特許第6307118号(P6307118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307118
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】柑橘香味付与乃至増強剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20180326BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20180326BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20180326BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20180326BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20180326BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20180326BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A23L27/20 D
   A21D13/80
   A23G3/34 101
   A23G9/00 101
   A23L2/02 B
   A23L29/20
   C07C47/21CSP
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-137311(P2016-137311)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-7592(P2018-7592A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2016年8月5日
【審判番号】不服2017-3828(P2017-3828/J1)
【審判請求日】2017年3月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野澤 俊文
(72)【発明者】
【氏名】角田 恒平
【合議体】
【審判長】 紀本 孝
【審判官】 槙原 進
【審判官】 山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−530277(JP,A)
【文献】 特開2014−231498(JP,A)
【文献】 特開昭62−292897(JP,A)
【文献】 特開2016−47011(JP,A)
【文献】 特開2016−96729(JP,A)
【文献】 特開2016−54694(JP,A)
【文献】 J.Sci.Fd.Agric.,1976年,Vol.27,p.721−725
【文献】 International Journal of Food Properties,2012年,Vol.15,p.736−747
【文献】 New Food Industry,2014年,Vol.56,No.10,p.1−14
【文献】 PERFUMER & FLAVORIST,2009年,Vol.34,p.26−28
【文献】 J.AM.Chem.Soc.,1960年,Vol.82,p.4918−4920
【文献】 Bulletin of Electrochemistry,1993年,Vol.9,p.632−634
【文献】 食品と香り,株式会社光琳発行,2004年,35−38頁
【文献】 香料,2009年,Vol.243,p.85−96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 2/84
A23L 27/00 - 27/60
A23L 29/00 - 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を有効成分とする柑橘香味付与乃至増強剤。
【請求項2】
請求項1に記載の柑橘香味付与乃至増強剤を、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を基準として、1ppt〜100ppmの濃度範囲で含有させた柑橘香料組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の柑橘香味付与乃至増強剤を、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を基準として、0.001ppt〜100ppbの濃度範囲で含有させた柑橘香味を有する飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘特有のピール感およびワックス様のある香味を付与または増強する柑橘香味付与乃至増強剤に関し、更に詳しくは、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1つまたは2つ以上を極微量添加することにより、従来にない柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を付与または増強する柑橘香味付与乃至増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性が多様化してきていることに伴い、各種各様の商品の開発が望まれている。特に、飲食品業界はこの傾向が強く、消費者の嗜好性に合うバラエティーに富んだ飲食品の開発が強く要求されている。これらの要求に対して、飲食品の一つの原料素材である香料についても、従来から提案されている香料化合物だけでは十分には対応しきれず、従来にないユニークな香気香味特性を有し、且つ、その持続性に優れた香料化合物の開発が緊急の課題となっている。オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライム、ユズなどの柑橘類で香味付けられた製品においても、より天然感のある香気香味を有する香料化合物が要求されている。
【0003】
従来から提案されている柑橘香味を付与する化合物としては、柑橘果皮をイメージさせるピーリーなフレッシュ感を付与することができる、(Z)−ペンタデセナール(二重結合の位置が7位〜10位のもの)(特許文献1)、香酸柑橘様の香味、特に香酸柑橘独特にピール感を増強することができる、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノン(特許文献2)、和柑橘類の香気または風味を増強することができる、4,5−エポキシ−2E−デセナール(特許文献3)、柑橘特有の果皮様のボディー感のある香味を付与することができる、(E)−6−ノネナール(特許文献4)および、シネンサール様柑橘香気を示す、2,6,10−トリメチル−2,6,11−ドデカトリエナール(特許文献5)などが挙げられる。しかしながら、これらの化合物では、柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を満足に与えることはできなかった。
【0004】
8−トリデセナールは公知化合物であり、コリアンダーの揮発性成分として見出されていることが報告されている(非特許文献1)。また、(Z)−8−トリデセナールについては、合成法が記載されている(非特許文献2)。しかしながら、8−トリデセナールは、従来、調合香料の素材としては使用されず、ましては柑橘香味を付与または増強することは記載も示唆もされていない。
【0005】
(E)−7−トリデセナールは公知化合物であり、合成中間体としての記載があるが(非特許文献3)、香料成分としては記載されていなかった。また、(Z)−7−トリデセナールは公知化合物であり、オリビ(アフリカに住むウシ科の哺乳類)の体臭腺の分泌物中から特定されているが(非特許文献4)、香料成分としては記載されていなかった。ましてや、これらの化合物を調合香料の素材として、香味の付与または増強することは記載も示唆もされていない。
【0006】
さらに、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールについては新規化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−27833号公報
【特許文献2】特開2010−88348号公報
【特許文献3】特開2009−82048号公報
【特許文献4】特開2009−203438号公報
【特許文献5】特開2008−308456号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Sci. Fd Agric. 27,721−725,(1976)
