特許第6307402号(P6307402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307402
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】表皮の吊り込み構造
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/052 20060101AFI20180326BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B68G7/052 A
   A47C31/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-194666(P2014-194666)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-63989(P2016-63989A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】長澤 拓
(72)【発明者】
【氏名】上村 知行
(72)【発明者】
【氏名】金子 和之
(72)【発明者】
【氏名】長澤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 勤
(72)【発明者】
【氏名】黒部 亮
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−024187(JP,A)
【文献】 特開平08−024450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/05
A47C 31/02
B60N 2/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮の一部をクッション材側に吊り込んでなる吊り込み部を有するシートにおいて、
前記吊り込み部には、前記表皮と前記クッション材とを連結する開閉式ファスナ部が設けられ、前記開閉式ファスナ部は、前記表皮の裏面に固定された第1のファスナ半部と、前記クッション材に固定された第2のファスナ半部と、を有し、
前記第2のファスナ半部は、前記クッション材に固定される平板状のベース部と、このベース部に立設する基材とからなる
ことを特徴とする表皮の吊り込み構造。
【請求項2】
前記第2のファスナ半部のテープ状基材は、前記クッション材に固定させるためのベース部に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の表皮の吊り込み構造。
【請求項3】
前記クッション材には、前記吊り込み部に沿って延在する凹部が設けられ、前記凹部の底面に前記ベース部が接着固定されていることを特徴とする請求項2記載の表皮の吊り込み構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮の吊り込み部が設けられたシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許第3134694号公報がある。この公報に記載されたシートにおいて、主たる座面とその両側に配置されたサイド面との境界部分に前後方向に延在する吊り込み部が設けられている。この吊り込み部は、クッション側に設けられたワイヤを、表皮側のループ部を通すことで、表皮の一部をシートの内側に引き込むようにして構成されている。しかしながら、このような構成にあっては、ループ部をワイヤに通す作業が煩雑であるといった問題がある。そこで、特許第3779028号公報に開示されたシートにあっては、吊り込み部において、表皮側に面状ファスナの半部が縫合され、クッション材側に面状ファスナの半部が接着固定されている。そして、クッション材に表皮を被せるにあたって、クッション材の一方の面状ファスナ半部に表皮側の他方の面状ファスナ半部を上から押し付けるような作業を行う。このような作業により、シートに吊り込み部を容易に作り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3134694号公報
【特許文献2】特許第3779028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のシートにあっては、無造作に表皮側の面状ファスナ半部をクッション材側の面状ファスナ半部に押し付けると、吊り込み部が曲がったり撓んだりする。よって、一方の面状ファスナ半部に対して他方の面状ファスナ半部を正確に位置合わせしながら、上から押し付けるような作業を行う必要があるので、作業性が余り良いとは言えない。また、一方の面状ファスナ半部に対して他方の面状ファスナ半部を頻繁に着脱させると、面状ファスナ半部同士の接合性が悪くなり、その結果として、ファスニング機能が悪化し、最終的には、面状ファスナ半部同士が外れ易くなってしまうといった問題点がある。
【0005】
本発明は、吊り込み部を作り出す際の作業性を良好にすると共に、吊り込み部での頻繁な着脱をも可能にした表皮の吊り込み構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表皮の一部をクッション材側に吊り込んでなる吊り込み部を有するシートにおいて、
前記吊り込み部には、前記表皮と前記クッション材とを連結する開閉式ファスナ部が設けられ、前記開閉式ファスナ部は、前記表皮の裏面に固定された第1のファスナ半部と、前記クッション材に固定された第2のファスナ半部と、を有することを特徴とする。
【0007】
このシートにおいては、開閉式ファスナ部の一方のファスナ半部の長手方向における端と他方のファスナ半部の長手方向における端とを合わせてスライダを滑らせるだけで、吊り込み部を簡単かつ確実に作り出すことができる。また、スライダを滑らせるだけで、クッション材側のファスナ半部に対して表皮側のファスナ半部を容易に外すことができるので、表皮を頻繁に交換するような場合であっても、吊り込み部の位置ズレが起こり難い。
【0008】
また、前記第2のファスナ半部のテープ状基材は、前記クッション材に固定させるためのベース部に取り付けられていると好適である。
このようにベース部を採用することで、クッション材にファスナ半部を接着材や両面テープを利用して容易に固定することができる。
【0009】
また、前記クッション材には、前記吊り込み部に沿って延在する凹部が設けられ、前記凹部の底面に前記ベース部が接着固定されていると好適である。
