特許第6307441号(P6307441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307441
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】電気鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 8/12 20060101AFI20180326BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20180326BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20180326BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20180326BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20180326BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20180326BHJP
   B23K 26/359 20140101ALI20180326BHJP
   H01F 1/16 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C21D8/12 D
   C21D8/12 B
   B23K26/064 A
   B23K26/073
   B23K26/082
   B23K26/142
   B23K26/354
   B23K26/359
   H01F1/16
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-549958(P2014-549958)
(86)(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公表番号】特表2015-510543(P2015-510543A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】KR2012009642
(87)【国際公開番号】WO2013100353
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年7月8日
【審判番号】不服2016-11778(P2016-11778/J1)
【審判請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0145401
(32)【優先日】2011年12月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】クォン、 オー−ヨウル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ウォン−グル
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 チャン−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ヒュン−チュル
【合議体】
【審判長】 板谷 一弘
【審判官】 長谷山 健
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−292484(JP,A)
【文献】 特開昭61−117222(JP,A)
【文献】 特開2003−129135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12, C21D 9/46, B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板上に互いに対向する第1側面と第2側面および底面を有するように形成されたグルーブ(groove)と、
前記第1、第2側面および底面上にグルーブの形成過程で前記鋼板の溶融副産物が凝固して形成された凝固部が、前記底面に前記凝固部が残留せず前記グルーブの第1および第2側面に凝固部が形成されているか、または前記底面及び前記第2側面に凝固部が形成されており、
前記底面に前記凝固部が残留せず前記グルーブの第1および第2側面に前記凝固部が形成されている場合は、前記底面にオープニング部が形成されており、前記底面及び前記第2側面に前記凝固部が形成されている場合は、前記第1側面に前記オープニング部が形成され、前記第1、第2側面に形成される凝固部は、前記底面にいくほど厚さが減少し、前記鋼板の表面部にいくほど厚く形成され、
圧延方向の前記グルーブの直径(Bは10μm〜70μmであり、前記鋼板の幅方向の前記グルーブの長さ(B)は10μm〜150μmであることを特徴とする、電磁鋼板。
【請求項2】
前記第1側面または第2側面に形成された凝固部は、
側面距離(C)を鋼板の表面と前記側面との境界から前記グルーブの底面の中心(center)までの距離と定義する時、
