(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1種または複数のキレート剤が単糖類、ポリカルボン酸およびそれらの塩ならびにポリアミノカルボン酸およびそれらの塩から選択される、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下に挙げる略語は、文中で明確に示さない限りはその後に記載する意味である:g=グラム、mg=ミリグラム、mL=ミリリットル、L=リットル、cm=センチメートル、m=メートル、mm=ミリメートル、μm=ミクロン、min.=分、ppm=100万分の1、℃=摂氏温度、wt%=重量パーセント、およびT
g=ガラス転移温度。
【0013】
「プリント基板」および「プリント配線板」という語は、本明細書全体にわたって同じ意味で使われる。「めっき」および「析出」という語は、本明細書全体にわたって同じ意味で使われる。別途記載しない限り、すべての量は重量パーセントである。すべての数値範囲は包括的であり、かつかかる数値範囲が合計して100%に制限されることが論理的である場合を除き、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0014】
無電解銅組成物は、ホルムアルデヒドを含まず環境に優しい。この組成物は、水性であり、均一なサーモンピンク色の外観および優れたバックライトめっき結果を有する銅析出物を提供し得る。一般に組成物は、保管中は安定であり、めっき中は許容可能な優れた銅析出物を基板上に提供するのに十分に安定である。
【0015】
無電解銅組成物は、1種または複数の銅イオン源、1種または複数のキレート剤および次式を有する1種または複数の水溶性のイオウ含有還元剤を含む。
【化4】
(式中、X
y+は式(I)の中和対カチオンであって、y
+は1以上の整数であり、X
y+はH
+、アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、一価金属カチオン、多価金属カチオン、アルカリ土類カチオンまたは二価有機金属カチオンでよく、RおよびR’は独立に水素、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1〜C
6)アルキル(alky)などのヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシ(C
1〜C
6)アルキルなどのアルコキシアルキル、シアノ、ハロゲン化物、ハロ(C
1〜C
6)アルキルなどのハロアルキル、エステル、チオール、チオールエステル、カルボキシル、カルボキシ(C
1〜C
6)アルキルなどのカルボキシアルキル、スルホン酸塩、スルホキシド、置換、非置換、直鎖状もしくは分岐状の(C
1〜C
12)アルキルなどのアルキル、置換、非置換、直鎖状もしくは分岐状の(C
2〜C
12)アルキニルなどのアルキニル、アミノ、第1級、第2級もしくは第3級アミンなどのアミン、アミド、スルフィン酸塩または置換もしくは非置換の(C
6〜C
18)アリールなどのアリールであり、Zは水素、置換、非置換、直鎖状もしくは分岐状の(C
1〜C
12)アルキルなどのアルキル、置換、非置換、直鎖状もしくは分岐状の(C
2〜C
12)アルケニルなどのアルケニル、(C
2〜C
12)アリルなどのアリル、アセチルまたは置換もしくは非置換の(C
6〜C
18)アリールなどのアリールでよく、mは、mが0の場合にSと−O−(Z)
nのOとの間に共有結合を形成するという条件で0から6の整数であり、nは0または1の整数であり、n=0の場合に酸素が負電荷を持つ。)好ましくは、n=1である。式(I)は電荷が中性であり、したがってアニオン成分の正味の負電荷がX
y+の正味の正電荷と同等であるか、またはX
y+のモルが式(I)のアニオン成分のモルの正味の負電荷を中和するのに十分な量でなければならない。好ましくは、X
y+はH
+、アンモニウムカチオン、一価金属カチオン、多価金属カチオンまたはアルカリ土類カチオンであり、より好ましくはX
y+はH
+、アンモニウムカチオンまたは一価カチオンであり、さらにより好ましくはX
y+はH
+または一価カチオンである。好ましくは、y+は1または2であり、より好ましくはy+は1である。好ましくは、RおよびR’は独立に水素、直鎖状もしくは分岐状(C
1〜C
6)アルキル、第1級、第2級もしくは第3級アミン、アミドまたはスルフィン酸塩である。より好ましくは、RおよびR’は独立に水素、直鎖状もしくは分岐状(C
1〜C
6)アルキル、第1級もしくは第2級アミンまたはスルフィン酸塩である。さらにより好ましくは、RおよびR’は独立に、水素、直鎖状もしくは分岐状(C
1〜C
6)アルキル、第1級アミンまたはスルフィン酸塩であり、最も好ましくは、RおよびR’は水素、(C
