特許第6307384号(P6307384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307384
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20180326BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180326BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20180326BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20180326BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20180326BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-163679(P2014-163679)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-39120(P2016-39120A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 哲仙
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大輔
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−016371(JP,A)
【文献】 特開2005−100685(JP,A)
【文献】 特開2011−008969(JP,A)
【文献】 特開2012−038574(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0159089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H05B 33/12
H05B 33/22
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域と、
第1の基板と、
前記第1の基板と対向している第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されており、前記表示領域の外側に配置されているシール材と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の平面視において前記シール材の位置に重なっており、前記表示領域の外側に配置されている接着領域と、
前記第1の基板に形成されている、発光層を含んでいる有機層と、
前記第1の基板に形成され前記有機層を覆っており、無機材料で形成されている第1無機バリア層と、有機材料で形成され前記第1無機バリア層の上側に配置されている有機バリアと、無機材料で形成され前記有機バリアと前記第1無機バリア層とを覆っている第2無機バリア層とを含み、前記接着領域に形成されている部分を有している多層バリアと、
前記第1の基板の前記接着領域に形成され、前記第2の基板に向かって突出している複数の凸部と、を有し、
前記複数の凸部は前記多層バリアによって覆われ、
前記接着領域における前記複数の凸部のそれぞれの少なくとも一部の上側に、前記有機バリアが配置されておらず、前記第1無機バリア層と前記第2無機バリア層とが直接接しており、
前記接着領域における前記複数の凸部のうち隣接する2つの凸部の間には、前記有機バリアが配置されている、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記第1の基板は複数の画素のそれぞれに設けられている画素電極を有し、
前記複数の凸部は、隣接する2つの画素電極の間に配置される隔壁を有しているバンク層に形成される
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項に記載の有機EL表示装置において、
前記バンク層は、前記複数の凸部の少なくとも一部として、前記第1の基板及び前記第2の基板に沿った方向に並んでいる複数の凸部を有している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の有機EL表示装置において、
前記隣接する2つの凸部の間に配置される前記有機バリアの高さは、当該隣接する2つの凸部のそれぞれの高さよりも小さい
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
複数の凸部は表示領域を取り囲んでいる
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の有機EL表示装置において、
