特許第6307107号(P6307107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307107装飾要素を支持体にマウントする方法及び支持体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307107
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】装飾要素を支持体にマウントする方法及び支持体
(51)【国際特許分類】
   A44C 17/02 20060101AFI20180326BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20180326BHJP
   B23K 35/32 20060101ALI20180326BHJP
   B23K 35/28 20060101ALI20180326BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20180326BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20180326BHJP
   C22C 5/02 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 5/06 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 9/00 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 5/04 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 14/00 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 18/04 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 28/00 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 19/05 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 21/02 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 9/04 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 9/05 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 30/00 20060101ALN20180326BHJP
   C22C 19/03 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
   A44C17/02
   B23K35/30 310A
   B23K35/30 310B
   B23K35/30 310C
   B23K35/30 310D
   B23K35/32 310A
   B23K35/32 310B
   B23K35/32 310Z
   B23K35/28 310A
   B23K35/28 310D
   B23K35/28 310Z
   B23K35/26 310A
   B23K35/26 310D
   B23K35/26 310Z
   G04B45/00 D
   !C22C5/02
   !C22C5/06 Z
   !C22C9/00
   !C22C5/04
   !C22C14/00 Z
   !C22C18/04
   !C22C28/00 B
   !C22C13/00
   !C22C19/05 B
   !C22C21/02
   !C22C9/04
   !C22C9/05
   !C22C30/00
   !C22C19/03 G
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-92302(P2016-92302)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2016-209581(P2016-209581A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】15166256.6
(32)【優先日】2015年5月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・デュバック
(72)【発明者】
【氏名】ステュース・ブルバン
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ・ヴュイユ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−クロード・マルタン
【審査官】 大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/096260(WO,A1)
【文献】 特開平08−066791(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/059990(WO,A1)
【文献】 特開2014−189871(JP,A)
【文献】 特開平09−227904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 17/02
B23K 35/26
B23K 35/28
B23K 35/30
