【実施例】
【0148】
以下の実施例は本発明を説明するためのものである。ただし、それらを限定と解釈すべきではない。
実施例1:タンパク質凝集を阻害するための新規クラスの化合物の同定
2サブセットの市販化合物ライブラリーDIVERSet(ChemBridge Corp.,米国カリフォルニア州サンディエゴ)、それぞれ10.000の化合物を含み、本発明者らがDIVERSet 1および2と呼ぶものを、プリオン伝染の阻害薬について、2D−SIFT抗プリオンアッセイ(Bertsch et al. 2005)およびプリオン病の細
胞培養モデルを用いてスクリーニングした。両アッセイにおいて、化合物を単一濃度で試験することにより一次ヒットが得られ、続いてこれらを希釈系列で証明した。さらに、細胞培養ヒットを他の細胞系により試験した。
【0149】
2D SIFTスクリーニング
薬物がPrPCとPrPScの会合に及ぼす阻害作用をハイスループットおよびハイコンテント(high−content)スクリーニングアッセイで試験するために、、“Scanning for Intensely Fluorescent Targets(SIFT)”技術を利用した;これは、2色の蛍光のための単一光子検出器を備えた倒立二色共焦点顕微鏡セットアップを用いる。カバースライドガラス底を備えた96ウ
ェルまたは384ウェルのマイクロタイタープレート内で試料を調製する。アッセイ混合物は、組換えマウスPrP(rPrP)、マウスPrPではなくヒトPrPを認識するモノクローナル抗体(mAb)L42、およヒトCJD脳から調製したPrPSc凝集物からなる。rPrPおよびmAb分子を、それぞれグリーンおよびレッドの蛍光体で標識する。数個のrPrPおよびmAb分子がPrPSc凝集物に結合すると、結合した多数のレッドおよびグリーン蛍光体を示す三元複合系が形成されるであろう。そのような凝集物は両方の蛍光チャンネルにおいて同時に高い強度を生じるので、それらをSIFT法により同定および分析することができる。レッドおよびグリーンの蛍光強度の分布を、二次元蛍光強度ヒストグラムにより評価することができる。rPrPとPrPScの会合の阻害薬がアッセイに含まれる場合は常に、三元凝集物のグリーン蛍光強度が低下するはずである。その際、二次元ヒストグラムにおける凝集物のカラー分布はヒストグラムの“レッド”セクターの方へシフトするであろう。
【0150】
20000の化合物の一次SIFTスクリーニング
上記のアッセイシステムを、それぞれ10.000の多様な薬物様化合物を含む2つのライブラリー(ChemBridge;“DIVERSet1”および“DIVERSet2”)に、一次スクリーニング用の96ウェルマイクロタイタープレートにおいて適用した;化合物を添加しない陰性対照、および17μMのDOSPAを含有する陽性対照、ならびにCJDロッドおよび化合物を含有しない対照(抗体とrPrPの混合物中に凝集物が存在しないことを検査するために使用)を含む。
【0151】
DOSPAを含有する試料は、優先的にグリーンrPrPで標識された凝集物の信号をモニターするセクターのSIFT信号の低下を示した。これは、これらの対照において、より少ないrPrPがCJDプリオンロッドに結合したことの指標となる。プリオンロッドはレッドの抗体標識によりマークされているので、それらの蛍光はなお“レッド”セクターにおいてSIFT信号を発している。大部分の化合物はSIFT信号の分布に影響を及ぼさなかった。しかし、DIVERSet化合物のうち若干が“グリーン”セクターに検出される凝集物の数を減少させた。これらの試料のSIFT曲線は、DOSPA対照の方へシフトする。したがって、対応する化合物を有望な抗プリオン薬についての一次ヒットとみなすことができる。時には、若干の技術的問題によりアーティファクトが生成し、これがマイクロタイタープレート全体の全測定を不明瞭にした。これは別として、異常値として処理しなければなかったものおよび自動SIFT分析に不適切であったものは、妨害されなかった測定値のうちわずか7%であり、これらは大部分が被験化合物の固有蛍光のためであった。SIFTアッセイにより処理できない化合物のこのかなり低いパーセントは予想外であり、このアッセイ法の万能性および有効性を強調する。問題のある測定値および化合物の同定は、SIFTアッセイデータのハイコンテント性によって容易になる。各試料について、幾つかの蛍光パラメーター、たとえばそれぞれのカラーチャンネルについての平均蛍光強度を、同時に記録する。これらをカラー分布ヒストグラムに各セクターの高強度事象の和と一緒に表示する。したがって、高い固有蛍光をもつ試料を容易に選別することができる。
【0152】
SIFT一次ヒットおよび希釈系列による立証
一次ヒットとして分類された化合物について、“グリーン”セクター1〜5におけるbinの和を分析し、必要最小作用としての非処理対照と比較して、DOSPAの作用の約50%のカットオフ値を決定した。DIVERSet化合物にSIFTスクリーニングデータからスケーラー(scalar)SIFT活性値(tp1_sift)を帰属させて、プリオン凝集に対するそれらの阻害作用を特徴づけた;Bertsch et al. 2005の記載に
従う。ゼロより小さい活性値は阻害作用が無いことを反映し、これに対しゼロより大きい活性値は阻害作用を反映する。その際、約1の数値は、そのプレート上の陽性対照測定値のものと同等な大きさの阻害作用の指標となる。
【0153】
一次ヒットを、SIFTアッセイにおける各化合物の二重6点希釈系列(0.1〜100μM)により、PrPC−PrPSc会合の用量依存性阻害について検査した。用量−応答曲線により、これらの化合物の濃度依存性阻害活性を確認した。17μMのDOSPAの作用と比較して、プリオンロッドへのrPrP結合の最大値の半分の阻害が0.3〜60μMの範囲のEC
50値でみられた。
【0154】
細胞培養一次ヒットおよび希釈系列による立証
SIFTアッセイのほか、DIVERSetライブラリーをプリオン疾患の細胞培養モデルにおいてもスクリーニングした。これらのアッセイにおいては、DIVERSet化合物の抗プリオン活性をまず20μMの濃度で試験した。一次細胞培養スクリーニング(SMB細胞において20μMで)の結果を二元変数によりコード化した(tp3_reduktion);その際、数値“1.0”は“活性”をコードし、“0.0”は“不活性”をコードする。一次スクリーニングにおいて同定された活性化合物を立証した;その目的は、きわめて低い濃度ですら活性な化合物を同定することであった。一次細胞培養ヒットの確認を、DIVERSet 1については4種類の濃度(1μM、4μM、10μM、40μM)、DIVERSet 2については2種類のみの濃度(0.2μM、2μM)の希釈系列において行なった。結果(tp3_reduktion_mue)を、1μM(DS1)または0.2μM(DS2)で活性であるものについて“1.0”、2μM(DS2)で活性であるものについて“0.5”により表わす。20μMを超える濃度で不活性な化合物を“0.0”により表わす(DS1+2)。さらに、一次SMB細胞培養ヒットを単一濃度でScN2a細胞について立証した(tp3_scn2a);この場合も、“0.0”および“1.0”は、それぞれ不活性および活性を表わす。
【0155】
新規な抗プリオン化合物としてのジフェニルピラゾール類(DPP)および関連化合物
SAR−map作製
一次細胞培養スクリーニングにおいて“活性”と判定されたDIVERSet化合物について、ソフトウェアパッケージBenchware HTS DataMiner(DM;Tripos Inc.,米国ミズーリ州セントルイス)を用いてクラスター分析を行ない、
図1に示すSAR−mapを得た。2つのライブラリーに含まれる多数の化合物(20.000)は、DataMinerを用いるクラスター分析のための出発点としては大きすぎるので、分析をまずDIVERSet 1および2の細胞培養スクリーニングの一次ヒット(837の化合物)に限定した。したがって、クラスターは活性化合物のみについて決定された。この場合、DMプログラムは構造的に類似しかつ活性である化合物をクラスターに分類するので、潜在的に関連する新規なリード構造を同定するのに適切である。第2段階で、こうして確立したクラス分けを、細胞培養において不活性な化合物を含む残りのライブラリーに適用した。その際、採用した尺度が高い構造類似性を指摘した場合、DMプログラムは作製したクラスターにさらに他の(不活性)化合物を追加した。
【0156】
クラスター分析の結果をDateMinerによりSAR−mapの形で図示し、その際、物質クラスターSを記号により表わす。DMは、表わされるクラスターが構造的に類似する場合にはその記号が互いに近接するようにそれらを配置する。記号のサイズ、形状および色はクラスター固有の特性に基づいて割り当てられ、それらはユーザーが選択することができる。
【0157】
したがって、記号のサイズをクラスターのサイズ/S/、すなわちそれに含まれる化合物Cの個数に比例するように選択した。記号の形状は、対応するクラスターS中の、SIFTスクリーニングにおいて判定された一次活性a(C)が選択された閾値a
min=0.25を超える物質Cの画分に基づいて決定された。
【0158】
【化13】
【0159】
したがって、その画分P
SIFT(S)が50%を超えるクラスターを星印として示し、一方、残りの主に不活性なクラスターを四角として示す。同様に、記号の色は、細胞培養ベースのスクリーニングの一次ヒットに従ったクラスターの画分をコードし、
【0160】
【化14】
【0161】
その際、50%を超える活性物質を含むクラスターの記号は赤であり、残りのクラスターは灰色である。
図1は、上記のクラスター分析から得たSAR−mapを示す。大きな赤い星印は、高い割合のSIFT陽性および細胞培養陽性である物質を含むクラスターの記号である。これらのクラスターは、有望なリード構造を表わす。DataMinerを用いて目的クラスターをさらに分析して5つの隣接クラスターのグループを同定し(DPP_1〜DPP_5と命名)、これらを
図1に太線で示す。これらのクラスターに選別されたすべての化合物を
図2に、各種アッセイにおけるそれらの活性と共に示す。これらのクラスターが互いに近接した位置にあるという事実は、それらが構造的に類似する物質を含むことの指標となる;すなわち、それらはすべて3,5−ジフェニル−ピラゾール(DPP)誘導体の化合物クラスに属する(
図1に示すDPPモチーフと対比)。
【0162】
実施例2:医薬−化学的観点で凝集を阻害するための新規薬物の合成
前記のの新規なリード化合物の知見に基づいて、下記に概説するように種々の置換基の選択的置換によって多数の他の物質を合成した:
スキーム1:イソオキサゾール類の合成
【0163】
【化15】
【0164】
(E)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(3−フルオロフェニル)−2−プロペン−1−オン(1)[Nam et al., 2004]
3,4−ジメトキシアセトフェノン(1.8g,10mmol)、3−フルオロベンズアルデヒド(1.24g,10mmol)、NaOH(50mg,1.25mmol)およびBa(OH)
2・8H
2O(100mg,0.32mmol)のメタノール(10ml)中における溶液を、室温で24時間撹拌した。反応物を+4℃に冷却し、生じた沈殿を濾過により採集し、メタノールから再結晶し、乾燥させて、1(1.65g,58%)を黄色粉末として得た。
【0165】
2,3−ジブロモ−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(3−フルオロフェニ
ル)−プロパン−1−オン(2)[Harris et al., 1977]
1(715mg,2.5mmol)のクロロホルム(11ml)中における溶液を、臭素(400mg,2.5mmol)のクロロホルム(4ml)中における溶液に0℃で滴加した。0℃で2時間撹拌した後、反応物を石油ベンジン(20ml)で希釈し、混合物を10時間冷蔵し(−24℃)、生じた沈殿を濾過により採集し、n−ヘキサン(10ml)で洗浄し、乾燥させて、2(780mg,70%)を白色粉末として得た。
【0166】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)イソオキサゾール(3)[Harris et al., 1977]
2(450mg,1mmol)のエタノール(6ml)中における溶液を、ヒドロキシルアミン塩酸塩(306mg,4.4mmol)で処理し、続いてNaOH(460mg,11.5mmol)の水(1.5ml)中における溶液で処理した。混合物を2時間、加熱還流し、冷却し、水(3ml)で処理した。一夜冷蔵(4℃)した後、生成物を濾過により採集し、水(5ml)で洗浄し、乾燥させて、3(180mg,60%)を白色粉末として得た。
【0167】