複数の凸部は、前記シール材に沿って伸びている壁状である
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記第1の基板は平坦化膜を有し、
前記平坦化膜は、前記接着領域に、前記シール材に沿って伸びている開口を有し、
前記複数の凸部は前記平坦化膜上に形成される部分と、前記平坦化膜の前記開口の内側に形成される部分を含んでいる
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の有機EL表示装置において、
前記複数の凸部のうちの少なくとも一の凸部は、前記平坦化膜の前記開口の内側に配置されている
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の有機EL表示装置において、
前記複数の凸部のうちの少なくとも複数の凸部は、前記平坦化膜の前記開口の内側に配置されており、前記第1の基板及び前記第2の基板に沿った方向に並んでい
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記多層バリアは、前記凸部と重なる領域で前記第1無機バリア層と前記第2無機バリア層が直接接している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの有機EL表示装置は、発光層を含む有機層が形成されている第1の基板と、第1の基板と対向している第2の基板とを有している。第2の基板の外周縁に沿ってシール材が配置されている。第2の基板の外周縁はシール材によって第1の基板に接着されている。シール材を開示する文献としては、例えば下記特許文献1〜3がある。有機層に水分が浸入すると、有機層が劣化し、画像の質が下がる。そのため、多くの有機EL表示装置では、有機層を覆い、これに水分が浸入するのを防止するバリアが形成されている。下記特許文献4は、複数の層で構成されるバリアを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−004909号公報
【特許文献2】特開2002−311853号公報
【特許文献3】特開2007−200838号公報
【特許文献4】特表2005−504652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異物が原因でバリアにピンホールが形成される場合がある。ピンホールが形成されると、そこから水分が入り、有機層が劣化する。本願の発明者は、無機材料で形成される複数のバリア層と有機材料で形成される有機バリアとを含む多層バリアを検討している。第1無機バリア層が有機層を覆っている。有機バリアは第1無機バリア層上に配置される。第1無機バリア層上に異物が存在している場合、その異物を取り囲むように有機バリアが形成されている。第2無機バリア層は第1無機バリア層と有機バリアとを覆っている。この多層バリアによると、有機バリアによって異物の周りに斜面が形成され、異物の周りの段差が有機バリアによって軽減される。そのため、第2の無機バリア層を薄くしても、第2の無機バリア層が異物を完全に覆うことができる。その結果、有機層への水分の浸透を効果的に抑えることができる。有機バリアは、例えば、次のようにして形成される。有機材料を含む溶剤を霧状にして第1無機バリア層に吹き付ける。第1無機バリア層に付着した有機材料は表面張力により第1無機バリア層上を移動し、液滴を構成する。異物が存在する場合には、有機材料がその表面張力により異物の周りに凝集する。
【0005】
ところが、有機材料と無機材料との間では密着性が良くないので、有機バリアと無機バリア層は剥がれやすい。多層バリアは第1の基板の全面に形成されているので、シール材は多層バリアを介して第1の基板に接着される。多層バリアが有機バリアと無機バリア層とで構成されていると、有機バリアと無機バリア層との間の低密着性により第2の基板の外周縁が第1の基板から容易に剥がれてしまう。
【0006】
本発明の目的は、有機材料と無機材料とで構成される多層バリアを有する有機EL表示装置において、対向する2つの基板の剥がれを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る有機EL表示装置は、第1の基板と、前記第1の基板と対向している第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されているシール材と、前記第1の基板及び前記第2の基板の平面視において前記シール材の位置に重なっている接着領域と、前記第1の基板に形成されている、発光層を含んでいる有機層と、前記第1の基板に形成され前記有機層を覆っており、無機材料で形成されている第1無機バリア層と、有機材料で形成され前記第1無機バリア層の上側に配置されている有機バリアと、無機材料で形成され前記有機バリアと前記第1無機バリア層とを覆っている第2無機バリア層とを含み、前記接着領域に形成されている部分を有している多層バリアと、前記第1の基板に形成され、前記第2の基板に向かって突出している凸部と、を有している。前記凸部の少なくとも一部は前記接着領域に配置され、前記多層バリアによって覆われ、前記多層バリアは、前記凸部の前記少なくとも一部の上側に、前記有機バリアが配置されていない部分を有している。