【非特許文献2】Bulletin of Electrochemistry 9(11−12),632−634(1993)
【非特許文献3】J. Amer. Chem.Soc. 82,4918−20(1960)
【非特許文献4】J. Chemical Ecology,21(8),1191−1215,(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は柑橘特有のピール感およびワックス様のある香味を付与または増強することができる柑橘香味付与乃至増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行ってきた結果、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を極微量添加することにより、柑橘特有のピール感およびワックス様のある香味を付与または増強することができることを見いだし、さらにその柑橘香味付与乃至増強剤を飲食品に有効量添加することにより、柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を付与または増強することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明は以下のものを提供する。
(1)(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を有効成分とする柑橘香味付与乃至増強剤。
(2)(1)に記載の柑橘香味付与乃至増強剤を、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を基準として、1ppt〜100ppmの濃度範囲で含有させた柑橘香料組成物。
(3)(1)に記載の柑橘香味付与乃至増強剤を、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を基準として、0.001ppt〜100ppbの濃度範囲で含有させた飲食品。
(4)(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1つまたは2つ以上を有効成分とする香味付与乃至増強剤。
(5)(4)に記載の香味付与乃至増強剤を、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を基準として、1ppt〜100ppmの濃度範囲で含有させた香料組成物。
(6)(4)に記載の香味付与乃至増強剤を、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールからなる群から選択される1種または2種以上を基準として、0.001ppt〜100ppbの濃度範囲で含有させた飲食品。

【0012】
本発明の柑橘香味付与乃至増強剤は、柑橘香味を有する物質に配合して使用される。配合の対象となる物質は、柑橘香味を有すればその種類を問わない。当該物質としては、香料、飲食品が例示される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の柑橘香味付与乃至増強剤の有効成分である、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールは、オレンジ様、レモン様、グレープフルーツ様、ライム様、ユズ様などの香気を有する柑橘香料組成物中に1ppt〜100ppm添加することで、柑橘特有のピール感およびワックス様のある香味を付与または増強することができる。また、その柑橘香味付与乃至増強剤を飲食品に有効量添加することにより柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を付与または増強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の態様について更に詳しく説明する。
【0015】
本発明で使用される、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールは、以下の式で示すことができる。
【0016】
【化1】
【0017】
(上記式中、二重点線は単結合または二重結合を示し、いずれか1箇所が二重結合であり、それ以外は単結合を示す)
【0018】
本発明で使用される、(E)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールは、例えば以下の工程で調製することができる。
【0019】
【化2】
【0020】
(上記工程においてm=3、n=5の場合、(E)−7−トリデセナール:m=2、n=6の場合、(E)−8−トリデセナール:m=1、n=7の場合、(E)−9−トリデセナール)
【0021】
すなわち、水酸基を保護したブロモ体と、アルキンをカップリングさせ、水酸基を脱保護させたあと、リチウムを用いた還元により(E)体とし、酸化することにより、目的とする(E)−アルケナールを調製することができる。
【0022】
本発明で使用される、(Z)−7−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(Z)−9−トリデセナールは、例えば以下の工程で調製することができる。
【0023】
【化3】
【0024】
(上記工程においてm=3、n=5の場合、(Z)−7−トリデセナール:m=2、n=6の場合、(Z)−8−トリデセナール:m=1、n=7の場合、(Z)−9−トリデセナール)
【0025】
すなわち、水酸基を保護したブロモ体と、アルキンをカップリングさせ、水酸基を脱保護させたあと、リンドラー触媒を用いた還元により(Z)体とし、酸化することにより、目的とする(Z)−アルケナールを調製することができる。
【0026】
(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールは、柑橘香味を有する飲食品に対して単独で使用しても良いが、好ましくはオレンジ様、レモン様、ライム様、グレープフルーツ様、ユズ様などの柑橘香料組成物に該化合物を極微量配合して香料組成物を得、それを飲食品に配合することで、従来にはない柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を付与または増強することができる。
【0027】
かかる柑橘香料組成物の素材としては、例えば、オシメン、リモネン、α−フェランドレン、テルピネン、3−カレン、ビサボレン、バレンセンなどの炭化水素類;3−ヘプタノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、プレノール、10−ウンデセン−1−オール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロムゴール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、オシメノール、テルピネオール、3−ツヤノール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコールなどのアルコール類;アセトアルデヒド、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−メチルオクタナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−4−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、トランス−2−トリデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ドデカジエナール、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、シトラール、ジメチルオクタナール、α−メチレンシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ネラール、α−あるいはβ−シネンサール、マイラックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジメチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタールなどのアルデヒド類;3−ヘプタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、2−トリデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、2,3,5−トリメチル−4−シクロヘキセニル−1−メチルケトン、ネロン、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、