前記側面距離の2%以上を占めることを特徴とする、請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項3】
前記グルーブの深さは、3〜30μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項4】
前記凝固部の厚さ範囲は、0.05W1〜5W1であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁鋼板。
ここで、W1は、下部半価幅を意味し、下部半価幅(W1)は、前記底面の鋼板幅方向の長さの1/2である。
【請求項5】
前記電磁鋼板は、2次再結晶のための高温焼鈍および張力コーティングが完了した方向性電磁鋼板、または2次再結晶のための高温焼鈍が完了し、張力コーティングが未処理である方向性電磁鋼板であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項6】
レーザの照射によって鋼板の表面を溶融し、第1、第2側面および底面を有するグルーブ(groove)を形成する段階と、
前記グルーブを形成する段階において、前記第1、第2側面、底面上に形成される前記鋼板の溶融副産物をエアーブローイングまたは吸引して除去することにより、前記第1、第2側面および底面が露出するオープニング部を形成する段階とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記鋼板の表面に照射されるレーザの形状は、円形または楕円形(oval)であることを特徴とする、請求項6に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記圧延方向のグルーブ直径を形成するために、前記電磁鋼板の表面に照射されるレーザの圧延方向の幅は、60μm以内であることを特徴とする、請求項6に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記鋼板の幅方向のグルーブ長さ形成のために、
前記鋼板の表面に照射されるレーザの鋼板幅方向の長さは、
前記レーザの形状が円形の場合、90μm以内であり、
前記レーザの形状が楕円形(oval)の場合、150μm以内であることを特徴とする、請求項に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記レーザの照射時、
圧延方向の照射距離(DS)は、3mm〜30mmであることを特徴とする、請求項6に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記レーザの照射によって前記電磁鋼板の表面に形成されるグルーブにおいて、
前記第1側面または第2側面に形成された凝固部は、
側面距離(C)を鋼板の表面と前記側面との境界から前記グルーブの底面の中心(center)までの距離と定義する時、
前記側面距離の2%以上を占めることを特徴とする、請求項6に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記レーザの照射は、前記鋼板の幅方向に対して3つ〜6つに区分されて照射されることを特徴とする、請求項6に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記鋼板に照射して表面を溶融するためのレーザを発生させるレーザ発生部と、
前記鋼板に入射する入射ビームの形状を制御するシェーピングミラーと、
前記鋼板の移動速度に応じて移動しながら、前記鋼板に入射する入射ビームの焦点距離を調節する移動式焦点距離制御部と、
前記レーザの照射によって前記鋼板の表面が溶融時に発生する溶融副産物を除去する溶融副産物除去部とを含むことを特徴とする、請求項1記載の電磁鋼板の磁区微細化装置。
【請求項14】
前記シェーピングミラーは、複数のミラーから構成され、2つのミラーを連動させて円形または楕円形の形状を有するビームを形成することを特徴とする、請求項13に記載の電磁鋼板の磁区微細化装置。
【請求項15】
前記移動式焦点距離制御部は、ポリゴンスキャナミラーと、焦点ミラーとから構成され、前記ポリゴンスキャナミラーの回転速度を調節して駆動されることを特徴とする、請求項13に記載の電磁鋼板の磁区微細化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板に関するものであって、より詳細には、鋼板の表面にレーザ照射によるグルーブを形成し、鋼板の磁区を微細化させた方向性電磁鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板は、変圧器などの電気機器の鉄心材料として用いられ、電気機器の電力損失を低減し、効率を高めるために、鉄損が少なく、磁束密度が高い磁気的特性を有する鋼板が要求される。
【0003】
一般に、方向性電磁鋼板は、熱延および冷延と焼鈍工程により、圧延方向に{110}<001>方向が配向された集合組織(別名、「ゴス集合組織」ともいう)を有する材料をいう。
【0004】
このような方向性電磁鋼板において、{110}<001>方向は、鉄の磁化が容易な方向にその配向された程度が高いほど、磁気的特性に優れる。
