(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性相と、酸化物担体とを含む触媒の調製方法であって、前記方法は、少なくとも関連する配列の以下の段階:
− 前記酸化物担体の含浸段階、
− 前記含浸させられた酸化物担体が気体によって同伴される迅速な乾燥段階であって、前記含浸させられた酸化物担体は、前記段階において250〜600℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は、1秒〜1分である乾燥段階、および
− 前記含浸および乾燥済みの酸化物担体の焼成段階
を含む、方法。
前記調製方法は、前記酸化物担体の安定化のための段階を含み、前記安定化段階は、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階の前に行われる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
前記含浸させられた酸化物担体は、安定化段階の前記乾燥段階において気体によって同伴され、前記含浸させられた酸化物担体は、50〜500℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は1秒〜1分である、請求項11に記載の方法。
乾燥・含浸済みの酸化物担体の焼成は、二段階において、空気中、300〜600℃の温度で30分〜3時間の期間にわたり、次いで700〜1200℃の温度で1〜24時間の期間にわたり行われる、請求項11または12に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
所定の触媒の存在下に合成ガスが炭化水素に転化させられ得ることは当業者に周知であり、その触媒は、元素周期律表の第VIII族からの金属、例えば、鉄、ルテニウム、コバルトおよびニッケルを含有し、この触媒は、合成ガスと称されるCOおよびH
2の混合物(すなわち、一酸化炭素と水素の混合物)の、周囲温度において固体、液体、または気体である炭化水素への転換を触媒する。合成ガスは、場合によっては、二酸化炭素または任意の他の希釈剤により希釈され、二酸化炭素または任意の他の希釈剤は、単独であるか若しくはメタン、窒素、またはエタン等との混合物の形態である。この方法は、フィッシャー・トロプシュ合成という名で知られている。
【0003】
従来技術において、種々の担体によって担持されたコバルトをベースとするフィッシャー・トロプシュ触媒の調製を改善するために種々の方法が記載されかつ開発されている。最も幅広く用いられる担体は、アルミナ、シリカ、および二酸化チタンであり、これらは、追加元素により改変されることがある。
【0004】
特許文献1には、例としてコバルトをベースとする触媒が記載されている。しかし、そこに記載されたコバルトをベースとするフィッシャー・トロプシュ触媒は、触媒粒子中あるいは触媒の表面上のいずれにおいても、均一なコバルトの分布を有しないという不利な点を抱えている。コバルトの不良な表面分布は、表面におけるコバルトの凝集および濃縮の形態で起こり、外殻とも称される外層を形成する。
【0005】
実際に、スラリー気泡塔(slurry bubble column)タイプの方法において、グラニュロメトリ(granulometry)が500μm未満である粒子の形態にある触媒を用いる場合、均一な分布、特に外殻が存在しないことが、一般的に望ましい。実際に、スラリー方法を用いることにより、触媒に相当な機械応力が引き起こされ、外殻の形態で活性金属が分布することにより、摩耗効果に対してより敏感になり、時間の経過とともに活性金属の喪失を引き起こし得る。触媒の周囲における金属の過度に進行した凝集により、立体応力(互いに過度に凝集した金属微結晶)に関連する選択性の喪失も引き起こされ得、炭化水素合成反応において炭化水素鎖の成長が制限され、C
5+選択性(およびその結果として、当業者に周知のAnderson、SchulzおよびFloryの理論的研究からアルファとも称される鎖成長の確率)の低下が引き起こされる。
【0006】
フィッシャー・トロプシュ合成に用いられる触媒の調製のための従来の手順は、一般的に以下の段階を含む:担体の含浸、乾燥、焼成、および場合による還元。
【0007】
それ故に、多くの特許に、フィッシャー・トロプシュ合成において用いられる触媒の調製方法であって、そのような従来の手順に基づき、かつ、コバルトの分布を触媒中でより均一にしかつ外殻の形成を回避するようにコバルトの分布を向上させることを目的とする、方法が記載されている。
【0008】
近年、多数の著者が、触媒性能を左右するキーパラメータの一つが、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの微結晶のサイズが最適値、好ましくは、用いられる担体および操作条件に応じて6〜10nmである触媒の生成であったことも示した(非特許文献1)。これらの微結晶のサイズとサイズに関するそれらの分布とを制御するために利用可能な手段が数多く存在し、種々のコバルト前駆体(例えば、酢酸コバルト)、種々の添加剤(グリコール等)、真空下での乾燥、または種々の雰囲気中での焼成(NO/O
2中(特許文献2)、H
2中での焼成)を用いることが実際に知られている(非特許文献2)。
【0009】
サイズ、微結晶のサイズ分布、さらには、それらの凝集のレベルを制御する方法の一つは、乾燥および焼成の条件の最適化を含んでもよい。
【0010】
特許文献1には、真空含浸および60〜95℃の温度での部分真空乾燥(partial vacuum drying)と、その後の、温度勾配0.5〜1℃/分による温度75〜400℃における、毎時空間速度(hourly space velocity:HSV):空気少なくとも1m
3/(kg(Co(NO
3)
2・6H