【0008】
この有機EL表示装置によれば、有機バリアが配置されていない部分では、第1無機バリア層と第2無機バリア層とが直接的に接触することとなる。その結果、無機バリア層と有機バリアとの間の低密着性が原因で第1の基板と第2の基板が互いに剥がれてしまうことを防止できる。
【0009】
(2)(1)において、前記第1の基板は複数の画素のそれぞれに設けられている画素電極を有し、前記凸部は、隣接する2つの画素電極の間に配置される隔壁を有しているバンク層に形成されてもよい。
【0010】
(3)(1)又は(2)において、前記層は、前記凸部の前記少なくとも一部として、前記第1の基板及び前記第2の基板に沿った方向に並んでいる複数の凸部を有してもよい。これによれば、第1の基板と第2の基板との剥がれをより効果的に抑えることができる。
【0011】
(4)(3)において、前記有機バリアは前記第1の凸部と前記第2の凸部との間に位置する部分を有し、前記有機バリアの前記部分の厚さは前記第1の凸部と前記第2の凸部の高さよりも小さくてもよい。凸部の上側に有機バリアが形成されることを効果的に抑えることができる。
【0012】
(5)(1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記層の前記凸部は表示領域を取り囲んでもよい。これによれば、第1の基板と第2の基板との剥がれをより効果的に抑えることができる。
【0013】
(6)(5)において、前記層の前記凸部は、前記シール材に沿って伸びている壁状であってもよい。
【0014】
(7)(1)乃至(6)のいずれかにおいて、前記第1の基板は平坦化膜を有し、前記平坦化膜は、前記接着領域に、前記シール材に沿って伸びている開口を有し、前記凸部は前記平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜の前記開口の内側に形成される部分を含んでもよい。これによれば、平坦化膜の端面から浸入した水分が、表示領域に向かって平坦化膜を浸透することを防ぐことができる。
【0015】
(8)(7)において、前記層は、前記平坦化膜の前記開口の内側に前記凸部を有してもよい。これによれば、平坦化膜の開口の幅を大きくし、且つ、有機バリアが形成されない領域を確保することが容易となる。
【0016】
(9)(8)において、前記層は、前記平坦化膜の前記開口の内側に配置されている前記凸部として、前記第1の基板及び前記第2の基板に沿った方向に並んでいる複数の凸部を有してもよい。第1無機バリア層と第2無機バリア層とが直接的に接する領域が確保し易くなる。
【0017】
(10)(1)乃至(9)のいずれかにおいて、前記多層バリアの前記第1無機バリア層と前記第2無機バリア層は、前記凸部と重なる領域で互いに接触してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る有機EL表示装置の平面図である。
図2図1に示すII−II線で得られる断面図である。
図3】有機バリアの機能を示す断面図であり、異物の周りに形成される有機バリアを示している。
図4】バンク層の凸部の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明に係る有機EL表示装置1の平面図である。図2図1に示すII−II線で得られる断面図である。本明細書では、「上方向」は、後述する第1の基板10から第2の基板40に向かう方向であり、「下方向」は、後述する第2の基板40から第1の基板10に向かう方向である。
【0020】
本明細書での開示は一例に過ぎない。したがって、発明の主旨を保った適宜の変更であって且つ当業者が容易に想到し得るものは、本発明の範囲に含まれる。また、図面において、各部の幅、厚さ、形状等は模式的に表されている。したがって、図面に表れている各部の幅や厚さなどは本発明の解釈を限定するものではない。
【0021】