【0005】
方向性電磁鋼板の磁気的特性を向上させるために磁区を微細化する方法が使用されるが、磁区微細化方法としては、応力除去焼鈍によって磁区微細化改善効果維持の有無によって、一時的磁区微細化と、永久的磁区微細化に区分することができる。
【0006】
一時的磁区微細化方法は、熱エネルギーや機械的エネルギーで表面に局部的な圧縮応力を印加することによって発生した磁気弾性エネルギーを最小化させるために、90°ドメイン(domain)を形成することによって磁区を微細化させるドメイン微細化技術である。一時的磁区微細化技術は、ドメインを微細化させるエネルギー源によって、レーザ磁区微細化法、ボールスクラッチ法、プラズマまたは超音波による磁区微細化法がある。
【0007】
熱処理後にも鉄損改善効果を維持可能な永久的磁区微細化方法は、エッチング法、ロール法、およびレーザ法に区分することができる。エッチング法は、溶液内において酸容液で電気化学的な腐食反応によって鋼板の表面にグルーブを形成させるため、グルーブ形状(グルーブの幅、グルーブの深さ)の制御が難しく、鋼板を生産する中間工程(脱炭焼鈍、高温焼鈍前)でグルーブを形成させるため、最終製品の鉄損特性の保証が難しく、酸溶液を使用することから、環境に優しくない欠点を有している。
【0008】
ロールによる永久的磁区微細化方法は、ロールに突起形状を加工し、加圧法によって鋼板の表面に一定の幅および深さを有するグルーブを形成し、永久的磁区微細化処理後に鋼板を焼鈍することによってグルーブ下部の再結晶を発生させることにより、磁区を微細化させる技術であって、機械加工に対する安定性、信頼性およびプロセスが複雑である欠点を有している。
【0009】
パルスレーザによる永久的磁区微細化方法は、蒸着によってグルーブを形成させるため、溶融部の形成を抑制することから、熱処理(応力除去焼鈍、SRA)前の鉄損改善率を確保しにくく、熱処理後には、単純なグルーブによる磁区微細化効果だけを維持する上に、鋼板の移送速度を高速に処理できない欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、方向性電磁鋼板の表面に連続波レーザビームを照射することによってグルーブを形成し、グルーブの側壁(内部壁面)に溶融金属の凝固部を形成させることにより、熱処理前後の鉄損改善率を改善した方向性電磁鋼板の磁区微細化方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態にかかる電磁鋼板は、鋼板上に互いに対向する第1側面と第2側面および底面を有するように形成されたグルーブ(groove)と、前記第1、第2側面および底面上にグルーブの形成過程で前記鋼板の溶融副産物が凝固して形成される凝固部が除去され、前記第1、第2側面および底面のうちの少なくとも一面が露出するオープニング部とを有することを特徴とする。
【0012】
前記第1側面または第2側面に形成された凝固部は、側面距離(C)を鋼板の表面と凝固部との境界から前記グルーブの底面の中心までの距離と定義する時、前記側面距離の2%以上を占めることを特徴とする。
【0013】
前記グルーブの形成時、グルーブ形状因子をグルーブの深さ(D)/下部半価幅(W)と定義する時、前記グルーブ形成因子は、0.1〜9.0であることを特徴とする。ここで、前記グルーブの深さ(D)は、前記鋼板の表面から前記底面までの距離であり、下部半価幅(W)は、前記底面の鋼板幅方向の長さの1/2である。
【0014】
前記グルーブの幅範囲は、10〜70μmであってよい。
【0015】
前記グルーブの深さは、0.5μm以下であってよい。
【0016】
前記凝固部の厚さ範囲は、0.05W〜5Wであってよい。ここで、前記下部幅(W)は、前記底面の中央から前記第1、第2側面に形成された凝固部の開始地点までの鋼板の幅方向の距離である。
【0017】
前記第1、第2側面に形成される凝固部は、前記底面にいくほど厚さが減少し、前記鋼板の表面部にいくほど厚く形成されてよい。
【0018】
前記電磁鋼板は、2次再結晶のための高温焼鈍および張力コーティングが完了した方向性電磁鋼板、または2次再結晶のための高温焼鈍が完了し、張力コーティングが行われる前の方向性電磁鋼板であってよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態にかかる電磁鋼板の製造方法は、レーザの照射によって鋼板の表面を溶融し、第1、第2側面および底面を有するグルーブ(groove)を形成する段階と、前記グルーブを形成する段階において、前記第1、第2側面、底面上に形成される前記鋼板の溶融副産物をエアーブローイングまたは吸引して除去することにより、前記第1、第2側面および底面のうちの少なくとも一面が露出するオープニング部を形成する段階とを含む。
【0020】
前記鋼板の表面に照射されるレーザの形状は、球形(sphere)または楕円形(oval)であってよい。
【0021】
前記レーザの照射によって前記電磁鋼板の表面にグルーブの形成時、圧延方向のグルーブ直径(BW)は、10μm〜70μmであってよい。