B23K 35/32
G04B 45/00
C22C 5/02
C22C 5/04
C22C 5/06
C22C 9/00
C22C 9/04
C22C 9/05
C22C 13/00
C22C 14/00
C22C 18/04
C22C 19/03
C22C 19/05
C22C 21/02
C22C 28/00
C22C 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの装飾要素(3)を支持体(2)にマウントする方法であって、
(a)空欠部(4)を少なくとも1つ設けられた支持体(2)を用意するステップと、
(b)少なくとも1つの装飾要素(3)を用意するステップと、
(c)少なくとも1つの金属粉及び少なくとも1つの有機バインダーを含有するペースト状の複合充填材で前記空欠部を充填するステップと、
(d)前記空欠部を充填した前記複合充填材が液体になるように前記複合充填材を融点よりも高い温度まで加熱するステップと、
(e)非アモルファスの基材(6)を形成するように前記複合充填材を冷却させるステップと、
(f)前記基材(6)において少なくとも1つのハウジング(8)を形成するステップと、及び
(g)前記装飾要素(3)を前記ハウジング(8)にマウントするステップと
順次実施することを特徴とするマウントする方法。
【請求項2】
前記複合充填材は、前記複合充填材の全体積に対して50体積%以上金属性粉末を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合充填材は、さらに、少なくとも1つの酸洗い剤を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属粉は、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ、ガリウム、インジウム、ニッケル、ケイ素、ゲルマニウム及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属性元素を、元素単体又は合金の形態で含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記複合充填材の前記有機バインダーは、セルロース、グリセリン、グリコール、樹脂、石油留出物及びその混合物からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記マウントするステップ(g)は、前記装飾要素を押し込むことによって行う
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記マウントするステップ(g)は、セッティングによって行われ、
前記マウントするステップ(g)は、前記基材(6)においてグリップ手段(5)を形成し、このグリップ手段(5)を変形させることによって前記装飾要素(3)をセッティングすることを伴い、これによって、前記ハウジング(8)内に前記装飾要素(3)を維持する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記充填するステップ(c)の前に、前記支持体(2)の前記空欠部(4)の表面を金属化するステップ(h)を有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記冷却させるステップ(e)と前記形成するステップ(f)の間に、前記空欠部の近傍に存在するいずれの充填材をも除去するステップ(i)を有する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記充填するステップ(c)から前記冷却させるステップ(e)までが、少なくとも2回連続して行われる
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの装飾要素(3)を受けることを意図されており、少なくとも1つの空欠部(4)が形成されている装飾支持体(2)であって、
この空欠部(4)は、基材(6)を形成する充填材で充填されており、
前記基材(6)には、少なくとも1つのハウジング(8)が設けられており、
前記ハウジング(8)は、前記装飾要素(3)を受けるように凹状を呈しており、
前記充填材は、少なくとも1つの金属粉及び少なくとも1つの有機バインダーを含有するペースト状の複合充填材から得られ
前記基材(6)は、融点よりも高い温度まで加熱された前記充填材の中の前記金属粉が冷却し凝固した非アモルファスであ
ことを特徴とする装飾支持体(2)。
【請求項12】
前記複合充填材の前記金属粉は、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ、ガリウム、インジウム、ニッケル、ケイ素、ゲルマニウム及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属性元素を元素単体又は合金の形で含有する
ことを特徴とする請求項11に記載の装飾支持体(2)。
【請求項13】
セラミックス、サーメット、ケイ素、サファイア、ルビー、ダイヤモンド及び石英からなる群から選択される材料で作られている
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の装飾支持体(2)。
【請求項14】
前記複合充填材の金属粉を形成する基本的な元素は、支持体(2)を形成する基本的な元素と同じである
ことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の装飾支持体(2)。
【請求項15】
前記基材(6)は、さらに、変形して前記装飾要素(3)を保持するように変形するグリップ手段(5)を有する
ことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の装飾支持体(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの装飾要素を支持体にマウントする方法に関する。本発明は、さらに、少なくとも1つの装飾要素を受けることを意図され、装飾要素を受けるように構成している少なくとも1つのハウジングが形成された基材を形成する充填材で充填された少なくとも1つの空欠部が形成された装飾支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計又は宝石類のような着用可能な物にて用いられるように意図され、石、特に貴石、のような装飾要素を有するような従来技術の装飾支持体が知られている。
【0003】
このために、支持体は、一般的に、金属合金で作られており、ハウジングを形成するように機械加工される。このようなハウジングに、圧入やセッティングによって装飾要素をマウントすることができる。セッティングによる組み立ての場合には、機械加工時にフックの形態のグリップ手段が形成される。概して言えば、これらのフックは、着用可能な物を形成する材料で作られる。すなわち、着用可能な物と一体的にされる。装飾要素をセッティングする必要がある場合、装飾要素は、ハウジング内に配置され、グリップ手段は、冷間加工され折り曲げられ、これによって、ハウジング内に装飾要素を保持する。このセッティング方式は、貴石を金属支持体にセッティングするために広く用いられている。なぜなら、金属は、塑性変形のための好ましい能力を有するからである。この能力は、金のような貴金属を用いる場合は、さらに有利である。これらの貴金属には展性があり、成形が容易であるからである。
【0004】
しかし、この方法の課題として、対象が、展性のある金属又は金属合金で作られた支持体に制限されるということがある。しかし、塑性変形しない材料で作られる計時器がますます多くなっている。このような材料は、しばしば硬く及び/又は壊れやすい。例えば、セラミックス、サファイア、ケイ素、複合材(例、サーメット)であり、金属間化合物合金であることもある。
【0005】
結果的に、貴石のような装飾要素をセッティングする現行の手法を用いることができなくなっている。
【0006】
このようなセッティング操作の代わりに、接着結合の操作を行うことができる。接着結合の課題として、石の保持を100%確実にすることができないということがある。なぜなら、セッティングと異なり、この技術が石の機械的保持を伴わないからである。実際に、ほとんどの場合、結合領域は外部環境(湿度、汗、UV、大気汚染など)に露出するので、長期にわたって結合を保持することが難しい。結果的に、貴石を所定位置に保持することを確実にすることができない。このことは、高品質の製品の場合には許容しがたい。また、接着性の塩析する製品が腕時計又は宝石類の他の部品に対して有毒性及び/又は腐食性を有するリスクもある。また、装飾要素には、事前の機械加工が必要となる。このことは、特に、装飾要素が複雑な幾何学的構成を有する場合には、困難であったり高コストであったりすることがある。
【0007】
欧州特許EP2315673において、別の手法が提案されている。この手法は、アモルファス物質で作られた装飾要素を、支持体の中に圧入することによって、嵌め込むことを伴う。この方法は、アモルファスのプレフォームを使用することを必要とする。しかし、アモルファス形態で存在する合金の数は制限されている。これによって、腕時計又は宝石類と合うような必要な色を有する合金を常に見つけることができるとは限らない。例えば、黄色や赤色っぽい金色のアモルファス合金は存在しない。また、嵌め込む方法は、特定の圧入力をかけることを必要とする。これによって、支持体が脆弱又は壊れやすい材料で作られている場合には利用することが難しい。
【0008】
欧州特許出願EP2796297において、別の手法が提案されている。これは、特に、アモルファス合金で作られた基材に装飾要素をセッティングすることを伴う。しかし、これにおける様々な方法は、アモルファス金属を加熱してから冷却することを記載している。これは、金属のアモルファス状態を保持するために必ず迅速に行われなければならない。急冷は熱衝撃を発生させる。これによって、内部応力が支持体に現れ、変形又は亀裂を発生させてしまうことがある。また、セッティング方法は、セッティング時にてグリップ手段を変形させることを必ず伴う。このことは、特定の弾性特性に起因して変形することが難しいことがあるアモルファス金属を用いる場合には、困難であることが明らかであることがある。さらに、上に示すように、アモルファス形態の既存の合金の数は制限されている。このために、腕時計又は宝石類と合う所望の色を有する合金を常に見つけることができるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、装飾要素をマウントする既知の方法の様々な課題を解決することを目的とする。
【0010】
より詳細には、本発明は、脆弱ないし壊れやすい支持体を用いることができるような支持体に装飾要素をマウントする方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、支持体の組成及び色に適応させることができるような支持体に装飾要素をマウントする方法を提供することも目的とする。
【0012】
また、本発明は、単純で経済的な手法で実装することができるような支持体に装飾要素をマウントする方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このために、本発明は、少なくとも1つの装飾要素を支持体にマウントする方法に関し、