アセトフェノン、4,7−ジヒドロ−2−イソペンチル−2−メチル−1,3−ジオキセピンなどのケトン類;ギ酸プロピル、ギ酸オクチル、ギ酸リナリル、ギ酸シトロネリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸ネリル、ギ酸テルピニル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸シス−3−ヘキセニル、酢酸トランス−2−ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸ジメチルウンデカジエニル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、酢酸ジヒドロミルセニル、酢酸リナリル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸テトラヒドロムゴール、酢酸ラバンジュリル、酢酸ネロリドール、酢酸ジヒドロクミニル、酢酸テルピニル、酢酸シトリル、酢酸ノピル、酢酸ジヒドロテルピニル、酢酸2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルメチル、酢酸ミラルディル、酢酸ベチコール、プロピオン酸デセニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸ネリル、プロピオン酸テルピニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、プロピオン酸スチラリル、酪酸オクチル、酪酸ネリル、酪酸シンナミル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸オクチル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ネリル、イソ吉草酸リナリル、イソ吉草酸テルピニル、イソ吉草酸フェニルエチル、2−メチル吉草酸2−メチルペンチル、3−ヒドロキシヘキサン酸メチル、3−ヒドロキシヘキサン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸リナリル、ノナン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、安息香酸リナリル、ケイヒ酸メチル、アンゲリカ酸イソプレニル、ゲラン酸メチル、クエン酸トリエチルなどのエステル類;チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテルなどのフェノール類;γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトンなどのラクトン類;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸などの酸類;アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、N−メチルアントラニル酸メチル、N−2′−メチルペンチリデンアントラニル酸メチル、リガントラール、ドデカンニトリル、2−トリデセンニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、3,7−ジメチル−2,6−ノナジエノニトリル、インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、チオゲラニオール、リモネンチオール、P−メンチル−8−チオールなどの含窒素・含硫化合物類など公知の合成香料化合物及び柑橘果皮の圧搾、溶剤抽出、水蒸気蒸留などにより得られる柑橘香料などを挙げることができ、これらを任意に組み合わせて混合した柑橘香料組成物を挙げることができる。また、ここで柑橘とは、例えばオレンジ、スイートオレンジ、ビターオレンジ、ネロリ、マンダリン、プチグレン、ベルガモット、タンゼリン、レモン、グレープフルーツ、スウィーティー、ライムなどのほか、ユズ、シークワーサー、スダチ、イヨカン、ダイダイ、ハッサク、カボス、温州ミカンなどの和柑橘をあげることができる。
【0028】
本発明の(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールの配合量は、その目的あるいは柑橘香料組成物の種類によっても異なるが、例えば、柑橘香料組成物の全体重量に対して1ppt〜100ppm、好ましくは、10ppt〜10ppm、より好ましくは100ppt〜1ppmの範囲を例示することができる。これらの範囲内では、柑橘香料組成物に対し柑橘のピール感、フレッシュ感およびワックス様などを付与乃至増強する優れた効果を有する。一方、柑橘香料組成物に対する前記化合物の配合量が100ppmを越える場合には、アルケニルアルデヒド特有の石鹸様等の香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、柑橘香料組成物に対する前記化合物の配合量が1pptを下回る場合は本発明特有の香気・香味付与乃至増強効果が得られない。
【0029】
本発明の(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールの配合量は、その目的あるいは香料組成物の種類によっても異なるが、例えば、香料組成物の全体重量に対して1ppt〜100ppm、好ましくは、10ppt〜10ppm、より好ましくは100ppt〜1ppmの範囲を例示することができる。香料組成物に対する前記化合物の配合量が100ppmを越える場合には、アルケニルアルデヒド特有の石鹸様等の香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、香料組成物に対する前記化合物の配合量が1pptを下回る場合は本発明特有の香気・香味付与乃至増強効果が得られない。
【0030】
さらに、本発明は、(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールを有効成分とする柑橘香味付与乃至増強剤を含有させた柑橘香料組成物を有効量添加したことを特徴とする飲食品に関し、該製品に柑橘特有のフレッシュでピール感のある香気・香味を付与または増強することができる。かかる飲食品としては特に制限はなく、広い分野の各種飲食品に配合利用することができる。飲食品としては、例えば、コーラ飲料、果汁入炭酸飲料、乳類入炭酸飲料などの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、乳酸菌飲料、乳飲料などの食系飲料類;栄養ドリンク、滋養ドリンクなどの医薬部外品飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類及びそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類及びそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類;をあげることができる。
【0031】
また、本発明の(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−8−トリデセナール、(Z)−8−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールの飲食品への配合量は、その目的あるいは飲食品の種類によっても異なるが、前記柑橘香味付与乃至増強剤を有効量添加することにより柑橘特有のフレッシュでピール感のある香味を付与または増強することができる。その際の飲食品の前記化合物の含有量は、例えば、飲食品の全体重量に対して0.001ppt〜100ppb、好ましくは、0.01ppt〜10ppb、より好ましくは0.1ppt〜1ppbの範囲を例示することができる。一方、飲食品の全体重量に対する前記化合物の配合量が100ppbを越える場合には、アルケニルアルデヒド特有の石鹸様等の香気・香味特性が出てしまい好ましくない。また、飲食品の全体重量に対する前記化合物の配合量が0.001pptを下回る場合は本発明特有の香気・香味付与乃至増強効果が得られない。
【0032】
またさらに、本発明の(E)−7−トリデセナール、(Z)−7−トリデセナール、(E)−9−トリデセナールおよび(Z)−9−トリデセナールの飲食品への配合量は、その目的あるいは飲食品の種類によっても異なるが、その際の飲食品の前記化合物の含有量は、例えば、飲食品の全体重量に対して0.001ppt〜100ppb、好ましくは、0.01ppt〜10ppb、より好ましくは0.1ppt〜1ppbの範囲を例示することができる。
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
