特許第6307158号(P6307158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307158車両の車輪回転数を検出するためのセンサ装置及びセンサ設備、車両用の車輪回転数検出システム、当該車輪回転数検出システムを有する車両、並びにこのようなセンサ装置を製造して使用するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307158
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】車両の車輪回転数を検出するためのセンサ装置及びセンサ設備、車両用の車輪回転数検出システム、当該車輪回転数検出システムを有する車両、並びにこのようなセンサ装置を製造して使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/487 20060101AFI20180326BHJP
   G01P 1/02 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   G01P3/487 F
   G01P3/487 L
   G01P1/02
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-522296(P2016-522296)
(86)(22)【出願日】2014年5月24日
(65)【公表番号】特表2016-523367(P2016-523367A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2014001408
(87)【国際公開番号】WO2014206516
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】102013010925.6
(32)【優先日】2013年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596055475
【氏名又は名称】ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100062317
【弁理士】
【氏名又は名称】中平 治
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】キュスター・クラウス
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−218215(JP,A)
【文献】 実開平5−55007(JP,U)
【文献】 特開平3−25371(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0023265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P3
G01P1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪回転数を検出するためのセンサ装置であって、このセンサ装置(2)は、棒状のセンサキャリア(4)と、このセンサキャリア(4)に内蔵されたセンサ(6)とを有し、このセンサ(6)は、前記車輪回転数を検出するために、当該車輪と一緒に回転する磁極ロータの回転を検知する当該センサ装置において、
前記センサ(6)を収容するための金属製の1つの支持構造体(8)と、
前記センサキャリア(4)を前記支持構造体(8)の内部に充填するための1つの封止用コンパウンド(12)と、
前記キャリア構造体(8)の断続した複数の金属表面領域と前記封止用コンパウンド(12)で充填された複数の領域とを有する、前記棒状のセンサキャリア(4)の1つの表面、特にカバー表面と、
複数の接触圧面(22)として形成されている少なくとも2つの金属表面領域とを特徴とする当該センサ装置。
【請求項2】
前記センサ装置(2)を既存のクランプスリーブ内に方向付けして挿入するための1つのガイドノーズ(28)を有する前記支持構造体(8)の形成を特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
