(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Si:0.7〜1.5mass%、Fe:0.4〜1.2mass%、Mn:0.5〜1.8mass%、Zn:0.5〜3.0mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、
ろう付加熱前において、0.01μm以上0.15μm未満の円相当径を有する金属間化合物密度(d1)が5.0×104個/mm2以上であり、0.15〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度(d2)が5.0×104〜3.0×107個/mm2であり、d1/d2が0.30以上であり、固相線温度が610℃以上で有り、
ろう付加熱後において、0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度(d3)が5.0×104個/mm2以上であり、Si固溶量が0.30〜0.80mass%であり、
ろう付加熱後において、室温における引張強度が130MPa以上であり、120℃における引張強度が90MPa以上であり、480時間のSWAAT後の引張強度をTS1(MPa)とし、SWAAT前の引張強度をTS0(MPa)とした場合のTS1/TS0が0.40以上であり、自然電位が−720mV以下であることを特徴とするろう付加熱後の室温強度、高温強度及び耐食性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
前記連続鋳造圧延工程と、圧延鋳塊を高温焼鈍する前記高温焼鈍段階と、前記最終冷間圧延段階の前工程としての冷間圧延段階であって、高温焼鈍した圧延鋳塊を冷間圧延する前記冷間圧延段階と、冷間圧延板を低温焼鈍する前記低温焼鈍段階と、低温焼鈍した圧延板を冷間圧延する前記最終冷間圧延段階とを含む、請求項2に記載のろう付加熱後の室温強度、高温強度及び耐食性に優れる熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金は軽量で強度に優れ、更には熱伝導率に優れることから熱交換器用材料、例えばラジエータ、ヒーターコア、コンデンサ、インタークーラ等に好適に用いられている。
【0003】
このような熱交換器は、従来、例えばコルゲート成形によって波状に成形されたアルミニウム合金のフィンを他の部材とろう付接合して組み立てられる。アルミニウム合金フィン材としては、熱伝導性に優れるJIS1050合金等の純アルミニウム系合金や、強度及び耐座屈性に優れるJIS3003合金等のAl−Mn系合金が一般的に用いられてきた。また、フィン材を電気化学的に卑な電位にすることで犠牲陽極効果によりフィン材を優先腐食させることで、熱交換器のチューブを防食する技術も一般的に使用されている。
【0004】
ところで、近年は熱交換器に対して軽量化、小型化及び高性能化の要求が高まってきている。これに伴い、アルミニウム合金フィン材についても薄肉であることが要求されている。このような薄肉化を実現するには、ろう付加熱後の室温強度、熱伝導性及び耐食性等の特性の向上が強く望まれている。
【0005】
近年では、従来よりも高温高圧環境下で熱交換器が使用される場合が増えてきた。例えば、エンジンを冷却するラジエータの場合を例に挙げる。高いエンジン出力を得ようとすると、エンジンからの発熱量が多くなる。これを冷却するために、エンジンを冷却する冷媒が高圧で流通される。そうすると、ラジエータに高温、高圧の冷媒が流れ込み、ラジエータにかかる負荷が大きくなり、ラジエータの破損に至る場合が増加する。このため、チューブ材の高強度化のみならず、フィン材の高強度化よる熱交換器の耐久性向上が望まれている。この場合、熱伝導性等の一般的な特性に加えて、高温強度及び耐食性を確保する必要がある。
【0006】
アルミニウム合金フィン材は、一般的に半連続鋳造(DC)法で製造され、JIS1100、JIS3003などの規格合金では、ろう付加熱後の室温強度に劣るため、熱交換器の十分な耐久性を確保できない。
【0007】
特許文献1には、半連続鋳造法で鋳造し、Niを合金成分に加えることにより優れたろう付加熱後の強度と耐食性を有する熱交換器用アルミニウム合金フィン材が提案されている。しかしながら、Niを含有する化合物はマトリクスとの電位差が大きく、腐食の基点となり易い。このように、Ni含有合金は自己耐食性が低く、実用上不十分である。また、半連続鋳造法では鋳造中に生成する化合物のサイズが連続鋳造圧延法と比較して大きく、腐食の起点となる化合物が多く腐食が進行し易いことから、自己耐食性に劣る。
【0008】
