【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のこの課題は、請求項1に記載のセンサ装置によって解決され、請求項10に記載のセンサ設備によって解決され、請求項11に記載の車輪回転数検出システムによって解決され、請求項12に記載の車両によって解決され、請求項13に記載のセンサ装置を製造するための方法によって解決され、請求項15に記載のセンサ装置の使用によって解決される。
【0013】
本発明のセンサ装置は、車両の車輪回転数を検出するために使用され、棒状のセンサキャリアとこのセンサキャリアに内蔵されたセンサとを有する。当該車輪回転数を検出するため、車輪と一緒に回転する磁極ロータの回転が、センサによって感知又は走査される。
【0014】
本発明のセンサキャリアは、キャリア構造体が非強磁性金属から成ることを特徴とする。さらに、このキャリア構造体は、センサを収容するために使用され、したがってセンサ装置の内部の当該センサの正確な位置決めを有益に可能にする。
【0015】
さらに、本発明のセンサキャリアは、封止用コンパウンド、例えば合成樹脂を有する。前記支持構造体が、当該封止用コンパウンドで充填される。
【0016】
さらに、本発明のセンサキャリアは、表面、特にカバー表面を有する。当該カバー表面は、前記キャリア構造体の断続した複数の金属表面領域と、封止用コンパウンドで充填された複数の領域とを有する。
【0017】
本発明のセンサ装置は、従来のクランプスリーブ内にクランプ固定されるように形成されている。このため、このクランプスリーブは、複数のバネ舌片を有する。これらのバネ舌片は、当該挿入されているセンサ装置に接触し、このセンサ装置を対向するそれぞれのバネ舌片上に押圧する。一方では当該センサ装置が、機械的な振動、衝撃及びその他の摂動力にもかかわらず、当該センサ装置の位置に保持され、他方では磁極ロータの反転時に、当該センサ装置の軸方向の移動が、破損なしに可能であるように、これらのバネ舌片から発生するクランプ力が設計されている。
【0018】
従来のクランプスリーブの可能な形状が、独国特許出願公開第102007056340号明細書に示されている。しかしながら、本発明は、当該クランプスリーブのこの形状に限定されない。むしろ、本発明のセンサ装置を収容でき、軸方向に移動可能に固定保持できるクランプ手段が、当該センサ装置を保持開口部にクランプ固定するために考えられる。
【0019】
複数のバネ舌片として形成された複数のクランプ要素を有する既存のクランプスリーブを、前記センサ装置の取り付け時にさらに使用するため、前記センサキャリアのキャリア構造体が、接触圧面として形成されている少なくとも2つの表面領域を有する。この場合、当該接触圧面の数及び当該接触圧面の寸法は、使用すべきクランプスリーブによって決まるか又は当該クランプスリーブの内部のバネ舌片の配置及び数によって決まる。当該クランプスリーブのバネ舌片が、当該センサキャリアの接触圧面を押圧するように、当該接触圧面は、有益に分配されている。
【0020】
前記の複数の接触圧面が、大部分で別々に分離された複数の表面領域であるので、前記クランプスリーブの内部のセンサ装置のより良好な保持が達成される。何故なら、これらの接触圧面は、少しだけ撓みやすいからである。さらに、前記のキャリア構造体の断続した複数の表面は、より良好な温度特性を有し、したがってより高い安定性も当該クランプスリーブにおいて有する。
【0021】
本発明のセンサ装置は、寸法及び形状を既存のシステムに適合されていて、既存のセンサ装置と有益に取り替えられ得る。
【0022】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記センサ装置の支持構造体が、このセンサ装置をクランプスリーブ内に方向付けして挿入するためのガイドノーズを有する。
【0023】
保持開口部の僅かな製造公差を補正するため、及び当該保持開口部の内部の十分なクランプ作用を達成するため、従来の技術によるクランプスリーブは、溝付けされたスリーブの形を成す。
【0024】
本発明のセンサ装置を組み立てるため、前記ガイドスノーズが、前記クランプスリーブのスリットの内部に延在するように、このセンサ装置は、このクランプスリーブ内に挿入される。このクランプスリーブ内でこのセンサ装置の既定の方向付けが、当該既存のガイドノーズによって強制される。
【0025】
これにより、前記のクランプスリーブのバネ舌片に対する接触圧面の正確な設置が確保されている。それ故に、前記センサ装置の誤差のない取り付けが、多大な経費なしに可能である。
【0026】