実施例において反応粗製物、精製物の測定は次の分析機器を用いて行なった。
【0035】
GC測定:GC−2014(島津製作所社製)およびクロマトパックC−R8A(島津製作所社製)
GC測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製TC−WAX(長さ30m、内径0.53mm、液層膜厚1.50マイクロメータ)、ジーエルサイエンス社製TC−1(長さ30m、内径0.53mm、液層膜厚1.50マイクロメータ)
GC/MS測定:5977A(Agilent社製)
GC/MS測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1701(長さ30m、内径0.25mm、液層膜厚0.25マイクロメータ)
NMR測定:ECX−400A(JEOL RESONANCE社製)。
【0036】
実施例1:(Z)−8−トリデセナールの調製
(1)8−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの調製
200mL四径フラスコに、1−ヘキシン(2.26g,27.5mmol)および乾燥テトラヒドロフラン(55mL)を仕込み、窒素雰囲気下−65°Cで冷却撹拌した。ここに、系内を−60°C以下に保ったままn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.55M,17.6mL,27.3mmol)を20分滴下し、2時間かけて−20°Cまで昇温させながら撹拌した。再び系内を−65°Cまで冷却し、7−ブロモヘプチルテトラヒドロピラニルエーテル(5.08g,18.2mmol)の乾燥テトラヒドロフラン、乾燥1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(各10mL)混合溶液を20分滴下した。反応の経過を観察しながら徐々に昇温した後、室温にて5日間撹拌した。反応液に20%塩化アンモニウム水溶液(30mL)を加えてクエンチし、室温にて30分撹拌した。有機層を分離後、水層をヘキサン(20mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて水(20mL×1)および飽和食塩水(30mL×1)にて順次洗浄した後に無水硫酸ナトリウムにて乾燥、減圧濃縮した。得られた粗精製物(6.65g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(65g、ヘキサン/酢酸エチル=100:1→40:1)にて精製し、8−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテル(4.04g,収率79.2%,純度99.3%)を得た。
【0037】
(2)8−トリデシン−1−オールの調製
200mL二径ナスフラスコに、8−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテル(4.04g,14.4mmol)およびメタノール(75mL)を仕込み、これに氷水浴下p−トルエンスルホン酸一水和物(0.14g,0.72mmol)を加えて室温にて2.5時間撹拌した。GCにて原料消失を確認後、反応液に炭酸水素ナトリウム(1.0g)を加えてクエンチした。これをろ過して不溶物をメタノールにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせ、減圧濃縮して溶媒を除去して残渣を得た。この残渣に酢酸エチルおよび水(各20mL)を加えて溶解した後に有機層を分離し、水層を酢酸エチル(10mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて水および飽和食塩水(各10mL×1)にて順次洗浄した後に無水硫酸ナトリウムにて乾燥、減圧濃縮した。得られた粗精製物(3.42g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(35g、ヘキサン/酢酸エチル=40:1→4:1)にて精製し、8−トリデシン−1−オール(2.72g,収率96.1%,純度99.6%)を得た。
【0038】
(3)(Z)−8−トリデセノールの調製
200mL三径フラスコに、8−トリデシン−1−オール(2.72g,13.9mmol)、シクロヘキセン(140mL)およびリンドラー触媒(0.14g)を仕込み、系内を窒素置換した後に水素雰囲気下として室温にて1時間撹拌した。GCにて原料消失を確認後、系内を窒素置換して30分撹拌した。これをろ過して不溶物をヘキサンにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して(Z)−8−トリデセノールの粗精製物(2.76g)を得た。
【0039】
(4)(Z)−8−トリデセナールの調製
200mL二径ナスフラスコに、(Z)−8−トリデセノールの粗精製物(1.51g,純度97.3%,7.41mmol相当)、乾燥ジメチルスルホキシド(80mL)および2−ヨードキシ安息香酸(3.20g,11.4mmol)を仕込み、室温にて3時間撹拌した。GCにて原料消失を確認後、系内にエーテルおよび水(各50mL)を加えて20分撹拌した。これをろ過した後に有機層を分離し、得られた水層をエーテル(50mL×2)にて抽出した。有機層を合わせて、水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水(各50mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムによる乾燥、減圧濃縮を経て粗精製物(1.69g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20g、ヘキサン/酢酸エチル=20:1→7:1)およびクーゲルロールにて順次精製し、(Z)−8−トリデセナール(本発明品1、1.38g,収率92.6%,純度98.7%)を得た。
【0040】
(Z)−8−トリデセナールの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)0.88−0.92(m、3H)、1.26−1.38(m、10H)、1.58−1.78(m、2H)、1.95−2.05(m、4H)、2.42(dt、2H、J=1.6、7.2Hz)、5.28−5.40(m、2H)、9.76(t、1H、J=1.6Hz)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):13.97、22.02、22.31、26.89、27.04、28.94、29.03、29.48、31.91、43.86、129.54、130.05、202.88
MS(m/z): 196(M、1)、178(27)、152(4)、149(9)、135(21)、121(37)、111(29)、98(49)、81(61)、67(60)、55(100)、41(47)、29(13)
【0041】
実施例2:(Z)−7−トリデセナールの調製
(1)7−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの調製
200mL四径フラスコに、1−ヘプチン(7.25g,75.4mmol)および乾燥テトラヒドロフラン(62mL)を仕込み、窒素雰囲気下−65°Cで冷却撹拌した。ここに、系内を−60°C以下に保ったままn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.55M,48.6mL,75.3mmol)を30分滴下し、2時間かけて−20°Cまで昇温させながら撹拌した。再び系内を−65°Cまで冷却し、6−ブロモヘキシルテトラヒドロピラニルエーテル(10.03g,36.9mmol)の乾燥1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(62mL)溶液を30分滴下した。反応の経過を観察しながら1時間かけて室温まで昇温した後、さらに1.5時間撹拌した。GCにて原料の消失を確認後、氷水冷下にて反応液に20%塩化アンモニウム水溶液(50mL)をゆっくりと加えてクエンチし、室温にて30分撹拌した。有機層を分離後、水層をヘキサン(50mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて水および飽和食塩水(各50mL×1)にて順次洗浄した後に無水硫酸ナトリウムにて乾燥、減圧濃縮して7−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの粗精製物(10.84g,純度94.3%)を得た。
【0042】
(2)7−トリデシン−1−オールの調製
