【実施例1】
【0025】
(実施例1の構成)
図1(a)〜(c)は、本発明の実施例1におけるDC/DCコンバータを示す構成図であり、同図(a)はDC/DCコンバータの全体の構成図、及び、同図(b)、(c)は同図(a)中のスイッチの構成図である。
【0026】
本実施例1のDC/DCコンバータは、例えば、Y−Y結線の変圧器と外付けのインダクタを用いた三相絶縁型双方向のDC/DCコンバータである。このDC/DCコンバータは、双方向変換回路である主回路50と、この主回路50の1次側の電圧及び電流を検出する1次側検出部55と、主回路50の2次側の電圧及び電流を検出する2次側検出部98と、主回路50の2次側直流電力(例えば、2次側直流電圧E2)を目標電力(例えば、2次側目標電圧)に追従制御するための制御装置100と、を備えている。
【0027】
主回路50は、1次側と2次側の間の電気的絶縁を確保しつつ、双方向に電力を転送するものであり、1次側直流電圧E1及び1次側直流電流I1が供給される一対の1次側端子51,52と、2次側直流電圧E2及び2次側直流電流I2が供給される一対の2次側端子53,54と、を有している。1次側端子51,52と2次側端子53,54との間には、1次側検出部55と、電流リップル吸収用の1次側電源フィルタ(例えば、コンデンサ)56と、1次側ブリッジ回路としての1次側フルブリッジ部60と、外付けのインダクタ部80と、Y−Y結線された三相変圧器70と、2次側ブリッジ回路としての2次側フルブリッジ部90と、電流リップル吸収用の2次側電源フィルタ(例えば、コンデンサ)97と、2次側検出部98と、が縦続接続されている。1次側フルブリッジ部60と2次側フルブリッジ部90とは、変圧器70及びインダクタ部80を中心にして左右対称構成になっている。
【0028】
1次側端子51,52には、1次側検出部55を介して、コンデンサ56と1次側フルブリッジ部60とが並列に接続されている。1次側検出部55は、1次側端子51,52間の1次側直流電圧E1を検出して1次側検出電圧e1を出力するための分圧抵抗等の電圧検出部55aと、1次側端子52に流れる1次側直流電流I1を検出して1次側検出電流i1を出力するためのシャント抵抗等の電流検出部55bと、を有している。
【0029】
1次側フルブリッジ部60は、直列に接続された1次側スイッチ61、交流端子N21及び1次側スイッチ62からなる第1のスイッチングレグと、直列に接続された1次側スイッチ63、交流端子N22及び1次側スイッチ64からなる第2のスイッチングレグと、直列に接続された1次側スイッチ65、交流端子N23及び1次側スイッチ66からなる第3のスイッチングレグと、が並列接続された三相フルブリッジ回路で構成されている。第1〜第3のスイッチングレグの3つの交流端子N21〜N23には、インダクタ部80を介して、変圧器70が接続されている。インダクタ部80は、一端が交流端子N21に接続されたインダクタ81と、一端が交流端子N22に接続されたインダクタ82と、一端が交流端子N23に接続されたインダクタ83と、により構成されている。3つのインダクタ81〜83の他端には、変圧器70が接続されている。
【0030】
変圧器70は、u相の1次巻線71a、v相の1次巻線71b、w相の1次巻線71c、u相の2次巻線72a、v相の2次巻線72b、及びw相の2次巻線72cを有し、これらの巻線がY−Y結線されている。本実施例1では、変圧器70の構造は限定されないが、例えば、小容量のDC/DCコンバータでは、1つのコアに三相の巻線が巻かれた一体化構造の変圧器を使用できる。又、大容量のDC/DCコンバータでは、変圧器のコアサイズが大型化するので、3つの変圧器を使用することが望ましい。3つの2次巻線72a,72b,72cには、2次側フルブリッジ部90の3つの交流端子N31〜N33が接続されている。
【0031】