本発明の別の好適な実施の形態では、複数のキャリアストリップから成る支持構造体が、打ち抜き曲げ部材として形成されている。当該センサ装置は、通常は大量に製造されるので、打ち抜き格子としての支持構造体の低コストの製造が有益である。当該打ち抜き格子は、打ち抜き・折り曲げ機械によって金属薄板から製造可能である。
【0027】
本発明の別の好適な実施の形態は、前記センサキャリアの長手方向に対して直角に配置された少なくとも2つのスタビライザを前記支持構造体の内部に有する。これらのスタビライザは、前記の複数の接触圧面間に配置されていて、特に、当該支持構造体の内部に注入された合成樹脂が、老化によって収縮するときでも、依然として、これらの接触圧面と前記クランプスリーブの複数のバネ舌片との間の一定の圧力を有利に配慮する。
【0028】
前記の複数のスタビライザは、その製造時に、前記センサキャリアに別々に内蔵され得るか、又は打ち抜き格子として形成された支持構造体内に組み込まれ得る。
【0029】
好ましくは、前記の複数のスタビライザが、前記センサ装置を前記クランプスリーブ内に挿入された状態で、このクランプスリーブの複数のバネ舌片の高さに存在するように、これらのスタビライザは、前記センサキャリアの内部に配置されている。
【0030】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、前記キャリア構造体が、前記センサを固定するためのセンサ搭載面を有する。このセンサ搭載面は、当該キャリアストリップの内部に設けられていて、少なくとも1つの接触圧面を有する少なくとも2つの結合ウェブに結合されている。この場合、このセンサ搭載面上に存在するセンサが、半径方向にこのセンサキャリアの内部のほぼ中央に存在するように、これらの結合ウェブは、その製造工程中に曲げられる。
【0031】
さらに、前記の複数の結合ウェブは、完成して曲げられている状態でそれぞれ1つの湾曲されている部分、特にS字状の部分を有する。この湾曲されている部分は、バネ作用を有し、前記センサの領域内で熱応力が発生しないように配慮する。
【0032】
本発明の別の実施の形態では、前記支持構造体が、前記センサ装置の前面に前カバー面を有する。この前カバー面は、この支持構造体の曲げられている状態で円柱状に形成された前記センサキャリアのカバー面を形成する。このカバー面は、前記磁極ロータに向けられている。これにより、当該センサヘッドは、その金属表面に起因して、当該磁極ロータに対する接触によってほとんど摩耗されず、センサ装置のより長い耐久性を有益に達成する。
【0033】
さらに、前記カバー面は、有益にブレーキの放射熱と前記センサキャリアの内部に存在するセンサとの間の熱シールドとして役立つ。
【0034】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、前記支持構造体が、前記センサの少なくとも1つの接続ケーブルを固定するための固定面を有する。このため、このセンサを前記センサ搭載面上に固定した後に、このセンサの1つ又は複数の接続ケーブルが、当該固定面の縁部の塑性変形によって当該固定面上に機械的に固定される。圧着とも記されるこの接合方法は、有益に速く、低コストで且つ確実である。
【0035】
本発明の別の好適な実施の形態では、少なくとも1つの固定舌片が、前記支持構造体の少なくとも1つの接触圧面に設けられている。この支持構造体を前記封止用コンパウンドで充填するときに、より良好な取り扱いを有益に達成するため、これらの固定舌片は、この支持構造体の曲げ工程中に爪状に曲げられる。
【0036】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、アクティブセンサ又はパッシブセンサが、前記センサキャリア内の、前記磁極ロータの回転を検出するためのセンサとして設けられている。
【0037】
アクティブセンサは、通常は磁気抵抗効果に基づいて機能し、前記の車輪と一緒に回転する磁極ロータの磁界を検出し、その際、この磁極ロータは、N極磁化とS極磁化とを交互する順序で呈する永久磁石リングとして形成されている。当該車輪の回転数を検出するため、所定の電圧が、当該アクティブセンサに印加される。当該磁気抵抗センサは、好ましくはAMR(異方性磁気抵抗)センサ又はGMR(巨大磁気抵抗)センサである。
【0038】
この代わりに、前記アクティブセンサは、ホール効果を利用して前記磁極ロータの回転を検出するためのホールセンサ又はホール効果センサである。
【0039】
好ましくは、前記アクティブセンサは、長手軸を中心にした回転に関して位置に左右されない。これにより、前記センサ装置は、前記クランプスリーブを用いることで、有益に任意の向きで、前記保持開口部内にクランプ可能である。これにより、その組み立て時の経費のかかる調整作業が省略される。
