(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したバルブ装置の実施の形態を説明する。
【0031】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は実施形態1のバルブ装置の断面図である。
図1に示すように、バルブ装置1は、第1ケース10と第2ケース20から形成される本体ケース2を備える。本体ケース2内の空間は仕切り部材30により区画される。第2ケース20内の空間は、流体が流れる流入管3と排出管4とが接続されたバルブ室5aとなり、第1ケース10内の空間は、ロータ部90を収容するロータ収容室5bとなっている。ロータ部90は、第1ケース10内において軸線X回りに回転可能に支持される。ロータ部90は、第1ケース10の外周側に構成されたステータ部80と共にステッピングモータ8を構成する。第1ケース10の外側には、ステータ部80を覆うようにモータカバー87が取り付けられる。
【0032】
バルブ室5a内には、流入管3の開口3aを開閉する弁体6が配置される。弁体6は、仕切り部材30を貫通した作動部材7の先端に取り付けられる。バルブ装置1では、ステッピングモータ8のロータ部90の回転が、後述するネジ送り機構により、作動部材7の軸線X方向の進退移動に変換される。作動部材7の軸線X方向の進退移動に伴って、作動部材7の先端部に取り付けられた弁体6が流入管3の開口3aを開閉する。
【0033】
このバルブ装置1では、気体状もしくは液体状の熱媒体(加熱用媒体あるいは冷却用媒体)などの高圧流体が流入管3を介して、バルブ室5a内に導かれる。
【0034】
(本体ケース)
以下、バルブ装置1の各部の構成を説明する。第2ケース20は、非磁性金属であるステンレス板をプレス成型によって深絞り加工して形成される。第2ケース20は、円板形状の底部21と、底部21を囲み軸線X方向に延びる筒状の周壁部22と、周壁部22の底部21とは反対側の端部から径方向外側に延びる第2フランジ部23を備える。底部21および周壁部22は、バルブ装置1の軸線X方向の一端側(流入管3側)に凹むカップ状の凹部を構成する。この凹部の一端は円形に開口しており、凹部の開口縁すなわち周壁部22の一端に第2フランジ部23が設けられる。
【0035】
底部21の中央には、流入管3の取付部材27が、底部21を厚み方向に貫通して設けられる。取付部材27は、貫通穴28を有する筒状の部材であり、バルブ室5a内に位置する先端部27aは、流入管3の開口3aを取り囲む環状に形成される。先端部27aは、弁体6が当接する当接部(弁座)となっている。先端部27aは流入管3よりも厚肉に形成されている。これにより、先端部27aは弁体6から作用する押圧力で容易に変形せず、弁体6による開口3aの閉鎖を確実に行うことができる。また、貫通穴28の軸線X方向の途中には、縮径部28aが設けられる。取付部材27は、縮径部28aよりも先端部27a側の部位の内径Daが、流入管3の内径よりも小さい。
【0036】
周壁部22には、軸線Xと直交する方向に開口する開口22aが設けられる。この開口22aには、軸線Xと直交する方向に延びる排出管4の先端4aが挿入される。排出管4は、その先端4aを開口22aに挿通させた状態で、周壁部22に溶接される。
【0037】
第2フランジ部23の外周部分23aは、第2フランジ部23の外周側の端部に設けられた環状部分である。第2フランジ部23は、外周部分23aの内周側に位置する内周部分23bが、外周部分23aから周壁部22側に凹んだ形状である。内周部分23bは、外周部分23aから周壁部22側に屈曲して軸線X方向と平行に延びる側面部分23cと、側面部分23cから第2フランジ部23の中央に向けて屈曲して軸線X方向と垂直に延びる底面部分23dを備える。
【0038】
第2フランジ部23の外周部分23aは、第1ケース10の外周縁(後述する第1フランジ部13の外周部分13a)に全周にわたって当接する。両フランジ部13、23の当接部分である外周部分13a、23aは、全周に亘って溶接される。これにより、第1ケース10と第2ケース20とが互いに接合されて、本体ケース2を構成する。本形態では、第1ケース10と第2ケース20がステンレスで形成されるため、外周部分13a、23aは、不活性ガスを常時吹き付けながら溶接するTIG溶接により接合される。
【0039】
両フランジ部13、23の外周縁同士を当接させた状態において、第2フランジ部23の内周部分23bの底面部分23dは、第1フランジ部13から軸線X方向に離れた位置に配置される。すなわち、第1フランジ部13の内周部分13bと、第2フランジ部23の底面部分23dとが軸線X方向に対向し、その間には隙間が形成される。この隙間には、仕切り部材30の外周縁が挿入される。仕切り部材30は、第1ケース10と第2ケース20の間において、後述するように軸線X回りの回り止めがなされた状態に取り付けられる。
【0040】
第1ケース10は、非磁性金属であるステンレス板をプレス成型によって深絞り加工して形成される。第1ケース10は、円板形状の底部11と、底部11を囲む周壁部12と、周壁部12における底部11とは反対側の端部から径方向外側に延びる第1フランジ部13を備える。底部11および周壁部12は、バルブ装置1の軸線X方向の他端側(流入管3とは反対側)に凹むカップ状の凹部を構成する。この凹部の一端は円形に開口し、凹部の開口縁すなわち周壁部12の一端に第1フランジ部13が設けられる。第1フランジ部13は、第2ケース20の第2フランジ部23と同じ外径で形成される。第1フランジ部13は、第2フランジ部23とは異なり、段差のない平面形状である。
【0041】
底部11の中央部には、有底円筒形状の支持部11aが、ロータ部90から離れる方向(
