特許第6307206号(P6307206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6307206多元系複合酸化物材料の製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307206
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】多元系複合酸化物材料の製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/04 20060101AFI20180326BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20180326BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20180326BHJP
【FI】
   C01G53/04
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-512088(P2017-512088)
(86)(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公表番号】特表2017-520506(P2017-520506A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】CN2015078573
(87)【国際公開番号】WO2015172682
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2017年4月3日
(31)【優先権主張番号】201410208349.4
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517065404
【氏名又は名称】厦門厦▲う▼新能源材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 金洪
(72)【発明者】
【氏名】魏 国禎
(72)【発明者】
【氏名】キアン ウェイリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン チャオ
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−053083(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/050114(WO,A1)
【文献】 特開2006−202647(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/099156(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/099158(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0062339(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102509784(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101215011(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00,49/10−99/00
H01M4/00−4/62
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多元系複合酸化物材料の製造方法であって、
前記酸化物は、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−ジルコニウムの多元系酸化物であり、構造式はLi[LiNi(a+b)CoMnZr]Oであり、その中で、元素の係数は0.03≦k≦0.15、0.22≦a≦0.33、0<b≦0.16、0.30≦c≦0.40、0.001<d≦0.050を満たす必要があり、前記構造式は、等式k+6a+3b+3c+4d=3及び不等式a+b≦cを満たす必要があり、
前記製造方法は、
(1)可溶性コバルト塩及び可溶性ニッケル塩を0.1〜5.0mol/Lの溶液A1に調製し、可溶性マンガン塩及び可溶性ジルコニウム塩を0.1〜5mol/Lの溶液A2調製し、前記溶液A1と前記溶液A2とを一次混合して化学量論比の溶液Aを得て、前記溶液Aを強く撹拌し、回転速度は100〜800r/分であるステップと、
(2)0.2〜12.0mol/Lの沈殿剤と、0.5〜10.0mol/Lの錯化剤とを、強い撹拌が行われている前記溶液Aに加えて、pHを10.5〜12.0に調節して、徐々に中間体Bを沈殿させるステップと、
(3)洗浄することにより前記中間体Bの上に残されたアニオンを除去するステップと
(4)前記中間体Bと、リチウム塩とを混合し、リチウムのモル比の過剰率を5〜20%に制御し、灰色の均一な前駆体Cを得るステップと、
(5)前記前駆体C粉末を高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末Dを得るステップと、
(6)前記一次粉末Dを調製タンクに移し、有機相を注入し、系を回転速度100〜500r/分で撹拌し、ポンプによってスラリーを中間タンクに送り、次いで加熱撹拌し、50〜90℃まで加熱し、0.5〜8時間強力な撹拌を行い、レオロジー相Eを得るステップと、
(7)前記レオロジー相Eを容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は150〜450℃であり、熱処理の時間は2〜6時間であり、二次粉末Fを得るステップと、
(8)前記二次粉末Fに適量の表面処理剤を加え、前記表面処理剤の質量百分率は0.03〜2.00%であり、均一になるまで混合して高温焼結を行い、焼結温度は750〜1000℃であり、焼結時間は4〜20時間であり、最終的に多元系複合酸化物材料を得るステップと、を含むことを特徴とする多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項2】
前記可溶性コバルト塩は、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト又は硝酸コバルトであり、可溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルまたは硝酸ニッケルであり、可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガンまたは硝酸マンガンであり、可溶性ジルコニウム塩は、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムまたは硝酸ジルコニウムであることを特徴とする請求項1に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項3】
