【文献】
Cell,1995年,Vol. 80,pp. 103-113
【文献】
Journal of Cellular Physiology,1994年,Vol. 158,pp. 545-554
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フローサイトメトリーにより測定したとき、約150pM以下のEC50で、野生型KITを組換え発現するCHO細胞に特異的に結合する、請求項1〜7のいずれか一項記載の抗体。
少なくとも1.0μg/mL、又は少なくとも1.1μg/mL、又は少なくとも1.2μg/mLの力価で、CHO細胞で発現させることができる、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体。
【発明を実施するための形態】
【0101】
(5.詳細な説明)
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0102】
本明細書で使用されるように、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、所与の値又は範囲の±10%以内を意味する。
【0103】
本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKIT D4ドメインを含むKITポリペプチド)に免疫特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片、並びにそれらのコンジュゲートである。また提供されるのは、そのような抗体及びその抗原結合断片をコードする単離された核酸(ポリヌクレオチド)である。さらに提供されるのは、そのような抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)及び細胞(例えば、宿主細胞)である。また提供されるのは、そのような抗体、細胞、例えば、宿主細胞を作製する方法である。また本明細書に提供されるのは、KIT関連障害もしくは疾患(例えば、癌、炎症性疾患、もしくは線維症)、又はそのようなKIT関連障害もしくは疾患の1以上の作用を治療又は管理するための方法及び使用であって、1以上の本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲートを投与することを含む、方法及び使用である。また本明細書に提供されるのは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、又は線維症)を診断する方法であって、試料を1以上の本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)と接触させ、参照試料(例えば、対照試料)と比べた該試料におけるKITの発現レベルを決定することを含む、方法である。さらに本明細書に提供されるのは、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害するための方法及び使用であって、該細胞を抗体又はその抗原結合断片の有効量と接触させることを含む、方法及び使用である。またさらに本明細書に提供されるのは、KITを発現している細胞における細胞分化又はアポトーシスを誘導又は増強する方法であって、該細胞を、本明細書に記載の抗体(単数)又は抗体(複数)の有効量と接触させることを含む、方法である。
【0104】
本明細書で使用されるように、「D4/D5領域」又は「D4/D5ドメイン」という用語は、KITの4番目のIg様細胞外(「D4」)ドメイン、5番目のIg様細胞外(「D5」)ドメイン、及びD4ドメインとD5ドメインの間のヒンジ領域(「D4-D5ヒンジ領域」)に、アミノ末端からカルボキシル末端に、次の順序、すなわち、D4、D4-D5ヒンジ領域、及びD5という順序でまたがるKITポリペプチド内の領域を指す。本明細書で使用されるように、本明細書中の
図1のアミノ酸V308〜H515及び
図2に示されるポリペプチドは、D4/D5領域又はドメインの検討例である。
【0105】
本明細書で使用されるように、「KIT」又は「KIT受容体」又は「KITポリペプチド」という用語は、全長KITの任意の形態を指し、これには、ネイティブなKIT、KITのアイソフォーム、種間KITホモログ、或いはKIT変異体、例えば、天然に生じる変異体(例えば、アレルもしくはスプライス変異体、又は突然変異体、例えば、体細胞突然変異体)、或いは人為的に構築された変異体(例えば、組換え又は化学修飾変異体)が含まれるが、これらに限定されない。KITは、c-kit遺伝子によってコードされるIII型受容体チロシンキナーゼである(例えば、Yardenらの文献、Nature, 1986, 323:226-232; Ullrich及びSchlessingerの文献、Cell, 1990, 61:203-212; Cliffordらの文献、J. Biol. Chem., 2003, 278:31461-31464; Yardenらの文献、EMBO J., 1987, 6:3341-3351; Molらの文献、J. Biol. Chem., 2003, 278:31461-31464を参照されたい)。GenBank(商標)アクセッション番号NM_000222は、例示的なヒトKIT核酸配列を提供する。GenBank(商標)アクセッション番号NP_001087241、P10721、及びAAC50969は、例示的なヒトKITアミノ酸配列を提供する。GenBank(商標)アクセッション番号AAH75716は、例示的なマウスKITアミノ酸配列を提供する。ネイティブなKITは、5つの細胞外免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(D1、D2、D3、D4、D5)、単一の膜貫通領域、抑制性細胞質膜近傍ドメイン、及びキナーゼ挿入セグメントによって隔てられた分割された細胞質キナーゼドメインを含む(例えば、Yardenらの文献、Nature, 1986, 323:226-232; Ullrich及びSchlessingerの文献、Cell, 1990, 61:203-212; Cliffordらの文献、J. Biol. Chem., 2003, 278:31461-31464を参照されたい)。ヒトKITのD4/D5領域の例示的なアミノ酸配列は、
図1のアミノ酸残基V308〜H515に示されている。具体的な実施態様において、KITは、ヒトKITである。特定の実施態様において、KITは、単量体、二量体、多量体、ネイティブな形態、又は変性した形態として存在することができる。
【0106】
ペプチド又はポリペプチドとの関連において、本明細書で使用される「断片」という用語は、全長未満のアミノ酸配列を含むペプチド又はポリペプチドを指す。そのような断片は、例えば、アミノ末端での切断、カルボキシ末端での切断、及び/又はアミノ酸配列からの残基(複数可)の内部欠失から生じ得る。断片は、例えば、選択的RNAスプライシングによるか、又は生体内プロテアーゼ活性によって生じ得る。ある実施態様において、KIT断片又は抗体断片(例えば、KITポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体断片)は、それぞれ、KITポリペプチド又は抗体(例えば、KITポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体)のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも連続する100個のアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、少なくとも200個の連続するアミノ酸残基、又は少なくとも250個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド又は抗体(例えば、KITポリペプチドに免疫特異的に結合する抗体)の断片は、該ポリペプチド又は抗体の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つの機能を保持している。
【0107】
本明細書で使用されるように、「宿主細胞」という用語は、外因性核酸分子を含む特定の細胞、例えば、核酸分子でトランスフェクト又は形質転換されている細胞、及びそのような親細胞の子孫又は潜在的子孫を指す。そのような細胞の子孫は、続く世代で起こり得る突然変異もしくは環境的影響、又は該核酸分子の宿主細胞ゲノムへの組込みが原因で、親細胞とは同一でない場合がある。
【0108】
(5.1 抗体)
本明細書で使用されるように、「抗体」及び「免疫グロブリン」及び「Ig」という用語は、技術用語であり、本明細書で互換的に使用することができ、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を有する分子を指す。
【0109】
本明細書で使用されるように、「抗原」は、エピトープを含み、したがって、抗体によって特異的に結合されもする、部分又は分子である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体が結合する抗原は、KIT(例えば、ヒトKIT)、又はその断片、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)の細胞外ドメインもしくはKIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域である。
【0110】
本明細書で使用されるように、「エピトープ」は、技術用語であり、抗体が特異的に結合することができる抗原の局所領域を指す。エピトープに寄与する領域又はポリペプチドは、ポリペプチドの連続するアミノ酸であってもよく、又はエピトープは、ポリペプチドの2以上の連続していない領域が集まったものであってもよい。
【0111】
本明細書で使用されるように、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、「抗原結合断片」、という用語、及び類似の用語は、抗原と相互作用し、抗体分子に、抗原に対するその特異性を付与するアミノ酸残基を含む抗体分子の部分(例えば、相補性決定領域(CDR))を指す。抗原結合領域は、任意の動物種、例えば、齧歯類(例えば、マウス、ラット、又はハムスター)及びヒトに由来し得る。抗体分子のCDRは、当業者に周知の任意の方法によって決定することができる。特に、CDRは、Kabat付番体系に準拠して決定することができる(Kabatらの文献(1991)、免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(U.S. Department of Health and Human Services, Washington, D.C.)、第5版を参照されたい)。ある態様において、抗体のCDRは、(i)本明細書において、「Chothia CDR」と呼ばれるChothia付番スキーム(例えば、Chothia及びLeskの文献、1987, J. Mol. Biol., 196:901-917; Al-Lazikaniらの文献、1997, J. Mol. Biol., 273:927-948;及び米国特許第7,709,226号を参照);又は(ii)例えば、Lefranc, M.-P.の文献、1999, The Immunologist, 7:132-136及びLefranc, M.-P.らの文献、1999, Nucleic Acids Res., 27:209-212に記載されているIMGT付番体系に準拠して決定することができる。
【0112】
本明細書で使用されるように、「立体構造エピトープ」又は「非線形エピトープ」又は「不連続エピトープ」は、単一のタンパク質鎖中の連続的なアミノ酸ではない少なくとも2つのアミノ酸から構成されるエピトープを指す。例えば、立体構造エピトープは、介在アミノ酸のストレッチによって隔てられているが、本明細書に記載の抗体(例えば、抗KIT抗体)によって単一のエピトープとして認識されるのに十分に近くにある2以上のアミノ酸から構成され得る。さらなる例として、単一のタンパク質鎖中で介在アミノ酸によって隔てられているアミノ酸、又は別々のタンパク質鎖上に存在するアミノ酸は、タンパク質構造体又は複合体の立体構造形状のために近接させられ、本明細書に記載の抗KIT抗体によって結合され得る立体構造エピトープになることができる。一般に、本明細書に記載の抗KIT抗体によって結合される線形エピトープは、KIT受容体の二次、三次、又は四次構造に依存することも、依存しないこともあることが当業者によって理解されるであろう。例えば、いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれるかどうかにかかわらず、アミノ酸の集合体に結合する。他の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、エピトープを認識し、それに結合するために、エピトープを構成する個々のアミノ酸残基を認識するのではなく、特定の立体構造(湾曲、ねじれ、旋回、又は折り畳み)を必要とする。
【0113】
本明細書で使用されるように、「定常領域」又は「定常ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に直接は関与しないが、Fc受容体との相互作用などの様々なエフェクター機能を示す、抗体部分、例えば、軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端部分を指す。これらの用語は、免疫グロブリン可変ドメインと比べて、全般的により保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。
【0114】
本明細書で使用されるように、抗体に関して使用される場合の「重鎖」という用語は、IgGのサブクラス、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、及びIgG
4を含め、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMクラスの抗体を生じる、定常ドメインのアミノ酸配列に基づく、任意の異なるタイプ、例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、及びミュー(μ)を指す。具体的な実施態様において、重鎖は、ヒト重鎖である。
【0115】
本明細書で使用されるように、「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」、及び「特異的に認識する」という用語は、抗体との関連において類似の用語であり、そのような結合が当業者によって理解されるように、抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)に結合する分子を指す。例えば、抗原に特異的に結合する分子は、例えば、免疫アッセイ、Biacore(商標)、KinExA 3000装置(Sapidyne Instruments, Boise, ID)、又は当技術分野で公知の他のアッセイにより測定したときに、一般により低い親和性で他のペプチド又はポリペプチドに結合し得る。具体的な実施態様において、抗原に免疫特異的に結合する分子は、該分子が別の抗原に結合するときのK
aよりも少なくとも2 log、2.5 log、3 log、4 log、又はそれよりも大きいK
aで抗原に結合する。別の具体的な実施態様において、抗原に免疫特異的に結合する分子は、他のタンパク質と交差反応しない。別の具体的な実施態様において、抗原に免疫特異的に結合する分子は、他の非KITタンパク質と交差反応しない。
【0116】
本明細書で使用されるように、「単離された」又は「精製された」抗体は、該抗体が得られる細胞もしくは組織源由来の細胞物質もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まず、又は化学合成されるときの化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。
【0117】
「Kabat付番」という用語及び類似の用語は、当技術分野で認識されており、抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸残基を付番する体系を指す(Kabatらの文献(1971) Ann. NY Acad. Sci. 190:382-391、及びKabatらの文献(1991)、免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。Kabat付番体系を用いると、抗体重鎖分子内のCDRは、通常、アミノ酸位置31〜35(「CDR1」)、アミノ酸位置50〜65(「CDR2」)、及びアミノ酸位置95〜102(「CDR3」)に存在する。Kabat付番体系を用いると、抗体軽鎖分子内のCDRは、通常、アミノ酸位置24〜34(CDR1)、アミノ酸位置50〜56(CDR2)、及びアミノ酸位置89〜97(CDR3)に存在する。
【0118】
本明細書で使用されるように、抗体に関して使用される場合の「軽鎖」という用語は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づく、任意の異なるタイプ、例えば、カッパ(κ)又はラムダ(λ)を指す。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野で周知である。具体的な実施態様において、軽鎖は、ヒト軽鎖である。
【0119】
本明細書で使用されるように、「モノクローナル抗体」という用語は、均質な又は実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、各々のモノクローナル抗体は、通常、抗原上の単一のエピトープを認識する。「モノクローナル」という用語は、任意の特定の抗体作製方法に限定されない。通常、モノクローナル抗体の集団は、細胞、細胞の集団、又は細胞株により作製され得る。具体的な実施態様において、本明細書で使用される「モノクローナル抗体」とは、単一のハイブリドーマ又は他の細胞(例えば、組換え抗体を産生する宿主細胞)により産生される抗体であり、ここで、該抗体は、例えば、ELISA又は当技術分野で公知のもしくは本明細書に提供される実施例中の他の抗原結合もしくは競合結合アッセイにより測定したとき、KITエピトープ(例えば、ヒトKITのD4のエピトープ)に免疫特異的に結合する。本明細書に記載のモノクローナル抗体は、例えば、Kohlerらの文献; Nature, 256:495(1975)に記載されているハイブリドーマ法により作製することができるか、又は例えば、本明細書に記載の技術を用いて、ファージライブラリーから単離することができる。クローン細胞株及びそれにより発現されるモノクローナル抗体の他の調製方法は、当技術分野で周知である(例えば、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(2002)、第5版、Ausubelら編、John Wiley and Sons, New York:の第11章を参照されたい)。
【0120】
本明細書で使用されるように、「ポリクローナル抗体」という用語は、抗原(単数)又は抗原(複数)内の同じエピトープに対する及び異なるエピトープに対する種々の異なる抗体を含む抗体集団を指す。ポリクローナル抗体の産生方法は、当技術分野で公知である(例えば、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(2002)、第5版、Ausubelら編、John Wiley and Sons, New York:の第11章を参照されたい)。
【0121】
本明細書で使用されるように、「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段により単離され、調製され、発現され、又は作出されるヒト抗体、例えば、宿主細胞内にトランスフェクトされる組換え発現ベクターを用いて発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック及び/もしくはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、もしくはウシ)から単離される抗体(例えば、Taylor, L. D.らの文献(1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照)、又は例えば、合成、ヒト免疫グロブリン配列をコードするDNA配列の遺伝子改変、もしくはヒト免疫グロブリンをコードする配列、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のそのような配列へのスプライシングによる作出を含む任意の他の手段により調製され、発現され、作出され、もしくは単離される抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有することができる。ある実施態様において、そのような組換えヒト抗体のアミノ酸配列は、そのように修飾されており、したがって、組換え抗体のVH及び/又はVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、それらに関連しているが、生体内のヒト抗体生殖系列レパートリーには本来存在しない配列である。非限定的な例として、組換えヒト抗体は、いくつかのヒト配列断片を組換えヒト抗体の合成ヒト配列へとアセンブルすることにより得ることができる。
【0122】
本明細書で使用されるように、「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体間で配列が大きく異なり、特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性に関して使用される、抗体の部分、通常、軽鎖又は重鎖の部分、典型的には、成熟重鎖中のアミノ末端の約110〜120アミノ酸及び成熟軽鎖中の約90〜100アミノ酸を指す。配列のばらつきは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に集中しており、一方、可変ドメイン中のより高度に保存された領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。任意の特定の機序又は理論に束縛されることを望まないが、軽鎖及び重鎖のCDRは、主に、抗体と抗原との相互作用に関与すると考えられる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のアミノ酸位置の付番は、Kabatらの文献(1991)、免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242(「Kabatらの文献」)に見られるような、EUインデックスによるものである。ある態様において、抗体のCDRは、(i)本明細書において「Chothia CDR」と呼ばれるChothia付番スキーム(例えば、Chothia及びLeskの文献、1987, J. Mol. Biol., 196:901-917; Al-Lazikaniらの文献、1997, J. Mol. Biol., 273:927-948;及び米国特許第7,709,226号を参照);又は(ii)例えば、Lefranc, M.-P.の文献、1999, The Immunologist, 7:132-136及びLefranc, M.-P.らの文献、1999, Nucleic Acids Res., 27:209-212に記載されているIMGT付番体系に準拠して決定することができる。ある実施態様において、該可変領域は、ヒト可変領域である。ある実施態様において、該可変領域は、齧歯類又はマウスCDR及びヒトフレームワーク領域(FR)を含む。特定の実施態様において、該可変領域は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。ある実施態様において、該可変領域は、齧歯類又はマウスCDR及び霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。非限定的な例として、本明細書に記載の可変領域は、ヒト配列の2以上の断片を合成ヒト配列へとアセンブルすることにより得られる。
【0123】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、ヒトKITのD4、及びKIT、例えば、ヒトKITのD4/D5領域に免疫特異的に結合する抗体(その抗原結合断片を含む)、例えば、ヒト化抗体である。
図1及び2のアミノ酸残基V308〜H515(配列番号73)は、ヒトKITの例示的なD4/D5領域を表し、
図1及び2に示されるアミノ酸K310〜N410(配列番号15)は、ヒトKITの例示的なD4を表す。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KIT、例えば、ヒトKITのD4ドメインに対するよりも低い親和性で、KIT、例えば、ヒトKITのD5ドメインに免疫特異的に結合する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KIT、例えば、ヒトKITのD5ドメインに対するよりも高い親和性で、KIT、例えば、ヒトKITのD4ドメインに免疫特異的に結合し;例えば、より高い親和性は、当技術分野で公知の方法、例えば、ELISA又はBiacoreアッセイにより測定したとき、少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍である。
【0124】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KIT、例えば、ヒトKITのD4又はD4/D5領域に免疫特異的に結合し、D5ドメインのみから本質的になるKIT抗原よりも高いD4ドメインのみから本質的になるKIT抗原に対する親和性を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KIT、例えば、ヒトKITのD4又はD4/D5領域に免疫特異的に結合し、D5ドメインのみから本質的になるKIT抗原よりも少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、又は10倍高いD4ドメインのみから本質的になるKIT抗原に対する親和性を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KIT、例えば、ヒトKITのD4又はD4/D5領域に免疫特異的に結合し、D5ドメインのみから本質的になるKIT抗原よりも高いD4ドメインのみ又はD4/D5領域のみから本質的になるKIT抗原に対する結合親和性(例えば、約2倍〜3倍高い親和性)を有する。
【0125】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、配列番号15のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列から本質的になるKIT抗原に免疫特異的に結合する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KIT、例えば、ヒトKITのD4ドメインに免疫特異的に結合する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒトKITのD4を含む又はヒトKITのD4から本質的になるKIT抗原に免疫特異的に結合する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、配列番号14もしくは73のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列から本質的になるKIT抗原に免疫特異的に結合する。
【0126】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域、例えば、配列番号15[ヒトD4配列])に免疫特異的に結合し、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【0127】
具体的な態様において、本明細書に記載されるのは:
(i)
【化5】
のアミノ酸配列を含むVHドメインのVH CDR、及び
(ii)
【化6】
のアミノ酸配列を含むVLドメインのVL CDRを含む、その抗原結合断片を含む、抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)である。
【0128】
具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)は、表1に記載のVH CDR(配列番号16〜18)及びVL CDR(配列番号19〜21)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)は、表2(例えば、セット1又はセット2)に記載のVH CDR及びVL CDRを含む。ある実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)は、表3に記載のVH CDR及びVL CDR(AbM CDR又は接触CDR)を含む。
【0129】
表1: CDRアミノ酸配列
【表1】
【0130】
表2: CDRアミノ酸配列
【表2】
表3: CDRアミノ酸配列
【表3】
【0131】
表4:抗体Hum1〜20のVL及びVHドメイン
【表4】
【0132】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、VHドメイン(例えば、それぞれ、配列番号2〜6を含む、H1、H2、H3、H4、及びH5)、並びにVLドメイン(例えば、それぞれ、配列番号7〜10を含む、L1、L2、L3、及びL4)である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、例えば、表4に示されるようなVH及びVLドメインを含む抗体(すなわち、抗体Hum1〜Hum20)である。特定の実施態様において、これらの抗体は、それぞれ、配列番号16〜18及び19〜21を含む、VH CDR1〜3及びVL CDR1〜3を含む。
【0133】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載のアミノ酸配列、例えば、配列番号7〜10(例えば、
図3F〜3I参照)又は配列番号12のいずれか1つを含む可変軽(VL)鎖領域を含む。
【0134】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載のアミノ酸配列、例えば、配列番号2〜6(例えば、
図3A〜3E参照)又は配列番号11のいずれか1つを含む可変重(VH)鎖領域を含む。
【0135】
例えば、本明細書に記載されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、(i)VHドメインH1(配列番号2)、H2(配列番号3)、H3(配列番号4)、H4(配列番号5)、もしくはH5(配列番号6)、及び/又は(ii)VLドメインL1(配列番号7)、L2(配列番号8)、L3(配列番号9)、もしくはL4(配列番号10)を含む抗体である。特定の例において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つのVHドメイン及び/又はVLドメイン(表4参照)を含むことができる。特定の例において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、抗体Hum4、Hum8、Hum10、又Hum17のいずれか1つのVHドメイン及び/又はVLドメインを含む。
【0136】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H1(配列番号2)及びL1(配列番号7)を含む。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H1(配列番号2)及びL2(配列番号8)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H1(配列番号2)及びL3(配列番号9)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H1(配列番号2)及びL4(配列番号10)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H2(配列番号3)及びL1(配列番号7)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H2(配列番号3)及びL2(配列番号8)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H2(配列番号3)及びL3(配列番号9)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H2(配列番号3)及びL4(配列番号10)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H3(配列番号4)及びL1(配列番号7)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H3(配列番号4)及びL2(配列番号8)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H3(配列番号4)及びL3(配列番号9)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H3(配列番号4)及びL4(配列番号10)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H4(配列番号5)及びL1(配列番号7)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H4(配列番号5)及びL2(配列番号8)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H4(配列番号5)及びL3(配列番号9)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H4(配列番号5)及びL4(配列番号10)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H5(配列番号6)及びL1(配列番号7)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H5(配列番号6)及びL2(配列番号8)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H5(配列番号6)及びL3(配列番号9)を含む。具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H5(配列番号6)及びL4(配列番号10)を含む。
【0137】
ある態様において、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトにおいて非免疫原性である。特定の実施態様において、非免疫原性アミノ酸配列は、ヒトMHCクラスIIに対するバインダーであることが特定されたエピトープ、例えば、ヒトMHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーであるエピトープを欠いている。特定の実施態様において、アミノ酸配列は、ヒトMHCクラスIIに対するバインダーであることが特定されたエピトープ、例えば、ヒトMHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーであるエピトープを実質的に欠いている。例えば、B細胞エピトープとT細胞エピトープの両方の位置を特定するための、及び免疫原性の可能性を評価するためのコンピュータ利用ツール(in silico tool)が開発されており、そのようなツールは、インビトロ又はインビボ免疫原性アッセイに対する代替法を提供する。例えば、コンピュータによるエピトープ予測法及び実験的に得られたエピトープデータを含む手動で処理されたデータベースが開発されている(Brysonらの文献、Biodrugs, 2010, 24(1): 1-8を参照されたい)。エピトープデータベースの非限定的な例としては、Immune Epitope Database(IEDB)及び専用のT Cell Epitope Database(商標)(TCED(商標))が挙げられる。そのようなエピトープデータベースを、単独で、又は当技術分野で記載されているインビトロアッセイ、例えば、MHCクラスII結合アッセイ及びT細胞活性化もしくは増殖アッセイと組み合わせて使用することができる。或いは、そのようなインビトロアッセイを、そのようなエピトープデータベースとは独立に使用することができる。抗体などの薬剤の免疫原性を決定するための、又は抗体などの薬剤の免疫原性を除去もしくは軽減するための方法は当技術分野で記載されており、例えば、Altschulらの文献、Nucleic Acids Res., 1997, 25:3389-3402; Bakerらの文献、Curr. Opin. Drug Discov. Devel., 2007, 10:219; Hillらの文献、Arthritis Res. Ther., 2003, 1:R40-R48; Jonesらの文献、J. Thromb. Haemost., 2005, 3:991-1000; Holgateらの文献、IDrugs, 2009, 12:233-237; Jonesらの文献、Methods Mol. Biol., 2009, 525:405-423;及びBakerらの文献、Curr. Drug Saf., 2010, 5:308-313を参照されたい。特定の実施態様において、ヒトKITのD4領域に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、T Cell Epitope Database(商標)(TCED(商標))により判定したときに免疫原性ではないVHドメイン及びVLドメインを含む。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒトKITのD4領域に免疫特異的に結合し、当技術分野で記載されるインビトロアッセイにより判定したときに免疫原性ではないVHドメイン及びVLドメインを含み、例えば、Wangらの文献、2008, PLoS Coomputational Biology, 2008, 4(4):e1000048;及びArnoldらの文献、2002, J. Immunol., 169:739-749を参照されたい。
【0138】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、H1(配列番号2)との少なくとも93%の配列同一性を有するVHドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、H1(配列番号2)との少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインを含む。特定の実施態様において、該VHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメインを含む。
【0139】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、H2(配列番号3)との少なくとも92%の配列同一性を有するVHドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、H2(配列番号3)との少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインを含む。特定の実施態様において、該VHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメインを含む。
【0140】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、H3(配列番号4)との少なくとも90%の配列同一性を有するVHドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、H3(配列番号4)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインを含む。特定の実施態様において、該VHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメインを含む。
【0141】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、H4(配列番号5)との少なくとも87%の配列同一性を有するVHドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、H4(配列番号5)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインを含む。特定の実施態様において、該VHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメインを含む。
【0142】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、H5(配列番号6)との少なくとも86%の配列同一性を有するVHドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、H5(配列番号6)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVHドメインを含む。特定の実施態様において、該VHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメインを含む。
【0143】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、L1(配列番号7)との少なくとも90%の配列同一性を有するVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、L1(配列番号7)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインを含む。特定の実施態様において、該VLドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLドメインを含む。
【0144】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、L2(配列番号8)との少なくとも88%の配列同一性を有するVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体は、L2(配列番号8)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインを含む。特定の実施態様において、該VLドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLドメインを含む。
【0145】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、L3(配列番号9)との少なくとも87%の配列同一性を有するVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、L3(配列番号9)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインを含む。特定の実施態様において、該VLドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLドメインを含む。
【0146】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、L4(配列番号10)との少なくとも84%の配列同一性を有するVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片は、L4(配列番号10)との少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するVLドメインを含む。特定の実施態様において、該VLドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLドメインを含む。
【0147】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H1(配列番号2)との少なくとも93%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L1(配列番号7)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0148】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H2(配列番号3)との少なくとも92%又は少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L1(配列番号7)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0149】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H3(配列番号4)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L1(配列番号7)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0150】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H4(配列番号5)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L1(配列番号7)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0151】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H5(配列番号6)との少なくとも86%又は少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L1(配列番号7)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0152】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H1(配列番号2)との少なくとも93%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L2(配列番号8)との少なくとも88%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0153】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H2(配列番号3)との少なくとも92%又は少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L2(配列番号8)との少なくとも88%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0154】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H3(配列番号4)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L2(配列番号8)との少なくとも88%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0155】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H4(配列番号5)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L2(配列番号8)との少なくとも88%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0156】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H5(配列番号6)との少なくとも86%又は少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L2(配列番号8)との少なくとも88%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0157】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H1(配列番号2)との少なくとも93%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L3(配列番号9)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0158】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H2(配列番号3)との少なくとも92%又は少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L3(配列番号9)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0159】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H3(配列番号4)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L3(配列番号9)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0160】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H4(配列番号5)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L3(配列番号9)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0161】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H5(配列番号6)との少なくとも86%又は少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L3(配列番号9)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0162】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H1(配列番号2)との少なくとも93%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L4(配列番号10)との少なくとも84%又は少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0163】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H2(配列番号3)との少なくとも92%又は少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L4(配列番号10)との少なくとも84%又は少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0164】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H3(配列番号4)との少なくとも90%又は少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L4(配列番号10)との少なくとも84%又は少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0165】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H4(配列番号5)との少なくとも87%又は少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L4(配列番号10)との少なくとも84%又は少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0166】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片であって、(i)H5(配列番号6)との少なくとも86%又は少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;及び(ii)L4(配列番号10)との少なくとも84%又は少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VL及びVHドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。ある実施態様において、そのような抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR 1〜3及びそれぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR 1〜3を含む。
【0167】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、該配列を最適比較の目的で整列させる(例えば、第二のアミノ酸又は核酸配列との最適アラインメントのために、ギャップを第一のアミノ酸又は核酸配列の配列中に導入することができる)。その後、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一の配列中の位置が、第二の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められている場合、分子は、その位置において同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、これらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の重複位置の数/位置の総数×100%)。一実施態様において、該2つの配列は、同じ長さである。ある実施態様において、パーセント同一性は、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の全長にわたって決定される。
【0168】
2つの配列(例えば、アミノ酸配列又は核酸配列)間のパーセント同一性の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成することもできる。2つの配列の比較に利用される数学アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin及びAltschulの文献(1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873 5877)に見られるように改変された、Karlin及びAltschulの文献(1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2264 2268)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschulらの文献(1990, J. Mol. Biol. 215:403)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索を、例えば、スコア=100、ワード長=12に設定されたNBLASTヌクレオチドプログラムパラメータを用いて実施し、本明細書に記載の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、例えば、スコア50、ワード長=3に設定されたXBLASTプログラムパラメータを用いて実施し、本明細書に記載のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的用のギャップのあるアラインメントを得るために、Gapped BLASTをAltschulらの文献(1997, Nucleic Acids Res. 25:3389 3402)に記載されている通りに利用することができる。或いは、分子間の距離関係を検出する反復検索を実施するために、PSI BLASTを使用することができる(同上)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI Blastプログラムを利用する場合、(例えば、XBLAST及びNBLAST)のそれぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用することができる(例えば、ワールドワイドウェブ、ncbi.nlm.nih.govにおけるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)を参照されたい)。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers及びMillerの文献(1988, CABIOS 4:11 17)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較のためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。
【0169】
2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの許容の有無にかかわらず、上記の技術と類似の技術を用いて決定することができる。パーセント同一性を求める際、通常は、正確な一致のみをカウントする。
【0170】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって:(i)それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、もしくはH5の1つ、2つ、3つ、もしくは4つのフレームワーク領域を含むVHドメイン(表5A参照);並びに/又は(ii)それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、もしくはL4の1つ、2つ、3つ、もしくは4つのフレームワーク領域を含むVLドメイン(表5B参照)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【0171】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR2を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR3を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR4を含むVHドメインを含む。
【0172】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1及びFR2を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1、FR2、及びFR3を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含むVHドメインを含む。
【0173】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1及びFR3を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1、FR3、及びFR4を含むVHドメインを含む。
【0174】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1及びFR4を含むVHドメインを含む。
【0175】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR1、FR2、及びFR4を含むVHドメインを含む。
【0176】
一実施態様において、ヒト又はヒト化KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR2及びFR3を含むVHドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR2、FR3、及びFR4を含むVHドメインを含む。
【0177】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにH1、H2、H3、H4、又はH5のフレームワーク領域FR3及びFR4を含むVHドメインを含む。
【0178】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR2を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR3を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR4を含むVLドメインを含む。
【0179】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1及びFR2を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1、FR2、及びFR3を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4を含むVLドメインを含む。
【0180】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1及びFR3を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1、FR3、及びFR4を含むVLドメインを含む。
【0181】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1及びFR4を含むVLドメインを含む。
【0182】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR1、FR2、及びFR4を含むVLドメインを含む。