2O*h)での焼成によって得られた触媒が記載されている。当該特許により、HSVがより高いならば、硝酸塩を除去するために100℃/分の昇温勾配によるはるかにより速い焼成の可能性が提供される。
【0011】
これらの手順の不利な点は、含浸操作によって提供される水の全てが除去されるわけではないので、乾燥段階(部分乾燥が特許請求されている)から出る際に触媒は依然として大量の水を含有しているということである。このように水が存在することによって、触媒中および触媒の表面におけるコバルトの均一な分布に不利益をもたらすというリスクが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性相と、フィッシャー・トロプシュ合成方法において用いられ得る酸化物担体とを含み、第VIII族からの元素の微結晶の平均サイズのより良好な制御および触媒粒子の内部およびその表面における第VIII族からの金属のより良好な分布に起因して、摩耗により触媒から容易に抽出される外殻の形態で存在するコバルトの量の低減を引き起こす、フィッシャー・トロプシュ合成方法において改善された活性およびC5+に関して維持された選択性を有する触媒の調製のための方法を提案することによって、従来技術の不利な点の1つ以上を改善することにある。
【0015】
実際、本出願人は驚くべきことに、特定の条件下での迅速な乾燥段階によって、第VIII族からの金属の酸化物、特に酸化コバルト(Co
3O
4)の微結晶の平均サイズおよびその凝集のレベルをより良好に制御することが可能であることを発見した。
【0016】
従って、本発明の目的は、フィッシャー・トロプシュ合成方法において用いられ得る触媒の調製方法であって、前記方法は、当該特定の迅速な乾燥モードの使用によって、より良好に制御されたサイズの第VIII族からの酸化物の元素の微結晶を有する触媒の製造が可能となり、かつ、触媒粒子の周囲に存在する外殻を完全に除去することによって、触媒中、とりわけ触媒の表面における第VIII族からの金属の均一性の向上が可能となる。
【0017】
本発明の別の目的は、フィッシャー・トロプシュ合成方法において非常に活性であり選択性の高い触媒の製造を可能とする調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性相と、酸化物担体とを含む触媒の調製方法であって、前記方法は、少なくとも関連する配列の以下の段階:
− 前記酸化物担体の含浸段階、
− 前記含浸させられた酸化物担体が気体によって同伴される迅速な乾燥段階であって、前記含浸させられた酸化物担体は、前記段階において250〜600℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は、1秒〜1分である乾燥段階、および
− 前記含浸および乾燥済みの酸化物担体の焼成段階
を含む、方法である。
【0019】
好ましくは、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階は、この順序で、少なくとも2回行われる。
【0020】
好ましくは、前記活性相はコバルトを含む。
【0021】
好ましくは、触媒の前記酸化物担体は、単純な酸化物から、好ましくは、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化第二セリウム(CeO
2)、およびジルコニア(ZrO
2)から選択される。
【0022】
好ましくは、前記酸化物担体はシリカ−アルミナによって形成される。
【0023】
好ましくは、前記乾燥段階において用いられる気体は、空気であり、該空気は、単独であるかまたは不活性ガスと混合される。
【0024】
好ましくは、前記乾燥段階への入口における気体の温度は300〜800℃である。
【0025】
好ましくは、前記焼成段階は、換気式乾燥棚、流動床および回転炉から選択される装置において行われる。
【0026】
好ましくは、前記焼成段階は、320〜460℃の温度で15分〜15時間の期間にわたり行われる。
【0027】
好ましくは、前記調製方法は、前記酸化物担体の安定化のための段階を含み、前記安定化段階は、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階の前に行われる。
【0028】
好ましくは、前記酸化物担体の安定化のための前記段階は:
− 前記酸化物担体の、好ましくは、コバルト、ニッケル、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛から選択される第VIII族からの金属の1種以上の塩の水溶液による含浸、好ましくは、乾式含浸を行い、最終触媒の全質量に対して1〜10重量%の含有量の第VIII族からの金属を含浸させる、段階、
− 前記含浸させられた酸化物担体の乾燥段階、および
− 前記乾燥・含浸済みの酸化物担体の焼成段階であって、前記焼成操作は1回または2回の段階で行われる、段階
からなる。
【0029】
好ましくは、前記含浸させられた酸化物担体は、安定化段階の前記乾燥段階において気体によって同伴され、前記含浸させられた酸化物担体は、50〜500℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は1秒〜1分である。
【0030】
好ましくは、乾燥・含浸済みの酸化物担体の焼成は、一段階において、空気中700〜1200℃の温度で1〜24時間の期間にわたって行われる。
【0031】
好ましくは、乾燥・含浸済みの酸化物担体の焼成は、二段階において、空気中、300〜600℃の温度で30分〜3時間の期間にわたり、次いで700〜1200℃の温度で1〜24時間の期間にわたり行われる。
【0032】
本発明はまた、上記のいずれか1つに記載の調製方法に従って調製された触媒を用いる、炭素と水素の混合物からのフィッシャー・トロプシュ合成のための方法であって、前記フィッシャー・トロプシュ合成方法は、190〜240℃の温度、1〜5MPaの全圧で操作され、H