【0022】
前記圧延方向のグルーブ直径を形成するために、前記電磁鋼板の表面に照射されるレーザの圧延方向の幅は、60μm以内であってよい。
【0023】
前記レーザの照射によって前記電磁鋼板の表面にグルーブの形成時、鋼板の幅方向のグルーブ長さ(BL)は、10μm〜100μmであってよい。
【0024】
前記鋼板の幅方向のグルーブ長さ形成のために、前記鋼板の表面に照射されるレーザの鋼板幅方向の長さは、前記レーザの形状が球形の場合、90μm以内であり、前記レーザの形状が楕円形(oval)の場合、150μm以内であってよい。
【0025】
前記レーザの照射によって前記電磁鋼板の表面にグルーブの形成時、圧延方向のグルーブ直径(BW)は、10μm〜70μmであり、鋼板の幅方向のグルーブ長さ(BL)は、10μm〜100μmであってよい。
【0026】
前記レーザの照射時、圧延方向の照射距離(D)は、3mm〜30mmであってよい。
【0027】
前記レーザの照射によって前記電磁鋼板の表面に形成されるグルーブにおいて、前記第1側面または第2側面に形成された凝固部は、側面距離(C)を鋼板の表面と凝固部との境界から前記グルーブの底面の中心までの距離と定義する時、前記側面距離の2%以上を占めることができる。
【0028】
前記レーザビームの照射によって前記電磁鋼板の表面にグルーブを形成時、グルーブ形状因子をグルーブの深さ(DG)/下部半価幅(W1)と定義する時、前記グルーブ形成因子は、0.1〜9.0であってよい。ここで、前記グルーブの深さ(DG)は、前記鋼板の表面から前記底面までの距離であり、下部半価幅(W1)は、前記底面の鋼板幅方向の長さの1/2である。
【0029】
前記レーザの照射は、前記鋼板の幅方向に対して3つ〜6つに区分されて照射されてよい。
【0030】
本発明の他の実施形態にかかる電磁鋼板の磁区微細化装置は、鋼板に照射して表面を溶融するためのレーザを発生させるレーザ発生部と、鋼板に入射する入射ビームの形状を制御するシェーピングミラーと、鋼板の移動速度に応じて移動しながら、鋼板に入射する入射ビームの焦点距離を調節する移動式焦点距離制御部と、レーザの照射によって鋼板の表面が溶融時に発生する溶融副産物を除去する溶融副産物除去部とを含む。
【0031】
前記シェーピングミラーは、複数のミラーから構成され、2つのミラーを連動させて円形または楕円形の形状を有するビームを形成することができる。
【0032】
前記移動式焦点距離制御部は、ポリゴンスキャナミラーと、焦点ミラーとから構成され、前記ポリゴンスキャナミラーの回転速度を調節して駆動されてよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、連続波レーザビームを電磁鋼板の表面に照射して溝を形成させると共に、レーザ照射による溶融部を溝の内部壁面に形成させることにより、応力除去焼鈍熱処理前には、溶融部の凝固組織による張力効果によって磁区微細化効果を示すことができ、応力除去焼鈍熱処理後には、張力と溝による電磁気効果を確保することにより、磁区微細化効果をより一層極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態にかかる方向性電磁鋼板の表面に圧延方向の垂直方向にレーザを照射することを概略的に示した図である。
図2】鋼板の表面にレーザを照射する時、照射部位でのグルーブの形状をXY平面上に示した図である。
図3図1に示された鋼板のA−A’断面の断面図である。
図4図3に示されたグルーブの内側面に形成される凝固部を拡大して示した図である。
図5】本発明にかかる方向性電磁鋼板の磁区微細化時、鋼板の表面に照射されるレーザビームの形状およびモードを示した図である。
図6】本発明にかかる方向性電磁鋼板の表面に、レーザを鋼板の幅方向に対して3つの区分された線で照射したことを示した図である。
図7】本発明にかかる電磁鋼板の表面にレーザを照射する磁区微細化装置の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施形態は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を表す。
【0036】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかる磁区微細化のために鋼板の表面にグルーブ(groove)が形成された電磁鋼板について説明する。
【0037】
図1は、電磁鋼板10の圧延方向に垂直に一定の間隔で照射されるレーザの照射線20を示した図である。
【0038】
図3は、図1に示されたレーザの照射によって鋼板の表面に形成された様々な形状のグルーブ30の断面を示した図である。
【0039】
図3を参照すれば、本発明の好ましい実施形態にかかる電磁鋼板は、鋼板上に互いに対向する第1側面と第2側面および底面を有するように形成されたグルーブ30(groove)と、前記第1、第2側面および底面上にグルーブ30の形成過程で前記鋼板の溶融副産物が凝固して形成される凝固部が除去され、前記第1、第2側面および底面のうちの少なくとも一面が露出するオープニング部とを有することを特徴とする。
