特許第6307263号(P6307263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307263
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】無線送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/02 20090101AFI20180326BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20180326BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20180326BHJP
【FI】
   H04W72/02
   H04W74/08
   H04W84/10 110
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-261318(P2013-261318)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-119327(P2015-119327A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 宏
(72)【発明者】
【氏名】坂口 治
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−006279(JP,A)
【文献】 特開2011−171966(JP,A)
【文献】 特開2010−087669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送信する送信部と、
過去に遡った所定時間内における送信時間の積算値を求める送信時間積算部と、
前記積算値が所定の閾値時間以下の場合には、第1の信号検出時間によるキャリアセンスが適用される周波数チャネルを前記送信部に対して設定し、前記積算値が前記閾値時間を超える場合には、前記第1の信号検出時間より長い第2の信号検出時間によるキャリアセンスが適用される周波数チャネルを前記送信部に対して設定するチャネル設定部と、
前記チャネル設定部によって設定された設定周波数チャネルにおけるキャリアセンスを行うキャリアセンス部と、を備え、
前記送信部は、
前記設定周波数チャネルにおけるキャリアセンスによって無線信号が検出されなかった場合に、前記積算値に対応する制限時間の下で、当該設定周波数チャネルにおける無線信号を送信し、無線信号を送信した後、前記積算値に対応する時間だけ無線信号の送信を休止することを特徴とする無線送信装置。
【請求項2】
請求項に記載の無線送信装置において、
前記チャネル設定部は、
前記キャリアセンス部が行うキャリアセンスによって無線信号が検出された場合に、前記設定周波数チャネルとして設定する周波数チャネルを変更することを特徴とする無線送信装置。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の無線送信装置において、
前記送信時間積算部は、過去に遡って3600秒以内における送信時間の総和を前記積算値として求め、
前記キャリアセンス部は、前記積算値が359.8秒以下である場合には、128マイクロ秒以上5ミリ秒未満の時間に亘ってキャリアセンスを行い、前記積算値が359.8秒を超える場合には、5ミリ秒以上の時間に亘ってキャリアセンスを行うことを特徴とする無線送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信装置に関し、特に、送信周波数および送信時間に制限が設けられた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定小電力無線装置が広く用いられている。特定小電力無線装置は、送信周波数、送信時間等が制限されるという条件の下、免許を得ることなく使用することができる。近年、特定小電力無線装置は、無線通信によって計測器からデータを収集するテレメータ、無線通信によって装置を制御するテレコントロール等に広く用いられている。
【0003】
以下の特許文献1には、特定小電力無線装置が記載されている。この無線装置は、2つの無線ユニットを切り換えて用いることで、各無線ユニットについて定められた送信時間を超える時間長のデータを送信する。また、非特許文献1には、特定小電力無線装置についての標準規格ARIB STD−T108が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−6279号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/1-STD-T108v1_0.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、複数の無線装置が用いられるシステムでは、各無線装置でキャリアセンスが行われる。キャリアセンスとは、特定の周波数チャネルにおいて無線信号を検出することにより、その周波数チャネルが他の無線装置で用いられていないかを判定する処理をいう。キャリアセンスによって、特定の周波数チャネルが他の無線装置で用いられていないと判定された場合に、その周波数チャネルにおいて無線信号を送信することができる。キャリアセンスにおいて無線信号を検出する時間が長い程、他の無線装置にその周波数チャネルを用いる時間を長く与えていることになり、自らの送信周波数および送信時間が制限される。また、各周波数チャネルに対しては、継続して送信を行うことができる時間や、送信を行った後に再び送信を行うまでに設けるべき休止時間が定められている。送信時間が短く、休止時間が長い程、他の無線装置に送信時間を長く与えていることになり、自らの送信時間が制限される。