2/COモル比は、1.5〜2.5である。
【0033】
本発明の主題は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性相と、酸化物担体とを含む触媒の調製方法であって、該調製方法は、少なくとも1回の関連する配列の以下の段階:
− 前記酸化物担体の含浸段階、
− 前記含浸させられた酸化物担体が気体によって同伴される乾燥段階であって、前記含浸させられた酸化物担体は、前記段階において250〜600℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は1秒〜1分である段階、および
− 前記含浸および乾燥済みの酸化物担体の焼成段階
を含む、方法に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明による調製方法の利点は、第VIII族からの金属の微結晶の平均サイズが12nm未満である触媒の製造が可能になることである。
【0035】
本発明の魅力は、迅速な乾燥段階と称される、特定の乾燥段階の実施にあり、これは、焼成段階とは独立しており、本発明による調製方法の含浸段階または含浸段階のそれぞれの後に行われる。実際、前記乾燥段階の実施により、外殻を形成することとなるであろう、担体の粒子の表面における第VIII族からの金属、好ましくはコバルトのマイグレーションを回避することが可能となり、また、触媒粒子内での第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの凝集体の形成が回避される。
【0036】
従って、本発明による調製方法における焼成段階の前に行われる前記迅速な乾燥段階により、非常に効率の良い乾燥と、当該方法において調製される触媒の粒子の表面における第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの外殻の形成の回避の両方が可能となり、従って、触媒粒子内での第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの分布の改善が可能となる。
【0037】
本発明の別の主題はまた、本発明による調製方法に従って調製された触媒を用いる、一酸化炭素および水素の混合物からのフィッシャー・トロプシュ合成のための方法であって、前記フィッシャー・トロプシュ合成方法は、190〜240℃の温度、1〜5MPaの全圧で操作され、H
2/COモル比は、1.5〜2.5である、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(簡単な説明)
本発明は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性相と、フィッシャー・トロプシュ合成方法において用いられ得る酸化物担体とを含む触媒の調製方法であって、少なくとも1回の関連する配列の、前記酸化物担体の含浸の段階、前記含浸させられた酸化物担体が気体によって同伴される乾燥段階であって、前記含浸させられた酸化物担体は、前記段階において、250〜600℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の残留時間は、1秒〜1分である、段階、および、前記乾燥・含浸済みの酸化物担体の焼成段階を含む、方法に関する。本発明はまた、
本調製方法に従って調製された触媒を用いるフィッシャー・トロプシュ合成方法に関する。
【0040】
(発明の説明)
本発明は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性相と、酸化物担体とを含む触媒の調製方法であって、少なくとも関連する配列の以下の段階:
− 前記酸化物担体の含浸段階、
− 前記含浸させられた酸化物担体が気体によって同伴される乾燥段階であって、前記含浸させられた酸化物担体は、前記段階において250〜600℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は、1秒〜1分である、段階、および
− 前記含浸および乾燥済みの酸化物担体の焼成段階
を含む、方法である。
【0041】
以降本明細書の全体にわたって、乾燥という用語は、X線回折によって検出され得る結晶化コバルト酸化物の形成をもたらすことなく、1000℃での強熱減量(loss on ignition:LOI)が7〜20%である固体を得ることを可能とする熱処理段階を示すために用いられる。
【0042】
焼成という用語は、硝酸塩の完全な分解と、第VIII族からの金属の金属塩(例えば、コバルトの場合、前駆体Co(NO
3)
2)の全ての対イオンのコバルト酸化物への転換とを可能にする熱処理段階を示すために用いられる。
【0043】
本発明によると、本発明の方法によって調製される触媒は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性金属相を含む。非常に好ましくは、活性相はコバルトを含む。活性相は、有利には、酸化物担体上に沈着させられる。活性相がコバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を含む場合、第VIII族からの金属の含有率は、触媒の重量に対して有利には1〜60重量%、好ましくは触媒の重量に対して5〜30重量%、非常に好ましくは触媒の重量に対して10〜30重量%である。活性相がルテニウムを含む場合、金属ルテニウムの含有率は、触媒の重量に対して0.01〜10重量%、非常に好ましくは触媒の重量に対して0.05〜0.5重量%である。本発明の方法に従って調製される触媒の活性相はまた、有利には、少なくとも1種の追加金属を含み、この追加金属は、白金、パラジウム、レニウム、ルテニウム、マンガンおよびタンタルから選択され、非常に好ましくは、白金、ルテニウムおよびレニウムから選択される。追加金属(単数または複数)は、好ましくは、触媒の重量に対して0.01〜2重量%、好ましくは0.02〜0.3重量%の金属の含有率で存在する。