200mL二径ナスフラスコに、7−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの粗精製物(10.84g)およびメタノール(120mL)を仕込み、これにp−トルエンスルホン酸一水和物(0.35g,1.84mmol)を加えて室温にて3時間撹拌した後、反応液に炭酸水素ナトリウム(5.0g)を加えてクエンチした。これをろ過して不溶物をメタノールにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して溶媒を除去して残渣を得た。この残渣に酢酸エチルおよび水(各50mL)を加えて溶解した後に有機層を分離し、水層を酢酸エチル(25mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて水および飽和食塩水(各10mL×1)にて順次洗浄した後に無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧濃縮して粗精製物(8.80g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(150g、ヘキサン/酢酸エチル=40:1→4:1)にて精製し、7−トリデシン−1−オール(6.84g,収率94.5%,純度99.1%)を得た。
【0043】
(3)(Z)−7−トリデセノールの調製
200mL三径フラスコに、7−トリデシン−1−オール(3.02g,15.3mmol)、シクロヘキセン(150mL)およびリンドラー触媒(0.15g)を仕込み、系内を窒素置換した後に水素雰囲気下として室温にて2時間撹拌した。GCにて原料消失を確認後、系内を窒素置換して30分撹拌した。これをろ過して不溶物をヘキサンにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して(Z)−7−トリデセノールの粗精製物(3.22g,純度95.3%)を得た。
【0044】
(4)(Z)−7−トリデセナールの調製
200mL二径ナスフラスコに、(Z)−7−トリデセノールの粗精製物(1.45g,純度95.3%,6.97mmol相当)、乾燥ジメチルスルホキシド(70mL)および2−ヨードキシ安息香酸(2.93g,10.5mmol)を仕込み、室温にて3時間撹拌した。GCにて原料消失を確認後、系内に水およびエーテル(各50mL)を加えて30分撹拌した。不溶物をろ過した後に有機層を分離し、得られた水層をエーテル(50mL×1)にて抽出した。有機層を合わせて、水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水(各50mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムによる乾燥、減圧濃縮を経て粗精製物(1.87g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(40g、ヘキサン/酢酸エチル=100:1→40:1)およびクーゲルロールにて順次精製し、(Z)−7−トリデセナール(本発明品2、1.25g,収率96.2%,純度98.2%)を得た。
【0045】
(Z)−7−トリデセナールの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)0.88(t、3H、J=7.2Hz)、1.21−1.41(m、10H)、1.57−1.68(m、2H)、1.92−2.07(m、4H)、2.42(dt、2H、J=1.6、7.2Hz)、5.27−5.41(m、2H)、9.76(t、1H、J=1.6Hz)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):14.05、21.98、22.55、26.92、27.17、28.76、29.40、29.43、31.50、43.87、129.32、130.30、202.83
MS(m/z): 196(M、1)、178(25)、152(5)、149(9)、135(26)、121(55)、111(33)、98(53)、81(65)、67(72)、55(100)、41(59)、29(20)
【0046】
実施例3:(Z)−9−トリデセナールの調製
(1)9−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの調製
300mL四径フラスコに、1−ペンチン(4.81g,71.9mmol)および乾燥テトラヒドロフラン(85mL)を仕込み、窒素雰囲気下−65°Cで冷却撹拌した。ここに、系内を−60°C以下に保ったままn−ブチルリチウム(ヘキサン中1.55M,44.0mL,68.2mmol)を50分滴下し、2時間かけて−20°Cまで昇温させながら撹拌した。ここに、系内を−20°C以下に保ったまま8−ブロモオクチルテトラヒドロピラニルエーテル(10.03g,純度95.5%,32.7mmol)の乾燥1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(41mL)溶液を50分滴下した。これを室温まで昇温させて6時間撹拌した。GCにて原料の消失を確認後、氷水冷下にて反応液に20%塩化アンモニウム水溶液(70mL)をゆっくりと加えてクエンチし、室温にて終夜撹拌した。有機層を分離後、水層をヘキサン(50mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて水および飽和食塩水(各各50mL×1)にて順次洗浄した後に無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧濃縮して9−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの粗精製物(9.89g,純度88.9%)を得た。
【0047】
(2)9−トリデシン−1−オールの調製
200mL二径ナスフラスコに、9−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテルの粗精製物(9.89g)および、メタノール(110mL)を仕込み、これにp−トルエンスルホン酸一水和物(0.31g,1.64mmol)を加えて室温にて2時間撹拌した後、反応液に炭酸水素ナトリウム(3.0g)を加えてクエンチした。これをろ過して不溶物をメタノールにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣を得た。この残渣に酢酸エチルおよび水(各40mL)を加えて溶解した後に有機層を分離し、水層を酢酸エチル(20mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて飽和食塩水(10mL×2)にて洗浄した後に無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、減圧濃縮して粗精製物(7.45g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(75g、ヘキサン/酢酸エチル=10:1→4:1)にて精製し、9−トリデシン−1−オール(5.93g,収率92.4%,純度98.4%)を得た。
【0048】
(3)(Z)−9−トリデセノールの調製
100mL二径ナスフラスコに、9−トリデシン−1−オール(1.50g,7.52mmol)、シクロヘキセン(40mL)およびリンドラー触媒(75mg)を仕込み、系内を窒素置換した後に水素雰囲気下として室温にて1.5時間撹拌した。GCにて原料消失を確認後、系内を窒素置換して30分撹拌した。これをろ過して不溶物をヘキサンにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して(Z)−9−トリデセノールの粗精製物(1.57g)を得た。
【0049】
(4)(Z)−9−トリデセナールの調製
200mL二径ナスフラスコに、(Z)−9−トリデセノールの粗精製物(1.57g)、乾燥ジメチルスルホキシド(80mL)および2−ヨードキシ安息香酸(2.76g,9.8mmol)を仕込み、室温にて5時間撹拌した後、氷冷した水およびエーテル(各20mL)を加えて30分撹拌した。これをろ過して不溶物を除去した後に有機層を分離し、得られた水層をエーテル(20mL×1)にて抽出した。有機層を合わせて、水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水(各20mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムによる乾燥、減圧濃縮を経て粗精製物(1.88g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15g、ヘキサン/酢酸エチル=100:1→60:1)およびクーゲルロールにて順次精製し、(Z)−9−トリデセナール(本発明品3、1.14g,収率76.0%,純度99.5%)を得た。