キャリアストリップから成る前記支持構造体(8)が、打ち抜き曲げ部材として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センサキャリアの長手方向に対して直角に前記支持構造体(8)の複数の接触圧面(8)間に配置された少なくとも2つのスタビライザ(14)を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記センサ(6)を固定するための前記支持構造体(8)の内部の1つのセンサ搭載面(18)を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記支持構造体(8)の、前記センサ装置(2)の前面に沿った1つの前カバー面(32)を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ(6)の少なくとも1つの接続ケーブル(10)を固定するための前記支持構造体(8)の内部の1つの固定面(24)を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記支持構造体(8)の少なくとも1つの接触圧面(22)に付属する少なくとも1つの固定舌片(30)を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記センサ(6)は、前記磁極ロータの回転を検出するために前記センサキャリア(4)内に配置された1つのアクティブセンサ(6)又はパッシブセンサ(6)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
車両の車輪回転数を検出するためのセンサ設備であって、このセンサ設備は、クランプスリーブ(24)と、このクランプスリーブ(26)内にクランプ固定されたセンサ装置(2)とを有する当該センサ設備において、
前記センサ装置(2)が、請求項1〜9のいずれか1項にしたがって形成されていて、
前記クランプスリーブ(24)は、前記センサ装置(2)の複数の接触圧面(22)に当接する複数のクランプ要素(26)を有することを特徴とする当該センサ設備。
【請求項11】
特に車両内の運転者支援システム用の車輪回転数検出システムにおいて、
この車輪回転数検出システムは、車輪回転数を検出するために請求項1〜9のいずれか1項にしたがって形成された少なくとも1つのセンサ装置を有し、
前記車輪回転数検出システムは、前記運転者支援システムの内部の制御機能及び/又は調整機能用の前記センサ装置(2)の信号又はデータを考慮する1つの制御装置を有する当該車輪回転数検出システム。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセンサ装置(2)及び/又は請求項10に記載のセンサ設備及び/又は請求項11に記載の車輪回転数検出システムを有する車両。
【請求項13】
車輪回転数を検出するためのセンサ装置(2)を製造するための方法において、
前記センサ装置(2)が、請求項1〜9のいずれか1項にしたがって形成されていて、支持構造体(8)が、特に打ち抜きによって金属薄板から製作され、
センサ(6)が、特に接着剤によって前記支持構造体(8)のセンサ搭載面(18)上に固定され、
前記センサ(6)の少なくとも1つの接続ケーブル(10)が、特に圧着によって前記支持構造体(8)の固定面(24)上に固定され、
前記センサ装置(2)が、ほぼ棒状に形成されていて、1つのクランプスリーブ内に挿入可能であるように、前記支持構造体(8)が曲げられ、
当該曲げられた支持構造体(8)の内部空間が、封止用コンパウンド(12)、特に合成樹脂封止剤で充填されることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記センサ(6)は、前記支持構造体(8)の曲げ加工(42)の前に、その保護のために、このセンサを半球状に包囲する別の封止用コンパウンドで覆われる(38)ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
車両の車輪回転数を検出するためのセンサ装置の使用において、
前記センサ装置(2)が、請求項1〜9のいずれか1項にしたがって形成されていて、又は
前記センサ装置(2)が、前記車輪回転数を検出するために請求項10に記載のセンサ設備で使用され、及び/又は
請求項11に記載の車輪回転数検出システムで使用され、及び/又は請求項12に記載の車両で使用されることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に商用車の車輪回転数を検出するためのセンサ装置に関する。この場合、当該センサ装置は、棒状のセンサキャリアと、このセンサキャリアに内蔵されたセンサとを有する。このセンサは、当該車輪回転数を検出するために、当該車輪と一緒に回転する磁極ロータの回転を感知する。
【0002】
