特許第6307068号(P6307068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タテホ化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6307068-固形酸素発生組成物 図000004
  • 特許6307068-固形酸素発生組成物 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307068
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】固形酸素発生組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/02 20060101AFI20180326BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C01B13/02 B
   A01K63/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-508379(P2015-508379)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2014057512
(87)【国際公開番号】WO2014156874
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-62181(P2013-62181)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】亀井 忠輔
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−301605(JP,A)
【文献】 特開昭61−077605(JP,A)
【文献】 特開昭61−097107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B13/00−13/36
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を含有する成形体よりなり、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6であり、かつ、アスペクト比が1.0〜4.5である、酸素発生組成物。
【請求項2】
前記酸素発生組成物の成形体の形状が、円板状、立方体状、直方体状、及び多角形板状のいずれかである、請求項1に記載の酸素発生組成物。
【請求項3】
前記含有成分の各粉末原料の平均粒子径が、100×10−6〜1000×10−6mである、請求項1又は2記載の酸素発生組成物。
【請求項4】
前記酸素発生組成物が、圧力成形品である、請求項1〜3のいずれか1項記載の酸素発生組成物。
【請求項5】
酸素発生組成物の製造方法であって、
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程、及び
上記混合工程で得られる混合物を、成形して、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5の範囲である成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鑑賞魚用水槽、いけす用水槽、活魚の搬送用水槽等の水槽の水中において、水との接触により、酸素を徐々に放出して水中の酸素濃度を増大させ、観賞用水生生物の養育や活魚の搬送等に適した水質環境を保持するための酸素発生組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観賞魚等の観賞用水生生物の養育や活魚の搬送等に適した水質環境を保持するために、水中の酸素濃度を増大させる固形酸素発生組成物が用いられていた。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−301605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中の酸素濃度を増大させる目的で固形酸素発生組成物を用いる場合、十分な酸素放出量を得るために過酸化カルシウムを多量に含有させる必要があった。しかし、過酸化カルシウムを多量に含有させると反応時に白濁が生じ、観賞用水生生物の養育時に、美観を損ねたり、活魚の搬送時に、活魚のストレスとなる等の問題があった。
【0005】
よって、本発明の目的は、上記の課題を解決し、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、水中に酸素をバランスよく行き渡らせ、白濁の生じない、安定的な水質環境を保持することができる酸素発生組成物、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者は、種々検討を重ねた結果、過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%含有する成形体の形状が、外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6であり、かつ、成形体の直径φを、成形体の厚みtで除したもの(以下アスペクト比という)が1.0〜4.5の範囲である場合、通常の成形体に比べ効率的に過酸化カルシウムの反応が効率的に進み、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、水中に酸素をバランスよく行き渡らせ、白濁の生じない、安定的な水質環境を保持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明によれば、