ステップ2)において、前記沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウムまたは水酸化リチウムの一種または一種以上であり、前記錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、アンモニア、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン、酢酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項4】
ステップ3)において、前記アニオンは、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオンまたは水酸化物イオンの一種または一種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項5】
ステップ4)において、前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウムの一種または一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項6】
ステップ6)において、前記有機相は、エタノール、プロパノール、エチレングリコールまたはヘキサンジオールであることを特徴とする請求項1に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項7】
ステップ8)において、前記表面処理剤は、酸化ランタン、フッ化リチウム、酢酸リチウム、フッ化水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、タングステン酸アンモニウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、水酸化コバルト、クエン酸、シュウ酸、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムの一種または一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項8】
多元系複合酸化物材料の製造方法であって、
前記酸化物は、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−ジルコニウムの多元系酸化物であり、構造式はLi[LiNi(a+b)CoMnZr]Oであり、その中で、元素の係数は0.03≦k≦0.15、0.22≦a≦0.33、0<b≦0.16、0.30≦c≦0.40、0.001<d≦0.050を満たす必要があり、前記構造式は、等式k+6a+3b+3c+4d=3及び不等式a+b≦cを満たす必要があり、
前記製造方法は、
(1)可溶性コバルト塩及び可溶性ニッケル塩を溶液A1に調製し、可溶性マンガン塩及び可溶性ジルコニウム塩を溶液A2調製し、前記溶液A1と前記溶液A2とを一次混合して化学量論比の溶液Aを得て、前記溶液Aを均一に混合させるステップと、
(2)沈殿剤と、錯化剤とを、強い撹拌が行われている前記溶液Aに加えて、pHを10.5〜12.0に調節して、徐々に中間体Bを沈殿させるステップと、
(3)洗浄することにより前記中間体Bの上に残されたアニオンを除去するステップと
(4)前記中間体Bと、リチウム塩とを混合し、リチウムのモル比の過剰率を5〜20%に制御し、前駆体Cを得るステップと、
(5)前記前駆体C高温下で分解及び酸化を行わせ、一次粉末Dを得るステップと、
(6)前記一次粉末Dに有機相を注入し、前記一次粉末Dと前記有機相の混合物を撹拌し、溶液相からゾル相に相転移させ、次いで50〜90℃まで加熱しながら撹拌して、レオロジー相Eを得るステップと、
(7)前記レオロジー相E熱処理を行い、二次粉末Fを得るステップと、
(8)前記二次粉末Fに適量の表面処理剤を加え、均一になるまで混合して高温焼結を行い、最終的に多元系複合酸化物材料を得るステップと、を含むことを特徴とする多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項9】
前記レオロジー相E熱処理を行う温度150〜450℃であり、処理時間2〜6時間であることを特徴とする請求項に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項10】
前記表面処理剤の質量百分率は0.03〜2.00%であることを特徴とする請求項に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【請求項11】
前記表面処理剤は、酸化ランタン、酢酸リチウム、フッ化水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、モリブデン酸アンモニウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化コバルト、水酸化コバルト、クエン酸、シュウ酸、塩基性炭酸マグネシウムの一種または一種以上であることを特徴とする請求項に記載の多元系複合酸化物材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の正極材料に関し、特に、多元系複合酸化物材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、高い比エネルギー、高出力パワー、長寿命、優れた携帯性などの際立った利点を有するので、携帯型コンピューター、携帯電話、デジタル製品、電動工具などの分野に幅広く適用されている。
【0003】
現在の新エネルギー自動車産業の発展に伴い、且つ、国内外における車両に対する環境保全及び低排出ガスの要求に応じて、リチウムイオン電池をエネルギー供給の主体とする電気自動車、ハイブリッドカーが徐々に新エネルギー自動車の主流となっている。リン酸鉄リチウムは原材料費が低く、安全性が高く且つ寿命が長いなどのメリットを有するので、第一に研究者が注目する材料である。しかし、車両分野において、電気自動車の航続距離、高、低温度の環境下でのパワー性能、製品の一致性などに対する要求が高くなるにつれて、層状多元複合材料が、徐々に車両分野において、動力用バッテリーの主流な正極材料となっている。パワー型リチウムイオン電池分野において、正極材料は十分なエネルギー密度を保証するとともに、レート特性に注目して電池の高い電力出力を確保する必要があり、原材料のサイクル寿命に注目して電池の長時間使用を繰り返すことができるよう確保する必要がある。よって、レート特性且つ長サイクル寿命の正極材料、特に、多元系複合酸化物材料を開発することは極めて重要な課題である。
【0004】