また、本発明は、車両の車輪回転数を検出するためのセンサ設備に関する。この場合、当該センサ設備は、クランプスリーブと、このクランプスリーブ内にクランプ固定されたセンサ装置とを有する。
【0003】
さらに、本発明は、車両内の特に運転者支援システム用の車輪回転数検出システムと、当該車輪回転数検出システムを有する車両とに関する。この場合、当該車輪回転数検出システムは、少なくとも1つの本発明のセンサ装置を有する。
【0004】
最後に、本発明は、本発明のセンサ装置を製造するための方法と、車両の車輪回転数を検出するための本発明のセンサ装置の使用とに関する。
【背景技術】
【0005】
従来の技術にしたがって公知のセンサ装置が、例えば独国特許出願公開第3215212号明細書から知ることができる。当該センサ装置は、従来通りに棒状に形成されていて、そのセンサヘッド内にセンサを有する。このセンサは、磁極ロータの回転運動を検出するように構成されている。このため、この公知のセンサ装置は、独立したクランプスリーブによって、車輪の領域内に配置された保持開口部内にクランプ固定される。この保持開口部は、当該クランプスリーブが挿入される好ましくは孔又は内腔である。
【0006】
前記センサ装置が、前記磁極ロータに接触するまで前記クランプスリーブ内に挿入され、その摩擦力によってこのクランプスリーブ内に保持されることによって、このセンサ装置は取り付けられる。しかしながら、このセンサ装置は、このクランプスリーブ内で軸方向に移動可能である。その結果、このセンサ装置は、当該磁極ロータの反転時に損傷されないにもかかわらず、このクランプスリーブ内に保持される。
【0007】
前記の公知の棒状センサは、通常は円筒状に形成されていて、密閉されているカバー表面を有する。車輪回転数を検出するためのセンサが、封止用コンパウンドによって当該カバー表面の内部に保持される。
【0008】
この場合、増大した放射熱が、センサの設置空間内で、特に制動中及び制動後に、当該センサへ導かれることに留意する必要がる。この放射熱は、短時間に発生し得るか又はより長くも持続し得る。このような温度変動は、クランプスリーブの内部の棒状センサの保持力に不都合に作用し得る。その結果、当該センサ装置が、このクランプスリーブの内部で移動し得る。これにより、センサヘッドと磁極ロータとの間の空隙が、望まない程度に大きくなる。
【0009】
さらに、このようなセンサ装置は、大量生産される。これにより、当該製造経費は、あまり増大し得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第3215212号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007056340号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特に同じ又はより少ない製造コストで、このようなセンサ装置を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のこの課題は、請求項1に記載のセンサ装置によって解決され、請求項10に記載のセンサ設備によって解決され、請求項11に記載の車輪回転数検出システムによって解決され、請求項12に記載の車両によって解決され、請求項13に記載のセンサ装置を製造するための方法によって解決され、請求項15に記載のセンサ装置の使用によって解決される。
【0013】
本発明のセンサ装置は、車両の車輪回転数を検出するために使用され、棒状のセンサキャリアとこのセンサキャリアに内蔵されたセンサとを有する。当該車輪回転数を検出するため、車輪と一緒に回転する磁極ロータの回転が、センサによって感知又は走査される。
【0014】
本発明のセンサキャリアは、キャリア構造体が非強磁性金属から成ることを特徴とする。さらに、このキャリア構造体は、センサを収容するために使用され、したがってセンサ装置の内部の当該センサの正確な位置決めを有益に可能にする。
【0015】
さらに、本発明のセンサキャリアは、封止用コンパウンド、例えば合成樹脂を有する。前記支持構造体が、当該封止用コンパウンドで充填される。
【0016】
さらに、本発明のセンサキャリアは、表面、特にカバー表面を有する。当該カバー表面は、前記キャリア構造体の断続した複数の金属表面領域と、封止用コンパウンドで充填された複数の領域とを有する。
【0017】
