特許第6307192号(P6307192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307192
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】粘着性組成物、粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20180326BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20180326BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180326BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J11/08
   C09J7/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-47219(P2017-47219)
(22)【出願日】2017年3月13日
(62)【分割の表示】特願2013-34331(P2013-34331)の分割
【原出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-141453(P2017-141453A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】所司 悟
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−157458(JP,A)
【文献】 特開2012−211282(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/067744(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/097365(WO,A1)
【文献】 特開2013−010839(JP,A)
【文献】 特開2010−163591(JP,A)
【文献】 特開2013−006892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/06
C09J 7/20
C09J 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が10万〜90万であり、反応性基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、
架橋剤(B)と、
環状分子として環状オリゴ糖を有するポリロタキサン化合物(C)と
を含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であって、
前記粘着性組成物中における前記架橋剤(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であり、
前記粘着性組成物中における前記ポリロタキサン化合物(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを2〜30質量%含有し、
前記架橋剤(B)は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
ゲル分率が20〜90%である
ことを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
前記ポリロタキサン化合物(C)の環状分子は、反応性基として水酸基を有することを特徴とする請求項に記載の粘着剤。
【請求項3】
ヘイズ値が5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
厚さ100μmの前記粘着剤を、スズドープ酸化インジウムからなる透明導電膜を有する厚さ125μmのプラスチックフィルム2枚により、前記透明導電膜面側が前記粘着剤に接するように挟み、85℃、85%RHの条件下にて120時間保管し、その後23℃、50%RHの常温常湿に戻したときの、前記粘着剤のヘイズ値が5%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項5】
基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項6】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項7】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性組成物、粘着剤(粘着性組成物を架橋させた材料)および粘着シートに関するものであり、特に、光学部材用として好適な粘着性組成物、粘着剤および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器において、表示装置と入力手段とを兼ねたタッチパネルが多く使用されている。タッチパネルの種類には、主として、抵抗膜式、静電容量式、光学式および超音波式があり、抵抗膜式にはアナログ抵抗膜式およびマトリックス抵抗膜式があり、静電容量式には表面型および投影型がある。
【0003】
最近注目されているスマートフォンやタブレット端末等のモバイル電子機器におけるタッチパネルでは、投影型静電容量式のものが多く使用されている。かかるモバイル電子機器における投影型静電容量式のタッチパネルとして、例えば、下から順に、液晶表示装置(LCD)、粘着剤層、透明導電膜(スズドープ酸化インジウム:ITO)、ガラス基板、透明導電膜(ITO)、および強化ガラスなどの保護層が積層されたものが提案されている。
【0004】
上記のようなタッチパネルでは、粘着剤層が接する面に、印刷等に起因する段差が存在する場合があり、この場合、粘着剤層が当該段差を埋めるように形成される必要がある。そのためには、粘着剤層を厚膜にするとともに、当該粘着剤層を段差に追従させる必要がある。すなわち、かかる粘着剤層に使用される粘着剤には、厚膜塗工性および段差(凹凸)追従性が要求される。
【0005】
特許文献1および2に記載された発明では、低分子量成分であるオリゴマーを粘着剤に配合し、得られる粘着剤層を適度に柔らかくすることにより、粘着剤層の凹凸追従性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−158458号公報