【0040】
図4は、鋼板に形成されたグルーブの第1、第2側面に溶融副産物による凝固部35が形成されたことを示した図である。グルーブの底面は、凝固部が形成されていないことを示したものである。
【0041】
図4を参照すれば、前記第1側面または第2側面に形成された凝固部35は、それぞれの側面距離(C)の2%以上を占めることを特徴とする。
【0042】
また、図3を参照すれば、グルーブ形状因子(D/W)は、0.1〜9.0であることを特徴とする。
【0043】
前記電磁鋼板の表面にグルーブ30を形成するために、鋼板の表面に連続波(continuous wave)レーザを照射して、鋼板の表面部の溶融によるグルーブ30を形成し、前記グルーブ30の第1、第2側面に溶融副産物の凝固部が形成される。
【0044】
前記電磁鋼板は、方向性電磁鋼板が使用可能であり、方向性電磁鋼板は、圧延方向に対して鋼板の集合組織が{110}<001>のゴス集合組織(GOSS texture)を示していて、一方向あるいは圧延方向に磁気的特性に優れた軟磁性材料である。
【0045】
方向性電磁鋼板は、圧延方向に磁気的性質に優れ、変圧器、電動機、発電機、およびその他電子機器などの鉄心材料として用いられている。
【0046】
一般に、方向性電磁鋼板の製造は、連続鋳造工程によって製造されたスラブ(slab)を、熱間圧延→予備焼鈍→冷間圧延→脱炭焼鈍→高温焼鈍→平坦化焼鈍および絶縁コーティング→訂正およびレーザ処理などによって行われる。
【0047】
前記レーザの照射が行われる方向性電磁鋼板は、鋼板の2次再結晶を生じさせるための高温焼鈍工程が完了し、張力コーティングが塗布されているか、高温焼鈍工程が完了し、張力コーティングが塗布される前の鋼板が使用できる。
【0048】
本発明の一実施形態にかかる電磁鋼板の製造方法は、レーザの照射によって鋼板の表面を溶融し、第1、第2側面および底面を有するグルーブ(groove)を形成する段階と、前記グルーブを形成する段階において、前記第1、第2側面、底面上に形成される前記鋼板の溶融副産物をエアーブローイングまたは吸引して除去することにより、前記第1、第2側面および底面のうちの少なくとも一面が露出するオープニング部を形成する段階とを含む。
【0049】
図2は、図1に示されたレーザが照射される鋼板の2つの照射線部位30をXY平面に対して示したもので、レーザが照射されるにつれて表面が溶融しながら、溶融副産物の除去によってグルーブが形成されることを概略的に示したものである。
【0050】
グルーブが形成されながらグルーブの内部の両側面に形成される第1、第2側面は、図示を省略した。
【0051】
圧延方向のグルーブ直径(B)、鋼板の幅方向のグルーブ長さ(B)、およびレーザビームの圧延方向の照射距離(D)を、図2に示した。
【0052】
前記レーザの照射によって前記鋼板の表面にグルーブの形成時、圧延方向のグルーブ直径(BW)は、10μm〜70μmであることを特徴とする。圧延方向のグルーブ直径は、以下に述べているように、電磁鋼板の表面に照射されるレーザの圧延方向の幅が60μm以内の場合、照射部位で溶融部と隣接した熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)の影響を考慮して調節する。
【0053】
より具体的には、圧延方向のグルーブ直径(B)が10μm未満の場合は、SRA(Stress Relief Annealing)熱処理後、鉄損改善効果が現れず、70μm超過の場合は、連続波レーザによる熱影響が大きくて熱処理前の鉄損改善効果を示しておらず、磁束密度の劣化が大きくなる。
【0054】
また、前記圧延方向のグルーブ直径(BW)を形成するために、前記電磁鋼板の表面に照射されるレーザビームの圧延方向の幅は、60μm以内に調節する。
【0055】
一方、前記レーザの照射によって前記鋼板の表面にグルーブの形成時、鋼板の幅方向のグルーブ長さ(B)は、10μm〜150μmであることを特徴とする。
【0056】
鋼板の幅方向のグルーブ長さは、以下に述べているように、一定の鋼板の幅方向の長さを有する球形または楕円形のレーザを照射時、溶融部と隣接した熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)の影響を考慮して調節する。
【0057】
より具体的には、鋼板の幅方向のグルーブ長さが10μm未満の場合、応力除去焼鈍(SRA)熱処理前の鉄損改善効果が現れず、150μm超過の場合は、応力除去焼鈍熱処理前の磁束密度および鉄損の劣化が現れる。
【0058】
前記鋼板の幅方向のグルーブ長さ形成のために、前記鋼板の表面に照射されるレーザの鋼板の幅方向の長さは、前記レーザの形状が球形の場合、90μm以内であり、前記レーザの形状が楕円形(oval)の場合、150μm以内であることを特徴とする。
【0059】
前記レーザの照射時、圧延方向の照射距離(D)は、連続波レーザビームによる熱影響部の影響を最小化させるために、3mm〜30mmであることを特徴とする。
【0060】