【0007】
本発明は、無線送信をするための適切な時間および送信周波数チャネルを設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
また、本発明は、無線信号を送信する送信部と、過去に遡った所定時間内における送信時間の積算値を求める送信時間積算部と、前記積算値が所定の閾値時間以下の場合には、第1の信号検出時間によるキャリアセンスが適用される周波数チャネルを前記送信部に対して設定し、前記積算値が前記閾値時間を超える場合には、前記第1の信号検出時間より長い第2の信号検出時間によるキャリアセンスが適用される周波数チャネルを前記送信部に対して設定するチャネル設定部と、前記チャネル設定部によって設定された設定周波数チャネルにおけるキャリアセンスを行うキャリアセンス部と、を備え、 前記送信部は、前記設定周波数チャネルにおけるキャリアセンスによって無線信号が検出されなかった場合に、前記積算値に対応する制限時間の下で、当該設定周波数チャネルにおける無線信号を送信し、無線信号を送信した後、前記積算値に対応する時間だけ無線信号の送信を休止することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る無線装置は、望ましくは、前記チャネル設定部、前記キャリアセンス部が行うキャリアセンスによって無線信号が検出された場合に、前記設定周波数チャネルとして設定する周波数チャネルを変更する。
【0013】
また、本発明に係る無線装置は、望ましくは、前記送信時間積算部、過去に遡って3600秒以内における送信時間の総和を前記積算値として求め、前記キャリアセンス部は、前記積算値が359.8秒以下である場合には、128マイクロ秒以上5ミリ秒未満の時間に亘ってキャリアセンスを行い、前記積算値が359.8秒を超える場合には、5ミリ秒以上の時間に亘ってキャリアセンスを行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無線送信をするための適切な時間および送信周波数チャネルを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る特定小電力無線装置を示す図である。
図2】送信処理を示すフローチャートである。
図3】特定小電力無線装置で送信および受信されるパケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係る特定小電力無線装置10が記載されている。この特定小電力無線装置10は、現時点から遡った所定の監視時間内での送信時間の積算値に基づいて、使用する周波数チャネル、およびキャリアセンスにおける信号検出時間を設定する。
【0017】
特定小電力無線装置10は、アンテナ12、受信部24、送信部14および制御部16を備える。受信部24は、制御部16の制御に従い、アンテナ12を介して信号を受信し、受信された信号を増幅して制御部16に出力する。制御部16は、受信部24から出力された受信信号の復調処理を行い、受信信号から情報を取得する。送信部14は、制御部16による制御に従い、制御部16から出力された送信信号を増幅してアンテナ12から送信する。
【0018】
制御部16は、送信時間積算部18、チャネル設定部20、およびキャリアセンス部22を備える。制御部16は、例えばプロセッサによって構成され、予め記憶されたプログラムの実行によってこれらの各要素を構成する。
【0019】
送信時間積算部18は、現時点から遡って監視時間TA内において、送信部14から信号が送信された時間の総和を積算値Txとして求める。例えば、現時点から遡って監視時間TA前までの間に、時間長がそれぞれt1、t2、t3、・・・、およびtnの送信を送信部14が行ったときは、積算値Txはt1+t2+・・・・+tnとなる。
【0020】
チャネル設定部20は、送信部14および受信部24に対し、周波数チャネルを設定する。送信部14は、チャネル設定部20によって設定された周波数チャネルの信号を送信し、受信部24は、チャネル設定部20によって設定された周波数チャネルの信号を受信する。
【0021】
キャリアセンス部22は、受信信号を信号検出時間に亘って検出するキャリアセンスを行う。キャリアセンス部22は、積算値Txが閾値時間TH以下の場合には、短時間キャリアセンスを行い、積算値Txが閾値時間THを超える場合には、長時間キャリアセンスを行う。ここで、短時間キャリアセンスにおける信号検出時間tSは、長時間キャリアセンスにおける信号検出時間tLよりも短い。キャリアセンス部22は、受信信号の大きさが所定の閾値を超えたときは無線信号が検出されたとの判定をし、受信信号の大きさが所定の閾値を超えなかったときは無線信号が検出されていないとの判定をする。
【0022】