3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)イソオキサゾール(4)[Vanelle et al., 2000]
3(100mg,0.33mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.16ml,1.7mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、4(60mg,67%)を白色粉末として得た。
【0168】
スキーム2:ピラゾール類の合成
【0169】
【化16】
【0170】
1,3−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(5)[Anselme,1967]
鉱油中の60%水素化ナトリウム懸濁液(0.4g,10mmol)を、石油ベンジン(20ml)で2回洗浄し、無水DMSO(10ml)を添加した。室温でアルゴン下に30分間撹拌した後、THF(5ml)を添加し、フラスコを15℃に冷却し、3,4−ジメトキシ安息香酸エチル(2.1g,10mmol)を添加した。温度を10℃にまで低下させ、3,4−ジメトキシアセトフェノン(1.08g,6mmol)のDMSO(4ml)中における溶液を、温度が15℃を超えない速度で添加した。添加終了後、反応混合物を室温で72時間撹拌し、次いで85%リン酸(1ml)を含有する砕氷(250g)中へ徐々に注入した。生じた沈殿を濾過により採集し、水(50ml)で洗浄し、乾
燥させて、5(2.1g,99%)を黄色粉末として得た。
【0171】
3,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ピラゾール(6)[Hauser et al., 1957]
5(1,0g,2.9mmol)および水和ヒドラジン(218mg,4.4mmol)のエタノール(15ml)中における溶液を、撹拌下で3時間、加熱還流した。透明な黄色溶液を減圧下で蒸発させ、水を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、水で洗浄し、乾燥させて、6(960mg,97%)を黄色粉末として得た。
【0172】
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)ピラゾール臭化水素酸塩(7)[Vanelle et al., 2000]
6(120mg,0.35mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.34ml,3.5mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃にまで冷却させ、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、7(108mg,85%)を黄色粉末として得た。
【0173】
【化17】
【0174】
1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(21)[Anselme, 1967]
1.操作
乾燥した500−mLの三つ口フラスコにTeflon(登録商標)コートした磁気撹拌バー、ゴム隔膜、温度計、および還流冷却器を設置し、これに純窒素源に接続したT字管を取り付ける。反応全体を通して窒素の流速を観察することができる状態で、T字管の残りの継手をバブリング装置に接続する。フラスコを間欠的に水浴で冷却できるようにこの装置を配置する。反応器を窒素でフラッシした後、反応の残りの期間は反応器内に静止窒素雰囲気を維持する。フラスコに鉱油中の約60%水素化ナトリウム分散液(5g,0.125mole)(注釈1)を装入する。石油ベンジン40/60(3×40mL)(注釈2)で鉱油を水素化物から洗い去る。ゴム隔膜を通して挿入したステンレス鋼注射針付きルアーロック皮下注射器を用いて、上清の石油ベンジン層を除去する。残留する水素化ナトリウムを80mLのジメチルスルホキシド(注釈3)と混合し、ゴム隔膜を均圧滴下ろうとに置き換える。16.4g(0.1mole)の1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エタノン(注釈4)および26.9g(0.125mole)の3−ブロモ安息香酸メチル(注釈5)の、ジメチルスルホキシド60mL中における溶液を、滴下ろうとに入れる。ろうとを密栓し、撹拌を開始し、フラスコの内容物を水浴内で15℃に冷却する。1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エタノンおよび3−ブロモ安息香酸メチルの溶液を、水素の発生が制御可能な速度に維持されかつ温度が20℃を超えないように、60分間にわたって徐々に添加する(注釈6)。添加終了後、浴を取り除き、反応混合物を室温(23℃)で15時間撹拌する。得られた赤褐色の均質な反応混合物を、5mLの85%オルトリン酸(注釈7)を含有する500mLの氷水に、撹拌しながら徐々に注入する。1時間撹拌した後、生成物を濾過により分離し(注釈8)、水(2×100mL)と共に吸引濾過することにより洗浄し、一定重量になるまで40℃で6時
間、真空乾燥すると、34.4gの粗(注釈9)生成物が得られる。200mLの99.9%エタノールおよび200mLの酢酸エチル(注釈10)から再結晶し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、28.5g(82%の収率)の純粋な(注釈11)1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオンが得られる;m.p.136〜137℃。濾液を約30mLの体積になるまで減圧濃縮し、分離する結晶質固体をフィルター上に採集し、エタノール(2×10mL)と共に吸引濾過することにより洗浄し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、追加分(3.15g)の粗生成物が得られる。この粗生成物を20mLの99.9%エタノールおよび20mLの酢酸エチルから再結晶し、一定重量になるまで40℃で6時間、真空乾燥すると、さらに1.8g(5%の収率)の純粋な1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオン(注釈12)が得られる。生成物の全収量は30.3g(87%)である。
【0175】
2.注釈
1.水素化ナトリウム、57〜63%の油分散液、注文番号13431、Alfa Aesar GmbH & Co KG、カールスルーエ、から入手されるものを使用した;
2.石油ベンジン、分析用グレード、沸騰範囲40〜60℃、注文番号101775、Merck KGaA、ダルムシュタット、からのものを使用した;
3.ジメチルスルホキシド、分析用グレード、注文番号102952、Merck KGaA、ダルムシュタット、からのものをさらに精製せずに使用した;
4.1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)エタノン、98%、注文番号A13597、Alfa Aesar GmbH & Co KG、カールスルーエ、から入手されるものを使用した;
5.3−ブロモ安息香酸メチル、98%+、注文番号A16174、Alfa Aesar GmbH & Co KG、カールスルーエ、から入手されるものを使用した;
6.溶液の添加中、起泡を観察する。規模拡大した場合には機械的撹拌機およびポリエチレングリコールジメチルエーテルなどの消泡剤の使用が必要な可能性がある;
7.オルトリン酸、85% w/w水溶液、分析グレード、注文番号100573、Merck KGaA、ダルムシュタット、からのものを使用した;
8.反応混合物のpH値はpH=7。さらに15mLのオルトリン酸でpH=2の酸性にすると、1.3gの3−ブロモ安息香酸を得ることができる;
9.HPLCにより測定した生成物の純度は96.3%である;
10.99.9%無水エタノール、分析用グレード、注文番号100983、および酢酸エチル、分析用グレード、注文番号109623、Merck KGaA、ダルムシュタット、から得られるものを使用した;
11.HPLCにより測定した生成物の純度は99.3%である。Waters HPLCシステムをWaters 996光ダイオードアレイ検出器と共に用いて分析用HPLCを実施する。すべての分離に、水中0.1% v/vのトリフルオロ酢酸(TFA)(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1% v/vのTFA(溶媒B)の移動相を、逆相(RP)カラムEurospher RP 18、100Å、5μm、250×4.6mmにより、1mL/分の流速で用いた。化合物をHPLC用グレードのアセトニトリルに濃度1mg/mLで溶解する。保持時間(RT)20.9分および10.3分のピークは、それぞれエノール形およびケト形のANLE 138Aである。個別に採集したピーク20.9分または10.3分の再注入により、同一保持時間をもつ同じ2つのピークが再び得られる;
12.HPLCにより測定した生成物の純度は98.4%である。
【0176】
3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−5−(3−ブロモフェニル)−1H−ピラゾール(22)[Hauser et al., 1957]
1.操作
28.4g(81.8mmole)の1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオン(注釈1)および200mLのn−ブチルアルコール(注釈2)を、Teflon(登録商標)コートした磁気撹拌バー、還流冷却器、および電気加熱マントルを備えた500−mLの丸底フラスコに入れる。撹拌および加熱を開始し、固体が溶解した時点で6mL(6.2g,123.4mmole)のモノ水和ヒドラジン(注釈3)を添加し、反応混合物を撹拌しながら4時間、加熱還流する。反応混合物を20℃にまで冷却させ、0℃に1時間保存し、分離する生成物を吸引濾過により採集する。水(100mL)で洗浄し、一定重量になるまで40℃で36時間、真空乾燥すると、26.8g(95%の収率)の3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル−5−(3−ブロモフェニル)−1H−ピラゾール(注釈4)が得られる;m.p.195〜197℃。
【0177】
2.注釈
1.1−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオンは、ANLE 138Aに関するプロトコルに従って製造される;
2.99.4% n−ブチルアルコール、グレード“Baker分析済み”、注文番号8017、J.T.Baker B.V.、オランダ、デベンター、から入手されるものを使用した;
3.モノ水和ヒドラジン、グレードpurum、注文番号53850、Sigma−Aldrich Chemie GmbH、タウフキルヘン、から入手されるものを使用した;
4.HPLCにより測定した生成物の純度は99.3%である。Waters HPLCシステムをWaters 996光ダイオードアレイ検出器と共に用いて分析用HPLCを実施する。すべての分離に、水中0.1% v/vのトリフルオロ酢酸(TFA)(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1% v/vのTFA(溶媒B)の移動相を、逆相(RP)カラムEurospher RP 18、100Å、5μm、250×4.6mmにより、1mL/分の流速で用いた。化合物をHPLC用グレードのアセトニトリルに濃度1mg/mLで溶解する。
【0178】
スキーム3:イミダゾール類の合成
【0179】
【化18】
【0180】
4−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−フェニルイミダゾール(8)[Li et al., 2000]
ベンズアミジン塩酸塩(313mg,2mmol)および炭酸水素ナトリウム(672mg,8mmol)のTHF(6ml)および水(1.5ml)中における混合物を、加熱還流した。α−ブロモ−3,4−ジメトキシアセトフェノン(518mg,2mmol)のTHF(1.5ml)中における溶液を30分間かけて添加し、その間、反応物を還流下に維持した。添加後、反応物を2時間、加熱還流し、THFを減圧下で蒸発させた。酢酸エチル(20ml)を混合物に添加し、有機相を分離し、ブライン(5ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール100:1)により精製して
、8(470mg,84%)を固体として得た。
【0181】