〔1〕 過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%含有する成形体よりなり、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6であり、かつ、アスペクト比が1.0〜4.5である、酸素発生組成物、
〔2〕 前記酸素発生組成物の成形体の形状が、円板状、立方体状、直方体状、及び多角形板状のいずれかである、〔1〕に記載の酸素発生組成物、
〔3〕 前記含有成分の各粉末原料の平均粒子径が、100×10−6〜1000×10−6mである、〔1〕又は〔2〕記載の酸素発生組成物、
〔4〕 前記酸素発生組成物が、1〜100MPaの圧力で成形されたものである、〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の酸素発生組成物、
〔5〕 酸素発生組成物の製造方法であって、
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程、及び
上記混合工程で得られる混合物を、成形して、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5の範囲である成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程
を含む、製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、水中に酸素をバランスよく行き渡らせ、白濁しない、安定的な水質環境を保持することができる酸素発生組成物及びその製造方法が提供される。
【0009】
本発明の酸素発生組成物は、上記成分及び含有量の範囲で配合し、さらに上記範囲の成形体の形状とすることにより、酸素放出成分である過酸化カルシウムが水中で、効率的かつ安定的に反応して、酸素発生時に発生する白濁を最小限に抑え、徐々に酸素の気泡を放出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、円板状の形状を示す図である。
図2図2は、直方体の形状を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.酸素発生組成物
本発明の酸素発生組成物は、過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%含有する成形体よりなる。なお、重量%は酸素発生組成物を100重量%とした場合の重量に対するものである。
【0012】
本発明の酸素放出成分は、過酸化カルシウムである。過酸化カルシウムは、単体で水中に投入すると、水と急激に反応を起こし、水中の溶存酸素量が急激に増大するため、水質環境が急激に変化してしまう。そこで、過酸化カルシウムに加えて、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを上記範囲となるよう配合することで、過酸化カルシウムと水との急激な反応を抑制することができる。この結果、過酸化カルシウムは水中で安定的に反応し、長期間にわたって徐々に酸素放出を行うため、水中の溶存酸素を安定的に増大させることができる。
【0013】
さらに、これにリン酸二水素カルシウムを上記範囲となるよう配合することにより、酸素発生組成物を投入した水中のpHが、動植物の生存に悪影響を及ぼすことのない中性〜酸性側に維持され、安定な水質環境を保持することができる。
【0014】
本発明において、過酸化カルシウムは、2〜20重量%含有されるように配合する。過酸化カルシウムが2重量%より少ないと、水中への酸素放出量が十分でなく、20重量%より多いと、水と急激に反応を起こし、酸素発生組成物から白濁が発生し、水質環境が急激に変化してしまう。安定な水質環境を保持しつつ、酸素をバランスよく水中に行き渡らせるためには、2〜15重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましい。
【0015】
本発明において、炭酸カルシウムは2〜30重量%、水酸化カルシウムは2〜30重量%含有されるように配合する。炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムがそれぞれ2重量%より少ないと、過酸化カルシウムが水と急激に反応を起こしてしまい、水質環境が急激に変化してしまう。それぞれ30重量%より多いと、過酸化カルシウムと水との反応が過剰に抑制されてしまい、十分な酸素放出量が得られない。本発明の効果をより高めるためには、それぞれ2〜25重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。
【0016】
本発明において、リン酸二水素カルシウムは、30〜80重量%含有されるように配合する。リン酸二水素カルシウムが30重量%より少ないと、酸素発生組成物を投入した水中のpHが増大してしまい、80重量%より多いと、過酸化カルシウムと水との反応が過剰に抑制されてしまい、十分な酸素放出量が得られない。本発明の効果をより高めるためには、35〜75重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましい。
【0017】
本発明において、成形体は、外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5とする。外形の表面積が3000×10−6より大きいと、過酸化カルシウムが水と急激に反応を起こしてしまい、白濁が発生し、水質環境が急激に変化してしまう。500×10−6より小さいと、過酸化カルシウムと水との反応が過剰に抑制されてしまい、十分な酸素放出量が得られない。アスペクト比が4.5より大きいと、反応時に成形体に割れが発生し、酸素供給量が不安定になり、さらに白濁が生じる場合がある。1.0より小さいと、過酸化カルシウムと水との反応が過剰に抑制されてしまい、十分な酸素放出量が得られない。