2次側フルブリッジ部90は、直列に接続された2次側スイッチ91、交流端子N31及び2次側スイッチ92からなる第4のスイッチングレグと、直列に接続された2次側スイッチ93、交流端子N32及び2次側端子94からなる第5のスイッチングレグと、直列に接続された2次側スイッチ95、交流端子N33及び2次側端子96からなる第6のスイッチングレグと、が並列接続された三相フルブリッジ回路で構成されている。この2次側フルブリッジ部90には、並列に接続されたコンデンサ97と2次側検出部98とを介して、2次側端子53,54が接続されている。2次側検出部98は、2次側端子53,54間の2次側直流電圧E2を検出して2次側検出電圧e2を出力するための分圧抵抗等の電圧検出部98aと、2次側端子54に流れる2次側直流電流I2を検出して2次側検出電流i2を出力するためのシャント抵抗等の電流検出部98bと、を有している。
【0032】
1次側フルブリッジ部60内の6つの1次側スイッチ61〜66は、制御装置100から供給される6つの1次側駆動信号S1p〜S6pによってそれぞれオン/オフ動作する。2次側フルブリッジ部90内の6つの2次側スイッチ91〜96は、制御装置100から供給される6つの2次側駆動信号S1s〜S6sによってそれぞれオン/オフ動作する。
【0033】
各スイッチ61〜66,91〜96は、例えば、
図1(b)に示すように、半導体スイッチング素子としてのMOSFET61aと、このMOSFET61aのドレイン及びソースに対して逆並列に接続されたダイオード61bと、MOSFET61aのドレイン及びソースに対して並列に接続された外付けのコンデンサ61cと、により構成されている。ダイオード61bは、外付けの還流ダイオード(フリーホイールダイオード)又はMOSFET61aの寄生ダイオードにより構成されている。コンデンサ61cは、MOSFET61aの寄生容量で構成しても良い。
【0034】
又、各スイッチ61〜66,91〜96は、例えば、
図1(c)に示すように、半導体スイッチング素子としてのIGBT61dと、このIGBT61dのコレクタ及びエミッタに対して逆並列に接続されたダイオード61eと、IGBT61dのコレクタ及びエミッタに対して並列に接続された外付けのコンデンサ61fと、により構成されている。ダイオード61eは、外付けのフリーホイールダイオードにより構成されている。コンデンサ61fは、IGBT61dの寄生容量で構成しても良い。
【0035】
なお、インダクタ部80内の各インダクタ81〜83は、Y−Y結線された変圧器70と直列に接続されている。そのため、各インダクタ81〜83は、変圧器70の2次側に接続しても良い。又は、各インダクタ81〜83を2分割し、それぞれ変圧器70の1次側と2次側に直列に接続しても良い。変圧器70の各u相、v相、w相の巻数比は同じであり、1次巻線71a〜71cと2次巻線72a〜72cとの巻数比は、例えば、1:nである。
【0036】
制御装置100は、中央処理装置(CPU)等で構成され、損失算出部101と、この損失算出部101の出力側に接続されたデューティ制御部102と、位相制御部103と、を有している。ディーティ制御部102と位相制御部103との出力側には、1次側パルス変調器104と2次側パルス変調器105とが接続されている。
【0037】
損失算出部101は、1次側検出部55内の電圧検出部55aにより検出された1次側検出電圧e1と、電流検出部55bにより検出された1次側検出電流i1と、2次側検出部98内の電圧検出部98aにより検出された2次側検出電圧e2と、電流検出部98bにより検出された2次側検出電流i2と、を入力し、主回路50における電力変換損失Plossを算出する機能を有している。この損失算出部101は、入力された1次側検出電圧e1と1次側検出電流i1とを乗算して1次側検出電力w1を求める乗算器101aと、入力された2次側検出電圧e2と2次側検出電流i2とを乗算して2次側検出電力w2を求める乗算器101bと、を有し、これらの2つの乗算器101a,101bの出力側に、演算器101cが接続されている。演算器101cは、求められた1次側検出電力w1と2次側検出電力w2とを演算し、主回路50の1次側と2次側間の電力変換損失Plossを算出し、この電力変換損失Plossをデューティ制御部102へ出力する機能を有している。
【0038】