【特許文献2】特開2011−162593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、低分子量成分を添加して得られる粘着剤は、凝集力が十分ではなく、高温下におかれたときに接着力が低下したり発泡したりしてしまい、耐熱性が低いという問題がある。また、経時により低分子量成分が粘着剤層からブリードアウトし、接着耐久性が低下したり、被着体が汚染されるなど、様々な問題が懸念される。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、厚膜塗工性および凹凸追従性に優れる粘着性組成物、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、重量平均分子量が10万〜90万であり、反応性基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、環状分子として環状オリゴ糖を有するポリロタキサン化合物(C)とを含有する粘着性組成物であって、前記粘着性組成物中における前記架橋剤(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であり、前記粘着性組成物中における前記ポリロタキサン化合物(C)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部であることを特徴とする粘着性組成物を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る粘着性組成物は、主成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が比較的小さいことにより、厚膜塗工性に優れ、また、ポリロタキサン化合物(C)を所定量含有することにより、得られる粘着剤は凹凸追従性に優れたものとなる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマーを1〜50質量%含有し、前記架橋剤(B)が、イソシアネート系架橋剤であるか(発明2)、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを1〜30質量%含有し、前記架橋剤(B)が、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である(発明3)ことが好ましい。
【0012】
上記発明(発明1〜3)において、前記ポリロタキサン化合物(C)の環状分子は、反応性基として水酸基を有することが好ましい(発明4)。
【0013】
第2に本発明は、前記粘着性組成物(発明1〜4)を架橋してなる粘着剤を提供する(発明5)。
【0014】
上記発明(発明5)においては、ゲル分率が20〜90%であることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明5,6)においては、ヘイズ値が5%以下であることが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明5,6)においては、厚さ100μmの前記粘着剤を、スズドープ酸化インジウムからなる透明導電膜を有する厚さ125μmのプラスチックフィルム2枚により、前記透明導電膜面側が前記粘着剤に接するように挟み、85℃、85%RHの条件下にて120時間保管し、その後23℃、50%RHの常温常湿に戻したときの、前記粘着剤のヘイズ値が5%以下であることが好ましい(発明8)。
【0017】
第3に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記粘着剤(発明5〜8)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明9)。
【0018】
上記発明(発明9)において、前記基材は、光学部材であることが好ましい(発明10)。
【0019】
第4に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記粘着剤(発明5〜8)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明11)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る粘着性組成物は、主成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が比較的小さいことにより、厚膜塗工性に優れ、また、ポリロタキサン化合物を所定量含有することにより、得られる粘着剤は凹凸追従性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図3】粘着剤層の凹凸追従性試験を説明する平面図である。
図4】粘着剤層の凹凸追従性試験を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性組成物〕
本実施形態に係る粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という。)は、重量平均分子量が10万〜90万であり、反応性基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、環状分子として環状オリゴ糖を有するポリロタキサン化合物(C)とを含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0023】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基は、架橋剤(B)と反応可能な官能基であり、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられ、中でも水酸基およびカルボキシル基が好ましい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)および/またはカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)を含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、上記の反応性基を介して、架橋剤(B)により架橋される。なお、上記反応性基として、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合性不飽和二重結合を含有する官能基は除かれる。ラジカル重合性不飽和二重結合を含有する官能基を反応性基とする(メタ)アクリル酸エステル重合体の架橋反応では、本発明の効果を発揮できる適切な架橋密度にコントロールすることが困難だからである。
【0024】
水酸基は、イソシアネート基との反応性が高いため、後述する架橋剤(B)としては、イソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。また、カルボキシル基は、イソシアネート基、エポキシ基および金属キレートと反応するため、後述する架橋剤(B)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0025】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられ、中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを1〜50質量%含有することが好ましく、特に5〜40質量%含有することが好ましく、さらには15〜30質量%含有することが好ましい。
【0027】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを1〜30質量%含有することが好ましく、特に2〜25質量%含有することが好ましく、さらには7〜20質量%含有することが好ましい。
【0029】
水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、形成される架橋構造が良好なものとなり、得られる粘着剤が、光学部材用として好適な耐久性を有するものとなる。
【0030】
