特許第6307069号(P6307069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307069
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】固形酸素発生組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/02 20060101AFI20180326BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C01B13/02 B
   A01K63/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-508380(P2015-508380)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2014057513
(87)【国際公開番号】WO2014156875
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-62182(P2013-62182)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】清水 久栄
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−301605(JP,A)
【文献】 特開平03−028103(JP,A)
【文献】 特開平08−091806(JP,A)
【文献】 特開昭64−065001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B13/00−13/36
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化カルシウム2〜20%、炭酸カルシウム2〜30%、水酸化カルシウム2〜30%及びリン酸二水素カルシウム30〜80%含有する成形体よりなる酸素発生組成物であって、上記リン酸二水素カルシウムは、平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有することを特徴とする、酸素発生組成物。
【請求項2】
上記リン酸二水素カルシウムは、最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有することを特徴とする、請求項1記載の酸素発生組成物。
【請求項3】
上記リン酸二水素カルシウムは、最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子、及び、最小粒子径106×10−6m以上でありかつ平均粒子径200×10−6〜800×10−6mのリン酸二水素カルシウム粒子を、重量基準で10:90〜40:60の割合で含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の酸素発生組成物。
【請求項4】
酸素発生組成物の製造方法であって、
平均粒子径150×10−6〜800×10−6mであり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有するリン酸二水素カルシウムを準備する準備工程(A)
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及び、上記準備工程(A)で得られるリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程(B)、並びに
上記混合工程で得られる混合物を、成形して、成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程(C)
を含む、酸素発生組成物の製造方法。
【請求項5】
上記準備工程(A)が、
i) 最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子を第一の粉末として準備する工程
ii) 最小粒子径106×10−6m以上でありかつ平均粒子径200×10−6〜800×10−6mのリン酸二水素カルシウム粒子を第二の粉末として準備する工程、並びに
iii)上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で10:90〜40:60の割合で混合する工程
を含む、請求項4記載の酸素発生組成物の製造方法。
【請求項6】
上記準備工程(A)で得られるリン酸二水素カルシウムが、最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有するものである、請求項4又は5記載の酸素発生組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鑑賞魚用水槽、いけす用水槽、活魚の搬送用水槽等の水槽の水中において、水との接触により、酸素を徐々に放出して水中の酸素濃度を増大させ、観賞用水生生物の養育や活魚の搬送等に適した水質環境を保持するための酸素発生組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観賞魚等の観賞用水生生物の養育や活魚の搬送等に適した水質環境を保持する目的で、水中の酸素濃度を増大させるために、過酸化カルシウムを含有する固形酸素発生組成物が用いられていた(特許文献1)。この固形酸素発生組成物には、水中に投入した際のpHを中性〜酸性に維持する目的で、さらに、リン酸二水素カルシウムが含有されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−301605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、リン酸二水素カルシウムの粒度について、原料粉末として粒度を0.1〜1mmに調製したリン酸二水素カルシウムを混合することが記載されているが、粉末の詳細な粒度や調整方法については記載されていない。