デューティ制御部102は、入力された電力変換損失Plossに基づき、1次側スイッチ61〜66における1次側デューティδpの制御指令と、2次側スイッチ91〜96における2次側デューティδs(例えば、1−δp)の制御指令と、を生成して1次側パルス変調器104及び2次側パルス変調器105へ出力する機能を有している。
【0039】
位相制御部103は、検出された2次側検出電圧e2と、電力転送する目標電力(例えば、2次側目標電圧)に対応する2次側目標電圧値e2refと、を入力し、2次側直流電圧E2を2次側目標電圧に追従させるための、1次側スイッチ61〜66と2次側スイッチ91〜96との位相差φの指令を生成して、1次側パルス変調器104及び2次側パルス変調器105へ出力する機能を有している。
【0040】
1次側パルス変調器104は、入力された1次側デューティδpの制御指令と位相差φの指令とに基づいて、1次側スイッチ61〜66の1次側デューティδp及び位相を変調し、1次側スイッチ61〜66へ供給するための1次側駆動信号S1p〜S6pを生成する機能を有している。例えば、第1〜第3のスイッチングレグのハイサイドのスイッチ61,63,65とローサイドのスイッチ62,64,66との信号を反転させ、それぞれのスイッチングレグの駆動信号S1p〜S6pは、2π/3の位相差を設け、1次側デューティを同じδpとしている。
【0041】
2次側パルス変調器105は、入力された2次側デューティ1−δpの制御指令と位相差φの指令とに基づいて、2次側スイッチ91〜96の2次側デューティδs(=1−δp)及び位相を変調し、2次側スイッチ91〜96へ供給するための2次側駆動信号S1s〜S6sを生成する機能を有している。例えば、第4〜第6のスイッチングレグのハイサイドのスイッチ91,93,95とローサイドのスイッチ92,94,96との信号を反転させ、それぞれのスイッチングレグの駆動信号S1s〜S1sは、2π/3の位相差を設け、2次側デューティを同じ1−δpとしている。
【0042】
(実施例1のソフトスイッチング動作)
図1のDC/DCコンバータにおけるソフトスイッチング動作のメカニズムを説明する。
【0043】
1次側検出部55内の電圧検出部55aにより検出された1次側検出電圧e1と、電流検出部55bにより検出された1次側検出電流i1と、2次側検出部98内の電圧検出部98aにより検出された2次側検出電圧e2と、電流検出部98bにより検出された2次側検出電流i2と、2次側目標電圧値e2refと、が制御装置100に入力される。
【0044】
制御装置100内の損失算出部101において、乗算器101aは、入力された1次側検出電圧e1と1次側検出電流i1とを乗算して1次側検出電力w1を算出し、演算器101cに与える。乗算器101bは、入力された2次側検出電圧e2と2次側検出電流i2とを乗算して2次側検出電力w2を算出し、演算器101cに与える。演算器101cは、与えられた1次側検出電力w1と2次側検出電力w2とを演算し、主回路50における1次側と2次側間の電力変換損失Plossを算出し、この電力変換損失Plossをデューティ制御部102へ出力する。
【0045】
デューティ制御部102は、入力された電力変換損失Plossに基づき、1次側と2次側の電圧比E2/nE1の大小に応じて、1次側スイッチ61〜66の1次側デューティδp及び2次側スイッチ91〜96の2次側デューティδsの指令を生成し、その1次側デューティδpの指令を1次側パルス変調器103へ与えると共に、2次側デューティδsの指令を2次側パルス変調器105へ与える。位相制御部103は、入力された2次側検出電圧e2及び2次側目標電圧値e2refに基づき、1次側スイッチ61〜66と2次側スイッチ91〜96との位相差φの指令を生成し、この指令を1次側パルス変調器104及び2次側パルス変調器105へ与える。
【0046】