また、水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーの含有量が上記の範囲であると、粘着性組成物Pを架橋して得られる粘着剤は、高温高湿条件を施した後、常温常湿に戻したときの白化が抑制される。高温高湿の条件の詳細に関しては後述する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が上記のように比較的多い量で水酸基含有モノマーまたはカルボキシル基含有モノマーを含有すると、粘着性組成物Pを架橋して得られる粘着剤中に、所定量の水酸基またはカルボキシル基が残存することとなる。水酸基およびカルボキシル基は親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤中に存在すると、粘着剤が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤に浸入した水分が、常温常湿に戻ったときに粘着剤から抜け易くなるものと推定され、その結果、粘着剤の白化が抑制されることとなる。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましく、特に主成分として含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。
【0032】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30〜99質量%含有することが好ましく、特に40〜95質量%含有することが好ましく、さらには50〜85質量%含有することが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性基を有しないモノマーが好ましい。
【0035】
かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は10万〜90万であり、20万〜70万であることが好ましく、特に25万〜60万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0038】
粘着性組成物Pの主成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記のように比較的小さいことにより、粘着性組成物Pは、高濃度(低溶剤量)かつ低粘度で塗工することができ、これにより厚膜塗工が可能となる。具体的には、乾燥後の粘着剤層の厚さが10〜200μmとなるように塗工することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が90万を超えると、上記の効果が得られない。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が10万未満であると、得られる粘着剤が耐久性に劣るものとなる。
【0039】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(2)架橋剤(B)
粘着性組成物Pは、架橋剤(B)を含有することで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋して三次元網目構造を形成し、得られる粘着剤に光学部材用として好適な耐久性を付与することができる。
【0041】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
前述した通り、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が反応性基として水酸基を有する場合には、イソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が反応性基としてカルボキシル基を有する場合には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0043】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性基との反応性の点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0044】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0045】
金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等のキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。
【0046】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレート等が挙げられる。
【0047】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であることを要し、0.01〜1質量部であることが好ましく、特に0.02〜0.8質量部であることが好ましく、さらには0.03〜0.6質量部であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が0.01質量部以上であると、当該架橋剤(B)による耐久性向上効果が得られる。架橋剤(B)の含有量が2質量部を超えると、架橋の度合いが過度になり、得られる粘着剤の凹凸追従性が低下する。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が前述した量で水酸基含有モノマーまたはカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、水酸基またはカルボキシル基が多量に架橋剤(B)と反応して、粘着剤中に残存する量が少なくなり、前述した白化抑制効果が得られなくなるおそれがある。
【0048】
(3)ポリロタキサン化合物(C)
粘着剤組成物Pが含有するポリロタキサン化合物(C)は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなる化合物である。このポリロタキサン化合物(C)においては、環状分子が直鎖状分子上を自由に移動(スライディング)することが可能である。粘着性組成物Pが、かかる機械的結合を有するポリロタキサン化合物(C)を所定量含有することで、得られる粘着剤は、応力緩和性、そして凹凸追従性に優れたものとなる。したがって、被着体に段差が存在する場合でも、当該段差と粘着剤層との間に空隙ができ難く、粘着剤層が当該段差を埋めることができる。
【0049】
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(C)は、環状分子として環状オリゴ糖を有する。ポリロタキサン化合物(C)の環状分子として環状オリゴ糖を使用することにより、適切な環径の選択が可能となり、それにより、直鎖状分子上で環状分子が移動することによる効果が発現しやすい。また、修飾されていない環状オリゴ糖は水酸基を有することから、架橋剤(B)が、例えばイソシアネート系架橋剤であると、当該イソシアネート系架橋剤との反応が容易である。さらに、様々な置換基等の導入も容易であり、それにより、ポリロタキサン化合物(C)とその他の成分との相溶性をポリロタキサン化合物(C)によって調整することが可能となる。さらに、環状オリゴ糖であれば、入手も容易であるという利点もある。なお、本明細書において、「環状分子」または「環状オリゴ糖」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0050】