【0040】
前記の車輪回転数を検出するためのアクティブセンサの使用には、前記磁極ロータが、非常に遅く回転するときでも又は停止しているときでも、アクティブセンサが、測定値を供給するという利点がある。
【0041】
また、この代わりに、前記センサ装置は、前記磁極ロータの回転を受動的に検出するためのパッシブセンサを有する。このため、当該パッシブセンサは、永久磁石及びコイルを有する。当該パッシブセンサ内の磁束が、この磁極ロータの歯によって、回転速度に比例して変化され、交流電圧を発生する。
【0042】
しかしながら、原理的には、その他の種類のセンサも使用可能である。
【0043】
車両の車輪回転数を検出するための本発明のセンサ設備は、クランプスリーブ内にクランプ固定されている本発明のセンサ装置を有する。この場合、前記クランプスリーブが、複数のクランプ要素、特に複数のバネ舌片を有する。これらのバネ舌片は、当該センサ装置の接触圧面に当接し、したがって当該クランプスリーブ内へのこのセンサ装置の安定な固定保持に寄与する。
【0044】
本発明の車輪回転数検出システムは、本発明にしたがって形成された少なくとも1つのセンサ装置を有し、例えば、アンチブロックシステム(ABS)、アクティブクルーズコントロール(ACC)、電子制動ブレーキシステム(EBS)又はアクティブロールオーバープロテクション(ARP)のように、制御機能及び/又は調整機能のためにその時の車輪回転数を必要とする、車両の運転者支援システム内で優先的に使用される。
【0045】
さらに、前記車輪回転数検出システムは、前記運転者支援システム内の制御機能及び/又は調整機能用の1つのセンサ装置又は複数のセンサ装置の信号又はデータを考慮(処理)する制御装置を有する。
【0046】
本発明の車両は、特に商用車であり、本発明のセンサ装置、及び/又は当該本発明のセンサ装置を有する本発明のセンサ設備、及び/又は当該本発明のセンサ装置を有する本発明の車輪回転数検出システムを有する。
【0047】
車輪回転数を検出するためのこのようなセンサ装置を製造するための本発明の方法によれば、前記支持構造体が、特に打ち抜き工程によって金属薄板からまず製造される。この場合、その大量生産を簡単にするため、好ましくは、前記支持構造体が、1つの部材で打ち抜かれる。
【0048】
引き続き、前記接続ケーブルが、特に半田付け又は溶接によって前記センサに固定される。しかしながら、本発明は、上記の順序に限定されていない。むしろ、当該接続ケーブルは、当該センサの固定後にも取り付けられ得る。この場合、前者の方法が、後者の方法より望ましい。何故なら、当該センサを固定した後にその接続ケーブルを固定する半田付け工程又は溶接工程の場合、当該センサの接着部分が損傷し得るからである。
【0049】
次いで、前記センサは、前記支持構造体内に挿入され、この支持構造体のセンサ搭載面上に固定される。この場合、当該固定は、好ましくは接着剤によって実行される。この支持構造体上へのこのセンサの直接の当該固定は、好ましくは前記センサキャリアの内部のこのセンサの正確な位置決めを有利に可能にする。
【0050】
次いで、前記センサの接続ケーブルが、前記支持構造体の固定面上に固定される。この接続ケーブルの当該固定は、圧着によって実行される。
【0051】
次の作業ステップでは、前記センサ装置がほぼ棒状に形成されているように、前記支持構造体が曲げられる。前記センサ装置の寸法が、使用すべきクランプスリーブによって予め前もって決められる。本発明のセンサ装置は、公知のクランプスリーブを使用することによって、既存のシステム内で従来通りに使用される棒状センサと容易に且つ低コストで交換され得る。
【0052】
最後に、適切な機械的安定性を前記センサ装置に付与するため、前記支持構造体が、封止用コンパウンド、特に合成物質又は合成樹脂で充填される。
【0053】
本発明の好適な実施の形態は、前記センサを、前記支持構造体を曲げる前に、その保護のために、このセンサを半球状に包囲する別の封止用コンパウンド、特にシリコーンで覆うことを提唱する。「チップ封止」工程とも記されるこの方法は、当該センサが前記センサキャリアを充填する本来の封止用コンパウンドに触れないように保持されることに有利に寄与する。これにより、当該センサは、熱的に保護されていて、当該封止用コンパウンドの起こり得る消失又は収縮時にもその位置を維持する。
【0054】
最後に、本発明は、車両の車輪回転数を検出するためのセンサ装置の使用に関する。この場合、当該センサ装置は、本発明にしたがって形成されていて、本発明の車輪回転数検出システム内又は本発明の車両内で使用され得る。
【0055】
その他の実施の形態は、特許請求の範囲と図面に基づいて詳しく説明された実施例から明らかになる。