本発明のセンサ装置は、従来のクランプスリーブ内にクランプ固定されるように形成されている。このため、このクランプスリーブは、複数のバネ舌片を有する。これらのバネ舌片は、当該挿入されているセンサ装置に接触し、このセンサ装置を対向するそれぞれのバネ舌片上に押圧する。一方では当該センサ装置が、機械的な振動、衝撃及びその他の摂動力にもかかわらず、当該センサ装置の位置に保持され、他方では磁極ロータの反転時に、当該センサ装置の軸方向の移動が、破損なしに可能であるように、これらのバネ舌片から発生するクランプ力が設計されている。
【0018】
従来のクランプスリーブの可能な形状が、独国特許出願公開第102007056340号明細書に示されている。しかしながら、本発明は、当該クランプスリーブのこの形状に限定されない。むしろ、本発明のセンサ装置を収容でき、軸方向に移動可能に固定保持できるクランプ手段が、当該センサ装置を保持開口部にクランプ固定するために考えられる。
【0019】
複数のバネ舌片として形成された複数のクランプ要素を有する既存のクランプスリーブを、前記センサ装置の取り付け時にさらに使用するため、前記センサキャリアのキャリア構造体が、接触圧面として形成されている少なくとも2つの表面領域を有する。この場合、当該接触圧面の数及び当該接触圧面の寸法は、使用すべきクランプスリーブによって決まるか又は当該クランプスリーブの内部のバネ舌片の配置及び数によって決まる。当該クランプスリーブのバネ舌片が、当該センサキャリアの接触圧面を押圧するように、当該接触圧面は、有益に分配されている。
【0020】
前記の複数の接触圧面が、大部分で別々に分離された複数の表面領域であるので、前記クランプスリーブの内部のセンサ装置のより良好な保持が達成される。何故なら、これらの接触圧面は、少しだけ撓みやすいからである。さらに、前記のキャリア構造体の断続した複数の表面は、より良好な温度特性を有し、したがってより高い安定性も当該クランプスリーブにおいて有する。
【0021】
本発明のセンサ装置は、寸法及び形状を既存のシステムに適合されていて、既存のセンサ装置と有益に取り替えられ得る。
【0022】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記センサ装置の支持構造体が、このセンサ装置をクランプスリーブ内に方向付けして挿入するためのガイドノーズを有する。
【0023】
保持開口部の僅かな製造公差を補正するため、及び当該保持開口部の内部の十分なクランプ作用を達成するため、従来の技術によるクランプスリーブは、溝付けされたスリーブの形を成す。
【0024】
本発明のセンサ装置を組み立てるため、前記ガイドスノーズが、前記クランプスリーブのスリットの内部に延在するように、このセンサ装置は、このクランプスリーブ内に挿入される。このクランプスリーブ内でこのセンサ装置の既定の方向付けが、当該既存のガイドノーズによって強制される。
【0025】
これにより、前記のクランプスリーブのバネ舌片に対する接触圧面の正確な設置が確保されている。それ故に、前記センサ装置の誤差のない取り付けが、多大な経費なしに可能である。
【0026】
本発明の別の好適な実施の形態では、複数のキャリアストリップから成る支持構造体が、打ち抜き曲げ部材として形成されている。当該センサ装置は、通常は大量に製造されるので、打ち抜き格子としての支持構造体の低コストの製造が有益である。当該打ち抜き格子は、打ち抜き・折り曲げ機械によって金属薄板から製造可能である。
【0027】
本発明の別の好適な実施の形態は、前記センサキャリアの長手方向に対して直角に配置された少なくとも2つのスタビライザを前記支持構造体の内部に有する。これらのスタビライザは、前記の複数の接触圧面間に配置されていて、特に、当該支持構造体の内部に注入された合成樹脂が、老化によって収縮するときでも、依然として、これらの接触圧面と前記クランプスリーブの複数のバネ舌片との間の一定の圧力を有利に配慮する。
【0028】
前記の複数のスタビライザは、その製造時に、前記センサキャリアに別々に内蔵され得るか、又は打ち抜き格子として形成された支持構造体内に組み込まれ得る。
【0029】
好ましくは、前記の複数のスタビライザが、前記センサ装置を前記クランプスリーブ内に挿入された状態で、このクランプスリーブの複数のバネ舌片の高さに存在するように、これらのスタビライザは、前記センサキャリアの内部に配置されている。
【0030】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、前記キャリア構造体が、前記センサを固定するためのセンサ搭載面を有する。このセンサ搭載面は、当該キャリアストリップの内部に設けられていて、少なくとも1つの接触圧面を有する少なくとも2つの結合ウェブに結合されている。この場合、このセンサ搭載面上に存在するセンサが、半径方向にこのセンサキャリアの内部のほぼ中央に存在するように、これらの結合ウェブは、その製造工程中に曲げられる。