【0183】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR2及びFR3を含むVLドメインを含む。一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR2、FR3、及びFR4を含むVLドメインを含む。
【0184】
一実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにL1、L2、L3、又はL4のフレームワーク領域FR3及びFR4を含むVLドメインを含む。
【0185】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって:(i)それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにVHドメインHH257〜HH281(表5C参照)のいずれか1つのフレームワーク領域FR1〜FR4を含むVHドメイン;並びに(ii)それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにVLドメインLL65〜LL76(表5D参照)のいずれか1つのFR1〜FR4を含むVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【0186】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって:(i)表2又は3に示されるアミノ酸配列の組合せを含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びにVHドメインH1〜H5(表5A)及びHH257〜HH281(表5C参照)のいずれか1つのフレームワーク領域FR1〜FR4を含むVHドメイン;並びに(ii)それぞれ、表2(セット1もしくはセット2)又は3(AbM又は接触CDR)のどちらかに示されるアミノ酸配列の組合せを含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びにVLドメインL1〜L4(表5B)及びLL65〜LL76(表5D参照)のいずれか1つのFR1〜FR4を含むVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【0187】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって:(i)表2又は3に示されるアミノ酸配列の組合せを含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3、並びに例えば、
図3A〜3Iのいずれか1つに示される、VH CDRに隣接する配列を含む対応するフレームワーク領域FR1〜FR4を含むVHドメイン;並びに(ii)ぞれぞれ、表2(セット1もしくはセット2)又は3(AbMもしくは接触CDR)のどちらかに示されるアミノ酸配列の組合せを含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びに例えば、
図3A〜3Iのいずれか1つに示されるVL CDRに隣接する配列を含む対応するフレームワーク領域FR1〜FR4を含むVLドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【0188】
表5A: VHドメインフレームワーク領域(FR)
【表5】
【0189】
表5B: VLドメインフレームワーク領域(FR)
【表6】
【0190】
表5C: VHドメインHH257〜HH281のフレームワーク領域配列
【表7】
【0191】
表5D: VLドメインLL65〜LL76のフレームワーク領域配列
【表8】
【0192】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断であって:(i)アミノ酸配列:
【化7】
(ここで、Kabat位置11のX
H1、Kabat位置20のX
H2、Kabat位置38のX
H3、Kabat位置67のX
H4、Kabat位置69のX
H5、Kabat位置72のX
H6、Kabat位置81のX
H7、及びKabat位置87のX
H8は、任意のアミノ酸から独立に選択される)を含むVHドメイン;並びに/又は(ii)アミノ酸配列
【化8】
(ここで、Kabat位置10のX
K1、Kabat位置46のX
K2、Kabat位置63のX
K3、Kabat位置80のX
K4、Kabat位置85のX
K5、及びKabat位置87のX
K6は、任意のアミノ酸から独立に選択される)を含むVLドメインを含む、抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該VH及び/又はVLドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。
【0193】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体であって:(i)アミノ酸配列:
【化9】
(ここで、Kabat位置11のX
H1、Kabat位置20のX
H2、Kabat位置38のX
H3、Kabat位置67のX
H4、Kabat位置69のX
H5、Kabat位置72のX
H6、Kabat位置81のX
H7、及びKabat位置87のX
H8は、表6Bに示されるアミノ酸の組合せから選択される)を含むVHドメイン;並びに/又は(ii)アミノ酸配列:
【化10】
(ここで、Kabat位置10のX
K1、Kabat位置46のX
K2、Kabat位置63のX
K3、Kabat位置80のX
K4、Kabat位置85のX
K5、及びKabat位置87のX
K6は、表6Aに示されるアミノ酸の組合せから選択される)を含むVLドメインを含む、抗体である。特定の実施態様において、該VH及び/又はVLドメインは、例えば、MHCクラスIIに結合するエピトープ、例えば、MHCクラスIIに対する非ヒト生殖系列バインダーの不在により判定したとき、非免疫原性である。
【0194】
一実施態様において、Kabat位置11のX
H1は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性側鎖、又は非極性側鎖分岐鎖アミノ酸(BCAA))、例えば、L又はVである。一実施態様において、Kabat位置20のX
H2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性側鎖、又は非極性側鎖分岐鎖アミノ酸(BCAA))、例えば、L又はVである。一実施態様において、Kabat位置38のX
H3は、極性側鎖(例えば、親水性側鎖、塩基性側鎖、又は荷電側鎖、例えば、正荷電側鎖もしくは負荷電側鎖)を有するアミノ酸、例えば、K又はRである。一実施態様において、Kabat位置67のX
H4は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性側鎖又は非極性側鎖分岐鎖アミノ酸(BCAA))、例えば、V又はAである。一実施態様において、Kabat位置69のX
H5は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性側鎖又は非極性側鎖分岐鎖アミノ酸(BCAA))、例えば、L又はIである。一実施態様において、Kabat位置72のX
H6は、酸性側鎖を有するアミノ酸、例えば、E又はDである。一実施態様において、Kabat位置81のX
H7は、酸性側鎖を有するアミノ酸又はそのアミド誘導体、例えば、Q(Eの非荷電/アミド誘導体)又はEである。一実施態様において、Kabat位置87のX
H8は、脂肪族ヒドロキシル基又は親水性側鎖を有するアミノ酸、例えば、S又はTである。
【0195】
一実施態様において、Kabat位置11のX
H1は、脂肪族アミノ酸、例えば、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、例えば、Vであり; Kabat位置20のX
H2は、脂肪族アミノ酸、例えば、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、例えば、Lであり; Kabat位置38のX
H3は、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、Rであり; Kabat位置67のX
H4は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Aであり; Kabat位置69のX
H5は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Lであり; Kabat位置72のX
H6は、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、Dであり; Kabat位置81のX
H7は、酸性アミノ酸のアミド誘導体を有するアミノ酸、例えば、Qであり; Kabat位置87のX
H8は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tである。
【0196】
一実施態様において、Kabat位置11のX
H1は、脂肪族アミノ酸、例えば、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、例えば、Vであり; Kabat位置20のX
H2は、脂肪族アミノ酸、例えば、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、例えば、Vであり; Kabat位置38のX
H3は、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、Rであり; Kabat位置67のX
H4は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Aであり; Kabat位置69のX
H5は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Iであり; Kabat位置72のX
H6は、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、Dであり; Kabat位置81のX
H7は、酸性アミノ酸、例えば、Eであり; Kabat位置87のX
H8は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tである。
【0197】
具体的な実施態様において、Kabat位置10のX
K1は、芳香族アミノ酸、例えば、F、又は脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Sである。ある実施態様において、Kabat位置46のX
K2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性アミノ酸)、例えば、A、又は脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Sである。一実施態様において、Kabat位置63のX
K3は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、T又はSである。具体的な実施態様において、Kabat位置80のX
K4は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、S、又は芳香族アミノ酸、例えば、Pである。ある実施態様において、Kabat位置85のX
K5は、酸性アミノ酸、例えば、D、又は脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tである。一実施態様において、Kabat位置87のX
K6は、芳香族アミノ酸、例えば、F又はYである。
【0198】
具体的な実施態様において、Kabat位置10のX
K1は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Sであり; Kabat位置46のX
K2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性アミノ酸)、例えば、Aであり; Kabat位置63のX
K3は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tであり; Kabat位置80のX
K4は、芳香族アミノ酸、例えば、Pであり; Kabat位置85のX
K5は、酸性アミノ酸、例えば、Dであり; Kabat位置87のX
K6は、芳香族アミノ酸、例えば、Fである。
【0199】
具体的な実施態様において、Kabat位置10のX
K1は、芳香族アミノ酸、例えば、Fであり; Kabat位置46のX
K2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えば、疎水性アミノ酸)、例えば、Aであり; Kabat位置63のX
K3は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tであり; Kabat位置80のX
K4は、脂肪族ヒドロキシル側鎖、例えば、Sであり; Kabat位置85のX
K5は、酸性アミノ酸、例えば、Dであり; Kabat位置87のX
K6は、芳香族アミノ酸、例えば、Fである。
【0200】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は:(i)アミノ酸配列:
【化11】
(ここで、Kabat位置11のX
H1は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Vであり、Kabat位置20のX
H2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Lであり、Kabat位置38のX
H3は、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、Kであり、Kabat位置67のX
H4は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Aであり、Kabat位置69のX
H5は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Lであり、Kabat位置72のX
H6は、酸性アミノ酸、例えば、Dであり、Kabat位置81のX
H7は、酸性アミノ酸又はそのアミド誘導体、例えば、Qであり、Kabat位置87のX
H8は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tである)を含むVHドメイン;及び(ii)アミノ酸配列
【化12】
(ここで、Kabat位置10のX
K1は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Sであり、Kabat位置46のX
K2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Aであり、Kabat位置63のX
K3は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tであり、Kabat位置80のX
K4は、芳香族アミノ酸、例えば、Pであり、Kabat位置85のX
K5は、酸性アミノ酸、例えば、Dであり、Kabat位置87のX
K6は、芳香族アミノ酸、例えば、Fである)を含むVLドメインを含む。
【0201】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は:(i)アミノ酸配列:
【化13】
(ここで、Kabat位置11のX
H1は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Vであり、Kabat位置20のX
H2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Vであり、Kabat位置38のX
H3は、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、Rであり、Kabat位置67のX
H4は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Aであり、Kabat位置69のX
H5は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Iであり、Kabat位置72のX
H6は、酸性アミノ酸、例えば、Dであり、Kabat位置81のX
H7は、酸性アミノ酸、例えば、Eであり、Kabat位置87のX
H8は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tである)を含むVHドメイン;及び(ii)アミノ酸配列
【化14】
(ここで、Kabat位置10のX
K1は、芳香族アミノ酸、例えば、Fであり、Kabat位置46のX
K2は、脂肪族側鎖を有するアミノ酸、例えば、Aであり、Kabat位置63のX
K3は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Tであり、Kabat位置80のX
K4は、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸、例えば、Sであり、Kabat位置85のX
K5は、酸性アミノ酸、例えば、Dであり、Kabat位置87のX
K6は、芳香族アミノ酸、例えば、Fである)を含むVLドメインを含む。
【0202】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、(i)それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメイン;並びに(ii)配列番号7、8、9、又は10を含むVLドメインを含む。
【0203】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、(i)それぞれ、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVHドメイン;並びに(ii)アミノ酸配列
【化15】
(ここで、Kabat位置10のX
K1、Kabat位置46のX
K2、Kabat位置63のX
K3、Kabat位置80のX
K4、Kabat位置85のX
K5、及びKabat位置87のX
K6は、表6Aに示されるアミノ酸の組合せから選択される)を含むVLドメインを含む。
【0204】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、(i)配列番号2、3、4、又は5のアミノ酸配列を含むVHドメイン;並びに(ii)それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLドメインを含む。
【0205】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、(i)アミノ酸配列:
【化16】
(ここで、Kabat位置11のX
H1、Kabat位置20のX
H2、Kabat位置38のX
H3、Kabat位置67のX
H4、Kabat位置69のX
H5、Kabat位置72のX
H6、Kabat位置81のX
H7、及びKabat位置87のX
H8は、表6Bに示されるアミノ酸の組合せから選択される)を含むVHドメイン;並びに(ii)それぞれ、配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLドメインを含む。
【0206】
表6A: VKドメインアミノ酸置換
【表9】
【0207】
表6B: VHドメインアミノ酸置換
【表10】
【0208】
具体的な実施態様において、定常領域に対する本明細書に記載のVL鎖領域の位置(すなわち、境界)は、KIT(例えば、ヒトKITのD4領域)に対する免疫特異的結合が維持される(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持される)限り、1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸位置だけ変化し得る。具体的な実施態様において、定常領域に対する本明細書に記載のVH鎖領域の位置(すなわち、境界)は、KIT(例えば、ヒトKITのD4領域)に対する免疫特異的結合が維持される(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持される)限り、1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸位置だけ変化し得る。
【0209】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される、例えば、表1〜3及び10〜15に示される、VH CDR及び/又はVL CDRを含む部分であり、ここで、該VH CDR及びVL CDRは、ヒトKITのD4領域への特異的結合を付与する空間的配向で配置されている。
【0210】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号16〜18のアミノ酸配列を含むVH CDR及び配列番号19〜21のアミノ酸配列を含むVL CDR、配列番号56、62、及び63のアミノ酸配列を含むVH CDR並びに配列番号59〜61のアミノ酸配列を含むVL CDR、配列番号70〜72のアミノ酸配列を含むVH CDR及び配列番号66〜68のアミノ酸配列を含むVL CDRを含む部分であり、ここで、該VH CDR及びVL CDRは、ヒトKITのD4領域への特異的結合を付与する空間的配向で配置されている。ある実施態様において、該部分は、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該部分は、タンパク質、例えば、Fc領域を含む融合タンパク質である。
【0211】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、表13〜15から選択されるVH CDR及び/又は表10〜12から選択されるVL CDRを含む部分であり、ここで、該VH CDR及びVL CDRは、ヒトKITのD4領域への特異的結合を付与する空間的配向で配置されている。ある実施態様において、該部分は、抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様において、該部分は、タンパク質、例えば、Fc領域を含む融合タンパク質である。
【0212】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、表10〜15に提示されるものから選択されるVH CDR 1〜3及びVL CDR 1〜3を含む、部分、例えば、抗体又はその抗原結合断片であり、ここで、該VH CDR及びVL CDRは、ヒトKITのD4領域への特異的結合を付与する空間的配向で配置されている。特定の態様において、本明細書に記載の部分は、ヒトKITのD4領域への特異的結合を付与する空間的配向でVH CDR 1〜3及び/又はVL CDR 1〜3を連結するリンカー、例えば、ペプチドリンカーを含む。
【0213】
特定の態様において、本明細書に記載の部分は、ヒトKITのD4領域への特異的結合を付与する空間的配向でVH CDR及び/又はVL CDRを連結するリンカー、例えば、ペプチドリンカーを含む。
【0214】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、表10〜15に提示されるものから選択されるVL CDR 1〜3及びVH CDR 1〜3を含む抗体又はその抗原結合断片であり、ここで、該抗体又はその抗原結合断片は、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域に免疫特異的に結合する。
【0215】
具体的な実施態様において、表10〜15のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性を維持する任意の天然アミノ酸である。具体的な実施態様において、表10〜15のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性を維持する非天然アミノ酸である。具体的な実施態様において、表10〜15のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、配列番号16〜21のアミノ酸配列を有するCDRの対応するアミノ酸の保存的置換であり、ここで、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性は維持される。
【0216】
具体的な実施態様において、表10〜15のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、独立に、アミノ酸A、G、T、K、又はLである。特定の実施態様において、表10〜15のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、アミノ酸A、G、T、Y、C、又はSである。これらの実施態様のある態様において、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性は維持される。
【0217】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、表10〜15に提示されるものから選択されるVH CDR及び/又はVL CDRを含む。
【0218】
特定の実施態様において、CDR、例えば、表10〜15に示されるVL CDR 1〜3及びVH CDR 1〜3のいずれか1つは、1以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つの)「X」アミノ酸を含み、ここで、各々の「X」アミノ酸は、ヒトKITのD4領域に対する抗体又はその断片の特異的結合を維持することができる任意のアミノ酸であることができる。
表10: VL CDR1
【表11】
表11: VL CDR2
【表12】
表12: VL CDR3
【表13】
表13: VH CDR1
【表14】
表14: VH CDR2
【表15】
表15: VH CDR3
【表16】
【0219】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、表20〜23に提示されるものから選択されるVL FR 1〜4及び/又は表16〜19に提示されるものから選択されるVH FR 1〜4を含む抗体又はその抗原結合断片であり、ここで、該抗体又はその抗原結合断片は、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域に免疫特異的に結合する。
【0220】
具体的な実施態様において、表16〜23のいずれか1つにおけるFRの「X」アミノ酸は、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性を維持する任意の天然アミノ酸である。具体的な実施態様において、表16〜23のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性を維持する非天然アミノ酸である。具体的な実施態様において、表16〜23のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、配列番号16〜21のアミノ酸配列を有するCDRの対応するアミノ酸の保存的置換であり、ここで、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性は維持される。
【0221】
具体的な実施態様において、表16〜23のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、アミノ酸A、G、T、K、又はLである。特定の実施態様において、表16〜23のいずれか1つにおけるCDRの「X」アミノ酸は、アミノ酸 A、G、T、Y、C、又はSである。これらの実施態様のある態様において、ヒトKITのD4領域に対する特異的結合親和性は維持される。
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、表16〜23に提示されるものから選択されるVH CDR及び/又はVL CDRを含む。
【0222】
特定の実施態様において、FR、例えば、表16〜23に示されるVL FR 1〜4及びVH FR 1〜4のいずれか1つは、1以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つの)「X」アミノ酸を含み、ここで、各々の「X」アミノ酸は、ヒトKITのD4領域に対する抗体又はその断片の特異的結合を維持することができる任意のアミノ酸であることができる。
表16: VH FR1
【表17】
表17: VH FR2
【表18】
表18: VH FR3
【表19】
表19: VH FR4
【表20】
表20: VL FR1
【表21】
表21: VL FR2
【表22】
表22: VL FR3
【表23】
表23: VL FR4
【表24】
【0223】
一態様において、本明細書に記載の抗体は、1以上のアミノ酸欠失、付加、及び/又は修飾を含むFc領域を含む。
【0224】
本明細書で使用される「Fc領域」は、最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを含み、したがって、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにこれらのドメインのN末端にある柔軟なヒンジを指す。IgA及びIgMについては、Fc領域は、J鎖を含み得る。IgGについては、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCガンマ2及びCガンマ3(Cγ2及びCγ3)並びにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)の間のヒンジを含み得る。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端に残基C226又はP230を含み、ここで、付番は、Kabatらの文献(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, VA)に見られるようなEUインデックスによるものである。「Kabatの文献に示されるEUインデックス」は、Kabatらの文献(上記)に記載されているヒトIgG1 EU抗体の残基付番を指す。ある実施態様において、Fc領域は、非天然のFc領域を含む。ある態様において、1以上の多型は、限定されないが、Kabat 270、272、312、315、356、及び358を含む、1以上のFc位置に存在する。
【0225】
一態様において、本明細書に提供されるのは、同等の抗体(例えば、野生型Fc領域を有することを除いて、同じアミノ酸配列を有する抗体)と比べて、Fcリガンド(例えば、Fc受容体、例えば、C1q)に対する改変された結合特性を有するFc領域を含む、KITのD4領域に特異的に結合する本明細書に記載の抗体、又はその抗原結合断片である。
【0226】
Fc領域のそのリガンドに対する親和性及び結合特性は、Fc-FcγR相互作用、すなわち、Fc領域のFcγRへの特異的結合を決定するための当技術分野で公知の種々のインビトロアッセイ法(生化学又は免疫学ベースのアッセイ)によって決定することができ、該アッセイ法には、限定されないが、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、もしくは放射免疫アッセイ(RIA))、又は動力学(例えば、BIACORE(登録商標)解析)、並びに他の方法、例えば、間接的結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、ゲル電気泳動、及びクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)が含まれる。これらの及びその他の方法は、検討されている1以上の成分上の標識を利用し、及び/又は限定されないが、発色性、蛍光性、発光性、もしくは同位体標識を含む、種々の検出法を利用することができる。
【0227】
一実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、同等の分子と比べて、1以上のFcリガンドに対する増強された結合を有する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、Fc受容体に対する増強された結合を有する。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、Fc受容体FcγRIIIAに対する増強された結合を有する。1つの具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、Fc受容体FcRnに対する増強された結合を有する。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、同等の分子と比べて、C1qに対する増強された結合を有する。
【0228】
ある態様において、Fc領域を含むタンパク質の血清半減期は、Fc領域のFcRnに対する結合親和性を増大させることによって増大させることができる。一実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、同等の分子と比べて、改善された血清半減期を有する。
【0229】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌型Igが、これらの細胞傷害性細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、その後、該標的細胞を細胞毒素で殺傷することができるようにする細胞傷害性の一形態を指す。標的細胞の表面に向けられた特異的高親和性IgG抗体は、そのような殺傷のために、細胞傷害性細胞を「武装する」。標的細胞の溶解には、直接の細胞間接触が関与し、補体は関与しない。抗体に加えて、抗原担持標的細胞に特異的に結合する能力を有するFc領域を含む他のタンパク質、具体的には、Fc融合タンパク質は、細胞媒介性細胞傷害性を生じさせることが想定される。簡単にするために、Fc融合タンパク質の活性によって生じる細胞媒介性細胞傷害性は、本明細書において、ADCC活性とも呼ばれる。
【0230】
Fc領域を含む、任意の特定のタンパク質、例えば、抗体がADCCによる標的細胞の溶解を媒介する能力をアッセイすることができる。Fc領域のADCC活性を評価するために、Fc領域を含む標的細胞結合抗体を、抗原-抗体複合体によって活性化され、標的細胞の細胞溶解をもたらし得る免疫エフェクター細胞と組み合わせて、標的細胞に添加する。細胞溶解は、通常、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光色素、又は天然の細胞内タンパク質)の放出によって検出される。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。インビトロADCCアッセイの具体例は、Wisecarverらの文献、1985 79:277-282; Bruggemannらの文献、1987, J Exp. Med. 166:1351-1361; Wilkinsonらの文献、2001, J Immunol. Methods 258:183-191; Patelらの文献、1995 J Immunol. Methods 184:29-38に記載されている。代わりに、又はさらに、Fc領域を含むタンパク質のADCC活性は、インビボで、例えば、動物モデル、例えば、Clynesらの文献、1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:652-656に開示されている動物モデルで評価することができる。
【0231】
一実施態様において、Fc領域を含むタンパク質、例えば、本明細書に記載の抗体は、同等のタンパク質、例えば、抗体と比べて、増強されたADCC活性を有する。別の具体的な実施態様において、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、同等の抗体と比べて、Fc受容体FcγRIIIAに対する増強された結合を有し、かつ増強されたADCC活性を有する。いくつかの実施態様において、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、同等の抗体と比べて、増強されたADCC活性と改善された血清半減期の両方を有する。
【0232】
「補体依存性細胞傷害性」及び「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。補体活性化経路は、補体系の第一成分(C1q)の、分子、例えば、同族抗原との複合体を形成した抗体への結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoroらの文献、1996, J. Immunol. Methods, 202:163に記載されているCDCアッセイを実施することができる。一実施態様において、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、同等の抗体と比べて、増強されたCDC活性を有する。他の実施態様において、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、同等の抗体と比べて、増強されたCDC活性と改善された血清半減期の両方を有する。
【0233】
一実施態様において、本明細書に記載の抗体は、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される234、235、236、239、240、241、243、244、245、247、252、254、256、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、326、327、328、329、330、332、333、及び334からなる群から選択される1以上の位置に(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つの位置に)アミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、もしくは付加、又は非天然アミノ酸残基)を含むFc領域を含む。任意に、該Fc領域は、当業者に公知のさらなる及び/又は代わりの位置にアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、もしくは付加)又は非天然アミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号;第6,277,375号;第6,737,056号;PCT特許公開WO 01/58957号;WO 04/016750号;WO 04/029207号;WO 04/035752号、及びWO 05/040217号を参照されたく、これらは各々、完全に、しかし特に、そのような修飾の開示について、本明細書中に組み込まれる)。さらなる実施態様において、Fc領域の1以上の機能は、1以上の位置にアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、もしくは付加)又は非天然アミノ酸残基を含むFc領域によって維持される(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持される)。例えば、そのようなFc機能としては、エフェクター機能、例えば、CDCもしくはADCC、又はFc受容体に対する結合親和性を挙げることができる。ある実施態様において、1以上の位置にアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、もしくは付加)又は非天然アミノ酸残基を含むFc領域は、少なくとも1つ又は複数の増強されたFc活性、例えば、改善された半減期、又は増強されたエフェクター機能、例えば、ADCCもしくはCDCを示す。特定の実施態様において、1以上の位置にアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、もしくは付加)又は非天然アミノ酸残基を含むFc領域は、減少したFc活性、例えば、減少した安定性/半減期、又は減少したエフェクター機能、例えば、ADCCもしくはCDCを示す。
【0234】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、Fc領域を含み、ここで、該Fc領域は、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される、234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、235A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235F、236E、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、240I、240A、240T、240M、241W、241L、241Y、241E、241R、243W、243L、243Y、243R、243Q、244H、245A、247V、247G、252Y、254T、256E、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、269H、269Y、269F、269R、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、269G、297S、297D、297E、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、313F、325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、327G、327W、327N、327L、328S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、332D、332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Y、及び332Aからなる群から選択される少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、もしくは4つ)のアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、もしくは付加)又は少なくとも1つの非天然アミノ酸残基(例えば、1つ、2つ、3つ、もしくは4つ)を含む。任意に、該Fc領域は、当業者に公知のさらなる及び/又は代わりの非天然アミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号;第6,277,375号;第6,737,056号;PCT特許公開WO 01/58957号;WO 04/016750号;WO 04/029207号;WO 04/035752号、及びWO 05/040217号を参照されたい)。
【0235】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、Fc領域を含む抗体であり、ここで、該Fc領域は、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される、239、330、及び332からなる群から選択される1以上の位置に少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含む。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、Fc領域を含む抗体であり、ここで、該Fc領域は、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される、239D、330L、及び332Eからなる群から選択される少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含む。任意に、該Fc領域はさらに、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される、252、254、及び256からなる群から選択される1以上の位置にさらなる非天然アミノ酸を含み得る。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、Fc領域を含む抗体であり、ここで、該Fc領域は、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される、239D、330L、及び332Eからなる群から選択される少なくとも1つの非天然のアミノ酸を含み、1以上の位置の少なくとも1つの非天然アミノ酸は、Kabatの文献に示されるEUインデックスによって付番される、252Y、254T、及び256Eからなる群から選択される。一実施態様において、そのような配列を含むFc領域は、1以上のFc活性、例えば、Fc受容体に対する結合親和性、又はエフェクター機能、例えば、ADCCもしくはCDCを示す。具体的な実施態様において、そのような配列を含むFc領域は、低下したFc活性、例えば、Fc受容体に対する低下した結合親和性、又は低下したエフェクター機能、例えば、ADCCもしくはCDCを示す。特定の実施態様において、そのような配列を含むFc領域は、増強されたFc活性、例えば、改善された半減期、Fc受容体に対する増強された結合親和性、又は増強されたエフェクター機能、例えば、ADCCもしくはCDCを示す。
【0236】
Fc領域修飾の非限定的な例は、Ghetieらの文献、1997, Nat Biotech. 15:637-40; Duncanらの文献、1988, Nature 332:563-564; Lundらの文献、1991, J. Immunol 147:2657-2662; Lundらの文献、1992, Mol Immunol 29:53-59; Alegreらの文献、1994, Transplantation 57:1537-1543; Hutchinsらの文献、1995, Proc Natl. Acad Sci U S A 92:11980-11984; Jefferisらの文献、1995, Immunol Lett. 44:111-117; Lundらの文献、1995, Faseb J 9:115-119; Jefferisらの文献、1996, Immunol Lett 54:101-104; Lundらの文献、1996, J Immunol 157:4963-4969; Armourらの文献、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624; Idusogieらの文献、2000, J Immunol 164:4178-4184; Reddyらの文献、2000, J Immunol 164:1925-1933; Xuらの文献、2000, Cell Immunol 200:16-26; Idusogieらの文献、2001, J Immunol 166:2571-2575; Shieldsらの文献、2001, J Biol Chem 276:6591-6604; Jefferisらの文献、2002, Immunol Lett 82:57-65; Prestaらの文献、2002, Biochem Soc Trans 30:487-490);米国特許第5,624,821号;第5,885,573号;第5,677,425号;第6,165,745号;第6,277,375号;第5,869,046号;第6,121,022号;第5,624,821号;第5,648,260号;第6,528,624号;第6,194,551号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,277,375号;第8,163,882号;第7,355,008号;第7,960,512号;第8,039,592号;第8,039,359号;第8,101,720号;第7,214,775号;第7,682,610号;第7,741,442号;米国特許公報2004/0002587号及びPCT公開WO 94/29351号;WO 99/58572号;WO 00/42072号;WO 04/029207号;WO 04/099249号;WO 04/063351号に提供されている。
【0237】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、IgG1 Fc領域、例えば、ヒトIgG1 Fc領域に対する1以上(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の修飾を含む。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、IgG2 Fc領域、例えば、ヒトIgG2 Fc領域に対する1以上(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の修飾を含む。一実施態様において、本明細書に記載の抗体は、IgG4 Fc領域、例えば、ヒトIgG4 Fc領域に対する1以上(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の修飾を含む。
【0238】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体は、Fc領域を含み、ここで、該Fc領域は、1以上(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)の糖型修飾(例えば、1以上の糖型の除去又は置換)、例えば、改変された糖型、すなわち、Fc領域を含む分子に共有結合している炭水化物組成を含む。改変された糖型は、限定されないが、エフェクター機能の増強又は低下を含む、種々の目的に有用であり得る。改変された糖型は、当業者に公知の任意の方法によって、例えば、改変型もしくは変異体発現株を使用することによって、1以上の酵素、例えば、DI N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTI11)との共発現によって、様々な生物もしくは様々な生物由来の細胞株でFc領域を含む分子を発現させることによって、又はFc領域を含む分子を発現させた後に炭水化物(複数可)を修飾することによって生成させることができる。改変された糖型を生成させる方法は、当技術分野で公知であり、これには、Umanaらの文献、1999, Nat. Biotechnol 17:176-180; Daviesらの文献、20017 Biotechnol Bioeng 74:288-294; Shieldsらの文献、2002, J Biol Chem 277:26733-26740; Shinkawaらの文献、2003, J Biol Chem 278:3466-3473)、米国特許第6,602,684号;米国特許出願第10/277,370号;米国特許出願第10/113,929号;PCT WO 00/61739A1号;PCT WO 01/292246A1号;PCT WO 02/311140A1号;PCT WO 02/30954A1号;WO 00061739号;US 20030115614号;及びOkazakiらの文献、2004, JMB, 336: 1239-49に記載されている方法が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の抗体の修飾された糖型を生成させる方法は当技術分野で記載されており、これには、米国特許第7,517,670号;米国特許第8,021,856号;米国特許第8,080,415号;米国特許第8,084,222号;米国特許第7,700,321号;及び米国特許第8,071,336号に記載されている方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0239】
特定の実施態様において、Fc領域のグリコシル化を修飾して、エフェクター機能を増加又は減少させることができる。したがって、一実施態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、アミノ酸残基の修飾されたグリコシル化を含む。別の実施態様において、アミノ酸残基の修飾されたグリコシル化は、エフェクター機能、例えば、ADCC又はCDCの低下をもたらす。別の実施態様において、アミノ酸残基の修飾されたグリコシル化は、エフェクター機能の増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体のグリコシル化様式を修飾して、ADCC及びCDCエフェクター機能を増強する(例えば、Shieldsらの文献(2002) JBC. 277:26733; Shinkawaらの文献(2003) JBC. 278:3466、及びOkazakiらの文献(2004) J. Mol. Biol., 336: 1239を参照されたい)。具体的な実施態様において、そのような修飾されたグリコシル化は、インビボで天然に見られるFc領域のグリコシル化と異なるか、又はそのような修飾されたグリコシル化は、Fc領域の非天然のグリコシル化である。例えば、Fc領域の修飾されたグリコシル化は、アミノ酸を修飾することによって、又はタンパク質/抗体を、修飾されていないその親細胞とは異なるグリコシル化装置を含むように改変されている細胞で発現させることによって達成することができる。これに関連して、そのような細胞を、特定のグリコシル化酵素を発現しないか、又は親細胞には存在しない特定のグリコシル化酵素を発現するように改変することができる。
【0240】
非天然のFc領域を生成させる方法は、当技術分野で公知である。例えば、アミノ酸置換及び/又は欠失は、限定されないが、部位特異的突然変異生成(Kunkelの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492(1985))、PCR突然変異生成(Higuchiの文献、「PCRプロトコル:方法及び応用の手引き(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)」、Academic Press, San Diego, pp. 177-183(1990))、及びカセット突然変異生成(Wellsらの文献、Gene 34:315-323(1985))を含む、突然変異生成法によって生成させることができる。部位特異的突然変異生成は、重複-伸長PCR法によって実施することができる(Higuchiの文献、「PCR技術:DNA増幅の原理及び応用(PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification)」、Stockton Press, New York, pp. 61-70(1989))。或いは、重複-伸長PCR(Higuchiの文献、同上)の技術を用いて、任意の所望の突然変異(複数可)を標的配列(出発DNA)に導入することができる。Fc領域修飾の生成に有用な他の方法は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,624,821号;第5,885,573号;第5,677,425号;第6,165,745号;第6,277,375号;第5,869,046号;第6,121,022号;第5,624,821号;第5,648,260号;第6,528,624号;第6,194,551号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,277,375号;米国特許公報第2004/0002587号、及びPCT公開WO 94/29351号;WO 99/58572号;WO 00/42072号;WO 02/060919号;WO 04/029207号;WO 04/099249号;WO 04/063351号を参照されたい)。
【0241】
具体的な実施態様において、該Fc領域は、低下したフコシル化を有する。別の実施態様において、該Fc領域は、フコシル化されていない(例えば、米国特許出願公開第2005/0226867号を参照されたい)。
【0242】
ある態様において、本明細書に記載の抗体は、非フコシル化抗体であり、例えば、該抗体のFc領域は、フコースを有する糖鎖、例えば、N-アセチルグルコサミンに結合したフコースを含まない(例えば、米国特許第7,214,775号;第7,682,610号;及び第7,741,442号を参照されたい)。非フコシル化抗体を作製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第7,708,992号を参照されたい。例えば、非フコシル化抗体は、改変された宿主細胞を用いて作製することができ、例えば、米国特許第6,946,292号;第7,425,446号;第8,067,232号;第7,846,725号;及び第7,393,683号を参照されたい。非フコシル化抗体を作製するためのノックアウト動物も記載されており、例えば、米国特許第7,737,325号を参照されたい。特定の実施態様において、ヒトKITのD4領域に特異的に結合する本明細書に記載の非フコシル化抗体は、増大したADCCを示す。
【0243】
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、参照抗体のフコース含量と比べて、100%未満、例えば、65%未満のフコース含量を含む(例えば、米国特許第7,931,895号及び第7,846,434号を参照されたい)。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、フコース含量によって特徴付けられ、ここで、N-結合型オリゴ糖、例えば、CH2由来ドメイン中のN-結合型オリゴ糖の少なくとも約60%は、フコースを含有しない。具体的な実施態様において、フコースを含有しないN-結合型オリゴ糖、例えば、CH2由来ドメイン中のN-結合型オリゴ糖のパーセンテージは、少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%であるか、又はそれを上回り、改変されたエフェクター機能、例えば、改変されたADCC又は低下したADCCを示す。特定の実施態様において、ヒトKITのD4領域に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、65%未満のフコース含量を含み、増大したADCCを示す。
【0244】
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、FcγRに対する低下した結合を示す改変されたFcγR結合活性を有するFc領域を含み、該Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438、又は439のいずれか1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)にアミノ酸修飾を含み、ここで、該Fc領域中の残基の付番は、Kabatの文献に見られるようなEUインデックスの付番である(例えば、米国特許第7,183,387号を参照されたい)。例えば、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、FcγRIに対する低下した結合を示し、該Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、327、又は329のいずれか1つ又は複数(1つ、2つ、3つ、又は4つ)にアミノ酸修飾を含み、ここで、該Fc領域中の残基の付番は、Kabatの文献に見られるようなEUインデックスの付番である。
【0245】
特定の実施態様において、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、FcγRIIに対する低下した結合を示し、該Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438、又は439のいずれか1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)にアミノ酸修飾を含み、ここで、該Fc領域中の残基の付番は、Kabatの文献に見られるようなEUインデックスの付番である。
【0246】
具体的な実施態様において、Fc領域を含む本明細書に記載の抗体は、FcγRIIIに対する低下した結合を示し、該Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435、又は437のいずれか1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つ)にアミノ酸修飾を含み、ここで、該Fc領域中の残基の付番は、Kabatの文献に見られるようなEUインデックスの付番である。
【0247】
ある態様において、Fc領域を含むタンパク質、例えば、本明細書に記載の抗体の血清半減期を、FcRnに対するFc領域の結合親和性を増大させることによって増大させる。
【0248】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、ELISAにより測定したとき、約50nM以下のEC
50(半最大有効濃度)値で、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する。
【0249】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、CHO-WT-KIT細胞(野生型ヒトKITを組換え発現するように改変されたCHO細胞)を用いるFACsにより測定したとき、約150pM以下のEC
50値で、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する。
【0250】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、約600pM以下のIC
50(50%阻害濃度)値で、KITリン酸化を遮断することができる。
【0251】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも0.5μg/mLの平均力価でCHO細胞に組換え発現される。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1.0μg/mLの平均力価でCHO細胞に組換え発現される。
【0252】
具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、非免疫原性であるVHドメイン及びVLドメインを含み、例えば、該VHドメイン及びVLドメインは、T細胞エピトープを含有しない。