【0044】
本発明による方法によって調製される触媒の酸化物担体であって、活性相がその上に沈着させられるものは、有利には単純な酸化物から、好ましくはアルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化第二セリウム(CeO
2)およびジルコニア(ZrO
2)から選択される。当該酸化物担体はまた、有利には、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化第二セリウム(CeO
2)およびジルコニア(ZrO
2)から選択される複数種の単純な酸化物を含み得る。好ましくは、本発明による方法によって調製される触媒の酸化物担体は、シリカおよびアルミナを含む。非常に好ましくは、酸化物担体はシリカ−アルミナによって形成される。この場合、シリカ−アルミナによって形成される担体は、好ましくは、担体の全重量に対して1〜30重量%のシリカを含む。シリカ−アルミナは、マイクロメートルスケールで均一であり、好ましくはナノメートルスケールで均一である。
【0045】
本発明によると、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階は、少なくとも1回行われる。
【0046】
好ましくは、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階は、この順序で行われる。
【0047】
関連する配列の数は、第VIII族からの元素の所望の最終含有率および用いられる酸化物担体の初期細孔容積に依存し、前記関連する配列の段階は、必要に応じて何回でも行われ得る。
【0048】
本発明による調製方法は、場合により、前記酸化物担体の安定化のための段階を含んでよく、前記安定化段階は、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階の前に行われる。
【0049】
酸化物担体のための安定化段階は:
− 酸化物担体の含浸(好ましくは乾式)であって、好ましくは、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)およびマンガン(Mn)、好ましくはコバルト、ニッケル、マグネシウム、カルシウムおよび亜鉛から選択される金属、好ましくはコバルトの1種以上の塩の水溶液により、最終触媒の全質量に対して1〜10重量%の含有率で金属を含浸させる、含浸、
− 前記含浸させられた酸化物担体の乾燥、および
− 前記含浸および乾燥済みの酸化物担体の焼成であって、焼成操作は、1回または2回の段階で行われる、焼成、
からなる。
【0050】
安定化段階の好ましい実施形態において、前記含浸させられた酸化物担体の乾燥は、有利には、60〜200℃の温度で、30分〜3時間の期間にわたり行われる。この場合、安定化段階は、有利には、以下の例の中の装置において行われる:流動床、回転炉(rotating furnace)、換気式乾燥棚(ventilated drying cabinet)、固定床、等。
【0051】
安定化段階の別の好ましい実施形態において、含浸させられた酸化物担体は、本発明による迅速な乾燥段階に付される。好ましくは、含浸させられた酸化物担体は、気体によって同伴され、前記含浸させられた酸化物担体は、250〜600℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における前記含浸させられた酸化物担体の滞留時間は、1秒〜1分である。乾燥操作の操作条件は、本明細書の以降においてより詳細に記載される。この場合、安定化段階は、有利には、本発明による調製方法の、関連する配列(単数または複数)の、含浸、乾燥および焼成の段階と同一の装置内で行われる。
【0052】
乾燥および含浸済みの酸化物担体の焼成が一段階で行われる場合、焼成操作は、有利には、空気中、700〜1200℃、好ましくは850〜1200℃、好ましくは850〜900℃の温度で、1〜24時間の期間にわたり行われる。
【0053】
乾燥および含浸済みの酸化物担体の焼成が二段階で行われる場合、焼成操作は、有利には、300〜600℃の温度で、空気中、30分〜3時間の期間にわたり、次いで、700〜1200℃、好ましくは850〜1200℃、好ましくは850〜900℃の温度で、1〜24時間、好ましくは2〜5時間の期間にわたり行われる。
【0054】
安定化段階の終わりに、酸化物担体であって、活性相がその上に沈着させられるものは、アルミナまたはシリカ−アルミナ中に、好ましくはシリカ−アルミナ中に封入されたスピネルを含む。特に、触媒の酸化物担体は、有利には、タイプMAl
2O
4/Al
2O
3−SiO
2のシリカ−アルミナ中に封入された単純なスピネル、あるいは、タイプM
xM’
(1−x)Al
2O
4/Al
2O
3−SiO
2のシリカ−アルミナ中に封入された混合型スピネルによって形成される(式中、MおよびM’は、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)およびマンガン(Mn)によって形成される群から選択される別個の金属であり、式中、Al
2O
3−SiO
2は、シリカ−アルミナの化学式を示し、式中、xは、0〜1であり、値0および1自体は除外される。
【0055】
得られた安定化酸化物担体は、スピネル構造によって形成され、これは、担体の全重量に対して、有利には少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10%、一層より好ましくは少なくとも15重量%の前記スピネル構造を含む。スピネル構造を好ましくは封入するシリカ−アルミナは、好ましくは担体の全重量に対して1〜30重量%のシリカを含む。それは、マイクロメートルスケールで均一であり、一層より好ましくはナノメートルスケールで均一である。