特定小電力無線装置10が実行する送信処理について説明する。この送信処理は、現時点から遡って監視時間TA内での送信時間の積算値Txに応じて、使用する周波数チャネル、およびキャリアセンスにおける信号検出時間を設定する処理である。
【0023】
図2には送信処理を示すフローチャートが示されている。制御部16は、現時点から遡って監視時間TA前までの送信時間の積算値Txが閾値時間TH以下であるか否かを判定する(S101)。そして、積算値Txが閾値時間TH以下であるときは、受信部24の周波数チャネルCHを周波数チャネルA1に設定する(S102)。制御部16は、周波数チャネルA1において短時間キャリアセンスを行う(S103)。制御部16は、受信信号の大きさが所定の閾値を超えたときは、周波数チャネルA1において無線信号が検出されたとの判定をし、受信信号の大きさが所定の閾値を超えなかったときは、周波数チャネルA1において無線信号が検出されていないとの判定をする(S104)。
【0024】
ARIB STD−T108に従う場合、監視時間TAは3600sであり、閾値時間THは、359.8sである。また、信号検出時間tSは、128μs以上5ms未満の時間である。周波数チャネルA1は、単位チャネル番号が33から61までの周波数チャネル(中心周波数が922.4MHz以上、928.0MHz以下の周波数チャネル)である。
【0025】
制御部16は、無線信号が検出されていないとの判定をしたときは、周波数チャネルA1において信号を送信する(S116)。具体的には、送信部14の周波数チャネルCHをA1に設定し、周波数チャネルA1における信号を送信部14に送信させる。ステップS116の送信については、ARIB STD−T108において次のように規定されている。すなわち、無線信号を送信してから400ms以内にその送信を停止し、無線信号を送信した時間が200msを超えた場合には、その送信時間の10倍の時間を経過した後でなければその後の無線送信を行ってはならないと規定されている。また、送信時間が6msを超え200ms以下である場合には、2msを経過した後でなければその後の無線送信を行ってはならないと規定されている。制御部16は、ARIB STD−T108に従う時間TP1(送信時間の10倍または2ms)だけ送信を休止し(S117)、ステップS101の処理に戻る。次のステップS101の処理では、積算値Txとして、先のステップS116による送信時間が加算された値が新たに求められる。
【0026】
制御部16は、ステップS104において、無線信号が検出されたとの判定をしたときは、受信部24の周波数チャネルCHを周波数チャネルA2に設定する(S105)。制御部16は、周波数チャネルA2において短時間キャリアセンスを行う(S106)。制御部16は、受信信号の大きさが所定の閾値を超えたときは、周波数チャネルA2において無線信号が検出されたとの判定をし、受信信号の大きさが所定の閾値を超えなかったときは、周波数チャネルA2において無線信号が検出されていないとの判定をする(S107)。制御部16は、無線信号が検出されていないとの判定をしたときは、周波数チャネルA2において信号を送信し(S116)、時間TP1だけ送信を休止した後(S117)、ステップS101の処理に戻る。ここで、ARIB STD−T108に従う場合、周波数チャネルA2は、単位チャネル番号が33から61までの周波数チャネルである。次のステップS101の処理では、積算値Txとして、先のステップS116による送信時間が加算された値が新たに求められる。
【0027】
このように、ステップS101〜S107、S116およびS117の処理によれば、現時点から遡って監視時間TA内での送信時間の積算値Txが閾値時間TH以下であるときは短時間キャリアセンスが実行される。そして、短時間キャリアセンスの対象となった周波数チャネルにおいて無線信号が検出されなかったときは、その短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおいて信号の送信が行われる。短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信は、積算値Txが閾値時間TH以下であり、短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおいて無線信号が検出されていない間、行われる(S101〜S107、S116およびS117)。
【0028】
次に、ステップS101において積算値Txが閾値時間THを超えたとき、または、ステップS107において無線信号が検出されたとの判定がされたときの処理について説明する。
【0029】
制御部16は、受信部24の周波数チャネルCHを周波数チャネルA3に設定する(S108)。制御部16は、周波数チャネルA3において長時間キャリアセンスを行う(S109)。制御部16は、受信信号の大きさが所定の閾値を超えたときは、周波数チャネルA3において無線信号が検出されたとの判定をし、受信信号の大きさが所定の閾値を超えなかったときは、周波数チャネルA3において無線信号が検出されていないとの判定をする(S110)。
【0030】
ARIB STD−T108に従う場合、信号検出時間tLは、5ms以上の時間である。周波数チャネルA3は、単位チャネル番号が24から38までの周波数チャネル(中心周波数が920.6MHz以上、923.4MHz以下の周波数チャネル)である。