【0253】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KITの細胞外リガンド結合部位、例えば、KITのSCF結合部位に結合しない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)は、KITに対するリガンド結合を阻害せず、例えば、KITに対するKITリガンド(例えば、SCF)結合を阻害しない。
【0254】
具体的な態様において、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)は、阻害抗体、すなわち、KIT活性、すなわち、1以上のKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)抗体である。具体的な実施態様において、KIT活性の部分阻害は、例えば、約25%〜約65%又は75%の阻害をもたらす。具体的な実施態様において、KIT活性の部分阻害は、例えば、約35%〜約85%又は95%の阻害をもたらす。KIT活性の非限定的な例としては、KIT二量体化、KITリン酸化(例えば、チロシンリン酸化)、KITの下流のシグナル伝達(例えば、Stat、AKT、MAPK、もしくはRasシグナル伝達)、遺伝子転写(例えば、c-Myc)の誘導もしくは増強、細胞増殖の誘導もしくは増強、又は細胞生存が挙げられる。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITリン酸化(例えば、リガンド誘導性リン酸化)を阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KIT細胞質ドメインにおけるKITチロシンリン酸化を阻害する。別の特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、細胞増殖を阻害する。また別の特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、細胞生存を阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、アポトーシスを誘導する。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、細胞分化、例えば、KIT、例えば、ヒトKITを発現している細胞における細胞分化を誘導する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KIT活性を阻害するが、KIT二量体化を阻害しない。別の特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KIT活性を阻害するが、KITに対するリガンド結合を阻害せず、例えば、KITに対するKITリガンド(例えば、SCF)結合を阻害しないが、KIT二量体化を阻害する。
【0255】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、当技術分野で周知の細胞ベースのリン酸化アッセイ、例えば、本明細書に記載の細胞ベースのリン酸化アッセイにより測定したとき、KIT活性、例えば、KIT細胞質ドメインのリガンド誘導性チロシンリン酸化を、約25%〜約65%又は75%阻害する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、当技術分野で周知の細胞ベースのリン酸化アッセイ、例えば、本明細書に記載の細胞ベースのリン酸化アッセイにより測定したとき、KIT活性、例えば、KIT細胞質ドメインのリガンド誘導性チロシンリン酸化を、約35%〜約85%又は95%阻害する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲートは、当技術分野で周知の細胞ベースのリン酸化アッセイ、例えば、本明細書に記載の細胞ベースのリン酸化アッセイにより測定したとき、約600pM未満、又は約500pM未満、又は約250pM未満の50%阻害濃度(IC
50)で、KIT活性、例えば、KIT細胞質ドメインのリガンド誘導性チロシンリン酸化を阻害する。具体的な実施態様において、該IC
50は、約550pM又は200pM未満である。具体的な実施態様において、該IC
50は、約50pM〜約225pMの範囲又は100pM〜約600pMの範囲である。具体的な実施態様において、該IC
50は、約50pM〜約550pM、又は約50pM〜約600pM、又は約150pM〜約550pMの範囲である。
【0256】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲートは、(i)ヒトKITのD4領域を含むKITポリペプチドに免疫特異的に結合し、(ii)KITリン酸化(例えば、チロシンリン酸化)を阻害し、及び(iii)KITに対するKITリガンド(例えば、SCF)結合に影響を及ぼさない。また別の具体的な実施態様において、そのような抗体は、KIT二量体化を阻害しない。また別の具体的な実施態様において、そのような抗体は、少なくとも0.5μg/mL、例えば、少なくとも1.0μg/mLの平均力価でCHO細胞によって組換え発現され得る。さらなる具体的な実施態様において、そのような抗体は、非免疫原性であるVHドメイン及びVLドメインを含み、例えば、該VHドメイン及びVLドメインは、T細胞エピトープを含有しない。
【0257】
他の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲートは、単量体形態のKIT(例えば、ヒトKIT)に免疫特異的に結合する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、単量体形態のKIT(例えば、ヒトKIT)に免疫特異的に結合しない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲートは、二量体形態のKIT(例えば、ヒトKIT)に免疫特異的に結合する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲートは、単量体形態のKITに結合せず、二量体形態のKIT又は多量体形態のKIT特異的に結合する。ある実施態様において、抗体は、KIT二量体よりもKIT単量体に対する高い親和性を有する。ある実施態様において、抗体は、KIT多量体よりもKIT単量体に対する高い親和性を有する。
【0258】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体(もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲート)は、KITのネイティブなアイソフォーム又はネイティブな変異体(すなわち、動物、好ましくは、ヒトから単離することができる、動物(例えば、サル、マウス、ヤギ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ラット、ヒト、カエル、又は鳥類)のKITの天然のアイソフォーム又は変異体)に特異的に結合する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒトKIT又はその断片に免疫特異的に結合する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体(もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲート)は、ヒトKIT又はその断片に特異的に結合し、非ヒトKIT(例えば、サル、マウス、ヤギ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ラット、もしくは鳥類)又はその断片には特異的に結合しない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体(もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲート)は、ヒトKIT又はその断片に特異的に結合し、マウスKITには特異的に結合しない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、ヒトKIT又はその断片(例えば、ヒトKITのD4領域)及びイヌ科(イヌ)及び非ヒト霊長類(例えば、サル)KITに特異的に結合する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、ヒトKIT又はその断片(例えば、ヒトKITのD4領域)及びイヌ科(イヌ)KITに特異的に結合する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、ヒトKIT又はその断片(例えば、ヒトKITのD4領域)及び非ヒト霊長類(例えば、サル)KITに特異的に結合する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、ヒトKIT又はその断片(例えば、ヒトKITのD4領域)及びイヌ科(イヌ)及び非ヒト霊長類(例えば、サル)KITに特異的に結合するが、マウスKIT又はその断片(例えば、マウスKITのD4領域)には特異的に結合しない。
【0259】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、突然変異、例えば、癌(例えば、GIST)と関連する体細胞突然変異、例えば、位置502及び503のAla及びTyr残基が重複しているヒトKITのエキソン9中の突然変異を含むヒトKITの細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、野生型ヒトKITの細胞外ドメイン並びに突然変異、例えば、癌(例えば、GIST)と関連する体細胞突然変異、例えば、位置502及び503のAla及びTyr残基が重複しているヒトKITのエキソン9中の突然変異を含むヒトKITの細胞外ドメインに結合する(例えば、KIT突然変異を記載している、Marciaらの文献(2000) Am. J. Pathol. 156(3):791-795;及びDebiec-Rychterらの文献(2004) European Journal of Cancer. 40:689-695を参照されたく、これらはどちらも、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。
【0260】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、グリコシル化されているヒトKITの細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、ヒトKITの細胞外ドメインの2つの異なるグリコシル化形態に結合する。例えば、異なるグリコシル化パターンを示す、異なる分子量を有するヒトKITの2つの形態が、免疫ブロッティングによって観察されている。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、異なるグリコシル化パターンを有する、例えば、一方の形態がもう一方よりも多くグリコシル化されている、ヒトKITのこれらの形態の両方に特異的に結合することができる。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、グリコシル化されていないヒトKITの細胞外ドメインに結合する。
【0261】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、国際特許出願WO 2008/153926号に記載されているKITエピトープ、例えば、アミノ酸配列
【化17】
から本質的になるエピトープに免疫特異的に結合しない。
【0262】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は:SR-1抗体(米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号; 国際特許出願公開WO 2007/127317号を参照); Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, DSM, Mascheroder Weg 1 b, D-38124 Braumschweig, Germanyに寄託されているハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2007、DSM ACC 2008、又はDSM ACC 2009から得られる抗KIT抗体(米国特許第5,545,533号;国際特許出願公開WO 92/021766号を参照);ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2247(又はA3C6E2; Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, DSM, Mascheroder Weg 1 b, D-38124 Braumschweig, Germanyにおける、寄託番号DSM ACC 2247)によって産生される抗体(米国特許第5,808,002号を参照);並びにK27、K44、K45、K49、K57、K69、及びK94と表記される抗KIT抗体(例えば、Blechmanらの文献、Stem Cells, 1993, 11:12-21; Blechmanらの文献、Cell, 1995, 80:103-113; Levらの文献、Mol. Cell. Biol., 1993, 13:2224-2234;及び欧州特許出願公開EP0548867 A2号を参照)からなる群から選択される抗体ではない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、そのような群から選択される抗体のCDRを含まない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、そのような群から選択される抗体の1以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)のCDR(例えば、3つのVL CDR及び/又は3つのVH CDR)を含まない。別の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、例えば、競合結合アッセイ(例えば、ELISA)により測定したとき、これらの抗体のうちの1つによって競合的に阻止されない(例えば、用量依存的な形で競合的に阻止されない)。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、2010年12月22日に出願された米国仮出願第61/426,387号に記載されている抗体Ab1又はAb21ではない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は:2010年12月22日に出願された米国仮出願第61/426,387号に記載されているAb1、Ab2、Ab3、Ab4、Ab5、Ab6、Ab7、Ab8、Ab9、Ab10、Ab11、Ab12、Ab13、Ab14、Ab15、Ab16、Ab17、Ab18、Ab19、Ab20、及びAb21、並びに2011年3月25日に出願されたPCT国際特許出願PCT/US2011/29980号に記載されているAb24〜Ab192からなる群から選択される抗体ではない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は:2010年12月22日に出願された米国仮出願第61/426,387号に記載されているAb1、Ab2、Ab3、Ab4、Ab5、Ab6、Ab7、Ab8、Ab9、Ab10、Ab11、Ab12、Ab13、Ab14、Ab15、Ab16、Ab17、Ab18、Ab19、Ab20、及びAb21、並びに2011年3月25日に出願されたPCT国際特許出願PCT/US2011/29980号に記載されているAb24〜Ab192からなる群から選択される抗体のCDR、又は1以上のCDR(例えば、3つのVL CDR及び/もしくは3つのVH CDR)を含まない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、2010年12月22日に出願された米国仮出願第61/426,387号又は2011年3月25日に出願されたPCT国際特許出願PCT/US2011/29980号に記載されている抗体(例えば、抗体Ab1〜Ab21及びAb24〜Ab192)から選択される抗体のCDR、又は1以上のCDR(例えば、3つのVL CDR及び/もしくは3つのVH CDR)、VL鎖領域、或いはVH鎖領域を含まない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、2010年12月22日に出願された米国仮出願第61/426,387号に記載されている、抗体Ab1もしくはAb21、又は抗体Ab1もしくはAb21のCDR(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDR)を含む抗体ではない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、2012年1月25日に出願されたPCT国際特許出願PCT/US2012/022471号に記載されている抗体37M又は37Cではない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、配列番号32を含むVLドメイン又は配列番号31を含むVHドメインを含まない。
【0263】
特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、米国特許出願公開US 2008/0287309号に記載されている抗体、例えば、抗体36C1、84H7、63C10、又は65A12の1以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ)のCDR(例えば、VL CDR1、VL CDR2、VL CDR3、VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3)を含まない。
【0264】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、例えば、米国特許第5,919,911号又は米国特許第5,489,516号に記載されている、American Type Culture Collection(ATCC)受託番号HB10716を有するハイブリドーマ(BA7.3C.9)によって産生される抗体のヒト又はヒト化型ではない。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、例えば、米国特許第5,919,911号又は米国特許第5,489,516号に記載されている、American Type Culture Collection(ATCC)受託番号HB10716を有するハイブリドーマ(BA7.3C.9)によって産生される抗体のCDR(例えば、VL CDR1、VL CDR2、VL CDR3、VH CDR1、VH CDR2、及び/又はVH CDR3)を含まない。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、例えば、米国特許第5,919,911号又は米国特許第5,489,516号又は米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に記載されているSR-1抗体のCDRを含まない(例えば、¶[0032]又は¶[0023]を参照されたい)。さらなる実施態様において、本明細書に記載の抗体は、例えば、米国特許第5,919,911号又は米国特許第5,489,516号に記載されている、American Type Culture Collection(ATCC)受託番号HB10716を有するハイブリドーマ(BA7.3C.9)によって産生された抗体の抗体ではない。
【0265】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に記載されているSR-1抗体のヒト化抗体ではない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に言及されている配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10:からなる群から選択される1以上のアミノ酸配列を含まない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に言及されている配列番号2及び4又は配列番号2及び6のアミノ酸配列を含まない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に言及されている配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10:からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である1以上のアミノ酸配列を含まない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1に記載されている1以上のCDR、例えば、配列番号8のアミノ酸44〜58
【化18】
配列番号8のアミノ酸74〜80
【化19】
配列番号8のアミノ酸111〜121
【化20】
配列番号10のアミノ酸50〜54
【化21】
配列番号10のアミノ酸69〜85
【化22】
及び/又は配列番号10のアミノ酸118〜125
【化23】
を含まず、ここで、配列番号8及び10は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に言及されているものである(例えば、¶[0032]又は¶[0023]を参照されたい)。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に記載されている1以上のCDR、例えば、配列番号2のアミノ酸43〜58(VL CDR1)、配列番号2のアミノ酸74〜80(VL CDR2)、配列番号2のアミノ酸113〜121(VL CDR3)、配列番号4のアミノ酸50〜54(VH CDR1)、配列番号4のアミノ酸69〜85(VH CDR2)、及び/又は配列番号4のアミノ酸118〜125(VH CDR3)を含まず、ここで、配列番号2及び4は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に言及されているものである。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許出願公開US 2007/0253951 A1号に記載されている抗体SR-1の抗体ではない。
【0266】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許第6,989,248号又は第米国特許第7,449,309号に記載されている抗S100、ACK2、及びACK4抗体:からなる群から選択される抗体ではない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、そのような群から選択される抗体のヒト又はヒト化型ではない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、米国特許第6,989,248号又は米国特許第7,449,309号に記載されている抗S100、ACK2、及びACK4抗体:からなる群から選択される抗体の1以上のCDR(例えば、3つのVL CDR及び/又は3つのVH CDR)を含む抗体ではない。
【0267】
ある態様において、競合結合アッセイを用いて、抗体の標的エピトープの同定を助けるか、又は2つの抗体が、標識抗原もしくは標識抗体のどちらかを用いる、全ての数の異なるフォーマットで構成され得る、競合ELISAアッセイなどの競合結合アッセイで、同一の又は立体的に重複するエピトープを認識する場合、ある抗体が、別の抗体、例えば、参照抗体と同じエピトープもしくは重複するエピトープに本質的に結合する抗体によって、例えば、用量依存的な形で、競合的に阻止されるかどうかを決定することができる。数多くのタイプの競合的結合アッセイが公知であり、例えば:固相直接又は間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliらの文献(1983) Methods in Enzymology 9:242を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirklandらの文献(1986) J. Immunol. 137:3614を参照);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow及びLaneの文献(1988)、抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Pressを参照); I-125標識を用いる固相直接標識RIA(Morelらの文献(1988) Mol. Immunol. 25(1):7を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheungらの文献(1990) Virology 176:546);及び直接標識RIA(Moldenhauerらの文献(1990) Scand J. Immunol. 32:77)がある。通常、そのようなアッセイは、このような非標識被験免疫グロブリン及び標識参照免疫グロブリンのどちらかを担持する固体表面又はセルに結合した精製抗原(例えば、KIT、例えば、KITの細胞外ドメイン又はKITのD4領域)の使用を伴う。競合阻害は、被験免疫グロブリンの存在下で固体表面又はセルに結合した標識の量を決定することによって測定することができる。通常、該被験免疫グロブリンは過剰に存在する。ある態様において、競合抗体が過剰に存在する場合、該抗体は、共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、又はそれを上回って阻害する。このアッセイの一般形において、抗原を96ウェルプレートに固定する。その後、標識抗体が抗原に結合するのを阻止する非標識抗体の能力を、放射性標識又は酵素標識を用いて測定する。さらなる詳細については、例えば、Wagenerらの文献、J. Immunol., 1983, 130:2308-2315; Wagenerらの文献、J. Immunol. Methods, 1984, 68:269-274; Kurokiらの文献、Cancer Res., 1990, 50:4872-4879; Kurokiらの文献、Immunol. Invest., 1992, 21:523-538; Kurokiらの文献、Hybridoma, 1992, 11:391-407、及び抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies: A Laboratory Manual), Ed Harlow及びDavid Lane編(Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold Springs Harbor, N.Y., 1999), pp. 386-389を参照されたい。
【0268】
ある態様において、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITポリペプチド)のD4領域に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、そのVL鎖領域(例えば、配列番号7〜10のいずれか1つ)もしくはVH鎖領域(例えば、配列番号2〜6のいずれか1つ)によるか、又はその3つのVL CDRもしくはその3つのVH CDRによって説明することができる。例えば、引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Raderらの文献、1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 8910-8915を参照されたく、この文献は、相補的軽鎖又は重鎖を、それぞれ、ヒト軽鎖又は重鎖ライブラリーから同定し、もとの抗体の親和性と同じくらい高い又はそれよりも高い親和性を有するヒト化抗体変異体を生じさせることによるマウス抗αvβ3抗体のヒト化を記載している。引用により完全に本明細書中に組み込まれる、Clacksonらの文献、1991, Nature, 352:624-628も参照されたく、この文献は、特異的VL(又はVH)ドメインを使用し、相補的可変ドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって、特異的抗原に結合する抗体を産生する方法を記載している。このスクリーニングから、特異的VHドメインの14の新しいパートナー及び特異的VLドメインの13の新しいパートナーが得られ、これらは、ELISAにより判定したとき、強力なバインダーであった。
【0269】
したがって、ある態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITポリペプチド)のD4領域に免疫特異的に結合する抗体であって、配列番号7又は8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体である。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、ヒトKITポリペプチド)のD4領域に免疫特異的に結合する抗体であって、配列番号4又は5のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む抗体である。
【0270】
ある態様において、本明細書に記載の抗体のCDRは、Chothia及びLeskの文献(1987, J. Mol. Biol., 196:901-917)の方法に従って決定され、これは、本明細書において「Chothia CDR」と呼ばれる(例えば、米国特許第7,709,226号を参照されたい)。VH鎖領域及びVL鎖領域中のアミノ酸残基を付番するKabat付番体系を用いると、抗体重鎖分子内のChothia CDRは、通常、アミノ酸位置26〜32(「CDR1」)、アミノ酸位置53〜55(「CDR2」)、及びアミノ酸位置96〜101(「CDR3」)に存在する。VH鎖領域及びVL鎖領域中のアミノ酸残基を付番するKabat付番体系を用いると、抗体軽鎖分子内のChothia CDRは、通常、アミノ酸位置26〜33(CDR1)、アミノ酸位置50〜52(CDR2)、及びアミノ酸位置91〜96(CDR3)に存在する。
【0271】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のVH及び/又はVL領域に沿ったCDRの位置は、KIT(例えば、ヒトKITのD4領域)に対する免疫特異的結合が維持される(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持される)限り、1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸位置だけ異なり得る。例えば、一実施態様において、本明細書に記載の抗体のCDRを規定する位置は、KIT(例えば、D4領域)に対する免疫特異的結合が維持される(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持される)限り、CDRのN末端及び/又はC末端境界を移動させることにより、
図3A〜3Iに示されるCDR位置と比べて、1、2、3、又は4アミノ酸だけ異なり得る。
【0272】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、抗体軽鎖及び重鎖、例えば、離れた軽鎖及び重鎖を含む抗体である。軽鎖に関して、具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、カッパ軽鎖である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、ラムダ軽鎖である。また別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖である。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域(例えば、配列番号15)を含むKITポリペプチド)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、軽鎖を含み、ここで、VL鎖領域のアミノ酸配列は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列(例えば、配列番号7、8、9、又は10)を含み、該軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト軽鎖定常領域配列の非限定的な例は、当技術分野で記載されており、例えば、米国特許第5,693,780号及びKabatらの文献(1991)、免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい。
【0273】
重鎖に関して、具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖であることができる。別の具体的な実施態様において、記載されている抗体の重鎖は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖を含むことができる。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域(例えば、配列番号15)を含むKITポリペプチドを含むKITポリペプチド)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、重鎖を含み、ここで、VH鎖領域のアミノ酸配列は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列(例えば、配列番号2〜6のいずれか)を含むことができ、該重鎖の定常領域は、ヒトガンマ(γ)重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト重鎖定常領域配列の非限定的な例は、当技術分野で記載されており、例えば、米国特許第5,693,780号及びKabatらの文献(1991)、免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい。
【0274】
具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列を含むVL鎖領域及びVH鎖領域を含み、ここで、定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、もしくはIgY免疫グロブリン分子、又はヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、もしくはIgY免疫グロブリン分子の定常領域のアミノ酸配列を含む。別の具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列を含むVL鎖領域及びVH鎖領域を含み、定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、もしくはIgY免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)の定常領域のアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、定常領域は、ヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、もしくはIgY免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)の定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0275】
また別の具体的な実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列(例えば、配列番号2〜6のいずれか1つ及び/又は配列番号7〜10のいずれか1つ)を含むVL鎖領域及びVH鎖領域を含み、ここで、定常領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG4の定常領域のアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列を含むVL鎖領域及びVH鎖領域を含み、ここで、定常領域は、ヒトIgG1の定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0276】
具体的な実施態様において、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT、例えば、配列番号15)のD4領域に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、ヒトフレームワーク領域であるか又はヒトフレームワーク領域に由来するフレームワーク領域(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメインのフレームワーク領域)を含む。ヒトフレームワーク領域の非限定的な例は、当技術分野で記載されており、例えば、Kabatらの文献(1991)、免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を参照されたい。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域であるか又は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域に由来するフレームワーク領域(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメインのフレームワーク領域)を含む。
【0277】
ある例において、本明細書に記載の抗体は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類、例えば、類人猿、例えば、旧世界類人猿)フレームワーク領域であることも、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域に由来することもないフレームワーク領域(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメインのフレームワーク領域)を含む。
【0278】
ある例において、本明細書に記載のこれらの抗体のいずれかに関して、VL鎖領域は、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、例えば、旧世界類人猿)フレームワーク領域を含むことも、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、例えば、旧世界類人猿)フレームワーク領域に由来することもない。ある他の実施態様において、VH鎖領域は、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、例えば、旧世界類人猿)フレームワーク領域を含むことも、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、例えば、旧世界類人猿)フレームワーク領域に由来することもない。
【0279】
非ヒト霊長類フレームワーク領域の非限定的な例としては、旧世界類人猿、例えば、チンパンジー(Pan troglodytes)、ボノボ(Pan paniscus)、又はニシゴリラ(Gorilla gorilla);チンパンジー;旧世界ザル、例えば、マカク属の旧世界ザル;及びカニクイザルのマカカ・シノモルガス(Macaca cynomolgus)に由来するものが挙げられる。非ヒト霊長類フレームワーク配列の非限定的な例は、米国特許出願公開US 2005/0208625号に記載されている。
【0280】
ある態様において、また本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する抗体であって、例えば、VL鎖領域又はVH鎖領域、例えば、CDR又はFR中に1以上のアミノ酸残基置換を含む、抗体である。具体的な実施態様において、アミノ酸残基置換は、CDR内に1つもない。具体的な実施態様において、アミノ酸置換は全て、FR中にある(例えば、表5A〜6B参照)。ある実施態様において、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0281】
本明細書で使用されるように、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基と置換されているアミノ酸置換である。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0282】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)か、又は1以上のグリコシル化部位でのグリコシル化を消失させる1以上のグリコシル化部位での突然変異もしくは置換を含む抗体を作製することができる。グリコシル化を改変して、例えば、標的抗原(例えば、ヒトKIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に対する抗体の親和性を増大させることができる。そのような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1以上のグリコシル化部位を改変することによって達成することができる。例えば、1以上の可変領域(例えば、VL及び/もしくはVH CDR又はVL及び/もしくはVH FR)グリコシル化部位の消失をもたらす1以上のアミノ酸置換を行い、それにより、その部位でのグリコシル化を消失させることができる。そのような非グリコシル化は、抗原(例えば、ヒトKIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に対する抗体の親和性を増大させることができる。そのような手法は、米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0283】
グリコシル化は、N結合型(又はアスパラギン結合型)グリコシル化又はO結合型グリコシル化によって生じ得る。N結合型グリコシル化は、ポリペプチド中のアスパラギンアミノ酸の側鎖NH
2基での炭水化物修飾を伴う。O結合型グリコシル化は、セリン、トレオニン、又はヒドロキシリジンアミノ酸の側鎖上のヒドロキシル基での炭水化物修飾を伴う。
【0284】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のVH領域(例えば、配列番号2、3、4、5、もしくは6)又はVL領域(例えば、配列番号7、8、9、もしくは10)内のアスパラギン(N)残基を、セリン(S)又は別のアミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、トレオニン、チロシン、システイン)と置換する。他の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のVH CDR(例えば、それぞれ、配列番号16〜18の配列を含む、VH CDR1、VH CDR2、及び/もしくはVH CDR3)、並びに/又はVL CDR(例えば、それぞれ、配列番号19〜21の配列を含む、VL CDR1、VL CDR2、及び/もしくはVL CDR3)内のアスパラギン(N)残基を、セリン(S)又は別のアミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、トレオニン、チロシン、システイン)と置換する。他の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体のVH FR(例えば、表5A、5C、及び6Bに示されるVH FR1、VH FR2、VH FR3及び/もしくはVH FR4)並びに/又はVL FR(例えば、表5B、5D、及び6Aに示されるVL FR1、VL FR2、VL FR3、及び/もしくはVL FR4)内のアスパラギン(N)残基を、セリン(S)又は別のアミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、トレオニン、チロシン、システイン)と置換する。
【0285】
ある実施態様において、非グリコシル化抗体を、必要なグリコシル化装置を欠く細菌細胞で産生することができる。改変されたグリコシル化装置を有する細胞は、当技術分野で記載されており、該細胞を、本明細書に記載の組換え抗体を発現するための宿主細胞として用いて、それにより、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生することができる。例えば、Shields, R.L.らの文献(2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umanaらの文献(1999) Nat. Biotech. 17:176-1、及び欧州特許: EP 1,176,195号; PCT公開WO 03/035835号; WO 99/54342号を参照されたい。
【0286】
ある実施態様において、1以上の修飾を本明細書に記載の抗体のFc領域に対して行い、通常、該抗体1以上の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗体依存性細胞傷害性を変化させることができる。これらの修飾は、例えば、国際特許出願公開WO 2008/153926 A2号に記載されている。
【0287】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体の重鎖の定常領域及び/又は軽領域の定常領域内のアスパラギン(N)残基を、セリン(S)又は別のアミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、トレオニン、チロシン、システイン)と置換する。
【0288】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体の重鎖及び/又は軽領域内のアスパラギン(N)残基を、セリン(S)又は別のアミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、トレオニン、チロシン、システイン)と置換する。
【0289】
本明細書に提供されるのは、KIT抗原に免疫特異的に結合し、KIT活性を調節することができる抗体である。ある実施態様において、本明細書に提供される抗体は、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチドに免疫特異的に結合し、KIT活性を阻害する。KIT活性は、当技術分野で公知又は記載のKITの任意の活性、例えば、KIT受容体二量体化、KIT受容体リン酸化(チロシンリン酸化)、KIT受容体の下流のシグナル伝達(例えば、AKT、MAPK/ERK、Ras、Stat1、Stat3、もしくはStat5シグナル伝達)、KITリガンド(例えば、SCF)誘導性転写調節(例えば、c-MycのSCF誘導性転写活性化)、細胞増殖の誘導もしくは増強、又は細胞生存に関連し得る。KIT活性又はKIT機能は、本明細書で互換的に使用される。ある態様において、KIT活性は、KIT受容体に対するKITリガンド(例えば、SCF)結合によって誘導される。特定の態様において、KIT活性は、例えば、二量体化及び構成的に活性のあるKITシグナル伝達をもたらし得る機能獲得型突然変異によって誘導又は増強され得る(例えば、Molらの文献、J. Biol. Chem., 2003, 278:31461-31464; Hirotaらの文献、J. Pathology, 2001, 193:505-510を参照されたい)。そのような機能獲得により、KIT受容体二量体化及びKITシグナル伝達が、KIT受容体に対するKITリガンド(例えば、SCF)結合の非存在下で起こることが可能になり得る。ある実施態様において、KIT活性又はシグナル伝達の増大は、KIT受容体の高発現(又は過剰発現)によって、KIT受容体に対するKITリガンド(例えば、SCF)結合の非存在下で起こり得る。細胞内でのKITの高発現又は過剰発現とは、通常のKIT発現もしくはKIT活性を有することが知られている参照細胞の発現レベルよりも、又は通常のKIT発現もしくはKIT活性を有することが知られている細胞もしくは試料の集団におけるKITの平均発現レベルよりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%大きい発現レベルを指す。KITの発現レベルは、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、ウェスタンブロッティング又は免疫組織化学)によって評価することができる。特定の実施態様において、通常のKIT活性よりも高いKIT活性は、細胞形質転換、新生物形成、及び腫瘍形成をもたらすことができる。特定の実施態様において、通常のKIT活性よりも高いKIT活性は、他のKIT関連障害又は疾患をもたらすことができる。
【0290】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体に対するKITリガンド(例えば、SCF)結合を遮断又は阻害しない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体に対するKITリガンド(例えば、SCF)結合をごくわずか(例えば、約2%又は3%未満)しか阻害しない又は低下させない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体からのKITリガンド(例えば、SCF)の解離を誘導又は増強しない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体からのKITリガンド(例えば、SCF)の解離をごくわずか(例えば、約2%又は3%未満)しか誘導又は増強しない。
【0291】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体二量体化を遮断又は阻害しない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体二量体化をごくわずか(例えば、約2%もしくは3%未満又は標準誤差もしくは偏差以内)しか阻害しない又は低下させない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体二量体解離を誘導又は増強しない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体二量体の解離をごくわずか(例えば、約2%もしくは3%未満又は標準誤差もしくは偏差以内)しか誘導又は増強しない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体二量体に特異的に結合することができ、KIT受容体二量体化を遮断又は阻害しない。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT受容体単量体に特異的に結合することができ、KIT受容体二量体化を遮断又は阻害しない。
【0292】
ある態様において、KIT活性の阻害剤として、本明細書に記載の抗体は、KITの二量体化を遮断又は阻害する(例えば、部分的に阻害する)ことができる。通常、KIT受容体二量体化は、KITリガンドがKITに結合するときに誘導される。したがって、具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、免疫沈降アッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのKIT受容体の二量体化と比べて、KIT受容体の二量体化を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%遮断又は阻害する(例えば、部分的に阻害する)。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、KIT受容体の二量体化を約25%〜75%部分的に阻害する。本明細書に記載の抗体によるKIT受容体の二量体化の遮断又は阻害(例えば、部分阻害)は、KITリガンド刺激の存在下で評価することができる。例えば、KITを発現している細胞を、本明細書に記載の抗KIT抗体の存在下又は非存在下で、KITリガンドと接触させ、KIT受容体二量体化のレベルを決定する。ある実施態様において、抗KIT抗体の非存在下でのKITリガンド誘導性KIT受容体二量体化は、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、免疫沈降アッセイ)によって評価したとき、抗KIT抗体の存在下でのKIT受容体二量体化よりも少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍多い。KITの細胞質ドメイン中の1以上の残基のチロシンリン酸化は、KIT受容体二量体化の指標となり得る。
【0293】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の及び/又は当業者に公知の方法によって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのKIT活性と比べて、KIT活性を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害する(例えば、部分的に阻害する)ことができる。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の及び/又は当業者に公知の方法によって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのKIT活性と比べて、KIT活性を少なくとも約25%〜約65%阻害する(例えば、部分的に阻害する)ことができる。KIT活性の非限定的な例としては、KIT受容体リン酸化、KIT受容体シグナル伝達、KITリガンド(例えば、SCF)媒介性細胞増殖、KITリガンド(例えば、SCF)媒介性細胞生存、及びKIT標的遺伝子(例えば、c-Myc)の転写活性化を挙げることができる。
【0294】
KIT活性の阻害剤として、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITのリン酸化、具体的には、KITの細胞質ドメイン中の1以上の残基のチロシンリン酸化を遮断する(例えば、部分的に遮断する)又は阻害する(例えば、部分的に阻害する)ことができる。通常、KIT受容体の二量体化及びリン酸化は、KITリガンドがKITに結合するときに誘導される。しかしながら、ある態様において、KIT受容体の二量体化及び/又はリン酸化は、KIT受容体に対するKITリガンド結合とは独立に起こり得る。例えば、KIT受容体の二量体化及び/又はリン酸化は、KITの機能獲得型突然変異又は過剰発現が原因で起こり得る。
【0295】
例えば、リガンド刺激によってリン酸化され得る、マウスKITの細胞質ドメイン中のチロシン残基の非限定的な例としては、544、546、552、567、569、577、608、645、671、674、702、719、728、745、772、821、844、853、868、878、898、及び934が挙げられる(Uedaらの文献、Blood, 2002, 99:3342-3349を参照されたい)。ヒトKITの細胞質ドメイン中の対応するチロシン残基はすぐに決定することができる。例えば、リガンド刺激によってリン酸化され得る、ヒトKIT(例えば、GenBankアクセッション番号P10721)の細胞質ドメイン中のチロシン残基の非限定的な例としては、残基568、570、703、721、730、747、823、900、及び936が挙げられる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、マウスKITのチロシン残基719における受容体リン酸化を阻害することができる。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、ヒトKITのチロシン残基703又は721における受容体リン酸化を阻害することができる。
【0296】
したがって、具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、KITの細胞質ドメインにおけるチロシンリン酸化を、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%遮断又は阻害する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITの細胞質ドメインにおけるチロシンリン酸化を、少なくとも約25%、任意に約65%又は75%まで遮断又は阻害する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、少なくとも約25%〜約80%遮断又は阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の方法(例えば、下の第6節に記載されている、野生型KITを発現しているCHO細胞を用いるリン酸化阻害アッセイ)又は当業者に公知の方法によって評価したとき、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、約600pM未満、又は約550pM未満、又は約500pM未満、又は約400pM未満、又は約300pM未満のIC
50で遮断又は阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、約600pM未満のIC
50で遮断又は阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、約550pM未満のIC
50で遮断又は阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、約100pM〜約500pM、約25pM〜約550pM、又は約40pM〜約600pM、又は約50pM〜約350pMの範囲のIC
50で遮断又は阻害する。例えば、チロシンリン酸化の阻害についてのIC
50は、KITを組換え発現している細胞、例えば、CHO細胞由来の溶解物を、例えば、下の第6節に記載されている、チロシンリン酸化を検出するELISAでアッセイすることによって決定することができる。ある実施態様において、KITを組換え発現している細胞、例えば、CHO細胞は、選別され、例えば、リン酸化阻害アッセイで使用する前に、KITを高発現している細胞について選択するために選別される。いくつかの実施態様において、該細胞は、リン酸化阻害アッセイで使用する前に選別されない。
【0297】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%低下させる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化を、少なくとも約25%又は35%、任意に約75%まで低下させる。
【0298】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、KITの細胞質ドメイン中の1以上のチロシン残基のリン酸化を、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%遮断又は阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体によるKITの細胞質ドメインの1以上のチロシン残基のリン酸化の遮断又は阻害(例えば、部分阻害)をKITリガンド刺激によって評価することができる。例えば、KITを発現している細胞を本明細書に記載の抗KIT抗体の存在下又は非存在下でKITリガンドと接触させ、KITの細胞質ドメイン中の1以上のチロシン残基のリン酸化のレベルを決定することができる。ある実施態様において、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、免疫ブロッティングアッセイ)によって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、抗KIT抗体の非存在下でのKITの細胞質ドメインの1以上のチロシン残基のKITリガンド誘導性リン酸化は、抗KIT抗体の存在下でのKITの細胞質ドメインの1以上のチロシン残基のKITリガンド誘導性リン酸化よりも少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍多い。
【0299】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での内在化と比べて、KIT受容体内在化を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での内在化と比べて、KIT受容体内在化を、少なくとも約25%又は35%、任意に約75%まで誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での内在化と比べて、KIT受容体内在化を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍誘導又は増強する。細胞表面受容体の定量又は可視化のための技術は当技術分野で周知であり、種々の蛍光及び放射性技術を含む。例えば、ある方法は、細胞を放射性標識された抗受容体抗体とともにインキュベートすることを含む。或いは、受容体の天然リガンドを蛍光分子又は放射性標識にコンジュゲートし、細胞とともにインキュベートすることができる。さらなる受容体内在化アッセイは当技術分野で周知であり、例えば、Jimenezらの文献、Biochemical Pharmacology, 1999, 57:1125-1131; Bernhagenらの文献、Nature Medicine, 2007, 13:587-596;及びConwayらの文献、J. Cell Physiol., 2001, 189:341-55に記載されている。