図3は、図1に示された鋼板のA−A’方向の断面を示したもので、グルーブ30の底面とグルーブ30の第1、第2側面に形成された凝固部35が示されている。
【0061】
図3の左側には、レーザの照射によって第1、第2側面および底部に凝固部が形成されたことを示した図である。
【0062】
図3の左側から2番目からは、本発明の好ましい実施形態にかかるグルーブが形成されたことを示したもので、底面に凝固部が残留せず、グルーブの第1、第2側面にのみ凝固部35が形成されたり、底面と第2側面の一面にのみ凝固部33、35が形成されたこと、グルーブの第2側面の一面にのみ凝固部35が形成されたこと、グルーブだけが形成され、凝固部は残留しないことを示している。
【0063】
前記レーザの照射によって前記鋼板の表面に形成されるグルーブにおいて、グルーブの第1、第2側面に形成される凝固部35は、それぞれ第1、第2側面距離の2%以上を占めることを特徴とする。
【0064】
図4は、図3のグルーブの第1、第2側面にのみ凝固部が形成された部分をより詳細に示した図である。
【0065】
図4に示しているように、第1、第2側面距離(C)は、鋼板の表面と前記側面との境界から前記グルーブ30の底面の中心(center)までの距離を意味する。
【0066】
前記凝固部35の占める部分が第1または第2側面距離(C)の2%未満の場合は、熱処理前の鉄損改善効果が現れず好ましくない。
【0067】
前記レーザの照射によって前記鋼板の表面にグルーブを形成時、グルーブ形状因子をグルーブの深さ(D)/下部半価幅(W)と定義する時、前記グルーブ形成因子は、0.1〜9.0であることを特徴とする。
【0068】
グルーブ形成因子を構成するグルーブの深さ(D)は、鋼板の表面からグルーブの底面に形成された凝固部の谷までの深さ(depth)を意味する。
【0069】
一方、グルーブの底面に凝固部を除去した場合は、鋼板の表面からグルーブの底面までの距離を意味する。
【0070】
下部半価幅(W)は、図3に示されているように、前記底面の鋼板幅方向の長さの1/2を意味する。底面の鋼板幅方向の長さは、底面と第1、第2側面とのなす境界地点間の直線距離となってよい。
【0071】
前記レーザの照射は、鋼板の2次再結晶のための高温焼鈍および張力コーティングが完了した電磁鋼板、または2次再結晶のための高温焼鈍が完了し、張力コーティングが行われる前の電磁鋼板に対して行われることを特徴とする。
【0072】
電磁鋼板にレーザの照射によって表面部に形成される溶融副産物は、エアーブローイング(air blowing)または吸引(suction)によって除去することを特徴とする。
【0073】
前記エアーブローイングまたは吸引によってグルーブ内に形成される凝固部は、グルーブの底面と第1、第2側面に同時あるいは単独で生成される。溶融副産物の凝固組織をグルーブの第1、第2側壁にのみ形成するためには、レーザの照射によってグルーブに形成された溶融金属をエアーを注入して外部に飛散させたり、グルーブの第1、第2側面に移動するようにブローイングすることによって可能である。
【0074】
グルーブの底面に形成された溶融副産物は、吸引(suction)装置などを用いて除去することにより、グルーブの底面に凝固部が形成されないようにすることができる。
【0075】
図5は、本発明における電磁鋼板の表面にグルーブを形成するために表面に照射される連続波レーザの形状を示したもので、レーザの形状が球形(sphere)または楕円形(oval type)の場合を示した。
【0076】
連続波レーザによって形成されたレーザビームの形状は、図5に示しているように、球形または楕円形(oval shape)形態の単一モード(single mode)形状を有している。図5は、球形または楕円形のレーザの形状およびそれぞれのレーザのガウスモード(Gaussian mode)を示したもので、いずれも単一モードであることが分かる。
【0077】
図6は、鋼板の表面に照射されるレーザ照射線20が3つに区分(分割)されて照射されることを示した図で、レーザの照射は、前記鋼板の幅方向に対して3つ〜6つに区分されて照射されることを特徴とする。
【0078】
図6に示された鋼板の幅方向に対して複数のグルーブが断続的に形成されるためには、図7に示した磁区微細化装置を複数構成し、鋼板の表面に照射することによって行われる。
【0079】
以下、実施例により、本発明にかかる方向性電磁鋼板の磁区微細化方法について詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0080】
<実施例:連続波レーザの照射による電磁鋼板の磁区微細化>
図7は、本発明の電磁鋼板に連続波レーザビームを照射して電磁鋼板の磁区を微細化するための磁区微細化装置を示したものである。
【0081】
図7を参照すれば、本発明にかかる方向性電磁鋼板の磁区微細化装置は、鋼板に照射して表面を溶融するためのレーザを発生させるレーザ発生部100と、鋼板に入射する入射ビームの形状を制御するシェーピングミラー120、125、127と、鋼板の移動速度に応じて移動しながら、鋼板に入射する入射ビームの焦点距離を調節する移動式焦点距離制御部と、レーザの照射によって鋼板の表面が溶融時に発生する溶融副産物を除去する溶融副産物除去部170とを含むことを特徴とする。