【0018】
本発明の効果をより高めるためには、成形体の外形の表面積は510×10−6〜2900×10−6が好ましく、520×10−6〜2800×10−6がより好ましい。また成形体のアスペクト比は1.1〜4.4が好ましく、1.1〜4.3がより好ましい。
【0019】
本発明の酸素発生組成物は、酸素発生成分の溶出を妨げない程度に、粉末の結合剤としてバインダーを含んでいても良い。バインダーとしては、無機バインダーや有機バインダーを挙げることができる。無機バインダーとしてケイ酸ソーダ、粘土等、有機バインダーとしてエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。本発明のバインダーとしては、有機バインダーが好ましい。
【0020】
バインダーの含有量は、酸素発生組成物中に0.05〜5重量%となるよう配合するのが好ましい。このような含有量であれば、酸素発生効率を損なうことなく、成形する際の成形性が向上する。
【0021】
本発明の酸素発生組成物の各成分の原料の入手方法は、特に限定されないが、過酸化カルシウムとしては、日本パーオキサイド、大塚化学、富田製薬社製等、水酸化カルシウムとしては、井上石灰工業、上田石灰製造、足立石灰工業、近江化学工業、奥多摩工業、及び丸尾カルシウム社製等、炭酸カルシウムとしては、白石カルシウム、八戸炭酸カルシウム工業、竹原化学工業、宇部マテリアルズ、ファイマテック、備北粉化工業、及び東洋電化工業社製等、並びにリン酸二水素カルシウムとしては、小田原化成、太洋化学工業、松尾薬品産業、小野田化学工業、太平化学産業、及び米山化学工業社製等の市販品を用いることができる。
【0022】
本発明の酸素発生組成物の含有成分の各粉末原料の平均粒子径は、特に限定されないが、酸素を効率良く水中に溶出させるために、平均粒子径が100×10−6〜1000×10−6mの粉末が好ましい。また、リン酸二水素カルシウム粉末の平均粒子径は、150×10−6〜800×10−6mであることがより好ましい。ここで、平均粒子径は、篩い分け分析法により測定したものである。具体的には、ロータップ型ふるい振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)に、公称目開きが3350、2000、1000、850、710、600、500、425、300、212、150、106、75、45(全て単位は「×10−6m」)のJIS試験用篩(JIS Z8801)を、篩目が小さい篩から下から順に積み、その上からリン酸二水素カルシウム100×10−3kgを投入して5分間の間振とうしたのち、各篩上に残ったリン酸二水素カルシウムの重量を測定する。各篩における残留率から加積残留率を求め、それを100%から減じて通過重量百分率を算出する。通過重量百分率を縦軸、篩の公称目開きを横軸として対数確率紙にプロットし、通過重量百分率が50%となる横軸の値を読み取り、これを平均粒子径とする。
【0023】
本発明の酸素発生組成物は、上記各成分を含有する成形体よりなり、プレス成形された成形体など任意の成形体よりなる。成形時の成形圧は、割れや白濁の発生を抑制し、かつ酸素成分を効率良く水中に溶出させるために、1〜100MPaの圧力で、成形体密度が1.20×10〜3.00×10kg/mの範囲と成形された成形体が望ましい。本発明の効果を高めるには、成形圧は5〜80MPaが好ましく、10〜50MPaがより好ましい。また成形体密度は1.40×10〜2.50×10kg/mが好ましく、1.50×10〜2.00×10kg/mがより好ましい。
【0024】
また、本発明の酸素発生組成物の形状は、円板状、立方体状、直方体状、多角形板を挙げることができ、好ましくは、円板状又は直方体状である。なお、直径φとは、円板状においては円状面の長径の長さを、立方体、直方体、多角形板状においては、成形体の中で最も広い面の中で、最も長い対角線の長さとする。円板状、直方体状の形状における直径φおよび厚みtの例を、それぞれ図1および図2に示す。
【0025】
2.酸素発生組成物の製造方法
本発明の酸素発生組成物の製造方法は、
混合工程(A)
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程、及び
成形工程(B)
上記混合工程(A)で得られる混合物を、成形して、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5の範囲である成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程
を含む、製造方法である。
【0026】
本発明の製造方法の混合工程における重量%は、酸素発生組成物を100重量%とした場合の重量に対するものである。
【0027】
本発明の製造方法により、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、水中に酸素をバランスよく行き渡らせ、白濁しない、安定的な水質環境を保持することができる酸素発生組成物を製造することができる。
【0028】
以下、本発明の酸素発生組成物の製造方法について、詳細に説明する。
【0029】
本発明の製造方法において、好適に用いられる原料は、本発明の酸素発生組成物において例示した各化合物が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法において用いられる各原料の入手方法は、特に限定されないが、本発明の酸素発生組成物において例示した市販品を用いることができる。