【0300】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、パルスチェイスアッセイ)によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での代謝回転と比べて、KIT受容体代謝回転を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、パルスチェイスアッセイ)によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での代謝回転と比べて、KIT受容体代謝回転を、少なくとも約25%又は35%、任意に約75%まで誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、パルスチェイスアッセイ)によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での代謝回転と比べて、KIT受容体代謝回転を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍誘導又は増強する。受容体代謝回転を決定するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、KITを発現している細胞を、
35S-EXPRESSタンパク質標識ミックス(NEG772, NEN Life Science Products)を用いてパルス標識し、洗浄し、非標識培地で一定期間チェイスすることができ、その後、標識細胞由来のタンパク質溶解物を、抗KIT抗体を用いて免疫沈降し、SDS-PAGEで分離し、可視化する(例えば、PhosphoImagerスクリーン(Molecular Dynamics)に対して露光し、Typhoon8600スキャナー(Amersham)を用いてスキャンし、ImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics)を用いて解析する)(例えば、Chanらの文献、Development, 2004, 131:5551-5560を参照されたい)。
【0301】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、パルスチェイスアッセイ)によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での分解と比べて、KIT受容体分解を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、パルスチェイスアッセイ)によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での分解と比べて、KIT受容体分解を、少なくとも約25%又は35%、任意に約75%まで誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、パルスチェイスアッセイ)によって評価したとき、無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)の存在下での分解と比べて、KIT受容体分解を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍誘導又は増強する。細胞表面受容体のユビキチン化及び/又は分解(例えば、分解の動力学又は速度)を定量又はモニタリングするための技術は当技術分野で周知であり、種々の蛍光及び放射性技術を含む(例えば、国際特許出願公開WO 2008/153926 A2号を参照されたい)。例えば、パルスチェイス実験又は
125I-SCFなどの放射性標識リガンドを用いる実験を実施して、KITの分解を定量的に測定することができる。
【0302】
さらに、KIT受容体リン酸化の下流のシグナル伝達事象は、KIT活性の指標としての役割を果たすことができる。例えば、その受容体KITに対するKITリガンド(例えば、SCF)結合は、例えば、Srcファミリーキナーゼ、ホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ、及びRasマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)のメンバーを含む、いくつかの異なるシグナル伝達経路を刺激する(Munugalavadlaらの文献、Mol. Cell. Biol., 2005, 25:6747-6759を参照されたい)。KITの細胞質ドメイン中のリン酸化チロシンは、SH2ドメイン含有タンパク質の結合部位を提供することができ、このSH2ドメイン含有タンパク質には、p21Rasマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路のタンパク質、PI 3-キナーゼのp85サブユニット、ホスホリパーゼC-ガンマ
1、Grb2アダプタータンパク質、Srcファミリーキナーゼ(SFK)、Cbl、CRKL、p62Dok-1、SHP1、及びSHP2が含まれるが、これらに限定されない(Uedaらの文献、Blood, 2002, 99:3342-3349を参照されたい)。
【0303】
したがって、ある態様において、KIT活性の阻害剤として作用する本明細書に記載の抗KIT抗体は、Srcファミリーキナーゼ、PI 3-キナーゼ、又はRas-MAPKのメンバーのシグナル伝達を阻害することができる。特定の実施態様において、KIT活性の阻害剤として作用する本明細書に記載の抗KIT抗体は、KITの細胞質ドメインに対する、1以上のSH2ドメイン含有タンパク質、例えば、p21Ras-MAPK経路のタンパク質、PI 3-キナーゼのp85サブユニット、ホスホリパーゼC-ガンマ1、Grb2アダプタータンパク質、SFKのメンバー、Cbl、CRKL、p62Dok-1、SHP1、及びSHP2の結合を阻害する(又は相互作用を阻害する)ことができる。ある実施態様において、KIT活性の阻害剤として作用する本明細書に記載の抗KIT抗体は、KITによる1以上のSH2ドメイン含有タンパク質、例えば、p21Ras-MAPK経路のタンパク質、PI 3-キナーゼのp85サブユニット、ホスホリパーゼC-ガンマ1、Grb2アダプタータンパク質、SFKのメンバー、Cbl、CRKL、p62Dok-1、SHP1、及びSHP2の活性化を阻害することができる。
【0304】
特定の実施態様において、KIT活性の阻害剤として作用する本明細書に記載の抗KIT抗体は、MAPKのリン酸化、AKTのリン酸化、又はStat1、Stat3、もしくはStat5のリン酸化などの下流シグナル伝達を阻害することができる。したがって、ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、ウェスタンブロット、又は第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、MAPKのリン酸化(例えば、MAPKのKITリガンド(例えば、SCF)誘導性リン酸化)を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害し又は低下させることができる。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、ウェスタンブロット、又は第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、AKTのリン酸化(例えば、AKTのKITリガンド(例えば、SCF)誘導性リン酸化)を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害し又は低下させることができる。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、ウェスタンブロット、又は第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、Stat3のリン酸化(例えば、Stat3のKITリガンド(例えば、SCF)誘導性リン酸化)を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害し又は低下させることができる。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、ウェスタンブロット、又は第6節に記載されているELISAアッセイ、又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、KITリガンド刺激の存在下、抗体なし又は無関係な抗体(例えば、KITに免疫特異的に結合しない抗体)ありでのリン酸化と比べて、Stat1又はStat5のリン酸化(例えば、KITリガンド(例えば、SCF)誘導性リン酸化)を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害し又は低下させることができる。
【0305】
ある態様において、KIT活性又は活性の阻害剤として作用することができる本明細書に記載の抗KIT抗体は、KITを発現する細胞(例えば、癌細胞、例えば、TF-1細胞)、並びにKITシグナル伝達に応答する細胞(例えば、KITリガンド刺激及びKITシグナル伝達に応答して増殖する細胞)の細胞増殖を阻害することができる。細胞増殖アッセイは当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込み(例えば、Hoshinoらの文献、1986, Int. J. Cancer 38, 369; Campanaらの文献、1988, J. Immunol. Meth. 107:79を参照)もしくは(3H)チミジンの取込み(例えば、Blechmanらの文献、Cell, 1995, 80:103-113; Chen, J.の文献、1996, Oncogene 13:1395-403; Jeoung, J.の文献、1995, J. Biol. Chem. 270:18367 73を参照)を測定することによるか、様々な時間間隔(例えば、12時間もしくは24時間間隔)での直接的な細胞カウントによるか、又は既知の遺伝子、例えば、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)の転写、翻訳、もしくは活性の変化を検出することによってアッセイすることができる。そのようなタンパク質及びmRNA及び活性のレベルは、当技術分野で周知の任意の方法によって決定することができる。例えば、タンパク質は、市販の抗体を含む抗体を用いるELISA、ウェスタンブロッティング、又は免疫沈降などの既知の免疫診断法によって定量することができる。mRNAは、当技術分野で周知かつルーチンである方法を用いて、例えば、ノーザン解析、RNアーゼ保護、又は逆転写と関連したポリメラーゼ連鎖反応を用いて定量することができる。
【0306】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、BrdU取込みアッセイ)によって評価したとき、細胞増殖を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、BrdU取込みアッセイ)によって評価したとき、細胞増殖を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍阻害する。
【0307】
ある態様において、KIT活性の阻害剤として作用することができる本明細書に記載の抗KIT抗体は、KITを発現する細胞、並びにKITシグナル伝達に応答する細胞(例えば、KITリガンド刺激及びKITシグナル伝達に応答して増殖する細胞)の生存を低下させ又は阻害することができる。細胞生存アッセイは当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、細胞生存率は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞生死マーカーを用いて評価することができる。具体的な実施態様において、細胞ATPのレベルを測定して、細胞生存率を決定する。具体的な実施態様において、細胞生存率は、細胞内ATPレベルを測定する当技術分野で標準的なアッセイ、例えば、CellTiter-Gloアッセイキット(Promega)を用いて、3日及び7日の期間で測定される。細胞ATPの低下は細胞傷害効果を示す。別の具体的な実施態様において、細胞生存率は、ニュートラルレッド取込みアッセイで測定することができる。他の実施態様において、形態変化の目視観察には、肥大、粒状度、ギザギザの縁を有する細胞、薄膜状の外観、円形化、ウェル表面からの剥離、又は他の変化が含まれ得る。こうした変化には、観察された細胞傷害性の程度に従って、T(100%毒性)、PVH(部分的毒性-非常に強い-80%)、PH(部分的毒性-強い-60%)、P(部分的毒性-40%)、Ps(部分的毒性-わずか-20%)、又は0(毒性なし-0%)という呼称が与えられる。50%細胞阻害(細胞傷害)濃度(IC
50)は、これらのデータの回帰分析によって決定される。
【0308】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、トリパンブルー排出アッセイ)によって評価したとき、細胞(例えば、癌細胞)生存を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害する(例えば、部分的に阻害する)。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、トリパンブルーアッセイ)によって評価したとき、細胞(例えば、癌細胞)生存を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍阻害する。
【0309】
ある態様において、KIT活性の阻害剤として作用することができる本明細書に記載の抗KIT抗体は、KITを発現する細胞(例えば、癌細胞、例えば、MO7E細胞)、並びにKITシグナル伝達に応答する細胞(例えば、KITリガンド刺激及びKITシグナル伝達に応答して増殖する細胞)のアポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)を誘導することができる。アポトーシスは当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、フローサイトメトリーを用いて、アポトーシスを経ている細胞で、アポトーシス媒介酵素の活性化カスパーゼ3を検出することができるか、又はウェスタンブロッティングを用いて、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の切断を検出することができる(例えば、Smolichらの文献、Blood, 2001, 97:1413-1421を参照されたい)。PARPの切断は、アポトーシスの指標である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、活性化カスパーゼ3を検出するためのフローサイトメトリー)によって評価したとき、アポトーシスを、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%誘導又は増強する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、活性化カスパーゼ3を検出するためのフローサイトメトリー)によって評価したとき、アポトーシスを、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍誘導又は増強する。
【0310】
ある態様において、KIT活性の阻害剤として作用することができる本明細書に記載の抗KIT抗体は、当技術分野で一般に知られている方法、例えば、軟寒天アッセイによって測定したとき、KITを発現する細胞(例えば、外因性KITを発現するH526細胞又はCHO細胞)、並びにKITシグナル伝達に応答する細胞(例えば、KITリガンド刺激及びKITシグナル伝達に応答して増殖する細胞)による足場非依存性細胞成長(例えば、コロニー形成)を阻害し又は減少させることができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、軟寒天アッセイ)によって評価したとき、足場非依存性細胞成長を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害し又は減少させる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、軟寒天アッセイ)によって評価したとき、足場非依存性細胞成長を、少なくとも約25%又は35%、任意に約75%まで阻害し又は減少させる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、軟寒天アッセイ)によって評価したとき、足場非依存性細胞成長を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍阻害し又は減少させる。
【0311】
KIT活性に関する本明細書に記載のアッセイで使用するのに適切な細胞及び細胞株は、容易に入手可能である(例えば、ATCC)か、又は当技術分野で公知の方法を用いて容易に同定することができる。例えば、KITを内因性に発現し、又はKITシグナル伝達もしくは活性を保有する細胞及び/又は細胞株は、当業者に公知である。ある実施態様において、本明細書に記載のアッセイで使用するのに適切な細胞又は細胞株は、内因性に又は組換えによってKITを発現することができる。特定の実施態様において、細胞増殖アッセイで使用するための細胞又は細胞株は、内因性に又は組換えによってKITを発現し、KITリガンド(例えば、SCF)刺激に応答して、増殖するか又は増殖を増大させることができる。細胞生存率アッセイで使用するための細胞又は細胞株は、内因性に又は組換えによってKITを発現し、KITリガンド(例えば、SCF)刺激に応答して、細胞生存率の変化をもたらすことができる。アポトーシスアッセイで使用するための細胞又は細胞株は、内因性に又は組換えによってKITを発現し、KITリガンド(例えば、SCF)刺激に応答して、アポトーシスの変化をもたらすことができる。
【0312】
本明細書に記載の方法及びアッセイで使用することができる細胞の非限定的な例としては、初代細胞、癌細胞、形質転換細胞、幹細胞、肥満細胞、始原生殖細胞、卵母細胞、精母細胞、胚性幹細胞、造血細胞、赤白血病細胞(例えば、F36P及びTF-1細胞株)、ヒト骨髄性白血病細胞株、例えば、MO7E細胞;消化管間質腫瘍細胞株、例えば、ST-882、GIST-T1、GIST48、GIST48B、GIST430、及びGIST882;神経芽腫細胞株、例えば、SK-N-SH、SK-SY5Y、H-EP1、SK-N-BE(2)、SK-N-BE(ZkM17)、SK-N-BE(2)C、LA-N-1、又はLA-N-1-5s;ユーイング肉腫細胞株、例えば、TC71、TC32、RD-ES、5838、A4573、EWS-925、NCI-EWS-94、及びNCI-EWS-95;並びに小細胞肺癌細胞株、例えば、H526、ECC12、TMK1、MKN7、GCIY、及びHGC27が挙げられる。
【0313】
或いは、KIT、例えば、ヒトKITを発現する細胞及び細胞株は、組換えによってルーチンに作製することができる。KITを組換え発現するように改変することができる細胞の非限定的な例としては、COS細胞、HEK 293細胞、CHO細胞、線維芽細胞(例えば、ヒト線維芽細胞)、例えば、NIH3T3細胞、及びMEFSが挙げられる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法で使用するための細胞は、CHO細胞、例えば、CHO GS System(商標)(Lonza)由来のCHO細胞である。特定の実施態様において、これらの改変細胞は、全長ヒトKIT(例えば、配列番号1)を外因性に発現する。
【0314】
ある態様において、KIT活性の阻害剤として作用することができる本明細書に記載の抗KIT抗体は、マウスモデル研究において、腫瘍成長を阻害するか、又は腫瘍退縮を誘導することができる。例えば、腫瘍細胞株をヌードマウスに導入することができ、該マウスに本明細書に記載の抗KIT抗体を1回以上投与することができ、注射された腫瘍細胞の腫瘍進行を数週間及び/又は数カ月にわたってモニタリングすることができる。場合によっては、ヌードマウスへの抗KIT抗体の投与は、腫瘍細胞株の導入前に行うことができる。任意の適切な腫瘍細胞株(例えば、KITを発現する腫瘍細胞株)を本明細書に記載のマウス異種移植モデルで使用することができる。これらの異種移植マウスモデルで使用するための腫瘍細胞株の非限定的な例としては、巨核芽球性白血病細胞株、例えば、MO7e;消化管間質腫瘍細胞株、例えば、ST-882、GIST-T1、GIST430、GIST48、GIST48B、及びGIST882;ヒト赤白血病細胞株、例えば、HEL及びTF-1;ヒト前骨髄球性白血病細胞株、HL60;神経芽腫細胞株、例えば、SK-N-SH、SK-SY5Y、H-EP1、SK-N-BE(2)、SK-N-BE(ZkM17)、SK-N-BE(2)C、LA-N-1、又はLA-N-1-5s;ユーイング肉腫細胞株、例えば、TC71、TC32、RD-ES、5838、A4573、EWS-925、NCI-EWS-94、及びNCI-EWS-95;並びに小細胞肺癌細胞株、例えば、H526、DMS153、DMS79、ECC12、TMK1、MKN7、GCIY、及びHGC27が挙げられる。具体的な実施態様において、異種移植マウスモデルで使用するための腫瘍細胞株は、GIST882、GIST430、GIST48、GIST48B、HEL、HL60、H526、DMS153、又はDMS79細胞株である。ある実施態様において、異種移植腫瘍モデルで使用するための好適な細胞株は、細胞内でKITを組換え発現させることによって作製することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、マウスモデルにおいて、腫瘍成長を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%阻害するか、又は腫瘍退縮を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%誘導する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、マウスモデルにおいて、腫瘍成長を、少なくとも約25%もしくは35%、任意に約75%まで阻害し、又は腫瘍退縮を、少なくとも約25%もしくは35%、任意に約75%まで誘導する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、マウスモデルにおいて、腫瘍成長を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍阻害し、又は腫瘍退縮を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍誘導する。腫瘍成長阻害又は腫瘍退縮の決定は、例えば、触診可能な腫瘍の物理的測定又は他の目視検出方法によって、一定期間にわたって、腫瘍サイズをモニタリングすることによって評価することができる。例えば、腫瘍細胞株を、可視化物質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はルシフェラーゼを組換え発現するように作製することができ、その後、GFPの生体内可視化を顕微鏡観察によって実施することができ、ルシフェラーゼの生体内可視化を、ルシフェラーゼ基質を異種移植マウスに投与し、ルシフェラーゼ基質をプロセッシングするルシフェラーゼ酵素による発光を検出することによって実施することができる。GFP又はルシフェラーゼの検出の程度又はレベルは、異種移植マウスにおける腫瘍のサイズと相関する。
【0315】
ある態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT抗原に特異的に結合し、腫瘍異種移植モデルにおいて、動物の生存を増大させることができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、腫瘍異種移植モデルにおいて、マウスの生存を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%増大させる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、腫瘍異種移植モデルにおいて、マウスの生存を、少なくとも約25%又は35%、任意に約75%まで増大させる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KITに特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法によって評価したとき、腫瘍異種移植モデルにおいて、マウスの生存を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍増大させる。生存は、生存マウスの数の生存曲線を腫瘍細胞株注射後の時間(例えば、日又は週)に対してプロットすることによって決定することができる。
【0316】
本明細書に提供されるのは、特定の親和性で、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域に免疫特異的に結合する抗体である。
【0317】
エピトープ(例えば、KITエピトープ)に対する本明細書に記載の抗体の「親和性」は、当技術分野で十分に理解されている用語であり、エピトープに対する抗体の結合の度合い、又は強さを指す。親和性は、当技術分野で公知のいくつかの方法で測定及び/又は表現することができ、該方法としては、限定されないが、平衡解離定数(K
D又はK
d)、見掛けの平衡解離定数(K
D'又はK
d')、及びIC
50(競合アッセイで50%阻害を達成するのに必要とされる量)が挙げられる。本明細書に記載される目的のために、親和性は、エピトープに結合する所与の抗体集団の平均親和性であることが理解される。1mL当たりのミリグラム(mg) Ig又はmg/mLの単位で本明細書に記載されるK
D'の値は、血清1mL当たりのmg Igを示すが、血漿を使用してもよい。抗体親和性を本明細書に記載の治療法の投与又は本明細書に記載の治療法の選択の根拠として使用する場合、抗体親和性を治療前及び/又は治療中に測定することができ、得られた値は、ヒト患者が適切な治療候補であるかどうかを評価する際に、臨床医によって使用されることができる。
【0318】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、KIT抗原、好ましくは、ヒトKIT抗原、特に、ヒトKITのD4/D5領域に対する高い結合親和性を有する抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)(例えば、250nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、200pM、100pM、又は50pM未満のK
Dを有する抗体)である。
【0319】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4/D5領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載のアッセイ又は当業者に公知のアッセイ(例えば、Biacore(商標)アッセイ)(Biacore(商標) International AB, Uppsala, Sweden)を用いて評価したとき、500,000pM(500nM)未満、100,000pM(100nM)未満、50,000pM(50nM)未満、10,000pM(10nM)未満、3,000pM(3nM)未満、2,500pM(2.5nM)未満、2,000pM未満、1,500pM未満、1,000pM未満、750pM未満、500pM未満、250pM未満、200pM未満、150pM未満、100pM未満、75pM未満の解離定数(K
D)を有する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4/D5領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、Biacore(商標)アッセイ、KinExA 3000装置を用いるアッセイ)を用いて評価したとき、25〜100,000pM、25〜75,000pM、25〜50,000pM、25〜40,000pM、25〜30,000pM、25〜20,000pM、25〜10,000pM、25〜1,000pM、25〜500pM、25〜250pM、25〜100pM、又は25〜50pMの範囲のK
Dを有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、Biacore(商標)アッセイ、KinExA 3000装置を用いるアッセイ)を用いて評価したとき、約100pM〜約250nM、又はその間の任意の値のK
Dを有する。
【0320】
具体的な実施態様において、抗KIT抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載のアッセイ又は当業者に公知のアッセイ(例えば、本明細書中、第6節に記載されている固相ELISA)を用いて評価したとき、抗原に対する3000pM(3nM)未満、2500pM(2.5nM)未満、2000pM未満、1500pM未満、1000pM未満、750pM未満、500pM未満、250pM未満、200pM未満、150pM未満、100pM未満、75pM未満の50%結合時濃度を有する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、本明細書中、第6節に記載されている固相ELISA)を用いて評価したとき、抗原に対する25〜500,000pM(500nM)、25〜250,000pM(250nM)、25〜100,000pM(100nM)、25〜75,000pM(75nM)、25〜50,000pM(50nM)、25〜40,000pM(40nM)、25〜30,000pM(30nM)、25〜20,000pM(20nM)、25〜10,000pM(10nM)、25〜1,000pM(1nM)、25〜500pM、25〜250pM、25〜100pM、又は25〜50pMの範囲の50%結合時濃度を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、本明細書中、第6節に記載されている固相ELISA)を用いて評価したとき、抗原に対する、約1nM〜約25nM、又はその間の任意の値の50%結合時濃度を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、本明細書中、第6節に記載されている固相ELISA)を用いて評価したとき、抗原に対する、約50pM〜約500pM、又はその間の任意の値の50%結合時濃度を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、本明細書中、第6節に記載されている固相ELISA)を用いて評価したとき、約0.5nM、0.25nM、0.1nM、1nM、1.5nM、2nM、2.5nM、3nM、3.5nM、4nM、4.5nM、5nM、5.5nM、6nM、6.5nM、7nM、8nM、9nM、10nM、11nM、12nM、13nM、14nM、15nM、16nM、17nM、18nM、19nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、90nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、350nM、400nM、もしくは500nM、又はそれ未満の50%結合時濃度を有する。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、ELISA、KinExA 3000装置を用いるアッセイ、又はBiacore(商標)アッセイ)を用いて評価したとき、約100pM〜約10nMの50%結合時濃度を有する。
【0321】
その標的抗原に対する抗体の親和性を決定するための方法は容易に利用可能であり、当技術分野で記載されている。例えば、その標的抗原に対する抗体の親和性及び結合特性は、当技術分野で公知の種々のインビトロアッセイ法(生化学もしくは免疫学ベースのアッセイ)、例えば、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)もしくは放射免疫アッセイ(RIA))、又は動力学(例えば、Biacore(商標)解析)、並びに他の方法、例えば、間接結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、免疫沈降、ゲル電気泳動法、及びクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)によって決定することができる。これらの及びその他の方法は、検討されている1以上の成分上の標識を利用し、及び/又は限定されないが、発色、蛍光、発光、もしくは同位体標識を含む、種々の検出法を利用することができる。ある実施態様において、標識の使用は必ずしも必要ではなく、例えば、Biacore(商標)システムは、標識を使用せずに、表面プラズモン共鳴(SPR)という自然現象を利用して、データをリアルタイムで送達する。結合親和性及び動力学の詳細な説明は、抗体-免疫原相互作用に焦点を当てている、Paul, W.E.編、基礎免疫学(Fundamental Immunology)、第4版(Lippincott-Raven, Philadelphia 1999)に見出すことができる。
【0322】
ある態様において、KIT抗原、例えば、ヒトKIT、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に対する本明細書に記載の抗体の親和性は、細胞ベースのアッセイを用いて間接的に特徴付けることができる。例えば、その細胞膜表面にKITを発現している細胞を抗KIT抗体と接触させることができ、KITの下流の細胞活性を、当技術分野で公知のアッセイを用いて決定することができる。例えば、KITの細胞質ドメインのリン酸化は、細胞を抗KIT抗体と接触させた後、免疫ブロッティング(又はウェスタンブロッティング)によって決定することができる;細胞抽出物を取得し、KITの細胞質ドメイン中のリン酸化チロシンに特異的に結合するが、非リン酸化チロシンに結合しない抗体による免疫ブロッティング(例えば、細胞抽出物をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけ、ゲル上で分離したタンパク質を膜(例えば、ニトロセルロース又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)に転写する)用に処理する。
【0323】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT抗原、例えば、ヒトKIT、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に特異的に結合し、KITリガンドSCFの存在下又は非存在下で、KITの二量体化及びリン酸化を誘導又は増強する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、KITに対するKITリガンド、例えば、SCF結合を阻害し又は減少させることができる(すなわち、抗KIT抗体は、KITに対する結合を、KITリガンド、例えば、SCFと競合することができる)。そのような場合、細胞を抗KIT抗体及びKITリガンドと接触させることができ、KITリン酸化の阻害の程度を、KITに対する結合をKITリガンドと競合する抗KIT抗体の程度を示すものとして決定することができる。
【0324】
抗体としては、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、2つの重鎖分子と2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体もしくは単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、ラクダ化抗体、アフィボディ、Fab断片、F(ab')断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗抗Id抗体を含む)、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、もしくはIgY)、任意のクラス(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、もしくはIgA
2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2aもしくはIgG2b)のものであることができる。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、IgG抗体、或いはそのクラス(例えば、ヒトIgG
1もしくはIgG
4)又はサブクラスである。具体的な実施態様において、モノクローナル抗体は、単一のハイブリドーマ又は他の細胞によってによって産生される抗体であり、ここで、該抗体は、例えば、ELISA又は当技術分野で公知のもしくは本明細書に提供される実施例中の他の抗原結合もしくは競合結合アッセイにより判定したとき、ヒトKITエピトープのD4領域に免疫特異的に結合する。「モノクローナル」という用語は、任意の特定の抗体作製法に限定されない。
【0325】
特定の実施態様において、本明細書に提供される抗体は、KITポリペプチド、例えば、KITのD4領域に免疫特異的に結合するFab断片である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、モノクローナル抗体又は単離されたモノクローナル抗体である。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、組換え抗体、例えば、組換えヒト抗体、組換えヒト化抗体、又は組換えモノクローナル抗体である。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、非ヒトアミノ酸配列、例えば、非ヒトCDR又は非ヒト(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク残基を含有する。
【0326】
本明細書に提供される特定の実施態様において、組換え抗体は、組換え手段によって単離し、調製し、発現させ、又は作出することができ、これには、例えば、宿主細胞内にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、又は例えば、合成、ヒト免疫グロブリン配列をコードするDNA配列の遺伝子改変、もしくはヒト免疫グロブリンをコードする配列、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のそのような配列へのスプライシングによる作出を含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作出され、もしくは単離された抗体がある。ある実施態様において、そのような組換え抗体のアミノ酸配列は、そのように修飾されており、したがって、そのような抗体、例えば、VH及び/又はVL領域のアミノ酸配列は、生物のインビボの抗体生殖系列レパートリー、例えば、マウス又はヒト生殖系列レパートリーに天然には存在しない配列である。特定の実施態様において、組換え抗体は、生物(例えば、霊長類、例えば、ヒト)に天然に存在するいくつかの配列断片を集めて、組換え抗体の合成配列にすることによって得ることができ、その場合、該合成配列は、生物(例えば、霊長類、例えば、ヒト)に天然には存在しない。
【0327】
本明細書に提供される抗体としては、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスの免疫グロブリン分子が挙げられる。具体的な実施態様において、本明細書に提供される抗体は、IgG抗体(例えば、ヒトIgG抗体)、又はそのクラス(例えば、ヒトIgG1もしくはIgG4)又はサブクラスである。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、IgG1(例えば、ヒトIgG1(アイソタイプa、z、もしくはf))又はIgG4抗体である。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、完全(whole)又は完全(entire)抗体、例えば、完全(whole)又は完全(entire)ヒト化、ヒト、又は合成ヒト抗体である。
【0328】
本明細書に提供される抗体は、抗原、例えば、KITエピトープ(例えば、ヒトKITのD4領域を含有するKITポリペプチド中のKITエピトープ)に特異的に結合する能力を保持する抗体断片を含むことができる。具体的な実施態様において、断片には、Fab断片(抗原結合ドメインを含有し、ジスルフィド結合によって架橋された軽鎖と重鎖の一部(すなわち、重鎖のVH及びCH1ドメイン)とを含む抗体断片); Fab'(Fabとヒンジ領域に至るまでのさらなる重鎖部分とを含む単一の抗原結合ドメインを含有する抗体断片); F(ab')
2(重鎖のヒンジ領域中の鎖間ジスルフィド結合によって接続された2つのFab'分子;このFab'分子は、同じ又は異なるエピトープに対するものであり得る);二重特異性Fab(その各々が異なるエピトープに対するものであり得る2つの抗原結合ドメインを有するFab分子);可変領域を含む単鎖Fab鎖、別名、sFv(10〜25個のアミノ酸の鎖によって連結されている抗体の単一の軽鎖及び重鎖の可変抗原結合決定領域);ジスルフィド結合Fv、又はdsFv(ジスルフィド結合によって連結されている抗体の単一の軽鎖及び重鎖の可変抗原結合決定領域);ラクダ化VH(VH接合部分のいくつかのアミノ酸が天然ラクダ抗体の重鎖に見られるアミノ酸である抗体の単一の重鎖の可変抗原結合決定領域);二重特異性sFv(その各々が異なるエピトープに対するものであり得る2つの抗原結合ドメインを有するsFv又はdsFv分子);ダイアボディ(第一のsFvのVHドメインが第二のsFvのVLドメインと会合し、第一のsFvのVLドメインが第二のsFvのVHドメインと会合するときに形成される二量体化sFv;ダイアボディの2つの抗原結合領域は、同じ又は異なるエピトープに対するものであり得る);並びにトリアボディ(ダイアボディと同様の様式で形成されるが、3つの抗原結合ドメインが単一の複合体中に生じる三量体化sFv;この3つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープに対するものであり得る)が含まれる。本明細書に提供される抗体は、抗体の1以上のCDR配列も含むことができる。2以上のCDR配列が存在する場合、CDR配列をスキャフォールド上で連結させることができる。ある実施態様において、抗体は、単鎖Fv(「scFv」)を含む。scFvは、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片であり、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。通常、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、該リンカーは、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成するのを可能にする。scFvの総説については、モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)、第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag, New York, pp. 269-315(1994)のPluckthunの文献を参照されたい。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、Fv分子は、そのサイズが小さいために、組織に浸透することができる。完全抗体をペプシンによって酵素的に切断して、F(ab')
2断片を生じさせることができるか、又はパパインによって酵素的に切断して、2つのFab断片を生じさせることができる。
【0329】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒト、合成ヒト、又はヒト化モノクローナル抗体である。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、改変抗体、例えば、組換え法により産生された抗体である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、1以上の非ヒト(例えば、齧歯類又はマウス)CDR及び1以上のヒトフレームワーク領域(FR)、並びに任意に、ヒト重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含むヒト化抗体である。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、1以上の霊長類(又は非ヒト霊長類)フレームワーク領域を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、非ヒト霊長類フレームワーク領域を含まない。
【0330】
本明細書に提供される抗体には、化学修飾を含む抗体、例えば、化学的に、例えば、抗体への任意のタイプの分子の共有結合によって修飾されている抗体が含まれ得る。例えば、限定するものではないが、抗KIT抗体は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、又はアミド化することができ、保護基/ブロッキング基によって誘導体化することができ、或いは細胞リガンド及び又は他のタンパク質もしくはペプチドなどをさらに含むことができる。例えば、本明細書に提供される抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合などによって化学的に修飾することができる。さらに、本明細書に記載の抗KIT抗体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有することができる。
【0331】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、大規模製造、例えば、Lonza(Basel, Switzerland)の製造基盤に好適な方法で修飾されている抗KIT抗体である。例えば、BI-HEX(登録商標)技術基盤(Boehringer Ingleheim, Germany)を用いて、本明細書に記載の抗KIT抗体を組換え哺乳動物細胞発現系での好適な大規模製造に適合させることができる。そのような適合は、抗KIT抗体の必要なドメイン、例えば、1以上のCDR又はFRをコードするポリヌクレオチド配列を、好適な発現ベクターにクローニングすることを含み得、該ベクターは、完全抗体が産生されるように、好適な定常領域をコードするポリヌクレオチド配列も含有する。該発現ベクターによって提供されるポリヌクレオチド配列は、細胞培養物の製造条件及び精製プロセスについて抗体の収率及び安定性を最大化するように最適化することができるヌクレオチド配列である。
【0332】
(5.1.1.コンジュゲート)
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、診断剤、検出剤、もしくは治療剤、又は任意の他の分子にコンジュゲートされた又は組換え融合させられた抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)、又はその抗原結合断片である。コンジュゲートされた又は組換え融合させられた抗体は、例えば、KIT関連障害又は疾患の発生、発症、進行、及び/又は重症度を、例えば、特定の療法の有効性の判定などの臨床試験手順の一部として、モニタリング又は予後判定するのに有用で有り得る。コンジュゲートされた又は組換え融合させられた抗体は、例えば、KIT関連障害(例えば、癌)を治療もしくは管理するために、又はKIT関連障害(例えば、癌)の作用を治療もしくは管理するために有用で有り得る。本明細書に記載の抗体は、抗体の1以上の生物学的特性及び/又は分子特性、例えば、安定性(例えば、血清中)、半減期、溶解度、及び抗原性に影響を及ぼし得る分子(例えば、ポリエチレングリコール)にコンジュゲートすることもできる。
【0333】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)に結合した薬剤(例えば、治療剤)を含むコンジュゲートであり、該抗体は、ヒトKITのD4領域(例えば、配列番号15)に免疫特異的に結合する。具体的な実施態様において、コンジュゲート抗体は、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に特異的に結合し、表1又は表2又は表3に示されるCDRを含む抗体を含む。具体的な実施態様において、コンジュゲート抗体は、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に特異的に結合し、それぞれ、配列番号19、20、及び21のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVL鎖領域、並びに/又はそれぞれ、配列番号16、17、及び18のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVH鎖領域を含む。具体的な実施態様において、コンジュゲート抗体は、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に特異的に結合し、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つを含む。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲート抗体は、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に特異的に結合し、表1又は表2又は表3から選択されるCDR及び表5A〜5Dから選択されるFRを含むVL及び/又はVHを含む抗体を含む。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲート抗体は、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域に特異的に結合し、配列番号12を含むVL及び/又は配列番号11を含むVHを含む抗体を含む。一実施態様において、コンジュゲートされる抗体は、例えば、約200pM以下のEC50の親和性でヒトKITのD4領域に結合する抗体である。別の実施態様において、コンジュゲートされる抗体は、KITの生物学的活性を阻害する抗体である。具体的な実施態様において、コンジュゲートは、本明細書に記載の抗体及び分子(例えば、治療的部分又は薬物部分)を含み、ここで、該抗体は、該分子に直接、又は1以上のリンカーによって連結される。ある実施態様において、抗体は、分子に共有結合的にコンジュゲートされる。特定の実施態様において、抗体は、分子に非共有結合的にコンジュゲートされる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体、例えば、薬剤にコンジュゲートされた抗体は、野生型ヒトKITに結合する。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体、例えば、薬剤にコンジュゲートされた抗体は、突然変異、例えば、癌(例えば、GIST)と関連する体細胞突然変異、例えば、位置502及び503のAla及びTyr残基が重複しているヒトKITのエキソン9中の突然変異を含むヒトKITの細胞外ドメインに結合する。
【0334】
そのような診断及び検出は、例えば、抗体を検出可能な分子又は物質にカップリングさせることによって達成することができ、該分子又は物質には、様々な酵素、例えば、限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン;蛍光物質、例えば、限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリン;発光物質、例えば、限定されないが、ルミノール;生体発光物質、例えば、限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリン;放射性物質、例えば、限定されないが、ヨウ素(
131I、
125I、
123I、及び
121I,)、炭素(
14C)、硫黄(
35S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
115In、
113In、
112In、及び
111In)、テクネチウム(
99Tc)、タリウム(
201Ti)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、パラジウム(
103Pd)、モリブデン(
99Mo)、キセノン(
133Xe)、フッ素(
18F)、
153Sm、
177Lu、
159Gd、
149Pm、
140La、
175Yb、
166Ho、
90Y、
47Sc、
186Re、
188Re、
142Pr、
105Rh、
97Ru、
68Ge、
57Co、
65Zn、
85Sr、
32P、
153Gd、
169Yb、
51Cr、
54Mn、
75Se、
113Sn、並びに
117Sn;並びに様々な陽電子放出断層撮影法を用いる陽電子放出金属、並びに非放射性常磁性金属イオンが含まれるが、これらに限定されない。
【0335】
提供されるのは、治療的部分(又は1以上の治療的部分)にコンジュゲートされた又は組換え融合させられた本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片、及びそのような抗体の使用である。該抗体は、細胞毒素、例えば、細胞増殖抑制剤もしくは細胞破壊剤、治療剤、又は放射性金属イオン、例えば、α-放射体などの、治療的部分にコンジュゲートするか又は組換え融合させることができる。細胞毒素又は細胞毒性剤には、細胞にとって有害である任意の薬剤が含まれる。治療的部分としては、オーリスタチン又はその誘導体、例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、オーリスタチンPYE、及びオーリスタチンE(AE)(例えば、米国特許第7,662,387号並びに米国特許出願第2008/0300192号及び第2008/0025989号を参照されたく、これらは各々、引用により本明細書中に組み込まれる);微小管破壊剤、例えば、メイタンシン又はその誘導体、例えば、メイタンシノイドDM1(例えば、米国特許第7,851,432号、第7,575,748号、及び第5,416,064号を参照されたく、これらは各々、引用により本明細書中に組み込まれる);プロドラッグ、例えば、CC-1065(ラケルマイシン)類似体のプロドラッグ;代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン);アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、並びにシスプラチン);マイナーグルーブ結合アルキル化剤;アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名、ダウノマイシン)及びドキソルビシン);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC));オーリスタチン分子(例えば、オーリスタチンPHE、ブリオスタチン1、及びソラスタチン10; Woykeらの文献、Antimicrob. Agents Chemother. 46:3802-8(2002)、Woykeらの文献、Antimicrob. Agents Chemother. 45:3580-4(2001)、Mohammadらの文献、Anticancer Drugs 12:735-40(2001)、Wallらの文献、Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:76-80(1999)、Mohammadらの文献、Int. J. Oncol. 15:367-72(1999)を参照されたく、これらは全て、引用により本明細書中に組み込まれる);ホルモン剤(例えば、グルココルチコイド、プロゲスチン、アンドロゲン、及びエストロゲン)、DNA修復酵素阻害剤(例えば、エトポシド又はトポテカン)、キナーゼ阻害剤(例えば、化合物ST1571、メシル酸イマチニブ(Kantarjianらの文献、Clin Cancer Res. 8(7):2167-76(2002));細胞毒性剤(例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルコルチコイド(glucorticoid)、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又はホモログ、並びに米国特許第6,245,759号、第6,399,633号、第6,383,790号、第6,335,156号、第6,271,242号、第6,242,196号、第6,218,410号、第6,218,372号、第6,057,300号、第6,034,053号、第5,985,877号、第5,958,769号、第5,925,376号、第5,922,844号、第5,911,995号、第5,872,223号、第5,863,904号、第5,840,745号、第5,728,868号、第5,648,239号、第5,587,459号に開示されている化合物、これらは各々、そのような化合物の開示に関して、引用により本明細書中に組み込まれる);ファルネシル トランスフェラーゼ阻害剤(例えば、R115777、BMS-214662、並びに例えば、米国特許:第6,458,935号、第6,451,812号、第6,440,974号、第6,436,960号、第6,432,959号、第6,420,387号、第6,414,145号、第6,410,541号、第6,410,539号、第6,403,581号、第6,399,615号、第6,387,905号、第6,372,747号、第6,369,034号、第6,362,188号、第6,342,765号、第6,342,487号、第6,300,501号、第6,268,363号、第6,265,422号、第6,248,756号、第6,239,140号、第6,232,338号、第6,228,865号、第6,228,856号、第6,225,322号、第6,218,406号、第6,211,193号、第6,187,786号、第6,169,096号、第6,159,984号、第6,143,766号、第6,133,303号、第6,127,366号、第6,124,465号、第6,124,295号、第6,103,723号、第6,093,737号、第6,090,948号、第6,080,870号、第6,077,853号、第6,071,935号、第6,066,738号、第6,063,930号、第6,054,466号、第6,051,582号、第6,051,574号、及び第6,040,305号によって開示されているもの、これらは各々、そのような阻害剤の開示に関して、引用により本明細書中に組み込まれる);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン;イリノテカン; SN-38;トポテカン; 9-アミノカンプトテシン; GG-211(GI 147211); DX-8951f; IST-622;ルビテカン;ピラゾロアクリジン; XR-5000;サイントピン; UCE6; UCE1022; TAN-1518A; TAN 1518B; KT6006; KT6528; ED-110; NB-506; ED-110; NB-506;及びレベッカマイシン);ブルガレイン; DNAマイナーグルーブ結合剤、例えば、Hoescht色素33342及びHoechst色素33258;ニチジン;ファガロニン;エピベルベリン;コラリン;β-ラパコン; BC-4-1;ビスホスホネート(例えば、アレンドロネート、シマドロント(cimadronte)、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、ネリドロネート、オルパンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネート)、HMG-CoA還元酵素阻害剤(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、スタチン、セリバスタチン、レスコール、ルピトール、ロスバスタチン、及びアトルバスタチン);アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,277,832号、第5,998,596号、第5,885,834号、第5,734,033号、及び第5,618,709号に開示されているもの、これらは各々、そのようなオリゴヌクレオチドに関して、引用により本明細書中に組み込まれる);アデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、リン酸フルダラビン及び2-クロロデオキシアデノシン);イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標));トシツモマブ(Bexxar(登録商標)))、並びにこれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、包摂化合物、及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、約200pM未満の親和性でヒトKITのD4領域に結合する抗体である。別の実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、KITの生物学的活性を阻害する抗体である。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、表1に示されるCDR(例えば、それぞれ、配列番号19、20、及び21のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びに/もしくはそれぞれ、配列番号16、17、及び18のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVH鎖領域)、又は表2に示されるCDR、又は表3に示されるCDRを含む抗体である。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、配列番号7、8、9、10、もしくは12、又は表5B及び5Dに示される配列を含むVL、並びに/又は配列番号2、3、4、5、6、もしくは11、又は表5A及び5Cに示される配列を含むVHを含む抗体である。
【0336】