【0050】
(Z)−9−トリデセナールの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)0.90(t、3H、J=7.2Hz)、1.26−1.41(m、10H)、1.58−1.67(m、2H)、1.92−2.07(m、4H)、2.42(dt、2H、J=1.6、7.2Hz)、5.30−5.40(m、2H)、9.76(t、1H、J=1.6Hz)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):13.80、22.06、22.87、27.13、29.03、29.12、29.23、29.28、29.63、43.90、129.75、129.90、202.94
MS(m/z): 196(M、1)、178(22)、152(4)、149(8)、135(17)、121(33)、111(25)、98(48)、81(61)、67(62)、55(100)、41(57)、29(13)
【0051】
実施例4:(E)−8−トリデセナールの調製
(1)(E)−8−トリデセニルテトラヒドロピラニルエーテルの調製
ドライアイス−アセトン浴で−60°C以下に冷却した100mL三径フラスコに、アンモニア溶液(15mL)を仕込み、これにリチウム(213.7mg,30.8mmol)を少量ずつ加えた。系内が濃青色になったことを確認後、実施例1で調製した、8−トリデシニルテトラヒドロピラニルエーテル(414.4mg,純度91.9%,1.36mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(4mL)溶液を10分滴下し、同温にて2時間撹拌した。反応液にエタノールおよび飽和塩化アンモニウム水溶液(各10mL)を−40°C以下にて注意深く加えた後、ゆっくりと室温まで昇温させた(終夜撹拌)。有機層を分離後、水層をエーテル(10 mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて水および飽和食塩水(各10mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムによる乾燥後、減圧濃縮して(E)−8−トリデセニルテトラヒドロピラニルエーテルの粗精製物(421.6mg)を得た。
【0052】
(2)(E)−8−トリデセノールの調製
50mLナスフラスコに、(E)−8−トリデセニルテトラヒドロピラニルエーテルの粗精製物(421.6mg)およびメタノール(8mL)を仕込み、これにp−トルエンスルホン酸(17.3mg)を加えて室温にて3時間撹拌した後、反応液に炭酸水素ナトリウム(53.4mg)を加えてクエンチした。これをろ過して不溶物をメタノールにて洗浄し、ろ液と洗液を合わせて減圧濃縮して残渣を得た。この残渣に酢酸エチル(10mL)および水(20mL)を加えて残渣を溶解した後に有機層を分離し、水層を酢酸エチル(10mL×2)にて抽出した。得られた有機層を合わせて飽和食塩水(10mL×1)にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮して(E)−8−トリデセノールの粗精製物(315.8mg)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15g,ヘキサン/酢酸エチル=20:1→4:1)にて一度精製した後、混合物(150mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5g,ヘキサン/酢酸エチル=20:1→7:1)にて再精製し、(E)−8−トリデセノール(114.4 mg,収率42.4%,純度99.9%)を得た。
【0053】
(3)(E)−8−トリデセナールの調製
30mL二径ナスフラスコに、(E)−8−トリデセノール(114.4mg)、乾燥ジメチルスルホキシド(6mL)および2−ヨードキシ安息香酸(0.238g,0.85mmol)を仕込み、室温にて4時間撹拌した後、氷冷した水およびエーテル(各5mL)を加えてさらに30分撹拌した。これをろ過して不溶物を除去した後に有機層を分離し、水層をエーテル(10mL×1)にて抽出した。有機層を合わせ、水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水(各10mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮して(E)−8−トリデセナールの粗精製物(120.5mg)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5g,ヘキサン/酢酸エチル=100:1→60:1)およびクーゲルロールにて順次精製し、(E)−8−トリデセナール(本発明品4、98.3mg,収率86.9%,純度99.8%)を得た。
【0054】
(E)−8−トリデセナールの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)0.88(t、3H、J=7.2Hz)、1.25−1.39(m、10H)、1.57−1.67(m、2H)、1.92−2.03(m、4H)、2.41(dt、2H、J=1.6、7.2Hz)、5.31−5.43(m、2H)、9.76(t、1H、J=1.6Hz)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):13.94、22.02、22.16、28.78、28.98、29.34、31.78、32.25、32.45、43.88、130.02、130.55、202.93
MS(m/z): 196(M、1)、178(20)、152(3)、149(6)、135(16)、121(30)、111(23)、98(39)、81(53)、67(54)、55(100)、41(43)、29(11)
【0055】
実施例5:(E)−7−トリデセナールの調製
(1)(E)−7−トリデセノールの調製
ドライアイス−アセトン浴で−65°C以下に冷却した、100mL四径フラスコにアンモニア溶液(50mL)を仕込み、これに同温下にてリチウム(0.76g,110mmol)を少量ずつ加えた。系内が濃青色になったことを確認後、同温下にて実施例2で得られた7−トリデシン−1−オール(1.00g,5.09mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(12mL)溶液を滴下して1.5時間撹拌した。反応の進行が遅かったため、−30°Cまで徐々に昇温させながら3時間撹拌した。反応液にエタノールおよび飽和塩化アンモニウム水溶液(各20mL)を−40°C以下にて注意深く加えてクエンチし、徐々に室温まで昇温させた(終夜撹拌)。これに酢酸エチル(20mL)を加え室温にて30分撹拌した後に有機層を分離し、水層を酢酸エチル(20mL×1)にて抽出した。有機層を合わせて水および飽和食塩水(各20mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウム乾燥し、減圧濃縮した。濃縮物に水分が残存していたため、これに酢酸エチル(20mL)を加えた後に飽和食塩水洗浄、無水硫酸マグネシウム乾燥、減圧濃縮して(E)−7−トリデセノールの粗精製物(1.07g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(30g,ヘキサン/酢酸エチル=20:1→10:1)にて精製し、(E)−7−トリデセノール(0.15g,収率14.9%,純度99.9%)を得た。
【0056】
(2)(E)−7−トリデセナールの調製
50mLナスフラスコに、(E)−7−トリデセノール(0.102g,0.515mmol)、乾燥ジメチルスルホキシド(3mL)および2−ヨードキシ安息香酸(0.224g,0.799mmol)を仕込み、室温にて6時間撹拌した。原料がほぼ消失したことをGCにて確認した後、水およびエーテル(各2mL)を加えて30分撹拌した。不溶物をセライトろ過した後に有機層を分離し、得られた水層をエーテル(5mL×1)にて抽出した。有機層を合わせて水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水(各5mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムによる乾燥した後、減圧濃縮して(E)−7−トリデセナールの粗精製物(0.130g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2g,ヘキサン/エーテル=1:0→100:1)およびクーゲルロールにて順次精製し、(E)−7−トリデセナール(本発明品5、82.9mg,収率82.0%,純度99.4%)を得た。