【0031】
本発明の製造方法における平均粒子径は、本発明の酸素発生組成物と同様に篩い分け分析法により測定したものである。本発明の製造方法において用いられる上記各原料の平均粒子径は、特に限定されないが、平均粒子径が100×10−6〜1000×10−6mの粉末が好ましい。また、リン酸二水素カルシウム粉末の平均粒子径は、150×10−6〜800×10−6mであることがより好ましい。なお、平均粒子径が上記範囲に入るように、選別機や粉砕機等を使用しても良い。
【0032】
本発明の製造方法における混合工程(A)は、
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及びリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程、である。
【0033】
本発明の製造方法において、過酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、及びリン酸二水素カルシウムは、酸素発生組成物中に、過酸化カルシウム2〜15重量%、炭酸カルシウム2〜25重量%、水酸化カルシウム2〜25重量%、及びリン酸二水素カルシウム35〜75重量%含有されるのが好ましい。さらに、酸素発生組成物中に、過酸化カルシウム3〜10重量%、炭酸カルシウム3〜20重量%、水酸化カルシウム3〜20重量%、及びリン酸二水素カルシウム40〜70重量%含有されるのがより好ましい。
【0034】
本発明の製造方法において、原料の純度が100%でなくとも、各化合物が本発明の範囲の含有量となるように原料を配合、すなわち原料の純度に応じて本発明の含有量となるように原料を添加して良い。
【0035】
本発明の製造方法の混合工程において、混合方法は、特に限定されないが、乾式混合が好ましい。乾式混合は、一般的な乾式混合機等の混合撹拌機を用いても良いし、所定の容器中において手動で混合しても良い。混合速度及び混合時間等は、特に限定されないが、均一に混合されれば良い。
【0036】
上記混合工程においては、各混合工程のあとに、造粒工程を含んでも良い。
【0037】
さらに、本発明の製造方法において、本発明の効果を損なわない範囲で更なる成分を添加することができる。更なる成分としては、バインダー、顔料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
上記混合工程において、有効成分を安定的に溶出させ、また、成形性を向上させるために、バインダーを添加して混合しても良い。バインダーとしては、本発明の酸素発生組成物においてバインダーとして例示した化合物が挙げられる。本発明の製造方法においては、有機バインダーが好ましい。有機バインダーを添加して混合する場合は、エチルアルコールなどのアルコールを加えて混合しても良い。その際、混合後に乾燥することが好ましい。
【0039】
バインダーの含有量は、酸素発生組成物中に0.05〜5重量%となるよう配合するのが好ましい。このような含有量であれば、成形する際の成形性が向上する。
【0040】
有機バインダーを使用する場合のアルコールの添加量に特に制限は無いが、バインダー1重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。
【0041】
本発明の製造方法における成形工程(B)は、
上記混合工程で得られる混合物を、成形して、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5の範囲である成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程、である。
【0042】
本発明の上記成形工程における成形体の形状は、円板状、立方体状、直方体状、多角形板状等の任意の形状を挙げることができ、成形体の外形の表面積が500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5の範囲となるように成形体を製造する。成形体の外形の表面積は510×10−6〜2900×10−6が好ましく、520〜2800×10−6がより好ましい。またアスペクト比は1.1〜4.4が好ましく、1.1〜4.3がより好ましい。このような範囲であれば、白濁の発生や水質環境の急激な変化をより防止しながら十分な酸素放出量を示し、かつ成形体の割れの発生をより防止することができる成形体が得られる。
【0043】
本発明の上記成形工程における成形方法は、特に制限されないが、プレス成形等が挙げられ、各々の成形に適した任意の成形装置、成形型を用いることができる。本発明の製造方法におけるプレス成形については、一軸式プレス成型機等を用いて、成形圧1〜100MPaの範囲で、成形体密度が1.20×10〜3.00×10kg/mの範囲となるように成形することが望ましい。成形圧は5〜80MPaが好ましく、10〜50MPaがより好ましい。また成形体密度は1.40×10〜2.50×10kg/mが好ましく、1.50×10〜2.00×10kg/mがより好ましい。このような範囲であれば、より割れや白濁の発生を抑制し、かつ酸素成分を効率良く水中に溶出させることができる成形体が得られる。
【0044】
本発明の製造方法によって、成形体よりなる酸素発生組成物が得られる。本発明の製造方法によって得られる酸素発生組成物は、好ましくは本発明の酸素発生組成物が得られる。
【0045】