【0056】
安定化段階により、フィッシャー・トロプシュ合成反応媒体(水、酸)の攻撃を制限することが可能になる。安定化段階からの排出口において、当該方法において添加される第VIII族からの金属、好ましくは、コバルトは、酸化物担体との非常に強力な相互作用を伴い、従って、当業者に周知のフィッシャー・トロプシュ触媒の還元範囲(550℃未満の還元温度)において還元され得ない。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明による調製方法の、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階は、好ましくはこの順序であり、少なくとも2回行われる。この場合、本発明による調製方法は、従って、各含浸段階の後に、焼成段階とは独立した乾燥段階を含む。
【0058】
安定化酸化物担体の含浸段階は、有利には、第VIII族からの金属の少なくとも1種の前駆体を含有する少なくとも1種の溶液によって行われる。特に、当該段階は、有利には、乾式含浸、過剰含浸、あるいは、当業者に周知の沈着−沈殿を用いる方法によって行われ得る。好ましくは、含浸段階は、乾式含浸によって、好ましくは周囲温度で、好ましくは20℃に等しい温度で行われる。含浸段階は、酸化物担体を、第VIII族からの金属の少なくとも1種の前駆体を含有する少なくとも1種の溶液と接触させることを含み、その容積は、含浸させられるべき担体の細孔容積に等しい。当該溶液は、第VIII族からの金属(単数または複数)の金属前駆体を、最終触媒上で所望の金属含有率を達成するために所望の濃度で含有する。含浸段階はまた、有利には当該技術に適合可能な任意の他の温度、好ましくは5〜40℃、好ましくは15〜25℃、非常に好ましくは17〜23℃で行われ得る。
【0059】
安定化酸化物担体に対する、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階が、好ましくはこの順序で、2回行われる、好ましい実施形態において、場合により安定化した酸化物担体の含浸のための第1の段階によって、最終触媒の全質量に対して2〜15重量%、好ましくは5〜10重量%の、コバルト、鉄およびルテニウムから選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくはコバルトの沈着が可能となる。場合により安定化した酸化物担体の含浸のための第2の段階によって、最終触媒の全質量に対して2〜15重量%、好ましくは5〜10重量%の、コバルト、鉄、およびルテニウムから選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくは、コバルトの沈着が可能となる。第VIII族からの元素がコバルトである場合、これら2回の段階によって、最終触媒の全質量に対して4〜30重量%、好ましくは10〜20重量%であり得る含有率の金属性コバルトの沈着が可能となる。
【0060】
第VIII族からの金属(単数または複数)は、水相または有機相に可溶な任意の金属前駆体によって、場合により安定化した酸化物担体と接触させられる。それが有機溶液中に導入される場合、第VIII族からの金属の前駆体は、好ましくは、前記第VIII族からの金属のシュウ酸塩または酢酸塩である。好ましくは、第VIII族からの金属の前駆体は、水溶液中に、好ましくは、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、シュウ酸塩、ポリ酸または酸−アルコールおよびその塩によって形成された錯体、アセチルアセトナートにより形成された錯体、または、水溶液に可溶な任意の他の無機誘導体の形態で導入され、前記担体と接触させられる。第VIII族からの金属がコバルトである、好ましい場合において、有利に用いられるコバルト前駆体は、硝酸コバルト、シュウ酸コバルト、または酢酸コバルトである。
【0061】
本発明に従って調製される触媒の、場合により安定化した酸化物担体の含浸工程はまた、有利には、白金、パラジウム、レニウム、ロジウム、ルテニウム、マンガンおよびタンタルから選択される少なくとも1種の追加金属を単独または混合物の形態で、前記酸化物担体上に沈着させることを含む、少なくとも1回の追加段階を含み得る。好ましくは、追加金属は、白金、ルテニウムおよびレニウムから選択され、非常に好ましくは、追加金属は、白金である。追加金属の担体上への沈着は、有利には当業者に公知の任意の方法によって、好ましくは、酸化物担体に、追加金属の少なくとも1種の前駆体を含有する少なくとも1種の溶液を含浸させることによって、好ましくは乾式含浸あるいは過剰含浸によって行われ得る。追加金属(単数または複数)は、触媒の重量に対して、好ましくは0.01〜2重量%、好ましくは0.02〜0.3重量%の金属の量で存在する。
【0062】
本発明によると、含浸させられ、かつ、場合により事前に安定化させられた酸化物担体のための、迅速な乾燥段階と称される、乾燥段階は、含浸段階と焼成段階の間に行われる。
【0063】
当該乾燥段階において、含浸させられた酸化物担体は、気体によって同伴され、前記含浸させられた酸化物担体は、250〜600℃/分、好ましくは300〜600℃/分、好ましくは350〜600℃/分、より好ましくは350〜550℃/分の温度上昇勾配に付され、前記乾燥段階における含浸させられた酸化物担体の滞留時間は、1秒〜1分、好ましくは5〜40秒、好ましくは5〜30秒である。
【0064】
この乾燥段階が迅速な乾燥段階と称されるのは、用いられる乾燥モードによって、水を非常に迅速に除去することを可能にする非常に高い気体流量において、触媒と気体の間の非常に短い接触時間を達成することが可能となるからである。
【0065】