しかし、単にリン酸二水素カルシウムの平均の粒度を0.1〜1mmとしただけでは、水中に投入した際、リン酸二水素カルシウムの溶解にばらつきが生じてしまう。粗大な粒子が多く含まれたリン酸二水素カルシウムの場合、水中で溶解が進行しにくく、固形酸素発生組成物中の過酸化カルシウム成分と水との接触を妨げてしまうため、所望の酸素放出量が得られない。そこで、所望の酸素放出量を得るため、過酸化カルシウム含有量を多くすると、今度は水中のpHが急変しやすくなり、特に、pH等の急激な水質変化を嫌うメダカ、淡水エビ等には適さなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、十分な酸素放出量が得られ、かつ、安定的な水質環境を保持することができる酸素発生組成物、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者は、種々検討を重ねた結果、過酸化カルシウム2〜20%、炭酸カルシウム2〜30%、水酸化カルシウム2〜30%及びリン酸二水素カルシウム30〜80%含有する成形体よりなる酸素発生組成物であって、上記リン酸二水素カルシウムは、平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有することを特徴とする酸素発生組成物が、従来よりも効率的に過酸化カルシウムと水の反応が進み、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、十分な酸素放出量が得られ、かつ、安定的な水質環境を保持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明によれば、
〔1〕 過酸化カルシウム2〜20%、炭酸カルシウム2〜30%、水酸化カルシウム2〜30%及びリン酸二水素カルシウム30〜80%を含有する成形体よりなる酸素発生組成物であって、上記リン酸二水素カルシウムは、平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有することを特徴とする、酸素発生組成物、
〔2〕 上記リン酸二水素カルシウムは、最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有することを特徴とする、〔1〕記載の酸素発生組成物、
〔3〕 上記リン酸二水素カルシウムは、最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子、及び、最小粒子径106×10−6m以上でありかつ平均粒子径200×10−6〜800×10−6mのリン酸二水素カルシウム粒子を、重量基準で10:90〜40:60の割合で含有していることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の酸素発生組成物、
〔4〕 酸素発生組成物の製造方法であって、
平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有するリン酸二水素カルシウムを準備する準備工程(A)
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及び、上記準備工程(A)で得られるリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程(B)、並びに
上記混合工程で得られる混合物を、成形して、成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程(C)
を含む、酸素発生組成物の製造方法、
〔5〕 上記準備工程(A)が、
i) 最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子を第一の粉末として準備する工程
ii) 最小粒子径106×10−6m以上でありかつ平均粒子径200×10−6〜800×10−6mのリン酸二水素カルシウム粒子を第二の粉末として準備する工程、並びに
iii)上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で10:90〜40:60の割合で混合する工程
を含む、〔4〕記載の酸素発生組成物の製造方法、
〔6〕 上記準備工程(A)で得られるリン酸二水素カルシウムが、最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有するものである、〔4〕又は〔5〕記載の酸素発生組成物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、十分な酸素放出量が得られ、かつ、安定的な水質環境を保持することができる酸素発生組成物及びその製造方法が提供される。
【0009】
本発明の酸素発生組成物は、上記成分を上記含有量の範囲で配合し、さらに上記リン酸二水素カルシウムの粒度を上記範囲とすることにより、リン酸二水素カルシウムが水中で速やかに溶解するので、成形体中の過酸化カルシウムと水との接触を妨げることがなく、効率的かつ安定的に過酸化カルシウムと水とが反応して酸素の気泡が放出され、十分な酸素量を放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.酸素発生組成物
本発明の酸素発生組成物は、過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、リン酸二水素カルシウム30〜80重量%含有する成形体よりなる。なお、重量%は酸素発生組成物を100重量%とした場合の重量に対するものである。
【0011】
本発明の酸素放出成分は、過酸化カルシウムである。過酸化カルシウムは、単体で水中に投入すると、水と急激に反応を起こし、水中の溶存酸素量が急激に増大するため、水質環境が急激に変化してしまう。そこで、過酸化カルシウムに加えて、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを上記範囲となるよう配合することで、過酸化カルシウムと水との急激な反応を抑制することができる。この結果、過酸化カルシウムは水中で安定的に反応し、長期間にわたって徐々に酸素放出を行うため、水中の溶存酸素を安定的に増大させることができる。
【0012】
さらに、これに粒度を上記範囲としたリン酸二水素カルシウムを配合することにより、酸素発生組成物を投入した水中のpHが、動植物の生存に悪影響を及ぼすことのない中性〜酸性側に維持され、安定な水質環境を保持することができる。
【0013】
本発明において、過酸化カルシウムは、2〜20重量%含有されるように配合する。過酸化カルシウムが2重量%より少ないと、水中への酸素放出量が十分でなく、20重量%より多いと、水と急激に反応を起こし、水質環境が急激に変化してしまう。安定な水質環境を保持しつつ、十分な酸素放出量を得るためには、2〜15重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましい。