【0031】
制御部16は、無線信号が検出されていないとの判定をしたときは、周波数チャネルA3において信号を送信する(S114)。具体的には、送信部14の周波数チャネルをA3に設定し、周波数チャネルA3における信号を送信部14に送信させる。ステップS114の送信については、ARIB STD−T108において次のように規定されている。すなわち、無線信号を送信してから4s以内にその送信を停止し、50msを経過した後でなければその後の無線送信を行ってはならないと規定されている。制御部16は、ARIB STD−T108に従う時間TP2(50ms)だけ送信を休止し(S115)、ステップS101の処理に戻る。次のステップS101の処理では、積算値Txとして、先のステップS114による送信時間が加算された値が新たに求められる。
【0032】
制御部16は、ステップS110において、無線信号が検出されたとの判定をしたときは、受信部24の周波数チャネルCHを周波数チャネルA4に設定し(S111)、周波数チャネルA4において長時間キャリアセンスを行う(S112)。制御部16は、受信信号の大きさが所定の閾値を超えたときは、周波数チャネルA4において無線信号が検出されたとの判定をし、受信信号の大きさが所定の閾値を超えなかったときは、周波数チャネルA4において無線信号が検出されていないとの判定をする(S113)。制御部16は、無線信号が検出されていないとの判定をしたときは、周波数チャネルA4において信号を送信し(S114)、時間TP2だけ送信を休止した後(S115)、ステップS101の処理に戻る。次のステップS101の処理では、積算値Txとして、先のステップS114による送信時間が加算された値が新たに求められる。一方、制御部16は、無線信号が検出されたとの判定をしたときは、送信処理を行うことなくステップS101の処理に戻る。
【0033】
ここで、ARIB STD−T108に従う場合、周波数チャネルA4は、単位チャネル番号が24から38までの周波数チャネルである。
【0034】
このように、ステップS101およびS108〜S115の処理によれば、現時点から遡って監視時間TA内での送信時間の積算値Txが閾値時間THを超えるときは長時間キャリアセンスが実行される。そして、長時間キャリアセンスの対象となった周波数チャネルにおいて無線信号が検出されなかったときは、その長時間キャリアセンス・周波数チャネルにおいて信号の送信が行われる。長時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信は、積算値Txが閾値時間THを超え、長時間キャリアセンス・周波数チャネルにおいて無線信号が検出されていない間、行われる(S101およびS108〜S115)。
【0035】
各キャリアセンスにおいて無線信号が検出されない場合には、図2に示されるフローチャートに従い次のような処理が実行される。すなわち、積算値Txが閾値時間TH以下であるときは、短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信が行われる。この送信は、長時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信よりもキャリアセンスをすべき時間が短い。また、ARIB STD−T108に従い、ステップS116における送信時間を200ms以下に制限した場合には、送信を休止すべき時間は、長時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信よりも短い。したがって、この場合には、他の無線装置に対して優先的に送信処理を行うことができる。また、短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信が繰り返された場合、積算値Txは時間の経過と共に増加する。
【0036】
短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信が繰り返され、積算値Txが閾値時間THを超えたときは、長時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信が行われる。この送信は、短時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信よりもキャリアセンスをすべき時間が長い。また、ARIB STD−T108に従い、ステップS117における送信時間を200ms以下に制限した場合には、送信を休止すべき時間は、短時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信よりも長い。したがって、長時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信が繰り返されると、積算値Txは時間の経過と共に減少する。これによって、監視時間TA内での送信時間の積算値Txは、再び閾値時間TH以下となり、短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信が行われる。
【0037】