1〜C
6)アルキルまたは第1級アミンである。好ましくは、Zは水素、置換、非置換、直鎖状もしくは分岐状の(C
1〜C
6)アルキル、(C
2〜C
12)アルケニル、アセチルまたは置換もしくは非置換の(C
6〜C
10)アリールである。より好ましくは、Zは水素、置換もしくは非置換の、直鎖状もしくは分岐状(C
1〜C
6)アルキル、アセチルまたは置換もしくは非置換の(C
6〜C
10)アリールである。さらにより好ましくは、Zは水素、置換もしくは非置換の、直鎖状もしくは分岐状(C
1〜C
6)アルキル、または置換もしくは非置換の(C
6〜C
10)アリールである。最も好ましくは、Zは水素、置換または非置換の、直鎖状または分岐状(C
1〜C
6)アルキルである。好ましくは、mは1から6の整数であり、より好ましくは1から5であり、さらにより好ましくは1から3であり、最も好ましくはmは1である。水溶性還元剤は、組成物中に0.1g/Lから100g/Lの量が含まれ、好ましくは1g/Lから80g/Lであり、より好ましくは2g/Lから60g/Lであり、最も好ましくは2g/Lから30g/Lである。
【0016】
一価金属カチオンには、これに限定されないが、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+およびCs
+が含まれる。好ましくは、一価金属カチオンはNa
+およびK
+から選択される。多価カチオンには、これに限定されないが、Be
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+およびBa
2+が含まれる。好ましくは、多価カチオンはMg
2+およびCa
2+から選択される。より好ましくは、カチオンはNa
+およびK
+である。
【0017】
第4級アンモニウムカチオンには、これに限定されないが、テトラアルキル第4級アンモニウムカチオンが含まれる。こうしたカチオンには、これに限定されないが、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムカチオンおよびテトラエチルアンモニウムカチオンが含まれる。
【0018】
有機金属カチオンには、これに限定されないが、[Cu(2,2’−ビピリジル)
2]
+、[Cu(2,2’−ビピリジル)
2]
2+および[Ni(2,2’−ビピリジル)
2]
2+などの2,2’−ビピリジルカチオンが含まれる。
【0019】
置換基には、これに限定されないが、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、第1級、第2級および第3級アミン、カルボキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ハロゲン化物、スルホニル、スルホン酸塩、シルフィン酸塩(silfinate)、スルフィニル、チオール、アリールおよびアミドが含まれる。好ましくは、置換基は、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン化物およびチオールである。より好ましくは、置換基は、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、ハロゲン化物およびチオールである。最も好ましくは、置換基は、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ハロゲン化物およびチオールである。ハロゲン化物には、塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物が含まれる。好ましくは、ハロゲン化物は、塩化物、臭化物およびフッ化物である。より好ましくは、ハロゲン化物は塩化物およびフッ化物であり、最も好ましくは、ハロゲン化物は塩化物である。
【0020】
銅イオン源には、これに限定されないが、水溶性の銅のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩ならびに他の有機塩および無機塩が含まれる。銅イオンを提供するために、1種または複数のこうした銅塩の混合物を用いてよい。例は、硫酸銅五水和物などの硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、水酸化銅およびスルファミン酸銅である。組成物中に従来通りの量の銅塩が使われていてよい。銅イオン源は、組成物中に、0.2g/Lから30g/Lまたは例えば0.5g/Lから20g/Lまたは例えば1g/Lから10g/Lの量が含まれていてもよい。
【0021】