(a)空欠部を少なくとも1つ設けられた支持体を用意するステップと、
(b)少なくとも1つの装飾要素を用意するステップと、
(c)少なくとも1つの金属粉及び少なくとも1つの有機バインダーを有し充填時に1000〜1000000mPa・sの粘性を有する複合充填材で前記空欠部を充填するステップと、
(d)前記複合充填材が液体になるように前記複合充填材を融点よりも高い温度まで加熱するステップと、
(e)基材を形成するように前記複合充填材を冷却させるステップと、
(f)前記基材において少なくとも1つのハウジングを形成するステップと、及び
(g)前記装飾要素を前記ハウジングにマウントするステップとを有する。
【0014】
この方法によって、ペースト状の複合充填材を用いることが可能になる。これによって、支持体に応力を与えずに局所的に導入することが単純になり、また、急冷を必要としない。また、当該複合充填材は、バインダー及び任意の添加剤における金属粉の選択において大きな柔軟性を与える。このことによって、複合充填材と支持体との親和性を改善することができる。
【0015】
本発明は、さらに、少なくとも1つの装飾要素を受けることを意図されており、少なくとも1つの空欠部が形成されている装飾支持体に関し、この空欠部は、基材を形成する充填材で充填されており、前記基材には、少なくとも1つのハウジングが設けられており、前記ハウジングは、前記装飾要素を受けるように構成しており、前記充填材は、少なくとも1つの金属粉及び少なくとも1つの有機バインダーを有し充填時に1000〜1000000mPa・sの粘性を有する複合充填材から得られる。
【0016】
複合材料を使用することによって、基材の色を支持体の色に適応させることが可能になる。
【0017】
添付図面に図示されておりもっぱら例(これに制限されない)としてのみ与えられる本発明の少なくとも1つの実施形態についての下記の詳細な説明を読むことで、本発明の目的、利点及び特徴をより明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を用いる装飾支持体の概略断面図である。
図2】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図3】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図4】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図5】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図6】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図7】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図8】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
図9】本発明に係るマウントする方法のステップを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明に係る装飾支持体2を有する装飾部分1に装飾要素3がマウントされている。装飾部分1は、例えば、指標が嵌め込まれている腕時計ベゼルである。この指標は、装飾要素を形成する。また、装飾部分1は、腕時計の風防又は表盤、あるいは腕時計ないし計時器の任意の内側部品又は外側部品であることができる。さらに、装飾部分1は、ペン又はカフスボタン、あるいは指輪又はイアリングのような宝石類であることができる。
【0020】
支持体2は、任意の種類の材料で作ることができる。特に、任意の硬く、壊れやすく、伝統的なセッティング方法を行うことができないほど十分な塑性変形性がないような材料で作ることができる。支持体2の材料は、複合充填材よりも高い融点を有する。好ましくは、支持体2は、セラミックス、サーメット、サファイア、ルビー、ダイヤモンド、ケイ素、石英又はガラスからなる群から選択される材料で作られる。装飾要素3がマウントされる支持体2の表面は、平坦であることができ、また、曲がっていることができる(凹面又は凸面)。
【0021】
支持体2には、基材6を形成する充填材で充填されている空欠部4が形成されており、この基材6は、装飾要素3を受け、かつ、装飾要素3を支持体2にマウントすることを可能にするように使用される。特に、基材6は、装飾要素3を保持するように変形するグリップ手段5を有することができる。
【0022】
このために、本発明に係る支持体2に装飾要素3をマウントする方法は、第1のステップ(a)を有する。これは、図2に示すように、好ましくは、セラミックスのような塑性変形しない材料で作られる、支持体2を用意し、図3に示すように、支持体2において少なくとも1つの空欠部4を形成することを伴う。空欠部4は、支持体2の材料に適している、例えば、レーザー加工又は他の技術によって、形成することができる。好ましくは、空欠部4は、支持体2の可視表面に垂直な側面を有する。この後の支持体2内における基材6の保持を改善するために、空欠部4内において、逆テーパ形状、グリップ孔又は空欠部4の底部における任意の他の特定の構造を機械加工で形成することができる。
【0023】
また、支持体2に装飾要素3をマウントする方法は、好ましいことに、ステップ(c)の前に、空欠部4の表面の金属化を行う付加的なステップ(h)を有することができる。空欠部4の壁は、金属化層で被覆することができる。これによって、支持体2に対する複合充填材の接着を改善する。このような金属化層は、金、ニッケル又はクロムによって作ることができ、複合充填材よりも高い融点を有することができる。
