(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307204
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】コンベアベルト用ワイヤロープ
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20180326BHJP
C23C 2/06 20060101ALN20180326BHJP
C23C 2/38 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
D07B1/06 Z
!C23C2/06
!C23C2/38
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-503043(P2017-503043)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公表番号】特表2017-512926(P2017-512926A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】CN2014086205
(87)【国際公開番号】WO2015158103
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】201410149551.4
(32)【優先日】2014年4月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516298205
【氏名又は名称】江▲蘇▼法▲爾▼▲勝▼技▲術▼▲開▼▲発▼中心有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516298216
【氏名又は名称】江▲蘇▼法▲爾▼▲勝▼特▲鋼▼制品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼礼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼春雷
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲紅▼芳
(72)【発明者】
【氏名】邵永清
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲亜▼▲維▼
(72)【発明者】
【氏名】徐▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼毅
【審査官】
春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−093706(JP,A)
【文献】
特表2003−532808(JP,A)
【文献】
特開2006−283269(JP,A)
【文献】
特開平05−125676(JP,A)
【文献】
特開昭51−058555(JP,A)
【文献】
特開2008−303493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B1/00−9/00
C23C2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とを含むコンベアベルト用ワイヤロープであって、前記外部鋼より線が1本のコア部鋼線とN本の外部鋼線とを含み、前記中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とが一回の撚りにより線接触ワイヤロープとされ、前記鋼線層が前記中心鋼線の外側に巻かれ、前記外部鋼より線が前記鋼線層の外側を取り囲み、前記外部鋼より線と前記鋼線層とが線接触し、前記中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層が、M本の鋼線とM’本の外部に巻かれる鋼より線とからなることを特徴とするコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項2】
前記中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層がM本の鋼線とM’本の外部に巻かれる鋼より線とからなる場合、M’:M=0.25:1〜1:1であり、外部に巻かれる鋼より線それぞれの鋼線本数が2〜12本であることを特徴とする請求項1に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項3】
外部鋼より線それぞれの外部鋼線の本数Nが5〜12本であることを特徴とする請求項1に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項4】
すべての鋼線の炭素含有量が0.7%以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項5】
すべての鋼線の炭素含有量が0.70〜1.00%であることを特徴とする請求項4に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項6】
前記中心鋼線の直径がd0であり、前記中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層の鋼線の直径がd1であり、前記外部鋼より線の直径がd外部ストランドであり、d0/d1の値が1.05以上であり、d外部ストランド/d1の値が1.8以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項7】