現在、製品化されたリチウムイオン電池の正極材料の中で、コバルト酸リチウムとリチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物三元系材料は、生産量や販売量が最も多い2種類の材料である。一方、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−ジルコニウム多元酸化物は、コバルト酸リチウム、三元系材料に類似したa−NaFe0の層状構造を持ち、リチウムイオンは、岩塩構造の3aサイトを占有しており、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン及びジルコニウムイオンは、3bサイトを占有しており、酸素イオンは、6cサイトを占有している。これらの種類の酸化物の中で、遷移金属元素Ni、Co、Mn、Zrは、原子価がそれぞれ+2/+3、+3、+4、+4である状態で存在しており、その中で、ニッケルイオンは、Ni2+と、Ni3+の二種の状態で同時に存在している。電気化学反応に関与する酸化還元対は、それぞれNi2+/Ni3+、Ni3+/Ni4+及びCo3+/Co4+であるが、MnとZrは、電気化学反応に関与せず、結晶構造の骨格を支え且つ構造の安定をもたらす役割を担う。ジルコニウムをコーティング層の材料ではなく結晶構造の骨格とすることによって、ジルコニウム元素の優れた剛性、構造安定性の特徴をよりよく生かすことできる。しかし、この種類の四元系複合材料に応じて、工業生産のプロセスを設計する必要がある。
【0005】
米国特許US6964828B2には、分子式がLi[M(1−x)Mn]Oである酸化物が開示されている。その中で、0<x<1、且つMは、一種または多種の金属元素であってもよい。該発明の金属元素に対する制限範囲は非常に広く、大レート特性且つ長サイクル寿命の要求を満たす金属元素についての具体的な説明はない。該特許の出願当時(2001年)、多元系材料に対する認識は大レート特性を重視しておらず、レート特性は電気自動車分野でのエネルギー供給の重要な要求の1つであると認識されていた。その上、該発明の化学式中の全てのNiの空気中における原子価は+2であり、実際に、材料を制限して材料のパワー性能を向上させることに不利である。
【0006】
中国特許CN100526222Cには、コバルト、マンガン及びニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物の単相化合物の製造方法が開示されている。該方法は、主に湿式粉砕を行った後加熱を行う技術が強調されており、湿式粉砕は、乾式粉砕より粉砕時間が短く、粉砕時間を短縮する効果があるが、性能に対する要求がより高い大レート特性且つ長サイクル寿命の多元酸化物材料の開発には適していない。
【0007】
以上の問題に鑑み、層状多元複合構造の酸化物材料の研究を展開し、大レート特性及び長サイクル寿命のために適切な元素の割合をより精確に設計して、工業生産において大レート特性且つ長サイクル寿命の多元酸化物を合成することは、確かに高品質リチウムイオン電池の正極材料の生産の実現、リチウムイン電池の性能の向上、リチウム電池の応用分野の拡大、新エネルギー自動車の発展の促進及び環境と空気の改善に対して重要で実用的な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、大レート特性且つ長寿命の多元系複合酸化物材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を果たすために、本発明は、多元系複合酸化物材料を提供し、前記酸化物は、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−ジルコニウムの多元系酸化物であり、構造式はLi[LiNi(a+b)CoMnZr]Oであり、その中で、元素の係数は0.03≦k≦0.15、0.22≦a≦0.33、0<b≦0.16、0.30≦c≦0.40、0.001≦d≦0.050を満たす必要がある。好ましくは、前記構造式は、等式k+6a+3b+3c+4d=3及び不等式a+b≦cを満たす必要があることを特徴とする。
【0010】
本発明は、多元系複合酸化物材料の製造方法を提供し、該製造方法は、
(1)可溶性コバルト塩及び可溶性ニッケル塩を0.1〜5.0mol/Lの溶液A1に調製し、可溶性マンガン塩及び可溶性ジルコニウム塩を0.1〜5mol/Lの溶液A2に調製し、溶液A1と溶液A2とを一次混合して化学量論比の溶液のAを得て、溶液Aを強く撹拌し、好ましくは、回転速度が100〜800r/分であるステップと;
(2)0.2〜12.0mol/Lの沈殿剤と、0.5〜10.0mol/Lの錯化剤とを、撹拌中の溶液Aに加えて、pHを10.5〜12.0に調節して、徐々に中間体Bを沈殿させるステップと;
(3)洗浄することにより中間体Bの上に残されたアニオンを除去するステップと;
(4)中間体Bと、リチウム塩とを混合し、リチウムのモル比の過剰率を5−20%に制御し、灰色の均一な前駆体Cを得るステップと、
(5)前駆体C粉末を高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末Dを得るステップと、
(6)一次粉末Dを調製タンクに移し、有機相を注入し、系を回転速度100〜500r/分で撹拌し、ポンプによってスラリーを中間タンクに送って、次いで加熱撹拌し、好ましくは、50〜90℃まで加熱し、0.5〜8時間強力な撹拌を行い、レオロジー相Eを得るステップと、
(7)レオロジー相Eを容器に置いて熱処理を行い、好ましくは、熱処理の温度は150〜450℃であり、熱処理時間は2〜6時間であり、二次粉末Fを得るステップと、
(8)二次粉末Fに適量の表面処理剤を加え、表面処理剤の質量百分率は0.03〜2.00%であり、均一になるまで混合して高温焼結を行い、好ましくは、焼結温度は750〜1000℃であり、焼結時間は4〜20時間であり、最終的に多元系複合酸化物材料を得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記可溶性コバルト塩は、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト又は硝酸コバルトであり、可溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルまたは硝酸ニッケルであり、可溶性マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガンまたは硝酸マンガンであり、可溶性ジルコニウム塩は、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムまたは硝酸ジルコニウムである。
【0012】
好ましくは、ステップ2)において、前記沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウムまたは水酸化リチウムの一種または一種以上であり、錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、アンモニア、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン、酢酸アンモニウムである。