【0031】
さらに、前記の複数の結合ウェブは、完成して曲げられている状態でそれぞれ1つの湾曲されている部分、特にS字状の部分を有する。この湾曲されている部分は、バネ作用を有し、前記センサの領域内で熱応力が発生しないように配慮する。
【0032】
本発明の別の実施の形態では、前記支持構造体が、前記センサ装置の前面に前カバー面を有する。この前カバー面は、この支持構造体の曲げられている状態で円柱状に形成された前記センサキャリアのカバー面を形成する。このカバー面は、前記磁極ロータに向けられている。これにより、当該センサヘッドは、その金属表面に起因して、当該磁極ロータに対する接触によってほとんど摩耗されず、センサ装置のより長い耐久性を有益に達成する。
【0033】
さらに、前記カバー面は、有益にブレーキの放射熱と前記センサキャリアの内部に存在するセンサとの間の熱シールドとして役立つ。
【0034】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、前記支持構造体が、前記センサの少なくとも1つの接続ケーブルを固定するための固定面を有する。このため、このセンサを前記センサ搭載面上に固定した後に、このセンサの1つ又は複数の接続ケーブルが、当該固定面の縁部の塑性変形によって当該固定面上に機械的に固定される。圧着とも記されるこの接合方法は、有益に速く、低コストで且つ確実である。
【0035】
本発明の別の好適な実施の形態では、少なくとも1つの固定舌片が、前記支持構造体の少なくとも1つの接触圧面に設けられている。この支持構造体を前記封止用コンパウンドで充填するときに、より良好な取り扱いを有益に達成するため、これらの固定舌片は、この支持構造体の曲げ工程中に爪状に曲げられる。
【0036】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、アクティブセンサ又はパッシブセンサが、前記センサキャリア内の、前記磁極ロータの回転を検出するためのセンサとして設けられている。
【0037】
アクティブセンサは、通常は磁気抵抗効果に基づいて機能し、前記の車輪と一緒に回転する磁極ロータの磁界を検出し、その際、この磁極ロータは、N極磁化とS極磁化とを交互する順序で呈する永久磁石リングとして形成されている。当該車輪の回転数を検出するため、所定の電圧が、当該アクティブセンサに印加される。当該磁気抵抗センサは、好ましくはAMR(異方性磁気抵抗)センサ又はGMR(巨大磁気抵抗)センサである。
【0038】
この代わりに、前記アクティブセンサは、ホール効果を利用して前記磁極ロータの回転を検出するためのホールセンサ又はホール効果センサである。
【0039】
好ましくは、前記アクティブセンサは、長手軸を中心にした回転に関して位置に左右されない。これにより、前記センサ装置は、前記クランプスリーブを用いることで、有益に任意の向きで、前記保持開口部内にクランプ可能である。これにより、その組み立て時の経費のかかる調整作業が省略される。
【0040】
前記の車輪回転数を検出するためのアクティブセンサの使用には、前記磁極ロータが、非常に遅く回転するときでも又は停止しているときでも、アクティブセンサが、測定値を供給するという利点がある。
【0041】
また、この代わりに、前記センサ装置は、前記磁極ロータの回転を受動的に検出するためのパッシブセンサを有する。このため、当該パッシブセンサは、永久磁石及びコイルを有する。当該パッシブセンサ内の磁束が、この磁極ロータの歯によって、回転速度に比例して変化され、交流電圧を発生する。
【0042】
しかしながら、原理的には、その他の種類のセンサも使用可能である。
【0043】
車両の車輪回転数を検出するための本発明のセンサ設備は、クランプスリーブ内にクランプ固定されている本発明のセンサ装置を有する。この場合、前記クランプスリーブが、複数のクランプ要素、特に複数のバネ舌片を有する。これらのバネ舌片は、当該センサ装置の接触圧面に当接し、したがって当該クランプスリーブ内へのこのセンサ装置の安定な固定保持に寄与する。
【0044】
本発明の車輪回転数検出システムは、本発明にしたがって形成された少なくとも1つのセンサ装置を有し、例えば、アンチブロックシステム(ABS)、アクティブクルーズコントロール(ACC)、電子制動ブレーキシステム(EBS)又はアクティブロールオーバープロテクション(ARP)のように、制御機能及び/又は調整機能のためにその時の車輪回転数を必要とする、車両の運転者支援システム内で優先的に使用される。