ろう付加熱後の室温強度を向上させるために、連続鋳造法(CC法)でアルミニウム合金フィン材が製造される場合もある。特許文献2には、連続鋳造圧延法により鋳造し、1回目の焼鈍を450〜600℃の温度で1〜10時間行う最終板厚0.1mm以下の耐エロージョン性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金材の製造方法が提案されている。しかしながら、中間焼鈍が高温で行われるため、焼鈍時に化合物が粗大化してその分布が疎になるため、ろう付加熱後の室温強度が低下する。また、ろう付け加熱後の結晶粒径が微細になることが予想され、ろう付性を確保できない虞がある。より最適化された製造条件及び金属組織を有するアルミニウム合金が要望されている。
【0009】
特許文献3には、フィン材に析出している金属間化合物の90%以上のサイズが最大値で5μm以下の金属組織に制御された、ろう付加熱後の室温強度に優れたアルミニウム合金フィン材が提案されている。しかしながら、後述するように金属間化合物による分散強化は、ろう付加熱後の高温強度の向上への寄与度が固溶強化よりも少ないことから、この特許文献のフィン材は、十分なろう付加熱後高温強度を有しているとは言えず、熱交換器の高温耐久性に劣る。
【0010】
特許文献4には、Mn及びZrを添加してろう付加熱後の高温強度を向上させろう付加熱後の金属組織を粗大結晶粒とすることで、耐垂下性を向上させたアルミニウム合金フィン材が提案されている。しかしながら、特許文献4では100℃近傍での高温強度の向上に有効なSi添加が検討されておらず、実車環境におけるフィン材の高温強度が不十分であった。また、Zrを添加しているために、ろう付加熱後の導電率が低い。導電率が低いと熱伝導性が低くなるために、熱交換率が低下し十分な熱交換性能を発揮できない。
【0011】
特許文献5には、ろう付加熱後の板厚中央部のSi固溶量を0.7%以下に規制することで優れた耐食性を有する熱交換器用アルミニウム合金フィン材を得ることが提案されている。しかしながら、後述するように固溶Siは高温強度を向上させるため、Si固溶量を0.7%以下に規定したのでは十分な高温強度が得られない。また、ろう付加熱前の分散粒子の密度が規定されていないため、ろう付加熱後における優れた室温強度、高温強度及び耐食性を両立出来ない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0023】
(1)合金組成の限定理由
Si:0.7〜1.5mass%
Siは,ろう付加熱後における室温強度及び高温強度を確保するために必須の元素である。Siは同時に添加されるFe、Mnと共に、Al−Fe(−Si)系金属間化合物及びAl−Mn−Si(−Fe)系金属間化合物を形成して、分散強化に寄与し材料強度(特にろう付加熱後の室温強度)を向上させる。また、一部のSiはろう付加熱により材料中に固溶し、固溶強化によりろう付加熱後における室温強度及び高温強度を向上させる。Si添加により形成されるAl−Mn−Si(−Fe)系化合物はろう付加熱後に粒界に析出し、その析出量が多いと粒界腐食を引き起こす。Si含有量が0.7mass%(以下、単に「%」と記す)未満では、上記の効果を十分に得ることが出来ず、ろう付加熱後における十分な室温強度及び高温強度を得ることが出来ない。一方で、Si含有量が1.5%を超えると、材料の固相線温度が大きく低下するために、ろう付加熱時に材料が溶融し、ろう付不良が起き易くなる。更に、Al−Mn−Si(−Fe)系化合物の粒界への析出が多くなり、特に粒界腐食が起き易くなる。
【0024】
Fe:0.4〜1.2%
Feは、ろう付加熱後における室温強度及び高温強度を確保するために必須の元素である。Feは同時に添加されるMnと共に、Al−Fe(−Si、Mn)系金属間化合物を鋳造時に形成して、分散強化に寄与し、特にろう付加熱後の室温強度を向上させる。Fe含有量が0.4%未満では、上記の効果を十分に得ることが出来ず、十分なろう付加熱後における十分な室温強度及び高温強度を得ることが出来ない。一方で、Fe含有量が1.2%を超えると、鋳造時にAl−Fe系粗大晶出物が発生するようになり、塑性変形性が低下するために圧延性が低下する。また、Al−Fe系化合物は腐食のカソードサイトとして作用し、孔食などが発生し易くなり耐食性が劣る。
【0025】
Mn:0.5〜1.8%
Mnは、ろう付加熱後における室温強度及び高温強度を確保するために必須の元素である。Mnは同時に添加されるSiと共に、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成して、分散強化に寄与し材料強度(特にろう付加熱後の室温強度)を向上させる。Mn含有量が0.5%未満では、上記の効果を十分に得ることが出来ない。一方、Mn含有量が1.8%を超えると、鋳造時にAl−Mn系粗大晶出物が発生するようになり、塑性変形性が低下するために圧延性が低下する。また、Al−Mn−Si(−Fe)系化合物の粒界への析出が多くなり、粒界腐食が起き易くなる。更に、含有量が多過ぎるとろう付加熱後のMn固溶量が増加するために、導電率が低下する。
【0026】
Zn:0.5〜3.0%