【0024】
当該方法のステップ(b)は、装飾要素3を用意することを伴う。これらの装飾要素3は、ダイヤモンド又はルビーのような貴石、又はジルコン又は他の適切な装飾要素のような非貴石であることができる。
【0025】
当該方法の次のステップ(c)は、複合充填材で空欠部4を充填することを伴う。本発明によると、複合充填材は、少なくとも1つの金属粉、少なくとも1つの有機バインダー及び任意の添加剤を含有し、充填の時点において1000〜1000000mPa・sの粘性を有する。
【0026】
このような複合充填材は、例えば、Hilderbrand & Cie SAによって販売されているはんだペーストの形態で入手可能である。複合充填材がペーストの形態であることによって、空欠部4内に複合充填材を非常に容易に局所的に導入することができる。具体的には、複合充填材がペースト状であることによって、支持体2に対して何ら機械的応力を与えずに、空欠部4を充填することが可能になる。結果的に、支持体2が壊れやすい材料で作られていても、壊れにくくなる。充填時において、すなわち、空欠部4内に複合充填材を導入する時点において、複合充填材の粘性は、好ましくは、5000〜500000mPa・sである。複合充填材は、チキソトロピー性を有するものであることができ、安静時にはより高い粘性を有するものであることができる。
【0027】
好ましくは、金属粉は、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ、ガリウム、インジウム、ニッケル、ケイ素、ゲルマニウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属性元素を元素単体又は合金の形で含有する。
【0028】
金属粉組成の例を下の表に記載する。
【0029】
【表1】
【0030】
白金、パラジウム又は金を用いて作られた貴金属合金は、特に好ましい。これらの耐食性及び色彩安定性が良好であるからである(着用時に酸化したり変色したりすることがない)。
【0031】
金属粉に用いられる金属粒子の直径は、典型的には500μm未満、好ましくは、100μm未満である。粒径分布は、単峰型(ユニモーダル)分布であることも多峰型(マルチモーダル)分布であっててもよい。複合材の全体積における金属相の体積百分率を増加させるために、多峰型分布(例、双峰分布)を選ぶことができる。好ましいことに、複合充填材は、複合充填材の全体積に対して金属性粉末を50体積%以上含有し、好ましくは、60体積%以上含有する。
【0032】
有機バインダーは、一般的に、ペースト状の複合充填材の所望の特性に応じて選択された有機バインダーの混合物の形態である。好ましくは、有機バインダーは、セルロース、グリセリン、グリコール、樹脂、石油留出物及びこれらの混合物からなる群から選択される。バインダーは、複合充填材を加熱するステップにおいて除去される。
【0033】
好ましいことに、複合充填材は、表面の酸化を除去し、液体の複合充填材と支持体の間の湿潤性を改善するために、少なくとも1つの酸洗いやフラックス添加剤のような添加剤を含有することができる。酸洗い又はフラックス添加剤は、鉱塩及び/又は酸の混合物によって形成されている。例えば、ホウ酸、ホウ砂、ホウ素、アルカリ金属のホウ酸塩(五ホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウムなど)、アルカリ金属のフッ化水素塩(フッ化アルミニウム、重フッ化水素カリウムなど)、塩化物(塩化亜鉛、塩化リチウム、塩化アンモニウムなど)、酸(塩酸、リン酸など)である。添加剤は、複合充填材を加熱するステップにおいて除去される。
【0034】
当該方法の次のステップ(d)は、複合充填材をその融点よりも高い温度まで加熱して、複合充填材を溶融させて液体にすることを伴う。複合充填材は、炉、レーザービーム、イオンビーム又は他の熱的手段のようなエネルギー手段によって加熱される。その温度は、複合充填材の性質に依存し、例えば、200℃〜1000℃であることができる。複合充填材が液体であることによって、空欠部4の形にかかわらず空欠部4の体積全体を充填することができるという利点を有する。これは、特に、その良好な湿潤性及び/又は毛管効果によってである。
【0035】
当該方法の次のステップ(e)は、充填材を冷却することを伴う。冷却温度サイクルは標準のものである。典型的には、冷却時には、工業用のろう付け炉内で10℃/分〜100℃/分で温度を低下させる。急冷は行っていない。冷却され凝固した充填材は、結晶形態の基材6を形成する。
【0036】
ステップ(c)〜(e)を少なくとも2回連続して行うことができる。実際に、空欠部4が1回目に充填された後、冷却後に空欠部4内の充填材が収縮することがある。したがって、少なくとも複合充填材の第2の層を空欠部4内で設けることが必要となり、これによって、上記ステップ(c)〜(e)に従って加熱された後で冷却される。ステップ(c)〜(e)は、充填材が空欠部4内における所望の高さに達するまで繰り返される。
【0037】
場合に応じて、ステップ(e)と(f)の間で次のステップ(i)がある。これは、空欠部4近くに存在する充填材を除去することを伴う。空欠部4のまわりのこの余分な充填材を、研磨、機械加工のような任意の適切な方法によって除去することができる。
【0038】
図4に示すように、ここで、非アモルファスの純粋に金属の基材6で充填された空欠部4が形成されている支持体2が得られる。有機バインダーと添加剤は、加熱するステップ(d)において焼けてなくなっていたり蒸発していたりする。
【0039】