1次側パルス変調器104は、入力された1次側デューティδpの指令と位相差φの指令とに基づき、1次側デューティδpを有する1次側駆動信号S1p〜S6pを生成し、この1次側駆動信号S1p〜S6pによって1次側スイッチ61〜66をオン/オフ動作させる。更に、2次側パルス変調器105は、入力された位相差φの指令と2次側デューティδsの指令とに基づき、それぞれ2π/3の位相差を有する2次側駆動信号S1s〜S6sを生成し、この2次側駆動信号S1s〜S6sによって2次側スイッチ91〜96をオン/オフ動作させる。
【0047】
反転したパルスの駆動信号S1p〜S6p,S1s〜S6sにより、第1〜第6のスイッチングレグを構成するハイサイドのスイッチ61,63,65,91,93,95と、ローサイドのスイッチ62,64,66,92,94,96と、が駆動されると、スイッチングレグの交流端子N21〜N23,N31〜N33に、その駆動信号S1p〜S6p,S1s〜S6sに同期した矩形波が出力される。
【0048】
主回路50において、インダクタ81〜83の遅れ電流により、例えば、スイッチ61〜66がターンオンする前のデッドタイム中に、スイッチ61〜66内の半導体スイッチング素子に逆方向の電流が流れ、このスイッチ61〜66内の半導体スイッチング素子に対して並列に接続されたコンデンサ又は寄生容量を放電させる。この放電により、スイッチ61〜66内の半導体スイッチング素子の電圧がゼロになってから、スイッチ61〜66内の半導体スイッチング素子に対して逆並列に接続されたダイオードが導通する。その後のスイッチ61〜66内の半導体スイッチング素子のターンオン時にスイッチ電圧がゼロであるため、ゼロ・ボルト・スイッチング(以下「ZVS」という。)動作になる。又、例えば、フルブリッジ部60の出力電流のゼロクロスは、ZVS後に発生するため、スイッチングレグの交流端子N21〜N23における電流と電圧の波形は、正弦波状でなくても電流が電圧よりも遅れる。
【0049】
図4は、
図1のDC/DCコンバータにおけるソフトスイッチング動作を説明するための図である。この
図4には、1スイッチングレグ分のハイサイドのスイッチ61のターンオン時と、ローサイドのスイッチ62のターンオフ時の動作が示されている。更に、
図5は、
図4におけるローサイドのスイッチ62のターンオフから、ハイサイドのスイッチ61のターンオンの間の動作波形を示す図である。
【0050】
1次側と2次側の各相のスイッチ61〜66,91〜96の動作は同じであるため、1スイッチングレグ分のハイサイドのスイッチ61のターンオン時と、ローサイドのスイッチ62のターンオフ時の動作が、代表例として
図4に示されている。スイッチ61,62は、
図1(b)に示すMOSFET61a,62aを使用している。
図4中の符号61b,62bはMOSFET61a,62aのボディーダイオード、及び、符号61c,62cはドレイン・ソース間の寄生容量である。
【0051】
図5の動作波形図において、横軸は期間T1〜T4の経過時間(t)、縦軸は電圧及び電流である。
図5の縦軸において、S1p,S2pはMOSFET61a,62aのゲートに印加される駆動信号の電圧、I81はインダクタ81を流れるインダクタ電流、I61aはMOSFET61aのドレイン・ソース間電流、I61bはダイオード61bに流れる電流、I62aはMOSFET62aのドレイン・ソース間電流、I62bはダイオード62bに流れる電流、I61cは寄生容量61cに流れる電流、I62cは寄生容量62cに流れる電流、V61cは寄生容量61cの両電極間の電圧、及び、V62cは寄生容量62cの両電極間の電圧である。
図5の横軸のtdは、MOSFET61aとMOSFET62aのデッドタイムである。
【0052】
図4及び
図5において、期間T1にMOSFET61aがオフし、MOSFET62aがオンしているため、インダクタ電流I81は、短波線で示すように、MOSFET62aに流れる。期間T2にMOSFET61a,62aがオフし、長波線で示すように、MOSFET62aに流れていたインダクタ電流I81は、継続してスイッチングレグの交流端子N21に向かって流れ、それぞれインダクタ電流I81の1/2の電流で寄生容量62cを充電し、寄生容量61cを放電させる。寄生容量61cの電圧V61cがゼロまで放電完了と同時に、寄生容量62cの電圧V62cは、1次側直流電圧E1まで充電され、一点鎖線で示すように、期間T3にボディーダイオード61bが導通する。実線で示すように、期間T4にMOSFET61aがターンオンし、インダクタ電流I81がMOSFET61a又はボディーダイオード61bに流れる。
