特許第6307419号(P6307419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307419
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/60 20060101AFI20180326BHJP
   A47C 31/11 20060101ALI20180326BHJP
   B68G 7/052 20060101ALI20180326BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B60N2/60
   A47C31/11 Z
   B68G7/052 A
   B68G7/05 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-239353(P2014-239353)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-97947(P2016-97947A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】長澤 拓
(72)【発明者】
【氏名】上村 知行
(72)【発明者】
【氏名】金子 和之
(72)【発明者】
【氏名】長澤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 勤
(72)【発明者】
【氏名】黒部 亮
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 実公平06−014628(JP,Y2)
【文献】 特開平06−254268(JP,A)
【文献】 特開2013−022379(JP,A)
【文献】 実公平04−039747(JP,Y2)
【文献】 特開2003−53067(JP,A)
【文献】 特開2005−418(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110042(WO,A1)
【文献】 特表2010−538232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C31/00−31/12
B68G 7/00− 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部の表面カバーを着脱自在な第1締結部を介して連結し、前記表面カバーの一部をクッション材側に吊り込んでなる吊り込み部には、前記クッション材と前記表面カバーとを着脱自在に連結する第2締結部が設けられてなるシートにおいて、
前記クッション材と前記表面カバーとを着脱自在に連結する第2締結部は、線ファスナにより形成し、
前記第2締結部は、前記クッション材側の前記吊り込み部に沿って延在する凹部内で前記クッション材に固定された第3締結半部と、前記表面カバーに設けられて前記凹部内に格納されると共に、前記第3締結半部に着脱自在に連結される第4締結半部とを有し、
前記第3締結半部は、前記クッション材の凹部底面に固定したベース部と、このベース部に立設した基材とからなる
こと特徴とするシート。
【請求項2】
前記第2締結部は、スライドファスナである請求項1記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面カバーを周囲カバーに対して着脱自在にしたシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実公平4−39747号公報がある。この公報に記載されたシートは、座席形状にモールド加工した発泡体クッション材と、このクッション材を被覆し且つクッション材側に固定された袋状の被覆体と、この被覆体の前面側を被覆する表面カバーである第1カバーと、被覆体の後側を被覆する周囲カバーである第2カバーと、第1カバーと第2カバーとを連結するスライドファスナと、を備えている。
しかしながら、表面カバーの周縁が周囲カバーの周縁に対してスライドファスナにより着脱自在になっているだけなので、表面カバーに対して周囲カバーを緊張状態で装着すると、スライドファスナに負荷がかかり、これによって、スライドファスナが破損したり、表面カバーにシワや弛みが発生しやすいという課題があるので、特開平6−254268号公報記載の様に、クッション材に吊り込み部を形成して、そこに表面カバーを面状ファスナ、例えばマジックファスナで吊り込み締結しているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−39747号公報
【特許文献2】特開平6−254268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表面カバーをクッション材に形成した吊り込む部にマジックファスナで締結する構造では、表面カバーを着脱する際、表面カバー側のマジックファスナと吊り込む部側のマジックファスナとのマジックファスナ同士が締結しやすいので、締結位置決めが定まらずに着脱作業に時間を要したり、締結位置が定まらずに表面カバーを締結すると、表皮カバーにシワや弛みが生じたり、長期間使用するとマジックファスナの機能が劣化するという課題が生じていた。
