(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307451
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】放射空調システム
(51)【国際特許分類】
F24D 3/10 20060101AFI20180326BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
F24D3/10 L
F24F5/00 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-10188(P2015-10188)
(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-133293(P2016-133293A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】呉 鐵雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 良則
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−178225(JP,A)
【文献】
特開2013−092320(JP,A)
【文献】
実開平04−001325(JP,U)
【文献】
特開2009−192144(JP,A)
【文献】
特開平07−174368(JP,A)
【文献】
特表2012−522203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/10
F24D 3/16
F24F 5/00
F28F 1/00
F28F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体に、熱媒体が流動する複数本の異なる流路を備える放射パネルの複数枚を、各放射パネルの複数本の異なる前記流路が、隣接する放射パネルの複数本の異なる流路にそれぞれ直列に連通するように接続して放射パネル群を構成し、
前記放射パネル群の前記直列に連通する複数系統の流路を、低温の熱媒体を供給する低熱源と高温の熱媒体を供給する高熱源とにそれぞれ選択接続可能とした、
ことを特徴とする放射空調システム。
【請求項2】
前記放射パネルの前記複数本の異なる流路は、隣合う流路が異なるように前記パネル本体に配置される、
請求項1に記載の放射空調システム。
【請求項3】
前記放射パネルの前記複数本の異なる流路の内の少なくとも1本の流路は、前記パネル本体における流路長さが、他の流路の流路長さと異なる、
請求項1または2に記載の放射空調システム。
【請求項4】
前記放射パネルは、前記パネル本体に形成された溝部に、熱媒体流動用の伝熱パイプが嵌入されて前記流路が形成される、
請求項1ないし3のいずれかに記載の放射空調システム。
【請求項5】
前記放射パネルの前記溝部は、その開口幅が前記伝熱パイプの外径より僅かに小さい略半円形に形成され、伝熱パイプが前記溝部に圧入嵌合される、
請求項4に記載の放射空調システム。
【請求項6】
前記放射パネル群を複数備え、
各放射パネル群の前記複数系統の流路を、前記低熱源と前記高熱源とにそれぞれ選択接続可能とした、
請求項1ないし5のいずれかに記載の放射空調システム。
【請求項7】
前記放射パネル群の2系統の前記流路における一方の流路の流入ポートを、低温熱媒体の供給流路に弁を介して接続するとともに、一方の前記流路の流出ポートを、低温熱媒体の戻し流路に弁を介して接続し、
前記2系統の前記流路における他方の流路の流入ポートを、高温熱媒体の供給流路に弁を介して接続するとともに、他方の前記流路の流出ポートを、高温熱媒体の戻し流路に弁を介して接続し、
前記2系統の流路における流入ポート同士を、弁を備えたバイパス流路で接続するとともに、2系統の流路における流出ポート同士を、弁を備えたバイパス流路で接続する、
請求項1ないし6のいずれかに記載の放射空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機能を備えた内装材(スパンドレル)として部屋の天井や側壁などに利用される放射パネ