【0082】
前記シェーピングミラー120、125、127は、複数のミラーから構成され、2つのミラーを連動させて円形または楕円形の形状を有するビームを形成することを特徴とする。
【0083】
前記移動式焦点距離制御部は、ポリゴンスキャナミラー130と、焦点ミラー160とから構成され、前記ポリゴンスキャナミラー130の回転速度を調節して駆動されることを特徴とする。
【0084】
前記レーザ発生部100は、連続波レーザを発生させ、発生したレーザは、全反射ミラー110を経由して、2つのレンズを連動させて円形または楕円形(oval)の形状を有するように変換させる複数のシェーピングミラー120、125、127によって変換された後、一定の速度で回転しながら、前記シェーピングミラー120、125、127から入射したレーザを鋼板の移動速度に応じて移動しながら、鋼板に入射する入射ビームの焦点距離を調節する移動式焦点距離制御部によって鋼板に入射する。
【0085】
前記移動式焦点距離制御部は、ポリゴンスキャナミラー130と、焦点ミラー160とから構成される。
【0086】
鋼板にレーザが入射して鋼板の表面が溶融する場合、エアーブロワーまたは吸引装置によって溶融副産物を除去することにより、鋼板の表面にグルーブを形成する。
【0087】
前記溶融副産物は、エアーブロワーによって溶融副産物を飛散させて除去することができる。
【0088】
図7に示されたレーザ照射装置を用いて鋼板の圧延幅方向に平行にレーザビームを照射すると、図3および図4に示されているように、連続波レーザによって形成されたグルーブは、底面と第1、第2側面に溶融副産物が凝固した凝固部33、35を有するようになり、グルーブの照射距離(D)は、レーザ光学系でポリゴンスキャナミラー130の回転速度を調節することによって調整する。
【0089】
図7を参照すれば、レーザ発生部100から発進した連続波レーザビームは、全反射ミラー110を経由した後、複数のシェーピングミラー120、125、127を通して鋼板10に照射されるビームの形状を球形あるいは楕円形(oval)に形成するようにし、このような球形と楕円形のビームは、シリンダ140を通してビーム形状ミラー125、127を選択的に用いることによって形成される。
【0090】
つまり、レーザの形状を実現するために、2つのシェーピングミラー120、125を連動させてレーザの形状を円形に形成することができ、2つのシェーピングミラー120、127を連動させてレーザの形状を楕円形(oval)に形成可能である。
【0091】
つまり、シリンダ140によって2つのシェーピングミラー125、127を選択的に移動させることにより、前段部のシェーピングミラー120と組み合わせによって円形または楕円形のビームを形成することができる。前記シェーピングミラー120、125、127は、互いに異なる曲率を有して形成されている。
【0092】
シェーピングミラー125、127で一定の形状を有するように変換されたレーザは、ポリゴンスキャナミラー130を経由した後、焦点ミラー160で鋼板に連続波レーザを照射する。鋼板10に照射されるレーザ照射線20は、ポリゴンスキャナミラー130の回転速度を調節することにより、3〜30mmまで調節することができる。
【0093】
ポリゴンスキャナミラー130は、円形の回転体の表面に複数枚の平面鏡を付着させて回転させることにより、各鏡は、短時間の間、レーザビームを鋼板の表面に照射し、次に隣接した他の鏡がレーザビームを受けて照射することを連続的に生じさせる。
【0094】
一方、鋼板の表面に形成された溶融副産物を飛散させることによって溶融副産物が除去されたグルーブが形成されたり、グルーブの第1、第2側面に溶融副産物が凝固した凝固部が形成されてよい。溶融副産物を飛散させるために、エアーなどを吹き込む溶融副産物除去手段が使用できる。また、前記溶融副産物を除去するための吸引手段が使用できる。
【0095】
表1は、本発明の連続波レーザの照射によって0.27mm厚さの鋼板の表面に形成されたグルーブと、溶融副産物の凝固組織による方向性電磁鋼板の鉄損改善率の変化を示している。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示しているように、鋼板の進行方向に対して85〜95°の角度でレーザビームを照射して、鋼板の表面にグルーブを下部幅(W)10μm以内、深さ3〜30μmに形成させることにより、熱処理前の鉄損改善率を7%、熱処理後の鉄損改善率を10%以上改善することができた。
【0098】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。
【0099】
そのため、以上に述べた実施形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変更された形態が本発明の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7