【0013】
好ましくは、ステップ3)において、前記アニオンは、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオンまたは水酸化物イオンの一種または一種以上を含む。
【0014】
好ましくは、ステップ4)において、前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウムの一種または一種以上である。
【0015】
好ましくは、ステップ6)において、前記有機相は、エタノール、プロパノール、エチレングリコールまたはヘキサンジオールである。
【0016】
好ましくは、ステップ8)において、前記表面処理剤は、酸化ランタン、フッ化リチウム、酢酸リチウム、フッ化水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、タングステン酸アンモニウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、水酸化コバルト、クエン酸、シュウ酸、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムの一種または一種以上である。
【0017】
本発明は、多元系複合酸化物材料のリチウムイオン電池の正極活物質材料への使用に関する。
【0018】
本発明の製造方法は、工業生産において、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−ジルコニウムの多元系酸化物を合成することを可能にする。重要な点は、材料のレート特性、サイクル寿命及び安定性を同時に向上して、材料を電気自動車、電気自転車及び電動工具などのパワー型リチウムイオン電池分野に適用する。該技術問題を解決するために、本発明の技術考案は、前記多元系複合酸化物材料は、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン−ジルコニウムの多元系酸化物であり、その構造式は、
Li[LiNi(a+b)CoMnZr]O(I)
である。
【0019】
構造式(1)で、長サイクル寿命を確保すると共に、材料の大レート特性をもたらすために、以下のような元素の係数を満たす必要がある:0.03≦k≦0.15、0.22≦a≦0.33、0<b≦0.16、0.30≦c≦0.40、0.001≦d≦0.050。
【0020】
これ以外に、材料の電荷平衡を確保するために、等式:
k+6a+3b+3c+4d=3 (II)
を満たす必要がある。
【0021】
電池の長サイクル寿命をもたらすために、不等式:
a+b≦c (III)
を満たす必要がある。
【0022】
前記等式(II)と前記不等式(III)と、を同時に満たさなければならない。
【0023】
前記多元系複合酸化物材料の製造方法は、以下のステップを含む:
1)可溶性コバルト塩と、可溶性ニッケル塩とを溶液A1に調製し、可溶性マンガン塩と、可溶性ジルコニウム塩とを、溶液A2に調製し、溶液A1と溶液A2とを一次混合して化学量論比の溶液のAを得て、さらに溶液Aを強く撹拌し、
ステップ1)において、前記可溶性コバルト塩は、硫酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト又は硝酸コバルトなどの一種であり、前記可溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケルまたは硝酸ニッケルなどの一種であり、前記可溶性マンガン塩は硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガンまたは硝酸マンガンなどの一種であり、前記可溶性ジルコニウム塩は、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムまたは硝酸ジルコニウムなどの一種であり、前記回転速度は100〜800r/分である。
【0024】
2)沈殿剤と、錯化剤とを、撹拌が行われている溶液Aに加え、pHを10.5〜12.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ;
ステップ2)において、前記沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウムまたは水酸化リチウムなどから選ばれた少なくとも一種であり、前記錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、アンモニア、クエン酸アンモニウム、エチレンジアミン、酢酸アンモニウムなどから選ばれた一種である。
【0025】
3)洗浄することにより中間体Bの上に残されたアニオンを除去し;
ステップ3において、前記アニオンは、硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、水酸化物イオンなどの少なくとも一種を含む。
【0026】
(4)中間体Bと、リチウム塩とを混合し、灰色の均一な前駆体Cを得て、
ステップ4)において、前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウムなどから選ばれた少なくとも一種である。
【0027】
5)前駆体Cを分解させ且つ酸化させ、一次粉末Dを得て、
ステップ5)において、前駆体Cを高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行ってもよい。
【0028】
6)一次粉末Dを調製タンクに移し、有機相を注入し、系を撹拌し、ポンプによってスラリーを中間タンクに送って50〜90℃まで加熱し、さらに撹拌した後で、レオロジー相Eを得て、
ステップ6)において、前記有機相は、エタノール、プロパノール、エチレングリコールまたはヘキサンジオールなどから選ばれた一種であり、前記撹拌速度は、100〜500r/分であり、前記撹拌時間は0.5〜8時間である。
【0029】
7)レオロジー相Eを容器に置いて熱処理を行い、二次粉末Fを得て、
ステップ7)において、前記熱処理の温度は150〜450℃であってもよいし、熱処理の時間は2〜6時間であってもよい。
8)二次粉末Fに適量の表面処理剤を加えて混合して焼結を行うと、多元系複合酸化物材料が得られる。
【0030】