ルを用いた放射空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる放射パネルとしては、例えば、特許文献1に示されているように、放熱性に優れた金属材からなる波形のパネル本体に、冷水や温水などの熱媒体が流される伝熱パイプを蛇行状に配設したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1347139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の放射パネルは、空調対象空間の天井部や側壁部に複数枚並べて設置されるとともに、伝熱パイプを流れる冷水あるいは温水などの熱媒体でパネル本体を冷却あるいは加温し、パネル本体の大きい波形表面から、冷熱あるいは温熱を放射することで、空調対象空間の冷房あるいは暖房が行われる。
【0005】
しかしながら、従来の放射パネルは、熱媒体を流す流路が一本だけであったために、例えば、一連の放射パネルが設置された、例えば、一つの階の全部屋を冷房、あるいは、暖房するような空調システムにならざるを得ず、一つの階における一部の部屋やエリアを冷房し、他の部屋やエリアを暖房するような運転が難しいものとなっていた。また、多層階の構造物における一部の階で冷房運転し、他の階で暖房運転することも難しいものとなっていた。
【0006】
また、放射パネルからの放射熱量は、熱媒体の温度と流量を調節することで調整することが可能であるが、熱媒体の温度調節範囲、及び、単一の流路を流せる流量には限界があり、高負荷から低負荷までの広い範囲の空調負荷に対応することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、例えば、階毎、あるいは、部屋毎に冷房又は暖房の運転をそれぞれ行うことができるとともに、広い範囲の空調負荷にも対応することができる放射パネ
ルを用いた放射空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0009】
(1)本発明に係る
放射空調システムは、パネル本体に、熱媒体が流動する複数本の異なる流路を備える
放射パネルの複数枚を、各放射パネルの複数本の異なる前記流路が、隣接する放射パネルの複数本の異なる流路にそれぞれ直列に連通するように接続して放射パネル群を構成し、前記放射パネル群の前記直列に連通する複数系統の流路を、低温の熱媒体を供給する低熱源と高温の熱媒体を供給する高熱源とにそれぞれ選択接続可能としている。
【0010】
本発明によると、複数本の異なる流路の一部にのみ低温(あるいは、高温)の熱媒体を流動させることで、熱負荷の小さい冷房(あるいは、暖房)を行うことができ、また、複数本の異なる流路の全てに低温(あるいは、高温)の熱媒体を流動させることで、熱負荷の大きい冷房(あるいは、暖房)を行うことができる。
また、本発明によると、例えば、放射パネル群の複数系統の流路の内、一部の系統の流路を、低熱源(あるいは、高熱源)に接続することによって、熱負荷の小さい冷房(あるいは、暖房)を行なうことができ、また、放射パネル群の複数系統の流路の全ての系統の流路を、低熱源(あるいは、高熱源)に接続することによって、熱負荷の大きい冷房(あるいは、暖房)を行なうことができる。
【0011】
(2)本発明の他の実施態様では、
前記放射パネルの前記複数本の異なる流路は、隣合う流路が異なるように前記パネル本体に配置される。
【0012】
この実施態様によると、複数本の異なる流路は、隣合う流路が異なるようにパネル本体に配置されるので、例えば、2本の異なる流路では、低温の熱媒体を流動させる流路と高温の熱媒体を流動させる流路とを、隣合うように交互に配置することができ、異なる流路を、パネル本体に偏在させることなく、均等に配置して、冷熱あるいは温熱を均等に放射させるといったことが可能となる。
【0013】
(3)本発明の更に他の実施態様では、
前記放射パネルの前記複数本の異なる流路の内の少なくとも1本の流路は、前記パネル本体における流路長さが、他の流路の流路長さと異なる。