【0045】
さらに、前記車輪回転数検出システムは、前記運転者支援システム内の制御機能及び/又は調整機能用の1つのセンサ装置又は複数のセンサ装置の信号又はデータを考慮(処理)する制御装置を有する。
【0046】
本発明の車両は、特に商用車であり、本発明のセンサ装置、及び/又は当該本発明のセンサ装置を有する本発明のセンサ設備、及び/又は当該本発明のセンサ装置を有する本発明の車輪回転数検出システムを有する。
【0047】
車輪回転数を検出するためのこのようなセンサ装置を製造するための本発明の方法によれば、前記支持構造体が、特に打ち抜き工程によって金属薄板からまず製造される。この場合、その大量生産を簡単にするため、好ましくは、前記支持構造体が、1つの部材で打ち抜かれる。
【0048】
引き続き、前記接続ケーブルが、特に半田付け又は溶接によって前記センサに固定される。しかしながら、本発明は、上記の順序に限定されていない。むしろ、当該接続ケーブルは、当該センサの固定後にも取り付けられ得る。この場合、前者の方法が、後者の方法より望ましい。何故なら、当該センサを固定した後にその接続ケーブルを固定する半田付け工程又は溶接工程の場合、当該センサの接着部分が損傷し得るからである。
【0049】
次いで、前記センサは、前記支持構造体内に挿入され、この支持構造体のセンサ搭載面上に固定される。この場合、当該固定は、好ましくは接着剤によって実行される。この支持構造体上へのこのセンサの直接の当該固定は、好ましくは前記センサキャリアの内部のこのセンサの正確な位置決めを有利に可能にする。
【0050】
次いで、前記センサの接続ケーブルが、前記支持構造体の固定面上に固定される。この接続ケーブルの当該固定は、圧着によって実行される。
【0051】
次の作業ステップでは、前記センサ装置がほぼ棒状に形成されているように、前記支持構造体が曲げられる。前記センサ装置の寸法が、使用すべきクランプスリーブによって予め前もって決められる。本発明のセンサ装置は、公知のクランプスリーブを使用することによって、既存のシステム内で従来通りに使用される棒状センサと容易に且つ低コストで交換され得る。
【0052】
最後に、適切な機械的安定性を前記センサ装置に付与するため、前記支持構造体が、封止用コンパウンド、特に合成物質又は合成樹脂で充填される。
【0053】
本発明の好適な実施の形態は、前記センサを、前記支持構造体を曲げる前に、その保護のために、このセンサを半球状に包囲する別の封止用コンパウンド、特にシリコーンで覆うことを提唱する。「チップ封止」工程とも記されるこの方法は、当該センサが前記センサキャリアを充填する本来の封止用コンパウンドに触れないように保持されることに有利に寄与する。これにより、当該センサは、熱的に保護されていて、当該封止用コンパウンドの起こり得る消失又は収縮時にもその位置を維持する。
【0054】
最後に、本発明は、車両の車輪回転数を検出するためのセンサ装置の使用に関する。この場合、当該センサ装置は、本発明にしたがって形成されていて、本発明の車輪回転数検出システム内又は本発明の車両内で使用され得る。
【0055】
その他の実施の形態は、特許請求の範囲と図面に基づいて詳しく説明された実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】センサ装置の大まかな断面図である。
図2】打ち抜き曲げ部材としての支持構造体の大まかな図である。
図3】センサ装置の前面の大まかな図である。
図4】センサ装置を製造するための本発明の方法を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、本発明の実施の形態によるセンサ装置2を示す。当該図示されたセンサ装置2は、車両の車輪回転数を検出するために適していて、棒状センサとして形成されている。この場合、当該センサ装置2の寸法が、その組み立てに使用されるクランプスリーブに適合されている。この場合、図1は、当該センサ装置2の長手軸に沿った断面図である。
【0058】
前記センサ装置2は、ほぼ棒状に又は円柱状に形成されたセンサキャリア4と、このセンサキャリア4に内蔵されたセンサ6とを有する。このセンサキャリア4は、金属製の支持構造体8によって形成され、特に非強磁性金属から成る。この支持構造体8は、このセンサ6とこのセンサ6の接続ケーブル10とのためのホルダを形成する。
【0059】
支持構造体8の内部には、センサキャリア4が、封止用コンパウンド12で充填されている。これにより、センサ装置2が、必要な機械的安定性を得る。当該安定性を向上させるため、複数のスタビライザ14が、このセンサキャリア4にさらに内蔵されている。