ステップ8において、前記表面処理剤は、酸化ランタン、フッ化リチウム、酢酸リチウム、フッ化水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、水酸化コバルト、クエン酸、シュウ酸、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムから選ばれた少なくとも一種であり、前記表面処理剤の添加量の質量百分率は0.03〜2%であってもよいし、前記焼結温度は750〜1000℃であってもよいし、焼結時間は4〜20時間であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、まず、可溶性コバルト塩、ニッケル塩、マンガン塩及びジルコニウム塩を混合して、強く撹拌しながら沈殿剤及び錯化剤を加え、pHを10.5〜12.0に調節し、得られた中間体を洗浄し、リチウム塩と混合して前駆体Cを得て、更に分解及び酸化を行う。これにより得られた一次粉末を調製タンクに移した後で、更に熱処理を行って、二次粉末Fを得て、熱処理の温度は150〜450℃であり、更に表面処理剤を加えた後高温焼結を行い、焼結温度は750〜1000℃であり、最終的に大レート特性且つ長サイクル寿命の多元系複合酸化物材料を得る。本発明の方法により、製造された多元系複合酸化物は、リチウム電池の正極活物質とすることができる。分析を行うと、該多元系複合酸化物は、大レート特性且つ長サイクル寿命のメリットを同時に持つ。本発明の方法は、工業生産において、大量に低コストで、且つ快適にこの種類の酸化物正極材料を合成でき、確かに高品質リチウムイオン電池の正極材料の生産の実現、リチウムイン電池の性能の向上、リチウム電池の応用分野の拡大、新エネルギー自動車の発展の促進及び環境空気の改善に対して重要な実用的な意義がある。
【0032】
本発明は、以下のメリット及び技術効果を有する:
沈殿−酸化法によって一次粉末を製造する時、溶液相において化学量論比に従って分子レベルの均一な混合をもたらすことができ、次いで、酸化によって金属元素が均一に分布する酸化物にする。一次粉末が有機相に入った後、工業生産において、バルプ化することによって、材料を溶液相からゾル相に相転移させることができ、更に強い撹拌によってレオロジー相に相転移させ、しかも、その過程の中で、徐々に擬似凝集状態または擬似単結晶を形成する。レオロジー相の処理方法は、固相法と、ゾル−ゲル法の間にある一種の方法であり、伝統的な固相法と比較して、より均一に混合する作用を持ち、ゾル−ゲル法と比較して、蒸発させる必要がある溶剤が少ないので、エネルギー消費量が小さく、工業化を容易とするなどのメリットがある。熱処理を介して得られた二次粉末は、既に凝集状態または単結晶であるので、化学量論比の偏差も生産制御可能の指標内にある。製造された酸化物材料は、電池を作る過程及び電池を使用する過程において、電池系の中での電解液と副反応を発生することが避けられないため、材料のサイクル寿命性能の発揮に影響を与える。従って、後のプロセスに表面処理剤を加える必要がある。これにより、製造された酸化物晶体の表面には保護層が生じる。この保護層は、電池電解液で行っている酸化物材料の副反応を抑制できる。本発明の製造プロセスのフローは、産業化可能な方案として、反応釜、高温ローラーハースキルン、調製タンク、工業用ポンプ、熱処理器などを含む工業用設備を使用して完成する。
【0033】
本発明の前記多元酸化物材料を正極活物質として製造されたリチウムイオン電池は、優れた比率容量及びサイクル寿命性能、安定した製造性能、優れた安全性能及び高温性能などのメリットを有し、実際にパワー分野で利用する工業電池の生産において、かなりの強みである。電動自動車、電動自転車、電動工具電源、エネルギー貯蔵用電源、並びに国防、航空工業などの分野にも幅広く応用できる見込みがある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の実施例に係るプロセスのフローチャートである。
図2図2は、本発明の実施例1によって製造された多元系複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡のトポグラフィーである。観察倍率は、7000〜40000である。
図3図3は、本発明の実施例1によって製造された多元系複合酸化物材料のX線回折(XRD)図である。
図4図4は、本発明の比較例2によって製造された金属元素の調合方法が本発明の範囲外の多元系複合酸化物材料の走査型電子顕微鏡のトポグラフィーである。観察倍率は、9000〜45000である。
図5図5は、本発明の比較例3によって製造された被覆型の多元系複合酸化物材料のX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。当該実施例の一例は図面に示されている。その中で、同じまたは類似する符号は、常に同じまたは類似する素子或いは同じまたは類似する機能を有する素子を示す。以下、図面を参照しながら説明する実施形態は、例示のみであり本発明を解釈することを主旨とし、本発明を制限するものではない。実施例中、具体的な技術または条件が明記されていないものは、当該分野内の文献によって説明されている技術または条件或いは製品仕様書に従って行う。使用された試薬または装置の生産者が明記されていないものは、全て購入によって得られた従来品である。以下の実施例は、全て図1に示すプロセスのフローチャート基づいて製造されている。
【0036】
実施例1:
まず、Ni:Co=0.331:0.379の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、をlmol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.237:0.029の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、をlmol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は200r/分であり、5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、酸素5mol/Lのアンモニアとを加え、pHを11.5に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を10%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエチレングリコールを注入し、系を撹拌し、回転速度は150r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで90℃まで加熱して、0.5時間強く撹拌し、レオロジー相を得て容器に置いた後熱処理を行い、熱処理の温度は450℃であり、処理時間は6時間であり、二次粉末を得て、フッ化アルミニウムを加え、質量百分率は0.05%であり、均一になるまで混合して更に高温焼結を行い、焼結の温度は850℃であり、焼結時間は8時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.042Ni0.331Co0.379Mn0.237Zr0.029]Oを得る。
【0037】