Znは材料の自然電位を卑にし、犠牲防食効果の向上に寄与する。Zn含有量が0.5%未満では上記の効果を十分得ることが出来ない。一方、Zn含有量が3.0%を超えると自己腐食速度が増大し、自己耐食性が低下する。
【0027】
また、結晶粒及びAl−Si系晶出物の微細化を目的として、Ti:0.001〜0.300%、Sr:0.0001〜0.0100%、Na:0.0001〜0.0100%、Ca:0.0001〜0.0100%を添加しても良い。さらに、結晶粒径の粗大化を目的としてZr:0.01〜0.300%を添加してもよい。上記Si、Fe、Mn、Zn、Ti、Sr、Na、Ca、Zr以外の不可避的不純物については、それぞれ単体で0.05%以下、かつ、合計で0.15%以下であることが好ましい。
【0028】
(2)アルミニウム合金フィン材の金属間化合物密度
ろう付加熱前において、0.01μm以上0.15μm未満の円相当径を有する金属間化合物密度(d1)が5×10
4個/mm
2以上であり、かつ、0.15〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度(d2)が5×10
4〜3.0×10
7個/mm
2であり、d1/d2が0.30以上であり、ろう付加熱後において、0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度(d3)が5×10
4個/mm
2以上である。ろう付加熱後における室温強度、高温強度及び耐食性を確保する上で、ろう付加熱前の金属間化合物サイズ(本発明では円相当径、具体的には投影面積円相当直径(Heywood径)で定義される)とその存在密度は最適に調整されている必要がある。
【0029】
ここで、本発明において、「ろう付加熱前」及び「ろう付加熱後」における「ろう付加熱」とは、任意のろう材を用いて、温度580〜610℃で保持時間0.5〜10分とした実際のろう付加熱処理、或いは、ろう材を用いないで実際のろう付加熱に相当する温度580〜610℃で保持時間0.5〜10分とした加熱処理を言うものとする。なお、ろう材を用いる場合も用いない場合も、加熱処理条件としては、温度600℃で保持時間を3分とするのが好ましい。また、ろう材を用いるろう付加熱処理の場合には、フラックスを用いる場合と用いない場合の両方を含む。
【0030】
金属間化合物とは、Al−Fe(−Mn)系及びAl−Mn−Si(−Fe)系化合物を意味する。Al−Fe(−Mn)系化合物は、主に鋳造中に形成され晶出物として存在し、その円相当径はおよそ0.15μm以上である場合が多い。一方で、Al−Mn−Si(−Fe)系化合物は、鋳造時、焼鈍時、ろう付加熱処理後の冷却過程でも形成され、その円相当径は5.00μm以下であり、およそ0.15μm未満である場合が多い。
【0031】
(2)−1 ろう付加熱前において、0.01μm以上0.15μm未満の円相当径を有する金属間化合物密度(d1)を5.0×10
4個/mm
2以上に規定すること
ろう付加熱後における高温強度の向上は固溶強化に依存する部分が大きく、ろう付加熱後において一定以上の元素固溶量を確保することが必要である。ろう付加熱前において0.15μm未満の円相当径を有する金属間化合物(特にAl−Mn−Si(−Fe)系化合物)は、ろう付加熱時に材料中に固溶し易く、高温強度の向上に寄与する。本発明者らは、0.01μm以上0.15μm未満の円相当径を有する金属間化合物密度が5.0×10
4個/mm
2未満の場合には、固溶量が不足してろう付加熱後における十分な高温強度を確保することが出来ないことを見出した。
【0032】
なお、0.15μm以上の円相当径を有する上述の金属間化合物には上記効果が小さい。また、0.01μm未満の円相当径を有する上述の金属間化合物は極めて微細で密度測定が困難であるために、0.01μm未満の円相当径を有するものは対象外とした。ここで、上記金属間化合物密度が高いほどろう付加熱後の固溶量が増加しやすく、高温TSが向上しやすい。したがって、上記金属間化合物密度の上限は特に限定しない。
【0033】
(2)−2 ろう付加熱前において、0.15〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度(d2)を5.0×10
4〜3.0×10
7個/mm
2に規定すること
0.15〜5.00μmの円相当径の金属間化合物(特にAl−Fe(−Mn)系化合物)は、ろう付加熱時においてその固溶量が少なく分散強化に寄与するため、分散密度が高いほどろう付加熱後の室温強度が高くなる。一方、当該サイズの金属間化合物は、ろう付加熱後の冷却中に固溶元素を取り込み材料中の固溶量を低下させるため、ろう付加熱後の高温強度を確保するためには一定以下の金属間化合物密度に制御する必要がある。本発明者らは、5.0×10
4個/mm
2未満ではこの金属間化合物密度が小さいため分散強化が低減してろう付加熱後の室温強度が低下し、その一方で、この密度が3.0×10
