前記第2面は前記第1面と交差する曲面であり、前記第1面と前記第2面との交線は弧状であり、
前記螺旋溝の軸方向の幅は、前記第1面の軸方向の最大長さより小さいことを特徴とするミーリングカッター。
【請求項2】
前記凹溝に設置されているカッター台をさらに備え、
前記カッターブレードは、使い捨て式カッターブレードであり、前記カッター台に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のミーリングカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミーリングカッターに関し、特に数値或いはコンピューター数値の制御を受ける機械に対応し、先端の移動軌跡が円柱状の螺旋であるドリリング機能を有するミーリングカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示すとおり、従来のドリルヘッドのドリリングの孔直径ψdは、ドリルヘッドのブレード直径ψDに基づき決まる。
そのため、各ドリルヘッドは、それぞれのサイズに応じた孔径しかドリリングできない。
よって、使用者は多種のサイズのドリルヘッドを準備しなければならず、これによりさまざまなサイズのドリルヘッドを取り揃える必要がある。
【0003】
また、ツイストドリルヘッドによりドリリングする際の切りくずは、多くが連続して排出され、且つ切りくずの幅が大きい。
特に軟鋼、アルミ或いはアルミ合金或いはステンレス材質のドリリング加工では、連続性切りくずは途切れにくく、切りくず排出溝内に詰まり易く、熱伝導及び抵抗が非常に大きくなり、主軸が受ける負荷は非常に大きい。
コントローラーの主軸負荷表は通常は60%前後であるため、工作機械の主軸、剛性、切削精度及び寿命等に対する影響は極めて大きい。
よって、ドリリングを行うことができず、間歇式ドリリングとして動いたり停まったりすることしかできない。
切りくずが詰まってしまえば、ドリリングを継続することはできないため、加工を一時のに中止し、切りくずを取り除いた後でなければ、作業を継続することはできない。
【0004】
図13に示す従来の使い捨て式ドリルヘッドにおいて、使い捨て式ドリルヘッドの使い捨て式カッターブレードには、切りくず切断溝の設計を有するが、ドリリング材質が柔らかい材料である時には、切りくずが容易に切断されない現象が生じ、詰まりが発生し、過熱の現象が起き易い。
そのため、切削液を使用し、ドリルヘッドに掛けなければならない。
しかし、加工が深すぎる時には、排出された切りくずは、切削液の孔内への進入を妨げ、ドリルヘッド末端のカッティングエッジ位置まで到達できず、カッティングエッジの温度は上昇を続ける。
このため、やはりドリリングを中止し、切りくずを取り除いた後でなければ、作動を継続することはできない。
【0005】
中心から出水するドリルヘッドは市販されているが、中心出水設備は高価で、工作機械コストの30%あまりを占めるため、普及率はわずかに5%前後である。
よって従来のドリリング作業は、動いたり停まったりの間歇式ドリリングにより、切りくず排出及び放熱の機能を達成しなければならない。
そのため、加工効率は明らかに劣り、加工コストを拡大してしまう。
【0006】
上記した2種のドリルヘッドにおいて、その切削方式は共に連続切削に属するため、それが発生する切りくずは大きく、且つ連続性の切りくずであるあるため、詰まり及び過熱現象が容易に発生する。
また、ツイストドリルヘッドであろうと、使い捨て式ドリルヘッドであろうと、ドリリング深さの制限について考慮しなければならない。
ドリリングの深さが深いほど、切りくずの排出ができないという問題が起こり易く、切りくずはドリル溝内に詰まり、フィードできないという欠点を招くため、ドリルヘッドを引き出し、切りくずを排出し、さらに冷却した後でなければドリリング作業を継続することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−11212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記先行技術を示す
図12及び
図13で分かるとおり、従来のツイストドリルヘッド或いは使い捨て式ドリルヘッドの2種のドリルヘッドにおいて、その切削方式は共に連続切削に属するため、それが発生する切りくずは大きく、且つ連続性の切りくずであるため、詰まり及び過熱が発生し易い。
各ドリルヘッドは、それぞれのサイズに応じた孔径しかドリリングできないため、使用者は多種のサイズのドリルヘッドを準備しなければならず、ドリルヘッドサイズの在庫量が非常に多くなってしまう。
且つドリリング深さの制限を考慮しなければならず、ドリリングの深さはドリル溝の高度を超過してはならない。
さもなくば、切りくずはドリル溝内に詰まり、フィードできない欠点がある。
【0009】