特定の実施態様において、治療的部分又は薬物部分は、抗チューブリン薬、例えば、オーリスタチン又はその誘導体である。オーリスタチンの非限定的な例としては、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、オーリスタチンPYE、及びオーリスタチンE(AE)が挙げられる(例えば、米国特許第7,662,387号並びに米国特許出願公開第2008/0300192号及び第2008/0025989号を参照されたく、これらは各々、引用により本明細書中に組み込まれる)。ある実施態様において、治療的部分又は薬物部分は、微小管破壊剤、例えば、メイタンシン又はその誘導体、例えば、メイタンシノイドDM1又はDM4である(例えば、米国特許第7,851,432号、第7,575,748号、及び第5,416,064号を参照されたく、これらは各々、引用により本明細書中に組み込まれる)。ある実施態様において、治療的部分又は薬物部分は、プロドラッグ、例えば、CC-1065(ラケルマイシン)類似体のプロドラッグである(例えば、米国特許出願公開第2008/0279868号、並びにPCT国際特許出願公開WO 2009/017394号、WO 2010/062171号、及びWO 2007/089149号を参照されたく、これらは各々、引用により本明細書中に組み込まれる)。一実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、約200pM未満の親和性でヒトKITのD4領域に結合する抗体である。別の実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、KITの生物学的活性を阻害する抗体である。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)は、表1に示されるCDR(例えば、それぞれ、配列番号19、20、及び21のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びに/もしくはそれぞれ、配列番号16、17、及び18のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVH鎖領域)、又は表2に示されるCDR、又は表3に示されるCDRを含む抗体である。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)は、配列番号7、8、9、10、もしくは12、又は表5B及び5Dに示される配列を含むVL、並びに/或いは配列番号2、3、4、5、6、もしくは11、又は表5A及び5Cに示される配列を含むVHを含む抗体である。
【0337】
具体的な実施態様において、該抗体及び治療剤/薬物物質は、1以上のリンカーによってにコンジュゲートされる。別の具体的な実施態様において、該抗体及び治療剤/薬物物質は、直接コンジュゲートされる。
【0338】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体へのコンジュゲーション用の治療的部分又は薬物部分の非限定的な例としては、カリケアマイシン(例えば、LL-E33288複合体、例えば、γ-カリケアマイシン、例えば、米国特許第4,970,198号を参照)及びその誘導体(例えば、γカリケアマイシンヒドラジド誘導体)、オゾガマイシン、デュオカルマイシン及びその誘導体(例えば、CC-1065(NSC 298223)、又はデュオカルマイシンのアキラル類似体(例えば、AS-1-145もしくはセンタナマイシン))、タキサン及びその誘導体、並びにエンジイン及びその誘導体が挙げられる(例えば、PCT国際特許出願公開WO 2009/017394号、WO 2010/062171号、WO 2007/089149号、WO 2011/021146号、WO 2008/150261号、WO 2006/031653号、WO 2005/089809号、WO 2005/089807号、及びWO 2005/089808号を参照されたく、これらは各々、引用により完全に本明細書中に組み込まれる)。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、表1に示されるCDR(例えば、それぞれ、配列番号20、21、及び22のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びに/又はそれぞれ、配列番号23、24、及び25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVH鎖領域)を含む抗体である。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、配列番号7、8、9、10、もしくは12、又は表5B及び5Dに示される配列を含むVL、及び/或いは配列番号2、3、4、5、6、もしくは11、又は表5A及び5Cに示される配列を含むVHを含む抗体である。具体的な実施態様において、該抗体及び治療剤は、1以上のリンカーによってコンジュゲートされる。別の具体的な実施態様において、該抗体及び治療剤は、直接コンジュゲートされる。
【0339】
本明細書に記載の抗体へのコンジュゲーションに好適なカリケアマイシンの非限定的な例は、例えば、米国特許第4,671,958号;第5,053,394号;第5,037,651号;第5,079,233号;及び第5,108,912号号;並びにPCT国際特許出願公開WO 2011/021146号、WO 2008/150261号、WO 2006/031653号、WO 2005/089809号、WO 2005/089807号、及びWO 2005/089808号に開示されており;これらは各々、そのようなカリケアマイシンの開示について、引用により本明細書中に組み込まれる。特定の実施態様において、これらの化合物は、適当なチオールと反応して、ジスルフィドを形成し、同時に、ヒドラジドなどの官能基又はカリケアマイシンを本明細書に記載の抗体にコンジュゲートするのに有用で有り得る他の官能基を導入するメチルトリスルフィドを含有し得る。ある実施態様において、ジメチル置換基を付加することによって、カリケアマイシンコンジュゲート中に存在するジスルフィド結合を安定化すると、改善された抗体/薬物コンジュゲートが生じ得る。具体的な実施態様において、カリケアマイシン誘導体は、コンジュゲーション用の最適化された誘導体の1つとしての、N-アセチル γカリケアマイシンジメチルヒドラジド、又はNAc-γDMH(CL-184,538)である。本明細書に記載の抗体にコンジュゲートすることができるカリケアマイシンのジスルフィド類似体は、例えば、米国特許第5,606,040号及び第5,770,710号に記載されており、これらは各々、そのような化合物の開示について、引用により本明細書中に組み込まれる。ある実施態様において、部分(例えば、カリケアマイシン又はその誘導体)は、リンカーによって抗体にコンジュゲートされる。特定の実施態様において、部分(例えば、カリケアマイシン又はその誘導体)は、リンカーにおいて抗体-薬物コンジュゲートから加水分解される。一実施態様において、部分(例えば、カリケアマイシン又はその誘導体)は、約pH 3.0〜pH 4.0で、1〜24時間、20〜50℃、好ましくは、37℃の温度で、リンカーにおいて抗体コンジュゲートから加水分解される。
【0340】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体へのコンジュゲーション用の治療的部分又は薬物部分の非限定的な例としては、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)及びその誘導体、例えば、PBD二量体(例えば、SJG-136又はSG2000)、C2-不飽和PBD二量体、C2アリール置換を有するピロロベンゾジアゼピン二量体(例えば、SG2285)、加水分解によって活性化されるPBD二量体プロドラッグ(例えば、SG2285)、並びにポリピロール-PBD(例えば、SG2274)が挙げられる(例えば、PCT国際特許出願公開WO 2000/012507号、WO 2007/039752号、WO 2005/110423号、WO 2005/085251号、及びWO 2005/040170号、並びに米国特許第7,612,062号を参照されたく、これらは各々、そのような化合物の開示について、引用により本明細書中に組み込まれる)。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、表1に示されるCDR(例えば、それぞれ、配列番号19、20、及び21のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3、並びに/もしくはそれぞれ、配列番号16、17、及び18のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVH鎖領域)、又は表2に示されるCDR、又は表3に示されるCDRを含む抗体である。具体的な実施態様において、そのような治療的/薬物部分にコンジュゲートされる抗体は、配列番号7、8、9、10、もしくは12、又は表5B及び5Dに示される配列を含むVL、並びに/或いは配列番号2、3、4、5、6、もしくは11、又は表5A及び5Cに示される配列を含むVHを含む抗体である。具体的な実施態様において、該抗体及び治療剤は、1以上のリンカーによってコンジュゲートされる。
【0341】
さらに、本明細書に記載の抗体は、所与の生物学的応答を修飾する治療的部分又は薬物部分にコンジュゲートするか、又は組換え融合させることができる。治療的部分又は薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるものとみなすべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質、ペプチド、又はポリペプチドであることができる。そのようなタンパク質としては、例えば、毒素、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、コレラ毒素、もしくはジフテリア毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、γ-インターフェロン、α-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス物質、例えば、TNF-γ、TNF-γ、AIM I(国際公開WO 97/33899号を参照)、AIM II(国際公開WO 97/34911号を参照)、Fasリガンド(Takahashiらの文献、1994、J. Immunol.、6:1567-1574)、及びVEGF(国際公開WO 99/23105号を参照)、抗血管形成物質、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチン、もしくは凝固経路の構成要素(例えば、組織因子);又は生物応答修飾物質、例えば、リンホカイン(例えば、インターフェロンガンマ、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン9(「IL-9」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-15(「IL-15」)、インターロイキン-23(「IL-23」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、及び顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)など)、もしくは成長因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、又は凝固作用物質(例えば、カルシウム、ビタミンK、組織因子、例えば、限定されないが、ハーゲマン因子(第XII因子)、高分子量キニノーゲン(HMWK)、プレカリクレイン(PK)、凝固タンパク質-第II因子(プロトロンビン)、第V因子、第XIIa因子、第VIII因子、第XIIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第IX因子、第IXa因子、第X因子、リン脂質、及びフィブリン単量体)を挙げることができる。
【0342】
本明細書に提供されるのは、融合タンパク質を作製するために、異種タンパク質もしくはポリペプチド(又は好ましくは、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、もしくは約100アミノ酸のポリペプチドまでの、それらの断片)に組換え融合させられた又は化学的にコンジュゲートされた(共有結合的もしくは非共有結合的コンジュゲーション)抗体である。特に、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗体の抗原結合断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)
2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメイン、又はVL CDR)、及び異種タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを含む融合タンパク質である。一実施態様において、抗体を融合させる異種タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドは、該抗体を、特定の細胞型、例えば、KITを発現する細胞にターゲッティングするのに有用である。例えば、特定の細胞型(例えば、免疫細胞)によって発現される細胞表面受容体に免疫特異的に結合する抗体を、本明細書に記載の修飾抗体に融合させるか、又はコンジュゲートすることができる。具体的な実施態様において、異種タンパク質もしくはポリペプチド(又はそれらの断片)は、第二の標的(例えば、KIT以外の標的)に結合する(例えば、PCT国際特許出願公開WO 2009/088805号及び米国特許出願公開US 2009/0148905号を参照されたい)。
【0343】
本明細書に提供されるのは、任意の本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片、及び異種ポリペプチド(例えば、KIT以外のポリペプチド)を含むコンジュゲート又は融合タンパク質である。一実施態様において、本明細書に記載のコンジュゲート又は融合タンパク質は、本明細書に記載の抗KIT抗体及び異種ポリペプチドを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されるコンジュゲート又は融合タンパク質は、本明細書に記載の抗KIT抗体の抗原結合断片及び異種ポリペプチドを含む。別の実施態様において、本明細書に記載のコンジュゲート又は融合タンパク質は、本明細書に記載の抗KIT抗体のVHドメインのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVHドメイン、及び/又は本明細書に記載の抗KIT抗体のVLドメインのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVLドメイン、並びに異種ポリペプチドを含む。別の実施態様において、本明細書に記載のコンジュゲート又は融合タンパク質は、配列番号16、17、及び18のいずれか1つのアミノ酸配列(例えば、表1参照)、又は表2もしくは3に示されるCDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVH CDR、並びに異種ポリペプチドを含む。別の実施態様において、コンジュゲート又は融合タンパク質は、本明細書に記載の抗KIT抗体のVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有する1以上のVL CDR(例えば、表1の配列番号19、20、及び21のVL CDR、又は表2もしくは表3のVL CDR)並びに異種ポリペプチドを含む。別の実施態様において、本明細書に記載のコンジュゲート又は融合タンパク質は、本明細書に記載の抗KIT抗体の少なくとも1つのVHドメイン及び少なくとも1つのVLドメイン、並びに異種ポリペプチドを含む。別の実施態様において、本明細書に記載のコンジュゲート又は融合タンパク質は、少なくとも1つのVHドメイン、及び配列番号7、8、9、10、もしくは12、又は表5B及び5Dに示される配列を含む少なくとも1つのVLドメイン、並びに/或いは配列番号2、3、4、5、6、もしくは11、又は表5A及び5Cに示される配列を含むVHドメイン、並びに異種ポリペプチドを含む。また別の実施態様において、本明細書に記載のコンジュゲート又は融合タンパク質は、本明細書に記載の抗KIT抗体の少なくとも1つのVH CDR及び少なくとも1つのVL CDR(例えば、表1又は表2又は表3のVL CDR及びVH CDR)、並びに異種ポリペプチドを含む。
【0344】
さらに、本明細書に記載の抗体は、治療的部分、例えば、放射性金属イオン、例えば、α-放射体、例えば、
213Bi、又は限定されないが、
131In、
131LU、
131Y、
131Ho、
131Smを含む、放射性金属イオンをポリペプチドに共役させるのに有用な大環状キレート剤にコンジュゲートすることができる。ある実施態様において、該大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体に結合させることができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は、当技術分野で一般に知られており、各々引用により完全に組み込まれる、Denardoらの文献、1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90; Petersonらの文献、1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7;及びZimmermanらの文献、1999, Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載されている。
【0345】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、直接的に又は1以上のリンカー分子を介して間接的に、1以上の分子(例えば、治療的部分又は薬物部分)にコンジュゲートされる。特定の実施態様において、リンカーは、酵素切断可能なリンカー又はジスルフィドリンカーである。具体的な実施態様において、該切断可能なリンカーは、アミノペプチダーゼ、アミノエステラーゼ、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼ、又は血液凝固カスケードのプロテアーゼなどの酵素によって切断可能である。特定の実施態様において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は20個のアミノ酸残基を含む。ある実施態様において、リンカーは、1〜10個のアミノ酸残基、1〜15個のアミノ酸残基、5〜20個のアミノ酸残基、10〜25個のアミノ酸残基、10〜30個のアミノ酸残基、又は10〜50個のアミノ酸残基からなる。
【0346】
ある実施態様において、部分は、1以上のリンカーによって抗体にコンジュゲートされる。特定の実施態様において、部分は、リンカーにおいて抗体-薬物コンジュゲートから加水分解される。一実施態様において、部分は、約pH 3.0〜pH 4.0で、1〜24時間、及び20〜50℃、好ましくは、37℃の温度で、リンカーにおいて抗体コンジュゲートから加水分解される。具体的な実施態様において、リンカーは、血流中で安定であるが、ひとたびそれが標的細胞の内部に入るとコンジュゲート部分を放出する。ある実施態様において、部分は、1以上のトリアゾール含有リンカーを介して本明細書に記載の抗体にコンジュゲートされる(例えば、引用により本明細書中に組み込まれる国際特許出願公開WO 2007/018431号を参照されたい)。本明細書に記載の抗体-薬物コンジュゲートへの組込み用のリンカー及びスペーサーの非限定的な例は、PCT国際特許出願公開WO 2007/018431号、WO 2004/043493号、及びWO 2002/083180号に開示されている。
【0347】
さらに、本明細書に記載の抗体は、マーカー配列、例えば、精製を容易にするためのペプチドに融合させることができる。好ましい実施態様において、マーカーアミノ酸配列は、その多くが市販されている、ヘキサ-ヒスチジンペプチド、例えば、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN社)中に提供されているタグである。Gentzらの文献、1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されているように、例えば、ヘキサ-ヒスチジンは、融合タンパク質の好都合な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグとしては、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する血球凝集素(「HA」)タグ(Wilsonらの文献、1984, Cell 37:767)、及び「FLAG」タグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0348】
治療的部分(ポリペプチドを含む)を抗体に融合させる又はコンジュゲートする方法は周知であり、例えば、Arnonらの文献、「癌療法における薬物のイムノターゲッティングのためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、モノクローナル抗体及び癌療法(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)、Reisfeldら(編), pp. 243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstromらの文献、「薬物送達のための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」、制御薬物送達(Controlled Drug Delivery)(第2版)、Robinsonら(編), pp. 623-53(Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpeの文献、「癌療法における細胞毒性剤の抗体担体:概説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」、モノクローナル抗体84:生物学的及び臨床的応用(Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications)、Pincheraら(編), pp. 475-506(1985);「癌療法における放射性標識抗体の治療的使用の解析、結果、及び将来的展望(Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、癌の検出及び治療のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)、Baldwinら(編), pp. 303-16(Academic Press 1985)、Thorpeらの文献、1982, Immunol. Rev. 62:119-58; 米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、第5,723,125号、第5,783,181号、第5,908,626号、第5,844,095号、及び第5,112,946号; EP 307,434号; EP 367,166号; EP 394,827号; PCT公開WO 91/06570号、WO 96/04388号、WO 96/22024号、WO 97/34631号、及びWO 99/04813号; Ashkenaziらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 10535-10539, 1991; Trauneckerらの文献、Nature, 331:84-86, 1988; Zhengらの文献、J. Immunol., 154:5590-5600, 1995; Vilらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:11337-11341, 1992を参照されたく、これらは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0349】
融合タンパク質は、例えば、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エキソンシャッフリング、及び/又はコドンシャッフリング(「DNAシャッフリング」と総称される)の技術によって作製することができる。DNAシャッフリングを利用して、本明細書に記載の抗体の活性を変化させることができる(例えば、より高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体)。一般に、米国特許第5,605,793号、第5,811,238号、第5,830,721号、第5,834,252号、及び第5,837,458号; Pattenらの文献、1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33; Harayamaの文献、1998, Trends Biotechnol. 16(2):76-82; Hanssonらの文献、1999, J. Mol. Biol. 287:265-76;及びLorenzo及びBlascoの文献、1998, Biotechniques 24(2):308-313を参照されたい(これらの特許及び刊行物は各々、引用により本明細書中に組み込まれる)。抗体、又はコードされた抗体は、組換えの前に、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入、又は他の方法によるランダム突然変異生成に供することによって改変することができる。本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドは、1以上の異種分子の1以上の構成要素、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと組み換えることができる。
【0350】
本明細書に記載の抗体を第二の抗体にコンジュゲートして、引用により本明細書中に組み込まれる米国特許第4,676,980号に記載されている抗体ヘテロコンジュゲートを形成させることができる。
【0351】
KIT抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体にコンジュゲートされる又は組換え融合させられる治療的部分又は薬物は、所望の予防的又は治療的効果(複数)、例えば、腫瘍のサイズもしくは負荷の低下、癌細胞の成長もしくは増殖の低下、又は癌細胞の死の誘導を達成するように選択することができる。ある実施態様において、該抗体は、修飾された抗体である。臨床医又は他の医療従事者は、どの治療的部分又は薬物を本明細書に記載の抗体にコンジュゲートし又は組換え融合させるかを決定するときに、以下のこと:疾患の性質、疾患の重症度、及び対象の状態を考慮すべきである。
【0352】
本明細書に記載の抗体は、特に、免疫アッセイ又は標的抗原の精製に有用である固体支持体に結合させることもできる。そのような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0353】
ある態様において、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、任意にリンカーによって薬物に連結された抗体を含む細胞外薬物コンジュゲート(ECD)である(例えば、PCT国際特許出願公開WO 2011/031870号を参照されたい)。薬物は、細胞外で作用することができ、したがって、コンジュゲートの内在化は必要とされない。ECDが標的細胞に結合した後、薬物は細胞内にシグナルを送る。
【0354】
一実施態様において、ECDのリンカーは、切断不可能なリンカーである。切断不可能なリンカーの例としては、酸又は塩基感受性があるもの(例えば、ヒドラゾン含有リンカー)ではなく、還元剤又は酸化剤に感受性があるもの(例えば、ジスルフィド結合を含有するもの)ではなく、及び細胞又は循環系に見出され得る酵素に感受性があるものではない、ポリエチレングリコール鎖又はポリエチレン鎖を含有するリンカーが挙げられる。切断不可能なリンカーの具体的な例としては、SMCCリンカー(米国特許出願第20090202536号)が挙げられる。例示するために、切断可能なリンカーの例としては、非ヒンダードグルタチオン感受性ジスルフィド、エステル、カテプシン又はプラスミンなどのペプチダーゼに感受性のあるペプチド配列、pH感受性ヒドラゾンを含有するリンカー(Bioconjugate Chem., 2010, 21(1), pp 5-13を参照)及び非ヒンダードジスルフィドリンカーSPP(米国特許出願第20090202536号を参照)が挙げられる。
【0355】
ある態様において、ECDは、強心配糖体、例えば、プロスシラリジン又は糖強化プロスシラリジンである薬物又は薬剤を含む。一実施態様において、該薬剤は、糖を欠く強心配糖体から構成される。様々な実施態様において、該強心配糖体は、PCT公開WO 2010/017480号(PCT/US2009/053159号)で同定されている化合物である。
【0356】
(5.2 ポリヌクレオチド)
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KIT抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)又はその断片(例えば、可変軽鎖領域及び/もしくは可変重鎖領域)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、並びにベクター、例えば、宿主細胞(例えば、大腸菌及び哺乳動物細胞)内での組換え発現用の、そのようなポリヌクレオチドを含むベクターである。本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、並びにそのようなポリヌクレオチド配列を含むベクター、例えば、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞内でのその効率的な発現用の発現ベクターである。また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗KIT抗体を作製するためのKIT抗原(例えば、配列番号14又は15)をコードするポリヌクレオチドである。
【0357】
本明細書で使用されるように、「単離された」ポリヌクレオチド又は核酸分子は、核酸分子の天然供給源(例えば、ヒト)に存在する他の核酸分子から分離されているポリヌクレオチド又は核酸分子である。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、他の細胞物質、もしくは組換え技術によって産生される場合は、培養培地を実質的に含まないものであり得、又は化学合成される場合は、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。例えば、「実質的に含まない」という言葉は、約15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、又は0.1%未満(特に、約10%未満)の他の物質、例えば、細胞物質、培養培地、他の核酸分子、化学的前駆体、及び/又は他の化学物質を有するポリヌクレオチド又は核酸分子の調製物を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体をコードする核酸分子(複数可)は、単離又は精製されている。
【0358】
特定の態様において、本明細書に提供されるのは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合し、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む、抗体(例えば、ヒト化抗体)又はその抗原結合断片、並びにそのような抗体とKITポリペプチドに対する結合を(例えば、用量依存的な様式で)競合するか又はそのような抗体のエピトープと同じエピトープに結合する抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。
【0359】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗体の軽鎖又は重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。該ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗体のVL FR及びCDRを含む軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むことができる(例えば、表1及び5B参照)。該ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗体のVH FR及びCDRを含む重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むことができる(例えば、表1及び5A参照)。具体的な実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、配列番号7、8、9、又は10のアミノ酸配列を含むVL鎖領域をコードする。具体的な実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、配列番号2〜6のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVH鎖領域をコードする。
【0360】
特定の実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、VL鎖領域をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドは、配列番号27、28、29、又は30の核酸配列を含む。特定の実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、VH鎖領域をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドは、配列番号22、23、24、25、又は26の核酸配列を含む。特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗体をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドは、L2 VL鎖領域をコードする配列番号28の核酸配列及びH3 VH鎖領域をコードする配列番号24の核酸配列を含む。特定の実施態様において、1以上のポリヌクレオチドは、VL鎖領域をコードする配列番号28の核酸配列及びVH鎖領域をコードする配列番号24の核酸配列を含む。特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗体をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドは、L1 VL鎖領域をコードする配列番号27の核酸配列及びH4 VH鎖領域をコードする配列番号25の核酸配列を含む。特定の実施態様において、1以上のポリヌクレオチドは、VL鎖領域をコードする配列番号27の核酸配列及びVH鎖領域をコードする配列番号25の核酸配列を含む。特定の実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、VL鎖領域をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドは、配列番号27、28、29、又は30の核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%同一である核酸配列を含む。特定の実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、VH鎖領域をコードし、ここで、該ポリヌクレオチドは、配列番号22、23、24、25、又は26の核酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%同一である核酸配列を含む。
【0361】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む、例えば、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含有する、VL鎖領域を含む抗KIT抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである(例えば、表1、5A〜5B、及び6A〜6B参照)。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む、例えば、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含有する、VH鎖領域を含む抗KIT抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである(例えば、表1、5A〜5B、及び6A〜6B参照)。
【0362】
ある実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸を含む可変軽(VL)鎖領域(例えば、
図3A〜3I参照)を含む本明細書に提供される抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域、例えば、配列番号15に免疫特異的に結合する。
【0363】
ある実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む可変重(VH)鎖領域(例えば、
図3A〜3I参照)を含む本明細書に提供される抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域、例えば、配列番号15に免疫特異的に結合する。
【0364】
ある態様において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列を有する1以上のVL FR(例えば、表5B及び5D参照)を含むVL鎖領域を含む本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域、例えば、配列番号15に免疫特異的に結合する。ある態様において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列を有する1以上のVH FR(例えば、表5A及び5C参照)を含むVH鎖領域を含む本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT)のD4領域、例えば、配列番号15に免疫特異的に結合する。
【0365】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、ヒトフレームワーク領域であるフレームワーク領域(例えば、VLドメイン及びVHドメインのフレームワーク領域):を含む本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は、KITポリペプチド、例えば、ヒトKITポリペプチド、例えば、KIT(例えば、ヒトKIT、例えば、配列番号15)のD4領域に免疫特異的に結合する。
【0366】
具体的な態様において、本明細書に提供されるのは、軽鎖及び重鎖、例えば、離れた軽鎖及び重鎖を含む抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。軽鎖に関して、具体的な実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、カッパ軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、ラムダ軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。また別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、ヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖を含む本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。特定の実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域(例えば、配列番号15)を含むKITポリペプチド)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は軽鎖を含み、VL鎖領域のアミノ酸配列は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列(例えば、配列番号7、8、9、もしくは10、又は12)を含むことができ、該軽鎖の定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、該軽鎖は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。別の特定の実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域(例えば、配列番号15)を含むKITポリペプチドを含むKITポリペプチド)に免疫特異的に結合し、かつ軽鎖を含む、本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、VL鎖領域のアミノ酸配列は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列(例えば、配列番号7、8、9、もしくは10、又は12)を含むことができ、該軽鎖の定常領域は、ヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。例えば、ヒト定常領域配列は、米国特許第5,693,780号に記載されているものであることができる。
【0367】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域(例えば、配列番号15)を含むKITポリペプチドを含むKITポリペプチド)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は重鎖を含み、VH鎖領域のアミノ酸配列は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列(例えば、配列番号2、3、4、5、もしくは6、又は11)を含むことができ、重鎖の定常領域は、ヒトガンマ(γ)重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0368】
また別の具体的な実施態様において、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、KITポリペプチド(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、該抗体は、本明細書に記載の任意のアミノ酸配列を含むVL鎖領域及びVH鎖領域を含み、定常領域は、ヒトIgG1(例えば、アイソタイプa、z、もしくはf)又はヒトIgG4の定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0369】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書で指定される、抗KIT抗体、又はその抗原結合断片もしくはドメインをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであり、例えば、表1〜6B及び
図3A〜3I、例えば、抗体Hum1〜Hum20を参照されたい。
【0370】
また本明細書に提供されるのは、例えば、コドン/RNA最適化、異種シグナル配列との交換、及びmRNA不安定性エレメントの除去によって最適化される抗KIT抗体又はその断片をコードするポリヌクレオチドである。コドン変化を導入し、及び/又はmRNA中の阻害性領域を除去することによって、抗KIT抗体又はその断片(例えば、軽鎖、重鎖、VHドメイン、又はVLドメイン)をコードする組換え発現用の最適化された核酸を作製する方法は、例えば、米国特許第5,965,726号;第6,174,666号;第6,291,664号;第6,414,132号;及び第6,794,498号に記載されている最適化方法を相応に適合させることによって実施することができる。例えば、RNA内の潜在的スプライス部位及び不安定性エレメント(例えば、A/T又はA/Uリッチエレメント)を、核酸配列によってコードされるアミノ酸を改変することなく突然変異させて、組換え発現のためにRNAの安定性を増大させることができる。改変は、例えば、同一のアミノ酸に対する代替コドンを用いる遺伝暗号の縮重を利用する。いくつかの実施態様において、1以上のコドンを、保存的突然変異、例えば、もとのアミノ酸と類似した化学構造及び特性並びに/又は機能を有する類似のアミノ酸をコードするように改変することが望ましいことがある。そのような方法は、最適化されていないポリヌクレオチドによってコードされる抗KIT抗体の発現と比べて、抗KIT抗体又はその断片の発現を、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍、又はそれを超えて増大させることができる。
【0371】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体又はその断片(例えば、VLドメイン及び/もしくはVHドメイン)をコードする最適化されたポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の抗KIT抗体又はその断片(例えば、VLドメイン及び/もしくはVHドメイン)をコードする最適化されていないポリヌクレオチド配列のアンチセンス(例えば、相補的)ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体又は断片をコードする最適化されたヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシー条件下で、本明細書に記載の抗KIT抗体又はその断片をコードする最適化されていないポリヌクレオチド配列のアンチセンスポリヌクレオチドにハイブリダイズする。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体又はその断片をコードする最適化されたヌクレオチド配列は、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載の抗KIT抗体又はその断片をコードする最適化されていないヌクレオチド配列のアンチセンスポリヌクレオチドにハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション条件に関する情報は記載されており、例えば、引用により本明細書中に組み込まれる、米国特許出願公開US 2005/0048549号(例えば、段落72〜73)を参照されたい。
【0372】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗体のVL領域をコードする最適化されたポリヌクレオチド配列は、配列番号27、28、29、又は30のヌクレオチド配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一である。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体のVH領域をコードする最適化されたポリヌクレオチド配列は、配列番号22、23、24、25、又は26のヌクレオチド配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%同一である。
【0373】
該ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって取得することができ、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、該方法によって決定することができる。本明細書に記載の抗体、例えば、表1〜6B及び
図3A〜3Iに記載されている抗体、並びにこれらの抗体の修飾型をコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で周知の方法を用いて決定することができる、すなわち、特定のアミノ酸をコードすることが知られているヌクレオチドコドンは、該抗体をコードする核酸を作製するような方法でアセンブルされる。該抗体をコードするそのようなポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチド(例えば、Kutmeierらの文献、1994, BioTechniques 17:242に記載されているもの)からアセンブルすることができ、これは、簡潔に述べると、抗体をコードする配列の部分を含有する重複オリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、その後、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を含む。
【0374】
或いは、本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法(例えば、PCR及び他の分子クローニング法)を用いて、好適な供給源(例えば、ハイブリドーマ)由来の核酸から作製することができる。例えば、既知の配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅は、関心対象の抗体を産生するハイブリドーマ細胞から得られるゲノムDNAを用いて実施することができる。そのようなPCR増幅法を用いて、抗体の軽鎖及び/又は重鎖をコードする配列を含む核酸を得ることができる。そのようなPCR増幅法を用いて、抗体の可変軽鎖領域及び/又は可変重鎖領域をコードする配列を含む核酸を得ることができる。増幅された核酸を、宿主細胞での発現用の及びさらなるクローニング用のベクターにクローニングして、例えば、キメラ及びヒト化抗体を作製することができる。
【0375】
特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンは入手可能でないが、抗体分子の配列が公知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学合成するか、或いは配列の3'及び5'末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅によって、又は例えば、特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて抗体をコードするcDNAライブラリー由来のcDNAクローンを同定するクローニングによって、好適な供給源(例えば、抗体を発現している任意の組織又は細胞、例えば、本明細書に記載の抗体を発現させるために選択されたハイブリドーマ細胞から作製される抗体cDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリー、又は該細胞から単離される核酸、好ましくは、ポリA+RNA)から得ることができる。その後、PCRによって作製される増幅された核酸は、当技術分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0376】
本明細書に記載の抗KIT抗体をコードするDNAを、従来の手順を用いて(例えば、抗KIT抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離し、シークエンシングすることができる。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの供給源としての役割を果たすことができる。ひとたび単離されれば、DNAを発現ベクター中に入れることができ、これを、その後、それ以外の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO GS System(商標)(Lonza)由来のCHO細胞)、又は骨髄腫細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内での抗KIT抗体の合成を得る。
【0377】
完全抗体を作製するために、VH又はVLヌクレオチド配列、制限部位、及び該制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーを用いて、scFvクローン中でVH又はVL配列を増幅させることができる。当業者に公知のクローニング技術を用いて、PCR増幅されたVHドメインを、重鎖定常領域、例えば、ヒトガンマ4定常領域を発現するベクターにクローニングすることができ、PCR増幅されたVLドメインを、軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパ又はラムダ定常領域を発現するベクターにクローニングすることができる。ある実施態様において、VH又はVLドメインを発現させるためのベクターは、EF-1αプロモーター、分泌シグナル、可変ドメインのクローニング部位、定常ドメイン、及びネオマイシンなどの選択マーカーを含む。VH及びVLドメインは、必要な定常領域を発現する1つのベクターにクローニングすることもできる。その後、当業者に公知の技術を用いて、重鎖変換ベクター及び軽鎖変換ベクターを細胞株にコトランスフェクトし、全長抗体、例えば、IgGを発現する安定な又は一過性の細胞株を作製する。
【0378】
DNAは、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列をマウス配列の代わりに代用することによるか、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を共有結合させることによって修飾することもできる。
【0379】
また提供されるのは、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドである。具体的な実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に提供されるVH鎖領域(例えば、配列番号2、3、4、5、もしくは6)及び/又はVL鎖領域(例えば、配列番号7、8、9、もしくは10)をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズする。具体的な実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、高いストリンジェンシー又は中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に提供されるVH鎖領域(例えば、配列番号3もしくは5)及び/又はVL鎖領域(例えば、配列番号2)をコードするポリヌクレオチドに対する相補体であるポリヌクレオチドにハイブリダイズする。
【0380】
具体的な実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、VLドメインをコードする配列番号27、28、29、又は30を含むポリヌクレオチドに対する相補体であるポリヌクレオチドにハイブリダイズする。具体的な実施態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、高いストリンジェンシー又は中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、VHドメインをコードする配列番号22、23、24、25、又は26を含むポリヌクレオチドに対する相補体であるポリヌクレオチドにハイブリダイズする。
【0381】
ハイブリダイゼーション条件は当技術分野で記載されており、かつ当業者に公知である。例えば、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃での、フィルターに結合したDNAへのハイブリダイゼーション、次いで、0.2×SSC/0.1%SDS中、約50〜65℃での1回以上の洗浄を含むことができ;高ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、6×SSC中、約45℃での、フィルターに結合した核酸へのハイブリダイゼーション、次いで、0.1×SSC/0.2%SDS中、約68℃での1回以上の洗浄を含むことができる。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションは当業者に公知であり、例えば、Ausubel, F.M.ら編、1989、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、第I巻、Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., New York、6.3.1〜6.3.6及び2.10.3頁に記載されている。
【0382】
(5.3 宿主細胞及び抗体の組換え発現)
ある態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗体(又はその抗原結合断片)及び関連発現ベクターを組換え発現する宿主細胞である。本明細書に提供されるのは、宿主細胞、好ましくは、哺乳動物細胞内での組換え発現用の、抗KIT抗体又は断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)である。また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、ヒト又はヒト化抗体)の組換え発現用のそのようなベクターを含む宿主細胞である。特定の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗体を産生する方法であって、そのような抗体を宿主細胞から発現させることを含む、方法である。
【0383】
KIT抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(例えば、全長抗体、抗体の重鎖及び/もしくは軽鎖、又は本明細書に記載の単鎖抗体)の組換え発現は、該抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を含む。本明細書に記載の抗体分子、抗体の重鎖及び/もしくは軽鎖、又はそれらの断片(重鎖及び/もしくは軽鎖可変ドメインを含有することが好ましいが、必ずしもその必要はない)をコードするポリヌクレオチドが得られれば、抗体分子の産生用のベクターを、当技術分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって作製することができる。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製する方法が本明細書に記載されている。当業者に周知である方法を用いて、抗体をコードする配列並びに適当な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビトロ遺伝子組換えが含まれる。また提供されるのは、プロモーターに機能的に連結された、本明細書に記載の抗体分子、抗体の重鎖又は軽鎖、抗体の重鎖もしくは軽鎖可変ドメイン又はそれらの断片、或いは重鎖又は軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能ベクターである。そのようなベクターは、例えば、抗体分子の定常領域(例えば、国際公開WO 86/05807号及びWO 89/01036号;並びに米国特許第5,122,464号を参照)を含むことができ、抗体の可変ドメインを、重鎖全体、軽鎖全体、又は重鎖全体と軽鎖全体の両方の発現用のそのようなベクターにクローニングすることができる。
【0384】
発現ベクターを従来の技術によって細胞(例えば、宿主細胞)に導入することができ、その後、得られた細胞を従来の技術によって培養して、本明細書に記載の抗体又はその断片を産生することができる。したがって、本明細書に提供されるのは、宿主細胞内でのそのような配列の発現用のプロモーターに機能的に連結された、本明細書に記載の抗体もしくはその断片、或いはその重鎖もしくは軽鎖又はそれらの断片、或いは本明細書に記載の単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞である。ある実施態様において、二重鎖抗体の発現のために、重鎖と軽鎖の両方を個別にコードするベクターを、以下で詳述するように、免疫グロブリン分子全体の発現用の宿主細胞内で共発現させることができる。ある実施態様において、宿主細胞は、本明細書に記載の抗体の重鎖と軽鎖の両方、又はそれらの断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含有する。具体的な実施態様において、宿主細胞は、第一のベクターが、本明細書に記載の抗体の重鎖又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含み、第二のベクターが、本明細書に記載の抗体の軽鎖又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含む、2つの異なるベクターを含有する。他の実施態様において、第一の宿主細胞は、本明細書に記載の抗体の重鎖又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含む第一のベクターを含み、第二の宿主細胞は、本明細書に記載の抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第二のベクターを含む。
【0385】