【0014】
本発明において、炭酸カルシウムは2〜30重量%、水酸化カルシウムは2〜30重量%含有されるように配合する。炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムがそれぞれ2重量%より少ないと、過酸化カルシウムが水と急激に反応を起こしてしまい、水質環境が急激に変化してしまう。それぞれ30重量%より多いと、過酸化カルシウムと水との反応が過剰に抑制されてしまい、十分な酸素放出量が得られない。本発明の効果をより高めるためには、それぞれ2〜25重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。
【0015】
本発明において、リン酸二水素カルシウムは、30〜80重量%含有されるように配合する。リン酸二水素カルシウムが30重量%より少ないと、酸素発生組成物を投入した水中のpHが増大してしまい、80重量%より多いと、過酸化カルシウムと水との反応が過剰に抑制されてしまい、十分な酸素放出量が得られない。本発明の効果をより高めるためには、35〜75重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましい。
【0016】
本発明において、リン酸二水素カルシウムは、平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲で含有するものである。
本発明のリン酸二水素カルシウムの平均粒子径は、篩い分け分析法により測定したものである。具体的には、ロータップ型ふるい振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)に、公称目開きが3350、2000、1000、850、710、600、500、425、300、212、150、106、75、45(全て単位は「×10−6m」)のJIS試験用篩(JIS Z8801)を、篩目が小さい篩から下から順に積み、その上からリン酸二水素カルシウム100×10−6kgを投入して5分間の間振とうしたのち、各篩上に残ったリン酸二水素カルシウムの重量を測定する。各篩における残留率から加積残留率を求め、それを100%から減じて通過重量百分率を算出する。通過重量百分率を縦軸、篩の公称目開きを横軸として対数確率紙にプロットし、通過重量百分率が50%となる横軸の値を読み取り、これを平均粒子径とする。
また、最大粒子径106×10−6m未満の粒子とは、公称目開き106×10−6mの篩を通過した粒子のことである。
【0017】
上記リン酸二水素カルシウム粒子の平均粒子径を150×10−6〜800×10−6mの範囲とすることで、水中に投入した際に、リン酸二水素カルシウムが速やかに溶解し、酸素発生組成物成形体中の過酸化カルシウム成分が水と反応しやすくなるため、十分な酸素放出量を得ることができる。平均粒子径が150×10−6mより小さいと、微細粒子が凝集して溶解が進行せず、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分と水との反応を妨げてしまうので好ましくない。また、成形体を作製する際のプレス成形性を悪化させてしまうので好ましくない。平均粒子径が800×10−6mより大きいと、粗大な粒子の溶解が進行せず、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分と水との反応を妨げてしまうので好ましくない。
【0018】
また、最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲で含有することにより、水中に投入した際にリン酸二水素カルシウムが速やかに溶解し、酸素発生組成物成形体中の過酸化カルシウム成分が水と反応しやすくなるため、十分な酸素放出量を得ることができる。また、微細な粒子が水中で迅速に反応し、過酸化カルシウムによる急激なpHの上昇を抑え、生体に適した水質を維持することができる。上記粒子の含有割合が10%よりも小さいと、水と迅速に反応する粒子が少なくなり、pH上昇を抑える効果が低減するので好ましくない。上記粒子の含有割合が40%よりも大きいと、微細粒子が凝集して溶解が進行せず、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分と水との反応を妨げてしまうので好ましくない。また、成形体を作製する際のプレス成形性を悪化させてしまうので好ましくない。なお、上記粒子の最小粒子径に特に制限はなく、45×10−6m未満の粒子を含んでいてよい。
【0019】
さらに、上記リン酸二水素カルシウムは、最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有していることが好ましい。ここでいう最大粒子径1000×10−6m未満の粒子とは、公称目開き1000×10−6mの篩を通過した粒子のことである。上記リン酸二水素カルシウムの最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子の含有率がリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上であると、粒子の溶解がより速やかに進み、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分が水とより反応しやすくなる。最大粒子径1000×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子の含有率がリン酸二水素カルシウム重量基準で95%未満であると、粗大な粒子の溶解が進行せず、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分と水との反応を妨げてしまうので好ましくない。
【0020】