環状オリゴ糖としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリン及びその誘導体が好ましく挙げられ、中でも特にα−シクロデキストリン及びその誘導体が好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の環状分子は、ポリロタキサン化合物(C)中または粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0051】
ポリロタキサン化合物(C)の環状分子(環状オリゴ糖)は、架橋剤(B)が有する反応性基(b)と反応可能な反応性基(c)を有することが好ましい。反応性基(c)としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、架橋剤(B)の反応性基(b)がイソシアネート基である場合には、ポリロタキサン化合物(C)の環状分子は、反応性基(c)として水酸基を有することが好ましい。
【0052】
粘着性組成物Pにおいて、架橋剤(B)と(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)、そして架橋剤(B)とポリロタキサン化合物(C)とが反応し、当該架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(C)とが架橋されると、ポリロタキサン化合物(C)にて環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することにより、架橋体としての柔軟性が著しく向上する。これにより、得られる粘着剤は、非常に高い応力緩和性を発揮し、より凹凸追従性に優れたものとなる。
【0053】
上記反応性基(c)の環状分子中における含有率は、4〜90%であることが好ましく、特に20〜70%であることが好ましい。なお、ここでいう含有率は、環状分子が従前より有する反応性基(たとえば、シクロデキストリンにおける水酸基)の量を100とし、その反応性基の一部が置換等により非反応性化された場合の残存する反応性基の量を表す。含有率が4%未満では、ポリロタキサン化合物(C)が架橋剤(B)と十分に反応できなくなるおそれがある。一方、含有率が90%を超えると、同一の環状分子において多数の架橋が生じるため環状分子自体が架橋点となり、ポリロタキサン化合物(C)全体としての架橋点の効果(架橋点のスライド効果)を発揮できなくなり、その結果、粘着剤層の十分な凹凸追従性が確保できなくなるおそれがある。
【0054】
なお、上記反応性基(c)は、環状分子に置換基を介して存在していてもよいし、さらには、環状分子が有する反応性基(c)を介して異なる2種類以上の置換基を結合し、そのうちのいずれかの置換基に反応性基(c)を有していてもよい。
【0055】
上記置換基としては、例えば、アセチル基、アルキル基、トリチル基、トシル基、トリメチルシラン基、フェニル基等の他、ポリエステル鎖、オキシエチレン鎖、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アクリル酸エステル鎖等が挙げられる。これらの置換基を有することにより、ポリロタキサン化合物(C)の溶解性を向上させることができる。置換基の数平均分子量は、100〜10,000が好ましく、特に400〜2,000が好ましい。上記置換基の反応性基(c)への導入率(置換度)は、10〜90%であることが好ましく、特に30〜70%であることが好ましい。
【0056】
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
【0057】
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子は、粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0058】
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子の数平均分子量は、3,000〜300,000であることが好ましく、特に10,000〜200,000であることが好ましく、さらには20,000〜100,000であることが好ましい。数平均分子量が3,000未満であると、環状分子の直鎖状分子上での移動量が小さくなり、粘着剤の応力緩和性が十分に得られないおそれがある。また、数平均分子量が300,000を超えると、ポリロタキサン化合物(C)の溶媒への溶解性や(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性が悪くなるおそれがある。
【0059】
ポリロタキサン化合物(C)のブロック基は、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
【0060】
具体的には、ポリロタキサン化合物(C)のブロック基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基は、ポリロタキサン化合物(C)中または粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0061】
上記の数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0062】
環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を100%とした場合、環状分子は、好ましくは0.1〜60%、特に好ましくは1〜50%、さらに好ましくは5〜40%の量で直鎖状分子に串刺し状に包接される。
【0063】
なお、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さとにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993, 26, 5698-5703 参照)。
【0064】
以上説明したポリロタキサン化合物(C)は、従来公知の方法(例えば特開2005−154675に記載の方法)によって得ることができる。
【0065】
本実施形態に係る粘着剤組成物中におけるポリロタキサン化合物(C)の含有量は、0.1〜30質量%であり、0.5〜15質量%であることが好ましく、特に0.7〜10質量%であることが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の含有量が0.1質量%未満であると、当該ポリロタキサン化合物(C)による凹凸追従性の効果が得られない場合がある。一方、ポリロタキサン化合物(C)の含有量が30質量%を超えると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性が悪くなり、得られる粘着剤のヘイズ値が上昇する場合がある。
【0066】
(4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0067】
〔粘着性組成物の製造方法〕