本発明の目的は、放熱と切りくず排出の効果を有し、先端の移動軌跡が円柱状の螺旋であり、ミーリング加工及びドリリング加工を行うミーリングカッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるミーリングカッターは、アーバーおよびカッターブレードを備える。
アーバーは、一端に凹溝が設置されており、本体の周壁に方形状或いは円弧状の螺旋溝が形成されており、螺旋溝の一端である溝端と凹溝とが連接する。
凹溝は、アーバーを切り欠いた第1面と第2面とによって区画されている。
カッターブレードは、凹溝の前記第1面に設置されており、
アーバーの軸方向の一端側に形成され波浪形状をなす第1ブレードと、周壁側に形成されアーバーの軸方向にストレート形状をなす第2ブレードとを有し、第1面はアーバーの軸方向に延びて形成される平面であり、第2面は第1面と交差する曲面であり、第1面と第2面との交線は弧状であ
り、螺旋溝の軸方向の幅は、第1面の軸方向の最大長さより小さい。
【0011】
本発明の一態様によるミーリングカッターは、先端の移動軌跡が円柱状の螺旋である構成、および、ブレードの構造により、水平ミーリング加工、及び下方へのドリリング加工を行い、カッターのサイズより大きい孔を加工することができる。
よって、カッターの数を減らすことができ、切削液がカッター中心位置から注入孔内に注入され、高速回転、高トルクのドリリングおよびミーリング作業に螺旋溝の構成との組み合わせにより、切削液及び切りくずが螺旋溝から孔の外側へと上向きに押し出される。
これにより、カッター切削により生じる熱エネルギーを低下させ、切りくずの排出がスムーズとなり、カッターの鋭利な状態を保持することができ、さらに深い孔の加工に適することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態によるミーリングカッターの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるミーリングカッターの平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるミーリングカッターの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるミーリングカッターにより形成された孔を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるミーリングカッターにより形成された孔を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるミーリングカッターにより形成された孔を示す平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるミーリングカッターにより形成された孔を示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるミーリングカッターの作動状態を示す模式図であり、作動時に切削液が孔内に注入され、切りくずが排出される様子を示す。
【
図9】本発明の一実施形態によるミーリングカッターが作動時に切削液及び切りくずに対してプッシュする力を発生する状態を示す模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態によるミーリングカッターの円弧状螺旋溝を示す模式図である。
【
図11】本発明の他の実施形態によるミーリングカッターを示す模式図であり、使い捨て式のカッターブレードを有する構造を示す。
【
図12】従来のツイストドリルヘッドを示す模式図である。
【
図13】従来の使い捨て式ドリルヘッドを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(一実施形態)
図1〜
図3に示すとおり、本発明の一実施形態によるミーリングカッターは、数値或いはコンピューター数値により制御される工作機械に対応し、先端の移動軌跡が円柱状の螺旋であり、ミーリング加工及びドリリング加工を実現するミーリングカッターである。
【0014】
本発明の一実施形態によるミーリングカッター10は、アーバー11を有する。
アーバー11の一端の相互に交差する位置には、凹溝12が設置されている。
凹溝12の底面には、カッターブレード13を形成する。
カッターブレード13の底面及び側面には、第一ブレード131、第二ブレード132を形成する。
凹溝12底面の第一ブレード131は、波浪状を呈する。
アーバー11の本体周縁上には、螺旋溝14が設置されている。
螺旋溝14の溝端141は、凹溝12と連接する。
【0015】
本実施形態のミーリングカッター10は、先端の移動軌跡が円柱状の螺旋であり、水平ミーリング加工及び下向きのドリリング加工を行うことができるため、下向きに直接ドリリングすることしかできない従来のドリルヘッドとは異なる。
【0016】
ミーリングカッター10の螺旋式ドリリングおよびミーリングの実施形態を示す
図4及び