キレート剤は、好ましくは、単糖類および二糖類などの1種または複数の糖類、ポリカルボン酸およびそれらの塩ならびにポリアミノカルボン酸およびそれらの塩から選択される。単糖類には、これに限定されないが、D−マンニトール、キシリトールおよびD−ソルビトールが含まれ、二糖類には、これに限定されないが、スクロースが含まれ、ポリアミノカルボン酸およびそれらの塩には、これに限定されないが、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム二塩基酸(ethylenediaminetetraacetic acid sodium dibasic)およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム四塩基酸(ethylenediaminetetraacetic acid sodium tetrabasic)が含まれ、ポリカルボン酸およびそれらの塩には、これに限定されないが、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酒石酸(tatrate)カリウムおよびナトリウムの混合物を含むロッシェル塩ならびに酒石酸カリウムが含まれる。好ましくは、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム二塩基酸、ロッシェル塩、酒石酸カリウム、スクロースおよびD−マンニトールであり、より好ましくは、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム二塩基酸、ロッシェル塩および酒石酸カリウムであり、最も好ましくは、キレート剤は、ロッシェル塩および酒石酸カリウムから選択される。こうしたキレート剤は、組成物中に5g/Lから150g/Lの量が含まれ、好ましくは10g/Lから100g/Lであり、より好ましくは20g/Lから80g/Lであり、最も好ましくは20g/Lから60g/Lである。
【0022】
9以上のpHを維持するために、無電解銅めっき組成物中にアルカリ性化合物が含まれていてもよい。アルカリ性金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムなどの従来型のアルカリ性化合物が組成物中に含まれていてもよい。好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムがアルカリ性化合物として用いられる。好ましくは、無電解銅めっき組成物は10から14のpHを有し、より好ましくは、無電解銅めっき組成物は11.5から13.6のpHを有する。所望のpHを維持するために十分な量のアルカリ性化合物が含まれる。一般には、無電解銅組成物中に4g/lから100g/lまたは例えば10g/lから80g/Lの量のアルカリ性化合物が含まれる。
【0023】
場合によって、しかし好ましくは、水性無電解銅組成物には1種または複数の安定剤が含まれる。こうした化合物は、速度調整を提供することによって無電解銅組成物を安定化し、粒状構造を改善して析出応力を改良し、保管中またはめっき中の組成物の寿命を延長し、バックライト性能を改善し得るか、またはそれらの組み合わせをし得る。こうした安定剤には、これに限定されないが、窒素を含有する化合物およびイオウを含有する化合物、例えばアミン、アルカノールアミン、チオアミド、アゾール化合物誘導体およびそれらの塩が含まれる。アミンには、これに限定されないが、尿素および塩酸グアニジンが含まれる。アルカノールアミンには、これに限定されないが、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが含まれる。チオアミドには、これに限定されないが、チオ尿素(thourea)およびそれらの誘導体が含まれる。アゾール化合物には、これに限定されないが、チアゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピラゾールならびにそれらの誘導体および塩が含まれる。好ましくは、アゾール化合物は、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾールおよびそれらの誘導体から選択される。好ましくは、安定剤はアルカノールアミンおよびアゾール化合物である。より好ましくは、安定剤はベンゾチアゾール、それらの誘導体および塩から選択される。最も好ましくは、アゾール化合物はメルカプトベンゾチアゾール、それらの誘導体および塩から選択される。一般には、安定剤は無電解銅組成物中に、0.05ppmから1000ppmの量が含まれ、好ましくは0.1ppmから500ppmであり、より好ましくは0.1ppmから100ppmであり、さらにより好ましくは0.1ppmから50ppmであり、最も好ましくは0.1ppmから10ppmである。
【0024】