好ましくは、乾燥段階において用いられる気体は、空気であり、これは、単独であるかあるいは不活性ガスと混合される。
【0066】
好ましくは、乾燥段階への入口における気体の温度は、300〜800℃、好ましくは400〜700℃、非常に好ましくは400〜600℃である。
【0067】
好ましくは、乾燥段階の過程における圧力は、0.02〜0.2MPa、好ましくは0.05〜0.1MPaである。
【0068】
好ましくは、乾燥段階は、2〜4NL/h/g(触媒)、好ましくは2.6〜3.2NL/h/g(触媒)の流量の気体の存在下で操作される。
【0069】
乾燥段階の間、含浸させられかつ乾燥段階において同伴される酸化物担体の温度は、好ましい温度および流量範囲において50〜60℃である。
【0070】
乾燥操作は、本発明による触媒の調製において重要な段階である。含浸、乾燥および焼成の段階は、互いに独立して行われる。
【0071】
乾燥段階により、含浸させられた酸化物担体の
粉体を同伴することが可能となり、該
粉体は、場合により安定化させられており、グラニュロメトリが200μm未満であり、強熱減量(LOI)が含浸段階から出る際に20〜50%である。乾燥段階から出る際に、含浸および乾燥済みの酸化物担体は、グラニュロメトリが200μm未満であり、かつ、1000℃で測定される強熱減量(1000℃でのLOI)が7〜20%である
粉体の形態である。
【0072】
乾燥段階は、有利には、LOIが20〜50%であり、かつ、グラニュロメトリが300μm未満である
粉体の処理を可能とし、かつ、非常に高い空気流量中高められた温度において非常に短い接触時間を達成することを可能とする当業者に公知の任意の装置において行われる。好ましくは、噴流床(entrained bed)およびフラッシュドライヤ(flash dryer)から選択される装置において、あるいは、当業者に公知の任意の等価な装置において行われる。フラッシュドライヤは、農業食品の分野において特に幅広く用いられ、Barr-Rosin, Niroなどの会社によって販売されているが、有利には、本発明においてドライヤとして用いられ得る。
【0073】
迅速な乾燥段階は、焼成段階と独立しており、かつ、本発明による調製方法の前記の含浸段階あるいは各含浸段階の後に行われるものであり、この迅速な乾燥段階により、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの表面のマイグレーションを回避することが可能となり、また、得られる触媒の粒子内での、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの凝集体の形成が回避される。
【0074】
従って、本発明による方法における焼成段階の前に行われる迅速な乾燥段階により、非常に効率性の高い乾燥が可能となると共に、当該方法において調製される触媒の粒子の表面における、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの外殻の形成を回避することが可能となり、従って、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの触媒粒子内の分布を改善することが可能となる。
【0075】
本発明によると、乾燥・含浸済みの酸化物担体の焼成段階は、含浸段階の後に行われる。焼成段階は、有利には、迅速な乾燥段階と独立して行われる。好ましくは、焼成段階は、換気式乾燥棚、流動床および回転炉から選択される装置において、あるいは、当業者に公知の任意の等価な装置において行われる。
【0076】
焼成段階は、有利には、320〜460℃、好ましくは350〜440℃、好ましくは360〜420℃の温度で行われる。
【0077】
それは、好ましくは、15分〜15時間、好ましくは30分〜12時間、一層より好ましくは1〜6時間の期間にわたり行われる。
【0078】
本発明による調製方法からの出口において得られる触媒は、少なくとも1回行われる、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階の後に、酸化物の形態である。それは、触媒の活性相中に存在する、第VIII族からの金属の酸化物の微結晶、好ましくは酸化コバルトCO
3O
4の微結晶を有する。
【0079】
本発明による調製方法はまた、有利には、得られ
た触媒の還元のための少なくとも1回の段階を含んでよく、この還元段階は、関連する配列の含浸、乾燥および焼成の段階の後に行われる。
【0080】
実際、フィッシャー・トロプシュ合成のための触媒反応器におけるそれの使用の前に、本発明による方法の終わりに得られる触媒は、好ましくは、少なくとも1回の還元段階に付される。還元段階は、触媒を活性化し、ゼロ価の状態にある金属の粒子を形成することを目的とし、例えば、高純度あるいは希釈した水素中、高温で行われる。
【0081】
用いられる第VIII族からの金属がコバルトである場合、還元段階により、以下の反応を行うことが可能となる:
Co
3O
4 → CoO → Co(0)
【0082】
還元段階は、有利には、200〜500℃の温度で、2〜20時間の期間にわたり行われる。
【0083】
還元段階は、有利には、現場で(in situ)、すなわち、フィッシャー・トロプシュ反応が行われる反応器と同じ反応器内で、あるいは、反応器に装填される前に現場外で(ex situ)のいずれかで行われる。
【0084】
本発明はまた、本発明による調製方法によって製造されることが可能な触媒に関する。
【0085】
本発明による調製方法の終わりに得られる触媒は、コバルト、ニッケル、ルテニウムおよび鉄から選択される第VIII族からの少なくとも1種の金属を単独でまたは混合物として含む活性金属相と、上記に規定される酸化物担体とを含む。
【0086】
活性相が沈着させられる酸化物担体は、有利には、可変のグラニュロメトリの粉体の形態にある形態論(morphology)のもの