図5に示すとおり、本実施形態では、ミーリングカッター10は、ブレード直径ψDがψ27mmのミーリングカッター10で、形成された孔の直径ψdがψ33mmの孔径の加工操作を行う。
【0017】
ミーリングカッター10のブレード直径ψDは被加工孔の直径ψdより小さいため、作動時に、ミーリングカッター10のアーバーの中心軸Cは、孔中心cから間隔距離eを離れなければならない。
これにより、第二ブレード132は、孔31の辺縁を加工することができる。
この位置が、ミーリングカッター10のドリリング加工およびミーリング加工時の極限位置である。
【0018】
ミーリングカッター10が、回転する時、その中心点Cと孔中心cとの間は、間隔距離eを維持する。
これにより、らせん軌跡Sに沿ってドリリング加工を行い、らせん軌跡Sのらせん軌跡の直径ψiはミーリングカッター10の回転直径である。
【0019】
図6及び
図7に示すとおり、ブレード直径がψ27mmのミーリングカッター10が、サイズがより大きい孔径のドリリング加工およびミーリング加工を行う際には、ドリリング加工およびミーリング加工が巡るらせん軌跡Sのらせん軌跡の直径ψiはより大きい。
【0020】
図8に示すとおり、ミーリングカッター10は、高速(約3537rpm)及び高トルクの状態で回転する。
且つ水パイプ20は同時に、ミーリングカッター10の移動に従い、大量の切削液を放出する。
切削液は切削された孔31内に流入し、これによりミーリングカッター10の頭部は、切削液内に沈む。
アーバー11に従い高速回転する螺旋溝14において、溝端141位置より切削液を注入する。
切削液は、高トルクが生じる推力Qを受け押される(
図9参照)。
【0021】
螺旋溝14の回転が生じる推力Qにより、切りくず40は上方へと流動し、且つ螺旋溝14は、孔31の側壁面に非常に接近し、さらに切削液の粘度もあるため、切削液及び切りくず40は制限を受け、上方へと移動し、最後に孔31の外へと流出し、且つ徐々に堆積する。
前記ミーリングカッター10の螺旋溝14は、方形状の実施形態である。
【0022】
図10に示すとおり、本実施形態では螺旋溝14が円弧状である。
螺旋溝14の形状は、本発明の実施形態の説明に用いるのに過ぎず、本発明にを制限するものではない。
【0023】
図2に示すとおり、螺旋溝14の溝の深さb及び溝の幅wのサイズは、切りくずの大きさに応じて設計される。
ミーリングカッター10は自動的に切りくず40を切断するため、それが形成する切りくずは非常に小さい。
よって、溝の深さb及び溝の幅wのサイズも小さいため、ミーリングカッター10の本体の剛性は良好となり、高回転速度及び大トルクの回転を受け止めることができる。
強く切削しても、過大な変形はないため、そのドリリング加工およびミーリング加工の精度を向上させられ、最後の加工のために残すサイズを低下させることができる。
【0024】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、カッターブレードを、使い捨て式の構成にすることができる。
図11に示すとおり、ミーリングカッター10の凹溝12には、カッター台15が設置されている。
カッター台15には、使い捨て式カッターブレード50が設置されている。
使い捨て式カッターブレード50の底面及び側面には、第一ブレード51、第二ブレード52が形成されており、底面の第一ブレード51は、波浪状を呈する。
【0025】
本発明では、先端の移動軌跡が円柱状の螺旋であり、水平ミーリング加工、及び下方へのドリリング加工を行い、カッターサイズより大きい孔を加工することができる。
よってカッターの準備数を減らすことができ、切削液はカッター中心位置から注入孔内に注入され、高速回転、高トルクのドリリング加工およびミーリング加工に螺旋溝の構成を組み合わせることで、切削液及び切りくずは、螺旋溝から孔外へと上向きに押し出されこれにより、カッター切削により生じる熱エネルギーを低下させ、切りくずの排出はスムーズになり、カッターは鋭利な状態を保持でき、さらに深い孔の加工に適合することができる。
そのため、工作機械専用の中心出水設備を購入しなくとも、ドリリング加工或いは深孔の加工作業を行うことができる。
カッターには、ドリリング加工の出水孔を設ける必要がなく、既存の切削液供給設備により、カッター切削液を供給すればよい。
【0026】
前述した本発明の実施形態は本発明を限定するものではなく、よって、本発明により保護される範囲は特許請求の範囲を基準とする。
【符号の説明】
【0027】
10 ミーリングカッター、
11 アーバー、
12 凹溝、
13 カッターブレード、
131 第一ブレード、
132 第二ブレード、
14 螺旋溝、
141 溝端、
15 カッター台、
20 水パイプ、
31 孔、
40 切りくず、
50 使い捨て式カッターブレード、
51 第一ブレード、
52 第二ブレード、
ψD ブレード直径、
ψd 孔直径、
C アーバーの中心軸、
c 孔の中心、
e 間隔距離、
S らせん軌跡、
ψi らせん軌跡の直径、
b 溝の深さ、
w 溝の幅、
Q 推力。