前記中心鋼線の直径がd0であり、前記中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層における鋼線がd1であり、前記外部鋼より線の直径がd外部ストランドであり、d0:d1=1.05:1〜1.2:1であり、d外部ストランド:d1=1.8:1〜5.0:1であることを特徴とする請求項6に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項8】
前記中心鋼線の直径がd0であり、前記中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層における鋼線と外部に巻かれる鋼より線の直径が同じくd1であり、前記外部鋼より線の直径がd外部ストランドであり、d0:d1=1.05:1〜1.2:1であり、d外部ストランド:d1=1.8:1〜5.0:1であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項9】
前記外部鋼より線におけるコア部鋼線の直径と外部鋼線の直径はそれぞれd外部ストランド1、d外部ストランド2であり、d外部ストランド1/d外部ストランド2の値が1.03以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項10】
前記外部鋼より線におけるコア部鋼線と外部鋼線の直径はそれぞれd外部ストランド1、d外部ストランド2であり、d外部ストランド1:d外部ストランド2=1.03:1〜1.5:1であることを特徴とする請求項9に記載のコンベアベルト用ワイヤロープ。
【請求項11】
線材の成分及び含有量が0.70〜1.00%の炭素、0.30〜0.90%のマンガン、0.15〜0.50%のシリコン、多くとも0.03%の硫黄、及び多くとも0.03%のリンであり、成分の百分率が重量百分率である、原料選択ステップと、
線材をまとめて酸洗し、洗浄して乾燥させ、軽くリン化し、線材表面の不純物及び酸化物を除去する、線材の酸洗及びリン化ステップと、
ストレート伸線機にて線材を一次延伸する大径延伸ステップと、
1回目の延伸による加工硬化を消滅させ、次回の延伸のために熱処理する中間熱処理ステップと、
熱処理後の半製品である鋼線に溶融亜鉛めっきを行うことにより、半製品である鋼線が一層の均一な光沢を有し、且つ一定の厚さの亜鉛層を有するようにする、溶融亜鉛めっきステップと、
半製品である鋼線をロープ製造用鋼線に最終的に延伸する、水タンク型伸線機による延伸ステップと、
管状撚線機にて、ロープ製造用鋼線をワイヤロープの外部鋼より線として用いられる鋼より線に撚る、半製品とする撚りステップと、
ペイオフリールが、半製品とする撚りの際の撚線機の2倍のサイズである撚線機にて、中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とを一回成形し、線接触ワイヤロープを形成し、外部鋼より線の撚り方向が完成品と同じか又は逆であり、最終的に形成された完成品の撚りピッチと中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層の撚りピッチとが一致し、外部鋼より線の撚りピッチが変化しない、完成品とする撚りステップと、
を含み、前記中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層が、M本の鋼線とM’本の外部に巻かれる鋼より線とからなることを特徴とするコンベアベルト用ワイヤロープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤロープに関し、特にコンベアベルト用ワイヤロープに関する。
【背景技術】
【0002】
国内の多数の鉱山、埠頭の建設に伴って、高効率・省エネルギー・無公害のコンベアベルト搬送で元の短距離自動車搬送を代替する。このような搬送方式の肝心な部材と主要な設備消耗品はコンベアベルトであり、ワイヤロープコアコンベアベルトはワイヤロープで補強され、その積載能力が大幅に向上し、これにより、高速度・大搬送量・長距離のコンベアベルトに利用することができ、国内および海外ではいずれもワイヤロープコアコンベアベルトが広く普及している。
【0003】
ワイヤロープコアコンベアベルトの広範囲な応用に伴って、ユーザのコンベアベルトの積載能力に対しての要求が高くなりつつあり、ひいてはワイヤロープのサイズを変更せず、かつ使用や生産のコスト及びメンテナンスコストを増加せずに、ワイヤロープ全体の破断荷重を向上させることにより、コンベアベルトの積載能力を更に向上させることが求められる。従来のコンベアベルト用ワイヤロープはコア部鋼より線及び外部鋼より線を含み、前記外部鋼より線は前記コア部鋼より線の外側にスパイラル状に捻られ、各本のコア部鋼より線及び外部鋼より線はそれぞれM本のコア部鋼線とN本の外部鋼線を含み、従来のコンベアベルト用ワイヤロープは、まずコア部鋼より線のM本のコア部鋼線及びN本の外部鋼線をコア部鋼より線とし、更に外部鋼より線のM本のコア部鋼線及びN本の外部鋼線で外部鋼より線とし、最後に複数の外部鋼より線を1本のコア部鋼より線の外側にスパイラル状に捻ることにより、完成品であるコンベアベルト用ワイヤロープが形成され、該コンベアベルト用ワイヤロープにおいて、コア部鋼より線と外部鋼より線とが点接触し、コンベアベルト用ワイヤロープの構造は一般的に6×7+IWS、6×19+IWS及び6×19W+IWS等であり、その生産構造はすべてm*nの複数本の鋼より線の組み合せであり、「m*n」構造とは、合計でm本の鋼より線があり、各本の鋼より線がn個の鋼線からなることであり、コンベアベルト用ワイヤロープのサイズ範囲はφ1〜φ10mmである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に存在する欠点に鑑み、本発明は、ワイヤロープのサイズを変更せず、かつ使用や生産のコスト及びメンテナンスコストを増加せずに、ワイヤロープ全体の破断荷重を向上させることができ、これによりコンベアベルトの積載能力を向上させることができるコンベアベルト用ワイヤロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用する。