図2に示すように、有機EL表示装置1は第1の基板10と、第1の基板10に対向している第2の基板40とを有している。基板10、40は、例えばガラスや樹脂で形成されている透明基板である。第1の基板10には回路層11が形成されている。回路層11は、走査線や、データ信号線、電源供給線などの配線を有している。また、回路層11は、有機層14への電流供給を制御するためのTFT(Thin Film Transistor)を含んでいる。回路層11は平坦化膜12によって覆われている。平坦化膜12の上側には複数の画素電極13が配置されている。有機EL表示装置1は、複数の画素Pxが規定されている表示領域A(図1参照)を有している。画素電極13は複数の画素Pxのそれぞれに設けられている。画素電極13は平坦化膜12に形成されているコンタクトホール(不図示)を通して回路層11のTFTに接続されている。
【0022】
第1の基板10には隔壁16dを含むバンク層16が形成されている。隔壁16dは平坦化膜12上に配置され且つ隣接する2つの画素電極13の間に位置している。隔壁16dは各画素電極13の外周縁に重なってもよい。バンク層16には、各画素Pxに位置するバンク開口Cが形成されている(バンク開口Cは隔壁16dによって囲まれる領域である)。画素電極13はバンク開口Cにおいて露出している。バンク層16は、例えば感光性の樹脂材料によって形成される。バンク層16はSiNなどの無機材料によって形成されてもよい。バンク層16には、隔壁16dの他に、凸部16a、16b、16f、16gが形成されている。凸部16a、16b、16f、16gについては後において説明する。
【0023】
第1の基板10には、発光層を含む有機層14が形成されている。有機層14は画素電極13及びバンク層16上に形成され、バンク開口Cの内側において画素電極13に接している。有機層14は、電荷注入層や、電荷輸送層などを含んでもよい(ここで電荷とは正孔と電子の双方を含む)。有機層14の上側に、複数の画素Pxに亘って設けられている共通電極17が形成されている。共通電極17は有機層14に接している。バンク層16の隔壁16dは画素電極13の外周縁と共通電極17との短絡を防止している。
【0024】
一例では、表示領域Aの全体に共通の有機層14が形成される。この場合、有機層14は白色で発光するように、互いに発光色の異なる複数の発光層を含む(カラーフィルタ方式)。他の例では、複数の画素のそれぞれに画素の色に応じた発光層が形成される(塗り分け方式)。例えば、赤画素には赤色で発光する発光層が形成され、青画素には青色で発光する発光層が形成される。また、有機層14は青など特定の色で発光する発光層を含み、この有機層14が表示領域の全体に形成されてもよい(色変換方式)。図2においては、一例として、カラーフィルタ方式の有機EL表示装置1が示されている。
【0025】
第1の基板10には、有機層14及び共通電極17を覆っている多層バリア15が形成されている。多層バリア15は有機層14と共通電極17の上側に形成され、且つそれらの外周縁よりも外側に形成される部分を含んでいる。図2の例では、共通電極17は有機層14の外周縁よりも外側に広がっている。多層バリア15は共通電極17の外周縁よりもさらに外側に広がっている。一例では、多層バリア15は第1の基板10の全域に形成される。
【0026】
多層バリア15は第1無機バリア層15Aと、第1無機バリア層15A上に配置されている有機バリア15Bと、第1無機バリア層15Aと有機バリア15Bとを覆っている第2無機バリア層15Cとを有している。第1無機バリア層15Aと第2無機バリア層15Cは無機材料で形成されている。無機バリア層15A、15Cの材料は有機層14への水分の浸入を防止できる無機材料である。無機材料は例えばSiNであるが、これに限定されない。第1無機バリア層15Aと第2無機バリア層15Cのそれぞれは1つの層だけでなく、複数の層によって構成されてもよい。例えば、第1無機バリア層15AはSiNの層とSiOの層とを含んでもよい。有機バリア15Bは有機材料によって形成されている。有機バリア15Bの材料は、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などである。
【0027】
有機層14、共通電極17、及び第1無機バリア層15Aはバンク層16の上側に形成され、バンク層16の凹凸に合わせた起伏を有している。有機バリア15Bは第1無機バリア層15A上に分散して配置されている。具体的には、有機バリア15Bはバンク開口Cの内側の隅や隣接する2つの凸部16a、16b、16f、16gの間の部分に溜まっている。有機バリア15Bはバンク層16の隔壁16dの上側や、凸部16a、16b、16f、16gの上側には形成されない。また、多層バリア15の下側に異物が存在する場合、有機バリア15Bは異物を取り囲むように形成される。
【0028】