【0005】
本発明は、表面カバーにシワや弛みが発生し難く、表面カバーの着脱が容易で、しかも、長期間の使用にも耐えられるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シート部の表面カバーを着脱自在な第1締結部を介して連結し、前記表面カバーの一部をクッション材側に吊り込んでなる吊り込み部には、前記クッション材と前記表面カバーを着脱自在に連結する第2締結部が設けられてなるシートにおいて、
前記クッション材と前記表面カバーを着脱自在に連結する第2締結部は線ファスナから形成したことを特徴とするシート。
【0007】
このシートにおいては、表面カバーと吊り込む部とを締結する第2締結部は線ファスナにより形成しているので、この第2締結部を締結する際には、線ファスナ同士の位置決めが容易に行えるので、第2締結部の締結作業が容易に行える。線ファスナであれば、位置決めが確実に行えるので、表面カバーにシワや弛みが生じることなく、表面カバーの外観品質が向上する。更には、第2締結部の締結作業において、線ファスナで締結するので、第2締結部の耐久性が向上する。
【0008】
また、着脱自在な前記第2締結部は、前記クッション材側で前記吊り込み部に沿って延在する凹部内で前記クッション材に固定された第3締結半部と、前記表面カバーに設けられて前記凹部内に格納されると共に、前記第3締結半部に着脱自在に連結される第4締結半部と、を有すると好適である。
このような構成を採用すると、凹部内に第2締結部が格納されるので、吊り込み部において第2締結部が乗員の臀部や背中に当たることを適切に防止することができる。
【0009】
また、前記第2締結部は、線ファスナであると好適である。
この場合、線ファスナを利用すると、凹部の開口側で第4締結半部を上から押さえることにより位置合わせが容易に装着作業を行うことができるので、作業性が極めて良好である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面カバーにシワや弛みが発生し難く、表面カバーの着脱が容易で、しかも、長期間の使用にも耐えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るシートの第1の実施形態を示す斜視図である。
図2】シートの分解斜視図である。
図3】第1締結部の要部拡大斜視図である。
図4図1のII−II線断面図である。
図5図4に示す要部拡大斜視図である。
図6】本発明に係るシートの第2の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
図7】本発明に係るシートの第3の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるように、車両用シート1は、フロアパネル上で前後に移動自在なシートクッション(シート部)SCと、シートクッションSCに対してリクライニング可能なシートバック(シート部)SBとを備えている。シートクッションSC及びシートバックSBは、発泡体からなるクッション材2の表面が表皮3で覆われている。そして、表皮3は、表面カバー4と周囲カバー5とで構成されている。表面カバー4は、シートクッションSC及びシートバックSBをそれぞれ別体で被覆している。
【0014】
シート1において、シートクッションSC及びシートバックSBには、ライン状の吊り込み部A1〜A6が設けられている。この吊り込み部A1〜A6は、シート1の外観を形成すると同時に表皮3の弛みやズレを防止している。
【0015】
ここで、シートバックSBを例に挙げて説明する。図2図4に示されるように、シートバックSBのクッション材2は、乗員の背中を後方から支持するためのメインクッション部10と、乗員の背中を横から保持するためのサイドクッション部11とを有している。
【0016】
これに対して、表面カバー4は、クッション材2のメインクッション部10上に載置される主面部20と、サイドクッション部11上に載置されるサイド面部21と、によって形成されている。表皮3の主面部20とサイド面部21とは縫合部24によって接合されている。そして、表面カバー4と周囲カバー5とは、サイドクッション部11の外側面11aで第1締結部30によって連結されている。
【0017】
着脱自在な第1締結部30は、表面カバー4の周縁に沿って延在するように設けられた第1締結半部31と、周囲カバー5の周縁に沿って延在するように設けられて、第1締結半部31に着脱自在に連結される第2締結半部32と、を有している。611は第1締結部30を開閉締結するための引手である。
【0018】
第1締結部30は線ファスナとして構成されている。第1締結半部31は、エレメントと呼ばれる歯31aがテープ状の基材31bに並べられた構成を有し、同様に、第2締結半部32も、エレメントと呼ばれる歯32aがテープ状の基材32bに並べられた構成を有している。そして、第1締結半部31の基材31bが、表面カバー4の周縁で縫合され、第2締結半部32の基材32bは、周囲カバー5の周縁で縫合されている。