本発明のコンベアベルト用ワイヤロープは、1本の中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とを含み、外部鋼より線が1本のコア部鋼線とN本の外部鋼線とを含み、中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とが一回の撚りにより線接触ワイヤロープとされ、鋼線層が中心鋼線の外側に巻かれ、外部鋼より線が鋼線層の外側を取り囲み、外部鋼より線と鋼線層とが線接触し、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層が、M本の鋼線からなり、またはM本の鋼線とM’本の外部に巻かれる鋼より線とからなり、各本の外部に巻かれる鋼より線の鋼線本数が2〜12本であり、鋼線層がM本の鋼線とM’本の外部に巻かれる鋼より線とからなる場合、M’:M=0.25:1〜1:1である。すべての鋼線の炭素含有量が0.7%以上であり、各本の外部鋼より線の鋼線本数が5〜12本である。
【0006】
上記コンベアベルト用ワイヤロープにおいて、中心鋼線の直径がd
0であり、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層の鋼線の直径がd
1であり、外部鋼より線の直径がd
外部ストランドである。d
0/d
1の値が1.05以上であり、d
外部ストランド/d
1の値が1.8以上である。外部鋼より線におけるコア部鋼線と外部鋼線の直径がそれぞれd
ストランド1、d
ストランド2であり、d
ストランド1/d
ストランド2の値が1.03以上である。
【0007】
上記コンベアベルト用ワイヤロープにおいて、さらに、中心鋼線の直径がd
0であり、鋼線層における鋼線と外部に巻かれる鋼より線の直径が同じくd
1であり、外部鋼より線の直径がd
外部ストランドであり、外部鋼より線におけるコア部鋼線と外部鋼線の直径がそれぞれd
外部ストランド1、d
外部ストランド2であり、d
0:d
1=1.05:1〜1.2:1であり、d
外部ストランド:d
1=1.8:1〜5.0:1であり、d
外部ストランド1:d
外部ストランド2=1.03:1〜1.5:1であることを特徴とする。
【0008】
本発明において、ワイヤロープの直径を変更せず、外部鋼より線の直径及び本数も変更せずに、中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とを一回の撚りにより、外部鋼より線と鋼線層とが線接触するコンベアベルト用ワイヤロープとし、これにより、ワイヤロープ全体にとって、外部鋼より線のほか、コア部鋼線の充填面積を8〜10%向上させることができ、鋼線の強度レベルが同じである場合に、全体の破断荷重を10〜15%向上させることができる。
【0009】
中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とを一回の撚りによりコンベアベルト用ワイヤロープとし、一回の撚りを省いたので、鋼線の強度損失を低減させ、同様に、全体の破断荷重も向上させ、撚り損失の低減から見ると、全体の破断荷重を1〜3%向上させることができる。同時に、全体の伸び率を若干低下させ、3回の工程によって成形された従来のワイヤロープに比べて、伸び率を0.2〜0.5%低下させることができる。
【0010】
従来の技術に比べて、本発明の利点は、ワイヤロープのサイズと強度レベルを変更せずに、コンベアベルト用ワイヤロープの破断荷重を向上させ、ワイヤロープのサイズが同等である場合に、ワイヤロープの伸び率を低下させ、ワイヤロープにおける一部の鋼線、主にコア部鋼線の撚り過程での強度損失を低減させることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は従来のコンベアベルト用ワイヤロープの6*7+1*7構造の模式図である。
【
図2】
図2は本発明における鋼線層がすべて鋼線である6*7+6+1構造の模式図である。
【
図3】
図3は本発明における鋼線層が3本の鋼線と3本の外部に巻かれる鋼より線とからなる6*7+6+1構造の模式図である。
【
図4】
図4は従来のコンベアベルト用ワイヤロープの横断面及びロープ内の点接触の模式図である。
【
図5】
図5は従来のコンベアベルト用ワイヤロープの横断面及びロープ内の点接触の部分拡大図である。
【
図6】
図6は本発明の横断面及びワイヤロープ内の線接触の模式図である。
【
図7】
図7は本発明の横断面及びワイヤロープ内の線接触の部分拡大図である。
【
図8】
図8は本発明の横断面及びワイヤロープ内の線接触の模式図(逆撚り)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面及び具体的な実施例を参照して本発明を更に詳しく説明する。
【0013】
図1、
図4、及び
図5に示すように、従来のコンベアベルト用ワイヤロープは、コア部鋼より線1及び外部鋼より線2を含み、前記外部鋼より線2が前記コア部鋼より線1の外側にスパイラル状に捻られ、6*7+1*7構造であり、コア部鋼より線1と外部鋼より線2とが点接触する。
【0014】
実施例1:本発明の新規のコンベアベルト用ワイヤロープの構造は1+m+m*nであり、mが5〜8本の単一鋼線又は5〜8本の鋼線と外部に巻かれる鋼より線との組み合せであり、M本の鋼線とM’本の外部に巻かれる鋼より線との組み合せを採用する場合、M:M’=4:1〜1:1であり、nが5〜12本の鋼線で構成された外部鋼より線である。新規のコンベアベルト用ワイヤロープのサイズ範囲は、φ1〜φ10mmである。
図2、
図6、及び