【0014】
この実施態様によると、複数本の異なる流路の内の少なくとも1本の流路の、パネル本体における流路長さを、他の流路の流路長さと異ならせるので、パネル本体毎、すなわち、放射パネル毎に、例えば、低温の熱媒体を流動させる流路長さを、他の流路である高温の熱媒体を流動させる流路長さよりも長くして冷房能力を暖房能力に比べて高めるといったことが可能となる。
【0015】
これによって、放射パネルの設置枚数だけでは対応できないように空調負荷に対しても、放射パネル自体の能力を変更して対応するといったことが可能となる。
【0016】
(4)本発明の好ましい実施態様では、
前記放射パネルは、前記パネル本体に形成された溝部に、熱媒体流動用の伝熱パイプが嵌入されて前記流路が形成される。
【0017】
この実施態様によると、溝部に伝熱パイプを嵌入するだけで、所望の流路を簡単に形成することができる。
【0018】
(5)本発明の他の実施態様では、
前記放射パネルの前記溝部は、その開口幅が前記伝熱パイプの外径より僅かに小さい略半円形に形成され、伝熱パイプが前記溝部に圧入嵌合される。
【0019】
この実施態様によると、装着された伝熱パイプの外周は、溝部の内面に半周より長い範囲で接触し、伝熱パイプからパネル本体への熱伝達が良好に行われる。また、溝部の開口幅がパイプ外径よりも幅狭となっているので、圧入装着された伝熱パイプは、溝部から浮き上がることが阻止されることになり、溝部の内面と伝熱パイプとの接触がパイプ嵌入部位の全長に亘って確実に維持される。また、一旦圧入装着した伝熱パイプは溝部から簡単には浮き上がらないので、放射パネルの組み立て作業が容易なものとなる。
【0022】
(
6)本発明の好ましい実施態様では、前記放射パネル群を複数備え、各放射パネル群の前記複数系統の流路を、前記低熱源と前記高熱源とにそれぞれ選択接続可能としている。
【0023】
この実施態様によると、複数の放射パネル群の各放射パネル群を、例えば、多層階構造物の階毎、あるいは、同一階の複数の領域毎ごとに設置することで、階毎、あるいは、同一階の領域毎に、冷房運転、または、暖房運転をそれぞれ行うことが可能となる。
【0024】
(
7)本発明の他の実施態様では、前記放射パネル群の2系統の前記流路における一方の流路の流入ポートを、低温熱媒体の供給流路に弁を介して接続するとともに、一方の前記流路の流出ポートを、低温熱媒体の戻し流路に弁を介して接続し、前記2系統の前記流路における他方の流路の流入ポートを、高温熱媒体の供給流路に弁を介して接続するとともに、他方の前記流路の流出ポートを、高温熱媒体の戻し流路に弁を介して接続し、前記2系統の流路における流入ポート同士を、弁を備えたバイパス流路で接続するとともに、2系統の流路における流出ポート同士を、弁を備えたバイパス流路で接続する。
【0025】
この実施態様によると、低温熱媒体供給用と低温熱媒体戻し用の弁を開放し、他の弁を閉じることで、2系統の流路における一方の流路にのみ低温熱媒体が供給流動され、他方の流路での熱媒体の流動は休止されて、低負荷での冷房運転が行われる。
【0026】
また、低温熱媒体供給用と低温熱媒体戻し用の弁と、バイパス用の弁を開き、かつ、低温熱媒体供給用と低温熱媒体戻し用の弁を閉じることで、2系統の流路のそれぞれに低温熱媒体が供給流動され、多量の低温熱媒体の流動によって高負荷の冷房運転が行われる。
【0027】
また、高温熱媒体供給用と高温熱媒体戻し用の弁を開放し、他の弁を閉じることで、一方の流路にのみ高温熱媒体が供給流動され、他方の流路での熱媒体の流動は休止されて、低負荷での暖房運転が行われる。
【0028】
また、高温熱媒体供給用と高温熱媒体戻し用の弁と、バイパス用の弁を開き、かつ、低温熱媒体供給用と低温熱媒体戻し用の弁を閉じることで、2系統の流路のそれぞれに高温熱媒体が供給流動され、多量の高温熱媒体の流動によって高負荷の暖房運転が行われる。
【発明の効果】
【0029】