7個/mm
2を超えると金属間化合物による固溶元素の取り込みが多くなり、ろう付加熱後の高温強度が低下することを見出した。
【0034】
なお、5.00μmを超える円相当径を有する場合、実質的にほとんどの晶出物が粗大であり、金属間化合物密度が低下して十分な分散強化を得られずに、室温強度が低下する。
【0035】
(2)−3 ろう付加熱後において、0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度(d3)を5.0×10
4個/mm
2以上に規定すること
ろう付加熱後において0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物(特にAl−Fe(−Mn)系化合物)の密度は、5.0×10
4個/mm
2以上とする必要がある。この金属間化合物密度が5.0×10
4個/mm
2未満の場合には、ろう付加熱後の室温強度を十分に確保することが出来ない。ここで、5.00μmを超える円相当径を有する場合、実質的にほとんどの晶出物が粗大なため金属間化合物密度が5.0×10
4個/mm
2未満となり、ろう付加熱後の室温強度を十分に確保することが出来ない。また、0.01μm未満の円相当径を有する上述の金属間化合物は極めて微細で密度測定が困難であるために、0.01μm未満の円相当径を有するものは対象外とした。なお、上記金属間化合物密度が高いほどろう付加熱後の分散強化による強化が増加し、室温TSが向上しやすい。したがって、上記金属間化合物密度の上限は特に限定しない。
【0036】
(2)−4 d1(0.01μm以上0.15μm未満の円相当径を有する金属間化合物密度)/d2(0.15〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度)を0.30以上に規定すること
d1/d2が0.30未満では材料に固溶する金属間化合物の量に対して、固溶元素を取り込む金属間化合物の量が多過ぎて固溶元素量が低下するために、ろう付加熱後における十分な高温強度を確保することが出来ない。なお、d1/d2の上限は特に限定するものではない。
【0037】
(3)ろう付加熱後におけるSi固溶量を0.30〜0.80%に規定すること
高温強度の向上には、固溶強化が有効である。化合物による分散強化の強度向上への寄与は少ないと考えられる。その原因は、高温環境下では転位の移動が容易であり、分散粒子は転位の移動の障害になり難いためと考えられる。そこで,固溶強化を図るため、一定以上の固溶量を確保することが必要になる。100℃付近におけるSiの拡散速度と転位の移動速度は同程度であり、Siの拡散が転位の移動を阻害し易いため高温強度の向上に有効である。Si固溶量が0.30%以上であれば高温のTSを十分に確保することができる。一方、0.30%未満では高温の引張強度(TS)を十分に確保することが出来ない。Si固溶量が0.80%を超えると粒界へのAl−Mn−Si(−Fe)系化合物の析出が多くなるために、粒界腐食が起き易くなる。
【0038】
(4)引張強度
本発明では、アルミニウム合金フィン材の種々の条件下での引張強度(TS)を以下のように規定する。
【0039】
(4)−1 ろう付加熱後における室温でのTSを130MPa以上に規定すること
熱交換器の室温における耐久性を確保するために、ろう付加熱後における室温TSは高いことが望ましい。そのためには、ろう付加熱後における室温でのTSを130MPa以上とするのが好ましい。130MPa未満では熱交換器の耐久性が低下し、実用的に十分な耐久性が得られない。本発明においては、25℃を室温とする。なお、ろう付加熱後における室温でのTSが高いほど、室温でのコア耐久性が向上しやすい。したがって、室温TSの上限は特に限定しない。
【0040】
(4)−2 ろう付加熱後における120℃でのTSを90MPa以上に規定すること
上記のように、高温環境下で熱交換器が使用されるケースが増加している。高温環境下とは約100℃前後であり、従来と比較して高温である。そこで、100℃よりも高温である120℃でのTSが90MPa以上であれば、熱交換器の十分な高温耐久性が得られる。120℃でのTSが90MPa未満では十分な高温耐久性を得ることが出来ない。なお、ろう付加熱後における120℃でのTSが高いほど、120℃でのコア耐久性が向上しやすい。したがって、120℃TSの上限は特に限定しない。
【0041】
(4)−3 ろう付加熱後において、480時間のSWAAT後のTS(TS1<MPa>)/(SWAAT前のTS(TS0<MPa>)を0.40以上に規定すること
熱交換器は腐食環境下で使用され、フィンの腐食が進行すると熱交換器コアの耐久性が低下する。フィンは優れた耐食性を有していることが望ましい。そこで、TS1(MPa)/TS0(MPa)を0.40以上とすることにより、フィンは実用上十分な耐食性を有し、腐食環境下でも熱交換の耐久性を十分に確保することができる。なお、TS1(MPa)/TS0(MPa)が高いほど耐食性に優れているので、TS1(MPa)/TS0(MPa)の上限は特に限定しない。