【0053】
MOSFET61aは、ターンオン時にドレイン・ソース間の電圧V61cがゼロになっていたため、MOSFET61aのターンオン時はZVS動作をする。一方で、MOSFET62aがターンオフの瞬間に電圧がゼロであり、長波線で示すように、MOSFET62aに流れていたインダクタ電流I81が寄生容量62cを充電する。MOSFET62aのドレイン・ソース間電圧V62cが緩やかに上昇し、寄生容量62cに電荷を蓄積するため、スイッチング損失は殆ど発生しない。寄生容量62cに蓄積された電荷は、MOSFET62aの次のターンオンする前のデッドタイムtd中に、MOSFET61aのターンオン時と同じ動作で、実線で示すインダクタ電流I81と逆方向で放出し、無駄な損失にはならない。
【0054】
インダクタ電流I81が上下対称であるため、MOSFET61aのターンオフ直前の電流の向きは、ターンオン直前の向きと逆であり、電流値が等しい。MOSFET61aのターンオフからMOSFET62aのターンオンまでの動作は、前記のソフトスイッチング動作と同じメカニズムであり、ハイサイドのスイッチ61とローサイドのスイッチ62のターンオン時のソフトスイッチング動作条件は同時に満足する。
【0055】
(実施例1の最適制御動作)
図6は、
図1のDC/DCコンバータの動作例を示す波形図である。
【0056】
この
図6には、
図1中の制御装置100で生成した1次側駆動信号S1p〜S6p及び2次側駆動信号S1s〜S6sにより、1次側スイッチ61〜66と2次側スイッチ91〜96を駆動した時の1次側フルブリッジ部60内の交流端子N21〜N23上の三相矩形波電圧Vup,Vvp,Vwpと、2次側フルブリッジ部90内の交流端子N31〜N33上の三相矩形波電圧Vus/n,Vvs/n,Vws/nと、インダクタ81に印加された両電極間の電圧V81と、インダクタ81に流れるインダクタ電流I81と、の動作波形の例が示されている。三相矩形波電圧Vus/n,Vvs/n,Vws/nは、2次側の第4〜第6のスイッチングレグの交流端子N31〜N33から出力された矩形波を変圧器70の巻数比1/nで1次側に換算した矩形波である。
【0057】
なお、三相対称であるため、図面を見やすくするために、
図6には、第1のスイッチングレグの交流端子N21に接続されたインダクタ81の両端電圧V81と電流I81のみが示されている。
【0058】
ハイサイドの1次側スイッチ61のターンオン時の電流はi81a、ターンオフ時の電流はi81cであり、ハイサイドの2次側スイッチ91のターンオン時の電流はi81b、ターンオフ時の電流はi81dである。1次側スイッチ61のターンオン時におけるソフトスイッチングの条件はi81a≦0、1次側スイッチ61のターンオフ時におけるソフトスイッチングの条件はi81c≧0、2次側スイッチ91のターンオン時におけるソフトスイッチングの条件はi81b≧0、1次側スイッチ61のターンオフ時におけるソフトスイッチングの条件はi81d≦0である。
【0059】
図7は、
図1のソフトスイッチングの条件を満足するハイサイドの1次側スイッチ61,63,65とハイサイドの2次側スイッチ91,93,95とのソフトスイッチング動作範囲を示す図である。
【0060】
図7において、符号aは、ハイサイドの1次側スイッチ61,63,65におけるソフトスイッチングのターンオン時の境界、符号bは、ハイサイドの1次側スイッチ61,63,65におけるソフトスイッチングのターンオフ時の境界である。符号cは、ハイサイドの2次側スイッチ91,93,95におけるソフトスイッチングのターンオン時の境界、符号dは、ハイサイドの2次側スイッチ91,93,95におけるソフトスイッチングのターンオフ時の境界である。
【0061】