日本の日立の走査電子顕微鏡によって材料の断面のトポグラフィーを解析すると、その結果は図2に示すように、複数の小さな結晶の一次粒子が互いに結合して球状のような二次粒子を成し、該材料の結晶粒の結晶粒界は緊密に結合しており、結晶形は完全である。米国サーモ社(Thermo Elemental U.S.A)の誘導結合高周波プラズマ発光スペクトルによって生成物中の金属イオンの含有量を測定すると、該材料の組成は、Li:Ni:Co:Mn:Zr=1.042:0.331:0.379:0.237:0.029である。ドイツのブルカー社のX線回折装置(CuKa放射線、λ=1.5406)によって生成物の構造を特徴付けると、XRD測定の結果は図3に示すように、生成物は、単結晶相のa−NaFe0構造である。
【0038】
本実施例によって製造された正極活物質の電池性能を測定するために、本実施例によって製造された製品と、導電剤と、接着剤とを92:5:3の割合で正極極片を作成し、且つ、炭素負極、セパレータ及び電解質と共同でパウチセルに組み立て、電池性能測定機器によって倍率放電特性(10C/1C放電容量比%、20℃)、低温出力特性(10C放電内部抵抗mΩ、−20℃)及びサイクル特性(1000サイクルまでの容量維持率%、20℃)を測定する。測定の結果は表1に示したように、予定の目標に達している。
【0039】
実施例2:
まず、Ni:Co=0.317:0.363の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を0.1mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.227:0.048の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を0.lmol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は200r/分であり、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、0.5mol/Lのアンモニアとを加え、pHを11.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して、炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を20%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエチレングリコールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで50℃まで加熱し、8時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は450℃であり、処理時間は6時間であり、二次粉末を得て、酸化アルミニウムを加え、質量百分率は0.05%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は900℃であり、焼結時間は12時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.088Ni0.317Co0.363Mn0.227Zr0.048]0を得る。
【0040】
実施例3:
まず、Ni:Co=0.333:0.381の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を3mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.238:0.001の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を3mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して、強く撹拌し、回転速度は100r/分であり、6mol/Lの炭酸ナトリウム溶液と、10mol/Lのアンモニアとを加え、pHを11.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を20%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエタノールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで60℃まで加熱し、6時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は150℃であり、処理時間は8時であり、二次粉末を得て、四酸化三コバルトを加え、質量百分率は0.03%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は900℃であり、焼結時間は12時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.142Ni0.333Co0.381Mn0.238Zr0.001]Oを得る。
【0041】
実施例4:
まず、Ni:Co=0.314:0.324の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を5mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.314:0.001の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を5mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は800r/分であり、7mol/Lの炭酸水素アンモニウム溶液と、6mol/Lのアンモニアとを加え、pHを12.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を20%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のプロパノールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで50℃まで加熱し、8時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は450℃であり、処理時間は2時間であり、二次粉末を得て酸化ランタンを加え、質量百分率は0.03%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は1000℃であり、焼結時間は12時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.142Ni0.314Co0.324Mn0.314Zr0.001]Oを得る。
【0042】
実施例5:
まず、Ni:Co=0.326:0.335の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を1mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.326:0.001の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を1mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は300r/分であり、8mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、2mol/Lのエチレンジアミン四酢酸とを加え、pHを10.5に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を5%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエチレングリコールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで70℃まで加熱し、8時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は350℃であり、処理時間は8時間であり、二次粉末を得て、酢酸リチウムを加え、質量百分率は0.20%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は850℃であり、焼結時間は10時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.036Ni0.326Co0.335Mn0.326Zr0.001]Oを得る。
【0043】
実施例6:
まず、Ni:Co=0.299:0.308の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を1mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.299:0.048の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を1mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は200r/分であり、5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、5mol/Lのアンモニア水とを加え、pHを11.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を20%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエチレングリコールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで55℃まで加熱し、4時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は450℃であり、処理時間は6時間であり、二次粉末を得てモリブデン酸アンモニウムを加え、質量百分率は0.05%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は800℃であり、焼結時間は8時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.088Nio.299CO0.308Mn0.299Zro.048]Oを得る。
【0044】
実施例7:
まず、Ni:Co=0.345:0.395の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を1mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.247:0.001の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を1mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は300r/分であり、12mol/Lの水酸化カリウム溶液と、5mol/Lのアンモニア水とを加え、pHを11.5に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を5%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエタノールを注入し、系を撹拌し、回転速度は800r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで80℃まで加熱し、8時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は350℃であり、処理時間は5時間であり、二次粉末を得て、二酸化マンガン及びクエン酸を加え、質量百分率は、1.00%及び2.00%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は750℃であり、焼結時間は9時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.036Ni0.345Co0.395Mn0.247Zr0.001]Oを得る。
【0045】
実施例8:
まず、Ni:Co=0.315:0.349の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を5mol/Lの溶液に調製し、Mn:Ζr=0.305:0.005の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を5mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は200r/分であり、5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、10mol/Lのアンモニア水とを加え、pHを12.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を11%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエタノールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで90℃まで加熱し、3時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は250℃であり、処理時間は7時間であり、二次粉末を得て、塩基性炭酸マグネシウムを加え、質量百分率は、0.05%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は900℃であり、焼結時間は4時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.075Ni0.315Co0.349Mn0.305Zr0.005]Oを得る。
【0046】
比較例1:
まず、Ni:Co=l1:1:1の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、硫酸マンガンを1mol/Lの溶液に調製し、5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、5mol/Lのアンモニア水とを加え、pHを11.0に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの量を過剰にならないよう制御して、均一になるよう混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は850℃であり、焼結時間は12時間であり、最終的に、多元酸化物材料Li[Ni1/3Co1/3Mn1/3]Oを得る。
【0047】
本比較例により製造された多元系複合酸化物材料の金属元素の調合方法は、本発明の設計の範囲外にある。該材料は、原子価が+2であるNi元素のみを含み、原子価が+3であるNi元素を含まない。該材料の断面のトポグラフィーの結果は、図4に示すように、本実施例1と類似する点は、複数の小さな結晶一次粒子は球形のような二次粒子に結合するが、該材料の結晶粒界は緩く、結晶の形状は不十分であり、比較的不規則である。本比較例により製造された正極活物質の電池性能を測定するために、実施例1と同じようなプロセスで、パウチセルに組み立て、電池測定機器によって倍率放電特性(10C/1C放電容量比%、20℃)、低温出力特性(10C放電内部抵抗mΩ、−20℃)及びサイクル特性(1000サイクルまでの容量維持率%、20℃)を測定する。測定の結果は、表1に示したように、予定の目標に達していない。
【0048】
比較例2:
まず、Ni:Co=0.405:0.335の割合で、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、を1mol/Lの溶液に調製し、Mn:Zr=0.247:0.001の割合で、硫酸マンガンと、硫酸ジルコニウムと、を1mol/Lの溶液に調製し、二種の溶液を一次混合して強く撹拌し、回転速度は200r/分であり、5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、5mol/Lのアンモニア水とを加え、pHを11.5に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を5%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエチレングリコールを注入し、系を撹拌し、回転速度は100r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで90℃まで加熱し、2時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は450℃であり、処理時間は6時間であり、二次粉末を得て、酸化アルミニウムを加え、質量百分率は0.50%であり、均一になるよう混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は800℃であり、焼結時間は4時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.036Ni0.405Co0.335Mn0.247Zr0.001]Oを得る。
【0049】
本比較例により製造された多元系複合酸化物材料の金属元素の調合方法は、本発明の設計の範囲外にある。本比較例により製造された正極材料の電池性能を測定するために、実施形態1と同じようなプロセスで、パウチセルに組み立て、電池測定機器によって測定を行う。測定の結果は、表1に示したように、予定の目標に達していない。
【0050】
比較例3:
まず、Ni0.331Co0.379Mn0.237@Zr0.029を設計して、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトと、硫酸マンガンとを1mol/Lの溶液に調製し、強く撹拌し、回転速度は200r/分であり、5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と、5mol/Lのアンモニア水とを加え、pHを11.5に調節し、徐々に中間体を沈殿させ、中間体を洗浄して、炭酸リチウムと混合し、リチウムの過剰率を10%(モル比)に制御し、更に高温ローラーハースキルンに移して分解及び酸化を行い、一次粉末を得て、得られた一次粉末を調製タンクに移し、適量のエチレングリコールを注入し、系を撹拌し、回転速度は150r/分であり、ポンプによってスラリーを中間タンクにポンピングし、次いで90℃まで加熱し、0.5時間強く撹拌し、レオロジー相を得て、容器に置いて熱処理を行い、熱処理の温度は450℃であり、処理時間は6時間であり、二次粉末を得て、フッ化アルミニウムを加え、質量百分率は0.50%であり、均一になるまで混合し、高温焼結を行い、焼結の温度は850℃であり、焼結時間は8時間であり、最終的に、本発明で製造された多元酸化物材料Li[Li0.042Ni0.331Co0.379Mn0.237]O@[ZrO]0.029を得る。
【0051】
本比較例により製造された多元系複合酸化物材料のニッケル、コバルト、マンガン、ジルコニウムの元素の割合は、実施例1と一致しているが、ジルコニウムは、後に追加されている。当該材料のXRDの測定結果は図5に示したように、実施形態と最も異なる点は、該材料は、結晶相が単一なa−NaFeO2構造ではなく、2T=20.276及び26.601のサイトに、Li2Zr03がある点である。ジルコニウムは、多元系複合酸化物材料の結晶格子によく組み込まれることができず、該材料は、ジルコニウムに覆われただけのニッケル−コバルト−マンガンの三元複合材料であり、ニッケル、コバルト、マンガン、ジルコニウムの四元複合材料ではないことは明らかである。

【0052】
表1は、実施例と比較例との電池性能の比較を示す。表1に示したように、本発明に記載されている製造方法により製造された材料を正極活物質として電池を製造する場合、電池測定機器で、倍率放電特性(10C/1C放電容量比%、20℃)、低温出力特性(10C放電内部抵抗mΩ、−20℃)及びサイクル特性(1000サイクル容量維持率%、20℃)を測定すると、性能は予定の目標に達した。比較例1及び比較例2により製造された多元系複合酸化物材料の金属元素の調合方法は、本発明の設計範囲外にあり、同じプロセスによってパウチセルに組み立ても、その電池性能は、予定の目標に達成しない。比較例3により製造された多元系複合酸化物材料のニッケル、コバルト、マンガン、ジルコニウムの元素割合は、実施例1と一致しているが、ジルコニウムは、後に追加されている。材料のXRDの測定結果は図5に示したように、実施形態と最も異なる点は、該材料が、結晶相が単一なa−NaFe0構造ではなく、同じプロセスによってパウチセルに組み立てられ、その電池性能は、予定の目標に達していない点である。
図1
図2
図3
図4
図5