【0060】
センサキャリア4の表面、特にカバー表面が、支持構造体8の、断続した複数の金属表面領域によって且つ封止用コンパウンド12で充填された領域によって形成される。このセンサキャリア4は、合成樹脂製ヘッド16によって下から密封されている。電気接続ケーブル17が、センサ装置2のこの合成樹脂製ヘッド16から引き出されている。
【0061】
図2は、打ち抜き曲げ部材としての支持構造体8の曲げ工程前の大まかな展開図である。この場合、当該展開図は、この支持構造体8を寸法通りに正確に示していない概略図であることに留意する必要がある。
【0062】
中央には、センサ6を固定するためのセンサ搭載面18が存在する。このセンサ搭載面18は、両側のそれぞれ2つの結合ウェブ20を介して接触圧面22に結合されている。
【0063】
接触圧面22の形状が、その組み立てのために使用すべきクランプスリーブの形状に従う。
【0064】
図3は、クランプスリーブ24内に挿入されたセンサ装置2を有するセンサ設備2の前面の大まかな図である。センサ装置2に対する十分な保持力を得るため、一般に、このようなクランプスリーブ24は、複数のクランプ要素26、特にバネ舌片を有する。このとき、このセンサ装置2をこのクランプスリーブ24内にクランプ固定するため、十分な複数のバネ舌片26が、その組み立てられた状態で接触圧面22に当接するように、当該接触圧面22は寸法設計されている。この場合、支持構造体8が、図2に示されたように2つの接触圧面22を有し得るか又は3つの接触圧面若しくは4つの接触圧面を有してもよい。
【0065】
クランプ要素26に対する接触圧面22の正確な位置決めを保証するため、センサ装置2は、ガイドノーズ28を有する。このガイドノーズ28は、クランプスリーブ24内へのセンサ装置2の挿入時にこのクランプスリーブ24のスリット内に誘導される。
【0066】
さらに、図2によるセンサ搭載面18は、ウェブを介して固定面30に結合されている。センサ6の接続ケーブル10が、この固定面30上に固定される。好ましくは、当該固定は、クランプ工程によって実行される。当該クランプ工程の場合、この固定面30の側面が、この接続ケーブル10を超えて上方に屈曲される。
【0067】
前カバー面32が、センサ搭載面18の上方に存在する。この前カバー面32は、屈曲されている状態でセンサ装置2の前面を形成し、その組み立てられた状態で磁極ロータに向けられている。図2及び3に示された当該前カバー面32内の孔は、有益に組み立てアシスト部を形成するか、又は製造及び組み立て時の工具を用いた位置決めを容易にする。
【0068】
前カバー面32の上方の延長部分が、その屈曲されている状態で、センサ装置2をクランプスリーブ24内に方向付けして挿入するためのガイドノーズ28を形成する。このため、このガイドノーズ28は、センサキャリア4の長手側面にわたって延在し、好ましくはこのセンサキャリア4の前方の3分の1で僅かに屈曲している。
【0069】
クランプスリーブ24のバネ舌片26を接触圧面22上に当接させ、それ以外の封止用コンパウンド12上に当接させないように、ガイドノーズ28が作用する。すなわち、金属と金属との間の接触が、長く持続する支持を有益に担う一方で、当該バネ舌片と当該封止用コンパウンド12の合成樹脂との接触は、時が経つにつれて緩むであろう。
【0070】
また、支持構造体8は、その接触圧面22に可能な複数の固定突起部33を有する。これらの固定突起部33は、任意に屈曲され得、センサキャリア4を封止用コンパウンド12で充填するときにより良好に取り扱うために使用され得る。
【0071】
図4は、センサ装置2を製造するための本発明の方法を説明するためのブロック図である。
【0072】
最初に、第1ステップ34で、支持構造体8が、金属薄板から打ち抜かれる。この場合、この金属薄板は、好ましくは非強磁性金属である。単層の打ち抜き格子が、打ち抜き・折り曲げ機械によって製作され得る。当該打ち抜き格子は、その曲げ加工によって3次元構造に成形される。
【0073】
次のステップ36では、センサ6が、接着剤によって支持構造体8のセンサ搭載面18上に固定される。好ましくは、センサ6をセンサ搭載面18上に固定する前に、接続ケーブル10が、例えば半田付け又は溶接によってこのセンサ6に固定される。
【0074】
センサ6を周囲から保護するため、チップ封止工程38が選択的に使用される。このため、粘性の封止用コンパウンド、特にシリコーンの高濃度の液滴が、このセンサ6又はセンサ回路上に滴下される。当該液滴は、センサ6を有する全センサ搭載面18が覆われているまで延在する。