種々の宿主-発現ベクター系を用いて、本明細書に記載の抗体分子を発現させることができる(例えば、米国特許第5,807,715号を参照されたい)。そのような宿主-発現系は、関心対象のコード配列を産生し、その後、精製することができる媒体であるが、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトしたときに、本明細書に記載の抗体分子をインサイチュで発現することができる細胞でもある。これらには、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌(B. subtilis));抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質された酵母(例えば、サッカロマイセス・ピキア(Saccharomyces Pichia));抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したもしくは抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系(例えば、緑藻類、例えば、緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii));又は哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現コンストラクトを保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、MDCK、HEK 293、NS0、PER.C6、VERO、CRL7O3O、HsS78Bst、HeLa、及びNIH 3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体(例えば、Hum1〜Hum20)又はその抗原結合断片の発現用の細胞は、CHO細胞、例えば、CHO GS System(商標)(Lonza)由来のCHO細胞である。具体的な実施態様において、哺乳動物発現ベクターは、pOptiVEC(商標)又はpcDNA3.3である。好ましくは、細菌細胞、例えば、大腸菌、及びより好ましくは、とりわけ、完全組換え抗体分子の発現用の真核細胞を組換え抗体分子の発現のために使用する。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併用される、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体の効果的な発現系である(Foeckingらの文献、1986, Gene 45:101;及びCockettらの文献、1990, Bio/Technology 8:2)。ある実施態様において、本明細書に記載の抗体は、CHO細胞又はNS0細胞によって産生される。具体的な実施態様において、KIT抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターによって調節される。
【0386】
細菌系において、いくつかの発現ベクターを、発現される抗体分子に対して意図される用途に応じて有利に選択することができる。例えば、大量のそのような抗体が産生されることになっている場合、抗体分子の医薬組成物の作製のために、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターとしては、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列を個別に連結して、lac Zコード領域とインフレームでベクターに挿入することができる、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの文献、1983, EMBO 12:1791); pINベクター(Inouye及びInouyeの文献、1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109; Van Heeke及びSchusterの文献、1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509);などが挙げられるが、これらに限定されない。pGEXベクターを用いて、異種ポリペプチドをグルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着及び結合と、それに続く、遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出させることができるように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むよう設計される。
【0387】
昆虫系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、異種遺伝子を発現させる。該ウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞の中で成長する。抗体コード配列を該ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
【0388】
哺乳動物宿主細胞において、いくつかのウイルスベースの発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合、関心対象の抗体コード配列を、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び三部分リーダ配列に連結することができる。その後、このキメラ遺伝子を、インビトロ又はインビボ組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域El又はE3)への挿入は、感染宿主内で生存可能であり、かつ抗体分子を発現することができる組換えウイルスを生じさせる(例えば、Logan及びShenkの文献、1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 1:355-359を参照されたい)。特異的な開始シグナルも、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。さらに、開始コドンは、挿入物全体が確実に翻訳されるように、所望のコード配列のリーディングフレームと同期していなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然と合成の両方の、種々の起源のものであることができる。発現の効率は、適当な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって増強することができる(例えば、Bittnerらの文献、1987, Methods in Enzymol. 153:51-544を参照されたい)。
【0389】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか又は遺伝子産物を望ましい特定の様式で修飾及びプロセッシングする宿主細胞株を選ぶことができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセッシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセッシング及び修飾のための特徴的かつ特定の機構を有する。適当な細胞株又は宿主系を、発現される異種タンパク質の正確な修飾及びプロセッシングを確保するように選ぶことができる。この目的のために、一次転写物の適切なプロセッシング、遺伝子産物のグリコシル化、リン酸化のための細胞装置を保有する真核宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、Hela、COS、MDCK、HEK 293、NIH 3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(免疫グロブリン鎖を内在性に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、並びにHsS78Bst細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、本明細書に記載のヒト化モノクローナル抗KIT抗体は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞で産生される。
【0390】
組換えタンパク質の長期の高収率産生のために、安定発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株を人為作製することができる。ウイルスの複製起源を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択可能マーカーによって制御されるDNAで形質転換することができる。異種DNAの導入後、人為作製された細胞を、富化培地中で1〜2日間成長させておくことができ、その後、選択培地に切り替えられる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体に安定に組み込み、成長して、フォーカスを形成するのを可能にし、このフォーカスをさらにクローニングし、細胞株へと拡大することができる。この方法を有利に用いて、抗体分子を発現する細胞株を人為作製することができる。そのような人為作製された細胞株は、抗体分子と直接的又は間接的に相互作用する組成物をスクリーニング及び評価する際に特に有用で有り得る。
【0391】
限定されないが、それぞれ、tk-、hgprt-、又はaprt-細胞で利用することができる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerらの文献、1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska及びSzybalskiの文献、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyらの文献、1980, Cell 22:8-17)を含む、いくつかの選択系を使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性を以下の遺伝子:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerらの文献、1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:357; O'Hareらの文献、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan及びBergの文献、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Wu及びWuの文献、1991, Biotherapy 3:87-95; Tolstoshevの文献、1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; Mulliganの文献、1993, Science 260:926-932;及びMorgan及びAndersonの文献、1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; Mayの文献、1993, TIB TECH 11(5):l55-2 15);並びにハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreらの文献、1984, Gene 30:147)の選択の基礎として使用することができる。組換えDNA技術の分野で一般に知られている方法をルーチンに適用して、所望の組換えクローンを選択することができ、そのような方法は、例えば、Ausubelら(編)、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley & Sons, NY(1993); Krieglerの文献、遺伝子導入及び発現、実験マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual)、Stockton Press, NY(1990);及びDracopoliら(編)、ヒト遺伝学の最新プロトコル(Current Protocols in Human Genetics)、John Wiley & Sons, NY(1994)の第12章及び第13章; Colberre-Garapinらの文献、1981, J. Mol. Biol. 150:1に記載されており、これらは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【0392】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington及びHentschelの文献、DNAクローニングにおける哺乳動物細胞内でのクローン化遺伝子の発現のための遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vector based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells)、第3巻(Academic Press, New York, 1987)を参照されたい)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物に存在する阻害剤のレベルの増大は、マーカー遺伝子のコピー数を増大させる。増幅した領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増大する(Crouseらの文献、1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
【0393】
宿主細胞に、第一のベクターが重鎖由来ポリペプチドをコードし、第二のベクターが軽鎖由来ポリペプチドをコードする、2以上の本明細書に記載の発現ベクターをコトランスフェクトすることができる。2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能マーカーを含有することができる。宿主細胞に、異なる量の2以上の発現ベクターをコトランスフェクトすることができる。例えば、宿主細胞に、以下の比: 1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:12、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、又は1:50のいずれか1つの第一の発現ベクター及び第二の発現ベクターをトランスフェクトすることができる。
【0394】
或いは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、これらを発現することができる単一のベクターを使用することができる。そのような状況では、軽鎖を重鎖の前に配置して、過剰な毒性遊離重鎖を回避すべきである(Proudfootの文献、1986, Nature 322:52;及びKohlerの文献、1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197-2199)。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含むことができる。発現ベクターは、単シストロン性又は多シストロン性であることができる。多シストロン性核酸コンストラクトは、ヌクレオチド配列当たり2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれより多くの遺伝子、又は2〜5、5〜10、もしくは10〜20遺伝子の範囲でコードすることができる。例えば、2シストロン性核酸コンストラクトは、以下の順序で、プロモーター、第一の遺伝子(例えば、本明細書に記載の抗体の重鎖)、及び第二の遺伝子(例えば、本明細書に記載の抗体の軽鎖)を含むことができる。そのような発現ベクターでは、両方の遺伝子の転写は、プロモーターによって駆動され得るが、第一の遺伝子からのmRNAの翻訳は、キャップ依存的走査機構によるものであり得、第二の遺伝子からのmRNAの翻訳は、キャップ非依存的走査機構によるもの、例えば、IRESによるものであり得る。
【0395】
本明細書に記載の抗体分子が組換え発現によって産生されれば、それを、免疫グロブリン分子の精製のための当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、プロテインAの後ろの特異的抗原に対する特異性によるもの、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度によって、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技術によって精製することができる。さらに、本明細書に記載の抗体を、本明細書に記載の又はそれ以外で精製を容易にすることが当技術分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合させることができる。
【0396】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、単離又は精製される。通常、単離された抗体は、単離された抗体と異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体である。例えば、特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体の調製物は、細胞物質及び/又は化学前駆体を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、抗体が、それが単離される又は組換え産生される細胞の細胞成分から分離されている抗体の調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まない抗体は、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%、又は0.1%未満の異種タンパク質(本明細書では、「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)及び/又は抗体の変異体、例えば、異なる翻訳後修飾形態の抗体もしくは他の異なる型の抗体(例えば、抗体断片)を有する抗体の調製物を含む。抗体が組換え産生される場合、それはまた、通常、培養培地を実質的に含まない、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%、10%、2%、1%、0.5%、又は0.1%未満に相当する。抗体が化学合成によって産生される場合、それは、通常、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない、すなわち、それは、タンパク質の合成に関与する化学前駆体又は他の化学物質から分離されている。したがって、該抗体のそのような調製物は、(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満の化学前駆体又は関心対象の抗体以外の化合物を有する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体は、単離又は精製される。
【0397】
(5.4 抗体の産生方法)
KIT抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体(例えば、ヒトもしくはヒト化抗体)(又はその抗原結合断片)は、抗体の合成のための当技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、化学合成によって又は組換え発現技術によって産生することができる。本明細書に記載の方法は、別途示されない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子解析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び修飾、核酸ハイブリダイゼーション、並びに関連分野の従来の技術を利用しており、該技術は、当業者の能力の範囲内である。これらの技術は、本明細書に引用されている参考文献に記載されており、かつ文献で十分に説明されている。例えば、Maniatisらの文献(1982)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrookらの文献(1989)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrookらの文献(2001)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley & Sons(1987年及び年次改訂版);免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)、John Wiley & Sons(1987年及び年次改訂版) Gait(編)(1984)、オリゴヌクレオチド合成:実践的アプローチ(Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach)、IRL Press; Eckstein(編)(1991)、オリゴヌクレオチド及び類似体:実践的アプローチ(Oligonucleotide and Analogues: A Practical Approach)、IRL Press; Birrenら(編)(1999)、ゲノム解析:実験マニュアル(Genome Analysis: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0398】
例えば、ヒト化抗体は、当技術分野で公知の種々の技術を用いて産生することができ、該技術には、CDR移植(欧州特許EP 239,400号;国際公開WO 91/09967号;並びに米国特許第 5,225,539号、第5,530,101号、及び第5,585,089号)、ベニアリング又はリサーフェシング(欧州特許EP 592,106号及びEP 519,596号; Padlanの文献、1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnickaらの文献、1994, Protein Engineering 7(6):805-814;及びRoguskaらの文献、1994, PNAS 91:969-973)、鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)、並びに例えば、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、WO 9317105号、Tanらの文献、J. Immunol. 169:1119 25(2002)、Caldasらの文献、Protein Eng. 13(5):353-60(2000)、Moreaらの文献、Methods 20(3):267 79(2000)、Bacaらの文献、J. Biol. Chem. 272(16):10678-84(1997)、Roguskaらの文献、Protein Eng. 9(10):895 904(1996)、Coutoらの文献、Cancer Res. 55(23 Supp):5973s-5977s(1995)、Coutoらの文献、Cancer Res. 55(8):1717-22(1995)、Sandhu JSの文献、Gene 150(2):409-10(1994)、及びPedersenらの文献、J. Mol. Biol. 235(3):959-73(1994)に開示されている技術が含まれるが、これらに限定されない。引用により本明細書中に組み込まれる米国特許公報US 2005/0042664 A1号(2005年2月24日)も参照されたい。
【0399】
具体的な態様において、ヒト化抗体は、所定の抗原に結合することができ、これは、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域及び非ヒト免疫グロブリン(例えば、マウス免疫グロブリン)のアミノ酸配列を実質的に有するCDRを含む。特定の実施態様において、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。該抗体は、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域も含むことができる。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む、免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG
1、IgG
2、IgG
3、及びIgG
4を含む、任意のアイソタイプから選択することができる。
【0400】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術、組換え技術、及びファージディスプレイ技術、又はこれらの組合せの使用を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて産生することができ、該技術には、当技術分野で公知の技術及び例えば、Harlowらの文献、抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988); Hammerlingらの文献:モノクローナル抗体及びT細胞ハイブリドーマ(Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas)、563 681(Elsevier, N.Y., 1981)に教示されている技術が含まれる。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。例えば、モノクローナル抗体を組換え技術によって産生することができ、例えば、組換えモノクローナル抗体を、哺乳動物宿主細胞などの宿主細胞によって発現させることができる。
【0401】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を産生及びスクリーニングする方法はルーチンであり、かつ当技術分野で周知である。例えば、ハイブリドーマ法において、マウス又は他の適当な宿主動物、例えば、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、ハムスター、もしくはマカクザルを免疫して、免疫に使用されるタンパク質(例えば、ヒトKITのD4領域)に特異的に結合する抗体を産生する又は産生することができるリンパ球を誘発させる。或いは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。その後、リンパ球を、好適な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Godingの文献、モノクローナル抗体:原理及び実践(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)、pp. 59-103(Academic Press, 1986))。さらに、RIMMS(複数部位反復免疫(repetitive immunization multiple sites))技術を用いて、動物を免疫することができる(引用により本明細書中に組み込まれる、Kilptrackらの文献、1997 Hybridoma 16:381-9)。
【0402】
骨髄腫細胞株の非限定的な例としては、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, CA, USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、並びにAmerican Type Culture Collection, Rockville, MD, USAから入手可能なSP-2又はX63-Ag8.653細胞が挙げられる。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozborの文献、J. Immunol., 133:3001(1984); Brodeurらの文献、モノクローナル抗体生産技術及び応用(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)、pp. 51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0403】
本明細書に記載の抗体には、特異的KIT抗原を認識し、当業者に公知の任意の技術によって作製することができる抗体断片が含まれる。例えば、本明細書に記載のFab及びF(ab')
2断片は、パパイン(Fab断片を産生するため)又はペプシン(F(ab')
2断片を産生するため)などの酵素を用いる、免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって産生することができる。Fab断片は、抗体分子の2つの同一のアームのうちの1つに相当し、重鎖のVH及びCH1ドメインと対になった完全な軽鎖を含有する。F(ab')
2断片は、ヒンジ領域中のジスルフィド結合によって連結された抗体分子の2つの抗原結合アームを含有する。
【0404】
一態様において、完全抗体を作製するために、VH又はVLヌクレオチド配列、制限部位、及び該制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーを用いて、鋳型、例えば、scFvクローンからVH又はVL配列を増幅させることができる。当業者に公知のクローニング技術を用いて、PCR増幅したVHドメインを、VH 定常領域を発現するベクターにクローニングすることができ、PCR増幅したVLドメインを、VL定常領域、例えば、ヒトカッパ又はラムダ定常領域を発現するベクターにクローニングすることができる。VH及びVLドメインを、必要な定常領域を発現する1つのベクターにクローニングすることもできる。その後、当業者に公知の技術を用いて、重鎖変換ベクター及び軽鎖変換ベクターを細胞株にコトランスフェクトし、全長抗体、例えば、IgGを発現する安定な又は一過性の細胞株を作製する。
【0405】
単一ドメイン抗体、例えば、軽鎖を欠く抗体は、当技術分野で周知の方法によって産生することができる。Riechmannらの文献、1999, J. Immunol. 231:25-38; Nuttallらの文献、2000, Curr. Pharm. Biotechnol. 1(3):253-263; Muyldermanの文献、2001, J. Biotechnol. 74(4):277302; 米国特許第6,005,079号;並びに国際公開WO 94/04678号、WO 94/25591号、及びWO 01/44301号を参照されたい。
【0406】
ある態様において、本明細書に記載の抗体、例えば、ヘテロコンジュゲート抗体、単鎖抗体、及び二重特異性抗体は、当技術分野で公知の組換え技術によって産生することができる。例えば、本明細書に記載の抗体を発現するベクターを含む哺乳動物宿主細胞を、抗体産生に好適な条件下で培養する。
【0407】
さらに、今度は、KIT抗原に免疫特異的に結合する抗体を用いて、当業者に周知の技術を用いて、抗原を「模倣する」抗イディオタイプ抗体を作製することができる。(例えば、Greenspan及びBonaの文献、1989, FASEB J. 7(5):437-444;及びNissinoffの文献、1991, J. Immunol. 147(8):2429-2438を参照されたい)。
【0408】
(5.5 医薬組成物及びキット)
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の1以上の抗体(例えば、ヒト化抗体)、もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲートを含む組成物、医薬組成物、及びキットである。特定の態様において、本明細書に記載の組成物は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボ用途のためのものであり得る。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗体)(又はその抗原結合断片)及び医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含む医薬組成物である。
【0409】
本明細書で使用されるように、「医薬として許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局に承認されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0410】
本明細書に提供される1以上の抗体(例えば、ヒト化抗体)を含有する治療製剤は、貯蔵用に、所望の純度を有する抗体を、任意の生理的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤(レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1990) Mack Publishing Co., Easton, PA;レミントン:調剤の科学及び実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)、第21版(2006) Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD)と混合することによって、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製することができる。許容し得る担体、賦形剤、又は安定剤は、利用される投薬量及び濃度でレシピエントに無害であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0411】
製剤、例えば、本明細書に記載の製剤は、治療されている特定の適応症に必要な場合、複数の活性化合物(例えば、分子、例えば、本明細書に記載の抗体(単数)又は抗体(複数))を含有することもできる。ある実施態様において、製剤は、本明細書に提供される抗体及び互いに悪影響を及ぼさない補完的活性を有する1以上の活性化合物を含む。そのような分子は、意図される目的に対して有効である量の組合せで好適に存在する。例えば、本明細書に記載の抗体は、1以上の他の治療剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(imatinib mesylated)もしくはスニチニブ、又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えば、ボリノスタット)と組み合わせることができる。そのような組合せ療法は、患者に、連続的に又は同時に又は順次投与することができる。
【0412】
インビボ投与に使用されるべき製剤は、滅菌されていてもよい。これは、例えば、滅菌濾過膜に通して濾過することによって容易に達成される。
【0413】
具体的な態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、医薬として許容し得る担体中に、治療有効量の1以上の本明細書に提供される抗体(例えば、ヒト化抗体)及び任意に1以上の追加の予防剤又は治療剤を含有する。そのような医薬組成物は、KIT関連障害もしくは疾患、例えば、癌(例えば、GIST)もしくは炎症性腸疾患、又はそれらの症状のうちの1つもしくは複数の予防、治療、管理、又は改善に有用である。
【0414】
本明細書に提供される抗体の投与に好適な医薬担体には、特定の投与様式に好適であることが当業者に知られている任意のそのような担体が含まれる。
【0415】
さらに、本明細書に記載の抗体は、組成物中の唯一の医薬活性成分として製剤化することができ、又は他の活性成分(例えば、1以上の他の予防剤もしくは治療剤)と組み合わせることができる。
【0416】
組成物は、1以上の本明細書に提供される抗体を含有することができる。一実施態様において、該抗体は、好適な医薬調製物、例えば、経口投与用の液剤、懸濁剤、錠剤、分散錠、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤、もしくはエリキシル剤中に、又は非経口投与用の滅菌液剤もしくは懸濁剤、並びに経皮パッチ調製物及び乾燥粉末吸入剤中に製剤化される。
【0417】
組成物中で、1以上の本明細書に提供される抗体(又はそのコンジュゲート)は、好適な医薬担体と混合される。該組成物中の抗体(単数)又は抗体(複数)の濃度は、例えば、投与時に、KIT関連障害もしくは疾患又はその症状を治療し、予防し、又は改善する量の送達に有効であり得る。特定の実施態様において、組成物中の抗体-薬物コンジュゲート(単数)又は抗体-薬物コンジュゲート(複数)の濃度は、例えば、投与時に、KIT関連障害もしくは疾患又はその症状を治療し、予防し、又は改善する量の送達に有効であり得る。
【0418】
一実施態様において、組成物は、単一投薬量投与用に製剤化される。組成物を製剤化するために、化合物の重量分率を、治療される状態を緩和し、予防し、又は1以上の症状を改善するような有効濃度で、選択された担体に溶解させ、懸濁させ、分散させ、又は別の方法で混合する。
【0419】
ある態様において、本明細書に提供される抗体(例えば、ヒト化抗体)(又はその抗体-薬物コンジュゲート)は、治療される患者に対する望ましくない副作用がなく、又は最小限もしくは無視できる程度の望ましくない副作用で、治療的に有用な効果を発揮するのに十分な有効量で、医薬として許容し得る担体に含まれる。治療的有効濃度は、該化合物をインビトロ及びインビボ系でルーチンの方法を用いて試験することによって実験的に決定し、その後、それからヒトに対する投薬量を推定することができる。
【0420】
医薬組成物中の抗体の濃度は、例えば、該抗体の物理化学的特性、投薬スケジュール、及び投与される量、並びに当業者に公知の他の因子によって決まる。ある態様において、医薬組成物中の抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、例えば、該抗体及び/又は薬物の物理化学的特性、投薬スケジュール、並びに投与される量、並びに当業者に公知の他の因子によって決まる。
【0421】
一実施態様において、治療的有効投薬量は、約0.1ng/mlから約50〜100μg/mlの血清濃度の抗体を生じさせる。医薬組成物は、別の実施態様において、一定期間にわたる、例えば、毎日、毎週、2週毎、又は3週毎の投与に対して、キログラム体重当たり約0.001mg〜約2000mgの投薬量の抗体を提供する。医薬投薬単位形態は、投薬単位形態当たり約0.01mg〜約2000mg、一実施態様において、約10mg〜約500mgの抗体及び/又は他の任意の必須成分の組合せを提供するように調製することができる。
【0422】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体-薬物コンジュゲートは、一定期間にわたる、例えば、毎日、毎週、2週毎、又は3週毎の投与に対して、キログラム体重当たり約1〜100mgの抗体-薬物コンジュゲートの有効投薬量で投与される。
【0423】
抗体は、一度に投与することができ、又は時間間隔を置いて投与されるいくつかのより小さい用量に分割することができる。正確な投薬量及び治療期間は、治療されている疾患の関数であり、公知の試験プロトコルを用いて実験的に、又はインビボもしくはインビトロの試験データからの推定によって決定することができることが理解される。濃度及び投薬量値は、緩和されるべき状態の重症度によっても異なり得ることに留意すべきである。任意の特定の対象のために、特定の投薬レジメンが、個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する人の専門的な判断によって経時的に調整され得ること、並びに本明細書に示される濃度範囲が例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。
【0424】
抗体を混合又は添加したとき、得られる混合物は、液剤、懸濁剤、乳剤などであり得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体又はビヒクルへの該化合物の溶解度を含む、いくつかの因子によって決まる。有効濃度は、治療される疾患、障害、又は状態の症状を改善するのに十分であり、実験的に決定することができる。
【0425】
医薬組成物は、ヒト及び動物への投与用に、好適な分量の化合物又はその医薬として許容し得る誘導体を含有する滅菌非経口(例えば、静脈内)液剤又は懸濁剤などの単位剤形で提供される。医薬組成物は、ヒト及び動物への投与用に、好適な分量の化合物又はその医薬として許容し得る誘導体を含有する錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、及び経口液剤又は懸濁剤、及び油-水乳剤などの単位剤形でも提供される。抗体は、一実施態様において、単位剤形又は複数剤形で製剤化され、投与される。本明細書で使用される単位用量形態は、ヒト及び動物対象に好適で、かつ当技術分野で知られているように個別に包装された、物理的に分離した単位を指す。各々の単位用量は、必要とされる医薬担体、ビヒクル、又は希釈剤と関連して、所望の治療効果をもたらすのに十分な所定量の抗体を含有する。単位用量形態の例としては、アンプル及びシリンジ及び個別包装された錠剤又はカプセル剤が挙げられる。単位用量形態は、その分数又は倍数で投与することができる。複数用量形態は、分離された単位用量形態で投与されるように、単一の容器中に包装された複数の同一の単位剤形である。複数用量形態の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、又はパイントもしくはガロンの瓶が挙げられる。したがって、複数用量形態は、包装中で分離されていない複数の単位用量である。
【0426】
ある実施態様において、1以上の本明細書に記載の抗KIT抗体は、液体医薬製剤中にある。医薬として投与可能な液体組成物は、例えば、上で定義した活性化合物及び任意の医薬補助剤を、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどの担体に溶解させ、分散させ、又は別の方法で混合し、それにより、液剤又は懸濁剤を形成させることによって調製することができる。望ましい場合、投与される医薬組成物は、微量の無毒な補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、及びpH緩衝剤なども含有することができる。
【0427】
そのような剤形の実際的な調製方法は当業者に公知であるか、又は明白になるであろう;例えば、レミントンの医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1990) Mack Publishing Co., Easton, PA;レミントン:調剤の科学及び実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)、第21版(2006) Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MDを参照されたい。
【0428】
0.005%〜100%の範囲の抗体を含有し、残りは無毒な担体から構成される剤形又は組成物を調製することができる。これらの組成物の調製方法は、当業者に公知である。
【0429】
一実施態様において、皮下、筋肉内、又は静脈内のいずれかへの注射を特徴とする非経口投与も、本明細書において企図される。注射剤は、液体の液剤もしくは懸濁剤、注射前の液体への溶解もしくは懸濁に好適な固体形態としてか、又は乳剤としてかのいずれかの、従来の形態で調製することができる。注射剤、液剤、及び乳剤は、1以上の賦形剤も含有する。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、又はエタノールである。さらに、望ましい場合、投与される医薬組成物は、微量の無毒な補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増強剤、及び他のそのような薬剤も含有することができる。他の投与経路としては、腸内投与、脳内投与、鼻腔投与、動脈内投与、心内投与、骨内注入、髄腔内投与、及び腹腔内投与を挙げることができる。
【0430】
非経口投与用の調製物としては、すぐに注射可能な滅菌液剤、皮下注射錠を含む、使用直前に溶媒とすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥可溶性製品、例えば、凍結乾燥粉末、すぐに注射可能な滅菌懸濁剤、使用直前にビヒクルとすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥不溶性製品、及び滅菌乳剤が挙げられる。液剤は、水性又は非水性のいずれかであり得る。
【0431】
静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びに増粘剤及び可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、並びにこれらの混合物を含有する溶液が挙げられる。
【0432】
非経口調製物で使用される医薬として許容し得る担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局部麻酔薬、懸濁化剤及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート剤、並びに他の医薬として許容し得る物質が挙げられる。
【0433】
医薬担体としては、水混和性ビヒクル用のエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール;並びにpH調整用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、又は乳酸も挙げられる。
【0434】
実例として、活性化合物を含有する滅菌水性液剤の静脈内又は動脈内注入は、効果的な投与様式である。別の実施態様は、所望の薬理作用を生じさせるために必要に応じて注射される活性材料を含有する滅菌された水性又は油性の液剤又は懸濁剤である。
【0435】
抗体を、微粉化された又は他の好適な形態で懸濁させることができる。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体又はビヒクルへの化合物の溶解度を含む、いくつかの因子によって決まる。有効濃度は、状態の症状を改善するのに十分であり、実験的に決定することができる。
【0436】
他の実施態様において、医薬製剤は、投与のために液剤、乳剤、及び他の混合物として再構成することができる凍結乾燥粉末である。それらを固体又はゲルとして再構成し、製剤化することもできる。
【0437】
凍結乾燥粉末は、本明細書に提供される抗体を好適な溶媒に溶解させることによって調製される。いくつかの実施態様において、凍結乾燥粉末は、滅菌されている。溶媒は、粉末又は粉末から調製される再構成溶液の安定性又は他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含有することができる。使用し得る賦形剤としては、デキストロース、ソルビタール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、又は他の好適な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、緩衝剤、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、又は一実施態様において、約中性pHの当業者に公知の他のそのような緩衝剤を含有することもできる。その後の溶液の滅菌濾過と、それに続く、当業者に公知の標準的な条件下での凍結乾燥によって、所望の製剤が提供される。一実施態様において、得られる溶液は、凍結乾燥用のバイアルに分注される。各々のバイアルは、単回投薬量又は複数回投薬量の化合物を含有する。凍結乾燥粉末は、適当な条件下、例えば、約4℃〜室温で貯蔵することができる。
【0438】
この凍結乾燥粉末の注射用水による再構成によって、非経口投与で使用するための製剤が提供される。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水又は他の好適な担体に添加する。正確な量は、選択された化合物によって決まる。そのような量は、実験的に決定することができる。
【0439】
本明細書に提供される抗体は、局部又は局所適用のために、例えば、ゲル剤、クリーム剤、及びローション剤の形態での、皮膚及び粘膜、例えば、眼内への局所適用のために、及び眼への適用のために、又は嚢内もしくは脊髄内適用のために製剤化することができる。局所投与は、経皮送達のために、さらには眼もしくは粘膜への投与のために、又は吸入療法のために企図される。単独の又は他の医薬として許容し得る賦形剤と組み合わせた活性化合物の点鼻液を投与することもできる。
【0440】
本明細書に提供される抗体及び他の組成物は、特定の組織、受容体、又は治療されることになる対象の身体の他の部分にターゲッティングされるように製剤化することもできる。多くのそのようなターゲッティング法は、当業者に周知である。全てのそのようなターゲッティング法が、本組成物での使用のために本明細書において企図される。ターゲッティング法の非限定的な例については、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542、及び5,709,874を参照されたい。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、例えば、白血病を有するか、又は白血病を有するリスクのある患者の骨髄にターゲッティングされる(又は別の方法で投与される)。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、例えば、消化管間質腫瘍を有するか、又は消化管間質腫瘍を有するリスクのある患者の消化管にターゲッティングされる(又は別の方法で投与される)。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、例えば、肺癌(例えば、小細胞肺癌)を有するか、又は肺癌(例えば、小細胞肺癌)を有するリスクのある患者の肺にターゲッティングされる(又は別の方法で投与される)。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、例えば、神経芽腫を有するか、又は神経芽腫を有するリスクのある患者の脳にターゲッティングされる(又は別の方法で投与される)。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、血液脳関門を横断することができる。
【0441】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数、例えば、本明細書に提供される1以上の抗体を充填した1以上の容器を含む医薬パック又はキットである。そのような容器(複数可)には、薬剤又は生物学的製剤の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって定められた形での注意書きが任意に関連付けられることがあり、この注意書きは、該機関による、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の認可を示すものである。
【0442】
また本明細書に提供されるのは、上記の方法で使用することができるキットである。一実施態様において、キットは、1以上の容器中に、本明細書に記載の抗体、好ましくは、精製抗体を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載のキットは、実質的に単離されたKIT抗原を対照として含有する。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキットは、KIT抗原と反応しない対照抗体をさらに含む。別の具体的な実施態様において、本明細書に記載のキットは、KIT抗原に対する修飾抗体の結合を検出するための1以上の要素を含有する(例えば、該抗体を、検出可能な基質、例えば、蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物、もしくは発光化合物にコンジュゲートすることができ、又は第一の抗体を認識する第二の抗体を検出可能な基質にコンジュゲートすることができる)。具体的な実施態様において、キットは、組換え産生された又は化学合成されたKIT抗原を含むことができる。キット中に提供されるKIT抗原は、固体支持体に結合させることもできる。より具体的な実施態様において、上記のキットの検出手段は、KIT抗原が結合する固体支持体を含む。そのようなキットは、非結合型レポーター標識抗ヒト抗体を含むこともできる。この実施態様において、KIT抗原への抗体の結合は、該レポーター標識抗体の結合によって検出することができる。
【0443】
(5.6 方法)
本明細書に提供されるのは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌)を妨害し、予防し、治療し、及び/又は管理するための方法である。そのような方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、ヒト化抗体、及びその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)の治療有効量を投与することを含む。ある態様において、また本明細書に提供されるのは、KIT関連障害又は疾患の1以上の症状を予防し、妨害し、治療し、及び/又は管理するための方法である。
【0444】
本明細書で使用されるように、「投与する」又は「投与」は、物質(例えば、本明細書に提供されるヒト化抗KIT抗体もしくはその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲート)を、対象又は患者(例えば、ヒト)に、例えば、粘膜、局所、皮内静脈内、筋肉内送達、及び/又は本明細書に記載のもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法によって注射するか又は別の方法で物理的に送達する行為を指す。
【0445】
本明細書で使用されるように、「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所与の疾患及び/又はそれに関連する症状の重症度及び/又は持続期間を低下させ及び/又は改善するのに十分である療法(例えば、本明細書に提供されるヒト化抗体又は医薬組成物)の量を指す。これらの用語は、所与の疾患の発展もしくは進行の低下もしくは改善、所与の疾患の再発、発生、もしくは発症の低下もしくは改善のために、及び/又は別の療法(例えば、本明細書に提供される抗KIT抗体以外の療法)の予防的もしくは治療的効果(複数可)の改善もしくは増強のために必要な量も包含する。いくつかの実施態様において、本明細書で使用される「有効量」は、特定の結果(例えば、細胞のKIT生物学的活性の阻害(例えば、部分阻害)、例えば、細胞増殖もしくは細胞生存の阻害、又はアポトーシスもしくは細胞分化の増強もしくは誘導)を達成するための本明細書に記載の抗体の量も指す。
【0446】
本明細書で使用されるように、他の療法の投与との関連における「組み合わせて」という用語は、複数の療法の使用を指す。「組み合わせて」という用語の使用は、療法が投与される順序を制限するものではない。療法は、例えば、連続的に、順次、並行して、又は同時に投与することができる。
【0447】
本明細書で使用されるように、「管理する(manage)」、「管理する(managing)」、及び「管理(management)」という用語は、対象が療法(例えば、予防剤又は治療剤)から得る、KIT関連疾患又は障害の治癒をもたらさない、有益な効果を指す。ある実施態様において、KIT関連疾患(例えば、癌、炎症性疾患、又は線維症)の進行又は悪化を予防するために、対象に、1以上の療法(例えば、予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に記載の抗体)を投与して、該疾患、その1以上の症状を「管理する」。
【0448】
本明細書で使用されるように、KIT関連障害又は疾患との関連における「妨害する(impede)」又は「妨害する(impeding)」という用語は、本明細書に提供される療法又は療法の組合せ(例えば、予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に記載の抗体の組合せ)の投与によってもたらされる、完全阻害もしくは部分阻害(例えば、100%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、もしくは5%未満)、又はKIT関連疾患及び/もしくはそれに関連する障害の発生、再発、発症、もしくは拡大の阻止を指す。
【0449】
本明細書で使用されるように、「予防剤」という用語は、対象におけるKIT関連疾患及び/又はそれに関連する障害の発生、再発、発症、又は拡大を完全に又は部分的に阻害することができる任意の薬剤を指す。ある実施態様において、「予防剤」という用語は、本明細書に記載の抗体を指す。ある他の実施態様において、「予防剤」という用語は、本明細書に記載の抗体以外の薬剤を指す。通常、予防剤は、KIT関連疾患及び/もしくはそれに関連する障害を予防し、又はKIT関連疾患及び/もしくはそれに関連する障害の発症、発生、進行、及び/もしくは重症度を妨害するために有用であることが知られているか、そのために使用されてきたか、又はそのために現在使用されている薬剤である。具体的な実施態様において、予防剤は、ヒト抗KIT抗体、例えば、ヒト化又は完全ヒト抗KITモノクローナル抗体である。
【0450】
本明細書で使用されるように、「副作用」という用語は、療法(例えば、予防剤又は治療剤)の望ましくない及び有害な効果を包含する。望ましくない効果は、必ずしも有害というわけではない。療法(例えば、予防剤又は治療剤)による有害な効果は、害のあるもの又は不快なもの又は危険なものであり得る。副作用の例としては、下痢、咳、胃腸炎、喘鳴、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹部痙攣、発熱、疼痛、体重減少、脱水症、脱毛症、呼吸困難(dyspenea)、不眠症、目眩、粘膜炎、神経及び筋肉作用、疲労、口内乾燥症、並びに食欲不振、投与部位での発疹又は腫脹、インフルエンザ様症状、例えば、発熱、悪寒、及び疲労、消化管異常、並びにアレルギー反応が挙げられる。患者が経験するさらなる望ましくない作用は数多くあり、当技術分野で公知である。多くは、医師用卓上参考書(Physician's Desk Reference)(第63版、2009年)に記載されている。
【0451】
本明細書で使用されるように、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。本明細書で使用されるように、対象は、好ましくは、哺乳動物、例えば、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウスなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)、最も好ましくは、ヒトである。一実施態様において、対象は、KIT関連障害又は疾患を有する、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。別の実施態様において、対象は、KIT関連障害又は疾患を発症するリスクのある、哺乳動物、好ましくは、ヒトである。別の実施態様において、対象は、非ヒト霊長類である。具体的な実施態様において、対象は、少なくとも18歳の成人対象である。
【0452】
本明細書で使用されるように、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、状態もしくは障害又はそれらの症状(例えば、癌又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態;炎症性疾患又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態;線維症又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態)の予防、治療、管理、又は改善において使用することができる任意のプロトコル(複数可)、方法(複数可)、組成物、製剤、及び/又は薬剤(複数可)を指すことができる。ある実施態様において、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、薬物療法、補助療法、放射線、外科手術、生物療法、支持療法、及び/或いは状態もしくは障害又はそれらの1以上の症状(例えば、癌又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態;炎症性疾患又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態;線維症又はそれと関連する1以上の症状もしくは状態)の治療、管理、予防、又は改善に有用な他の療法を指す。ある実施態様において、「療法(therapy)」という用語は、本明細書に記載の抗KIT抗体又はその医薬組成物以外の療法を指す。具体的な実施態様において、「追加の療法(additional therapies)」及び「追加の療法(additional therapy)」は、本明細書に記載の抗KIT抗体又は医薬組成物を用いる治療以外の療法を指す。具体的な実施態様において、療法は、補助療法としての本明細書に記載の抗KIT抗体の使用を含む。例えば、本明細書に記載の抗KIT抗体を薬物療法、生物療法、外科手術、及び/又は支持療法と併用する。
【0453】
本明細書で使用されるように、「治療剤」という用語は、KIT関連疾患及び/又はそれに関連する障害の治療、管理、又は改善において使用することができる任意の薬剤を指す。ある実施態様において、「治療剤」という用語は、本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ)、その抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲートを指す。ある他の実施態様において、「治療剤」という用語は、本明細書に記載の抗体以外の薬剤を指す。好ましくは、治療剤は、KIT関連疾患又はそれに関連する1以上の症状の治療、管理、又は改善に有用であることが知られているか、又はそのために使用されてきたか、又はそのために現在使用されている薬剤である。具体的な実施態様において、治療剤は、ヒト抗KIT抗体、例えば、完全ヒト抗KITモノクローナル抗体である。
【0454】
本明細書で使用されるように、「KIT関連障害」又は「KIT関連疾患」という用語は、互換的に使用されており、完全に又は部分的に、KIT発現及び/もしくは活性又はそれらの欠如によって引き起こされるか、これらと関連するか、又はこれらの結果である、任意の疾患を指す。一態様において、KIT関連障害又は疾患は、当業者に公知であり得るか、又は当業者によって確認され得る。ある実施態様において、KIT関連疾患又は障害は、KIT発現及び/又は活性と関連する。例えば、KIT発現及び/又は活性は、1以上の他の因子(例えば、突然変異、又は別の遺伝子の発現及び/もしくは活性)と組み合わさって、KIT関連疾患又は障害の発生及び/又は進行の一因となり得る。ある実施態様において、KIT関連疾患又は障害は、KITの1以上の突然変異と関連する。