場合によっては、1種または複数の界面活性剤が無電解めっき組成物中に含まれていてもよい。従来型の界面活性剤を用いてもよい。こうした界面活性剤には、イオン性、非イオン性および両性の界面活性剤が含まれる。イオン性界面活性剤には、従来型のアニオン性およびカチオン性界面活性剤が含まれる。典型的には、界面活性剤は非イオン性である。非イオン性界面活性剤の例は、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール、20から150個の繰り返し単位を有するポリオキシエチレンポリマーおよびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマーである。界面活性剤は、従来通りの量を使用してもよい。典型的には、界面活性剤は0.5g/Lから20g/Lまたは例えば1g/Lから10g/Lの量が用いられる。
【0025】
水性無電解めっき組成物は、好ましくは銅の無電解めっき組成物であるが、銅合金を基板上に析出させるために1種または複数の合金化金属が無電解めっき組成物中に含まれ得ることが想定される。こうした合金化金属には、これに限定されないが、ニッケルおよび錫が含まれる。銅合金の例には、銅/ニッケルおよび銅/錫が含まれる。
【0026】
ニッケルイオン源には、1種または複数の従来型のニッケルの水溶性塩が含まれる。ニッケルイオン源には、これに限定されないが、硫酸ニッケルおよびハロゲン化ニッケルが含まれる。ニッケルイオン源は、無電解合金化組成物中に従来通りの量が含まれていてもよい。典型的には、ニッケルイオン源は0.5g/Lから10g/Lまたは例えば1g/Lから5g/Lの量が含まれる。
【0027】
錫イオン源には、1種または複数の従来型の錫の水溶性塩が含まれていてもよい。錫イオン源には、これに限定されないが、硫酸錫、ハロゲン化錫および有機スルホン酸錫が含まれる。錫イオン源は、無電解組成物中に従来通りの量が含まれていてもよい。典型的には、錫イオン源は0.5g/Lから10g/Lまたは例えば1g/Lから5g/Lの量が含まれる。
【0028】
水性無電解銅および銅合金組成物は、導電性および非導電性の双方の基板上に、銅または銅合金を析出させるのに用いてよい。無電解組成物は、当業者に知られている、導電性および非導電性の基板上への無電解めっきのための多くの従来型の方法で用いてよい。銅または銅合金の析出は、70℃以下の温度で行ってよい。好ましくは、めっきは室温から45℃で行われる。銅または銅合金でめっきされる基板を無電解組成物に浸すか、または基板上に無電解組成物を噴霧する。基板上に銅または銅合金を析出するために、従来のめっき時間を用いてよい。析出は、5秒から30分間で行ってよいが、めっき時間は基板上の銅または銅合金の所望の厚さにより異なり得る。銅および銅合金めっき速度は、0.1μm/15分からまたはそれより大きい範囲でよく、典型的には0.1μm/15分から1μm/15分、より典型的には0.2μm/15分から0.5μm/15分である。
【0029】
基板には、これに限定されないが、プリント基板が含まれる。こうしたプリント基板には、金属クラッド板、ならびにグラスファイバーなどのファイバーを含めた、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂およびそれらの組み合わせを用いたアンクラッド板、ならびに含浸させた前述の実施形態が含まれる。
【0030】
熱可塑性樹脂には、これに限定されないが、アセタール樹脂、例えばアクリル酸メチルなどのアクリル、例えば酢酸エチル、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロースおよび硝酸セルロースなどのセルロース樹脂、ポリエーテル、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、例えばアクリロニトリルスチレンおよびそのコポリマーおよびアクリロニトリル−ブタジエンスチレンコポリマーなどのスチレンブレンド、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレンならびに例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルブチラール、塩化ビニル、塩化酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニリデンおよびビニルホルマールなどのビニルポリマーおよびコポリマーが含まれる。
【0031】
熱硬化性樹脂には、これに限定されないが、フタル酸アリル、フラン、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒドおよびフェノール−フルフラールのコポリマー、単独のもしくはブタジエンと化合したアクリロニトリルコポリマーまたはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリアクリル酸エステル、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、アリル樹脂、フタル酸グリセリン樹脂ならびにポリエステルが含まれる。