上記の好ましいリン酸二水素カルシウムとするためには、粒度が上記の範囲であれば市販のものを用いてもよいが、最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子を第一の粉末とし、最小粒子径106×10−6m以上でありかつ平均粒子径200×10−6〜800×10−6mであるリン酸二水素カルシウム粒子を第二の粉末とし、上記第一及び第二の粉末を、重量基準で10:90〜40:60の割合で含有したリン酸二水素カルシウムとしてもよい。ここでいう最小粒子径106×10−6m以上の粒子とは、公称目開き106×10−6mの篩を通過しない粒子のことである。上記第二の粉末が平均粒子径200×10−6〜800×10−6mであると、リン酸水素カルシウム粒子の溶解がより速やかに進み、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分が水より反応しやすくなる。上記第二の粉末の平均粒子径が200×10−6mより小さいと、微細粒子が凝集して溶解が進行せず、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分と水との反応を妨げてしまうので好ましくない。また、成形体を作製する際のプレス成形性を悪化させてしまうので好ましくない。上記第二の粉末の平均粒子径が800×10−6mより大きいと、粗大なリン酸二水素カルシウム粒子の溶解が進行せず、成形体に含まれる過酸化カルシウム成分と水との反応を妨げてしまうので好ましくない。なお、上記第二の粉末の最大粒子径に特に制限はないが、2000×10−6m未満が好ましい。
【0021】
上記第一の粉末及び第二の粉末は、粒度が上記の範囲であれば市販のものを用いてもよいが、市販の粉末を、篩い分け工程や粉砕工程を経て粒度調整してもよい。具体的には、市販されている平均粒子径100×10−6〜2000×10−6m程度のリン酸二水素カルシウム粉末を準備し、ロータップ式篩振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて篩い分け、篩を通過した粉末を第一の粉末としてよい。
さらに、上記と同様に市販のリン酸二水素カルシウム粉末を準備し、ボールミル等を用いて粉砕したのち公称目開き106×10−6mの篩で篩い分け、上記平均粒子径の範囲となった篩上の粉末を第二の粉末としてよい。
【0022】
本発明の酸素発生組成物は、酸素発生成分の溶出を妨げない程度に、粉末の結合剤としてバインダーを含んでいても良い。バインダーとしては、無機バインダーや有機バインダーを挙げることができる。無機バインダーとしてケイ酸ソーダ、粘土等、有機バインダーとしてエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
本発明のバインダーとしては、有機バインダーが好ましい。
【0023】
バインダーの含有量は、酸素発生組成物中に0.05〜5重量%となるよう配合するのが好ましい。このような含有量であれば、酸素発生効率を損なうことなく、成形する際の成形性が向上する。
【0024】
本発明の酸素発生組成物の各成分の原料の入手方法は、特に限定されないが、過酸化カルシウムとしては、日本パーオキサイド、大塚化学、及び富田製薬社製等、水酸化カルシウムとしては、井上石灰工業、上田石灰製造、足立石灰工業、近江化学工業、奥多摩工業、及び丸尾カルシウム社製等、炭酸カルシウムとしては、白石カルシウム、八戸炭酸カルシウム工業、竹原化学工業、宇部マテリアルズ、ファイマテック、備北粉化工業、及び東洋電化工業社製等、並びにリン酸二水素カルシウムとしては、小田原化成、太洋化学工業、松尾薬品産業、小野田化学工業、太平化学産業、及び米山化学工業社製等の市販品を用いることができる。
【0025】
本発明の酸素発生組成物のリン酸二水素カルシウム以外の含有成分の各粉末原料の平均粒子径は、特に限定されないが、酸素を効率良く水中に溶出させるために、平均粒子径100×10−6〜1000×10−6mの粉末が好ましい。ここでいう平均粒子径は、リン酸二水素カルシウムの平均粒子径と同様に篩い分け分析法により測定したものである。
【0026】
本発明の酸素発生組成物は、上記各成分を含有する成形体よりなり、プレス成形された成形体など任意の成形体よりなる。成形時の成形圧は、酸素成分を効率良く水中に溶出させるために、1〜100MPaの圧力で、成形体密度が1.20×10〜3.00×10kg/mの範囲に成形された成形体が好ましい。成形圧は5〜80MPaがより好ましく、10〜50MPaがさらにより好ましい。また成形体密度は1.40×10〜2.50×10kg/mがより好ましく、1.50×10〜2.00×10kg/mがさらにより好ましい。
【0027】
また、本発明の酸素発生組成物の形状は、円板状、立方体状、直方体状、多面体状、多角形板状等の任意の形状を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明において、成形体の外形の表面積及びアスペクト比は、特に制限されないが、表面積は500×10−6〜3000×10−6、かつアスペクト比は1.0〜4.5であることが好ましい。表面積は510×10−6〜2900×10−6がより好ましく、520×10−6〜2800×10−6がさらにより好ましい。またアスペクト比は1.1〜4.4がより好ましく、1.1〜4.3がさらにより好ましい。なお、ここでアスペクト比は、成形体の直径φを、成形体の厚みtで除したものをいい、直径φとは、円板状においては円状面の長径の長さを、立方体、直方体、多角形板状においては成形体の中で最も広い面の中で、最も長い対角線の長さをいう。
【0029】
2.酸素発生組成物の製造方法
本発明の酸素発生組成物の製造方法は、
準備工程(A)
平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、かつ最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有するリン酸二水素カルシウムを準備する準備工程
混合工程(B)
過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及び、上記準備工程(A)で得られるリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程、並びに
成形工程(C)
上記混合工程(B)で得られる混合物を、成形して、成形体よりなる酸素発生組成物を得る成形工程
を含む、製造方法である。
【0030】
本発明の製造方法の混合工程における重量%は、酸素発生組成物を100重量%とした場合の重量に対するものである。
【0031】
本発明の製造方法により、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、水中に酸素をバランスよく行き渡らせ、十分な酸素放出量が得られ、かつ、安定的な水質環境を保持することができる酸素発生組成物を製造することができる。