このような有機バリア15Bは例えば次のように形成される。第1無機バリア層15Aを、例えばCVD法によって共通電極17上に形成する。その後、有機材料と重合開始剤とを混合した溶剤を真空環境において、霧状にして第1無機バリア層15Aに吹き付ける。このとき、有機材料が第1無機バリア層15A上に連続的な膜を形成しないように、溶剤の供給条件(供給時間、基板温度、成膜雰囲気など)が調整される。第1無機バリア層15Aに付着した有機材料は液体として挙動を示す。そのため、有機材料は第1無機バリア層15Aが有する凹部やその隅に溜まる。この有機材料が有機バリア15Bとなる。そのため、有機バリア15Bは、バンク開口Cの内側の隅や隣接する2つの凸部16a、16b、16f、16gの間の凹部に形成される。異物が存在する場合、有機材料は表面張力により異物の周りに凝集する。したがって、異物の周りに有機バリア15Bが形成される。有機バリア15Bの上側に第2無機バリア層15Cが形成される。
【0029】
図3は有機バリア15Bの機能を示す断面図であり、異物Eの周りに形成される有機バリア15Bを示している。図3に示すように、異物Eが第1無機バリア層15Aの厚さに比して大きいために、第1無機バリア層15Cによって異物Eが覆われない場合がある。このような場合、有機バリア15Bの形成過程で液状の有機材料が表面張力により異物Eの周りに凝集する。その結果、なだらかな斜面が有機バリア15Bによって異物Eの周りに形成される。有機バリア15Bが形成する斜面によって、第2無機バリア層15Cが異物Eの周りで途切れることを防止できる。その結果、異物Eが原因で多層バリア15にピンホールが形成されることを抑えることができる。
【0030】
第1の基板10と第2の基板40との間にはシール材21が配置されている。第1の基板10と第2の基板40はシール材21によって接着されている。シール材21は表示領域Aの全周を取り囲むように形成されている。シール材21は第2の基板40の外周縁に沿って配置され、第2の基板40の外周縁を第1の基板10に取り付ける。シール材21は第2の基板40の外周縁よりも内側に配置されてもよい。また、シール材21の位置は第1の基板10の外周縁よりも内側でもよい。有機EL表示装置1は、第1の基板10及び第2の基板40の平面視においてシール材21と重なる接着領域Rを有している。接着領域Rは、シール材21の下方に位置し且つシール材21に対応する幅を有する領域である。多層バリア15とバンク層16は接着領域Rに形成されている部分を有しており、シール材21はこれらの部分を通して第1の基板10に接着している。図2の例では、シール材21は多層バリア15に直接的に接している。シール材21は多層バリア15に直接的には接触していなくてもよい。第1の基板10と第2の基板40との間、且つシール材21の内側には充填材22が充填されている。
【0031】
図2の例の第2の基板40は、画素Pxのそれぞれに、カラーフィルタ41を有している。有機EL表示装置1が上述した塗り分け方式の場合には、カラーフィルタ41は第2の基板40に設けられなくてもよい。第2の基板40には隣接する画素Pxを区画するためのブラックマトリクス42が形成されている。
【0032】
図2に示すように、バンク層16は、第2の基板40に向かって膨らんでいる凸部16a、16bを接着領域Rに有している。多層バリア15は凸部16a、16bを覆っている。多層バリア15は、凸部16a、16bの上側及びその側面に、有機バリア15Bが配置されていない部分を有している。有機バリア15Bが配置されていない部分では、第1無機バリア層15Aと第2無機バリア層15Cとが直接的に接することとなる。その結果、無機バリア層15A、15Cと有機バリア15Bの間の低密着性が原因で第1の基板10と第2の基板40とが互いに剥がれてしまうことを、防止できる。上述したように、有機バリア15Bの材料は、有機バリア15Bの形成過程で液体としての挙動を示す。そのため、有機バリア15Bの材料は、有機バリア15Bの形成過程で、凸部16a、16bの上側からその周り(隣接する2つの凸部の間)に移動する。これにより、凸部16a、16bの上側に有機バリア15Bが存在しない部分が形成される。
【0033】
第1無機バリア層15Aの厚さは、第1無機バリア層15Aがバンク層16の凸部16a、16bに起因する起伏を有するように設定されている。この起伏があることにより、有機バリア15Bの材料は有機バリア15Bの形成過程で凸部16a、16bの上側からその周りに移動する。一例では、第2無機バリア層15Cの厚さも、第2無機バリア層15Cの材料がバンク層16の凸部16a、16bに合わせた起伏を有するように設定される。図2の例では、多層バリア15の全体がバンク層16の凸部16a、16bに合わせた起伏を有している。一例では、多層バリア15の厚さ(第1無機バリア層15Aの下面から第2無機バリア層15Cの上面までの距離)は凸部16a、16bの高さよりも小さい。
【0034】