領域(1)は、ハイサイドの1次側スイッチ61,63,65のターンオン、ハイサイドの1次側スイッチ61,63,65のターンオフ、ハイサイドの2次側スイッチ91,93,95のターンオン、及び、ハイサイドの2次側スイッチ91,93,95のターンオフについて、全てソフトスイッチング可能(
図7の表中の○印)な領域である。領域(2)〜(7)は、ハイサイドの1次側スイッチ61,63,65及びハイサイドの2次側スイッチ91,93,95におけるターンオン及びターンオフのいずれかが、ハードスイッチング(ソフトスイッチング不可、
図7の表中の×印)の領域である。
【0062】
1次側と2次側の電圧比E2/nE1が1から離れる場合、1次側スイッチ61〜66のデューティδpを制御することで、軽負荷時のスイッチング動作範囲が拡大される。
【0063】
図8は、
図1の1次側スイッチ61〜66におけるデューティδpがδp=2/3の時のハイサイドの1次側スイッチ61,63,65とハイサイドの2次側スイッチ91,93,95のソフトスイッチング動作範囲の例を示す図であり、
図7中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0064】
本実施例1におけるDC/DCコンバータの制御装置100は、1次側スイッチ61〜66のディーティδpと2次側スイッチ91〜96のデューティδs(=1−δp)との和を1としている。そのため、主回路50のインダクタ81〜83の両電極間に印加される電圧の偶数次高調波電圧は、位相が反転され、インダクタ81〜83に、電圧より位相が遅れる高調波電流が流れる。この高調波電流は、基本波電圧に対して遅れているため、スイッチ61〜66,91〜96のスイッチング時における電流が正方向に流れる前に、電圧がゼロとなり、ZVS動作をする。
【0065】
但し、1次側スイッチ61〜66のデューティδpと2次側スイッチ91〜96のデューティδsとは、0.5から離れる程、変圧器70とインダクタ81〜83とスイッチ61〜66,91〜96とに流れる無効電流が増加し、変圧器70とインダクタ81〜83の銅損やスイッチ61〜66,91〜96の導通損失が増加し、ソフトスイッチング動作による効率改善の妨げになる。
【0066】
図9は、
図1中の1次側スイッチ61〜66のデューティの変化による損失分析(即ち、スイッチング損失、導通損失、及びトータル損失の分析)の例を示す波形図である。
図9の横軸は1次側デューティδp、及び縦軸は電力変換損失Plossである。
【0067】
この
図9には、1次側と2次側の電圧比E2/nE1と転送電力を一定とした場合の1次側スイッチ61〜66における1次側デューティδpの変化による1次側スイッチ61〜66の導通損失111と、スイッチング損失112と、導通損失111及びスイッチング損失112を合計したトータル損失113と、の関係が示されている。横軸のδpcは、ZVS動作の臨界点における0.5からのデューティの偏差量である。A1点とA2点は、1次側スイッチ61〜66又は2次側スイッチ91〜96のZVS動作の臨界点であり、1次側デューティδp>0.5の領域又はδp<0.5の領域において、電力変換損失Plossが最小になる。
【0068】
本実施例1のDC/DCコンバータは、1次側と2次側の回路が対称的で、1次側スイッチ61〜66のデューティδpと2次側スイッチ91〜96のデューティδs(=1−δp)との和は1であり、デューティはδp>0.5の領域の時とδp<0.5の領域の時の動作も対称的であり、どちらかの領域で動作させても同じ効果が得られる。
【0069】
図9のA1点又はA2点に追従するための制御は、
図1の制御装置100内の損失算出部101とデューティ制御部102とによって実行される。損失算出部101において、1次側検出部55及び2次側検出部98により検出された1次側検出電圧e1、1次側検出電流i1、2次側検出電圧e2、及び2次側検出電流i2を用いて、電力変換損失Plossを算出する。デューティ制御部102において、1次側スイッチ61〜66のデューティδpを0.5から0.5より大きい方向、又は、0.5より小さい方向に増減させ、損失算出部101にて計算された電力変換損失Plossが最小になるように、1次側デューティδpの増減制御を繰り返す。