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、ポリロタキサン化合物(C)とを混合するとともに、所望により、添加剤を加えることで製造することができる。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマー(共重合体の場合はモノマーの混合物)を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0070】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0071】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ポリロタキサン化合物(C)、および所望により添加剤を添加し、十分に混合することにより、粘着性組成物Pを得る。
【0073】
ここで、粘着性組成物Pにおける(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は比較的小さく、粘度が低いため、粘着性組成物Pは溶液重合後そのまま塗布液として塗布することが可能である。したがって、粘着性組成物Pを重合後に希釈するための希釈溶剤は、通常は不要である(ただし、希釈溶剤の使用を妨げるものではない)。これにより、粘着性組成物Pは、高濃度で塗布することができ、厚膜塗工が可能となる。具体的には、乾燥後の粘着剤層の厚さが、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは40〜100μmとなるように塗工することができる。
【0074】
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの乾燥処理で兼ねることもできる。
【0075】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
【0076】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(C)とが良好に架橋される。
【0077】
粘着性組成物Pを架橋させて得られる粘着剤は、架橋剤(B)の量が同じであれば、ポリロタキサン化合物(C)の添加量が多くなるほど破断伸度の値が大きくなり、破断応力の値も大きくなる傾向にある。そのため、架橋剤の量による従来の調整方法ではトレードオフの関係にある粘着剤の破断伸度と破断応力のバランスの制御が、上記の粘着剤であれば可能となる。
【0078】
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、20〜95%であることが好ましく、特に30〜90%であることが好ましく、さらには40〜80%であることが好ましい。ゲル分率が20%未満であると、粘着剤の凝集力が不足して、耐久性およびリワーク性が低下する場合がある。一方、ゲル分率が95%を超えると、凹凸追従性が極端に低下する場合がある。なお、上記ゲル分率は、養生期間が経過して(例えば、23℃、50%RH環境下にて7日間保管後)形成された粘着剤についての値である。養生期間が経過しているかどうか不明の場合、改めて、23℃、50%RHの環境下にて7日間保管した後、ゲル分率が上記範囲内となっていればよい。
【0079】
〔粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0080】
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0081】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤からなる。
【0082】
粘着剤層11の厚さは、埋めるべき被着体の段差の高さに応じて適宜決定されるが、通常10〜300μmであることが好ましく、特に15〜250μmであることが好ましく、さらには40〜200μmであることが好ましい。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0083】
基材13としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の繊維を用いた織布または不織布;合成紙;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0084】
光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。
【0085】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10〜500μmであり、好ましくは50〜300μmであり、特に好ましくは、80〜150μmである。
【0086】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0087】
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0088】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0089】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、上記粘着性組成物Pを含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って塗布層を形成した後、その塗布層に基材13を積層する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1Aが得られる。なお、加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0090】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pを含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1Bが得られる。
【0091】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。前述した通り、粘着性組成物Pは、低粘度であり、高濃度で塗布することができるため、厚膜塗工が可能である。
【0092】
ここで、例えば、液晶セルと偏光板とから構成される液晶表示装置を製造するには、粘着シート1Aの基材13として偏光板を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合すればよい。
【0093】
また、例えば、液晶セルと偏光板との間に位相差板が配置される液晶表示装置を製造するには、一例として、まず、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、粘着シート1Bの露出した粘着剤層11と位相差板とを貼合する。次いで、基材13として偏光板を使用した粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、粘着シート1Aの露出した粘着剤層11と上記位相差板とを貼合する。さらに、上記粘着シートBの粘着剤層11から他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、粘着シートBの露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合する。
【0094】