このように、短時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信と、長時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信とでは、積算値Txの大きさの傾向が異なる。すなわち、短時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信の方が、長時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信よりも、時間経過と共に積算値Txが大きくなる傾向にある。したがって、図2に示されるフローチャートによれば、積算値Txの増減に応じて、短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信と、長時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信とが交互に繰り返される。仮に短時間キャリアセンス・周波数チャネルによる送信のみを行った場合、積算値Txが閾値THを超えた場合には、積算値Txが再び閾値TH以下となるまで、送信を休止せざるを得ない。本実施形態に係る特定小電力無線装置10によれば、短時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信と、長時間キャリアセンス・周波数チャネルにおける送信とを組み合わせることによって、送信を休止すべき時間が短縮される。
【0038】
ARIB STD−T108に従う場合、周波数チャネルA1は、単位チャネル番号が33から61までの周波数チャネルであり、周波数チャネルA4は、単位チャネル番号が24から38までの周波数チャネルである。したがって、例えば、周波数チャネルA1およびA4を単位チャネル番号が33から38までの周波数チャネルとし、周波数チャネルA1およびA4を同一としてもよい。
【0039】
また、本実施形態に係る特定小電力無線装置10によれば、積算値Txが閾値時間TH以下であり、送信頻度が低い場合には短時間キャリアセンスが行われる。これによって、長時間キャリアセンスを行う他の無線装置に対し優先的に無線信号を送信することができる。また、積算値Txが閾値時間THを超え、送信頻度が高い場合には長時間キャリアセンスが行われ、他の無線装置に優先的に無線信号を送信させる。これによって、送信頻度が高いことによって、他の無線装置の送信周波数および送信時間を制限することが回避される。
【0040】
なお、図2に示される処理では、周波数チャネルA1について無線信号が検出された場合に、周波数チャネルA2の無線信号を検出するというように、最大2つの周波数チャネルについてキャリアセンスが行われる。キャリアセンスは、3つ以上の周波数チャネルについて行うこととしてもよい。この場合、ステップS102〜S104、またはステップ105〜S107と同様の処理がステップS107の後に追加され、キャリアセンスの対象となる周波数チャネルが追加される。同様に、ステップS108〜S110、またはステップ111〜S113と同様の処理をステップS113の後に追加し、キャリアセンスの対象となる周波数チャネルを追加してもよい。また、ステップ105〜S107、またはステップ111〜S113を行わないフローとし、キャリアセンスの対象となる周波数チャネルを削減してもよい。
【0041】
次に、特定小電力無線装置10が信号を受信する処理について説明する。図3には、特定小電力無線装置10が送信および受信する信号のパケットの例が示されている。パケットは、複数の第1ブロックB1と、1つの第2ブロックB2とを備える。図3の例では、パケットは8個の第1ブロックB1を備える。第1ブロックB1は、受信側の装置が同期処理を行うための同期情報、パケットの送信元を識別するための送信元ID、宛先を指定する宛先ID等を含む。第2ブロックB2は、パケットによって送信される実体的な情報を含む。
【0042】
制御部16は、所定のチャネルスキャン時間ごとに受信部24の周波数チャネルを変更する。これによって受信部24は、チャネルスキャン時間ごとに周波数チャネルを変更しながら、信号を受信可能な状態で待機する。チャネルスキャン時間は、例えば、第1ブロックB1の時間長の3倍とする。また、周波数チャネルは、A1、A2、A3、A4、A1、A2、・・・・・というように、4つの周波数チャネルに亘って巡回的に変更するものとする。
【0043】
受信部24に設定された周波数チャネルと、アンテナ12で受信された信号の周波数チャネルとが一致した場合、受信部24および制御部16は、次のような処理を実行する。すなわち、受信部24は、パケットが含まれる信号をアンテナ12を介して受信すると、そのパケットが含まれる受信信号を制御部16に出力する。制御部16は、1つまたは複数の第1ブロックB1に基づいて同期処理を行い、宛先IDに基づいてパケットが自らの特定小電力無線装置10に宛てられたものであるか否かを判定する。制御部16は、パケットが自らの特定小電力無線装置10に宛てられたものであると判定すると、第2ブロックB2に含まれる情報を取得する。これによって、特定小電力無線装置10は、自らに宛てられたパケットを受信することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 特定小電力無線装置、12 アンテナ、14 送信部、16 制御部、18 送信時間積算部、20 チャネル設定部、22 キャリアセンス部、24 受信部。
図1
図2
図3