【0455】
ある実施態様において、KIT関連疾患は、線維症又は炎症性障害、例えば、炎症性腸疾患(IBD)、例えば、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)である。他の実施態様において、KIT関連疾患は、癌、例えば、肺癌(例えば、小細胞肺癌)、白血病、神経芽腫、黒色腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫)、又は消化管間質腫瘍(GIST)である。
【0456】
本明細書で使用されるように、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、及び「治療する(treating)」という用語は、1以上の療法の投与(限定されないが、1以上の予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に提供される抗体の投与を含む)によってもたらされる、KIT関連疾患(例えば、癌、炎症性障害、又は線維症)の進行、重症度、及び/又は持続期間の低下又は改善を指す。
【0457】
具体的な実施態様において、KIT関連障害又は疾患を治療するための本明細書に記載の方法は、1以上の療法の投与(限定されないが、1以上の予防剤又は治療剤、例えば、本明細書に記載の抗KIT抗体の投与を含む)によってもたらされる、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、又は線維症)の進行、重症度、及び/又は持続期間の低下又は改善を提供する。さらなる具体的な実施態様において、KIT関連障害又は疾患を治療するための本明細書に記載の方法は、KIT関連障害又は疾患の1以上の症状を軽減することに関する。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、抗体Hum8もしくはHum4もしくはHum17もしくはHum10、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートは、KIT関連障害(例えば、癌)の治療又は管理において使用するためのものである。特定の実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体、もしくはその抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲートで治療又は管理されるKIT関連疾患又は障害は、KIT発現及び/又は活性と関連し、例えば、KITを発現する及び/又はKIT活性を示す細胞が関与するが、KIT発現又は活性によって引き起こされるものでも、KIT発現又は活性の結果でもない。
【0458】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、KIT関連障害(例えば、癌)の治療又は管理において使用するための、抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、又はHum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、或いはそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートであり、ここで、該抗体は、(i)配列番号7、8、9、もしくは10のアミノ酸配列を有するVL鎖領域、及び/又は(ii)配列番号2、3、4、5、もしくは6のアミノ酸配列を有するVH鎖領域を含む。別の特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、KIT関連障害(例えば、癌)の治療又は管理において使用するための、抗体、又はその抗原結合断片であり、ここで、該抗体は、表4に提示される群から選択されるVHドメイン(例えば、H1〜H5、配列番号2〜6)とVLドメイン(L1〜L4、配列番号7〜10)の組合せを含む。特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、KIT関連障害(例えば、癌)の治療又は管理において使用するための、抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートであり、ここで、該抗体は、(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むVL鎖領域(例えば、
図4B参照)、及び/又は(ii)配列番号11のコンセンサスアミノ酸配列を含むVH鎖領域(例えば、
図4A参照)を含む。特定の実施態様において、本明細書に提供されるのは、KIT関連障害(例えば、癌)の治療又は管理において使用するための、抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートであり、ここで、該抗体は、(i)表6Aに示されるアミノ酸配列を含むVL鎖領域(例えば、L1〜L4及びLL1〜LL62)、並びに/又は(ii)表6Bに示されるアミノ酸配列を含むVH鎖領域(例えば、H1〜H5及びHH1〜HH256)を含む。
【0459】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法で使用される抗体は、それが結合する細胞によって内在化される。特定の実施態様において、コンジュゲートが本明細書に記載の方法で使用され、ここで、該コンジュゲートは、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体、例えば、Hum4もしくはHum8)、又はそのKIT結合断片を含む。具体的な実施態様において、該コンジュゲートは、治療剤、例えば、毒素に共有結合的又は非共有結合的に連結された、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらのKIT結合断片を含む。ある実施態様において、本明細書に記載の方法で使用されるコンジュゲートは、それが結合する細胞に内在化される。
【0460】
ある実施態様において、KITは、細胞によって異常に(例えば、高度に)発現され、例えば、KITは過剰発現される。特定の実施態様において、KIT発現(例えば、細胞表面でのもの)は、対照細胞(例えば、正常レベルのKITを発現している細胞、例えば、正常な、例えば、ヒトの、肥満細胞、幹細胞、脳細胞、メラニン芽細胞、又は卵巣細胞)の表面でのKIT発現よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%高い。特定の実施態様において、KIT発現は、対照細胞集団(例えば、正常レベルのKITを発現している細胞集団、例えば、正常な、例えば、ヒトの、肥満細胞集団、幹細胞集団、脳細胞集団、メラニン芽細胞集団、又は卵巣細胞集団)の表面での平均KIT発現よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%高い細胞表面KIT発現をもたらす。具体的な実施態様において、そのような対照細胞は、健常個体(例えば、健常ヒト)から獲得し、又は該個体に由来することができる。いくつかの実施態様において、KITは、KITが細胞表面に異常に発現されるかどうかを問わず、特定の細胞型で異常に上方調節され得る。特定の実施態様において、KITシグナル伝達又は活性は、KITが細胞表面に異常に発現されるかどうかを問わず、特定の細胞型で異常に上方調節され得る。特定の実施態様において、KITシグナル伝達は、対照細胞(例えば、正常なKITシグナル伝達を含む細胞、例えば、肥満細胞、幹細胞、脳細胞、メラニン芽細胞、又は卵巣細胞)のKITシグナル伝達よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%大きい。特定の実施態様において、KITシグナル伝達は、対照細胞集団(例えば、正常なKITシグナル伝達を示す細胞集団、例えば、正常な、例えば、ヒトの、肥満細胞集団、幹細胞集団、脳細胞集団、メラニン芽細胞集団、又は卵巣細胞集団)の平均KITシグナル伝達よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%大きい。ある実施態様において、正常な、異常な、又は過剰な細胞シグナル伝達は、KITのKITリガンドへの結合によって引き起こされる。他の実施態様において、異常な又は過剰な細胞シグナル伝達は、KITのKITリガンドへの結合とは独立に起こる。
【0461】
ある態様において、KIT関連障害又は疾患は、機能獲得型KIT活性、KIT活性の増大、又はKITの過剰発現を特徴とし得る。一実施態様において、KIT関連障害又は疾患は、完全に又は部分的に、機能獲得型KIT活性もしくはKITの発現、例えば、過剰発現によって引き起こされるか、又はその結果である。ある実施態様において、機能獲得型KIT活性は、KIT受容体に対するKITリガンド(例えば、SCF)結合とは独立に起こり得る。特定の態様において、細胞内でのKITの高発現又は過剰発現は、正常なKIT発現もしくはKIT活性を有することが知られている参照細胞の発現レベルよりも、又は正常なKIT発現もしくはKIT活性を有することが知られている細胞もしくは試料の集団におけるKITの平均発現レベルよりも少なくとも約35%、45%、55%、又は65%大きい発現レベルを指す。KITの発現レベルは、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、ウェスタンブロッティング又は免疫組織化学)によって評価することができる。特定の実施態様において、KIT関連障害又は疾患は、正常なKIT活性よりも高く、かつ細胞形質転換、新生物形成、及び腫瘍形成に寄与する、KIT活性を特徴とする。特定の態様において、細胞における高いKIT活性又はKIT活性の増大は、正常なKIT活性を有することが知られている参照細胞の発現レベルよりも、又は正常なKIT活性を有することが知られている細胞もしくは試料の集団におけるKIT活性の平均レベルよりも少なくとも約35%、45%、55%、又は65%大きいKIT活性レベルを指す。KIT活性の非限定的な例としては、KITの細胞質ドメインのチロシンリン酸化、及びKITの下流のシグナル伝達、例えば、Stat又はAktシグナル伝達が挙げられる。
【0462】
障害又はKIT関連障害もしくは疾患の非限定的な例としては、癌、例えば、乳癌、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、肥満細胞白血病)、肺癌(例えば、小細胞肺癌)、神経芽腫、消化管間質腫瘍(GIST)、黒色腫、結腸直腸癌、肉腫(例えば、ユーイング肉腫)、及び胚細胞腫瘍(例えば、精上皮腫)が挙げられる。特定の実施態様において、本明細書に提供される方法によって治療又は管理される癌は、機能獲得型KIT突然変異又はKITの過剰発現を特徴とする。
【0463】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法は、癌(例えば、GIST、肺癌、又は肉腫(例えば、ユーイング肉腫))を治療するためのものであり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。ある態様において、また本明細書に提供されるのは、癌の1以上の症状を予防、治療、又は管理する方法であり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の癌を治療する方法で使用するための抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L2)、及び/又は配列番号4のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H3)を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の癌を治療する方法で使用するための抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L1)、及び/又は配列番号5のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H4)を含む。
【0464】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法は、GISTを治療するためのものであり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。ある態様において、また本明細書に提供されるのは、GISTの1以上の症状を予防、治療、又は管理する方法であり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載のGISTを治療する方法で使用するための抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L2)、及び/又は配列番号4のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H3)を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載のGISTを治療する方法で使用するための抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L1)、及び/又は配列番号5のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H4)を含む。
【0465】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法は、肺癌(例えば、小細胞肺癌)を治療するためのものであり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。ある態様において、また本明細書に提供されるのは、肺癌(例えば、小細胞肺癌)の1以上の症状を予防、治療、又は管理する方法であり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の肺癌(例えば、小細胞肺癌)を治療する方法で使用するための抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L2)、及び/又は配列番号4のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H3)を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の肺癌(例えば、小細胞肺癌)を治療する方法で使用するための抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L1)、及び/又は配列番号5のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H4)を含む。
【0466】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法は、黒色腫を治療するためのものであり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。ある態様において、また本明細書に提供されるのは、黒色腫の1以上の症状を予防、治療、又は管理する方法であり、ここで、該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの治療有効量を投与することを含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の黒色腫を治療する方法で使用するための抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L2)、及び/又は配列番号4のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H3)を含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載の黒色腫を治療する方法で使用するための抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLドメイン(L1)、及び/又は配列番号5のアミノ酸配列を含むVHドメイン(H4)を含む。
【0467】
具体的な実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される癌は、細胞表面KIT又はその突然変異形態を発現する癌又は腫瘍細胞含む任意のタイプの癌であることができ、これは、当業者に公知の任意の組織学的又は細胞学的方法によって確認することができる。
【0468】
ある実施態様において、癌は、転移性である。ある実施態様において、癌は、局所浸潤又は転移のいずれかによって、起源の部位又は器官の外部に拡大した進行癌である。
【0469】
特定の実施態様において、癌は、原発部位又は遠位部位のいずれかにおいて、初期療法に対する応答の後に(例えば、腫瘍を除去するための外科手術及び外科手術後の補助療法の後に)再び成長した再発性癌である。いくつかの実施態様において、癌は、抗腫瘍剤、例えば、化学療法剤が、癌患者に投与されているか又は投与されてきたにもかかわらず進行する難治性癌である。難治性癌の非限定的な例は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、SUTENT(登録商標)(SU11248もしくはスニチニブ)、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVA(登録商標)(エルロチニブ)、NEXAVAR(登録商標)(ソラフェニブ)、又はVOTRIENT(商標)(パゾパニブ)に対して不応性である癌である。いくつかの実施態様において、癌は、放射線又は化学療法が、癌患者に投与されているか又は投与されてきたにもかかわらず進行する難治性癌である。
【0470】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、それを必要とする患者における難治性癌を治療する方法であって、該患者に本明細書に記載の抗体の治療有効量を投与することを含む方法であり、ここで、該難治性癌は、抗癌剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)又はSUTENT(登録商標)(SU11248もしくはスニチニブ))に対して不応性又は抵抗性である。チロシンキナーゼ(kinse)阻害剤の他の非限定的な例としては、706及びAMNI07(ニロチニブ)、RAD00I、PKC412、ゲフィチニブ(IRESSA(商標))、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、パゾパニブ(VOTRIENT(商標))、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ(RECENTIN(登録商標))、SPRYCEL(登録商標)(ダサチニブ)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、レスタウルチニブ、ネラチニブ、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ、トセラニブ(PALLADIA(商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(商標))、及びバタラニブが挙げられる。ある実施態様において、難治性癌は、当初は、抗癌剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、GLEEVEC(登録商標)又はSU11248(すなわち、スニチニブ))に応答性であったが、抗癌剤に対する抵抗性を生じた。ある実施態様において、対象は、抗癌剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤に対する抵抗性を付与するKITの1以上の突然変異を有する。
【0471】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、1以上の抗癌療法、例えば、化学療法剤、或いはチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、SUTENT(登録商標)(SU11248もしくはスニチニブ)、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVA(登録商標)(エルロチニブ)、NEXAVAR(登録商標)(ソラフェニブ)、又はVOTRIENT(商標)(パゾパニブ))、或いはヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット又はスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))を以前に受けたか、或いはこれらを現在受けている患者に投与される。他の特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、抗癌療法、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、SUTENT(登録商標)(SU11248もしくはスニチニブ)、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、TARCEVA(登録商標)(エルロチニブ)、NEXAVAR(登録商標)(ソラフェニブ)、又はVOTRIENT(商標)(パゾパニブ)に対して抵抗性又は不応性であるか或いはその疑いがある患者に投与される。
【0472】
特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、又はその抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらのコンジュゲート)は、1以上の抗癌療法、例えば、抗成長因子受容体抗体(例えば、抗HER2抗体、抗EGFR抗体、抗VEGFR抗体、もしくは抗KIT抗体)、又は抗成長因子抗体(例えば、抗EGF抗体、抗VEGF抗体)を以前に受けたか、或いはこれらを現在受けている患者に投与される。他の特定の実施態様において、本明細書に記載の抗体は、抗癌療法、例えば、抗成長因子受容体抗体(例えば、抗HER2抗体、抗EGFR抗体、抗VEGFR抗体、もしくは抗KIT抗体)又は抗成長因子抗体(例えば、抗EGF抗体、抗VEGF抗体)に対して抵抗性又は不応性であるか或いはその疑いがある患者に投与される。
【0473】
特定の実施態様において、それを必要とする対象における癌を治療又は管理するための本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の抗KIT抗体の治療有効量の投与による以下の効果:(i)癌(例えば、白血病、肺癌、もしくは消化管間質性癌)及び/又はそれと関連する1以上の症状の重症度の低下又は改善;(ii)癌(例えば、白血病、肺癌、又は消化管間質性癌)と関連する1以上の症状の持続期間の低下;(iii)腫瘍(例えば、肺腫瘍又は消化管間質腫瘍)の再発の予防;(iv)癌(例えば、白血病、肺癌、もしくは消化管間質腫瘍)及び/又はそれと関連する1以上の症状の退行;(v)対象の入院の減少;(vi)対象の入院期間の短縮;(vii)対象の生存の延長;(viii)癌(例えば、白血病、肺癌、もしくは消化管間質腫瘍)及び/又はそれと関連する1以上の症状の進行の阻害;(ix)別の療法(例えば、外科手術、放射線、化学療法、又は別のチロシンキナーゼ阻害剤)の治療効果の増強又は改善;(x)癌細胞集団(例えば、白血病細胞集団、肺癌細胞集団、消化管間質腫瘍細胞集団)の低下又は消失;(xi)腫瘍又は新生物の成長の低下;(xii)腫瘍サイズ(例えば、体積又は直径)の減少;(xiii)新たに形成される腫瘍の形成の低下;(xiv)原発性、局所性、及び/又は転移性癌の根絶、除去、又は制御;(xv)外科手術前の腫瘍及び/又は浮腫関連血管新生の減少による腫瘍の除去のしやすさ;(xvi)転移の数又はサイズの減少;(xvii)死亡率の低下;(xviii)患者の無腫瘍生存率の増加;(xvix)無再発生存の増加;(xx)寛解期にある患者の数の増加;(xxi)入院率の低下;(xxii)当業者に利用可能な従来の方法、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、ダイナミック造影MRI(DCE-MRI)、又は陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって測定したとき、腫瘍のサイズが維持され、増加しないか、又は標準療法の投与後の腫瘍の増加未満だけ増加する;(xxiii)癌と関連する1以上の症状の発生又は発症の予防;(xxiv)患者の寛解期間の延長;(xxv)癌と関連する症状の数の低下;(xxvi)癌患者の無症状生存の増加;(xxvii)癌(例えば、白血病、肺癌、又は消化管間質性癌)を有する対象の生物標本(例えば、血漿、血清、脳脊髄液、尿、又は任意の他の生体液)中の1以上の炎症性メディエータ(例えば、サイトカイン又はインターロイキン)の濃度の減少;(xxviii)癌(例えば、白血病、肺癌、又は消化管間質性癌)を有する対象の血液中の循環腫瘍細胞(CTC)の減少;(xxix)腫瘍代謝又は灌流の阻害(例えば、部分阻害)又は減少;並びに(xxx)当技術分野で周知の方法、例えば、アンケートによって評価される生活の質の改善のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを達成することができる。
【0474】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、個体における癌細胞を死滅させる方法であり、ここで、該方法は、それを必要とする個体に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの有効量を投与することを含む。ある態様において、本明細書に提供されるのは、個体における癌細胞の成長又は増殖を阻害する方法であり、ここで、該方法は、それを必要とする個体に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの有効量を投与することを含む。ある実施態様において、癌細胞の成長又は増殖の部分阻害、例えば、癌細胞の成長又は増殖の少なくとも約20%〜約55%の阻害が達成される。
【0475】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、それを必要とする個体における腫瘍サイズ又は負荷を低下させる方法であり、ここで、該方法は、該個体に、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum17、Hum10、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片、或いはそれらのコンジュゲートの有効量を投与することを含む。
【0476】
KIT関連障害又は疾患の他の非限定的な例としては、全身性肥満細胞障害(例えば、肥満細胞症)、血液学的障害、線維症(例えば、特発性肺線維症(TPF)、強皮症、又は骨髄線維症)、並びに炎症性疾患、例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症が挙げられる。
【0477】
特定の実施態様において、それを必要とする対象におけるKIT関連障害、例えば、線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)を治療又は管理するための本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の抗KIT抗体の治療有効量の投与による以下の効果:(i)線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)並びに/又はそれと関連する1以上の症状の重症度の低下又は改善;(ii)線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)と関連する1以上の症状の持続期間の低下;(iii)線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)の再発の予防;(iv)対象の入院の減少;(v)対象の入院期間の短縮;(vi)線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)並びに/又はそれと関連する1以上の症状の進行の阻害(例えば、部分阻害);(vii)別の療法(例えば、抗炎症療法、例えば、ステロイド)の治療効果の増強又は改善;(viii)寛解期(すなわち、炎症性疾患と関連する症状がないこと又は最小限であることを特徴とする期間)にある患者の数の増加;(ix)患者の寛解期間の延長;(x)入院率の低下;(xi)線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)と関連する症状の数の減少;(xii)線維症又は炎症性疾患(例えば、喘息、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及びアレルギー性炎症)を有する対象の生物標本(例えば、血漿、血清、脳脊髄液、尿、又は任意の他の生体液)中の1以上の炎症性メディエータ(例えば、サイトカイン又はインターロイキン)の濃度の減少;並びに(xiii)当技術分野で周知の方法、例えば、アンケートによって評価される生活の質の改善のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを達成することができる。
【0478】
ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、任意の好適な方法によって、それを必要とする対象に投与することができる。投与方法の非限定的な例としては、粘膜、皮内、静脈内、腫瘍内、皮下、筋肉内送達、及び/又は本明細書に記載のもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法が挙げられる。一実施態様において、抗KIT抗体又はその医薬組成物は、それを必要とする対象に全身(例えば、非経口)投与される。別の実施態様において、抗KIT抗体又はその医薬組成物は、それを必要とする対象に局所(例えば、腫瘍内)投与される。各用量は、同一の投与経路によって投与されても、投与されなくてもよい。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、他の用量の本明細書に記載の同じ又は異なる抗KIT抗体と同時に又はその後に、複数の投与経路によって投与することができる。
【0479】
疾患又はその症状が治療されているとき、物質の投与は、通常、該疾患又はその症状の発症後に行われる。疾患又はその症状が予防されているとき、物質の投与は、通常、疾患又はその症状の発症前に行われる。ある実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、対象に予防的に又は治療的に投与される。本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT関連障害もしくは疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)又はそれらの症状を予防し、緩和し、又は改善するために、対象に予防的に又は治療的に投与することができる。
【0480】
本明細書に提供されるKIT関連障害又は疾患を治療する方法に従って、それを必要とする対象に投与される本明細書に記載の抗KIT抗体又はその医薬組成物の投薬量及び投与頻度は、有効であると同時に、副作用を最小限に抑える。特定の対象に投与されるべき本明細書に記載の抗KIT抗体又はその医薬組成物の正確な投薬量は、治療を必要とする対象に関連する因子を考慮して、医師により決定され得る。考慮に入れることができる因子としては、病態の重症度、対象の全般的な健康、対象の年齢及び体重、食事、投与の時間及び頻度、他の治療剤又は薬物との組合せ(複数可)、反応感度、並びに療法に対する忍容性/応答が挙げられる。本明細書に記載の抗KIT抗体又はその医薬組成物の投与の投薬量及び頻度は、抗KIT抗体の十分なレベルを提供するために又は所望の効果を維持するために、経時的に調整することができる。
【0481】
製剤中で利用される正確な用量は、投与経路、及びKIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)の重篤度によっても決まり、医師の判断及び各々の患者の状況によって決定されるべきである。
【0482】
一実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体について、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)を管理するために患者に投与される投薬量は、通常、0.1mg/kg〜100mg/kg患者体重である。通常、ヒト抗体は、異種ポリペプチドに対する免疫応答のために、他の種由来の抗体よりも長いヒト体内での半減期を有する。したがって、多く場合、より少ない投薬量のヒト抗体及びより少ない頻度の投与が可能となる。さらに、本明細書に記載の抗体の投薬量及び投与頻度は、例えば、脂質化などの修飾によって抗体の摂取及び組織浸透を増強することによって低下させることができる。
【0483】
一実施態様において、約0.001mg/kg(mg抗体/対象のkg体重)〜約500mg/kgの本明細書に記載の抗KIT抗体が、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)を管理するために投与される。
【0484】
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される抗体の有効量は、約0.01mg〜約1,000mgである。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体の「有効量」は、以下の効果:(i)KIT関連障害もしくは疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)及び/又はそれと関連する1以上の症状の重症度の低下又は改善;(ii)KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)と関連する1以上の症状の持続期間の低下;(iii)腫瘍(例えば、消化管間質腫瘍)の再発の予防;(iv)KIT関連障害もしくは疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)及び/又はそれと関連する1以上の症状の退行;(v)対象の入院の減少;(vi)対象の入院期間の短縮;(vii)対象の生存の延長;(viii)KIT関連障害もしくは疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)及び/又はそれと関連する1以上の症状の進行の阻害(例えば、部分阻害);(ix)別の療法の治療効果の増強又は改善;(x)癌細胞集団(例えば、白血病細胞集団、肺癌細胞集団、消化管間質性癌細胞集団)の減少又は消失;(xi)腫瘍又は新生物の成長の低下;(xii)腫瘍サイズ(例えば、体積又は直径)の減少;(xiii)新たに形成される腫瘍の形成の低下;(xiv)原発性、局所性、及び/又は転移性癌の根絶、除去、又は制御;(xv)外科手術前の腫瘍及び/又は浮腫関連血管新生の除去による腫瘍の除去のしやすさ;(xvi)転移の数又はサイズの減少;(xvii)死亡率の低下;(xviii)患者の無腫瘍生存率の増加;(xvix)無再発生存の増加;(xx)寛解期にある患者の数の増加;(xxi)入院率の低下;(xxii)当業者に利用可能な従来の方法、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、ダイナミック造影MRI(DCE-MRI)、又は陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって測定したとき、腫瘍のサイズが維持され、増加しないか、又は標準療法の投与後の腫瘍の増加未満だけ増加する;(xxiii)癌と関連する1以上の症状の発生又は発症の予防;(xxiv)患者の寛解期間の延長;(xxv)癌と関連する症状の数の低下;(xxvi)癌患者の無症状生存の増加;(xxvii)KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)を有する対象の生物標本(例えば、血漿、血清、脳脊髄液、尿、又は任意の他の生体液)中の1以上の炎症性メディエータ(例えば、サイトカイン又はインターロイキン)の濃度の減少;(xxviii)癌を有する対象の血液中の循環腫瘍細胞(CTC)の減少;(xxix)腫瘍代謝又は灌流の阻害(例えば、部分阻害)又は減少;並びに(xxx)当技術分野で周知の方法、例えば、アンケートによって評価される生活の質の改善のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを達成するのに十分である本明細書に記載の抗KIT抗体の量を指す。いくつかの実施態様において、本明細書で使用される「有効量」は、特定の結果(例えば、細胞の1以上のKIT生体活性の阻害、例えば、細胞増殖の阻害)を達成するための本明細書に記載の抗体の量も指す。
【0485】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体は、必要に応じて、例えば、医師によって決定された場合、毎週、隔週(すなわち、2週間毎)、毎月、隔月、3カ月毎などで投与される。
【0486】
いくつかの実施態様において、単一用量の本明細書に記載の抗KIT抗体は、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)を妨害し、予防し、管理し、治療し、及び/又は改善するために、患者に1回以上投与される。
【0487】
特定の実施態様において、抗KIT抗体又はその医薬組成物は、対象に、本明細書に提示されるKIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)の治療方法に従って、周期的に投与され、ここで、該抗KIT抗体又は医薬組成物は、一定期間投与され、その後、一定期間休止される(すなわち、該抗KIT抗体又は医薬組成物は、一定期間、投与されない)。
【0488】
また、本明細書に提示されるのは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)の治療のための併用療法であって、本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートを、1以上の追加の療法(例えば、化学療法剤、チロシンキナーゼ阻害剤、PGP阻害剤、HSP-90阻害剤、プロテオソーム阻害剤、又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、併用療法である。具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)の治療のための併用療法であって、ある量(例えば、治療有効量又は準最適量)の本明細書に記載の抗KIT抗体を、ある量(例えば、治療有効量又は準最適量)の別の療法(例えば、化学療法剤、チロシンキナーゼ阻害剤、又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、併用療法である。
【0489】
併用療法において、本明細書に提供される1以上の抗KIT抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)の治療、管理、及び/又は改善において使用するための1以上の追加の療法(例えば、薬剤、外科手術、又は放射線)の投与の前に、その投与と同時に、又はその投与の後に投与することができる。「組み合わせて」という用語の使用は、1以上の抗KIT抗体及び1以上の追加の療法が対象に投与される順序を制限するものではない。具体的な実施態様において、該療法は、連続的に又は順次投与することができる。
【0490】
具体的な実施態様において、本明細書に提供される1以上の抗KIT抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、例えば、GIST、黒色腫、又は肺癌)を治療、管理、及び/又は改善するための1以上の追加の療法、例えば、抗癌剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標))もしくはスニチニブ(SUTENT)、又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタットもしくはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))の投与の前に、その投与と同時に、又はその投与の後に投与することができる。
【0491】
別の具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、KIT関連障害又は疾患(例えば、癌、炎症性疾患、線維症)の治療のための併用療法であって、ある量の本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートを、ある量の別の療法(例えば、化学療法剤、チロシンキナーゼ阻害剤、又はヒストンデアセチラーゼ阻害剤)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、併用療法である。具体的な実施態様において、該併用療法は、相乗効果をもたらす。ある実施態様において、該併用療法は、相加効果をもたらす。
【0492】
具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、癌の治療のための併用療法であって、ある量の本明細書に記載の抗KIT抗体を、ある量の別の療法(例えば、外科手術、放射線、幹細胞移植、又は化学療法)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、併用療法である。具体的な実施態様において、該併用療法は、相乗効果をもたらす。別の具体的な実施態様において、該併用療法は、相加効果をもたらす。
【0493】
具体的な実施態様において、本明細書に提示されるのは、炎症性疾患の治療のための併用療法であって、ある量の本明細書に記載の抗KIT抗体を、ある量の別の療法(例えば、抗炎症療法、例えば、ステロイド療法)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、併用療法である。具体的な実施態様において、該併用療法は、相乗効果をもたらす。別の具体的な実施態様において、該併用療法は、相加効果をもたらす。
【0494】
本明細書に記載の抗体と組み合わせて使用するための別の療法の非限定的な例としては、KITの異なるエピトープに免疫特異的に結合する別の抗KIT抗体、1以上の他の抗体(例えば、抗HER2抗体、抗EGFR抗体、抗VEGF抗体)、抗炎症療法、化学療法(例えば、微小管分解遮断薬、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、及びDNAクロスリンカー又は損傷剤)、放射線、外科手術、PGP阻害剤(例えば、シクロスポリンA、ベラパミル)、HSP-90阻害剤(例えば、17-AAG、STA-9090)、プロテオソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、並びにチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、スニチニブ(SUTENT(登録商標)又はSU11248)、ゲフィチニブ(IRESSA(商標))、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、パゾパニブ(VOTRIENT(商標))、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ(RECENTIN(登録商標))、SPRYCEL(登録商標)(ダサチニブ)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、レスタウルチニブ、ネラチニブ、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ、トセラニブ(PALLADIA(商標))、バンデタニブ(ZACTIMA (商標))、及びバタラニブ)が挙げられる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の抗体と組み合わせて使用するための別の療法は、メシル酸イマチニブである。
【0495】
本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートと組み合わせて使用するための別の療法の他の非限定的な例としては、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えば、ボリノスタットもしくはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、又は下に示す化学式(I)、(II)、もしくは(III)を有する化合物が挙げられる。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、癌(例えば、GIST又は肺癌)を治療する方法であって、(i)本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲート;及び(ii)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えば、ボリノスタットもしくはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、又は下に示す化学式(I)、(II)、もしくは(III)を有する化合物を投与することを含む、方法である。
【0496】
一実施態様において、抗KIT抗体と組み合わせて本明細書に記載の方法で使用するために本明細書に提供されるのは、式(I)の化合物
【化24】
又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物であり、式中、
R
1はヒドロキシルアミノであり;
R
2及びR
3の各々は、独立に、互いに同じ又は異なり、置換又は非置換であり、分岐又は非分岐であり、かつ水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、もしくはピリジンであるか;又はR
2及びR
3は結合して、ピペリジンを形成し;かつ
nは、5〜7の整数である。
【0497】
一実施態様において、R
2は水素原子であり、R
3は、置換又は非置換フェニルである。ある実施態様において、R
3は、メチル、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アミノ、アミノカルボニル、メチルシアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、2,3-ジフルオロ、2,4-ジフルオロ、2,5-ジフルオロ、3,4-ジフルオロ、3,5-ジフルオロ、2,6-ジフルオロ、1,2,3-トリフルオロ、2,3,6-トリフルオロ、2,4,6-トリフルオロ、3,4,5-トリフルオロ、2,3,5,6-テトラフルオロ、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ、アジド、ヘキシル、t-ブチル、フェニル、カルボキシル、ヒドロキシル、メトキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェニルアミノオキシ、フェニルアミノカルボニル、メトキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノ、ジメチルアミノカルボニル、又はヒドロキシルアミノカルボニルで置換されたフェニルである。別の実施態様において、R
3は、非置換フェニルである。さらなる実施態様において、nは6である。
【0498】
一実施態様において、抗KIT抗体と組み合わせて本明細書に記載の方法で使用するために本明細書に提供されるのは、式(II)の化合物
【化25】
又はその医薬として許容し得る塩もしくは溶媒和物であり、式中、nは、5〜8の整数である。一実施態様において、nは6である。
【0499】
一実施態様において、抗KIT抗体と組み合わせて本明細書に記載の方法で使用するために本明細書に提供されるのは、式(III)の化合物(SAHA)
【化26】
又はその医薬として許容し得る塩、水和物、もしくは溶媒和物である。
【0500】
式I〜IIIの化合物は、その各々が引用により完全に本明細書中に組み込まれる、米国再発行特許RE38,506号及び米国特許第6,087,367号に記載されている方法に従って合成することができる。
【0501】
一実施態様において、抗KIT抗体と組み合わせて本明細書に記載の方法で使用するために本明細書に提供されるのは、引用により完全に本明細書中に組み込まれる米国特許第7,456,219号の
図13Aに示されているものと実質的に同様のX線回折パターンを特徴とするSAHAの形態I多型である。一実施態様において、SAHAの形態I多型は、Siemens D500自動粉末回折装置(範囲: 4〜40℃の2θ;源: Cu; λ=1.54オングストローム、50kV、40mA)で測定したとき、約9.0、9.4、17.5、19.4、20.0、24.0、24.4、24.8、25.0、28.0、及び43.3℃の2θにおける特徴的ピークを含むX線回折パターンを特徴とする。
【0502】
ある実施態様において、SAHAの形態I多型は、観測される融解温度を上回る50℃から少なくとも30℃まで10℃/分の加熱速度でPerkins Elmer DSC 6装置によって測定したとき、約164.4±2.0℃で単一の最大値を有する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを特徴とする。
【0503】
SAHAの形態I多型は、米国特許第7,456,219号に記載されている方法に従って合成することができる。
【0504】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、リジン及び引用により完全に本明細書中に組み込まれる国際特許出願公開WO2008/042146号の
図1に示されているものと実質的に同様のX線回折パターンを特徴とするSAHAを含む結晶性組成物である。別の実施態様において、該結晶性組成物は、PANanalytical X'Pert Pro X線粉末回折装置(範囲: 2〜40℃の2θ; 源: Cu Kα1及びKα2)で測定したとき、約6.8、20.1、及び23.2℃の2θにおける特徴的ピークを含むX線回折パターンを特徴とする。別の実施態様において、該結晶性組成物は、PANanalytical X'Pert Pro X線粉末回折装置(範囲: 2〜40℃の2θ; 源: Cu Kα1及びKα2)で測定したとき、約6.8、12.6、18.7、20.1、23.2、及び24.0℃の2θにおける特徴的ピークを含むX線回折パターンを特徴とする。別の実施態様において、該結晶性組成物は、PANanalytical X'Pert Pro X線粉末回折装置(範囲: 2〜40℃の2θ; 源: Cu Kα1及びKα2)で測定したとき、約6.8、12.0、12.6、16.4、18.7、20.1 23.2、24.0、29.3℃の2θにおける特徴的ピークを含むX線回折パターンを特徴とする。
【0505】
ある実施態様において、リジン及びSAHAを含む結晶性組成物は、室温から300℃まで10℃/分の加熱速度でTA Instruments Q1000示差走査熱量計によって測定したとき、該結晶性組成物の吸熱が約182℃の補外開始温度を示す、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを特徴とする。
【0506】
リジン及びSAHAを含む結晶性組成物は、国際特許出願公開WO2008/042146号に記載されている方法に従って合成することができる。
【0507】
ある実施態様において、本明細書に記載の併用療法は、相乗作用又は相乗効果をもたらす。具体的な実施態様において、併用療法の相乗効果により、対象に対するより少ない投薬量(例えば、準最適用量)の本明細書に記載の抗KIT抗体及び/もしくは追加の療法の使用並びに/又はより低い頻度の本明細書に記載の抗KIT抗体もしくは追加の療法の投与が可能になる。ある実施態様において、より少ない投薬量の抗KIT抗体及び/もしくは追加の療法を利用し、及び/又はより低い頻度で抗KIT抗体もしくは該追加の療法を投与することができることにより、KIT関連障害又は疾患の治療における抗KIT抗体又は該追加の療法の有効性をそれぞれ低下させることなく、それぞれ、対象への抗KIT抗体又は該追加の療法の投与と関連する毒性が低下する。いくつかの実施態様において、相乗効果により、KIT関連障害又は疾患の治療における本明細書に記載の抗KIT抗体及び/又は該追加の療法の有効性の向上がもたらされる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗KIT抗体と1以上の追加の療法の組合せの相乗効果により、任意の単一の療法の使用と関連する有害作用又は望ましくない副作用が回避又は軽減される。
【0508】
本明細書に提供されるのは、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する方法であって、該細胞を、本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートの有効量と接触させることを含む、方法である。また本明細書に提供されるのは、KITを発現している細胞におけるアポトーシスを誘導又は増強する方法であって、該細胞を、本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む、方法である。また本明細書に提供されるのは、KITを発現している細胞における細胞分化を誘導又は増強する方法であって、該細胞を、本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む、方法である。
【0509】
KIT活性、及び例えば、KIT活性に対する抗体の作用は、例えば、細胞ベースのアッセイ、例えば、本明細書に記載されるものを用いて、ルーチンに評価することができる。
【0510】
本明細書に提供される方法によって阻害することができるKIT活性の非限定的な例としては、当技術分野で公知又は記載のKITの任意の活性、例えば、KIT受容体二量体化、KIT受容体リン酸化(チロシンリン酸化)、KIT受容体の下流のシグナル伝達(例えば、Stat、AKT、MAPK、もしくはRasシグナル伝達)、KITリガンド(例えば、SCF)誘導性転写調節(例えば、c-MycのSCF誘導性転写活性化)、細胞増殖の誘導もしくは増強、又は細胞生存を挙げることができる。
【0511】
ある実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、本明細書に記載の及び/又は当業者に公知の方法(例えば、ELISA)によって評価したとき、KIT活性を、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%阻害するか、又はKIT活性に、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%拮抗するのに十分な本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートの有効量と接触させることを含む。ある実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、本明細書に記載の及び/又は当業者に公知の方法(例えば、ELISA)によって評価したとき、KIT活性を、少なくとも約25%、35%、45%、50%、55%、もしくは65%阻害するか、又はKIT活性に、少なくとも約25%、35%、45%、50%、55%、もしくは65%拮抗するのに十分な本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートの有効量に接触させることを含む。KIT活性の非限定的な例としては、KIT受容体リン酸化、KIT受容体シグナル伝達、KITリガンド(例えば、SCF)媒介性細胞増殖、KITリガンド(例えば、SCF)媒介性細胞生存、及びKIT標的遺伝子(例えば、c-Myc)の転写活性化を挙げることができる。
【0512】
特定の実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する方法は、該細胞を、下流のKITシグナル伝達、例えば、Srcファミリーキナーゼ、PI3-キナーゼ、又はRas-MAPKのメンバーのシグナル伝達を阻害する(例えば、部分的に阻害する)か、又は該シグナル伝達に拮抗するのに十分な本明細書に記載の抗体(例えば、ヒト化抗KIT抗体)、例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、例えば、Hum10、Hum17、Hum8、もしくはHum4、又はそれらの抗原結合断片(例えば、そのKIT結合断片)、或いはそれらの抗体コンジュゲートの有効量と接触させることを含む。
【0513】
別の特定の実施態様において、KITを発現している細胞における1以上のKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、下流のKITシグナル伝達、例えば、MAPKのリン酸化、AKTのリン酸化、又はStat1、Stat3、もしくはStat5のリン酸化を阻害するか又はこれらに拮抗するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。
【0514】
ある実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、ウェスタンブロット又は第6節に記載されているELISAアッセイ又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、AKTのリン酸化(例えば、AKTのKITリガンド(例えば、SCF)誘導性リン酸化)を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%阻害し又は低下させるのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。ある実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法、例えば、ウェスタンブロット又は第6節に記載されているELISAアッセイ又は免疫ブロッティングアッセイによって評価したとき、AKTのリン酸化(例えば、AKTのKITリガンド(例えば、SCF)誘導性リン酸化)を、少なくとも約25%、35%、45%、55%、又は65%阻害し又は低下させるのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。
【0515】
ある態様において、KITを発現している細胞(例えば、癌細胞)におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、細胞の増殖を阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。細胞増殖アッセイは当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、細胞増殖は、様々な時間間隔(例えば、12時間もしくは24時間間隔)での直接的な細胞計数によるか、又は既知遺伝子、例えば、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3、Eなど)の転写、翻訳、もしくは活性の変化の検出により、ブロモデオキシウリジン(BrdU)取込み(例えば、Hoshinoらの文献、1986, Int. J. Cancer 38, 369を参照; Campanaらの文献、1988, J. Immunol. Meth. 107:79を参照)又は(3H)チミジン取込み(例えば、Blechmanらの文献、Cell, 1995, 80:103-113; Chen, J.の文献、1996, Oncogene 13:1395-403; Jeoung, J.の文献、1995, J. Biol. Chem. 270:18367 73を参照)を測定することによってアッセイすることができる。そのようなタンパク質及びmRNA及び活性のレベルは、当技術分野で周知の任意の方法によって決定することができる。例えば、タンパク質は、市販の抗体を含む抗体を用いる、既知の免疫診断法、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、又は免疫沈降によって定量することができる。mRNAは、当技術分野で周知かつルーチンである方法を用いて、例えば、ノーザン解析、RNアーゼ保護、又は逆転写と関連したポリメラーゼ連鎖反応を用いて定量することができる。
【0516】
具体的な実施態様において、KITを発現している細胞(例えば、癌細胞)におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、BrdU取込みアッセイ)によって評価したとき、細胞増殖を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、BrdU取込みアッセイ)によって評価したとき、細胞増殖を、少なくとも約25%、35%、45%、55%、又は65%阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害し又はこれに拮抗する方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、BrdU取込みアッセイ)によって評価したとき、細胞増殖を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。
【0517】