4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−フェニルイミダゾール臭化水素酸塩(9)[Vanelle et al., 2000]
8(190mg,0.68mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.32ml,3.4mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、9(192mg,85%)を粉末として得た。
【0182】
スキーム4:ピロール類の合成
【0183】
【化19】
【0184】
(E)−1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−プロペン−1−オン(10)
化合物10を、1の製造について記載した方法に従って製造した。収率90%。
【0185】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−ニトロ−1−フェニルブタン−1−オン(11)[Hall et al., 2005]
10(774mg,2.9mmol)のMeOH(30ml)中における溶液を、ジエチルアミン(1.55ml,15mmol)およびニトロメタン(0.81ml,15mmol)で処理し、24時間、加熱還流した。溶液を冷却し、ジクロロメタン(60ml)と水(50ml)の間で分配し、1M塩酸で酸性にした。有機層を分離し、水層をジクロロメタン(20ml)で抽出した。有機層を合わせて水(50ml)およびブライン(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、得られた油をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル 3:2)により精製して、11(780mg,82%)を固体として得た。
【0186】
4−(3,4−ジメトキシフェニル)−1−フェニルピロール(12)[Hall et al., 2005]
11(400mg,1.22mmol)のメタノール(13ml)およびTHF(26ml)中における撹拌溶液を、室温で、水酸化カリウム(343mg,6.1mmol)により処理した。1時間後、反応混合物を硫酸(2.44ml)のメタノール(13ml)中における溶液に0℃で滴加し、室温で1時間撹拌した。水(20ml)および氷(20ml)を添加し、混合物を1M水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。有機画分を合わせてブライン(25ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。得られた油を酢酸(8ml)および塩化アンモニウム(470mg)で処理し、溶液を100℃で1時間加熱した。反応混合物を冷却し、氷(50ml)を添加し、混合物を1M水酸化ナトリウム水溶液で中和した。溶液をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。有機画分を合わせてブライン(25ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル 3:1)により精製し、次いで
n−ヘキサン/酢酸エチル(2:1)の混合物から再結晶して、12(150mg,44%)を固体として得た。
【0187】
4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルピロール(13)[Vanelle et al., 2000]
12(80mg,0.29mmol)のジクロロメタン(5ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.13ml,1.4mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール 95:5)により精製し、次いで数滴のアセトニトリルを含むクロロホルムから再結晶して、13(36mg,50%)を固体として得た。
【0188】
スキーム5:ピラゾリン類の合成
【0189】
【化20】
【0190】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(14)
1(57mg,0.2mmol)および水和ヒドラジン(0.5ml,10mmol)の水(0.14ml)中における懸濁液を、撹拌しながら100℃で1.5時間加熱した。反応混合物を冷却し、水(0.2ml)を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、水で洗浄し、乾燥させて、14(37mg,62%)を白色固体として得た。
【0191】
スキーム6:N−Ac−ピラゾリン類の合成
【0192】
【化21】
【0193】
(E)−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−3−フェニル−2−プロペン−1−オン(15)
化合物15を、1の製造について記載した方法に従って製造した。収率64%。
【0194】
1−アセチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロピラゾール(16)[Chimenti et al., 2004]
15(504mg,2mmol)および水和ヒドラジン(250mg,5mmol)の酢酸(12ml)中における溶液を、撹拌しながら120℃で24時間加熱した。反応混合物を冷却し、冷水(40ml)を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、エタノールから再結晶し、乾燥させて、16(458mg,74%)を白色固体として得た。
【0195】
1−アセチル−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5−フェニル−4,5−ジヒドロピラゾール(17)[Vanelle et al., 2000]
17(70mg,0.23mmol)のジクロロメタン(3ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.13ml,1.4mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル 1:1)により精製して、17(25mg,37%)を固体として得た。
【0196】
スキーム7:1,2,4−オキサジアゾール類の合成
【0197】
【化22】
【0198】
3,4−ジメトキシベンズアミドキシム(18)[Chalquest, 2001]
3,4−ジメトキシベンゾニトリル(4.0g,24.5mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(2.0g,28.8mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.0ml,29.2mmol)のエタノール(70ml)中における溶液を、室温で48時間撹拌した。エタノールを減圧下で蒸発させ、冷水(60ml)を添加し、生じた沈殿を濾過により採集し、乾燥させて、18(3.4g,71%)を白色粉末として得た。
【0199】
3,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール(19)[Korbonits, 1982]
18(700mg,3.57mmol)および3,4−ジメトキシ安息香酸エチル(834mg,3.97mmol)のエタノール(12ml)中における溶液に、カリウムtert−ブトキシド(425mg,3.79mmol)を添加し、反応混合物を12時間、加熱還流した。混合物を冷却し、沈殿を濾過により採集し、熱エタノールで洗浄し、乾燥させて、19(540mg,44%)を白色粉末として得た。
【0200】
3,5−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール臭化水素酸塩(20)[Vanelle et al., 2000]
19(220mg,0.64mmol)のジクロロメタン(6ml)中における溶液を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(0.59ml,6.1mmol)で処理し、−78℃で3時間、次いで室温で一夜、撹拌した。混合物を−78℃に冷却し、メタノール(5ml)で反応停止した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10ml)と4回、共蒸発させた。生じた沈殿を5mlのクロロホルム中で還流し、冷却した後、生成物を濾過により採集し、乾燥させて、20(190mg,81%)を粉末として得た。
【0201】
以上の実施例は目的化合物を合成または誘導体化する例を提示する。
図3に示す残りの化合物をこれらに従って合成した。これらの化学合成した物質について、選択した一次スクリーニングの物質と共に、SIFTアッセイ、細胞培養ベースのアッセイ、マウスにおけるインビボ実験、およびα−シヌクレイン凝集を指向した生化学的アッセイを含めたさらに他の試験を行なった(後記を参照)。試験した物質のリストを
図3に示す。
【0202】
実施例3:使用した材料および方法
化合物ライブラリー
スクリーニングしたライブラリーはそれぞれ10.000の化合物を含み、これらはより大きなDIVERSetライブラリー(ChemBridge Corp.、カリフォルニア州サンディエゴ)の一部を含むにすぎないので、本発明者らはDIVERSet1およびDIVERSet2と呼ぶ。DIVERSetは合理的に選択された多様な薬物様低分子のコレクションである。これらの化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)溶液として96−ウェルマイクロタイタープレートに供給した。各化合物の分子構造および若干の物理化学的データを含むデータベースは、www.chembridge.comにおいて入手できる。
【0203】
組換えマウスPrP 23−231の調製
本質的にLiemann et al. (1998)による記載に従って、組換えPrP 23−231を
調製および精製した;ただし、細菌発現のためにBL21DE3 RIL大腸菌(E.coli)細胞(Novagen)をマウスPrP23−231用のプラスミドpET17b−MmPrP23−231WT31で形質転換した。また、細菌を光学濃度0,5まで増殖させた後、1mM IPTGの添加によりタンパク質産生を誘導し、2時間後に細胞を収穫した。次いで、フレンチプレスを用いる代わりに細胞溶解用緩衝液に0,5% Triton X−100を添加して37℃で30分間インキュベートすることにより細菌を溶解した。さらに、ゲル濾過の代わりにニッケルキレートアフィニティークロマトグラフィー工程を用いた。リフォールディング後の最終カチオン交換クロマトグラフィー工程も省略した。
【0204】
特に、イオン交換クロマトグラフィーにより精製したPrPを記載に従って酸化処理し、0,1mM EDTAの添加および約6へのpH調整により酸化を終了した。0,1mM NiCl2の添加後、最高50mgのPrPを、製造業者の推奨に従って予めNiCl2を装入した2mLのキレート化用sepharose(Pharmacia)に付与し、緩衝液A(8M尿素,10mM MOPS pH7,0)で予め平衡化した。Ni−キレートマトリックスへのPrPの結合を、室温で少なくとも3時間、混合物を連続反転することにより実施した。このマトリックスをpolyprepカラム(BioRad)へ移し、フロースルーから排液した。カラムを5mLの緩衝液B(8M尿素、10mM MOPS pH7,0、500mM NaCl)で2回洗浄し、次いで5mLの緩衝液D(7,2M尿素,10mM MOPS pH7,0、150mM NaCl、50mMイミダゾール)で6回、連続溶離した。精製PrPを含有する画分をプールし、centriprep装置で濃縮し、最後にリフォールディングのために10mM MES pH6,0中へ1:50希釈した。
【0205】
抗体および組換えPrPの蛍光標識
L42モノクローナル抗体(r−biopharm、ドイツ、ダルムシュタット)を、Alexa Fluor 647(Alexa−647;Invitrogen、ユージーン)で製造業者のマニュアルに従って標識した。組換えマウスPrP 23,231を、Alexa Fluor 488(Alexa−488;Invitrogen、ユージーン)で、20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6、0.1% Nonidet P40、40mM炭酸水素ナトリウム緩衝液、pH8,3中において標識した。結合しなかった蛍光体を、20mMリン酸カリウム緩衝液pH6、0.1% Nonidet P40で平衡化したPD10カラム(GE Healthcare、ドイツ、フライブルク)上でのゲル濾過により分離した。標識反応および標識比率の品質管理を、Insight Reader(Evotec Technologies、ドイツ、フライブルク)による蛍光相関分光分析(FCS)測定により実施した。標識比率は、PrP分子当たり約1,3個の蛍光体であった。