このように、本発明によれば、例えば、多層階における階毎、あるいは、同一階における領域毎に冷房または暖房を行なうことができ、また、高負荷から低負荷までの広い範囲の空調負荷にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図4】放射パネルを構成するパネル基材の斜視図である。
【
図6】多層階の放射空調システムの概略構成図である。
【
図7】他の実施形態の放射パネルにおける要部を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1に本発明に係る放射パネル1の平面図が、
図2に
図1におけるA−A断面図が、また、
図3にその要部の斜視図がそれぞれ示されている。
【0033】
この放射パネル1は、波板状に形成されたパネル本体2の裏面(図では上面)に沿って、冷水や温水などの熱媒体が流動する2本の流路3,4を構成する2本の伝熱パイプ5,6を蛇行状に装着して構成されている。2本の流路3,4を構成する伝熱パイプ5,6は、その直線状の部分が、並行に隣合うように交互に配置される。
【0034】
パネル本体2は、複数枚(この例では6枚)の細長いパネル基材7をその横幅方向に並列配備し、その横幅方向に沿う複数本(この例では3本)の桟部材8でパネル基材8群を裏面側から互いに連結して所定面積に組上げられている。
【0035】
図4に示すように、パネル基材7は、伝熱性及び放熱性に優れ、かつ、軽量なアルミ材を押し出し成型して波板状に形成されたものであり、この例では、半円形断面の4本の溝部9が一定間隔で並列形成されて、その外表面(図では下面)が、基材外形面積よりも大きい面積の放射面に形成されている。また、パネル基材7における横幅方向の両端に近い裏面(図では上面)には、桟部材8への連結用の係合部として、鉤形断面形状の係合リブ10が基材全長に亘って突設されている。このように、パネル基材7は、基材全長に亘る溝部9及び係合リブ10によって、基材長手方向での曲げ剛性が高いものとなっている。
【0036】
桟部材8は、断面形状が下向きコの字に屈折された鋼板材で形成されており、その長手方向の所定位置の下端辺に、基材連結用の係合部としての奥拡がりの係合凹部11が切欠き形成されている。また、桟部材8の長手方向の複数箇所には連結孔12が形成されるとともに、その内部にはナット13が溶接固定され、図示されていない連結用金具をボルト連結、あるいは、ねじ込み連結できるようになっている。
【0037】
熱媒体の流路3,4を形成する伝熱パイプ5,6は、パネル基材7の溝部9に密着嵌入する外径のアルミパイプが用いられ、パイプ内を流れる熱媒体からパネル基材7に熱が伝達拡散されることで、パネル面の全体から冷熱あるいは温熱の放射が行われるようになっている。なお、蛇行屈曲された伝熱パイプ5,6の屈曲部は、溝部9から外れてパネル裏面側(上方)に突出されている。
【0038】
また、桟部材8における下端縁の一部は、溝部9に嵌入された伝熱パイプ5,6に当接されており、伝熱パイプ5,6が溝部9から浮き上がることが阻止されている。
【0039】
伝熱パイプ5,6が装着される中央2本の溝部9においては、その開口端部9aが溝部周方向に沿ってパネル裏面側に少し突出されて、伝熱パイプ5,6における外径の二分の一よりも少し深い部分円形の奥拡がり溝に形成されている。従って、溝部9の開口幅が伝熱パイプ5,6の外径より僅かに小さくなっており、伝熱パイプ5,6を溝部9に装着する際には、伝熱パイプ5,6あるいは開口端部9aを弾性変形させながら伝熱パイプ5,6を溝部9に圧入嵌合することになる。
【0040】
このように圧入装着された伝熱パイプ5,6は、その外周面が溝部9の内周面に半周より長い範囲で接触し、伝熱パイプ5,6からパネル基材7への熱伝達が行われる接触面積が極力大きく確保されている。また、溝部9の開口幅がパイプ外径よりも幅狭となっているので、圧入装着された伝熱パイプ5,6は、大きい外力が掛からない限り溝部9から出ることがなく、桟部材8による押さえが作用しない箇所でも伝熱パイプ5,6の浮き上がりが阻止され、溝部9の内面と伝熱パイプ5,6との接触がパイプ嵌入部位の全長に亘って確実に維持される。また、放射パネル1の組み立て工程や部屋の天井や壁面への取り付け作業において、圧入装着した伝熱パイプ5,6が溝部9から浮き上がらないので、作業が容易なものとなる。