【0032】
以下、本発明の酸素発生組成物の製造方法について、詳細に説明する。
【0033】
本発明の製造方法において、好適に用いられる原料は、本発明の酸素発生組成物において例示した各化合物が挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法において用いられる各原料の入手方法は、特に限定されないが、本発明の酸素発生組成物において例示した市販品を用いることができる。
【0035】
本発明の製造方法における平均粒子径は、本発明の酸素発生組成物と同様に篩い分け分析法により測定したものである。本発明の製造方法において用いられるリン酸二水素カルシウム以外の上記原料の平均粒子径は、特に限定されないが、平均粒子径100×10−6〜1000×10−6mの粉末が好ましい。なお、平均粒子径が上記範囲に入るように、選別機や粉砕機等を使用しても良い。
【0036】
本発明の製造方法における準備工程(A)は、平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有するリン酸二水素カルシウムを準備する準備工程、である。
【0037】
本発明の製造方法において、準備工程(A)は、具体的には
準備工程(A’)
平均粒子径150×10−6〜800×10−6mの粒子であり、最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有するリン酸二水素カルシウムを準備する準備工程であって、
i) 最大粒子径106×10−6m未満のリン酸二水素カルシウム粒子を第一の粉末として準備する工程
ii) 最小粒子径106×10−6m以上でありかつ平均粒子径200×10−6〜800×10−6mのリン酸二水素カルシウム粒子を第二の粉末として準備する工程、並びに
iii)上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で10:90〜40:60の割合で混合する工程
を含む工程、としても良い。
【0038】
上記工程(A’)i)ii)において、リン酸二水素カルシウムは、市販のものを用いても良い。例えばi)の工程は、市販されている平均粒子径100×10−6〜2000×10−6m程度のリン酸二水素カルシウム粉末を、ロータップ式篩振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて篩い分け、篩を通過した粉末を第一の粉末としても良い。また例えばii)の工程は、市販されている平均粒子径100×10−6〜2000×10−6m程度のリン酸二水素カルシウムを、ボールミル等を用いて粉砕したのち公称目開き106×10−6mの篩で篩い分け、上記平均粒子径の範囲とした篩上の粉末を第二の粉末としても良い。この場合、公称目開き106×10−6mの篩を通過した粉末は、最大粒子径が106×10−6m未満の粉末ということができ、公称目開き106×10−6mの篩を通過しない粉末は、最小粒子径が106×10−6m以上の粉末ということができる。
【0039】
本発明の製造方法において、平均粒子径150×10−6〜800×10−6mであり、最大粒子径106×10−6m未満の粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で10〜40%の範囲含有するリン酸二水素カルシウムは、最大粒子径1000×10−6m未満の粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有することが望ましい。最大粒子径1000×10−6m未満の粒子をリン酸二水素カルシウム重量基準で95%以上含有させるには、例えば第一の粉末と第二の粉末の混合割合を調整することにより、容易に設定できる。最大粒子径が1000×10−6m未満の粒子の重量百分率は、篩分け分析法を用いて測定し、算出することができる。この場合、公称目開き1000×10−6mの篩を通過した粒子を重量百分率で95%以上含有する粉末は、最大粒子径が1000×10−6m未満の粒子を重量百分率で95%以上含有する粉末ということができる。
【0040】
本発明の混合工程(B)は、過酸化カルシウム2〜20重量%、炭酸カルシウム2〜30重量%、水酸化カルシウム2〜30重量%、及び、上記準備工程Aで得られるリン酸二水素カルシウム30〜80重量%を、混合して、混合物を得る混合工程、である。
【0041】
本発明の製造方法において、過酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及びリン酸二水素カルシウムは、酸素発生組成物中に、過酸化カルシウム2〜15重量%、炭酸カルシウム2〜25重量%、水酸化カルシウム2〜25重量%、及びリン酸二水素カルシウム35〜75重量%、含有されるのが好ましい。さらに、酸素発生組成物中に、過酸化カルシウム3〜10重量%、炭酸カルシウム3〜20重量%、水酸化カルシウム3〜20重量%、及びリン酸二水素カルシウム40〜70重量%含有されるのがより好ましい。
【0042】
本発明の製造方法において、原料の純度が100%でなくとも、各化合物が本発明の範囲の含有量となるように原料を配合、すなわち原料の純度に応じて本発明の含有量となるように原料を添加して良い。
【0043】
本発明の製造方法の混合工程において、混合方法は、特に限定されないが、乾式混合が好ましい。乾式混合は、一般的な乾式混合機等の混合撹拌機を用いても良いし、所定の容器中において手動で混合しても良い。混合速度及び混合時間等は、特に限定されないが、均一に混合されれば良い。
【0044】
上記混合工程においては、各混合工程のあとに、造粒工程を含んでも良い。
【0045】
さらに、本発明の製造方法において、本発明の効果を損なわない範囲で更なる成分を添加することができる。更なる成分としては、バインダー、顔料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
上記混合工程において、有効成分を安定的に溶出させ、また、成形性を向上させるために、バインダーを添加して混合しても良い。バインダーとしては、本発明の酸素発生組成物においてバインダーとして例示した化合物が挙げられる。本発明の製造方法においては、有機バインダーが好ましい。有機バインダーを添加して混合する場合は、エチルアルコールなどのアルコールを加えて混合しても良い。その際、混合後に乾燥することが好ましい。
【0047】