ある態様において、KITを発現している細胞(例えば、癌細胞)におけるKIT活性を阻害するための本明細書に提供される方法は、該細胞を、細胞の生存を低下させ又は阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。細胞生存アッセイは当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、細胞生存率は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞生死マーカーを用いて評価することができる。具体的な実施態様において、細胞ATPのレベルを測定して、細胞生存率を決定する。具体的な実施態様において、細胞生存率は、細胞内ATPレベルを測定する、当技術分野で標準的なアッセイ、例えば、CellTiter-Gloアッセイキット(Promega)を用いて、3日及び7日の期間で測定される。細胞ATPの低下は細胞傷害効果を示す。別の具体的な実施態様において、細胞生存率は、ニュートラルレッド取込みアッセイで測定することができる。他の実施態様において、形態変化の目視観察には、肥大、粒状度、ギザギザの縁を有する細胞、薄膜状の外観、円形化、ウェル表面からの剥離、又は他の変化が含まれ得る。こうした変化には、観察された細胞傷害性の程度に従って、T(100%毒性)、PVH(部分的毒性-非常に強い-80%)、PH(部分的毒性-強い-60%)、P(部分的毒性-40%)、Ps(部分的毒性-わずか-20%)、又は0(毒性なし-0%)という呼称が与えられる。50%細胞阻害(細胞傷害)濃度(IC
50)は、これらのデータの回帰分析によって決定される。
【0518】
具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)ための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、トリパンブルー排出アッセイ)によって評価したとき、該細胞の生存を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%低下させ又は阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)ための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、トリパンブルー排出アッセイ)によって評価したとき、該細胞の生存を、少なくとも約25%、35%、45%、55%、又は65%低下させ又は阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害するための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、トリパンブルーアッセイ)によって評価したとき、該細胞の生存を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍低下させ又は阻害するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。
【0519】
具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)ための本明細書に提供される方法は、該細胞を、アポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)を誘導するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。アポトーシスを検出するための方法は当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、フローサイトメトリーを用いて、アポトーシスを経ている細胞におけるアポトーシス媒介酵素の活性化カスパーゼ3を検出することができ、又はウェスタンブロッティングを用いて、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の切断を検出することができる(例えば、Smolichらの文献、Blood, 2001, 97:1413-1421を参照されたい)。PARPの切断は、アポトーシスの指標である。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害するか又は該KIT活性に拮抗するための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、活性化カスパーゼ3を検出するためのフローサイトメトリー)によって評価したとき、アポトーシスを、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%誘導又は増強するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害するか又は該KIT活性に拮抗するための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、活性化カスパーゼ3を検出するためのフローサイトメトリー)によって評価したとき、アポトーシスを、少なくとも約25%、35%、45%、55%、又は65%誘導又は増強するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害するための本明細書に提供される抗体方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、活性化カスパーゼ3を検出するためのフローサイトメトリー)によって評価したとき、アポトーシスを、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍誘導又は増強するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。
【0520】
具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)ための本明細書に提供される方法は、該細胞を、分化を誘導するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。分化を検出するための方法は当技術分野で記載されており、当業者によって容易に実施され得る。例えば、フローサイトメトリーを用いて、本明細書に記載の抗体と接触した細胞における1以上の分化マーカーの発現、又は1以上の未分化マーカーの発現の欠如を検出することができる。同様に、ウェスタンブロッティングを用いて、分化マーカーを検出することもできる。好適な分化マーカー及び未分化マーカーが記載されており、これらは当業者に公知である。
【0521】
具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)ための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、フローサイトメトリー)によって評価したとき、分化を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%誘導するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害する(例えば、部分的に阻害する)ための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、フローサイトメトリー)によって評価したとき、分化を、少なくとも約25%、35%、45%、55%、又は65%誘導するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。具体的な実施態様において、KITを発現している細胞におけるKIT活性を阻害するための本明細書に提供される方法は、該細胞を、本明細書に記載の又は当業者に公知の方法(例えば、フローサイトメトリー)によって評価したとき、分化を、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍を誘導するのに十分な本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む。
【0522】
本明細書に記載の方法によって分化させることができる細胞の非限定的な例としては、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、造血幹細胞)及び前駆細胞が挙げられる。例示的な造血幹細胞マーカーとしては、CD38、CD34、CD59、CD133、Sca-1、及びABCG2が挙げられる。神経幹細胞マーカーの非限定的な例としては、Nestin、PSA-NCAM、p75 Neurotrophin R、及びVimentinが挙げられる。幹細胞マーカーの他の非限定的な例としては、Oct4、Sox2、Klf4、LIN28、Nanog、SSEA-3、SSEA-4、Notch、及びWntが挙げられる。
【0523】
(5.7 診断法)
KIT抗原(例えば、KIT、例えば、ヒトKITのD4領域)に免疫特異的に結合する標識された又は別の方法で検出可能な抗体を診断目的で用いて、KIT関連疾患を検出し、診断し、又はモニタリングすることができる。
【0524】
本明細書に提供されるのは、KIT関連障害又は疾患を有する患者から得られた試料におけるKIT発現を検出するための方法である。特定の実施態様において、患者から得られた試料におけるKIT発現を検出するための方法は、該試料を本明細書に記載の抗KIT抗体と接触させ、例えば、抗KIT抗体のKITへの結合をKIT発現レベルと関連付けることによって、該試料中のKITの発現レベルを検出することを含む。検出方法は、当業者に公知である。
【0525】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KIT関連障害又は疾患を有する患者を診断するための方法である。ある態様において、KIT関連障害又は疾患を有する対象を診断する方法は、該対象から得られた試料を、本明細書に記載の抗KIT抗体(又はその抗原結合断片)と接触させ、該試料中のKITの発現レベルを検出することを含む。ある実施態様において、KIT関連障害又は疾患を有する患者を診断するための方法は、インビトロ法である。特定の実施態様において、KIT関連障害又は疾患を有する患者を診断するための方法は、エクスビボ法である。
【0526】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、KIT関連疾患を検出するための方法であって:(a)1以上の本明細書に記載の抗体を用いて、対象の細胞又は組織試料におけるKIT抗原の発現をアッセイすること;及び(b)KIT抗原のレベルを対照レベル、例えば、正常組織試料(例えば、KIT関連疾患を有さない患者由来のもの、又は疾患発症前の同じ患者由来のもの)中のレベルと比較することを含み、ここで、KIT抗原の対照レベルと比較したKIT抗原のアッセイレベルの増加は、KIT関連疾患を示すものである。
【0527】
検出法は、当業者に公知である。例えば、抗KIT抗体を検出可能な分子(例えば、第5.1.1節に記載されているもの)にコンジュゲートすることができ、該検出可能な分子を、標準的な技術(例えば、顕微鏡観察)を用いて可視化することができる。本明細書に記載の抗体を用いて、本明細書に記載の又は当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を用いて生体試料中のKIT抗原レベルをアッセイすることができる(例えば、Jalkanenらの文献、1985, J. Cell. Biol. 101:976-985;及びJalkanenらの文献、1987, J. Cell . Biol. 105:3087-3096を参照されたい)。タンパク質遺伝子発現を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、免疫アッセイ、例えば、ELISA及び放射免疫アッセイ(RIA)が挙げられる。好適な抗体アッセイ標識は当技術分野で公知であり、これには、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えば、ヨウ素(
125I、
121I)、炭素(
14C)、硫黄(
35S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
121In)、及びテクネチウム(
99Tc);発光標識、例えば、ルミノール;並びに蛍光標識、例えば、フルオレセイン及びローダミン、並びにビオチンが含まれる。具体的な実施態様において、本明細書に記載の診断法は、検出可能マーカーにコンジュゲートされていない裸の又は非標識の抗体の使用を含み、該裸の又は非標識の抗体は、例えば、標識することができる二次抗体を用いることによって、間接的に検出される。
【0528】
ある実施態様において、正常対照試料(例えば、KIT関連障害又は疾患に罹患していない健常患者から得られた試料)と比べた試料におけるKITの高発現は、患者がKIT関連障害又は疾患に罹患していることを示す。
【0529】
患者から得られた試料において、KIT関連障害又は疾患、例えば、癌を有する患者を診断する方法は、該試料を本明細書に記載の抗KIT抗体と接触させ、該試料中のKITの発現レベルを検出することを含む。ある実施態様において、正常対照試料(例えば、KIT関連障害又は疾患に罹患していない健常患者から得られた試料)と比べた試料におけるKITの高発現は、患者がKIT関連障害又は疾患に罹患していることを示す。
【0530】
ある実施態様において、試料は、患者の腫瘍に由来するか又は患者の腫瘍に由来する腫瘍細胞を含む、腫瘍試料であることができる。本明細書中の腫瘍試料の例としては、腫瘍生検、循環腫瘍細胞、循環血漿タンパク質、腹水、初代細胞培養物、又は腫瘍に由来するかもしくは腫瘍様の性質を示す細胞株、及び保存された腫瘍試料、例えば、ホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍試料又は凍結腫瘍試料が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、試料は、固定剤を用いて組織学的に保存されている固定された腫瘍試料である。いくつかの実施態様において、試料は、ホルムアルデヒドを固定剤として用いて保存されているホルマリン固定された腫瘍試料である。ある実施態様において、試料は、強固でかつ一般に硬い媒体、例えば、パラフィン、ろう、セロイジン、又は樹脂によって囲まれている包埋された腫瘍試料である。包埋は、検鏡用又は組織マイクロアレイ(TMA)作製用の薄片の切削を可能にする。特定の実施態様において、試料は、石油から誘導される固体炭化水素の精製混合物によって囲まれているパラフィン包埋腫瘍試料である。ある実施態様において、試料は、凍結される又は凍結されている凍結腫瘍試料である。具体的な実施態様において、試料、例えば、パラフィン包埋試料又は凍結試料を切片にする。
【0531】
ある態様において、KIT発現、増幅、又は活性化を示す癌又は生体試料は、診断検査で、KIT受容体を発現(過剰発現を含む)しており、KIT遺伝子を増幅させており、及び/又はさもなければ、KIT受容体の活性化もしくはリン酸化を示している、癌又は生体試料である。
【0532】
また本明細書に提供されるのは、ヒトにおけるKIT関連疾患の検出及び診断である。一実施態様において、診断は:a)対象に本明細書に記載の標識抗体の有効量を(例えば、非経口、皮下、又は腹腔内)投与すること; b)標識抗体が、KIT抗原が発現されている対象内の部位に優先的に集中する(及び未結合の標識分子がバックグラウンドレベルにまで除去される)のを可能にする投与後の時間間隔待つこと; c)バックグラウンドレベルを決定すること;並びにd)該対象において該標識抗体を検出することを含み、その結果、バックグラウンドレベルを上回る標識抗体の検出によって、該対象がKIT媒介性疾患を有することが示される。バックグラウンドレベルは、検出される標識分子の量を特定の系について過去に決定された標準値と比較することを含む、様々な方法によって決定することができる。
【0533】
対象のサイズ及び使用されるイメージングシステムが、診断画像を作成するのに必要とされるイメージング部分の量を決定することが当技術分野において理解されるであろう。放射性同位体部分の場合、ヒト対象について、注入される放射能の量は、通常、約5〜20ミリキュリーの
99Tcである。その後、標識抗体は、特定のタンパク質を含む細胞の場所に優先的に蓄積する。インビボ腫瘍イメージングは、S.W. Burchielらの文献、「放射性標識抗体及びその断片の免疫薬物動態(Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments)」(腫瘍イメージング:癌の放射性化学検出(Tumor Imaging: The Radiochemical Detection of Cancer)、S.W. Burchiel及びB.A. Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982)の第13章)に記載されている。
【0534】
使用される標識の種類及び投与様式を含むいくつかの変数によって、標識抗体が対象内の部位に優先的に集中し、及び未結合の標識分子がバックグラウンドレベルにまで除去されるのを可能にする投与後の時間間隔は、6〜48時間又は6〜24時間又は6〜12時間である。別の実施態様において、投与後の時間間隔は、5〜20日又は5〜10日である。
【0535】
一実施態様において、KIT媒介性疾患のモニタリングは、KIT媒介性疾患の診断法を、例えば、初回診断の1カ月後、初回診断の6カ月後、初回診断の1年後などに、反復することによって実施される。
【0536】
標識分子の存在は、インビボスキャニングについて当技術分野で公知の方法を用いて、対象内で検出することができる。これらの方法は、使用される標識の種類によって決まる。当業者は、特定の標識を検出するための適当な方法を決定することができるであろう。本発明の診断法で使用することができる方法及び装置としては、コンピュータ断層撮影法(CT)、全身スキャン、例えば、陽電子放出断層撮影法(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、及び超音波検査が挙げられるが、これらに限定されない。
【0537】
具体的な実施態様において、該分子は、放射性同位体で標識され、放射線応答性手術器具を用いて患者内で検出される(Thurstonら、米国特許第5,441,050号)。別の実施態様において、該分子は、蛍光化合物で標識され、蛍光応答性スキャニング装置を用いて患者内で検出される。別の実施態様において、該分子は、陽電子放出金属で標識され、陽電子放出断層撮影法を用いて患者内で検出される。また別の実施態様において、該分子は、常磁性標識で標識され、磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて患者内で検出される。
【実施例】
【0538】
(6.実施例)
この節(すなわち、第6節)の実施例は、例証を目的として提供されており、限定を目的とするものではない。
【0539】
(6.1 実施例1:抗KIT抗体の作製)
抗KIT抗体を、Composite Human Antibody(商標)技術(Antitope Ltd., Cambridge, United Kingdom)及びヒトKIT D4領域に免疫特異的に結合するマウス抗体37M(2012年1月25日に出願された米国特許出願第13/358,210号)のアミノ酸配列を用いて設計し、ヒトKIT D4領域に結合する、ヒトアミノ酸配列を有する抗KIT抗体を産生した。5つの重鎖可変領域配列(H1、H2、H3、H4、及びH5)並びに4つの軽鎖可変領域配列(L1、L2、L3、及びL4)を選択して、遺伝子合成、哺乳動物細胞での発現、並びに組換えKITドメインに対する直接的結合及び幹細胞因子(SCF)誘導性リン酸化を遮断する活性の検討に使用した。H1〜H5、L1〜L4のアミノ酸配列、及びそれらをコードする核酸配列を
図3A〜3Iに示す。
【0540】
H(重鎖)及びL(軽鎖)可変領域アミノ酸配列をコードする核酸分子を、ヒトIgG1 VH鎖及びヒトVκ鎖用の発現ベクターに直接クローニングした。全てのコンストラクトをシークエンシングにより確認した。IgG1 VH(H1-H5)及びVκ(L1-L4)鎖をコードするベクターを様々な組合せでCHO細胞(例えば、CHOdhfr-細胞)にトランスフェクトして、20種の抗体を産生した(表4、抗体Hum1〜Hum20を参照されたい)。ヒト定常ドメインとマウス37M可変ドメインを有するキメラ抗体であるキメラ抗体37C(2012年1月25日に出願された米国特許出願第13/358,210号)をコードするベクターもCHO細胞にトランスフェクトした。線状化されていないDNAを一過性にトランスフェクトした細胞を4日間インキュベートした後、上清を回収し、これをアッセイで直接又は精製に使用した。抗体を発現する細胞株を樹立するための安定なトランスフェクションを、線状化されたDNAを用いて実施し、その後、薬物で選択した。各コンストラクトについての薬物耐性コロニー由来の上清を、IgG1 ELISAを用いてIgG力価について試験し、最も良好に発現する株を、上清中のバックグラウンドを上回る(通常、>0.1μg/ml)IgG力価に基づいて選択し、薬物選択の存在下、24ウェルプレートから6ウェルプレート、T75組織培養フラスコ、及びT175組織培養フラスコへと拡大し、各段階でIgG発現についてスクリーニングした。0.1〜1μg/mlの力価が、最適化されていないCHOdhfr-細胞株に典型的である。抗体発現をクマシーブルー染色SDS-PAGEにより確認した。
【0541】
これらの特定の細胞において、大部分の抗体は、0.1〜1.0μg/mlの範囲の力価で発現され、特に、抗体Hum4は、1.2μg/mlの力価で発現された。
【0542】
(6.2 実施例2:ヒトKIT Ig様ドメインD4/D5に対する結合親和性)
標的抗原KIT Ig様ドメインD4/D5に対する抗KIT抗体の結合親和性を直接結合ELISAにより評価した。約1×10
-8Mから4.7×10
-13Mまでのキメラ抗体37C及びHum1〜Hum20抗体の希釈系列(3倍)を、ホウ酸塩バッファーに希釈した50ng/ウェルの組換えc-Kit Ig様ドメインD4/D5(
図2参照)で予めコーティングし、1%BSAで予め1時間ブロッキングした平底マイクロタイタープレートにて、室温で1時間インキュベートした。結合した抗体を抗ヒトIg-HRPで検出し、その後、TMB基質を用いて検出した。結果を下の表7に示す。
【0543】
表7:抗KIT抗体の結合特徴。
【表25】
EC50値(pM)を抗KIT抗体Hum1〜20について算出し、抗体の値を、対応する実験でのキメラ抗体37Cの値に対して正規化した。より高い値は、より強い結合活性を示す。各実験におけるキメラ抗体の実際のEC
50値を、その値を得るために平均化された反復の数とともに表の末尾に示す。(上清)=抗体を含む上清;(精製)=上清から精製された抗体。
【0544】
該抗体のうちのいくつか及びキメラ抗体37Cの結合活性を、ヒトKITのD4/D5領域(
図2参照)を含む抗原を用いる固相ELISAによりさらに特徴付けた。固相ELISA実験に使用された一般的なプロトコルを以下に記載する。
【0545】
(材料:)
・組換え抗原:KITの細胞外領域の組換えIGドメイン4及び5
・TBS-T: 50mM Tris pH 7.4、150mM NaCl、0.1%Tween 20
・TBS: 50mM Tris pH 7.4、150mM NaCl
・ブロッキング溶液: TBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)
・希釈バッファー: TBS-T中の1%BSA
・検出抗体溶液:ヤギ抗マウスIgG HRP抗体及び西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートされたPierce製のヤギ抗ヒトF(ab')
2特異的(Thermo scientific 31414)
・検出基質: TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)基質キット(Thermo scientific # 34021)
【0546】
KIT細胞外ドメインのD4/D5領域(
図2参照)に対応する組換え抗原を96ウェルマイクロタイタープレートに吸収させた。特に、組換え抗原(5μg)を10mLのホウ酸塩バッファー中に希釈し、100μLの抗原溶液を96ウェルプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。
【0547】
抗体試料の連続希釈液を、ELISA用の希釈バッファーを用いて調製した。
【0548】
ELISA: TBS-Tで1回すすいだ後、ブロッキングバッファー(200μL)を、吸着した抗原を含むプレートの各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。その後、ブロッキングバッファーを除去し、試験抗体及び対照の連続希釈溶液をプレートに50μLの容量で添加し、室温で1時間インキュベートした。抗体溶液を除去し、プレートを、プレート洗浄機にて、100μLの洗浄バッファーで3回洗浄した。最後の洗浄の後、プレートをブロット乾燥させた。二次抗体溶液を1:8000希釈し、各ウェルに100μLの容量で添加し、室温で1時間インキュベートしておいた。希釈した二次抗体溶液を除去し、プレートを、プレート洗浄機にて、100μLの洗浄バッファーで3回洗浄した。その後、新たに混合したTMB基質溶液を各ウェルに100μLの容量で添加し、室温で30分間インキュベートしておいた。その後、100μLの2N H
2SO
4を各ウェルに添加し、プレートリーダーですぐに読み取った。無関係な抗体は、陰性対照としての役割を果たし、KITの細胞外領域のD4及び/又はD5ドメインに対する抗KIT抗体は、陽性対照としての役割を果たした。各試料のOD値を450nMの波長で得た。
【0549】
結果を、Graph Pad Prism及びExcelを用いて解析し、抗原への50%結合時の抗体の濃度を得た。
【0550】
図5は、OD
450を抗KIT抗体の対数濃度(M)に対してプロットしたグラフを示す。ヒトKITのD4/D5領域に対する抗体37Mのキメラ並びに抗体Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10の結合親和性についての50%結合時有効濃度(EC
50)は、それぞれ、約12pM、6.6pM、11pM、7.5pM、及び23pMであると計算された。
【0551】
図5に示す結果は、抗体37Mのキメラ並びに抗体Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10の結合親和性が同程度であることを示している。
【0552】
さらなる結合アッセイにより、Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10は、ヒトKITに加えて、イヌKIT及びサルKITへの特異的結合を示すが、マウスKITへの特異的結合は示さないことが示された。
【0553】
(6.3 実施例3: CHO細胞上に発現したヒトKITに対する抗KIT抗体の結合親和性)
抗KIT抗体が、細胞の表面に発現したKITに結合することができることを確認するために、全長の野生型ヒトKIT受容体を外因性に発現するCHO細胞(CHO/KIT-WT)及びそれを発現しないCHO細胞(親CHO細胞)を用いて、フローサイトメトリーアッセイを実施した。簡潔に述べると、親CHO細胞及びCHO/KIT-WT細胞を洗浄し、0.01nM、0.1nM、1nM、又は10nMのキメラ(ヒト-マウス)37M抗体、抗体Hum17、Hum8、Hum4、もしくはHum10、陰性対照アイソタイプIgG抗体、又は陽性対照としての市販の抗KIT抗体とともにインキュベートした。試料をフローサイトメトリー解析用に処理した。より具体的には、細胞を、EDTAを用いて培養フラスコから除去し、PBSで洗浄した。その後、細胞を培地に再懸濁させ、計数した。約200,000〜250,000個の細胞を含む各試料をスピンし、培地を除去し、細胞をブロッキング工程用にFCバッファー(1×PBS中の1%BSA、0.01%アジ化ナトリウム)に再懸濁させた。細胞を、FCバッファー中、氷上で1時間インキュベートした。その後、一次抗体(例えば、キメラ(ヒト-マウス)37M抗体、Hum17、Hum8、Hum4、Hum10、陽性対照抗KIT抗体、又は陰性対照抗体)を上記のFCバッファー中の細胞に添加した。試料を混合し、氷上で1時間インキュベートし、その後、細胞を0.5〜1mLのFCバッファーで洗浄した。細胞を、1200rpmで3分間、4℃でスピンしてFCバッファーを除去し、液体をデカントで捨てた。細胞ペレットを200μLのFCバッファーに再懸濁させ、二次抗体(DyLight 488 AffiniPureヤギ抗マウスIgG Jackson Laboratories)を細胞に1:1000〜1:2000希釈で添加した。試料を混合し、氷上で1時間インキュベートし、その後、上記のように洗浄した。試料を蛍光活性化セルソーター(FACS)マシン(Accuri FlowCytometer C6)にかけた。試料を、DyLightコンジュゲート試料についてチャンネルFLA-1を観察することにより解析した。
【0554】
図6は、フローサイトメトリー解析の結果をまとめたものである。ヒトKITのD4/D5領域に対する抗体37Mのキメラ(ヒト-マウス)並びに抗体Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10の結合親和性についての50%結合時有効濃度(EC
50)は、それぞれ、約47pM、139pM、83pM、106pM、及び132pMであると計算された。
【0555】
図6に示す結果は、細胞表面に発現したヒトKITに対するキメラ37M抗体並びに抗体Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10の結合親和性が同程度であることを示している。
【0556】
(6.4 実施例4:細胞ベースのホスホ-KITアッセイにおけるSCFによって誘導されるKITリン酸化の阻害)
抗KITキメラ37M抗体及び本明細書に記載の特定の抗KIT抗体による細胞表面KITの幹細胞因子(SCF)媒介性リン酸化の阻害を細胞ベースのアッセイで次のように評価した:高い細胞表面抗原発現について選別されたCHO-KIT細胞を、血清の非存在下、24ウェル又は96ウェルプレートで一晩培養した後、1×10
-8M〜1.4×10
-11Mの試験抗体(上清から精製した本明細書に記載のキメラもしくは抗KIT抗体)又は対照ブロッキング抗体(BioLegend、クローンA3C6E2)の3倍希釈系列を添加した。
【0557】
37℃で2時間インキュベートした後、細胞を30ng/mLのSCF(R&D Systems、カタログ番号255-SC/CF)で、37℃で10分間刺激し、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤の存在下で溶解させ、KITタンパク質を、KIT捕捉抗体(Thermo Scientific、カタログ番号、LVMS289-PABX)で予めコーティングした白壁の96ウェルMaxisorpプレートにて、全溶解物から捕捉した。96ウェルフォーマットについては、2連のウェルを各々の条件に対して用意し、溶解させ、捕捉プレートに別々に移したが、24ウェルフォーマットについては、溶解物の複製試料を同じウェルから採取した。4℃で一晩インキュベートし、プレートを徹底洗浄した後、HRPコンジュゲート抗ホスホチロシンクローン4G10(Millipore、カタログ番号16-105)及びWest PICO化学発光基質(Fisher、カタログ番号PN34087)を用いて、チロシンリン酸化KITを検出した。結果を下の表8に示す。
【0558】
表8:ブロッキングアッセイ
【表26】
IC
50値(pM)をこれらの抗体について算出し、値を対応する実験でのキメラ37M抗体の値に対して正規化した。より大きい値は、より強いブロッキング活性を示す。「(96ウェル)」は、24ウェルフォーマット(24ウェル)とは対照的に、96ウェルプレートフォーマットで実施されたアッセイを指す。
【0559】
表8の結果は、抗体Hum4、Hum8、Hum9、Hum10、Hum13、Hum14、Hum15、Hum17、Hum18、及びHum19のブロッキング活性が、抗体37Mのキメラのブロッキング活性と同程度であることを示している。
【0560】
KIT活性、特に、KITの細胞質ドメインのSCF誘導性チロシンリン酸化に対するこれらの抗体の効果をさらに特徴付けるために、細胞ベースのホスホ-KITアッセイを次のように実施した。
【0561】
(材料:)
・ヒト卵巣cDNAライブラリー(OriGene, Rockville, Maryland)からクローニングされた全長ヒトKITをコードするプラスミド(
図1参照)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞
・完全細胞培養培地(表9参照)
・飢餓培地: FBSを含まない、表9に記載の細胞培養培地
・トリプシン-EDTA
・PBS
・SCF溶液: rhSCF(RD Systems 255-SC/CF);最終濃度30ng/mL
・溶解バッファー: 50mM Tris pH 7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、1%Triton X-100、EDTA非含有プロテアーゼ阻害剤カクテル錠(Roche Diagnostics 04693132001)、1mM NaVO
4
・TBS-T: 50mM Tris pH 7.4、150mM NaCl、0.1%Tween 20
・ブロッキング溶液: TBS-T中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)
・希釈バッファー: 1mM NaVO
4を含むTBS-T中の1%BSA
・検出抗体溶液:西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートされた抗ホスホ-チロシン抗体(Millipore, 4G10);希釈倍数1:500
・捕捉抗体: Thermo Scientific製の抗KIT抗体Ab3(MS-289-PABX)
【0562】
表9:細胞培養培地
【表27】
【0563】
CHO/KIT-WT細胞の継代:コンフルエントな細胞を滅菌PBSで1回洗浄し、細胞がプラスチック製の組織培養プレートから剥離するまで、0.25%トリプシン-EDTAとともに室温でインキュベートした。FBSを含む完全培養培地をプレートに添加して、トリプシン消化を終わらせた。
【0564】
細胞の計数:10マイクロリットルの細胞懸濁液を10μLの0.4%トリパンブルーと混合した。この混合物の半分(10μL)を細胞計数チャンバー(Invitrogen)に移し、細胞を計数した。細胞(1ウェル当たり200,000個)を24ウェル細胞培養プレートに移し、通常の細胞培養条件(すなわち、37℃の加湿された95%大気及び5%CO
2雰囲気)下、完全培地(表9)中で24時間培養した。
【0565】
細胞処理:細胞を24ウェルプレートにプレーティングし、一晩培養し、培地を除去し、細胞単層を飢餓培地で1回洗浄した。その後、細胞を、通常の細胞培養条件下、飢餓培地中で24時間培養した。その後、細胞を、通常の細胞培養条件下、キメラ(ヒト-マウス)37M抗体、Hum4、Hum8、Hum10、Hum17、又は対照抗体溶液で2時間処理した。抗体溶液の最終濃度は100nM(5μg/mL)以下であった。その後、SCF溶液を、30ng/mLの最終濃度の抗KIT抗体又は対照抗体で前処理した細胞に、通常の細胞培養条件下で10分間添加した。
【0566】
(対照:)
・陰性対照:飢餓状態、未処理、かつ未刺激の細胞
・陽性対照:飢餓状態、未処理、かつSCF刺激した細胞
・薬物対照:1μM Gleevecで処理し、SCFで刺激した飢餓細胞
・抗体対照:100nMブロッキング抗体(SCF結合部位に結合する精製マウス抗ヒトKIT抗体(BioLegend A3C6E2))で処理した、飢餓状態の細胞
【0567】
細胞溶解物の調製:刺激後、24ウェルプレート中の細胞を直ちに氷上に置き、細胞を冷PBSで1回洗浄し、100μLの冷溶解バッファーで溶解させた。
【0568】
捕捉抗体を含む96ウェルELISAプレートの調製:捕捉抗体(5μL)を10mLの50mMホウ酸塩バッファーに希釈し、捕捉抗体溶液(100μL又は50ng/ウェル)を96ウェルELISAプレートの各ウェルに添加した。96ウェルプレートを室温で5〜6時間又は4℃で一晩インキュベートした。該捕捉抗体溶液をブロッキング工程の前に除去した。ブロッキングは、100μLのブロッキング溶液を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートしておくことにより実施した。ブロッキング溶液を除去し、ウェルを希釈バッファーで1回洗浄し、50μLの希釈バッファーを各ウェルに添加した。
【0569】
ホスホ-KITアッセイ: 24ウェルプレートのウェルからの各々の試料の50μLの細胞溶解物を、50μLの希釈バッファーを含む、調製された96ウェルプレートの1つのウェルに移し、96ウェルプレートを4℃で一晩インキュベートした。一晩のインキュベーションの後、上清を除去し、プレートをTBS-Tで3回洗浄した(毎回5分間インキュベートした)。検出抗体希釈液(100μL)を各ウェルに添加し、暗所にて、室温で1時間インキュベートした。プレートをTBS-Tで3回洗浄し、TBSで1回洗浄し、TBSを除去した。「SuperSignal West Dura Extended Duration Substrate」試薬(Thermo Scientific)を混合し(1:1)、100μLの混合物を各ウェルに添加した。
【0570】
発光を、GEN5(商標)プロトコル「Luminescence Glow」を用いて、ELISAプレートリーダーで検出し、データを、Microsoft Excelを用いて解析した。
【0571】
図7は、これらの実験のデータをプロットしたグラフを示す。このグラフは、抗体37Mのキメラ(ヒト-マウス)又は抗体Hum17、Hum8、Hum4、もしくはHum10のいずれかの対数濃度(M)に対する任意発光単位のプロットである。キメラ37M、Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10抗体の50%阻害濃度(IC
50)は、それぞれ、約344pM、510pM、542pM、470pM、及び510pMであると計算された。これらの結果は、抗体Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10が、37Mキメラ抗体と同様に、KITの細胞質ドメインのリガンド(SCF)誘導性チロシンリン酸化の有効な阻害剤であることを示している。
【0572】
これらの抗KIT抗体は、抗体の特性、例えば、結合活性及びブロッキング活性に実質的に影響を及ぼすことなく、種々の異なる細胞型で発現させることができる。例えば、抗KIT抗体Hum17、Hum8、Hum4、及びHum10は、HEK293-Freestyle(293F)細胞に基づく異なる組換え発現系で発現し、KITリン酸化阻害アッセイで測定したとき、ブロッキング活性を示した。これらの結果は、本明細書に記載の抗KIT抗体、例えば、抗体Hum1〜Hum20を、抗体活性を損なわずに発現させるために、種々の細胞系を使用することができることを示している。
【0573】
(6.5 実施例5:野生型KITを発現するCHO細胞による抗体内在化)
野生型KITを発現するCHO細胞(「CHO/KIT-WT」)による抗体Hum4、Hum10、Hum17、及びHum8の内在化を評価するために、免疫蛍光染色アッセイを実施した。
【0574】
免疫蛍光染色アッセイは、本質的に下記の通りに実施した。免疫蛍光アッセイ用の材料及び試薬には、下記のものが含まれた:
・一次抗体:抗体Hum4、Hum8、Hum10、Hum17、37M、及びβ-チューブリン(9F3)ウサギモノクローナル抗体(mAb)(Cell Signaling #2128)。
・二次抗体: Oregon Green(登録商標) 488にコンジュゲートされたヤギ抗マウス抗体(Invitrogen #011038)、Texas Redにコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体(Invitrogen #T2767)、及びAlexa Fluor 488にコンジュゲートされたヤギ抗ヒト抗体(Invitrogen #A11013)。
・固定剤: 4%パラホルムアルデヒド(PFA)(40%PFA検鏡等級を冷蔵庫で保存し、使用直前にPBSで1:10希釈する)
・透過処理溶液:滅菌濾過した、0.1%Triton X-100及び0.5%BSAを含むPBS
・ブロッキング/希釈溶液:滅菌濾過した、PBS中の2%BSA
・封入媒体: DAPI(P36931 Invitrogen)(4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を含むProLong(登録商標)Gold退色防止試薬
・外因性ヒト野生型KIT(全長)を発現するように改変されたCHO細胞(「CHO/KIT-WT」)
【0575】
CHO細胞(例えば、1ウェル当たり75,000個の細胞)を、1ウェル当たり1枚の丸いガラスのカバーガラスを含む24ウェル組織培養プレートに播種した。細胞を少なくとも6時間培養した後、胎仔ウシ血清を含まない培地中で一晩飢餓処理した。飢餓処理後、培養培地を細胞から除去し、抗体37M、Hum4、Hum10、Hum17、又はHum8を33.3nMになるまで1%ウシ血清アルブミンを含む飢餓培地に希釈し、タイムコースを作成するために、0分、30分、45分、又は55分の時点で細胞層の上に移した。細胞を、表示した時間、標準的な培養条件(37℃及び5%CO
2)下でインキュベートした。抗体を添加してから5〜60分後、細胞層をPBS(室温)で1回洗浄した。細胞層を4%PFAで室温で20分間固定し、PBSで3回洗浄した。細胞膜を、3分間の透過処理溶液の添加により透過処理し、その後、PBSで3回洗浄した。ブロッキング溶液を各ウェルに添加し、細胞を室温で20分間ブロッキングした。β-チューブリン(9F3)ウサギmAbを希釈溶液に1:100希釈し、細胞層とともに室温で1時間インキュベートし、その後、PBSで2回及びブロッキング溶液で1回洗浄した。両方の二次抗体を1:200で希釈溶液に一緒に希釈した後、細胞に添加した。細胞を、二次抗体中、暗所にて、室温で1時間インキュベートし、その後、PBSで3回洗浄した。カバーガラス上の細胞を、1滴のProLong(登録商標)Gold退色防止試薬をDAPIとともに用いて、ガラススライドに対して封入し、室温で一晩保持した。抗体の内在化を、様々な時点、例えば、抗体37M、Hum4、Hum10、Hum17、又はHum8に曝露してから5分及び60分で、蛍光顕微鏡観察により解析した。
【0576】
免疫蛍光染色アッセイにより、CHO/KIT-WT細胞において、抗体Hum4、Hum10、Hum17、及びHum8は、抗体37Mと同様に、これらの細胞の表面に結合し、これらの細胞によって内在化されることが示された。特に、これらの抗体に曝露された細胞の画像は、早い時点での、例えば、抗KIT抗体への曝露後5分での、膜関連構造の染色を示し、後半の時点での、例えば、抗体への曝露後60分での、内部構造(例えば、小胞)の染色を示す。対照的に、対照としての抗β-チューブリン抗体に曝露された細胞の画像は、細胞の細胞質全体にわたる伸長した構造の染色を示した。これらの結果は、抗体Hum4、Hum10、Hum17、及びHum8がKITを発現している細胞によって内在化されることを示している。抗体の効果的な内在化は、例えば、KITを発現している細胞、例えば、癌細胞に毒素を送達するのに有用である。
【0577】
(6.6 実施例6:安定性データ)
治療用抗体の開発の成功は、一つには、インビボでの抗体安定性の特徴付けによって決まる。この目的のために、本明細書に記載の抗KIT抗体のサブセットの相対的熱安定性と模擬生理的条件(すなわち、血清、37℃)下での相対的安定性の両方を特徴付けた。
【0578】
(示差走査熱量測定:)
示差走査熱量測定(DSC)は、関心対象の試料が相転移、例えば、融解又は結晶化を受ける点を決定するために使用される熱分析技術である。それゆえ、DSCは、複数の抗体の相対的熱安定性を比較するための有用なツールである。この目的のために、本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20)のサブセットを、DSCを用いて解析し、これらの抗体の融解温度を決定した。各々の抗KIT抗体の融解プロファイルから、1つの主要な融解ピーク、及び1つ又は2つの微小ピークが明らかになった。一般的な融点が85.7℃〜86.6℃の範囲である一方、微小ピークは71.6℃〜71.9℃であると計算された。これらの結果は、融解温度が37℃よりも顕著に高いことを示し、これらの抗KIT抗体が、治療環境で、例えば、37℃で安定であり得ることを示している。
【0579】
(血清安定性:)
生理的条件下での本明細書に記載の抗KIT抗体の安定性をより良く理解するために、胎仔ウシ血清中、37℃での長期インキュベーションの後に、抗体活性を評価した。簡潔に述べると、抗KIT抗体を0.2mg/mLになるまで無血清培地又は50%胎仔ウシ血清を含む培地に希釈した。試料を37℃で1、2、及び3週間インキュベートし、これらの時点で、アリコートを、4℃で同じ期間保存した抗体と、先の実施例に記載されている結合ELISAと細胞ベースのリン酸化アッセイの両方で比較した。4℃の抗体を参照として用いて、結合ELISAアッセイにより、1週間後、EC
50値の最大変化は4倍であるが、わずか1.1倍程度であり、一方、4℃の抗体を対照として用いると、2週間後、最大変化は4倍であることが明らかになった。これと一致して、血清とともに又は血清なしで、37℃で保存されたこれらの同じ抗KIT抗体についての細胞ベースのリン酸化アッセイでのIC
50値は、4℃で保存された抗体のIC
50値と2倍未満しか異ならなかった。
【0580】
総合すると、これらのデータは、各々の抗体の結合及びブロッキング活性としての本明細書に記載の抗KIT抗体の長期安定性が、血清中と高温下の両方でのインキュベーションの後に維持されることを示唆している。これらの結果は、本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、Hum1〜Hum20)が活性の維持を示すことができ、例えば、より頻度の低い投与レジメンで使用することができることを示している。
【0581】
(6.7 実施例7:リガンド誘導性AKTリン酸化の遮断)
本明細書に記載の抗KIT抗体(例えば、Hum1〜Hum20)を、KITシグナル伝達の下流シグナル伝達事象であるAKTリン酸化を阻害又は遮断する活性についてアッセイする。該アッセイを、以下の変更を加えて、上記の通りに実施する。まず、マウス抗AKT抗体をELISAプレートに捕捉抗体として固定する。次に、2工程法を用いて、AKTリン酸化(ホスホ-AKT)の検出を行う。細胞溶解物を、コーティングしたELISAプレートとともにインキュベートした後、ホスホ-AKT(Ser473)を認識するビオチン化マウスモノクローナル抗体を1:500の希釈で各ウェルに室温で1時間添加する。このインキュベーション及び後続の洗浄の後、ホスホ-AKT抗体を1:2500の希釈のProtein Western Cストレプトアビジン-HRP抗体(BioRad)で検出する。TMB基質溶液を用いる最終検出工程を本明細書に記載の通りに行う(例えば、第6.2節及び第6.4節)。
【0582】
(6.8 実施例8:癌の治療における抗KIT抗体の動物モデル研究)
本明細書に記載の抗KIT抗体の抗腫瘍効果を、ヒト腫瘍のマウスモデル、例えば、異種移植マウスモデルを用いて確認する。癌を研究するための様々なマウスモデルが記載されている(例えば、Fernandezらの文献、J. Clin. Invest., 2007, 117(12): 4044-4054を参照されたい)。以下では、種々の患者由来ヒト細胞株から得られたマウスモデル、例えば、異種移植マウスモデルが記載されている。毒性を評価するためのマウスモデルも以下に記載されている。
【0583】
(消化管間質性腫瘍(GIST))
GISTのマウスモデルが記載されており、例えば、Fernandezらの文献、J. Clin. Invest., 2007, 117(12): 4044-4054を参照されたい。例えば、GIST細胞を、0.05%トリプシン-EDTA(Invitrogen)への短時間の曝露によって、サブコンフルエントな培養物から回収する。トリプシン処理を、10%FBSを含む培地を用いて停止させる。その後、細胞を無血清培地中で2回洗浄し、無血清HBSS(Invitrogen)に再懸濁させる。トリパンブルー排出により測定したとき95%超の生存率を有する一細胞懸濁液を注射に用いる。腫瘍を生じさせるために、100μl当たり1×10
5〜1×10
7個のGIST細胞、例えば、6×10
6個のGIST細胞を各々のSCIDマウスの一方の脇腹に皮下注射する(例えば、Harlan Sprague Dawley社から購入した雌C.B-17/IcrHsd-Prkdc
SCIDマウス;米国実験動物ケア評価認証協会(American Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)、米農務省(United States Department of Agriculture)、米保健福祉省(United States Department of Health and Human Services)、及びNIHにより認可され、かつこれらに準拠した施設で飼育し;施設内ガイドラインに従って使用する)。ビヒクル及び抗KIT抗体群で1群当たり5〜10匹のマウスを使用する。腫瘍が触診可能になったら(例えば、注射から約8〜11週)、マウスは、生理食塩水(ビヒクル)又は抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20もしくはその抗体-薬物コンジュゲート)の注射、例えば、毎日、毎週、又は隔週の腹腔内注射による治療に入る。処置を、週1回の腫瘍サイズの2次元測定を伴って、一定期間、例えば、約6週間継続する。腫瘍サイズを検出するためのイメージング法、例えば、MRIを使用することもできる。腫瘍サイズが対照群で約1.5cmに達したら、全てのマウスを屠殺する。腫瘍を収集し、ホルマリン中で固定し、H&E染色により解析する。代表的な画像を、×40及び×100の倍率で光学顕微鏡を用いて、各々の腫瘍から取得する。
【0584】
ビヒクル陰性対照と比べたマウスにおける腫瘍成長に対する抗KIT抗体の効果を確認するために、腫瘍注射後の時間(例えば、日又は週)に対してプロットした各々のマウスの腫瘍サイズ又は体積のグラフを作成する。
【0585】
これらのマウスモデルで使用し得るGIST細胞の非限定的な例としては、GIST 430細胞(エキソン11の欠失(V560〜L576)及びエキソン13のV654A突然変異を有する突然変異したKITを発現しているヒトGIST細胞)並びにGIST882細胞(KIT中にホモ接合性エキソン13ミスセンス突然変異(すなわち、K642E)を有する不死GIST細胞(例えば、Tuvesonらの文献、Oncogene, 2001, 20: 5054-5058)を参照)が挙げられる。
【0586】
(白血病)
白血病に対する抗KIT抗体の効果を検討するために、ヒト白血病細胞(例えば、K562、HEL、又はHL60細胞)を用いる異種移植マウスモデルを、白血病細胞(例えば、K562、HEL、又はHL60細胞)をGIST細胞の代わりにマウスに注射することを除いて、本質的には上記の通りに樹立する。特に、腫瘍細胞をサブコンフルエントな懸濁液から収集する。腫瘍を生じさせるために、100μl当たり1×10
5〜1×10
7個の腫瘍細胞を各々のSCIDマウスに注射する。その後、マウスを以下の群に無作為に割り付ける(1群当たりn=5〜10):(a)毎日の生理食塩水;及び(b)抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20又はその抗体-薬物コンジュゲート)。マウスは、(例えば、第0日目、第7日目、もしくは第14日目に、又は腫瘍が検出可能になったときに)生理食塩水(ビヒクル)又は抗KIT抗体の注射(例えば、毎日、毎週、又は隔週の腹腔内注射)による治療に入る。処置を、週1回の腫瘍サイズの2次元測定を伴って、一定期間、例えば、約6週間継続する。腫瘍サイズを検出するためのイメージング法、例えば、MRIを使用することもできる。腫瘍を治療中毎週及び剖検時に測定する。
【0587】
ビヒクル陰性対照と比べたマウスにおける腫瘍成長に対する抗KIT抗体の効果を確認するために、腫瘍注射後の時間(例えば、日又は週)に対してプロットした各々のマウスの腫瘍サイズ又は体積のグラフを作成する。
【0588】
ヒト白血病細胞を、他の経路、例えば、静脈内経路を介して、ヌードマウス又は放射線照射マウスに注射し、動物の死を、抗KIT抗体による治療の存在下又は非存在下での白血病の進行の兆候としてモニタリングすることによって、ヒト白血病のマウスモデルを作製することもできる。生存に対する抗KIT抗体の効果を確認するために、生存曲線を各々のマウスについて作成する。
【0589】
(肺癌(例えば、小細胞肺癌))
ヒト肺癌細胞、例えば、ヒト小細胞肺癌細胞(例えば、H526細胞、WBA細胞、又はNCI-H209細胞)を用いる異種移植マウスモデルを、わずかな変更を除いて、本質的には上記の通りに樹立する。例えば、肺癌細胞(例えば、小細胞肺癌細胞)をGIST細胞の代わりにマウスに注射する。肺癌細胞、例えば、H526腫瘍細胞を収集し、100μl当たり1×10
5〜1×10
7個の肺癌細胞を各々のマウス(例えば、SCIDマウス)に注射する。その後、マウスを以下の群に無作為に割り付ける(例えば、1群当たりn=5〜10):(a)毎日の生理食塩水;及び(b)抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20又はその抗体-薬物コンジュゲート)。マウスは、(例えば、第0日目、第7日目、もしくは第14日目に、又は腫瘍が検出可能になったときに)生理食塩水(ビヒクル)又は抗KIT抗体の注射(例えば、毎日、毎週、又は隔週の腹腔内注射)による治療に入る。処置を、週1回の腫瘍サイズの2次元測定を伴って、一定期間(例えば、約6週間以上)継続する。腫瘍サイズを検出するためのイメージング法、例えば、MRIを使用することもできる。腫瘍を治療中毎週及び剖検時に測定する。
【0590】
ビヒクル陰性対照と比べたマウスにおける腫瘍成長に対する抗KIT抗体の効果を確認するために、腫瘍注射後の時間(例えば、日又は週)に対してプロットした各々のマウスの腫瘍サイズ又は体積のグラフを作成する。動物の生存に対する抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ、もしくはそれらの抗原結合断片、又はそれらのコンジュゲート)の効果を確認するために、生存曲線を作成する。
【0591】
肺癌(例えば、小細胞肺癌)のマウスモデルが記載されており(例えば、Gartonらの文献、2006, Cancer Res. 66(2):1015-24;及びWolffらの文献、2004, Clin Cancer Res. 10:3528-3534を参照)、本明細書に記載の抗KIT抗体の効果を検討するために相応に適応させることができる。
【0592】
(肉腫)
異種移植モデルを、ユーイングファミリーの腫瘍、例えば、RD-ES、SK-ES-1、もしくはSK-N-MC、又は横紋筋肉腫、例えば、A-673に由来する細胞株を用いて樹立する。細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC; Manassas、VA)から入手可能である。通常、上記の方法と同様の方法を利用する。例えば、2.5〜5×10
6個の細胞をトリプシン/EDTAとともに懸濁させるか、又は100〜200μLの成長培地に再懸濁させ、6〜8週齢の免疫不全マウス(NuNu、SCID)(Charles River Laboratories、Wilmington、MA)の脇腹に皮下移植する。ビヒクル群と抗KIT抗体群の両方で1群当たり5〜10匹のマウスを使用する。腫瘍が触診可能になるか又は100〜200mm
3に達したら、マウスは、生理食塩水(ビヒクル)又は抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20もしくはその抗体-薬物コンジュゲート)の注射(例えば、毎日、毎週、又は隔週の腹腔内注射)による治療に入る。処置を、一定期間、例えば、約6週間以上継続し、腫瘍サイズを(例えば、2次元測定によって週2回)評価する。腫瘍サイズを検出するためのイメージング法、例えば、MRIを使用することができる。腫瘍サイズが対照群で一定のサイズ(例えば、約1.5cm)に達したら、マウスを屠殺する。腫瘍を収集し、ホルマリン中で固定し、H&E染色により解析する。代表的な画像を、例えば、×40及び×100の倍率で光学顕微鏡を用いて、各々の腫瘍から取得する。
【0593】
ビヒクル陰性対照と比べたマウスにおける腫瘍成長に対する抗KIT抗体の効果を確認するために、腫瘍注射後の時間(例えば、日又は週)に対してプロットした各々のマウスの腫瘍サイズ又は体積のグラフを作成する。
【0594】
肉腫のマウスモデル(例えば、ユーイング肉腫)が記載されており(例えば、以下の刊行物のリストを参照)、抗KIT抗体(例えば、抗体Hum1〜Hum20のいずれか1つ)の効果を評価するために、相応に適応させることができる:
【0595】
Gonzalezらの文献、2004, Clin Cancer Res.10(2):751-61;
【0596】
Landuzziらの文献、2000, Am J Pathol. 157(6):2123-31(6647細胞);
【0597】
Merchantらの文献、2002, JNCI 94(22):1673-1679(TC71細胞);
【0598】
Sturlaらの文献、2000, Cancer Res. 60(21):6160-70(TC32及びRD-ES細胞);
【0599】
Powisらの文献、2006, Mol Cancer Ther. 5(3):630-636(A-673細胞);
【0600】
Watanabeらの文献、2008, Hum Gene Ther. 19(3):300-10(A-673細胞);
【0601】
Rouleauらの文献、2008, Clin Cancer Res. 14(22):7223-7236(A-673細胞);
【0602】
Karmakarらの文献、2011, World J Oncol. 2(2):53-63(RD-ES及びSK-N-MC細胞);
【0603】
Wangらの文献、2009, In vivo 23(6):903-9(TC71細胞);並びに
【0604】
Ikedaらの文献、2010, Mol Cancer Ther.(3):653-60(TC71細胞及びA4573細胞)。
【0605】
(ヒト化マウスモデル)
抗KIT抗体薬物コンジュゲートを含む抗KIT抗体、例えば、その抗体-薬物コンジュゲートを含むHum1〜Hum20抗体による検討を、免疫不全マウスにヒト免疫系の構成要素を生着させることによって作製されたマウスモデル、例えば、ヒト化NSGマウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, Maine)を用いて実施する。ヒト化NSGマウスは、ヒト免疫系を再構成するためにヒト造血幹細胞(hCD34
+細胞)を生着させたNOD scid IL-2受容体ガンマ鎖ノックアウトマウス(NSG)である。
【0606】
これらのマウスは、抗KIT抗体の毒性を検討するためのプラットフォームとしての役割を果たすことができる。例えば、マウスの群(例えば、1〜5匹のマウス)に、様々な濃度の抗KIT抗体を、一定期間(例えば、4〜16週間)にわたって注射する。該マウスを、毒性指標、例えば、体重、生存期間について評価する。
【0607】
(6.9 実施例9:軟寒天アッセイにおけるKIT発現CHO細胞によるコロニー形成の阻害)
本明細書に記載の抗KIT抗体、例えば、Hum1〜Hum20を、CHO/KIT-WT細胞の軟寒天アッセイで足場非依存性細胞成長を阻害するその能力について試験する。コロニー形成の軟寒天アッセイは、細胞の悪性形質転換を検出するための有用なアッセイである足場非依存性成長アッセイである。インビトロ形質転換は、特定の表現型変化、例えば、接触阻害の喪失(細胞は互いに重なって成長することができる)及び足場非依存性の喪失(細胞は軟寒天中にコロニーを形成する)と関連する。一般に、非形質転換細胞は、粘性流体又はゲル(例えば、寒天もしくはアガロース)に懸濁させたとき、成長しないが、これらの細胞が形質転換されると、それらは、粘性流体又はゲル中で成長することができ、足場非依存性になる。これらの表現型変化が起こる過程は、生体内発癌の過程と密接に関係があると考えられる。
【0608】
軟寒天アッセイを次のように実施する。土台となる寒天層(寒天及び細胞培養培地を含有する)を96ウェルプレートの各ウェルに添加する。細胞寒天層(寒天、細胞培養培地、及び細胞懸濁液を含有する)を、土台となる寒天層の上に添加する。抗KIT抗体を細胞培養培地に希釈し、該層の上にピペッティングする。対照試料は抗体を含有しない。プレートを、30ng/mLのSCFの存在下又は非存在下、37℃及び5%CO
2で5〜8日間インキュベートする。リガンドのSCF及び抗KIT抗体(100nM)を寒天に同時に添加する。
【0609】
処理が終了すると、寒天を可溶化し、細胞を溶解させる。緑色蛍光Cyquant(登録商標)GR色素を溶解物と混合する。この色素は、細胞核酸に結合したとき、蛍光を示す。蛍光を480nm励起及び520nm放射で測定する。
【0610】
本明細書に記載の実施態様は、単に例示的であることが意図されており、当業者は、本明細書に記載の具体的な手順に対する数多くの等価物を認識するか、又はルーチンの実験だけを用いて、それを確かめることができるであろう。全てのそのような等価物は、本発明の範囲の範囲内であると考えられ、以下の特許請求の範囲によって包含される。さらに、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上そうでないことが明示されない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」に対する言及は、2以上のそのような抗体(antibodies)の混合物などを含む。さらに、当業者は、操作手順が、説明及び請求の目的のためにある特定の順序で示されなければならないが、本発明は、そのような特定の順序を超える様々な変化を想定していることを認識するであろう。
【0611】
本明細書に引用される全ての参考文献(特許出願、特許、及び刊行物を含む)は、あたかも各々の個々の刊行物又は特許又は特許出願が、あらゆる目的のために引用により完全に本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個別的に示されるのと同じ程度まで、引用により完全に及びあらゆる目的のために本明細書中に組み込まれる。