図5に示すように、当該方法の次のステップ(f)は、基材6に少なくとも1つのハウジング8を形成することを伴う。このステップは、機械加工、ミリング、ドリルのような伝統的な手法で行うことができる。
【0040】
当該方法の次のステップ(g)は、ハウジング8内に装飾要素3をマウントすることを伴う。
【0041】
第1の変種によれば、この装飾要素3をマウントするステップ(g)は、要素内に押し込むことによって行う。これを達成するために、装飾要素3は、空欠部4よりもわずかに大きな寸法を有し、空欠部4内に強制的に押し込まれるように作られる。
【0042】
第2の変種によれば、装飾要素3をマウントするステップ(g)は、セッティングによって行う。この場合、このステップ(g)は、基材6においてグリップ手段5を作り、グリップ手段5を変形させることによって装飾要素3をセッティングすることを伴う。これによって、装飾要素3をそのハウジング8内に維持する。具体的には、グリップ手段5は、少なくとも1つのセッティング要素9の形態である。このセッティング要素9は、ビードセッティングの例の場合には、各ハウジング8の周部に設けられるスタッド又はビードからなる。図6及び7に示すように、これらのスタッド9は、ハウジング8が形成される前又は後に、機械加工することによって作られる。実際に、ハウジング8が機械加工される時に、基材6の材料の一部が除去され、セッティング要素9が形成される。好ましくは、ビードセッティングの場合には、理想的には、ハウジング8の近傍に4つのセッティングビード9が設けられる。
【0043】
他のタイプのセッティングを思い描くことができることは明白である。例えば、閉じたセッティング、バゲット(baguette)セッティング、レールセッティング又は見えないセッティングである。例えば、閉じたセッティングは、装飾要素3の周部にわたって延在する単一のセッティング要素9からなる。バゲットセッティングは、長方形のバゲット状に切断された装飾要素3をセッティングするために用いられる。このセッティングには、装飾要素3の両側に平行に延在し装飾要素3上に折り曲げられるようなセッティング要素9を設けることを伴う。見えないセッティングを用いる場合、セッティング要素9は、ハウジング8内に設けられた突出部として構成している。これらの突出部は、装飾要素3に設けられた少なくとも1つの溝と連係する。これにおいて、突出部が溝内に挿入されるまでハウジング8内に装飾要素3を挿入することによって、セッティングを行う。
【0044】
セッティングするステップは、装飾要素3をハウジング8内に配置して、グリップ手段5を変形させて、グリップ手段5を装飾要素3に押しつけることを伴う。結果的に、装飾要素3は、ハウジング8内に維持される。図8に示すように、グリップ手段5の変形は、各セッティング要素9を変形させるために用いられるビーディング工具100と呼ばれる工具によって行う。このようにして、図9に示すようなセッティングされた装飾要素3が得られる。基材6を形成する充填材は、グリップ手段が変形することができるように十分な展性を有する。
【0045】
装飾要素を基材にマウントするために他の適切な方法も使用することかできることは明白である。本発明の利点の1つは、装飾要素を任意の種類の材料にマウントすることができることであり、特に、硬く及び/又は壊れやすい材料にマウントすることができる。実際に、利用される原理は、挿入の原理である。すなわち、変形することができる材料で作られている基材が塑性変形不能な材料内に挿入されている。これによって、装飾要素をマウント、例えば、セッティングすることが可能になり、セッティングされているのが塑性変形不能な材料であると錯覚させる。塑性変形不能であるような支持体の材料は、いずれの機械的応力をも与えられず、したがって、壊れにくい。
【0046】
支持体2におけるマウントの錯覚を維持するために、空欠部4の幅は、理想的には、装飾要素3の幅と同じように構成している。結果的に、装飾要素3と空欠部4の縁の間の距離を最小限、理想的にはゼロに、減らさなければならない。これによって、充填材は見えず、充填材内ではなく、セラミックスなどで作られる支持体2内に、装飾要素3が埋め込まれ続けるという印象を与える。実際上は、装飾要素3と空欠部4の縁の間の距離は、装飾要素3の寸法及び形に依存する。例えば、直径が1mmの装飾要素3の場合、装飾要素3と空欠部4の縁の間の距離は、0.45mmになる。
【0047】
また、複合充填材を使用することによって、非常に多い数の異なる組成を有することが可能になり、これによって、色が調整された基材を形成することができる。これは、例えば、装飾要素の色への調整、又は装飾支持体が用いられる要素の他の要素に対しての調整である。
【0048】
また、複合充填材を使用することによって、複合充填材と支持体との親和力を改善する非常に多くの数の異なる組成を有することが可能になる。具体的には、複合充填材を使用することによって、複合充填材と支持体との化学的相性を良くするような組成の選択において大きな柔軟性が与えられる。例えば、複合充填材の金属性粉末を形成する基本的な元素は、支持体2を形成する基本的な元素と同じである。これによって、複合充填材と支持体が化学親和力を有することが確実になる。また、複合充填材が支持体と同等な熱膨張係数を有するように、複合充填材の組成を選ぶことができる。酸洗い剤を追加することによって、複合充填材の湿潤性を改善することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 装飾部分
2 支持体
3 装飾要素
4 空欠部
5 グリップ手段
6 基材
8 ハウジング
9 セッティング要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9