【0042】
(5)製造方法
以下に、本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法について説明する。なお、この製造方法は一実施態様を示すものであり、本発明のアルミニウム合金フィン材の製造方法を限定するものではない。
【0043】
まず、製造方法の全体的な工程の流れについて説明する。最初にAl地金、Al母合金を溶解炉で溶解し成分の調整を行う。その後、連続鋳造圧延法により鋳造を行う。連続鋳造圧延方法としては、双ロール式、ベルト方式などが用いられる。次に、得られた鋳塊に焼鈍と冷間圧延をそれぞれ2回以上行なって、最終製品である板状のフィン材とする。
【0044】
(5)−1 鋳造工程
本発明の合金は、連続鋳造圧延法(CC法)により鋳造とされることを特徴としている。CC法で鋳造する場合は、鋳造時の冷却速度(約100〜1000℃/秒)が非常に大きい。そのため、一般的な半連続鋳造法(DC法)(冷却速度約10〜100℃/秒)に比べて、添加されたSi、Fe、Mnによって形成されるAl−Fe(−Mn)系及びAl−Mn−Si(−Fe)系の金属間化合物が微細、かつ密に分散する。その結果、分散強化が大きく、ろう付加熱後の室温強度の向上に大きく寄与する。また、上記金属間化合物が微細、かつ密に分散するために、鋳造時に固溶したSi、Fe、Mnが金属間化合物に取り込まれ易い。このため、導電率の向上が図られる。従って、CC法で鋳造されたアルミニウム合金は、DC法で鋳造されたものよりも強度及び熱伝導性に優れる。また、CC法は金属間化合物が微細に分散するために、フィン材をコルゲート成形する際の型磨耗が少なく、経済的という利点もある。本発明では、CC法における鋳造時の冷却速度を15〜1000℃/秒とするのが好ましい。
【0045】
CC法の鋳造は一般的に、溶湯温度を680〜800℃に保持することが好ましい。溶湯温度は、給湯ノズル直前にあるヘッドボックスの温度である。溶湯温度が680℃未満では、鋳造中に粗大晶出物が形成し易く材料の塑性変形性が低下する場合がある。その結果、後の冷間圧延工程中に板が破断する虞がある。一方、溶湯温度が800℃を超えると、鋳造中に溶湯が凝固せず板状鋳塊を得ることが出来ない場合がある。
【0046】
(5)−2 焼鈍工程(高温焼鈍段階)
次に、鋳造された鋳塊は焼鈍工程にかけられる。焼鈍工程は、高温焼鈍段階と低温焼鈍段階とを含む。高温焼鈍段階の条件は、450〜560℃で1〜10時間である。この高温焼鈍工程は、後述の低温焼鈍段階の前工程で行われる。この高温焼鈍工程により材料中の金属間化合物のサイズ及び密度、ならびに、添加元素の固溶量を最適に調整することが出来る。
【0047】
高温焼鈍温度が450℃未満では、材料中に分散する金属間化合物が微細、かつ密に析出するために、分散強化が大きくなる。このことは、ろう付加熱後の室温強度を高くするためには有利であるが、分散粒子による強化は高温環境化においては大きな寄与を発揮せず、またろう付加熱時において材料中の固溶量を減少させるために、高温強度を得るには不利になる。一方、高温焼鈍温度が560℃を超えると金属間化合物が疎に析出する。固溶元素を取り込み難く、材料中の固溶量が低下し難いためにろう付加熱後における高温強度を高く維持できるが、分散強化が低下するためにろう付加熱後における室温強度が低下する。従って、450〜560℃で高温焼鈍することにより、ろう付加熱後における室温強度と高温強度の両立が可能になる。また、1時間未満の焼鈍では上記の効果が十分ではなく、10時間を超える焼鈍を行っても、上記効果が飽和して更なる向上が得られないために経済的に不利になる。
【0048】
(5)−3 焼鈍工程(低温焼鈍段階)
後述の最終冷間圧延段階の直前に、1回以上の低温焼鈍段階が設けられる。この低温焼鈍段階は、材料を軟化させて最終冷間圧延段階で所望の材料強度を得るために行われる。この低温焼鈍の条件は、200〜450℃で1〜10時間である。焼鈍温度が250℃未満では材料の軟化が十分に起こらずに、最終冷間圧延における強度の調整が困難となる。一方、450℃を超えた温度で焼鈍を行うと、製造工程中の材料への入熱量が多くなり過ぎるために、金属間化合物が粗大、かつ疎に分布し分散強化が小さくなる。その結果、ろう付加熱後の室温強度の低下を招く。また、1時間未満の焼鈍温度では上記の効果が十分ではなく、10時間を超える焼鈍時間では上記の効果が飽和して更なる向上がえられないため、経済的に不利となる。
【0049】
(5)−4 冷間圧延工程
鋳造工程後において、2回以上の冷間圧延段階が設けられる。製造工程の最後に行う冷間圧延は最終冷間圧延段階であり、それまでに、1回以上の冷間圧延段階が設けられる。最終冷間圧延段階以前の冷間圧延段階は、最終冷間圧延段階で所望の最終板厚を得るために行われ、常法に従い冷間圧延を行えばよい。