【0032】
水性無電解銅および銅合金組成物は、Tgが低い樹脂および高い樹脂の両方をめっきするのに用いてよい。低Tg樹脂のTgは160℃より低く、高Tg樹脂のTgは160℃以上である。典型的には、高Tg樹脂のTgは160℃から280℃または例えば170℃から240℃である。高Tgのポリマー樹脂には、これに限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリテトラフルオロエチレンブレンドが含まれる。こうしたブレンドには、例えば、PTFEと酸化ポリフェニレン(polypheneylene oxide)およびシアン酸エステルとのブレンドが含まれる。高Tgの樹脂を含むポリマー樹脂の他の種類には、これに限定されないが、二官能エポキシ樹脂および多官能エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビスマレイミド(bimaleimide)/トリアジンおよびエポキシ樹脂(BTエポキシ)、エポキシ/酸化ポリフェニレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート(PC)、酸化ポリフェニレン(PPO)、ポリフェニレンエーテル(polypheneylene ether)(PPE)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリアミド、テレフタル酸ポリエチレン(PET)およびテレフタル酸ポリブチレン(PBT)などのポリエステル、ポリエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、エポキシおよびそれらの複合物が含まれる。
【0033】
水性無電解組成物は、プリント基板のスルーホールまたはビアの壁面上に銅または銅合金を析出させるためにも用いてよい。無電解組成物は、プリント基板製造の水平プロセスおよび垂直プロセスの両方に用いてよい。銅および銅合金めっきのためのスルーホールを作成するには従来の方法を用いてよい。
【0034】
スルーホールは、ドリル穿孔もしくは打ち抜きまたは当業者に知られている任意の他の方法によってプリント基板内に形成される。スルーホールの形成後、基板を水および従来の有機溶液で洗い流して清浄にし、油脂を除去した後にスルーホール壁面をデスミアする。典型的には、スルーホールのデスミアは、溶剤膨潤剤の適用から始める。
【0035】
任意の従来型の溶媒膨潤剤をスルーホールのデスミアに用いてよい。溶媒膨潤剤には、これに限定されないが、グリコールエーテルおよび関連する酢酸エーテルが含まれる。こうした溶媒膨潤剤は、当業者によく知られている。市販されている溶媒膨潤剤には、これに限定されないが、マサチューセッツ州マールバラのDow Advanced Materials社から入手可能なCIRCUPOSIT(商標) HOLE PREP 3303、CIRCUPOSIT(商標) HOLE PREP 4120およびCIRCUPOSIT(商標) HOLE PREP 211製剤が含まれる。
【0036】
場合によっては、スルーホールを水で洗い流す。次にスルーホールに促進剤を適用してもよい。従来型の促進剤を用いてもよい。こうした促進剤には、硫酸、クロム酸またはアルカリ性過マンガン酸塩が含まれる。典型的には、促進剤としてアルカリ性過マンガン酸塩が用いられる。市販されている促進剤の例は、マサチューセッツ州マールバラのDow Advanced Materials社製のCIRCUPOSIT(商標) PROMOTER 4130製剤およびCIRCUPOSIT(商標) 213A−1製剤である。
【0037】
場合によっては、スルーホールを水で再び洗い流す。次いで促進剤によって残されるあらゆる残留物を中和するために、スルーホールに中和剤を適用してもよい。従来型の中和剤を用いてもよい。典型的には、中和剤は1種または複数のアミンを含む酸性水溶液または3wt%の過酸化物溶液および3wt%の硫酸溶液である。市販されている中和剤の例は、CIRCUPOSIT(商標) NEUTRALIZER 216−5製剤である。場合によっては、スルーホールを水で洗い流してプリント基板を乾燥させる。
【0038】