であってよく、これは、特に、触媒がスラリー気泡塔タイプの反応器において用いられる場合である。触媒の粒子のサイズは、有利には、数ミクロンと数百ミクロンの間であってよい。スラリー反応器で用いられる場合、本発明による方法を用いて調製される触媒の粒子のサイズは、好ましくは10〜300ミクロン、非常に好ましくは20〜200ミクロンである。
【0087】
本発明による調製方法の終わりに得られる触媒は、12nm未満の第VIII族の金属の微結晶の平均サイズを有する。
【0088】
当該方法において得られる触媒は、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトが粒子中およびそれらの表面に均一に分布している粒子を含み、この粒子は、第VIII族からの金属の凝集体を全く有していないかあるいはほとんど有しておらず、触媒粒子の周囲における外殻の形成が制限される。
【0089】
本発明による方法によって得られる触媒粒子の内部における、第VIII族の金属、好ましくはコバルトの分布、および、外殻とも称される、第VIII族からの金属、好ましくはコバルトの層の有無は、例えば、電子プローブによるX線微量分析(X-microanalysis)によって、あるいは、後方散乱電子(retrodiffused-electron)の走査型電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)によって検出される。
【0090】
本発明による調製方法の終わりに得られる触媒は、有利には、懸濁中で行われる反応において、三相流動反応器、好ましくは、気泡塔タイプのもので採用されてよい。触媒のこの好ましい使用において、触媒は、非常に微細な粉体の状態に、特に、数十ミクロン程度、例えば、5〜300ミクロン、好ましくは20〜150ミクロン、一層より好ましくは20〜120ミクロンに分割される。当該技術はまた、当業者によって「スラリー方法」という技術用語によって知られている。
【0091】
当該触媒はまた、有利には、種々のタイプの反応器において、例えば、固定床、移動床、気泡塔、あるいは、三相流動床において用いられ得る。
【0092】
本発明はまた、本発明による調製方法に従って調製された触媒を用いる、炭素と水素の混合物からのフィッシャー・トロプシュ合成のための方法であって、フィッシャー・トロプシュ合成方法は、190〜240℃の温度、1〜5MPaの全圧で操作され、H
2/COモル比は、1.5〜2.5である、方法に関する。
【0093】
本発明は以下の実施例によって例証される。
【0094】
(実施例1:比較)
コバルトをシリカ−アルミナ担体上に沈着させられて含む触媒A1の調製を、硝酸コバルトの水溶液の乾式含浸により、2回の連続する段階において14重量%程度のCoを市販のシリカ−アルミナ粉体(SIRALOX(登録商標)5/170、SASOL)上に沈着させるようにして行った。この市販のシリカ−アルミナ粉末の平均グラニュロメトリは80μmに等しく、表面積は171m
2/gであり、細孔容積は、0.519mL/gに等しい。
【0095】
第1の乾式含浸操作の後、乾燥オーブン内で、120℃で3時間にわたり、制御されない流量での空気流中で固体を乾燥させた。次いで、制御されない空気流量中で1℃/分の勾配を用いて420℃に温度を上げて、次いで4時間にわたり420℃の維持レベルを適用した。中間触媒は約8重量%のCoを含有していた。それを、硝酸コバルトの溶液による第2の乾式含浸段階に付した。得られた固体を、乾燥オーブン中、120℃で3時間にわたり制御されない空気流量において乾燥させた。次いで、1℃/分の勾配を用いて、420℃の温度で、制御されない空気流量において焼成を行い、次いで、420℃の維持レベルを4時間にわたり適用した。13.5重量%のCoを含有する最終触媒A1を得た。
【0096】
後方散乱電子走査型電子顕微鏡法(
図1)により、外殻の存在(
図1a)および触媒粒子内におけるコバルトの不良な分布(
図1b)が立証された。
【0097】
XRDによって測定されたCo
3O
4の微結晶の平均サイズは19nmであった。
【0098】
固体A1の1000℃でのLOIは13%であった。
【0099】
乾燥段階から出た後の触媒中に存在する、XRDによって測定されたCo
3O
4の含有率は、サンプルの全質量に対して約3.5重量%であった。
【0100】
乾燥段階の終わりにおける固体中のCo
3O
4の含有率を、XRDによって測定した。36.9°(主線)および59.3°におけるCo
3O
4のラインの面積を測定した。0〜100%のCo
3O
4を含有する基準サンプルによって検量直線(calibration straight line)を行い、これにより、所与のサンプル中のCo
3O
4含有率を評価することが可能となった。
【0101】
(実施例2:比較)
コバルトをシリカ−アルミナ担体上に沈着させられて含む触媒A2の調製を、硝酸コバルトの水溶液の乾式含浸により、2回の連続する段階において13.5重量%程度のCoを市販のシリカ−アルミナ粉体(SIRALOX(登録商標)5/170、SASOL)上に沈着させるようにして行った。この市販シリカ−アルミナ粉体の平均グラニュロメトリは、80μmに等しく、表面積は171m
2/gであり、細孔容積は0.519mL/gに等しい。
【0102】
第1の乾式含浸操作の後、流動床中、乾燥空気流下、230℃/分の勾配を用いて、2.11NL/h/g(触媒)の空気流量で、15秒の期間にわたり、空気流中で固体を乾燥させた。次いで触媒を排出し、次いで換気式乾燥棚に導入した。制御されない空気流量において、1℃/分の勾配で420℃に温度を上げ、次いで420℃の温度レベルを4時間にわたり維持した。中間触媒は約8重量%のCoを含有していた。それを、硝酸コバルトの溶液による第2の乾式含浸段階に付した。湿潤固体を、流動床中、乾燥空気流下で、240℃/分の勾配を用いて、2.11L/h・g(触媒)の空気流量において、15秒の期間にわたり、空気流中で乾燥させた。次いで、触媒を排出し、次いで換気式乾燥棚に導入した。次いで、1℃/分の勾配を用いて420℃の温度で、制御されない空気流下で焼成を行い、次いで、420℃の温度レベルを4時間にわたり維持した。13.5重量%のCoを含有する、最終触媒A2を得た。