【0050】
最終冷間圧延段階は、ろう付加熱前における所望の強度を得るために行なわれる。最終冷間圧延段階における圧延率(最終圧延率)は、10〜50%である。この圧延率が10%未満の場合には、ろう付加熱時における再結晶化が十分に完了しなかった亜結晶を起点としてろう材が侵入し、エロージョンが強く発生する。このエロージョンの発生によりフィン材の強度が低減するため、熱交換器の耐久性が低下する。一方、最終圧延率が50%を超えると、ろう付加熱時における再結晶化が容易に生起して再結晶粒が非常に微細になる。再結晶粒が微細になると、結晶粒界を起点としてろうが侵入する。その結果、フィンにエロージョンが強く発生する。このエロージョンの発生により、熱交換器のコア寸法が変化してしまうため、耐久性が低下する。なお、本発明においては、再結晶化が完了しないことによるフィンのエロージョン発生、ならびに、微細再結晶化によるフィンのエロージョン発生を、併せてろう拡散という。また、ろう拡散の程度をろう拡散性という。
【0051】
(5)−5 焼鈍工程と冷間圧延工程の順序
本発明に係る熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法では、鋳造工程後において、焼鈍と冷間圧延がそれぞれ2回以上行なわれる。例えば、(i)高温焼鈍段階→最初の冷間圧延段階→低温焼鈍段階→最終冷間圧延段階としてもよく、これに代えて、(ii)最初の冷間圧延段階→高温焼鈍段階→低温焼鈍段階→最終冷間圧延工程としてもよい。また、上記(i)、(ii)において、低温焼鈍段階を2回以上続けて行ってもよい。更に、上記(ii)において、高温焼鈍段階の後に最初の冷間圧延段階を再び設けてもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。表1に示す合金組成で温度720℃の溶湯を用いて、双ロール式連続鋳造圧延法により板厚6mmの板状鋳塊を得た。鋳造における冷却速度は、500℃/秒であった。次に、得られた鋳塊を高温焼鈍工程にかけた。更に、板厚0.056〜0.1mmまでの最初の冷間圧延工程にかけた。次いで、冷間圧延板を低温焼鈍工程にかけた後に、最終冷間圧延工程にかけた。高温焼鈍工程、低温焼鈍工程及び最終冷間圧延工程の条件を表2に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
このようにして得られた最終的なフィン材試料の板厚は、全て0.05mmとした。なお、本発明は、本実施例の鋳造板厚及び最終板の板厚に限定されるものではない。鋳造板厚は一般的に2〜10mm程度、最終板厚は一般的に0.03〜0.20mm程度である場合が多い。
【0056】
また、後述するコア耐久性の評価において、チューブ、サイドサポート、ヘッダー、タンクをフィン材に組み付けた材料構成を採用し、かつ、これらのフィン材以外の材料として、JIS3003の心材に全板厚の5%の割合でJIS4045ろう材をクラッドしたクラッド材を用いている。本発明は、これらの材料構成及びクラッド材に限定されるものではない。本発明に係るアルミニウム合金フィン材の実施形態として、熱交換機用材料として使用されている全ての部材との組み合わせが可能である。
【0057】
上記のようにして得られたフィン材に対して、ろう付加熱前の特性として下記(a)、(b)を測定した。また、ろう付加熱後(ろう材を用いない)のフィン特性として、下記(c)〜(f)を測定した。更に、ろう付加熱後(ろう材を用いた)の特性として、ミニコア又は熱交換器コアを作製して、ろう付評価(g)〜(j)を行った。なお、ろう付加熱条件は、ろう材を用いた場合も用いない場合も、一般的に行われている600℃で3分間とした。結果を、表3〜5に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
(a)固相線温度
固相線温度は、フィン材のろう付性の優劣を決める基準になる。固相線温度が低過ぎると、ろう付加熱時にフィン溶け及びフィン座屈が発生する。610℃以上であれば、十分な固相線温度を有する。
【0062】
(b)ろう付加熱前における金属間化合物密度の測定
FE−SEM(Field Emission−Scannning Electron Microscopy:走査電子顕微鏡)を用いてフィン材試料表面の化合物を観察し、画像解析により所定の円相当径を有する金属間化合物の密度を測定した。具体的には、倍率20000倍で20視野を観察し、2値化処理することで密度を算出した。上述のように、円相当径0.01μm未満の金属間化合物は微細過ぎるために、ノイズと区別がつき難く、2値化する際にカウントしなかった。なお、d1/d2の比率も併せて表3〜5に示す。
【0063】
(c)ろう付加熱後における室温TS