デスミア後に酸性またはアルカリ性の調整剤をスルーホールに適用してもよい。従来型の調整剤を用いてよい。こうした調整剤には、1種または複数のカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、錯化剤およびpH調整剤または緩衝剤が含まれていてもよい。市販されている酸性調整剤には、これに限定されないが、マサチューセッツ州マールバラのDow Advanced Materials社から入手可能なCIRCUPOSIT(商標) CONDITIONER 3320およびCIRCUPOSIT(商標) CONDITIONER 3328製剤が含まれる。アルカリ性調整剤には、これに限定されないが、1種または複数の第4級アミンおよびポリアミンを含有するアルカリ性界面活性剤水溶液が含まれる。市販されているアルカリ性界面活性剤には、これに限定されないが、同じくDow Advanced Materials社から入手可能なCIRCUPOSIT(商標) CONDITIONER 231、3325および3327製剤が含まれる。場合によっては、調整後に水でスルーホールを洗い流す。
【0039】
典型的には、調整後にスルーホールをマイクロエッチングする。従来型のマイクロエッチング組成物を用いてよい。マイクロエッチングは、内層および表面などの露出させた銅の上に銅微小粗面を提供し、その後に析出した無電解めっきおよび電気めっきの密着性を高めることを目的とするものである。マイクロエッチング剤には、これに限定されないが、60g/Lから120g/Lの過硫酸ナトリウム、オキシ一過硫酸カリウムまたはオキシ一過硫酸ナトリウムおよび硫酸(2%)の混合物、あるいは一般的な硫酸/過酸化水素が含まれる。市販されているマイクロエッチング組成物の例には、Dow Advanced Materials社から入手可能なCIRCUPOSIT(商標) MICROETCH 3330製剤が含まれる。場合によっては、スルーホールを水で洗い流す。
【0040】
次にマイクロエッチングしたスルーホールに従来型のプレディップ剤を適用してもよい。市販されているプレディップ剤は、Dow Advanced Materials社から入手可能なCATAPOSIT(商標) 404製剤である。場合によっては、スルーホールを冷水で洗い流す。
【0041】
次にスルーホールに触媒を適用してもよい。任意の従来型の触媒を用いてよい。触媒の選択は、スルーホールの壁面上に析出させる金属の種類に依存する。典型的には、触媒は貴金属および非貴金属のコロイドである。こうした触媒は、当業者によく知られており、多くが市販されているかまたは文献から調製し得る。非貴金属触媒の例には、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、錫および鉄が含まれる。典型的には、貴金属触媒が用いられる。貴金属コロイド触媒には、例えば、金、銀、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウムおよびオスミウムが含まれる。より典型的には、銀、プラチナ、金およびパラジウムの貴金属触媒が用いられる。最も典型的には、銀およびパラジウムが用いられる。市販されている触媒は、Dow Advanced Materials社から入手可能なCATAPOSIT(商標) 44パラジウム/錫触媒である。スルーホールは、場合によっては触媒の適用後に水で洗い流してもよい。
【0042】
次にスルーホールの壁面を上述の無電解組成物を用いて銅または銅合金でめっきする。典型的には、スルーホールの壁面上に銅をめっきする。めっき時間および温度も上述である。
【0043】
銅および銅合金をスルーホールの壁面上に析出させた後、場合によってはスルーホールを水で洗い流す。場合によっては、スルーホールの壁面上に析出させた金属にさび止め組成物を適用してもよい。従来型のさび止め組成物を用いてよい。場合によっては、スルーホールを30℃を超える温度の湯洗浄で洗い流してよく、次いで基板を乾燥させてもよい。
【0044】
銅または銅合金でスルーホールをめっきした後、基板にさらなる処理を加えてもよい。さらなる処理には、基板上へのフォトイメージングおよび例えば銅、銅合金、錫および錫合金の電解金属析出などのさらなる金属析出による従来型の処理が含まれていてもよい。
【0045】
水性無電解銅組成物はホルムアルデヒドを含まないので環境に優しい。環境に優しい無電解銅めっき組成物は、保管時も銅析出時も安定である。加えて、環境に優しい無電解銅浴は、均一なピンク色で滑らかな外観を有し得り一般に高いバックライト性能を有する均一な銅析出物を提供する。無電解銅組成物はまた、商業的に受け入れられる速度で銅をめっきし、浴中の酸化銅(Cu
2O)の形成を抑制する。酸化銅は、ホルムアルデヒドを含まない従来型の無電解銅めっき溶液の多くで、高いpH範囲で容易に形成される。こうした酸化銅の形成は、無電解銅および銅合金組成物を不安定化させ、基板上への銅および銅合金の析出を阻害する。酸化銅形成の抑制によって、自己触媒的プロセスを、銅および銅合金の析出が熱力学的に好ましい高いpH範囲で運用可能にする。