図7に示すように、本実施例のコンベアベルト用ワイヤロープは、1本の中心鋼線3と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層4と、6本の外部鋼より線5とを含み、外部鋼より線5は1本のコア部鋼線5.1及び6本の外部鋼線5.2を含み、中心鋼線3と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層4と、6本の外部鋼より線5とが一回の撚りによりコンベアベルト用ワイヤロープとされ、鋼線層4が中心鋼線3の外側に巻かれ、外部鋼より線5が鋼線層4の外側を取り囲み、外部鋼より線5と鋼線層4とが線接触し、中心鋼線3の外側に巻かれる鋼線層4が6本の鋼線4.1であり、中心鋼線3の直径d
0が0.56mmであり、鋼線層4における鋼線4.1の直径d
1が0.51mmであり、外部鋼より線5の直径d
外部ストランドが1.22mmであり、外部鋼より線5におけるコア部鋼線5.1と外部鋼線5.2の直径はそれぞれd
外部ストランド1=0.44mm、d
外部ストランド2=0.39mmである。
【0015】
実施例2:
図3、
図6、及び
図7に示すように、本実施例のコンベアベルト用ワイヤロープは、1本の中心鋼線3と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層4と、6本の外部鋼より線5とを含み、外部鋼より線5は1本のコア部鋼線5.1及び6本の外部鋼線5.2を含み、中心鋼線3と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層4と、6本の外部鋼より線5とが一回の撚りによりコンベアベルト用ワイヤロープとされ、鋼線層4が中心鋼線3の外側に巻かれ、外部鋼より線5が鋼線層4の外側を取り囲み、外部鋼より線5と鋼線層4とが線接触し、中心鋼線3の外側に巻かれる鋼線層4は3本の鋼線4.1と3本の外部に巻かれる鋼より線4.2とからなり、各本の外部に巻かれる鋼より線4.2の鋼線本数が3本であり、中心鋼線3の直径d
0が0.56mmであり、鋼線層4における鋼線4.1と鋼より線4.2の直径d
1が同じで、その直径d
1が0.51mmであり、外部鋼より線の直径d
外部ストランドが1.22mmであり、外部鋼より線におけるコア部鋼線と外部鋼線の直径はそれぞれd
外部ストランド1=0.44mm、d
外部ストランド2=0.39mmである。
【0016】
ワイヤロープの直径を変更せず、外部鋼より線の直径及び本数も変更せずに、プロセス設計及び生産設備によりワイヤストランドが一回の成形で線接触構造を実現した。
【0017】
ワイヤロープ全体にとって、外部鋼より線のほか、コア部鋼線の充填面積を8〜10%向上させることができ、鋼線の強度レベルが同じである場合に、全体の破断荷重を10〜15%向上させることができる。
【0018】
コア部鋼線と外部鋼より線とが一回成形されたので、コア部鋼線にとって、一回の撚りを省き、鋼線の強度損失を低減させ、同様に、全体の破断荷重も向上させ、撚り損失の低減から見ると、全体の破断荷重を1〜3%向上させることができる。
【0019】
コア部鋼線は1回だけ変形したので、全体の伸び率を若干低下させ、3回の成形を経た従来のワイヤロープに比べて、伸び率を0.2〜0.5%低下させることができる。
【0020】
実施例3:φ3.5mmのワイヤロープを実例とし、従来のコンベアベルト用ワイヤロープの構造で生産する一方、本発明のコンベアベルト用ワイヤロープの構造で生産し、構造の異なるワイヤロープの破断荷重を比較する。
【0021】
原料選択において、線材の成分及び含有量が0.70〜1.00%の炭素、0.30〜0.90%のマンガン、0.15〜0.50%のシリコン、多くとも0.03%の硫黄、及び多くとも0.03%のリンであり、成分の百分率が重量百分率である。
【0022】
線材の酸洗及びリン化において、線材をまとめて(一緒に)酸洗し、洗浄して乾燥させ、軽くリン化し、線材表面の不純物及び酸化物を除去する。
【0023】
大径延伸において、ストレート伸線機にて線材を一次延伸し、直径を約2.0〜3.0mmにする。
【0024】
中間熱処理において、1回目の延伸による加工硬化を消滅させ、次回の延伸のために熱処理する。
【0025】
溶融亜鉛めっきにおいて、熱処理後の半製品である鋼線に溶融亜鉛めっきを行うことにより、半製品である鋼線が一層の均一な光沢を有し、且つ一定の厚さの亜鉛層を有するようにする。
【0026】
水タンク型伸線機による延伸において、半製品である鋼線をロープ製造用鋼線に最終的に延伸し、鋼線の最終的な直径は0.10mm〜0.80mmである。
【0027】
半製品とする撚りにおいて、管状撚線機にて、ロープ製造用鋼線をワイヤロープの外部鋼より線として用いられる鋼より線に撚る。
【0028】
完成品とする撚りにおいて、ペイオフリールが、半製品とする撚りの際に使用される撚線機の2倍のサイズである撚線機にて、中心鋼線と、中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層と、複数本の外部鋼より線とを一回成形し、線接触ワイヤロープを形成し、外部鋼より線の撚り方向が完成品と同様又は逆(
図8に例示されたワイヤロープにおいて外部鋼より線の撚り方向が完成品と逆である)であり、最終的に形成された完成品の撚りピッチと中心鋼線の外側に巻かれる鋼線層の撚りピッチが一致し、外部鋼より線の撚りピッチが変化しない。
【0029】
本発明から見ると、構造の異なるワイヤロープの、製品性能及び線径の構成割合の変化は以下の表に示される。
【表1】
【0030】
上記は単に本発明の好ましい実施例だけであり、本発明の実施範囲を限定するためのものではなく、当業者が本発明の原則及び技術的特徴を利用して行った各種の変更及び修飾は、いずれも本願の特許請求の範囲で限定された保護範囲に含まれるべきである。