【0206】
PrPC−PrPSc会合のアッセイ
PrPScをCJD患者の脳からSafar et al. (Safar et al.(1998))に従って調製し
、1×PBS+0.1%サルコシル(sarcosyl)溶液に再懸濁した最終ペレットのアリコートを緩衝液A(20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、0.1% Nonidet P40)中へ5倍希釈し、水浴ソニケーター内で60秒間、音波処理した。1000rpmで1分間遠心した後、上清をアッセイ用緩衝液A中へ100倍希釈した。
【0207】
標識したマウスrPrPと標識したL42モノクローナル抗体の混合物を、20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6、0.1% Nonidet P40中に、これらの標識分子が2〜6nMでほぼ等量存在するように調製した。20μLのアッセイ体積で、8μLのrPrP/抗体混合物、2μLの化合物、および10μLの希釈PrPSc調製物を混合した。カバースライドガラス底を備えた96ウェルプレート(Evotec−Technologies、ドイツ、ハンブルク)に試料を装入し、Insight Readerで測定した。
【0208】
単一粒子測定および分析
FIDA測定を、488nmレーザーについては200μW、633nmレーザーについては300μWの励起エネルギーで実施した。走査パラメーターを、100μmの走査路長さ、50Hzのビームスキャナー周波数、および2000μmの位置決めテーブル移動に設定した。測定時間は10秒であった。2種類の蛍光体からの蛍光を個別に単一光子検出器で記録し、一定長さの時間間隔(bin)にわたり、bin長さ40マイクロ秒を用いて、光子を合計した。レッドおよびグリーン蛍光光子のカウント数を測定し、先の記載に従って二次元強度分布ヒストグラムにおいて分析した(Bieschke et al., 2000)。
【0209】
蛍光強度データを、2D−SIFTソフトウェアモジュール(Evotec−Technologies、ドイツ、ハンブルク)を用いてセクター内の高強度binを合計することにより評価した。対照測定値に従って、各測定系列についてのbin強度のカットオフ値を手動で調整した。
【0210】
実施例4:スクレイピー感染マウスにおいて感染後80日目の有望な新規抗プリオン化合物の療法適用
伝染性海綿状脳症(TSE)またはプリオン病の対処における有望な新規抗プリオン化合物の有効性を証明するために、動物実験を実施した;この場合、SIFTおよび/またはスクレイピー細胞培養アッセイにおいて抗プリオン活性をもつ化合物を用いて、RML株スクレイピーに感染させたマウスを潜伏期(incubation period)の後期に処置した。感染後80日目に14日間、化合物を腹腔内適用することを選択した;これは、このプリオン株を感染させた動物に一般に最初の不顕性症状が発現する時期だからである。これは、TSE感染して最初の疾患症状を示しているヒトが実際に療法処置を受ける最も早い時期に相当するであろう。そのようにきわめて厳密な条件を療法のために選択することにより、プリオン療法薬としての被験化合物の機能性を現実的な状態で評価することが目的であった。一般にTSE療法薬は、現在まで動物実験において被曝後の予防について試験されているにすぎない;この場合、それらをプリオン感染時期付近で適用する。実際の生活では、そのような療法計画をTSE感染個体に実施できる機会はごく稀にすぎない。大部分のTSE患者にとって、家族性および散発性の症例(これらが大部分である)について感染または潜伏期開始の時期は不明であり、知ることができない。したがって、大部分のTSE患者はTSEの最初の症状が発現した後に初めて処置を受けることができるであろう。
【0211】
実験法:
6〜7週令の雌C57Bl6マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1%の、
RMLスクレイピー株による末期疾患マウスからの無菌脳ホモジェネート30μLを脳内注射することにより、RMLスクレイピーを接種した。感染後80日目にこれらのマウスを、選択した有望な新規抗プリオン化合物またはビヒクルであるジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液で処置した。5種類の有望な抗プリオン化合物を、この処置に関する細胞培養モデルにおけるそれらの抗プリオン活性に従って選択した;それらは、Diverset化合物ライブラリー(Chembridge Corp.、米国サンディエゴ)における位置に従った10353F11、ならびにanle138b、anle143b、sery106およびsery149と呼ばれた。これらの化合物による処置を連続14日間、1日当たり50μLの化合物10353F11、他の化合物についてはそれぞれ25μLの、ビヒクル(DMSO)中の希釈液を腹腔内注射することにより実施した。化合物10353F11を10mMの濃度で用い、化合物anle138b、anle143b、sery106およびsery149については100mMを、期間全体にわたって注射した。動物を疾患の徴候について感染後80日目から1日1回、訓練された動物飼育者がモニターした。運動失調、震え、仰位からの立直り困難、および尾硬直の臨床症状により特徴づけられるこの疾患の末期に達して瀕死状態となった時点で、動物を屠殺した。一般に、疾患末期中の疾患進行により、1または2日以内に動物は死亡するであろう。屠殺した動物から脳半球および脾臓の半分をウェスタンブロット分析用に新鮮な状態で−80℃において凍結させ、一方、第2の脳半球および脾臓の第2半分ならびに内臓全部を(免疫)組織学的検査のために4%ホルムアルデヒド溶液中で固定した。
【0212】
結果
図4に示すように、RMLスクレイピー株を腹腔内感染させたマウスに潜伏期の後期(感染後80日目)に、選択した有望な抗プリオン薬を1日1回、腹腔内適用することによる処置は、10353F11(
図4A)ならびにanle138bおよびsery149(
図4B)についてはスクレイピー感染症の末期に達するまで潜伏期を延長させた。それぞれ7匹および8匹の動物のグループについて化合物anle138bおよびsery149に関して測定した平均生存時間が、ビヒクルである100% DMSOのみを投与した12匹の動物のグループと比較して、それぞれ14.9日および11.5日間、延長した。化合物sery106およびanle143bについては、同じDMSO対照グループと比較した処置動物8匹のグループにおける生存時間の延長は、統計的有意性のレベル未満であった。化合物10353F11について、それぞれ8匹の動物のグループについて測定した生存時間は、対照グループと比較して11日間、延長された。これらの実験でみられた生存時間延長は、ほぼ処置期間に相当する。これは、薬物を投与している限りこれらの薬物による処置が疾患進行を停止させたことを意味する可能性がある。この場合、これらの薬物による処置は、疾患進行を停止させることによりTSE感染個体の寿命を延長し、かつ彼らの健康状態を安定化して、疾患がさらに悪化するのを防ぐであろう。
【0213】
実施例5:腹腔内感染後のスクレイピー感染マウスにおける有望な抗プリオン化合物の療法適用
伝染性海綿状脳症(TSE)またはプリオン病の対処におけるこの新規な抗プリオン化合物の有効性を証明するために、さらに他の動物実験を実施した。この実験のために、マウスにRMLスクレイピーを腹腔内感染させ、化合物anle138bで処置した;これは、それの抗プリオン活性が後期プリオン疾患の動物モデルにおいて証明されたものである(実施例4)。この化合物の腹腔内適用と経口適用の組合わせを選択し、感染直後に処置を開始した。
【0214】
実験法:
マウスのスクレイピー感染および処置
6〜7週令の雌C57Bl6マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1%の、RMLスクレイピー株による末期疾患マウスからの無菌脳ホモジェネート100μLを腹
腔内接種することにより、RMLスクレイピーを接種した。anle138bまたはビヒクルであるジメチルスルホキシド(DMSO)水溶液によるこれらのマウスの処置を、感染直後に開始した。この化合物による処置は、連続14日間、ビヒクル(DMSO)中に希釈した化合物を1日当たり25μL腹腔内注射し、続いて4日間および5日間、植物油/DMSO混合物中の化合物を1日当たり50μL、口内強制投与で経口投与することにより実施された(
図5A)。化合物anle138bを、腹腔内適用については100mMの濃度で、経口投与については50mg/kgで用いた。動物を、感染後35日目、すなわち腹腔内感染マウスの脾臓にPrPScを明瞭に検出できる時点で屠殺した。屠殺した動物から脾臓の半分をウェスタンブロット分析用に新鮮な状態で−80℃において凍結させ、一方、脾臓の第2半分および内臓全部を免疫組織学的検査のために4%ホルムアルデヒド溶液中で固定した。
【0215】
PETブロット
ホルマリン固定した脳組織を2mm厚さの組織ブロックに切断し、濃ギ酸中で1時間、汚染除去し、4%リン酸緩衝化生理食塩水−緩衝化ホルマリン中で48時間、Brown et. al. 1990のプロトコルに従って後固定し、そしてパラフィンに包埋した。切片(5〜7μm)をミクロトームで切り取り、水浴(55℃)に入れ、予め湿らせた0.45μm細孔ニトロセルロース膜(Bio−Rad、カリフォルニア州リッチモンド)上に採集し、少なくとも30分間、55℃で乾燥させた。ニトロセルロース膜をキシレンで脱パラフィン処理した。キシレンをイソプロパノールで置換し、続いて段階的に再水和した。Tween 20を最終濃度0.1%で、蒸留水中での最終的な再水和工程に添加した。膜を乾燥させ、室温で数カ月間保存して、その後のPrPSc染色の質の低下はなかった。
【0216】
TBST(10mmol/L Tris−HCl,pH7.8;100mmol/L NaCl;0.05% Tween 20)で予め湿らせた後、PK−緩衝液(10mmol/L Tris−HCl,pH7.8;100mmol/L NaCl;0.1% Brij 35)中250μg/mlのプロテイナーゼK(Boehringer)による消化を55℃で8時間実施した。この工程で、膜に付着したタンパク質が膜に固定された。TBSTで3回洗浄した後、膜上のタンパク質を10mmol/L Tris−HCl(pH7.8)中3mol/Lのグアニジンイソチオシアネートで10分間、変性させた。グアニジンをTBSTで3回、洗浄除去した。ブロッキング溶液(TBST中の0.2%カゼイン)中で30分間のプレインキュベーション後、免疫検出を実施した。一次抗体として、組換えマウスPrPに対するポリクローナルウサギ抗体(CDC1と表示される)を、抗体希釈用溶液(Ventana)中1:500の希釈度で用いた。インキュベーションを少なくとも1時間実施した。TBST中で3回洗浄した後、希釈度1:500のアルカリホスファターゼ結合したウサギ抗マウス抗体(Dako、ハンブルク)と共に少なくとも1時間のインキュベーションを実施した。TBST中で10分間、5回洗浄した後、膜をNTM(100mmol/L Tris−HCl,pH9.5;100mmol/L NaCl;50mmol/L MgCl
2)中で5分間、2回インキュベートすることによりアルカリ性pHに調整した。抗体反応の視覚化は、NBT/BCIPを用いるホルマザン反応により得られた。ブロットをオリンパス解剖顕微鏡で評価した。
【0217】
結果
薬物処置マウスおよびビヒクル処置マウスが死亡した後に摘出した脾臓組織をPrPSc沈着物の存在について免疫組織化学的に染色し、イムノブロット法により脾臓PrPScレベルを分析した。
図5Bに示すように、処置動物の脾臓PrPScレベルはビヒクル処置マウスと比較して有意に低下する。感染マウスからの脾臓組織の検査は、化合物anle138bで処置した後、PrPSc沈着物が減少したことを示す。PrPSc沈着物の低い脾臓のパーセントが増大し、強いPrPSc沈着物が減少する(
図5C)。(
図5D)には、2つのPETブロット、PrPSc沈着物の例を示す。これらの結果は、選択
した実験設定および療法計画において、末梢組織におけるこの化合物の明瞭な抗プリオン効果の指標となる。
【0218】
実施例6:スクレイピー感染マウスにおける感染後80日目からの新規な抗プリオン化合物の療法適用