【0041】
放射パネル1の組上げにおいては、所定複数枚のパネル基材7を並べて、パネル本体2を構成するとともに、伝熱パイプ5,6を蛇行状に屈曲して溝部9に嵌入装着し、その後、桟部材8でパネル基材7群を連結する。この場合、並べたパネル基材7群に上方から桟部材8を強く押し付けることで、係合リブ10が弾性変形しながら係合凹部11に入り込んで係止されることになる。
【0042】
放射パネル1を天井の内装材として組み付ける場合には、先に桟部材8を固定配備しておいてから、パネル本体2を持上げて桟部材8に下方から強く押し付けることで、係合リブ10と係合凹部11とを介して桟部材8にパネル本体2を係止連結することもできる。
【0043】
放射パネル1の単体は以上のように構成されており、例えば、
図5に示すように、複数枚の放射パネル1を並べて、天井面や壁面に装着する所望面積の熱放射部20を形成するとともに、各放射パネル1の2本の伝熱パイプ5,6を順次直列状に接続して、2本の流路3,4を一連に形成した放射パネル群を構成する。
【0044】
図6に、上記構成の放射パネル群20を、多層階における各階ごとの空調(あるいは、同一階における複数の各領域の空調)に利用した放射空調システムの概略構成が示されている。
【0045】
各階(あるいは各領域)の放射パネル群20は、地下水やクーリングタワーで冷却された低温熱媒体としての冷水を循環供給する冷熱源21と、ボイラーやヒータで加熱された高温熱媒体としての温水を循環供給する温熱源22とに並列接続されている。
【0046】
また、各放射パネル群20おいては、2本の異なる流路3,4の内の一方の流路3の流入ポート3iと流出ポート3eは、冷水弁23,24を介して冷水供給流路21fと冷水戻り流路21rに接続されている。また、他方の流路4の流入ポート4iと流出ポート4eは、温水弁25,26を介して温水供給流路22fと温水戻り流路22rに接続されている。また、両流路3,4の流入ポート3i,4i同士、及び、流出ポート3e,4e同士がそれぞれバイパス流路27,28及バイパス弁29,30を介して互いに連通接続されている。
【0047】
上記構成によると、各弁23,24,25,26,29,30を制御することで、各階(あるいは、各領域)の放射パネル群20を、図中の(a)で示される低負荷冷房運転モード、(b)で示される高負荷冷房運転モード、(c)で示される低負荷暖房運転モード、(d)で示される高負荷暖房運転モード、及び、(e)で示される冷暖連続運転モードで、個別に運転することが可能となる。
【0048】
なお、
図6において、冷水が流動する流路は太い実線で、温水が流動する流路は太い点線で、また、熱媒体が流動しない流路部分は細い点線で示されている。また、開放されている弁は白抜きで、閉止されている弁は塗り潰しで示されている。
【0049】
上記低負荷冷房運転モード(a)においては、冷水供給用と冷水戻し用の冷水弁23,24を開放し、他の弁25,26,29,30を閉じることで、一方の流路3にのみ冷水が供給流動され、他方の流路4での熱媒体の流動は休止される。
【0050】
上記高負荷冷房運転モード(b)においては、冷水供給用と冷水戻し用の冷水弁23,24と、バイパス用のバイパス弁29,30を開放し、かつ、温水供給用と温水戻し用の温水弁25,26を閉じることで、2本の流路3,4のそれぞれに冷水が供給流動され、1本の流路3に比べて、冷水を2倍まで供給流動させることができ、高負荷の冷房運転が行われる。
【0051】
上記低負荷暖房運転モード(c)においては、温水供給用と温水戻し用の温水弁25,26を開放し、他の弁23,24,29,30を閉じることで、一方の流路4にのみ温水が供給流動され、他方の流路3での熱媒体の流動は休止される。
【0052】
上記高負荷暖房運転モード(d)においては、温水供給用と温水戻し用の温水弁25,26と、バイパス用のバイパス弁29,30を開放し、かつ、冷水供給用と冷水戻し用の冷水弁23,24を閉じることで、2本の流路3,4のそれぞれに温水が供給流動され、1本の流路4に比べて、温水を2倍まで供給流動させることができ、高負荷の暖房運転が行われる。