【0103】
後方散乱電子走査型電子顕微鏡法(
図2)により、外殻の存在(
図2a)と触媒粒子内におけるコバルトの不良な分布(
図2b)が明らかになった。
【0104】
XRDによって測定されたCo
3O
4の微結晶の平均サイズは22nmであった。
【0105】
固体A2の1000℃でのLOIは22%であった。
【0106】
XRDによって痕跡量のCo
3O
4は検出されなかった。
【0107】
(実施例3:本発明に合致する)
コバルトをシリカ−アルミナ担体上に沈着させられて含む触媒A3の調製を、硝酸コバルトの水溶液の乾式含浸により、2回の連続する段階において、13.5重量%程度のCoを市販のシリカ−アルミナ粉体(SIRALOX(登録商標)5/170、SASOL)上に沈着させるようにして行った。この市販のシリカ−アルミナ粉体の平均グラニュロメトリは、80μmに等しく、表面積は、171m
2/gであり、細孔容積は、0.519mL/gに等しい。
【0108】
第1の乾式含浸操作の後、流動床中、乾燥空気流下で、360℃/分の勾配を用いて、2.63NL/h/g(触媒)の空気流量で、10秒の期間にわたり、空気流中で固体を乾燥させた。次いで、触媒を排出して、次いで換気式乾燥棚に導入した。制御されない空気流量において1℃/分の勾配で温度を420℃に上げて、次いで420℃の温度レベルを4時間にわたり維持した。中間触媒は約8重量%のCoを含有していた。これを、硝酸コバルトの溶液による第2の乾式含浸段階に付した。湿潤固体を、流動床中、乾燥空気流下で、360℃/分の勾配を用いて、2.63NL/h/g(触媒)の空気流量において、10秒の期間にわたり、空気流中で乾燥させた。次いで、触媒を排出し、次いで換気式乾燥棚に導入した。次いで、制御されない空気流下で1℃/分の勾配を用いて420℃の温度で焼成を行い、次いで420℃の温度レベルを4時間にわたり維持した。13.5重量%のCoを含有する最終触媒A3を得た。
【0109】
後方散乱電子走査型電子顕微鏡法(
図3)により、外殻が存在しないこと(
図3a)および触媒粒子内にコバルト凝集体が存在しないこと(触媒粒子における良好なコバルト分布)(
図3b)が明らかになった。
【0110】
XRDによって測定されたCo
3O
4の微結晶の平均サイズは12nmであった。
【0111】
固体A3の1000℃でのLOIは10%であった。
【0112】
XRDによって痕跡量のCo
3O
4は検出されなかった。
【0113】
(実施例4:本発明に合致する)
乾燥段階への気体の入口温度が400〜550℃の間で様々であるという相違点を除いて、実施例3の触媒と同一の方法で複数の触媒を調製した。
【0114】
図4は、13.5重量%のCoを有する実施例3に従って調製された触媒についての、乾燥段階に入る気体の温度に応じた、乾燥操作から出る際の1000℃でのLOIおよび乾燥段階のフラッシュカラムから出る気体中のNO
2含有量の変動を示す。種々の入口気体温度について、触媒のサンプリングを行い、これにより乾燥後の残留強熱減量の測定が可能となった。含まれる範囲は、存在する硝酸塩の実質的な分解をもたらすことなく触媒粒子中の非常に良好なコバルトの分布が得られる、好ましい範囲の触媒に相当していた。あらゆる理論に関連付けられることはないが、NO
2の存在は、高温乾燥気体と接触させられた触媒の粒子の表面の割合に結び付けられる。
【0115】
(実施例5)
触媒A1、A2およびA3を、合成ガスの転化に関して連続的に試験する前に、現場外で(ex situ)、高純度水素の流れ中、400℃で16時間の期間にわたり、管状反応器中で還元した。一旦触媒を還元した後に、それを、アルゴン雰囲気中で排出し、所定のSasolwax(登録商標)に入れ、空気を避けて保存し、その後に試験を行った。連続的に機能し、かつ、スラリー相中の濃度10%(体積)の触媒を用いて操作されるスラリータイプの反応器内で、フィッシャー・トロプシュ合成反応を行った。
【0116】
各触媒は、径40〜150ミクロンの
粉体の形態であった。
【0117】
試験条件は以下の通りであった:
温度=230℃
全圧=2MPa
H
2/COモル比=2
COの転化率を、45〜50%に維持した。
【0118】
試験条件を、触媒の活性にかかわりなく、COの等転化(iso conversion)であるように調整した。
【0121】
式中、
T
base=225℃
E=活性化エネルギー
R=理想気体(completed gas)定数
T
ref=基準触媒の温度
である。
【0122】
基準触媒について、活性は100%であり、基準温度はベース温度に等しかった。
【0123】
100%の活性を含む基準触媒に対する、触媒A1、A2およびA3についての結果を計算し、これを、以下の表1に記載した。アルファパラフィンの選択性並びにC
5+化合物に関する選択性を記載した。
【0124】
アルファパラフィンに関する選択性の測定を、反応からの流出物の気相クロマトグラフィーによる分析、パラフィンの計量、およびlog曲線モル(%)=アルファに相当するf(炭素数)の傾きの計算によって行った。
【0126】
本発明による触媒A3の活性は、触媒A1およびA2の活性に対して、70ポイント向上した。(230%に対して300%)。C
5+、アルファパラフィンに関するその選択性も、触媒A1および触媒A2のものより良好であった。従って、本発明の方法により、ほとんど外殻がなく(SEMにおいて不可視)かつ凝集体の存在しない、より活性であり
かつより高い選択性の触媒を製造することが可能となる。