ろう付加熱後のフィン材試料を、JIS13号B引張試験片に成形し、Shimadzu製AG−20kN試験機によって室温でのTSを測定した。同じ試料から用意した3枚の試験片を用いて試験し、その算術平均値を室温でのTSとした。前述のように熱交換器の耐久性を確保するためには、室温TSが高い方が望ましい。130MPa以上であれば熱交換器の耐久性を十分に確保することが出来るので合格とし、それ未満を不合格とした。
【0064】
(d)ろう付加熱後における高温TS
室温TSと同様に、試験片を作製して120℃でのTSを測定した。更に、同様に算術平均値をもって高温(120℃)でのTSとした。前述のように熱交換器の耐久性を確保するためには、高温TSが高い方が望ましい。これが90MPa以上であれば熱交換器の耐久性を十分に確保することが出来るので合格とし、それ未満を不合格とした。
【0065】
(e)ろう付加熱後における金属間化合物密度の測定
ろう付加熱前における金属間化合物密度と同様にしてd3を測定し、2値化処理することで密度を算出した。
【0066】
(f)ろう付加熱後におけるSi固溶量
ろう付加熱後におけるフィン材のSi固溶量を算出した。具体的には、ICP(Induced Coupled Plasma)を用いて、アルミニウム合金のSi含有量を求め、次いで、フェノール溶解法によってSi系金属間化合物のSi総量を求めた。そして、前者から後者を差し引いてSi固溶量を算出した。
【0067】
(g)ろう拡散性
フィンへのろう侵食量が多いとフィンの座屈が生じるために、ろう付加熱処理後の熱交換器の寸法が設定通りにならず耐久性が低下する。そこで、フィンへのろう侵食の指標としてろう拡散性を以下のように評価した。
図1に示すように、上記のようにして作製したフィン材試料を幅16mm、山高さ5mm、山間隔3mmにコルゲート成形したフィン材2と、JIS3003の心材にクラッド率5%でJIS4045ろう材をクラッドした板厚0.5mmのブレージングシートからなるチューブ材3を組み付けて、ろう付けすることによりミニコア1を作製した。作製したミニコア1を、非腐食性フラックス量5g/m
2用いて、600℃で3分間のろう付を行った。このようにしてろう付けしたミニコア断面を光学顕微鏡によりミクロ観察して、ろう浸食の有無を観察した。ろう侵食の発生しなかったものをろう拡散性が合格「○」、ろう侵食が発生したものをろう拡散性が不合格「×」とした。合格の場合の具体例を
図4(a)に、不合格の場合の具体例を
図4(b)に示す。図中において、2、3は
図1と同じであり、10は侵食ろうを示す。
【0068】
(h)自然電位
フィンの自然電位が貴になると犠牲陽極効果が小さく、熱交換器の耐食性を確保することが出来ない。
図1に示すろう付したフィン材の自然電位が−720mV以下であれば、十分な犠牲陽極効果を有するフィン材となる。表3中において、上記自然電位が−720mV以下の場合を合格(○)とし、−720mVより貴の場合を不合格(×)とした。なお、自然電位の測定は、Ag/AgCl(s)を参照電極とし、測定溶液25℃の5%NaCl水溶液中にミニコアにろう付されたフィン部分のみを浸漬して行った。
【0069】
(i)SWAAT後のフィン残強度
図1において、フィン材試料の幅のみを20mmに変えたミニコア1を作製した。作製したミニコア1を、非腐食性フラックス量5g/m
2用いて、600℃で3分間のろう付を行った。このようにしてろう付けしたミニコア1に対し、480hのSWAAT(ASTMのG85−Aに準拠した人工海水噴霧試験)を行った。まず、SWAAT後のミニコア1に対して、チューブ3を固定してフィン2のみに引張荷重が加わる状態で引張試験を行うことで、フィンの引張強度(480時間のSWAAT後の引張強度TS1<MPa>)を測定した。一方、SWAAT前のミニコア1に対しても、同様にしてフィンの引張強度(SWAAT前の引張強度TS0<MPa>)を測定した。そして、TS1/TS0をSWAAT後のフィン残強度とし、これが0.40以上のものは十分な耐食性を有するフィンであるとして合格とし、0.40未満のものは耐食性が不十分なフィンであるとして不合格とした。
【0070】
(j)室温コア耐久性及び高温コア耐久性
図2、3に示すように、フィン材試料を幅20mm、山高さ5mm、山間隔3mmにコルゲート成形したコルゲート成形したフィン材2を作製した。次に、他の部材であるチューブ材3、ヘッダー材5、タンク材6、サイドサポート材7の作製には、JIS3003の心材にクラッド率5%のJIS4045ろう材をクラッドしたクラッド材を用いた。チューブ材3の板厚を0.2mmとし、ヘッダー材5、タンク材6及びサイドサポート材7の板厚は1.0mmとした。成形した各部材を
図2及び
図3に示すように組み付け、非腐食性フラックス量5g/m
2用いて600℃で3分間のろう付を行ない、耐久性評価用の熱交換器コア4とした。なお、
図2の8は冷媒供給口を示し、9は冷媒排出口を示す。
【0071】