バインダーの含有量は、酸素発生組成物中に0.01〜5重量%となるよう配合するのが好ましい。このような含有量であれば、成形する際の成形性が向上する。
【0048】
有機バインダーを使用する場合のアルコールの添加量に特に制限は無いが、バインダー1重量部に対して0.5重量部〜10重量部であることが好ましく、1重量部〜5重量部であることがより好ましい。
【0049】
本発明の上記成形工程(C)における成形方法は、特に制限されないが、プレス成形等が挙げられ、各々の成形に適した任意の成形装置、成形型を用いることができる。本発明の製造方法におけるプレス成形については、一軸プレス装置等を用いて、成形圧1〜100MPaの範囲で、成形体密度が1.20×10〜3.00×10kg/mの範囲となるように成形することが望ましい。成形圧は5〜80MPaがより好ましく、10〜50MPaがさらにより好ましい。また成形体密度は1.40×10〜2.50×10kg/mがより好ましく、1.50×10〜2.00×10kg/mがさらにより好ましい。
【0050】
本発明の上記成形工程における成形体の形状は、円板状、立方体状、直方体状、多角形板状等の任意の形状を挙げることができるが、成形体の外形の表面積が500〜3000×10−6、かつアスペクト比が1.0〜4.5の範囲となるように成形体を製造することが好ましい。成形体の表面積は510×10−6〜2900×10−6がより好ましく、520×10−6〜2800×10−6がさらにより好ましい。また成形体のアスペクト比は1.1〜4.4がより好ましく、1.1〜4.3がさらにより好ましい。成形型の大きさ、材料は、上記表面積およびアスペクト比を満足するできるものであれば、特に制限はなく、金型などがあげられる。
【0051】
本発明の製造方法によって、成形体よりなる酸素発生組成物が得られる。本発明の製造方法によって得られる酸素発生組成物は、好ましくは本発明の酸素発生組成物である。
【0052】
本発明の酸素発生組成物及び本発明の製造方法によって得られる酸素発生組成物は、水中で使用され、観賞魚等の水生生物の養育環境を保持するために用いることができる。具体的には、鑑賞魚用水槽、いけす用水槽、活魚の搬送用水槽等の水槽の水中において、十分な酸素放出量が得られ、かつ、安定的な水質環境を保持するために用いることができる。
【実施例】
【0053】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
[評価方法]
<pH>
水温20℃±1℃に保持したイオン交換水2×10−4に成形体サンプル1個を投入して測定し、開始時のpH値及び溶存酸素量と6時間後のpH値及び溶存酸素量を、pH・DOメーター(WQC−22A 東亜電波工業株式会社製)を用いて測定した。
【0055】
<累積酸素放出量>
水温を17℃±3℃に保持したイオン交換水5×10−3に成形体サンプル5個を投入し、720時間まで捕捉した酸素量の体積(m)を測定した。測定した体積の累積値をサンプル質量で除した値を累積酸素放出量(10−6/kg)とした。
【0056】
<平均粒子径>
平均粒子径は、篩い分け分析法により測定した。ロータップ型ふるい振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)に、公称目開きが3350、2000、1000、850、710、600、500、425、300、212、150、106、75、45(全て単位は「×10−6m」)のJIS試験用篩(JIS Z8801)を、篩目が小さい篩から下から順に積み、その上からリン酸二水素カルシウム粉末100×10−3kgを投入して5分間の間振とうしたのち、各篩上に残った粉末の重量を測定した。各篩における残留率から加積残留率を求め、それを100%から減じて通過重量百分率を算出した。通過重量百分率を縦軸、篩の公称目開きを横軸として対数確率紙にプロットし、通過重量百分率が50%となる横軸の値を読み取り、これを平均粒子径とした。
【0057】
<最大粒子径1000×10−6m未満の粒子の重量基準含有率>
最大粒子径1000×10−6m未満の粒子の重量基準含有率は、篩い分け分析法により測定した。ロータップ型ふるい振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)に、公称目開きが1000×10−6mのJIS試験用篩(JIS Z8801)をセットし、その上からリン酸二水素カルシウムを投入して5分間の間振とうし、篩を通過したリン酸二水素カルシウムの粒子の重量から、最大粒子径1000×10−6m未満の粒子の重量基準含有率を算出した。
【0058】
[製法]
[実施例1]
[リン酸二水素カルシウムの調製]
市販のリン酸二水素カルシウム原料粉末200×10−3kg(平均粒子径999×10−6m)を準備し、ロータップ式篩振とう機(東京硝子器械株式会社製、S−1型)及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、篩を通過した粉末を第一の粉末とした。
上記と同様に準備した原料粉末を、卓上ボールミル(東京硝子器械株式会社製)を用いて90分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径403×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で10:90の割合で混合し、混合リン酸二水素カルシウム粉末を得た。上記混合リン酸二水素カルシウム粉末の平均粒子径は371×10−6mであり、公称目開き1000×10−6mの篩の通過率は98.2%であった。
[成形体の作製]
上記混合リン酸二水素カルシウム粉末55.5×10−3kg、過酸化カルシウム9.7×10−3kg、炭酸カルシウム17.9×10−3kg、水酸化カルシウム14.7×10−3kg及びエチルセルロース0.5×10−3kgが含有されるように配合して良く混合し、混合物を得たのち、エチルアルコール0.5×10−3kgを添加して再びよく混合し、乾燥させて混合物を得た。得られた混合物を、直径13.2×10−3mの金型(底面が円形状)に入れてロータリー式プレス成形機(菅原精機製)を用いて(圧力25MPaにて)プレス成形し、成形体を作製した。得られた円板状の成形体は、直径13.2×10−3m、厚み11.5×10−3mであった。また、成形体密度は1.62×10kg/mであった。
【0059】
[実施例2]