【0046】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することではなく、さらに例証することを意図するものである。
【実施例】
【0047】
実施例1
寸法5cm×5cmのアンクラッドエポキシ/ガラス積層板2つはSheng Yiから提供された。それぞれの積層板を以下のように処理した:
1.それぞれの積層板の表面を3%のCIRCUPOSIT(商標) CONDITIONER 3320製剤を含有する水性浴に40℃で5分間浸漬した。
2.次いでそれぞれの積層板を22℃で4分間冷水で洗い流した。
3.次いでそれぞれの積層板にCATAPOSIT(商標) 404プレディップ剤を室温で1分間適用した。
4.次いで積層板を、無電解銅金属被覆用の2%のCATAPOSIT(商標) 44およびCATAPOSIT(商標) 404パラジウム/錫触媒浴を用いて40℃で5分間活性化した。
5.次いで積層板を冷水で2分間洗い流した。
6.次いでそれぞれの積層板を、次表の配合の水性無電解銅めっき組成物に浸漬した。
【表1】
7.1つの積層板は空気撹拌しながら32℃で15分間銅めっきし、もう1つの積層板は空気撹拌せずに室温で15分間銅めっきした。銅析出中に、酸化銅赤色沈殿物はどちらの溶液にも観察されなかった。浴は安定しているように見えた。
8.次いで銅めっきされたそれぞれの積層板を冷水で2分間洗い流した。
9.次いで銅めっきされたそれぞれの積層板を脱イオン水で1分間洗い流した。
10.次いで銅めっきされたそれぞれの積層板を従来型の実験用対流式オーブン内に置き、100℃で15分間乾燥させた。
11.乾燥後、銅めっきされたそれぞれの積層板を従来型の実験用デシケーター内に25分間または室温に冷えるまで置いた。
12.乾燥後、銅析出物の質について銅めっきされたそれぞれの積層板を観察した。それぞれの積層板は、サーモンピンク色の銅析出物を有した。
13.次いでpH10の塩化アンモニウム緩衝剤および3%の過酸化水素溶液内に浸漬することでそれぞれの積層板から銅析出物をエッチングした。得られた明青色の銅(II)溶液を回収した。
14.銅(II)溶液に5%PAN指示薬を数滴加え、次いで0.05Mエチレンジアミン四酢酸溶液で滴定した。加えた0.05Mエチレンジアミン四酢酸溶液の体積(mL)を記録した。
15.銅析出速度は、以下の式で計算した:
[(0.05M)(VmL)(10
−3)(63.546g/モル)](10
4)(1/8.94g/cm
3)(1/2Scm
2)、単位はμm/(めっき時間)
(式中、V=0.05Mエチレンジアミン四酢酸の体積、銅の分子量は63.546g/モル、銅の密度は8.94g/cm
3、S=積層板の表面積(cm
2)であり5cm×5cm、10
−3はLからmLへの変換係数および10
4はcmからμmへの変換係数である。)32℃での積層板のめっき速度は0.17μm/15分、室温での積層板のめっき速度は0.18μm/15分であった。それぞれの浴のめっき速度は、実質的に同じであった。
【0048】
実施例2
複数のスルーホールを有し、寸法が2cmx3.2cmであるエポキシ/ガラス積層板を5つ用意した。それぞれの積層板を以下のように無電解銅めっき用に調製した:
1.それぞれのスルーホール積層板の表面を、11.5%のCUPOSIT(商標) Z膨潤剤および12.5%のCIRCUPOSIT(商標) HOLE PREP 211製剤の水性浴に75℃で5分間浸漬した。次いでそれぞれの積層板を22℃で3分間冷水で洗い流した。
2.次いで15%のCUPOSIT(商標) Zおよび10%のCIRCUPOSIT(商標) 213A−1酸化剤をそれぞれのスルーホール積層板に80℃で10分間適用した。次いで酸化されたそれぞれの積層板を22℃で3分間冷水で洗い流した。
3.酸化されたスルーホール積層板を5%のCIRCUPOSIT(商標) NEUTRALIZER 216−5水性中和剤中で40℃で5分間洗い流した。次いで中和されたスルーホール積層板を室温で3分間冷水で洗い流した。
4.それぞれのスルーホール積層板の表面を3%のCIRCUPOSIT(商標) CONDITIONER 3320水性浴に40℃で5分間浸漬した。処理した積層板を22℃で4分間冷水で洗い流した。
5.それぞれのスルーホール積層板を、2%の硫酸および濃度100g/Lの過硫酸ナトリウムを含有する酸性マイクロエッチ浴に1分間浸し、次いで22℃で3分間冷水で洗い流した。
6.次いでそれぞれの積層板にCATAPOSIT(商標) 404プレディップ剤を室温で1分間適用した。
7.次いで積層板を、無電解銅金属被覆用の2%のCATAPOSIT(商標) 44およびCATAPOSIT(商標) 404触媒浴を用いて40℃で5分間下塗りした。次いで積層板を冷水で2分間洗い流した。
8.次いでそれぞれのスルーホール積層板を、下表2に記載の無電解銅めっき組成物の1つに浸漬した。