生存時間延長が処置期間に対応するという実施例4からの所見を証明するために、動物実験を実施した;この場合、化合物をより高い濃度でより長い期間投与して、潜伏期の後期のRML株スクレイピー感染マウスを処置した。感染後80日目における、化合物の腹腔内適用と経口適用の組合わせを選択した;これは、このプリオン株を感染させた動物に一般に最初の不顕性症状が発現する時期だからである。
【0219】
実験法:
6〜7週令の雌C57Bl6マウスに、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1%の、RMLスクレイピー株による末期疾患マウスからの無菌脳ホモジェネート30μLを脳内注射することにより、RMLスクレイピーを接種した。これらのマウスを、感染後80日目に新規な抗プリオン化合物またはビヒクルDMSOで処置した。2種類の有望な抗プリオン化合物anle138bおよびanle186bを用いた。これらの化合物による処置は、連続14日間、ビヒクルDMSO中に希釈した化合物を1日当たり25μL腹腔内注射し、続いて、植物油/DMSO混合物中の化合物を1日当たり50μL、口内強制投与で5日間、2回経口投与することにより実施された(
図6A)。3匹の対照マウスおよびanle138bで処置した2匹のマウスにおいては、DMSO/化合物原液と混合したピーナツバター飼料ペレットを与えることにより、この化合物を109日目から136日目までさらに経口投与した。これらの化合物を、腹腔内適用については100mMの濃度で、経口投与については50mg/kgで用いた。各処置グループの4匹の動物を、指示した時点で屠殺した(
図6A)。各処置グループの8匹の動物を、疾患の徴候について感染後80日目から1日1回、訓練された動物飼育者がモニターした。運動失調、震え、仰位からの立直り困難、および尾硬直の臨床症状により特徴づけられるこの疾患の末期に達て瀕死状態となった時点で、動物を屠殺した。一般に、疾患末期中の疾患進行により、1または2日以内に動物は死亡するであろう。屠殺した動物から脳半球および脾臓の半分をウェスタンブロット分析用に新鮮な状態で−80℃において凍結させ、一方、第2の脳半球および脾臓の第2半分ならびに内臓全部を組織学的検査のために4%ホルムアルデヒド溶液中で固定した。
【0220】
結果
感染後の脳ホモジェネート中のPrPScレベルおよびアポトーシスによる細胞死
薬物処置マウスおよびビヒクル処置マウスの脳ホモジェネートをPrPScレベルについてイムノブロット分析により分析した。
図6Bに示すように、指示した時点で検査したanle138bグループからのすべての動物の脳におけるPrPScレベルを80日目の未処置マウスのレベルに維持することができたのに対し、対照グループのPrPScレベルは上昇する。anle186bについての結果は、対照グループとanle138bの間にある。PrPScの増加速度を低下させることができた(
図6B)。
図6Cは、80日目の未処置対照と比較した、化合物で処置した後の相対PrPScレベルの変化を示す。脳のPrPScレベルは、anle138bで処置した後、わずかに低下する。指示した時点のH&E染色した脳切片の組織学的検査によれば、anle138bおよびanle186b処置マウスは病的変化の軽減を示した。処置グループからの感染マウスの小脳顆粒細胞層のアポトーシス細胞数が、対照グループと比較して減少する(
図6D)。これらの結果は、両化合物とも血液−脳−関門を通過しうることの指標となる。したがってこの療法は、処置中の動物の脳におけるそれ以上のPrPSc沈着および疾患進行を阻止
することができた。これらの結果は、化合物anle138bによる処置が、薬物を投与している限り疾患進行を停止させたことを意味する。これらの結果は、この化合物を用いる療法によりPrPSc形成を妨げることによって疾患進行を改変するのが可能であることの指標となる。この場合、処置は疾患進行を停止させることによりTSE感染個体の寿命を延長し、彼らの健康状態を安定化し、またはおそらく改善して、疾患がそれ以上悪化するのを防ぐであろう。
【0221】
潜伏期の延長
図7に示すように、RMLスクレイピー株を脳内感染させたマウスに潜伏期の後期(感染後80日目)に化合物を1日1回投与することによる処置の結果、スクレイピー感染症の末期に達するまで生存時間が延長した(
図7)。さらに、109日目から136日目までピーナツバターと混合したanle138bを与えることによる追加処置を受けた2匹のマウスにおいて生存時間がより長いことは、i)生存が処置期間と相関すること、ii)前記化合物が経口投与した際に有効であること、およびiii)前記化合物が血液−脳−関門を通過することの指標となる。
【0222】
実施例7:インビトロでのα−シヌクレイン凝集の抑制
シヌクレイノパチーは、主にタンパク質α−シヌクレインからなる凝集物およびフィブリルの細胞内蓄積を特徴とする(神経変性性)疾患である(概説についてはGoedert, 2001を参照)。最も顕著な神経変性性シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レー
ヴィ体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)である。
【0223】
インビトロでのα−シヌクレインの凝集は、自然界で生体膜の近辺に存在する誘電状態を模倣する有機溶剤などの物質の存在下で起きることが証明された(Munishkina et al., 2003)。α−シヌクレインのミスフォールディングおよび凝集の中心的な観点を研究する
ための、ならびにこの疾患プロセスにおける有毒な凝集物種を形成するためのモデル系を提供する、インビトロ凝集アッセイ法が開発された(Kostka et al 2008)。
【0224】
選択した化合物がα−シヌクレイン凝集を抑制する可能性を試験するために、本発明者らはインビトロ系を用いた;その際、低濃度(<3%)の有機溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)、および−ある実験では−鉄(III)を用いて、インビトロでα−シヌクレイン凝集を誘導した。それぞれグリーンAlexa488−またはレッドAlexa647−蛍光体で標識したα−シヌクレインモノマーの混合物に適用した交差相関分析およびSIFT分析による単一粒子蛍光相関セットアップを用いて、マルチマー形成をモニターした。そのようなα−シヌクレイン混合物を、反応に化合物を添加した試料と並行して凝集させた。
【0225】
実験法:
α−シヌクレインの蛍光標識
組換えα−シヌクレインを、アミノ反応性蛍光色素であるAlexa Fluor−488−O−スクシンイミジルエステルまたはAlexa Fluor−647−O−スクシンイミジルエステル(Molecular Probes、米国)でそれぞれ標識した。反応の完了後、製造業者の指示に従った2つの連続PD10カラム(Amersham
Bioscience、ドイツ)による反応混合物のサイズ排除クロマトグラフィーによって、結合しなかった色素分子を分離した。標識効率および結合しなかった色素の除去を、標識α−シヌクレインモノマーを含有する画分の適切な希釈液についてのFCS測定により判定した。
【0226】
単一粒子蛍光相関測定
蛍光相関測定用のカバースライドガラス底を備えた特殊なマイクロタイタープレート(Evotec−Technologies、ドイツ)のウェル内において、20μlの体積で、下記のものを含有する緩衝液中においてα−シヌクレインの凝集を実施した:50mM Tris、pH7.0、およびそれぞれAlexa488−またはAlexa647−蛍光体で標識したα−シヌクレインモノマーの混合物:約5〜10nMの最終濃度の各α−シヌクレイン種。Insight蛍光相関計測器(Evotec−Technologies、ドイツ)により、1.2 NAの40×顕微鏡対物レンズ(オリンパス、日本)を用いて、FIDA光学セッティング、ピンホール直径70μm、および488nmレーザーについて200μWの励起、633nmレーザーについて300μWの励起で、測定を実施した。測定時間は10秒であり、その間、ビームスキャナー装置により、100μmの走査路長さを用い、50Hzの走査周波数、および2000μmの位置決めテーブル移動で、レーザー焦点をウェル全体に移動させた。これは約10mm/秒の走査速度に相当する。二次元強度分布ヒストグラムを作成し、2−D SIFTソフトウェア(Evotec OAI、ドイツ)を用いて分析した。
【0227】
結果:化合物によるα−シヌクレイン凝集抑制
DMSOおよびDMSO/Fe
3+により起きたα−シヌクレインの凝集は、レッドおよびグリーン両方の標識α−シヌクレイン単位をより多数含むマルチマー状α−シヌクレイン複合体の形成により反映される。したがって、阻害化合物を添加しない対照反応は、多数の光子を放射する多数の複合体の存在を示す。
図8Aにみられるように、DPP化合物351F11をアッセイ溶液に添加すると、マルチマー状α−シヌクレイン複合体の形成を用量依存性で大幅に阻害することができる。したがって化合物351F11は、シヌクレイノパチーにみられる病的なタンパク質凝集に関するこのインビトロモデルにおいて、低マイクロモル濃度でα−シヌクレインのマルチマー形成を効果的に阻害することができる。これは、化合物351F11が抗プリオン化合物として機能しうるだけでなく、パーキンソン病、DLBおよびMSAなどのシヌクレイノパチーについて分子レベルで病理学的機序を妨げる療法化合物となる可能性も備えていることの明瞭な指標である。α−シヌクレイン凝集に対する用量依存性阻害作用は、試験した他のDPP関連化合物についても検出できる(
図8B、C)。したがってこれらの化合物は、α−シヌクレイン凝集をインビトロで阻害する能力が証明された新規グループの物質であり、これらはパーキンソン病その他のシヌクレイノパチーに対する根治療法の開発を可能にするであろう。
【0228】
さらに、インビトロでのプリオンタンパク質凝集とα−シヌクレイン凝集の両方に対するこれらの化合物の阻害活性は、タンパク質の主にβ−シートコンホメーションへのミスフォールディングが後続のアミロイドフィブリルへのタンパク質凝集の基礎をなす、より広範なタンパク質凝集性疾患に対する、化合物の全般的な抗凝集活性を反映している可能性がある。したがって、これらの化合物およびDPPクラスの物質の他のメンバーは、たとえば下記のものを含めた全域の(神経変性性)タンパク質凝集性疾患の根治処置のための療法薬として有用である可能性をもつ:アルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、多系統萎縮症、散在性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、フィンランド遺伝性全身性アミロイド症。
【0229】
実施例8:細胞培養におけるPrPScの阻害
実験法:
プリオン感染した細胞培養物を、前記の一次スクリーニングについて記載した新規な合成化合物で処理した。化合物を
図9に示す濃度で添加した。それらの化合物の構造を下記
および
図3に示す:
【0230】
【化23】
【0231】
5−(3,5−ジブロモフェニル)−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ピラゾール(anle145d)
【0232】
【化24】
【0233】
5−(3−ブロモフェニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)ピラゾール(sery255b)
結果:
きわめて高い割合のDPP関連化合物が、細胞培養において低マイクロモル濃度で、またマイクロモル下の濃度ですら、強いPrPSc減少を示した。これは、これらの化合物が抗プリオン活性をもつ関連化学物質のグループであることの指標となる。
【0234】
実施例9:種々のDPP誘導体が脳および脾臓におけるPrP
Sc蓄積に及ぼす阻害作用
化合物がインビボでPrP
Sc蓄積に及ぼす阻害作用に関して3種類の実験プロトコルにより試験した:
a)C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、1日当たり1mgの化合物をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した。感染後120日目に、脳のPrP
Scレベルをイムノブロット分析により測定した;
b)C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、1日当たり0,84mgの化合物(DMSO中)を14日間、腹腔内注射し、続いて2×5日間(間の2日間は処置をしない)、1mgの化合物(DMSO+植物油中)を強制経口適用する処置を開始した。感染後106日目に、脳のPrP
Scレベルを測定した;
c)C57BL/6マウスに100μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を腹腔内(i.p.)接種した。1日当たり1mgの化合物をDMSO+ピーナツバターと混合したもので34日間処置した後、感染後35日目に脾臓のPrP