本発明の酸素発生組成物及び本発明の製造方法によって得られる酸素発生組成物は、水中で使用され、観賞魚等の水生生物の養育環境を保持するために用いることができる。具体的には、鑑賞魚用水槽、いけす用水槽、活魚の搬送用水槽等の水槽の水中において、酸素をバランスよく行き渡らせ、白濁の生じない、安定的な水質環境を保持するために用いることができる。特に水質変化を嫌うメダカ、淡水エビ等の観賞魚の養育や活魚の搬送に適した環境を保持するために用いることができる。
【実施例】
【0046】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[評価方法]
<pH>
水温20℃±1℃に保持したイオン交換水2×10−4に成形体サンプル1個を投入して測定し、開始時のpH値及び溶存酸素量と6時間後のpH値及び溶存酸素量をpH・DOメーター(WQC−22A 東亜電波工業株式会社製)を用いて測定した。
【0048】
<累積酸素放出量>
水温を17℃±3℃に保持したイオン交換水5×10−3に成形体サンプル5個を投入し、720時間まで捕捉した酸素量の体積(m)を測定した。測定した体積の累積値をサンプル質量で除した値を累積酸素放出量(10−6/kg)とした。
【0049】
<平均粒子径>
平均粒子径は、篩い分け分析法により測定した。ロータップ型ふるい振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)に、公称目開きが3350、2000、1000、850、710、600、500、425、300、212、150、106、75、45(全て単位は「×10−6m」)のJIS試験用篩(JIS Z8801)を、篩目が小さい篩から下から順に積み、その上からリン酸二水素カルシウム粉末100×10−3kgを投入して5分間の間振とうしたのち、各篩上に残った粉末の重量を測定した。各篩における残留率から加積残留率を求め、それを100%から減じて通過重量百分率を算出した。通過重量百分率を縦軸、篩の公称目開きを横軸として対数確率紙にプロットし、通過重量百分率が50%となる横軸の値を読み取り、これを平均粒子径とした。
【0050】
<白濁試験>
有効内容積5×10−3の水槽に5×10−3の水を入れ、前記水槽に、成形体サンプルを1個投入した。上記水槽を、ヒータを使用して水温を20℃に保ち、評価試験開始後1日目、3日目、及び5日目の水槽中の白濁の発生状態を目視観察し、以下の基準により評価した。
◎:水に白濁が無く、水槽の底の一部に白い粉状の物が確認できない
○:水に白濁は無いが、水槽の底の一部に白い粉状の物が確認できる
△:水が白濁により透明度が若干損なわれ、水槽の底の一部に白い粉状の物が確認できる
×:水が白濁により透明度が損なわれている。
<割れ試験>
有効内容積5×10−3の水槽に5×10−3の水を入れ、前記水槽に、成形体サンプルを1個投入した。上記水槽を、ヒータを使用して水温を20℃に保ち、評価試験開始後1日目、3日目、及び5日目の水槽中の成形体に割れがないかを目視観察し、以下の基準により評価した。
○:成形体表面にひび割れがない
△:成形体表面にひび割れが発生している
×:成形体が割れ、2つ以上に分割している。
【0051】
〔実施例1〕
過酸化カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、水酸化カルシウム粉末及びリン酸二水素カルシウム粉末を準備し、混合物中に平均粒子径が208×10−6mの過酸化カルシウムを9.7×10−3kg、平均粒子径が248×10−6mの炭酸カルシウムを17.9×10−3kg、平均粒子径が198×10−6mの水酸化カルシウムを14.7×10−3kg、平均粒子径が368×10−6mのリン酸二水素カルシウムを55.5×10−3kg、エチルセルロースを0.5×10−3kg含有するように配合してよく混合し、混合物を得たのち、エチルアルコール0.5×10−3kgを添加して再びよく混合し、乾燥させて混合物を得た。
【0052】
上記混合物を、直径13.2×10−3mの金型に投入し、ロータリー式プレス成形機(菅原精機製)を用いて、(圧力25MPaにて)プレス成形した。得られた成形体は、直径13.2×10−3m、厚み11.5×10−3mであった。
このときの成形体の外形の表面積は750.2×10−6で、アスペクト比は1.15であった。また、成形体密度は1.62×10kg/mであった。
【0053】
〔実施例2〕
成形体を直方体に変更し、対角線の長さを22.4×10−3m、厚みを8.0×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は880.0×10−6で、アスペクト比は2.80であった。また、成形体密度は1.58×10kg/mであった。
【0054】
〔実施例3〕
成形体の直径を19.5×10−3m、厚みを4.7×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は884.8×10−6で、アスペクト比は4.15であった。また、成形体密度は1.59×10kg/mであった。
【0055】
〔実施例4〕
成形体の直径を12.1×10−3m、厚みを8.2×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は541.4×10−6で、アスペクト比は1.48であった。また、成形体密度は1.60×10kg/mであった。
【0056】
〔実施例5〕
成形体の直径を15.1×10−3m、厚みを4.8×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は585.6×10−6で、アスペクト比は3.15であった。また、成形体密度は1.58×10kg/mであった。
【0057】
〔実施例6〕