バンク層16は、図2に示すように、第1の基板10及び第2の基板40に沿った方向(水平方向)に並んでいる複数の凸部16a、16bを、接着領域Rに有してもよい。こうすることにより、1つの凸部の幅が小さくなるので、有機バリア15Bの材料が留まる領域が凸部の上側に発生することを抑えることができる。その結果、基板10、40の剥がれをより効果的に抑えることができる。図2の例では、バンク層16は、水平方向に並んでいる2つの第1凸部16aと2つの第2凸部16bとを有している。複数の凸部16a、16bは互いに離れて配置されている。すなわち、バンク層16は隣接する2つの凸部16a、16bの間で切れている。これにより、隣接する2つの凸部の間の凹部が深くなるので、その凹部に有機バリア15Bが溜まりやすくなる。接着領域Rに形成される凸部の数は上述したものに限られない。シール材21の延伸方向に対して垂直な切断面(例えば、図2の切断面)を見たときに、バンク層16は1つの凸部だけを接着領域Rに有してもよい。
【0035】
図2に示すように、有機バリア15Bの一部は隣接する2つの凸部16a、16bの間に溜まっている。有機バリア15Bのこの部分の厚さは、凸部16a、16bの高さよりも小さい。一例においては、第2の凸部16bは第1の凸部16aよりも高い。隣接する2つの凸部16a、16bの間での有機バリア15Bの厚さは、低い方の第1の凸部16aの高さよりも小さい。有機バリア15Bの厚さをこのように設定することによって、凸部16a、16bの上側に有機バリア15Bが形成されることを効果的に抑えることができる。
【0036】
凸部16a、16bはシール材21に沿って形成されている。凸部16a、16bは、好ましくは、表示領域Aの全周を囲むように形成される。すなわち、凸部16a、16bは、好ましくは、表示領域Aの4つの縁(右縁、左縁、前縁、後縁)に沿って形成される。凸部16a、16bの位置はこれに限られない。例えば、凸部16a、16bは、互いに反対側に位置する2つの縁(例えば、表示領域Aの右縁及び左縁)に沿ってだけ設けられてもよい。また、凸部16a、16bは表示領域Aの1つの縁にだけ設けられてもよい。
【0037】
図4は凸部16a、16bの一例を示す平面図である。図4(a)に示すように、凸部16a、16bは、例えばシール材21に沿って伸びている壁状に形成される。図4(a)の凸部16a、16bはその全体に亘って連続している。凸部16a、16bが表示領域Aの全周を取り囲む場合には、凸部16a、16bは例えばその全周に亘って連続する。他の例としては、図4(b)に示すように、シール材21に沿って伸びている複数の凸部16a、16bが一定の間隔を空けて並んでもよい。凸部16a、16bが表示領域Aの全周を取り囲む場合には、シール材21に沿って伸びている複数の凸部16a、16bが一定の間隔を空けて並び、それらが全体として表示領域Aを取り囲んでもよい。さらに他の例としては、凸部16a、16bは柱状でもよい。この場合、複数の凸部16a、16bがシール材21に沿って並んでもよい。
【0038】
上述したように、第1の基板10には平坦化膜12が形成されている。図2に示すように、平坦化膜12には開口12aが形成されてもよい。開口12aは接着領域Rに形成され、シール材21に沿って伸びている。バンク層16は開口12aの内側に形成される部分を含んでいる。この構造によると、平坦化膜12の端部から浸入した水分が、表示領域Aに向かって平坦化膜12を浸透することを防ぐことができる。すなわち、開口12aによって水分の浸透経路が遮断されている。シール材21は第2の基板40の外縁に沿って配置されている。開口12aを接着領域Rに形成することによって、表示領域Aから離れた位置で水分を遮断できる。
【0039】
図2に示すように、開口12aの内側にはバンク層16の第2の凸部16bが形成されてもよい。こうすることにより、平坦化膜12の開口12aの幅を大きくし、且つ、有機バリア15Bが形成されない領域を確保することが容易となる。一例では、開口12aの内側には、水平方向に並ぶ複数(図2の例では2つ)の第2の凸部16bが形成されてもよい。バンク層16の構造はこれに限られない。例えば、シール材21の延伸方向に対して垂直な切断面(例えば、図2の切断面)を見たときに、開口12aの内側には1つの第2の凸部16bだけが設けられていてもよい。また、開口12aの内側では、2つより多くの第2の凸部16bが水平方向において並んでもよい。
【0040】
開口12aは平坦化膜12をその厚さ方向に貫通するのが好ましい。こうすることにより、水分の浸透を効果的に抑えることができる。また、開口12aは表示領域Aの全周を取り囲むのが好ましい。こうすることにより、水分の浸透をさらに効果的に抑えることができる。この場合、第2の凸部16bは、開口12aと同様に、表示領域Aの全周を取り囲んでもよい。また、複数の第2の凸部16bがシール材21に沿って断続的に配置され、それらが開口12aの内側に形成されてもよい。