Scレベルを測定した;
DMSO処置グループと比較したPrP
Sc蓄積の相対阻害を表1に示す(処置期間終了時のDMSO処置動物の平均値を0%阻害と規定し、処置期間開始時の対照動物の平均値を100%阻害と規定した)。
【0235】
【表1】
【0236】
表1:種々のDPP誘導体が脳および脾臓におけるPrP
Sc蓄積に及ぼす阻害作用
(
a,b,c 使用した実験プロトコル(前記)を示す)
これらの実験の結果は、これらの実験条件下での下記の指標となる:i)化合物anle138bおよび化学的関連化合物がインビボで強いプリオン増幅阻害をもたらす、ii)この適用についてこれらの実験条件下でanle138bが最適な相対活性をもつものであることを示す構造−活性関係がある。
【0237】
実施例10:血液−脳−関門を通過することができ、かつ病的タンパク質凝集物との相
互作用がみられる
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目に、1日当たり1mgの化合物(sery383)または3mgの化合物(sery363a)をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した。感染後120日目に、脳のPrP
Scレベルをイムノブロット分析により測定した。
【0238】
【化25】
【0239】
DMSO処置した対照と比較して、sery363aはPrP
Sc蓄積を35%低下させ、sery383はPrP
Sc蓄積を30%低下させた。
Sery363aは、PETイメージング用の診断トレーサーとして使用するために必要な同位体標識に好適なanle138b修飾体を提供するので、これを合成してこれらの実験に用いた。
【0240】
Sery383、ならびに−NH2基およびハロゲン原子を含む構造類似化合物はアルファ−シヌクレイン凝集の阻害について高活性であることが認められたので、この化合物をこのアッセイに用いた(実施例16、“種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物形成の阻害”を参照)。
【0241】
これらの実験の結果は、両化合物とも血液−脳−関門を通過することができ、かつ病的タンパク質凝集物と相互作用しうることの指標となる;これは、これらの化合物が療法化合物および診断用化合物としての使用に利用できる特性をもつことを示す。
【0242】
実施例11:anle138bによる1日1回の処置がRMLスクレイピー感染したマウスにおいてPrP
Sc蓄積およびプリオン病理に及ぼす影響
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後それぞれ80日目または120日目に、1日当たり5mgの化合物をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した(
図10)。
【0243】
PrP
Scについて染色した脳切片(
図10A)は、anle138b処置がDMSO処置動物と比較してPrP
Sc蓄積を低下させることを示す。プリオン接種マウスの脳ホモジェネートにおける種々の時点のPrP
Scレベルの定量は、疾患の後期(感染後120日目;
図10B)に処置を開始した後ですら、anle138b処置マウスにおけるPrP
Sc蓄積が強く低下することを示す。H&E染色した脳切片の小脳におけるアポトーシス細胞の組織学的定量は、PrP
Sc蓄積を阻害すると神経細胞死が阻害されることを示す(
図10C)。化合物を含まないDMSO+ピーナツバターで処置した対照マウスは体重漸減を示す(
図10D)。感染後80日目からのanle138bによる処置は、体重減少を約100日間阻止する。感染後120日目からの処置は、体重減少を約70日間阻害する。
【0244】
これらの実験所見は、疾患の明瞭な徴候が存在した後に処置を開始した場合ですら、化
合物処置がPrP
Sc蓄積、神経細胞死、および疾患の臨床徴候の進行を阻害することの指標となる。
【0245】
実施例12:種々の処置プロトコルの比較
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。種々の時点および計画でのanle138bによる処置(
図11の図面凡例中に示す)が、RMLスクレイピー攻撃後の生存時間を有意に延長した(p<0,01)。平均生存時間を日数±標準偏差で表わす。
【0246】
図11に示すように、これらの実験所見は、i)化合物処置が化合物の経口適用によっても有効であること、ii)処置が疾患の臨床後期に開始した場合ですら同様に有効であること、およびiii)処置が長いほど生存が長くなることの指標となる。
【0247】
実施例13:anle138b投与が脳のPrPScレベルに及ぼす用量依存性作用
C57BL/6マウスに30μLの1%脳ホモジェネート(RMLスクレイピー)を脳内(i.c.)接種した。感染後80日目目に、種々の量のanle138b(
図12に示す)をDMSO+ピーナツバターと混合して経口適用する処置を開始した。感染後120日目に動物を屠殺し、脳のPrP
Sc量を感染後80日目目に屠殺した動物と比較して定量した。
【0248】
図12に提示するデータは、anle138bが用量依存性で脳のPrP
Sc蓄積を低下させたことを示す。
【0249】
実施例14:DMSO+ピーナツバターと混合した1日当たり1mgのanle138bで1週間処置した非感染マウスからの脳組織のイムノブロット法によるPrP
Cの定量。
図13に示すように、対照マウスと比較して、anle138bで処置したマウスにPrP
Cレベルの低下はみられなかった。
【0250】
これらの実験所見は、スクレイピー感染マウスにおける療法効果がPrP
Cの発現低下によるものではなく、病的に凝集したタンパク質種の形成を阻害することによるものであることの指標となる。
【0251】
実施例15:anle138bの薬物動態分析
図14に示すように、1回量のanle138bを非感染C57BL/6マウスに適用した。適用後、種々の時点で、脳および血清中の化合物量を各時点および各験グループ当たり2匹の動物についてLC−MSにより測定した。
【0252】
これらの実験所見は、経口による良好な生物学的利用能および良好な脳透過があることの指標となる。anle138cがマウスの血液中に検出され、したがってそれはanle138bの代謝産物であると推定される。
【0253】
実施例16:種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物の形成阻害
α−シヌクレインの凝集をDMSOおよび10μM FeCl
3により誘導し、共焦点単分子分光法により分析した;Kostka et al. (J Biol Chem (2008) 283: 10992-11003)
の記載に従う。表2に示すように、10μMの濃度で添加した種々の化合物が中間体IIオリゴマーの形成作用に及ぼす作用を、化合物なしの対照と比較して調べた。各化合物の構造を
図15に示す。
【0254】
【表2】
【0255】
表2:種々の化合物によるα−シヌクレイン凝集物の形成阻害
これらの実験所見は、これらの化合物が有毒なα−シヌクレイン凝集物の形成を阻害することの指標となる;これは、これらの構造関連化合物がタンパク質凝集を伴うタンパク質疾患の処置、特にα−シヌクレインの凝集がみられる疾患の処置に使用できる可能性をもつことの指標となる。
【0256】
実施例16:パーキンソン病のインビボマウスモデルにおける化合物の作用
実験による証拠は、ミトコンドリア毒素、たとえばMPTPおよびロテノン(rotenone)を適切な濃度で用いたパーキンソン病の実験モデルにおいて、凝集したα−シヌクレインの形成がみられ、これが神経細胞死に関係することを示唆する。MPTP(30mg/kg体重、1日1回)を1〜5日目に腹腔内注射することによりマウスを処理して、黒質のドーパミン作動性ニューロンの変性を誘発した。動物(実験グループ当たり3〜10匹)を種々の化合物またはビヒクルで処置した(250mg/kg体重、1日1回、経口適用(487,5μlのオリーブ油と混合した12,5μlのDMSO中の化合物をチューブ供給)、0〜12日目)。非−MPTP処理マウス(対照;0%の細胞死と規定)、およびビヒクルのみで処置したMPTP処理マウス(DMSO;100%の細胞死と規定)と比較したニューロン損失を、12日目に定量した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)陽性の緻密骨質部黒質細胞(substantia nigra pars compacta)(SNpc)細胞の定量のために、50μmの切片を抗TH抗体で免疫染色した。SNpcの2つ目毎の切片をStereo investigatorソフトウェア(MicroBrightfield、米国バーモント州コルチェスター)により分析した。免疫染色された細胞を光学分画法により20×対物レンズを用いて計数した。2人の独立した研究者がブラインド法で立体解析学的計数を行なった。
【0257】
図16に示す実験所見は、被験化合物がパーキンソン病のインビボモデルにおいて細胞死を減少させることの指標となる。
実施例17:anle138cがABeta凝集に及ぼす作用
Abeta40を50μMの濃度で下記の条件下に30時間インキュベートした:50mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、0.01%ナトリウムアジド、pH7.4、37℃、細い磁気撹拌バーで撹拌、50μMのanle138cを含むもの、または含まないもの。DMSOを被験試料のものと等しい濃度で対照試料に添加した。DMSO濃度は2%(vol/vol)であり、anle138Cの原液は3mMであった。DLS実験の前にペプチド溶液を16000gで15分間遠心した。
【0258】
モノマー状Abeta40の最大ピークは約1.5nmの流体力学的半径および約30nmのオリゴマーピークに対応する(上パネル)が、anle138Cの存在下における凝集状態のAbeta40(中パネル)はモノマーピークのほかに20nm付近にオリゴマーピークを示した。下パネルは、試料を遠心した後に測定したアミロイドフィブリル状のAbeta40に関するサイズ分布を示す。ABeta凝集を動的光散乱により分析した。DLS測定を二重試験として25℃でDynaPro Titan(Wyatt Technology Corp.、カリフォルニア州)計測器により827.08nmのレーザーを用いて実施した。散乱角度は90°であった。DLS測定は、10秒間、20回の取得からなっていた。溶液の屈折率(RI)を589nmおよび20℃で1.333に設定し、試験波長におけるRIをCauchy方程式により係数3119nm
2で求めた。粘度は20℃で1.019cpであり、温度依存性変動を水溶液モデルにより計算した。サイズ分布を制約条件付き正規化法(constrained regularization method)により測定した。
【0259】
図17に示すこれらの実験所見は、anle138cが大型Abetaオリゴマーの形成を阻害することの指標となる;これは、anle138cおよび関連化合物がABetaの凝集をも妨げることができ、凝集したABetaの沈着が神経病理学的特徴であるアルツハイマー病などの疾患に療法および診断の目的で使用できることの指標である。
【0260】
本発明化合物の別態様を下記の項目にまとめる。これらの化合物を前記の本発明化合物と同じ方法で使用できる:
1.式(1)により表わされる化合物
【0261】
【化26】
【0262】
[式中:
X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R11)(R12)−、−C(R13)=、−N(R14)−、−N=、−N
+(R17)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【0263】
【化27】
【0264】
から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わし;
R1〜R15またはR17またはR18は、独立して水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アジド、スルホニル、チオ、ホスホニル、カルボキシ、カルボニルアミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、炭素環式基、カルボシクロオキシ、カルボシクロアルキル、カルボシクロアルケ
ニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、複素環式基、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニルおよびヘテロアリールアルコキシから選択され、あるいは2つの隣接基が連結して1〜6個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよく、その際、1または2個の炭素原子が−O−、−S−または−N(R’)−により交換されていてもよく、ここでR’はHおよびC
1−4アルキルから選択され;それはそれぞれ場合により置換されていてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩;
ただし、化合物は下記の化合物(a)、(b)または(c)ではない。
【0265】
【化28】
【0266】
2.環Aが下記の構造から選択される、項目1による化合物:
【0267】
【化29】
【0268】
3.R7がハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アジド、アルコキシ、チオ、アルキルチオ、アミノ、ハロアルコキシ、アルキルまたはハロアルキルである、項目1または2による化合物。
【0269】
4.R2およびR3がそれぞれ独立してヒドロキシおよびC
1−6アルコキシから選択され;あるいはR2とR3が一緒に構造−O−(CH
2)
n−O−を形成し、ここでnは1〜3であり、好ましくはnは1である、項目1〜3のいずれかによる化合物。
【0270】
5.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防に使用するための、式(1)により表わされる化合物
【0271】
【化30】
【0272】
[式中:
X、YおよびLは、独立して、方向性なしに−C(R11)(R12)−、−C(R13)=、−N(R14)−、−N=、−N
+(R17)=、−O−および−S−から選択され;
MおよびZは、独立して、方向性なしに
【0273】
【化31】
【0274】
から選択され;
−−−−は、場合により二重結合を表わし;
R1〜R15またはR17またはR18は、独立して水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、アジド、スルホニル、チオ、ホスホニル、カルボキシ、カルボニルアミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、炭素環式基、カルボシクロオキシ、カルボシクロアルキル、カルボシクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、複素環式基、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニルおよびヘテロアリールアルコキシから選択され、あるいは2つの隣接基が連結して1〜6個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよく、その際、1または2個の炭素原子が−O−、−S−または−N(R’)−により交換されていてもよく、ここでR’はHおよびC
1−4アルキルから選択され;それはそれぞれ場合により置換されていてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【0275】
6.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する医薬組成物の調製のための、項目5に定めた式(1)により表わされる化合物の使用。
7.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患を治療または予防する方法であって、療法有効量の項目5に定めた式(1)により表わされる化合物をその必要がある患者に投与することを含む方法。
【0276】
8.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患に関係するタンパク質の凝集を阻害するための化合物を同定する方法であって、下記の段階を含む方法:
標識したモノマー状タンパク質と差次標識した該タンパク質の凝集物とを、(1)項目5に定めた化合物である凝集阻害薬候補の存在下および/または(2)不存在下で接触さ
せ;
該タンパク質凝集物へのモノマー状タンパク質の結合度を表わす共局在化した標識量を測定し;そして
該化合物の存在下および不存在下で得られた結果を比較し、
その際、該化合物の存在下での共局在化した標識の減少は、その化合物が該タンパク質の凝集を阻害する能力の指標となる。
【0277】
9.標識が蛍光標識である、項目8の方法。
10.標識が、該タンパク質に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントに結合している、項目8または9の方法。
【0278】
11.抗体または抗体フラグメントが、凝集したタンパク質とモノマー状タンパク質を識別できる、項目10の方法。
12.共局在化した標識の量を、“scanning for intensely fluorescent targets(SIFT)”または蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)または高分解能共焦点イメージングの方法を用いて測定する、項目8〜11のいずれかの方法。
【0279】
13.モノマー状タンパク質および凝集したタンパク質が、プリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチンおよびアタキシン、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質、ならびにそれらのタンパク質のフラグメントまたは誘導体からなる群から選択される、項目8〜12のいずれかの方法。
【0280】
14.モノマー状タンパク質がプリオンタンパク質であり、凝集したタンパク質がPrPScである、項目13の方法。
15.モノマー状タンパク質がアルファ−シヌクレインであり、凝集したタンパク質がアルファ−シヌクレインのオリゴマーまたはプロトフィブリルまたはフィブリルからなる群から選択される、項目13の方法。
【0281】
16.タンパク質凝集関連の疾患および/または神経変性性疾患の治療または予防においてインビボ効力をもつ化合物を選択する方法であって、下記を含む方法:
(a)項目5に定めた候補化合物を、項目13〜15のいずれかに定めたタンパク質の凝集性イソ型をもつ細胞培養物またはヒト以外の動物に投与し;
(b)観察可能な凝集物の量を定量し;そして
(c)該タンパク質の凝集物もしくは凝集物形成を低下させることができるか、または細胞培養物またはヒト以外の動物の生存時間を延長することができる化合物を、同定および選択する。
【0282】
17.インビトロで、動物において、またはエクスビボで、タンパク質凝集を阻害するための、項目5に定めた化合物の使用。
18.項目5に定めた化合物、および場合により医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物または診断用組成物。
【0283】
19.化合物が下記からなる群から選択される、項目1もしくは5のいずれかによる化合物、または項目6の使用、または項目7〜16のいずれかによる方法、または項目17による使用、または項目18による組成物:
【0284】
【化32】
【0285】
[式中、R16は、それぞれ独立してHおよびC
1−4アルキルから選択され;あるいは2個の隣接するR16基が連結して1〜3個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【0286】
20.化合物が検出可能な状態に標識されている、項目16もしくは19のいずれかによる方法、または項目17もしくは19のいずれかによる使用、または項目18もしくは19のいずれかによる診断用組成物。
【0287】
21.2種類以上の化合物を同時に使用する、項目16、19〜20のいずれかによる方法、または項目17、19〜20のいずれかによる使用。
22.タンパク質凝集に関連する疾患が凝集形態の少なくとも1種類のタンパク質またはそのフラグメントもしくは誘導体の存在を特徴とし、その際、タンパク質が、プリオンタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、アルファ−シヌクレイン、スーパーオキシドジスムターゼ、タウ、免疫グロブリン、アミロイド−A、トランスチレチン、ベータ2−ミクログロブリン、シスタチンC、アポリポタンパク質A1、TDP−43、ランゲルハンス島アミロイドポリペプチド、ANF、ゲルゾリン、インスリン、リゾチーム、フィブリノーゲン、ハンチンチンおよびアタキシン、ならびにポリ−Qストレッチを含む他のタンパク質からなる群から選択される、項目5または19のいずれかによる化合物。
【0288】
23.疾患が、アルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、多系統萎縮症、散在
性レーヴィ体病、前頭側頭性認知症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、および他のポリ−Q疾患、遺伝性脳アミロイド血管障害、家族性アミロイド多発性神経障害、原発性全身性アミロイド症(ALアミロイド症)、反応性全身性アミロイド症(AAアミロイド症)、II型糖尿病、注射局在性アミロイド症、ベータ−2ミクログロブリン性アミロイド症、遺伝性非神経障害性性アミロイド症、およびフィンランド遺伝性全身性アミロイド症からなる群から選択される、項目5、19または22のいずれかによる化合物。
【0289】
24.プリオン病が、クロイツフェルト−ヤコブ病、変型クロイツフェルト−ヤコブ病、遺伝性ヒトプリオン病、ウシ海綿状脳症(BSE)およびスクレイピーから選択される項目23の化合物。
【0290】
25.項目5および18〜24のいずれかに定めた化合物、ならびにさらに、該化合物に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメント;および/または項目13〜15に定めたモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;および/または場合により該化合物と複合体を形成した項目13〜15に定めたモノマー状タンパク質もしくは凝集したタンパク質;ならびに使用のための指示を、1以上の容器内に含むキット。
【0291】
本明細書中で用いる用語“ハロ”は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択されるハロゲン原子、好ましくは臭素を表わす。
本明細書中で用いる用語“カルボキシ”は、基−COOHを表わす。
【0292】
用語“アルキル”および“alk”は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含む、直鎖または分枝鎖アルカン(炭化水素)基を表わす。そのような基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0293】
用語“アルケニル”は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖または分枝鎖炭化水素基を表わす。そのような基の例には、エテニルまたはアリルが含まれる。
【0294】
用語“アルキニル”は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖または分枝鎖炭化水素基を表わす。そのような基の例には、エチニルが含まれる。
【0295】
用語“アルコキシ”は、前記のアルキル基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
本発明によれば“アシル基”は、アルキル、アリール、複素環式基またはヘテロアリールがカルボニル基に結合した官能基である。アシル基の例は、ホルミル基;C
1−6アルキル−カルボニル基、たとえばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基およびピバロイル基;C
2−6アルケニル−カルボニル基、たとえばエテノイル基、プロペノイル基およびブテノイル基;アロイル基、たとえばベンゾイル基など、好ましくはアセチル基である。
【0296】
本明細書中で用いる用語“アシルオキシ”は、−O−に結合したアシル基を表わす。同様に、“アシルアミノ”は−N(R”)−に結合したアシル基であり、ここでR”はHまたはC
1−6アルキルである。
【0297】
用語“炭素環式基”は、1〜4つの環、好ましくは1つの環、および環当たり3〜8個
の炭素原子を含む、完全飽和環式炭化水素基を表わす。そのような基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。
【0298】