成形体の直径を20.1×10−3m、厚みを9.8×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は1252.8×10−6で、アスペクト比は2.05であった。また、成形体密度は1.56×10kg/mであった。
【0058】
〔実施例7〕
成形体の直径を20.0×10−3m、厚みを15.0×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は1570.0×10−6で、アスペクト比は1.33であった。また、成形体密度は1.56×10kg/mであった。
【0059】
〔実施例8〕
成形体の直径を30.1×10−3m、厚みを7.1×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は2093.5×10−6で、アスペクト比は4.24であった。また、成形体密度は1.53×10kg/mであった。
【0060】
〔実施例9〕
成形体の直径を29.9×10−3m、厚みを9.7×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は2314.3×10−6で、アスペクト比は3.08であった。また、成形体密度は1.54×10kg/mであった。
【0061】
〔実施例10〕
成形体の直径を25.1×10−3m、厚みを20.5×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は2604.8×10−6で、アスペクト比は1.22であった。また、成形体密度は1.54×10kg/mであった。
【0062】
〔実施例11〕
成形体の直径を29.9×10−3m、厚みを14.8×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は2793.1×10−6で、アスペクト比は2.02であった。また、成形体密度は1.55×10kg/mであった。
【0063】
〔比較例1〕
成形体の直径を12.1×10−3m、厚みを4.9×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は416.0×10−6で、アスペクト比は2.47であった。また、成形体密度は1.60×10kg/mであった。
【0064】
〔比較例2〕
成形体の直径を20.0×10−3m、厚みを4.2×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は891.8×10−6で、アスペクト比は4.76であった。また、成形体密度は1.56×10kg/mであった。
【0065】
〔比較例3〕
成形体の直径を30.0×10−3m、厚みを19.9×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は3287.6×10−6で、アスペクト比は1.51であった。また、成形体密度は1.53×10kg/mであった。
【0066】
〔比較例4〕
成形体の直径を12.0×10−3m、厚みを14.2×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は761.1×10−6で、アスペクト比は0.85であった。また、成形体密度は1.59×10kg/mであった。
【0067】
〔比較例5〕
成形体の直径を19.9×10−3m、厚みを28.2×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は2383.8×10−6で、アスペクト比は0.71であった。また、成形体密度は1.59×10kg/mであった。
【0068】
〔比較例6〕
成形体の直径を25.1×10−3m、厚みを4.5×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は1343.8×10−6で、アスペクト比は5.58であった。また、成形体密度は1.56×10kg/mであった。
【0069】
〔比較例7〕
成形体の直径を12.4×10−3m、厚みを3.1×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は362.1×10−6で、アスペクト比は4.00であった。また、成形体密度は1.62×10kg/mであった。
【0070】
〔比較例8〕
成形体の直径を35.1×10−3m、厚みを10.5×10−3mにした以外は実施例1と同様に行なった。
このときの成形体の外形の表面積は3091.5×10−6で、アスペクト比は3.34であった。また、成形体密度は1.53×10kg/mであった。
【0071】
以上の実施例及び比較例によって得られた成形体に関する評価結果をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0072】
実施例の酸素発生組成物は、いずれも白濁せず、水質を急激に変化させることなく、良好な酸素放出量を示した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の酸素発生組成物及び本発明の製造方法によって得られる酸素発生組成物は、水中で使用され、観賞魚等の水生生物の養育環境を保持するために有用である。具体的には、鑑賞魚用水槽、いけす用水槽、活魚の搬送用水槽等の水槽の水中において、酸素をバランスよく行き渡らせ、白濁の生じない、安定的な水質環境を保持するために有用である。特に、停電時や観賞用水生生物や活魚の搬送時等、電源を必要とする装置を使用できず、水が循環しない環境の場合において、特に水質変化を嫌うメダカ、淡水エビ等の観賞魚の養育や活魚の搬送に適した環境を保持するために有用である。
【0076】
[符号の説明]
1 直径φ
2 厚みt
図1
図2