【0041】
バンク層16は第1の凸部16aを有している。第1の凸部16aは第2の凸部16bとは異なり、平坦化膜12上に形成されている。図2の例では、第2の凸部16bの内側(表示領域A側)に第1の凸部16aが配置されている。また、第2の凸部16bの外側(有機EL表示装置1の外周縁側)にも第1の凸部16aが形成されている。バンク層16に形成される凸部は、以上説明したものに限られない。例えば、第1の凸部16aは必ずしも形成されていなくてもよい。また、第1の凸部16aは第2の凸部16bの内側と外側のいずれか一方にのみ形成されてもよい。
【0042】
図2に示すように、平坦化膜12は、開口12aの内側(開口12aの表示領域A側)に、開口12bを有してもよい。開口12bは表示領域Aの外側に位置している。開口12bは、表示領域Aの外縁に沿って伸びている。バンク層16は開口12bの内側に形成される部分を含んでいる。この構造によると、平坦化膜12の端部から浸入した水分が、表示領域Aに向かって平坦化膜12を浸透することを、さらに効果的に防ぐことができる。開口12bは平坦化膜12をその厚さ方向に貫通するのが好ましい。こうすることにより、水分の浸透を効果的に抑えることができる。また、開口12bは表示領域Aの全周を取り囲むのが好ましい。こうすることにより、水分の浸透をさらに効果的に抑えることができる。
【0043】
図2に示すように、開口12bの内側には第3の凸部16fが形成されてもよい。この構造によれば、多層バリア15は、第3の凸部16fの上側に、有機バリア15Bが形成されない部分を有することとなる。この部分では第1無機バリア層15Aと第2無機バリア層15Cとが直接的に接するので、それらの剥がれを抑えることができる。開口12bの内側には、水平方向に並ぶ複数(図2の例では2つ)の第3の凸部16fが形成されてもよい。第3の凸部16fも、開口12bと同様に、表示領域Aの全周を取り囲んでもよい。複数の第3の凸部16fは表示領域Aの縁に沿って断続的に形成されてもよい。
【0044】
図2に示すように、バンク層16は、表示領域Aの外側で且つシール材21の内側の領域に、第4の凸部16gを有してもよい。第4の凸部16gは、第3の凸部16fとは異なり、平坦化膜12上に形成されている。この構造によれば、多層バリア15は、第4の凸部16gの上側にも、有機バリア15Bが形成されない部分を有することとなる。この部分では第1無機バリア層15Aと第2無機バリア層15Cとが直接的に接するので、それらの剥がれを抑えることができる。第4の凸部16gは表示領域Aの全周を取り囲んでもよいし、複数の第4の凸部16gが表示領域Aの縁に沿って断続的に形成されてもよい。
【0045】
以上説明したように、バンク層16は、第1の基板10の厚さ方向において膨らんでいる凸部16a、16bを接着領域Rに有している。多層バリア15は、凸部16a、16bの上側に、有機バリア15Bが配置されていない部分を有している。これにより、第1無機バリア層15Aと第2無機バリア層15Cとが直接的に接触する部分を接着領域Rに得ることができる。その結果、無機バリア層15A、15Cと有機バリア15Bの間の低密着性が原因で第1の基板10と第2の基板40が互いに剥がれてしまうことを、防止できる。
【0046】
本発明は以上説明した有機EL表示装置1に限られず、種々の変更がなされてもよい。
【0047】
例えば、上述したように、シール材21の延伸方向に対して垂直な切断面(例えば、図2の切断面)を見たときに、バンク層16は1つの凸部だけを接着領域Rに有してもよい。この場合、凸部の一部は接着領域Rに無くてもよい。例えば、凸部の表示領域A側の部分は接着領域Rから表示領域A側にはみ出ていてもよい。
【0048】
また、バンク層16は、接着領域Rよりも幅の狭い凹部を接着領域Rに有してもよい。この場合、凹部に隣接する膨らんだ部分が請求項の凸部として機能する。
【0049】
また、凸部16a、16bが形成される層は必ずしもバンク層16でなくてもよい。例えば、シール材21の下方の位置に凸部16a、16bを有する、バンク層16とは異なる層が新たに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 有機EL表示装置、10 第1の基板、11 回路層、12 平坦化膜、12a 開口、12b 開口、13 画素電極、14 有機層、15 多層バリア、15A 第1無機バリア層、15B 有機バリア、15C 第2無機バリア層、16 バンク層、16a,16b,16f,16g 凸部、16d 隔壁、17 共通電極、21 シール材、22 充填材、40 第2の基板、41 カラーフィルタ、42 ブラックマトリクス、A 表示領域、C バンク開口、E 異物、R 接着領域、Px 画素。
図1
図2
図3
図4