実施例1の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で15:85の割合で混合し、平均粒子径353×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が98.3%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例1と同様に成形体を作製した。
【0060】
[実施例3]
実施例1の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で20:80の割合で混合し、平均粒子径335×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が98.4%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例1と同様に成形体を作製した。
【0061】
[実施例4]
実施例1の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で30:70の割合で混合し、平均粒子径300×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が98.7%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例1と同様に成形体を作製した。
【0062】
[実施例5]
実施例1の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で40:60の割合で混合し、平均粒子径265×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例1と同様に成形体を作製した。
【0063】
[実施例6]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて120分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径261×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で15:85の割合で混合し、平均粒子径232×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.4%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0064】
[実施例7]
実施例6の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で30:70の割合で混合し、平均粒子径201×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.5%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例6と同様にして成形体を作製した。
【0065】
[実施例8]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて60分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径600×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で15:85の割合で混合し、平均粒子径521×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が97.1%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0066】
[実施例9]
実施例8の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で30:70の割合で混合し、平均粒子径438×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が97.5%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例8と同様にして成形体を作製した。
【0067】
[実施例10]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて30分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径797×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で15:85の割合で混合し、平均粒子径688×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が95.8%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0068】
[実施例11]
実施例10の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で30:70の割合で混合し、平均粒子径576×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が96.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、実施例10と同様にして成形体を作製した。
【0069】
[実施例12]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて20分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径850×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で10:90の割合で混合し、平均粒子径773×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が92.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0070】