また、例えば、ガラス基板を有する液晶セルと、所望の機能層を有するガラス基板との積層体を製造するには、一例として、まず、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、粘着シート1Bの露出した粘着剤層11とガラス基板の機能層側の面とを貼合する。次いで、粘着シートBの粘着剤層11から他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、粘着シートBの露出した粘着剤層11と液晶セルのガラス基板とを貼合する。
【0095】
上記ガラス基板の種類としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス基板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。
【0096】
また、本実施形態に係る粘着剤層11は、具体的には、偏光板(偏光フィルム)、位相差板(位相差フィルム)等の光学部材同士の接着、偏光板(偏光フィルム)や位相差板(位相差フィルム)とガラス基板との接着、透明電極フィルム同士、透明電極フィルムとハードコートフィルムの接着、あるいはガラス基板とガラス基板との接着に好適である。ガラス基板は、例えば、液晶セルを構成するガラス基板であってもよい。なお、ガラス基板の粘着剤側の面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層等)が設けられていてもよい。
【0097】
ここで、本実施形態に係る粘着シート1Aは、無アルカリガラスに対する粘着力が、0.1〜25N/25mmであることが好ましく、特に2〜20N/25mmであることが好ましい。なお、ここでいう粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に対し0.5MPa、50℃で20分加圧して貼付した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0098】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が前述した量で水酸基含有モノマーまたはカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、粘着性組成物Pを架橋させて得られる粘着剤層11は、所定量の水酸基またはカルボキシル基を有することとなる。これにより、高温高湿条件を施した後、常温に戻したときの粘着剤の白化が抑制される。例えば、厚さ100μmの上記粘着剤層11を、スズドープ酸化インジウムからなる透明導電膜を有する厚さ125μmのプラスチックフィルム2枚により、透明導電膜面側が上記粘着剤層11に接するように挟んで、85℃、85%RHの条件下にて120時間保管し、その後23℃、50%RHの常温常湿に戻したときの上記粘着剤層11のヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)が、5%以下であることが好ましく、特に3%以下であることが好ましく、さらには2.5%以下であることが好ましい。なお、上記ヘイズ値の測定は、85℃、85%RHの雰囲気から取り出して、30分以内に行うものとする。
【0099】
本実施形態に係る粘着剤層11は、常態時でも上記のようなヘイズ値を有することが好ましい。ヘイズ値が5%以下であると、透明性が高く、光学用途として好適なものとなる。
【0100】
また、本実施形態に係る粘着剤層11は、光学部材用として好ましく用いることができ、特に、段差を有する被着体に好ましく用いることができる。ここで、段差の高さは、2〜50μmであることが好ましく、特に5〜30μmであることが好ましい。
【0101】
以上の粘着シート1A,1Bにおいては、粘着剤層を厚く形成することができ、かつ当該粘着剤層が凹凸追従性に優れるため、被着体に段差がある場合でも、当該段差と粘着剤層との間に空隙ができ難く、粘着剤層が当該段差を埋めることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が前述した量で水酸基含有モノマーまたはカルボキシル基含有モノマーを含有する場合における粘着シート1A,1Bによれば、得られた部材を高温高湿下に置いた後、常温常湿に戻したときでも、粘着剤層11が白化することを抑制することができる。
【0102】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0103】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0105】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル60質量部、メタクリル酸メチル20質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部、酢酸エチル150質量部、および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.15質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、16時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量60万の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の生成を確認した。
【0106】
2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートL」)0.3質量部と、ポリロタキサン化合物(C)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,商品名「セルム スーパーポリマーA1000」)0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、粘着性組成物の塗布液(固形分濃度:40質量%)を得た。
【0107】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n−ブチル
MA:アクリル酸メチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(B)]
イソシアネート系架橋剤−TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートL」)
イソシアネート系架橋剤−XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製,商品名「TD−75」)
エポキシ系架橋剤:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(綜研化学社製,商品名「E−AX」)
金属キレート系架橋剤:アルミニウムキレート化合物(綜研化学社製,商品名「M−5A」)
【0108】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で3分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0109】
次いで、PETフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を、上記塗布層の露出面側に当該剥離シートの剥離処理面側が接するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