【0070】
図10は、
図1中の制御装置100による最小損失追従制御を示すフローチャートである。更に、
図11は、1次側デューティがδp>0.5の領域において電力変換の最小損失点の追従制御の概念を示す図である。
【0071】
図11において、横軸は1次側デューティδp、縦軸は電力変換損失Plossである。トータル損失113は、
図9に示すように、1次側デューティがδp>0.5の領域の曲線であり、1次側スイッチ61〜66におけるZVS動作の臨界点A1に向かって、左側が右斜め下方向B1に傾斜し、右側が左斜め下方向B2に傾斜している。
図11中のΔδpは、デューティ制御の1ステップの制御量である。
【0072】
図10のフローチャートに従い、1次側デューティδpの増減制御処理を説明する。
図10のステップST1において、デューティ制御量で1ステップの制御量Δδpを
図1中の損失算出部101にセットし、ステップST2へ進む。ステップST2において、損失算出部101は、1次側検出電圧e1、1次側検出電流i1、2次側検出電圧e2、及び2次側検出電流i2に基づき、初期値の1次側と2次側間の電力変換損失Ploss,0(=|e1*i1−e2*i2|)を計算し、ステップST3へ進む。ステップST3において、デューティ制御部102は、MLPT制御を開始し、デューティ0.5に対して1ステップの制御量Δδpを加算し、初期値のデューティδp,0(=0.5+Δδp)を求め、ステップST4へ進む。
【0073】
ステップST4において、損失算出部101は、1次側検出電圧e1、1次側検出電流i1、2次側検出電圧e2、及び2次側検出電流i2に基づき、今回の1次側と2次側間の電力変換損失Ploss,n(=|e1*i1−e2*i2|)を計算し、ステップST5へ進む。ステップST5において、デューティ制御部102は、今回の電力変換損失Ploss,nが、前回の1次側と2次側間の電力変換損失Ploss,n−1よりも小さいか否か(Ploss,n<Ploss,n−1)を判定し、小さいときには(Yes)、ステップST6へ進み、大きいときには(No)、ステップST8へ進む。
【0074】
ステップST6において、デューティ制御部102は、前回、1ステップの制御量Δδpを増加したか否かを判定し、増加しているときには(Yes)、ステップST7へ進み、増加していないときには(No)、ステップST9へ進む。ステップST7において、デューティ制御部102は、今回のデューティδp,nに対して1ステップの制御量Δδpを加算し、次回のデューティδp,n+1(=δp,n+Δδp)を求め、ステップST4へ戻る。
【0075】
ステップST8において、デューティ制御部102は、前回、1ステップの制御量Δδpを増加したか否かを判定し、増加しているときには(Yes)、ステップST9へ進み、増加していないときには(No)、ステップST7へ進む。ステップST9において、デューティ制御部102は、今回のデューティδp,nから1ステップの制御量Δδpを減算し、次回のデューティδp,n+1(=δp,n−Δδp)を求め、ステップST4へ戻る。
【0076】
このように、
図10の最小損失追従制御処理では、1ステップの制御量Δδp毎にデューティδpを増減させ、増減前後の電力変換損失Plossを比較し、電力変換損失Plossが減少した場合は、デューティδpを前回の増減方向と同じ方向に1制御ステップ増減させ、電力変換損失Plossが増加した場合は、デューティδpを前回の増減方向と逆の方向に1制御ステップ増減させる。
【0077】
(実施例1の効果)
本実施例1のDC/DCコンバータの制御装置100及びその制御方法によれば、
図7及び
図8に示したように、1次側スイッチ61〜66のデューティδpと2次側スイッチ91〜96のデューティδs(=1−δp)とを制御することで、1次側と2次側の電圧比E2/nE1が1から離れていても、ZVS動作を成立させ、高効率に電力を伝送させることができる。更に、
図10に示した最小電力変換損失点の追従制御により、全ての動作条件において高効率化が可能になる。