【0057】
(E)−7−トリデセナールの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)0.88(t、3H、J=7.2Hz)、1.05−1.41(m、10H)、1.57−1.68(m、2H)、1.92−2.03(m、4H)、2.42(dt、2H、J=1.6、7.2Hz)、5.30−5.42(m、2H)、9.76(t、1H、J=1.6Hz)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):14.08、21.94、22.53、28.60、29.29、31.38、32.31、32.55、43.88、129.80、130.80、202.92
MS(m/z): 196(M、2)、178(30)、152(6)、149(9)、135(21)、121(45)、111(44)、98(65)、81(65)、69(76)、55(100)、41(61)、29(21)
【0058】
実施例6:(E)−9−トリデセナールの調製
(1)(E)−9−トリデセノールの調製
ドライアイス−アセトニトリル浴で−35°C以下に冷却した、100mL四径フラスコにアンモニア溶液(50mL)を仕込み、これに同温下にてリチウムを少量加えた。さらに、ドライアイス−アセトン浴で−60°C以下に冷却してリチウム(0.76g,110mmol)を少量ずつ加えた。全量加えた後、−35°Cまで昇温して、実施例3で得られた9−トリデシン−1−オール(1.11g,5.45mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(12mL)溶液を1時間滴下し、同温下にて4時間撹拌した。反応の進行が遅かったため、室温まで徐々に昇温させながら18時間撹拌した。この反応液を−40°C以下に冷却し、エタノールおよび飽和塩化アンモニウム水溶液(各10mL)を注意深く加えてクエンチし、徐々に室温まで昇温させた。これにヘキサン(10mL)を加え室温にて30分撹拌した後に有機層を分離し、水層をエーテル(10mL×1)にて抽出した。有機層を合わせて水および飽和食塩水(各20mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウム乾燥し、減圧濃縮して(E)−9−トリデセノールの粗精製物(1.22g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(35g,ヘキサン/酢酸エチル=20:1→15:1)にて精製し、(E)−9−トリデセノール(0.46g,収率42.3%,純度87.8%)を得た。
【0059】
(2)(E)−9−トリデセナールの調製
10mLナスフラスコに、(E)−9−トリデセノール(99.0mg,0.499mmol)、乾燥ジメチルスルホキシド(3mL)および2−ヨードキシ安息香酸(0.219g,0.782mmol)を仕込み、室温にて5時間撹拌した。原料がほぼ消失したことをGCにて確認した後、水およびエーテル(各2mL)を加えて30分撹拌した。不溶物をセライトろ過した後に有機層を分離し、得られた水層をエーテル(2mL×1)にて抽出した。有機層を合わせて水、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水(各2mL×1)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムによる乾燥、減圧濃縮して(E)−9−トリデセナールの粗精製物(0.139g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(3g,ヘキサン/エーテル=1:0→100:1)およびクーゲルロールにて順次精製し、(E)−9−トリデセナール(本発明品6、71.4mg,収率72.9%,純度87.0%)を得た。
【0060】
(E)−9−トリデセナールの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)0.88(t、3H、J=7.2Hz)、1.25−1.41(m、10H)、1.55−1.67(m、2H)、1.90−2.05(m、4H)、2.41(dt、2H、J=1.6、7.2Hz)、5.35−5.40(m、2H)、9.76(t、1H、J=1.6Hz)
13C−NMR(100MHz、CDCl3):13.63、22.05、22.71、28.87、29.10、29.18、29.51、32.52、34.68、43.89、130.23、130.38、202.97
MS(m/z): 196(M、2)、178(21)、152(5)、149(7)、135(17)、121(29)、111(24)、98(40)、81(57)、67(57)、55(100)、41(52)、29(10)
【0061】
実施例7:香気評価
実施例1〜6で得られた(Z)−8−トリデセナール(本発明品1)、(Z)−7−トリデセナール(本発明品2)、(Z)−9−トリデセナール(本発明品3)、(E)−8−トリデセナール(本発明品4)、(E)−7−トリデセナール(本発明品5)および(E)−9−トリデセナールの調製(本発明品6)のそれぞれ10ppmエタノール溶液について、訓練されたパネラーにより香気評価を行った。香気評価は30mlサンプル瓶に前記10ppmエタノール溶液を用意し、瓶口の香気およびその溶液を含浸させたにおい紙により行った。5名の平均的な香気評価を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例8:オレンジ様香料の香気評価
オレンジ様の調合香料組成物として、表2に示す成分(質量部)により比較品1を調合した。また、本発明品1〜6を様々な濃度に希釈したエタノール溶液を調合したオレンジ様の調合香料組成物の調合割合(質量部)を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
本発明品1〜6を様々な濃度添加したオレンジ様の調合香料組成物について、比較品1をコントロール品としてよく訓練された10名のパネラーにより香気の官能評価を行った。香気評点は、比較品1をコントロール品として、1:コントロールと変化なし、2:コントロールと比べややピール感あり、3:コントロールと比べピール感ワックス様あり、4:コントロールと比べて強いピール感ワックス様あり、5:コントロールと比べ脂肪感が強すぎるため香気のバランスが悪い、として採点した。そのパネラー10名の平均点を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示した通り、本発明品1〜6が、比較品1のオレンジ様調合香料組成物に対し1ppt〜100ppm配合されることにより、柑橘特有のピール感およびワックス様の香気が付与され、良好なオレンジ様香気が強調されているとの評価であった。香料組成物中に本発明品1〜6が、僅か1ppt存在するだけでも香気にピール感が付与されるという結果であった。一方、0.1pptの添加では比較品1の無添加品と大差なく、0.1%の添加では脂肪感が強すぎるため、良好ではなかった。
【0068】
実施例9:レモン様香料の香気評価
レモン様の調合香料組成物として、表4に示す成分(質量部)により比較品2を調合した。また、本発明品1〜5または6の0.1%エタノール溶液0.1質量部を調合して新規のレモン様調合香料組成物を調製した。この調合割合(質量部)を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
比較品2および本発明品1〜5または6を調合した表4に示すレモン様調合香料組成物について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が、本発明品1〜5または6を調合したレモン様調合香料組成物は比較品2と比較して、すべてにおいて柑橘特有のピール感およびワックス様の香気が付与され、良好なレモン様香気が強調されているとの評価であった。
【0071】
実施例10:グレープフルーツ様香料の香気評価
グレープフルーツ様の調合香料組成物として、表5に示す成分(質量部)により比較品3を調合した。また、本発明品1〜5または6の0.1%エタノール溶液0.1質量部を調合して新規のグレープフルーツ様調合香料組成物を調製した。この調合割合(質量部)を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