このような構成を採用すると、吊り込み部において開閉式ファスナ部が乗員の臀部に当たることを適切に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吊り込み部を作り出す際の作業性を良好にすると共に、吊り込み部での頻繁な着脱をも可能する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る表皮の吊り込み構造を用いたシートの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のX−X線に沿う断面図である。
図3】本発明に係るシートに適用される開閉式ファスナ部を示す要部拡大斜視図である。
図4】ファスナ部の開状態を示す斜視図である。
図5】他の実施例を示す図4と同様な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る表皮の吊り込み構造を用いたシートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるように、車両用シート1は、フロアパネル上で前後に移動自在なシートクッションSCと、シートクッションSCに対してリクライニング可能なシートバックSBとを備えている。シートクッションSC及びシートバックSBは、発泡体からなるクッション材2の表面が表皮3で覆われている。
【0014】
シート1において、シートクッションSC及びシートバックSBには、ライン状の吊り込み部Aが設けられている。この吊り込み部Aは、シート1の外観を形成すると同時に表皮3の弛みやズレを防止している。
【0015】
ここで、シートクッションSCの吊り込み部Aを例に挙げて説明する。図2に示されるように、シートクッションSCのクッション材2は、乗員の臀部を下から支えるためのメインクッション部10と、乗員の臀部を横から保持するためのサイドクッション部11とを有している。
【0016】
これに対して、表皮3は、クッション材2のメインクッション部10上に載置される座面部20と、サイドクッション部11上に載置されるサイド面部21と、サイド面部21から連続して延在すると共に、クッション材2の裏側に回り込む裏面部22とによって形成されている。表皮3の座面部20とサイド面部21とは縫合部24によって接合されている。
【0017】
図2図4に示されるように、吊り込み部Aには、表皮3とクッション材2とを連結するための開閉式ファスナ部30が設けられている。この開閉式ファスナ部30は、表皮3の裏面に縫合によって固定された第1のファスナ半部31と、クッション材2に接着材により固定された第2のファスナ半部32と、第1のファスナ半部31と第2のファスナ半部32とを連結するためのスライダ33と、を有している。
【0018】
第1のファスナ半部31は、エレメントと呼ばれる歯31aがテープ状の基材31bに並べられた構成を有し、同様に、第2のファスナ半部32も、エレメントと呼ばれる歯32aがテープ状の基材32bに並べられた構成を有している。基材31b、32bは、樹脂であっても布であってもよい。
【0019】
第1のファスナ半部31の基材31bの基端は、吊り込み部Aに沿って延在すると共に、表皮3の座面部20とサイド面部21との接合箇所に縫合によって固定されている。これに対して、第2のファスナ半部32の基材32bの基端は、長尺状の平板からなる樹脂製のベース部34に一体的に設けられている。基材32bの基端は、ベース部34の中央で一体化が図られている。なお、基材32bが樹脂で形成されている場合、基材32bをベース部34の中央に立設させるようにしてもよい。
【0020】
さらに、クッション材2には、吊り込み部Aに沿って延在する凹部35が設けられている。そして、凹部35の底面35aにベース部34の底面34aが接着材又は両面テープにより固定されている。このようなベース部34を採用することで、クッション材2に第2のファスナ半部32を接着材や両面テープを利用して容易且つ確実に固定することができる。
ここで、ベース部34は、その底面34aがクッション材2に形成した凹部35の底面35aに接着材又は両面テープで固定されているが、これに限られることはない。例えば、ウレタン発泡によりクッション材を成形する際、発泡成形工程において、ベース部をインサート成形し、クッション材と一体化することもできる。また、ベース部をクッション材内の針金にCリングにより固定することもできる。更には、ベース部はクッション材に形成した凹部35の底面35aに接着したインナー表皮に縫合することにより固定することができる。
【0021】
凹部35内に開閉式ファスナ部30を収容させているので、吊り込み部Aが設けられた部分において、開閉式ファスナ部30が乗員の臀部に当たることを適切に防止することができる。
【0022】
このようなシート1においては、開閉式ファスナ部30の第1のファスナ半部31の長手方向における端と第2のファスナ半部32の長手方向における端とを合わせてスライダ33を滑らせるだけで、吊り込み部Aをシート1に簡単かつ確実に作り出すことができる。よって、吊り込み部Aを作り出す際の作業性が良好である。また、スライダ33を滑らせるだけで、クッション材2側の第2のファスナ半部32に対して表皮3側の第1のファスナ半部31を容易に外すことができる(図4参照)ので、表皮3を頻繁に交換するような場合でも、吊り込み部Aの位置ズレが起こり難い。このような表皮3の交換は、季節によって表皮の素材を交換したり、表皮3が汚れてクリーニングするような場合に行われる。
【0023】
図5は他の実施例を示し、上記実施例とほぼ同様な構成であるので、相違点を説明し、他は省略するが、その相違点は、ベース部34に切れ込み部36を形成したものである。これは、吊り込む部分が曲線状の場合には、このベース部34は、クッション材2に形成した凹部35の底面35aに固定しやすくなり、ベース部34の固定作業性が向上する。
この切れ込み部36は、図示では、第2のファスナ半部32の前側に設けているが、後ろ側にも、前側と同位置に設けることもでき、いずれか一方に設けても良い。
【符号の説明】
【0024】
1・・・シート
2・・・クッション材
30・・・開閉式ファスナ部
31・・・第1のファスナ半部
31a・・・歯
31b・・・基材
32・・・第2のファスナ半部
32a・・・歯
32b・・・基材
33・・・スライダ
34・・・ベース部
35・・・凹部
35a・・・底面
SB・・・シートバック
SC・・・シートクッション
A・・・吊り込み部
図1
図2
図3
図4
図5