[比較例1]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて180分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径110×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で5:95の割合で混合し、平均粒子径108×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.7%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0071】
[比較例2]
比較例1の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で45:55の割合で混合し、平均粒子径89×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.9%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、比較例1と同様にして成形体を作製した。
【0072】
[比較例3]
比較例1の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で15:85の割合で混合し、平均粒子径107×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.8%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、比較例1と同様にして成形体を作製した。
【0073】
[比較例4]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて10分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径950×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で5:95の割合で混合し、平均粒子径908×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が88.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0074】
[比較例5]
比較例4の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で45:55の割合で混合し、平均粒子径540×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が97.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、比較例4と同様にして成形体を作製した。
【0075】
[比較例6]
比較例4の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で15:85の割合で混合し、平均粒子径810×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が90.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、比較例4と同様にして成形体を作製した。
【0076】
[比較例7]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて60分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径600×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で5:95の割合で混合し、平均粒子径569×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が96.5%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0077】
[比較例8]
比較例7の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で45:55の割合で混合し、平均粒子径359×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が98.2%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、比較例7と同様にして成形体を作製した。
【0078】
[比較例9]
実施例1と同様にして第一の粉末を得た。
実施例1と同様に準備した原料粉末を、ボールミルを用いて90分間粉砕し、ロータップ式篩振とう機及び公称目開き106×10−6mのJIS試験用の篩(JIS Z8801)を用いて、5分間の間篩い分け、得られた篩上の粉末(平均粒子径403×10−6m)を第二の粉末とした。
上記第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で5:95の割合で混合し、平均粒子径391×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が98.0%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とし、実施例1と同様にして成形体を作製した。
【0079】
[比較例10]
比較例9の第一の粉末及び第二の粉末を、重量基準で45:55の割合で混合し、平均粒子径250×10−6mでありかつ公称目開き1000×10−6mの篩の通過率が99.2%の混合リン酸二水素カルシウム粉末とした以外は、比較例9と同様にして成形体を作製した。
【0080】
以上の実施例及び比較例によって得られた成形体に関する評価結果をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0081】
実施例の酸素発生組成物は、いずれも水質を急激に変化させることなく、良好な酸素放出量を示した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の酸素発生組成物及び本発明の製造方法によって得られる酸素発生組成物は、水中で使用され、観賞魚等の水生生物の養育環境を保持するために有用である。具体的には、鑑賞魚用水槽、いけす用水槽、活魚の搬送用水槽等の水槽の水中において、過酸化カルシウム含有量が少量であっても、十分な酸素放出量が得られ、かつ、安定的な水質環境を保持するために有用である。特に水質変化を嫌うメダカ、淡水エビ等の観賞魚の養育や活魚の搬送に適した環境を保持するために有用である。