【0053】
上記冷暖連続運転モード(e)においては、冷水供給用と冷水戻し用の冷却弁23,24を開放して他の弁25,26,29,30を閉じる低負荷冷房運転モードの冷房温度から、温水供給用と温水戻し用の温水弁25,26を開放して他の弁23,24,29,30を閉じる低負荷暖房運転モードの暖房温度までの無段階の温度調整が可能である。
【0054】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0055】
(1)上記実施形態では、パネル本体2に2本の流路3,4を備えた2パス仕様に構成した場合を例示しているが、3本あるいは4本の流路を備えた3パスあるいは4パス仕様で実施することも可能であり、これによると、流路切換えによって熱媒体を一層多様な形態で流動させることが可能となり、さらに広範囲な熱負荷に対応した空調運転を行うことができる。
【0056】
更に、各流路の断面積を異ならせてもよい。
【0057】
また、複数本の異なる流路の内の少なくとも1本の流路の、パネル本体2における流路長さを、他の流路の流路長さと異ならせてもよい。例えば、上記
図1において、2本の流路3,4をそれぞれ構成する蛇行状の伝熱パイプ5,6の折返し回数を異ならせるなどして、パネル本体2における一方の伝熱パイプ5のパイプ長さを、他方の伝熱パイプ6のパイプ長さよりも長くし、例えば、一方の伝熱パイプ5に冷水を、他方の伝熱パイプ6に温水をそれぞれ供給するようにし、冷房能力を、暖房能力に比べて高めるようにしてもよい。
【0058】
このようにパネル本体2毎、すなわち、放射パネル1毎に、流路長さを異ならせることによって、異なる空調負荷に対応することが可能となる。
【0059】
これによって、放射パネル1の設置枚数だけでは対応できない空調負荷に対しても、放射パネル1自体の能力を変更して対応するといったことが可能となる。
【0060】
(2)上記実施形態では、パネル本体2の溝部9に伝熱パイプ5,6を嵌入して熱媒体流動用の流路3,4を形成して、伝熱パイプ5,6の略半周を溝部9に接触させて伝熱パイプ5,6からパネル本体2への熱伝達を行うようにしているが、
図7に示すように、半円形の溝部9に伝熱パイプ5,6を嵌入装着した上で、半円形断面形状の溝部31を備えたアルミ材からなる鞘部材32を、伝熱パイプ5,6を被せてパネル本体2に面接触させることで、伝熱パイプ5,6の全周を用いてパネル本体2への熱伝達を効率よく行うことができる。
【0061】
(3)上記実施形態では、パネル基材7を押し出し成型加工して、係合リブ10をパネル基材7の裏面側において基材全長に形成することで、パネル基材7をその長手方向の任意の位置において桟部材8に基板裏面側で係合連結し、パネル外表面から連結箇所が見えない仕上がりとなる内装材(スパンドレル)に構成しているが、パネル外表面の外観が問題とならない条件の下で使用する場合には、パネル基材7をアルミ板材にプレス加工を施して波板状に成型し、このパネル基材7を外表面側からネジ締めで桟部材8に連結するようにすることもできる。
【0062】
(4)上記実施形態では、パネル基材7は波板状であったけれども、波板状に限らず、他の形状であってもよく、例えば、平板上の一方の面に、伝熱パイプを嵌入する半円状のパイプ受け部を有し、他方の面にフィンを有するような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 放射パネル
2 パネル本体
3 流路
3i 流入ポート
3e 流出ポート
4 流路
4i 流入ポート
4e 流出ポート
5 伝熱パイプ
6 伝熱パイプ
7 パネル基材
8 桟部材
9 溝部
10 パネル基材の係合部(係合リブ)
11 桟部材の係合部(係合凹部)
20 放射パネル群
21 冷熱源(低熱源)
21f 低温熱媒体の供給流路
21r 低温熱媒体の戻し流路
22 温熱源(高熱源)
22f 高温熱媒体の供給流路
22r 高温熱媒体の戻し流路
23 冷水弁
24 冷水弁
25 温水弁
26 温水弁
27 バイパス流路
28 バイパス流路
29 バイパス弁
30 バイパス弁