【表2】
9.銅析出は32℃で15分間行った。銅析出中にCu
2Oの赤色沈殿は観察されなかった。次いで銅めっきされたそれぞれの積層板を冷水で2分間洗い流した。
【0049】
上記の実施例1に記載の方法を用いて、各配合のめっき速度を決定した。配合1〜5の銅めっき速度は、それぞれ0.29μm/15分、0.32μm/15分、0.29μm/15分、0.25μm/15分および0.42μm/15分であった。配合3および4の銅でめっきされた積層板は、暗色の銅析出物を有したが、配合1、2および5でめっきされた銅析出物は、サーモンピンク色の銅析出物を有した。
【0050】
実施例3
複数のスルーホールを有し、寸法が2cmx3.2cmであるエポキシ/ガラス積層板を2つ用意した。下表3に記載されている成分から無電解銅の配合が構成されることを除いて、上記実施例2に記載のように無電解銅めっき用にそれぞれの積層板を調製した。
【表3】
【0051】
銅めっき中、配合6はいくぶん不安定性を示して沈着(plate−out)したものの、積層板上の銅析出物はサーモンピンク色であった。めっき速度は0.31μm/15分になると算出した。配合7の安定性は配合6よりもよく、積層板上にやはりサーモンピンク色の銅析出物を生成した。めっき速度は0.43μm/15分になると算出した。
【0052】
次いでそれぞれの積層板を横に切断し、スルーホールの銅めっきされた壁面を露出させた。従来の欧州バックライト等級スケール(European Backlight Grading Scale)を用いてスルーホールの壁面の被覆率を決定するために、それぞれの積層板の切断されたスルーホールの壁面から厚さ1mmの多重側面切片を採取した。1mmの切片を、従来型の50倍率の光学顕微鏡で調べた。銅析出物の質を、顕微鏡で観察される光量により決定した。切片から光が観察されない場合は、その切片は完全に黒色であり、バックライトスケールは5と格付けした。暗色領域が無く光が切片全体を通過する場合は、壁面上に銅金属析出物が全く無いかそれに近いことを示し、その切片は0と格付けした。切片が一部の暗色領域ならびに明色領域を有する場合は、0と5の間に格付けした。配合6でめっきされた切片の平均バックライト値は2.5であり、配合7でめっきした切片の平均的バックライト値は3であった。この結果は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムと共にロッシェル塩および二塩基性酒石酸カリウムを含有する無電解銅の配合は、プリント基板の無電解銅めっき用に有望であることを示した。
【0053】
実施例4
複数のスルーホールを有し、寸法が2cmx3.2cmであるエポキシ/ガラス積層板を1つ用意した。下表4に記載されている成分から無電解銅の配合が構成されることを除いて、上記実施例2に記載のように無電解銅めっき用に積層板を調製した。
【表4】
【0054】
銅めっきを32℃で15分間で行った。沈着は見られず浴は安定しているように見えた。積層板上の銅析出物はサーモンピンク色であった。めっき速度は0.4μm/15分になると算出した。
【0055】
次いで積層板を横に切断し、スルーホールの銅めっきされた壁面を露出させた。従来の欧州バックライト等級スケールを用いてスルーホールの壁面の被覆率を決定するために、切断されたスルーホールの壁面から厚さ1mmの多重側面切片を採取した。1mmの切片を、従来型の50倍率の光学顕微鏡で調べた。銅析出物の質を、顕微鏡で観察される光量により決定した。表4の配合でめっきした切片の平均バックライト値は5点中3.5点であった。実施例3の配合6および7と比較した結果、塩酸グアニジンの追加によりめっき浴の安定性およびバックライトの両方が改善された。
【0056】
実施例5
塩酸グアニジンを3ppmのトリエタノールアミンに置き換えたことを除き、実施例4の方法を繰り返した。めっき速度は0.37μm/15分になると算出した。沈着が多少見られたが、銅析出物はサーモンピンク色であり、平均バックライト値は5点中4.5点であった。トリエタノールアミンの追加が、サーモンピンク色の銅析出物を提供すると同時にバックライト性能における追加的改善を提供した。
【0057】
実施例6
塩酸グアニジンを0.2ppmの2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウムに置き換えたことを除き、実施例4の方法を繰り返した。めっき速度は、0.31μm/15分になると算出した。銅析出物は濁った赤色(dirty−red)の外観であったが、平均バックライト値は5点中4点であると測定された。銅析出物はサーモンピンク色とは対照的に濁った赤色であったが、バックライト値は上述の実施例3の配合6および7ならびに実施例4の表4により生成されたものに比べて改善した。