【0075】
引き続き、ステップ40で、接続ケーブル10つまりセンサ6の接続ケーブル10が、支持構造体8の固定面30上に固定される。この場合、この固定面30の側面が、この接続ケーブル10の周りに曲げられることによって、この固定面30が、当該結合のための基礎を形成する。クランプとも記される継ぎ合わせ方法は、高い機械的安定性を保証する外れにくい結合を提供する。
【0076】
前記方法は、センサ6及び接続ケーブル10が、支持構造体8上に非常に速く、簡単に且つ正確に固定され得るという利点を提供する。何故なら、この支持構造体8は、当該固定の時点に対して依然として扁平に形成されているからである。
【0077】
前記センサ6及び前記接続ケーブル10が、前記支持構造体8に動かないように結合されていると、曲げ加工ステップ42で、この支持構造体8が曲げられる。当該完全に曲げ加工された支持構造体8は、棒状の形のセンサ装置2を提供する。この場合、当該センサ装置2の寸法が、使用すべきクランプスリーブ24によって前もって決められる。
【0078】
支持構造体8の表面が閉鎖されていないので、当該曲げ加工された支持構造体8は、ほぼ棒状又は円柱状のケージ構造を形成する。当該表面の開口領域は、本発明にとって重要である。何故なら、当該開口領域は、センサ装置2のより良好な温度特性に寄与するからである。
【0079】
最終的に、最後のステップ44で、支持構造体8が、封止用コンパウンド12で充填される。液状の封止用コンパウンド12が、当該支持構造体8内に注入される。この場合、当該支持構造体8は、適当な形で存在する。この場合、当該支持構造体8の中断した表面領域は、その樹脂モールド工程のために密閉されている。その結果、当該封止用コンパウンド12が、当該開口部を通じて漏出し得ない。
【0080】
支持構造体8の打ち抜き時に、スタビライザ14を形成する領域が考慮されなかった場合には、封止用コンパウンド12の充填前に、少なくとも2つのスタビライザ14が、接触圧面22と接触圧面22との間の一定の間隔を保証するためにセンサキャリア4に内蔵される。
【0081】
センサ装置2を組み立てるため、公知のクランプスリーブ24が、長手軸に対して任意の方向を成して当該組み立てのために設けられている保持開口部内に押し込められる。引き続き、本発明のセンサ装置2が、当該クランプスリーブ24内に挿入される。このクランプスリーブ24は、複数のクランプ要素26を有する。これらのクランプ要素26は、クランプ力を当該センサ装置2に印加する結果、このセンサ装置2を当該保持開口部内に保持する。
【0082】
ガイドノーズ28が、クランプスリーブ24の1つのスリット内に延在することによって、このクランプスリーブ24内へのセンサ装置2の挿入時に、当該センサ装置2のガイドノーズ28が方向を設定する。このガイドノーズ28は、このクランプスリーブ24のクランプ要素26がこのセンサ装置2の接触圧面22に当接することを保証する。
【0083】
したがって、本発明のセンサ装置2は、その製造コストが安く、激しい温度変動時でも確実に作動する。上記の開口している表面領域を有するケージ構造は、封止用コンパウンド12の合成樹脂が僅かに収縮しようとするときでも、クランプスリーブ24内の接触圧面22の動かない設置に有益に寄与する。
【0084】
さらに、本発明のセンサ装置は、合成樹脂又は封止用コンパウンド12が故意でなく振動しようとするときでも、なお正確な測定値を提供する。何故なら、センサ6が、支持構造体8に動かないように固定されているからである。
【0085】
上記の説明及び特許請求の範囲に記載の全ての特徴は、個々でも任意の組み合わせでも、独立請求項の特徴と組み合わせ可能である。それ故に、本発明の開示内容は、説明されているか又は権利を請求されている特徴の組み合わせに限定されない。むしろ、本発明の範囲内で重要な全ての特徴の組み合わせが、開示されているとみなすことができる。
【符号の説明】
【0086】
2 センサ装置、キャリア設備
4 センサキャリア
6 センサ
8 支持構造体
10 接続ケーブル
12 封止用コンパウンド
14 スタビライザ
16 樹脂製ヘッド
17 電気接続ケーブル
18 センサ搭載面
20 結合ウェブ
22 接触圧面
24 クランプスリーブ
26 クランプ要素、バネ舌片
28 ガイドノーズ
30 固定面、固定舌片
32 前カバー面
34 第1ステップ
36 次のステップ
38 チップ封止工程
40 ステップ
42 曲げ加工ステップ
44 最後のステップ
図1
図2
図3
図4