【0110】
〔実施例2〜33,比較例1〜9〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量、架橋剤(B)の種類および配合量、ならびにポリロタキサン化合物(C)の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして剥離シート/粘着剤層/剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
【0111】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0112】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例または比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズにサンプリングして、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM1とする。
【0113】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの質量を、精密天秤にて秤量した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0114】
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例または比較例で得られた粘着シートから片方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を易接着PETフィルム(東洋紡社製,PET100A4300,厚さ:100μm)に貼合した後、その積層体を裁断し、25mm幅、100mm長のサンプルを作製した。このサンプルからもう一方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に当該サンプルを貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
〔試験例3〕(ヘイズ値の測定)
実施例または比較例で得られた粘着シートの粘着剤層(厚さ:50μm)について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0116】
〔試験例4〕(耐湿熱白化評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの片方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、スズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜を有するPETフィルム(ITO−PETフィルム;尾池工業社製,総厚125μm、)のITO面に貼合した。次いで、もう一方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を上記と同様にしてITO−PETフィルム(尾池工業社製,総厚125μm)に貼合した。得られた積層体を裁断し、50mm×50mmの大きさのサンプルを作製した。
【0117】
上記のサンプルを、85℃、85%RHの条件下にて120時間保管し、その後23℃、50%RHの常温常湿に戻し、粘着剤層のヘイズ値を測定した(85℃、85%RHの雰囲気から取り出して、30分以内に測定)。ヘイズ値は、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7136:2000に準じて測定した。測定したヘイズ値に基づき、以下の基準で耐湿熱白化性を評価した。結果を表2に示す。
◎:ヘイズ値が2.5%以下
○:ヘイズ値が2.5%超、5%未満
×:ヘイズ値が5%以上
【0118】
〔試験例5〕(引張試験)
実施例または比較例で得られた粘着シートにおける粘着剤層の合計厚さが500μmとなるように、かつ積層体の最表層の剥離シートのみが残るように上記粘着剤層を複数層積層した。得られた積層体を23℃、50%RHの雰囲気下で2週間放置した後、積層体から10mm幅×75mm長のサンプルを切り出し、積層体の最表層に積層された剥離シートを剥した。そして、サンプル測定部位が10mm幅×20mm長(伸長方向)になるようにサンプルをセットし、23℃、50%RHの環境下で引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて引張速度200mm/分で伸長させ、破断伸度(%)および破断応力(N/mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0119】
〔試験例6〕(凹凸追従性試験)
実施例または比較例で得られた粘着シートから片方の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を易接着PETフィルム(東洋紡社製,PET100A4300,厚さ:100μm)に貼合した後、その積層体を50mm×50mmのサイズに裁断して、これをサンプルとした。
【0120】
図3および図4に示すように、サイズ70mm×70mm、厚さ1.1mmのソーダライムガラスの上に、サイズ20mm×20mm、厚さ25μmまたは50μmのPETフィルムを載置した。そして、上記サンプルから剥離シートを剥離し、上記サンプルの粘着剤面が厚さ25μmまたは50μmのPETフィルムを封止するように、上記サンプルをソーダライムガラスに貼付した後、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
【0121】
次いで、60℃、90%RHの条件下にて48時間保管した後、23℃、50%RHの常温常湿に戻し、上記封止されたPETフィルムの端部近傍にて発生している粘着剤層の浮きの長さL(厚さ25μmまたは50μmのPETフィルムの端部から、粘着剤層とソーダライムガラスとの接着部分までの距離を任意に5点測定し、それらを平均した距離)を測定した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
◎:浮きの長さLが0.3mm未満
○:浮きの長さLが0.3mm以上、0.5mm未満
○△:浮きの長さLが0.5mm以上、0.8mm未満
△○:浮きの長さLが0.8mm以上、1.0mm未満
×:浮きの長さLが1.0mm以上
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表2から分かるように、実施例で得られた粘着剤層は、凹凸追従性に優れ、また、高温高湿条件下の後、常温に戻ったときの白化が抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の粘着剤は、偏光板、ガラス基板等の光学部材の接着に好適であり、また、本発明の粘着シートは、偏光板、ガラス基板等の光学部材用の粘着シートとして好適である。
【符号の説明】
【0126】
1A,1B…粘着シート
11…粘着剤層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材
図1
図2
図3
図4