【0019】
次に、吊り込み部A1について説明する。
【0020】
吊り込み部A1には、クッション材2と表面カバー4とを着脱自在に連結する第2締結部50が設けられている。着脱自在な第2締結部50は、クッション材2側で吊り込み部A1に沿って上下方向に延在する凹部41内でクッション材2に固定された第3締結半部51と、表面カバー4に設けられて凹部41内に格納されると共に、第3締結半部51に着脱自在に連結される第4締結半部53と、を有する。なお、凹部41は、メインクッション部10とサイドクッション部11との境界部分に沿って所定の深さをもって形成されている。
【0021】
第2締結部50は、線ファスナとして構成されている。この第2締結部50において、第4締結半部53に連結される第3締結半部51の基材51bの基端は、長尺状の平板からなる樹脂製のベース部52に固着されている。なお、基材51bが樹脂で形成されている場合、基材51bは、ベース部52の中央に立設させるようにして一体成形されてもよい。そして、凹部41の底面にベース部52の底面が接着材又は両面テープにより固定されている。このようなベース部52を採用することで、クッション材2に第3締結半部51を接着材や両面テープを利用して容易且つ確実に固定することができる。
第4締結半部53は、エレメントと呼ばれる歯53aが並べられた構成を有し、同様に、第3締結半部51も、エレメントと呼ばれる歯51aがテープ状の基材51bに並べられた構成を有している。600は第2締結部50を開閉締結するための引手である。
【0022】
なお、シートバックSBに関して、吊り込み部A2,A3(図1参照)も、吊り込み部A1と同等な構成になっているので、説明は省略する。
【0023】
このようなシート1においては、第1締結部30と第2締結部50とが着脱自在になっているので、表面カバー4を季節によって容易に交換したり、クリーニングすることができる。また、表面カバー4と周囲カバー5とを着脱自在な第2締結部50で連結していので、その結果、第1締結部30に直接加わる負荷を、第2締結部50が適切に低減させるので、第1締結部30の破損を防止し、表面カバー4にシワや弛みが発生し難くなる。
第2締結部50は、線ファスナとして構成されているので、表面カバー4を吊り込んで、表面カバー4の第4締結半部53を凹部41内の第3締結半部51に締結する際、その位置合わせが容易で、所定の位置に確実に締結することができるし、頻繁に締結着脱作業を行っても、線ファスナは丈夫なのでファスニング機能を損なうことがなく、耐久性が向上する。表面カバー4を吊り込む際には、工具等が不要で、ファスニングにより表面カバー4を吊り込み締結することができ、簡単に締結作業が行える。
【0024】
シート1に関して、シートバックSBを代表して説明したが、シートクッションSCの第1締結部30、第2締結部50及び吊り込み部A4〜A6(図1参照)についても同様の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0025】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、本発明のシートは、自動車シート、航空機用シート、旅客船用シートなどに使用することができる。
【0026】
次に、第1締結部の適用例につき説明する。
図6に示されるように、第1締結部60は面ファスナとして構成されている。第1締結半部61は、雄部をなして、表面カバー4の周縁で縫合されている。同様に、第2締結半部62は雌部をなして、周囲カバー5の周縁で縫合されている。
【0027】
図7に示されるように、第1締結部70は引っ掛け可能なフック手段で構成されている。樹脂製の第1締結半部71の先端には、断面U又はV字状の第1引っ掛け部71aが設けられ、第1締結半部71の基端は、表面カバー4の周縁で縫合されている。同様に、樹脂製の第2締結半部72の先端には、断面U又はV字状の第2引っ掛け部72aが設けられ、第2締結半部72の基端は、周囲カバー5の周縁で縫合されている。
【0028】
そして、第2引っ掛け部72aに対して第1引っ掛け部71aを引っ掛けることで、表面カバー4を周囲カバー5に接続させることができる。この引っ掛け状態で、表面カバー4を強く引っ張ることで、第2引っ掛け部72aから第1引っ掛け部71aを容易に外すことができる。
【符号の説明】
【0029】
1…シート 2…クッション材 3…表皮 4…表面カバー 5…周囲カバー 30…第1締結部 31…第1締結半部 32…第2締結半部 50…第2締結部 51…第3締結半部 53…第4締結半部 60…第1締結部 61…第1締結半部 62…第2締結半部 70…第1締結部 71…第1締結半部 72…第2締結半部 A1〜A6…吊り込み部 SB…シートバック(シート部) SC…シートクッション(シート部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7