用語“カルボシクロオキシ”は、前記の炭素環式基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
用語“カルボシクロアルキル”は、炭素環式基で置換されたアルキル基を表わし、その際、炭素環式基およびアルキルは前記に概説したものとして定義される。
【0299】
用語“カルボシクロアルケニル”は、炭素環式基で置換されたアルケニル基を表わし、その際、炭素環式基およびアルケニルは前記に概説したものとして定義される。
用語“アリール”は、6〜20個、好ましくは6〜10個の主鎖炭素原子を含み、1〜3つの芳香環をもつ環式芳香族炭化水素基、特に単環式または二環式の基、たとえばフェニル、ビフェニルまたはナフチルを表わす。2以上の芳香環をもつ場合(二環式など)、アリール基の芳香環は1点で連結していてもよく(たとえばビフェニル)、あるいは縮合していてもよい(たとえばナフチル、フェナントレニルなど)。
【0300】
用語“アリールアルキル”は、アリール基で置換されたアルキル基を表わし、その際、アリールおよびアルキルは前記に概説したものとして定義される。
用語“アリールアルケニル”は、アリール基で置換されたアルケニル基を表わし、その際、アリールおよびアルケニルは前記に概説したものとして定義される。
【0301】
用語“アリールアルキニル”は、アリール基で置換されたアルキニル基を表わし、その際、アリールおよびアルキニルは前記に概説したものとして定義される。
用語“アリールオキシ”は、前記のアリール基が酸素結合(−O−)により結合したもの、たとえばフェノキシ基、アントリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基など、好ましくはフェノキシ基を表わす。
【0302】
用語“アリールアルコキシ”は、アリール基で置換されたアルコキシ基を表わし、その際、アリールおよびアルコキシは前記に概説したものとして定義される。
用語“複素環式基”は、完全飽和または部分不飽和もしくは完全不飽和の環式基(たとえば3〜7員単環式、7〜11員二環式、または10〜16員三環式の環系)であって、少なくとも1つの炭素原子含有環中に少なくとも1個のヘテロ原子をもつものを表わす。ヘテロ原子を含む複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子をもつことができ、その際、窒素および硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化していてもよい(用語“ヘテロアリリウム”は、第四級窒素原子をもち、したがって陽電荷をもつ、ヘテロアリール基を表わす)。複素環式基は、分子の残りの部分に、環または環系のヘテロ原子または炭素原子のいずれにおいて結合していてもよい。単環式複素環式基の例には下記のものが含まれる:エチレンオキシド、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ヘキサヒドロジアゼピニル、4−ピペリドニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソランおよびテトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニルなど。二環式複素環式基の例には下記のものが含まれる:インドリル、イソインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオ
キサジアゾリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、ベンゾフラザニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(たとえばフロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,2−b]ピリジニル]またはフロ[2,3−b]ピリジニル)、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロジオキシドベンゾチオフェニル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキナゾリニル(たとえば3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル)、トリアジニルアゼピニル、テトラヒドロキノリニルなど。三環式複素環式基の例には下記のものが含まれる:カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなど。
【0303】
用語“ヘテロシクロオキシ”は、前記の複素環式基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
用語“ヘテロシクロアルキル”は、複素環式基で置換されたアルキル基を表わし、その際、複素環式基およびアルキルは前記に概説したものとして定義される。
【0304】
本明細書中で用いる用語“ヘテロアリール”は、ヘテロ原子として酸素、硫黄および/または窒素を含む5〜6員芳香環を表わし、それにさらに芳香環が縮合していてもよい。ヘテロアリール基の例は下記のものであるが、それらは限定ではない:ベンゾフラニル、フリル、チエニル、ベンゾチエニル、チアゾリル、インダゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、プリニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾアミダゾリル、インドリル、イソインドリル、ピラジニル、ジアジニル、ピラジン、トリアジニルトリアジン、テトラジニル、テトラゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾピリジルおよびベンゾインダゾリル。
【0305】
用語“ヘテロアリールオキシ”は、前記のヘテロアリール基が酸素結合(−O−)により結合したものを表わす。
用語“ヘテロアリールアルキル”、“ヘテロアリールアルケニル”、および“ヘテロアリールアルキニル”は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基がヘテロアリール基で置換された基を表わし、その際、ヘテロアリール、ならびにアルキル、アルケニルおよびアルキニルは前記に概説したものとして定義される。
【0306】
用語“ヘテロアリールアルコキシ”は、ヘテロアリール基で置換されたアルコキシ基を表わし、その際、ヘテロアリールおよびアルコキシは前記に概説したものとして定義される。
【0307】
本明細書中で用いる“置換された”は、いずれか可能な結合位置で1個以上の置換基、好ましくは1〜4個の置換基で置換された基を表わす。置換基の例には、下記の基のうち1以上が含まれるが、これらに限定されない:アルキル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシ(すなわち−COOH)、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノ(すなわち−NH
2)、チオールおよびニトロ。
【0308】
好ましい他の態様において、R1は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
好ましい他の態様において、R2はヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
【0309】
好ましい他の態様において、R3はヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R2とR3は一緒に連結して構造−O−(CH
2)
n−O−を形成し、ここでnは1〜3であり、好ましくはnは1である。
【0310】
好ましい他の態様において、R4は水素、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
好ましい他の態様において、R5は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
【0311】
好ましい他の態様において、R6は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
好ましい他の態様において、R7は水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択され、より好ましくはR7は水素、ハロ、ヒドロキシまたはアルコキシであり、よりさらに好ましくはR7はハロである。
【0312】
好ましい他の態様において、R8は水素、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R9は水素、ハロ、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群から選択される。
【0313】
好ましい他の態様において、R10は水素およびアルキルからなる群から選択され、より好ましくは水素である。
【0314】
好ましい他の態様において、R11は水素およびアルキルからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R12は水素およびアルキルからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R13は水素およびアルキルからなる群から選択される。
【0315】
好ましい他の態様において、R14は水素およびアルキルからなる群から選択される。
好ましい他の態様において、R15は水素およびアルキルからなる群から選択される。
本発明化合物の他の好ましい態様において、R7はハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロ、アジド、アルコキシ、チオ、アルキルチオ、アミノ、ハロアルコキシ、アルキルまたはハロアルキルである。
【0316】
好ましい他の態様において、R7はハロ、シアノ、ヒドロキシまたはニトロ、より好ましくはハロである。
さらに好ましい他の態様において、R2およびR3はそれぞれ独立してヒドロキシおよびC
1−6アルコキシから選択され;あるいはR2とR3は一緒に構造−O−(CH
2)
n−O−を形成し、ここでnは1〜3であり、好ましくはnは1である。
【0317】
好ましい他の態様において、化合物は下記からなる群から選択される:
【0318】
【化33】
【0319】
[式中、R16は、それぞれ独立してHおよびC
1−4アルキルから選択され;あるいは2個の隣接するR16基が連結して1〜3個の炭素原子をもつ架橋基を形成していてもよい]
およびそのプロドラッグ、エステル、溶媒和物または塩。
【0320】
より好ましい他の態様において、化合物は下記からなる群から選択される:
【0321】
【化34】
【0322】
3−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(3,4−ジヒドロキシフェニル)イソオキサゾール
【0323】
【化35】
【0324】
3,5−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ピラゾール
【0325】
【化36】
【0326】
5−(3−ブロモフェニル)−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラゾール
【0327】
【化37】
【0328】
5−(3−フルオロフェニル)−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラゾール
【0329】
【化38】
【0330】
3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)ピラゾール
【0331】
【化39】
【0332】
2,4−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)イミダゾール臭化水素酸塩
【0333】
【化40】
【0334】
3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ピラゾール
【0335】
【化41】
【0336】
5−(3,5−ジブロモフェニル)−3−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)ピラゾール臭化水素酸塩
【0337】
【化42】
【0338】
5−(3−フェニル)−3−(2−ヒドロキシフェニル)ピラゾール(10353_F11)
前記の別態様の化合物は検出可能な状態に標識されていてもよい。
【0339】
【表3-1】
【0340】
【表3-2】
【0341】
【表3-3】
【0342】
【表3-4】