コア耐久性の評価は、チューブ内を水で満たし、1Hzの周波数でチューブ内に加わる最大水圧が100kPaとなる加圧状態と無加圧状態とを繰り返す、繰り返し加圧耐久試験により行った。室温におけるコア耐久性は試験雰囲気を25℃とし、高温におけるコア耐久性は試験雰囲気を120℃とした。加圧状態と無加圧状態をそれぞれ10
5回繰り返した後に、フィンの座屈及びフィンの破断のいずれも発生しなかった場合には、実用上十分なコア耐久性を有しているとして合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0072】
表3、4の本発明例1〜43では、ろう付加熱前の固相線温度が十分に高いために良好なろう付性を有し、ろう付加熱後における室温強度が十分に高いために室温コア耐久性が十分に確保され、ろう付加熱後における高温強度が十分に高いために高温コア耐久性が十分に確保された。また、ろう付加熱後における金属間化合物密度が適切な範囲内にあり、最終圧延率が適切に設定されているためにろう拡散性が合格となり、自然電位が適切に設定されているために犠牲陽極効果に優れ、SWAAT後のフィン残強度が高いために耐食性に優れていた。
【0073】
これに対して表5に示すように、比較例44では、高温焼鈍温度が低過ぎたために、ろう付け加熱前における0.15〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物の密度が高くなり、固溶元素を多く取り込み過ぎたために、固溶Si量が減少し、ろう付加熱後高温TSが低下した。また、ろう付加熱後における高温におけるコア耐久性も不合格であった。
【0074】
比較例45では、高温焼鈍温度が高過ぎたために、ろう付加熱後における0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度が低くなり分散強化が低下したために、ろう付加熱後室温TSが低下した。また、ろう付加熱後における室温におけるコア耐久性も不合格であった。
【0075】
比較例46では、高温焼鈍時間が短過ぎ、ろう付け加熱前における0.15〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度が高くなりすぎた。その結果、固溶元素を多く取り込んだために、固溶Si量が減少しろう付加熱後高温TSが低下した。また、ろう付加熱後における高温におけるコア耐久性が不合格であった。
【0077】
比較例48では、低温焼鈍温度が高過ぎ、材料への入熱が多くなり過ぎた。ろう付加熱後における0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度が低下し、分散強化が低下したため、ろう付加熱後室温TSが低下した。また、ろう付加熱後における室温におけるコア耐久性が不合格であった。
【0081】
比較例52では、フィン材のSi含有量が少なく、d1及びd3の金属間化合物密度が低下した。また、d1の低下によりd1/d2が低下し、ろう付加熱後のSi固溶量も低下した。その結果、ろう付加熱後の室温TS及び高温TSが低下した。また、ろう付加熱後における室温及び高温におけるコア耐久性が不合格であった。
【0082】
比較例53では、Si含有量が多過ぎたために、固相線温度が大きく低下し、ろう付加熱中にフィン溶けが発生した。また、コアの寸法が正確に維持されなかったために、ろう付加熱後における室温及び高温におけるコア耐久性が不十分であった。
【0083】
比較例54では、Fe含有量が少な過ぎたために、ろう付加熱後における0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度が低下し、ろう付加熱後室温TSが低下した。また、室温におけるコア耐久性が不十分であった。
【0084】
比較例55では、Fe含有量が多過ぎたために、鋳造時に粗大晶出物が生成され、後の圧延工程にて板破断が生じて評価ができなかった。
【0085】
比較例56では、Mn含有量が少な過ぎたために、ろう付加熱後における0.01〜5.00μmの円相当径を有する金属間化合物密度が低下し、ろう付加熱後室温TSが低下した。また、室温におけるコア耐久性が不十分であった。
【0086】
比較例57では、Mn含有量が多過ぎたために、鋳造時に粗大晶出物が生成され、後の圧延工程にて板破断が生じて評価ができなかった。
【0087】
比較例58では、Zn含有量が少な過ぎたために、自然電位が貴になり、チューブ材との電位差を十分に確保することが出来なかった。犠牲防食が十分に作用せずに、チューブの腐食量が多くなり、コアとして十分な耐食性を有さない。
【0088】
比較例59では、Zn含有量が多過ぎたために、腐食速度が大きくなり、腐食減量が多いために、自己耐食性に劣った。したがって、SWAAT後におけるTS1/TS0が0.40以上を満足できなかった。
【0089】
なお、これら比較例44〜59が、いずれの請求項の比較例に該当するかを、表6に示す。
【0090】
【表6】