比較品3および本発明品1〜5または6を調合した表5に示すグレープフルーツ様調合香料組成物について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が、本発明品1〜5または6を調合したグレープフルーツ様調合香料組成物は比較品3と比較して、すべてにおいて柑橘特有のピール感およびワックス様の香気が付与され、良好なグレープフルーツ様香気が強調されているとの評価であった。
【0074】
実施例11:ライム様香料の香気評価
ライム様の調合香料組成物として、表6に示す成分(質量部)により比較品4を調合した。また、本発明品1〜5または6の0.1%エタノール溶液0.1質量部を調合して新規のライム様調合香料組成物を調製した。この調合割合(質量部)を表6に示す。
【0075】
【表6】
【0076】
比較品4および本発明品1〜5または6を調合した表6に示すライム様調合香料組成物について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が、本発明品1〜5または6を調合したライム様調合香料組成物は比較品4と比較して、すべてにおいて柑橘特有のピール感およびワックス様の香気が付与され、良好なライム様香気が強調されているとの評価であった。
【0077】
実施例12:パイナップル様香料の香気評価
パイナップル様の調合香料組成物として、表7に示す成分(質量部)により比較品5を調合した。また、本発明品2、3、5または6の0.1%エタノール溶液0.1質量部を調合して新規のパイナップル様調合香料組成物を調製した。この調合割合(質量部)を表7に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
比較品5および本発明品2、3、5または6を調合した表7に示すパイナップル様調合香料組成物について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が、本発明品2、3、5または6を調合したパイナップル様調合香料組成物は比較品5と比較して、すべてにおいて良好なパイナップル様香気が強調されているとの評価であった。
【0080】
実施例13:本発明品を複数用いたオレンジ様香料の香気評価
オレンジ様の調合香料組成物として、表8に示す成分(質量部)により比較品1を調合した。また、本発明品1〜6の0.1%エタノール溶液を様々な組み合わせで調合したオレンジ様の調合香料組成物を調製し、本発明品7〜11とした。これらの調合割合(質量部)を表8に示す。
【0081】
【表8】
【0082】
表8に示す、比較品1および本発明品7〜11のオレンジ様調合香料組成物について、専門パネラー10人により比較した。その結果、専門パネラー10人の全員が、本発明品7〜11は比較品2と比較して、すべてにおいて柑橘特有のピール感およびワックス様の香気が付与され、良好なオレンジ様香気が強調されているとの評価であった。
【0083】
実施例14:オレンジ果汁飲料の風味評価
比較品1および実施例1〜6の様々な濃度配合することにより得られたオレンジ様調合香料組成物を下記処方の飲料基材に添加しオレンジ果汁飲料を調製した。
【0084】
オレンジ果汁飲料配合処方 (質量部)
果糖ぶどう糖液糖 300
クエン酸(結晶) 1.5
ビタミンC 0.05
本発明品添加品または比較品1 2
バレンシアオレンジ果汁 1000
水にて全量を2000とする。
【0085】
オレンジ果汁飲料に添加したオレンジ様の調合香料組成物は、比較品1および本発明品1〜6を実施例8で示す様々な濃度にて添加したオレンジ様の調合香料組成物を対象とした。
【0086】
実施例8で示す、本発明品1〜6を様々な濃度にて比較品1に添加したオレンジ様の調合香料組成物について、比較品1をコントロール品としてよく訓練された10名のパネラーにより香気の官能評価を行った。風味評点は、比較品1をコントロール品として、1:コントロールと変化なし、2:コントロールと比べややピール感あり、3:コントロールと比べピール感ワックス様あり、4:コントロールと比べて強いピール感ワックス様あり、5:コントロールと比べ脂肪感が強すぎるため風味のバランスが悪い、として採点した。そのパネラー10名の平均点を表9に示す。
【0087】
【表9】
【0088】
表9に示した通り、本発明品1〜6が、比較品1のオレンジ様調合香料組成物に対し0.001ppt〜100ppb配合されることにより、柑橘特有のピール感およびワックス様の香気が付与され、良好なオレンジ様風味が強調されているとの評価であった。オレンジ果汁飲料中に本発明品1〜6が、僅か0.001ppt存在するだけでも香気にピール感が付与されるという結果であった。一方、0.0001pptの添加では比較品1を飲料に添加したものと大差なく、1ppmの添加では脂肪感が強すぎるため、良好ではなかった。
【0089】
実施例15:キャンディーの風味評価
実施例9で得られた、比較品2および本発明品1〜5または6を調合した表4に示すレモン様調合香料組成物を下記処方のキャンディー基材に添加し、常法によりキャンディーを調製した。
【0090】
キャンディー配合処方 (質量部)
グラニュー糖 48
水飴(75%) 32
水 20
ゼラチン 2
硬化ヤシ油(融点34℃) 9
全脂加糖練乳 5
クエン酸(結晶) 0.5
着色料 0.06
本発明品添加品または比較品2 0.2
濃縮オレンジ果汁 2
できあがり生地量 約100
【0091】
これらのキャンディーを、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品1〜5または6を調合したレモン様調合香料組成物を添加したキャンディーは、比較品2を添加したキャンディーに比べて、柑橘特有のピール感が付与されていると評価した。
【0092】
実施例16:スポンジケーキの風味評価
実施例10で得られた、比較品3および本発明品1〜5または6を調合した表5に示すグレープフルーツ様調合香料組成物を下記処方のスポンジケーキ生地に添加し、常法によりスポンジケーキを調製した。
【0093】
スポンジケーキ配合処方 (質量部)
薄力粉 1000
ベーキングパウダー 30
砂糖 1300
全卵 1600
牛乳 400
無塩バター 30
バニラオイル 1
本発明品添加品または比較品3 1
合計 4362
【0094】
これらのスポンジケーキを、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品1〜5または6を調合したグレープフルーツ様調合香料組成物を添加したスポンジケーキは、比較品3を添加したスポンジケーキに比べて、柑橘特有のピール感が付与されていると評価した。
【0095】
実施例17:シャーベットの風味評価
実施例11で得られた、比較品4および本発明品1〜5または6を調合した表6に示すライム様調合香料組成物を下記処方のシャーベットに添加し、常法によりシャーベットを調製した。
【0096】
シャーベット配合処方 (質量部)
砂糖 10
水飴(75%) 6
果糖ぶどう糖液糖(75%) 5
クエン酸(結晶) 0.1
1/5ライム果汁 10
本発明品添加品または比較品4 0.2
水にて合計量を100とする
【0097】
これらのシャーベットを、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品1〜5または6を調合したライム様調合香料組成物を添加したシャーベットは比較品4を添加したシャーベットに比べて、柑橘特有のピール感が付与されていると評価した。
【0098】
実施例18:ゼリーの風味評価
実施例12で得られた、比較品5および本発明品2、3、5または6を調合した表7に示すパイナップル様調合香料組成物を下記処方のゼリーに添加し、常法によりゼリーを調製した。
【0099】
ゼリー配合処方 (質量部)
グラニュー糖 60
ソルビトール 12
1/5パイナップル果汁 5
寒天 1
クエン酸(結晶) 0.3
着色料 0.03
本発明品添加品または比較品5 0.2
水にて合計量を 100とする
【0100】
これらのゼリーを、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品1〜5または6を調合したパイナップル様調合香料組成物を添加したゼリーは比較品5を添加したゼリーに比べて、パイナップルの果肉感が増強されていると評価した。
【0101】
実施例19:本発明品を複数用いたオレンジ果汁飲料の風味評価
実施例13で得られたオレンジ様の調合香料組成物である、本発明品7〜11および比較品1それぞれを、実施例14に示す処方の飲料基材に添加しオレンジ果汁飲料を調製した。
【0102】
これらのオレンジ果汁飲料を、専門パネラー10人により官能評価を行った。その結果、専門パネラー10人全員が、本発明品7〜11を添加したオレンジ果汁飲料は、比較品1を添加したオレンジ果汁飲料に比べて、柑橘特有のピール感が付与されていると評価した。