図1の上側)に突出して設けられる。この支持部11aは、ロータ部90の外径D1よりも小さい外径D3に形成される。支持部11aには、後述するロータ部90の一端側の軸部92を回転可能に支持する軸受部材24が、例えば圧入により位置決めされて保持される。
【0042】
周壁部12は、ともに軸線X方向に延びる小径部12aおよび大径部12bを備える。小径部12aは底部11側に配置され、大径部12bは第1フランジ部13側に配置される。小径部12aと大径部12bは、軸線X方向と垂直に延びる環状部によって連結される。小径部12aと大径部12bの間には、環状部による段差が構成される。
【0043】
小径部12aの内径D2は、ロータ部90の外径D1よりも僅かに大きい。ロータ部90の外径D1は、ロータマグネット100が配置された部位の外形であり、本形態では、15.5mmである。また、小径部12aの内周面とロータマグネット100との隙間は0.4mmである。なお、本発明は、このような寸法のものに限定されるものではない。小径部12aの径方向外側にはステッピングモータ8のステータ部80が設けられ、径方向内側にはロータ部90が設けられる。ステータ部80とロータ部90は、小径部12aを挟んで外側と内側に位置する。
【0044】
(ステータ部)
ステータ部80は、ステータコア81と、ボビン82と、駆動コイル83と、モータケース88を備える。ステータコア81の内周部81aは、図示しない極歯が、軸線X回りの周方向に所定間隔で並べられた筒形状である。ステータ部80では、一組のステータコア81が、円板部81bを互いに接触させると共に、内周部81aを互いに反対方向に向けた状態で設けられ、この状態で、一方のステータコア81の極歯と、他方のステータコア81の極歯とが、軸線X回りの周方向において交互に並んでいる。
【0045】
ステータコア81の内周部81aの外周には、駆動コイル83が巻き付けられたボビン82が外嵌される。駆動コイル83を構成する巻線の端部には端子84、84が設けられる。端子84、84の先端は、コネクタ端子85が接続された回路基板86に接続される。
【0046】
ステータ部80を収容するモータカバー87は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂材料から構成される。モータカバー87は、第1ケース10の第1フランジ部13からステッピングモータ8側に延びる取付部材26の係止部26aに係合爪87aを係止させて取り付けられる。
【0047】
(ロータ部)
ロータ部90は、一端が封止された筒状の本体部91と、本体部91の外周に配置されたリング状のロータマグネット100を備える。本体部91とロータマグネット100は、インサート成形により一体に形成される。
【0048】
本体部91の封止端91aの中央部には、円筒形状の軸部92が、第1ケース10の底部11側(
図1の上側)に突出する。上述したように、軸部92に対して軸線X方向で対向する底部11の中央部には、有底円筒形状の支持部11aが設けられる。支持部11aには、有底円筒形状の軸受部材24が圧入により位置決めされて固定される。軸受部材24は、ロータ部90(軸部92)の軸線X方向の位置を規制するスラスト軸受部24aと、ロータ部90(軸部92)の径方向の位置を規制するラジアル軸受部24bを備えている。軸部92は、軸受部材24によって回転可能に支持される。これにより、軸線X回りに回転するロータ部90の一端側の軸心合わせが、支持部11aに固定された軸受部材24によって行われる。
【0049】
本体部91の外周における軸線X方向の略中央部と、軸部92の近傍には、軸線X方向に見てリング状の突出部91bが全周に亘って設けられる。ロータマグネット100は、軸線X方向の一端が突出部91bに当接している。
【0050】
(ゼネバ機構)
図2はバルブ装置1の要部の分解斜視図であり、
図3(a)はバルブ装置1の要部の断面図であり、
図3(b)は
図3(a)の部分拡大図である。また、
図4はロータ部90の説明図であり、(a)はロータ部90の斜視図であり、(b)はロータ部90を仕切り部材30側から見た平面図である。
図3に示すように、ロータ部90の本体部91では、軸部92とは反対側に、突出部91bよりも径が小さい小径軸部93が設けられる。小径軸部93の外周には、軸線X方向(ロータ部90の長手方向)に沿って延びるゼネバピン93a(
図2、
図4参照)が設けられる。ゼネバピン93aは、小径軸部93における突出部91bの近傍から先端部93eの近傍までの範囲に形成される。
【0051】
図4に示すように、小径軸部93では、突出部91b側の外周に、軸線X方向から見て略C字形状の膨出部93bが設けられる。膨出部93bは、ゼネバピン93aと同じ径方向高さで形成される。膨出部93bとゼネバピン93aとの間には、歯溝部93d(
図4(b)参照)が設けられる。歯溝部93dには、後記するゼネバ歯車110の歯部112b(
図6の(b)参照)が係合する。膨出部93bにおける歯溝部93dの近傍部分は、後述するゼネバ歯車110の度当たり112d、112eが当接するストッパ部93c、93c(当接部)となっている。
【0052】
図2および
図3に示すように、小径軸部93の径方向外側にはゼネバ歯車110が設けられる。ゼネバ歯車110は、ロータ部90の軸線X回りの回転角度を規定する。ゼネバ歯車110の回転軸116は、仕切り部材30に形成された軸受部38の軸受穴38aと、ブラケット部材115に形成された軸受穴115aとによって回転可能に支持される。ゼネバ歯車110は、ステッピングモータ8のロータ部90の軸線Xに平行な軸線X’周りに回転可能に設けられる。ゼネバ歯車110は、ロータマグネット100と軸線X方向で重なる位置に設けられるため、第1ケース10の大径部12bの径を小さくすることができる。
【0053】
図5はゼネバ歯車110の説明図であり、(a)は、ゼネバ歯車110を仕切り部材30側から見た斜視図であり、(b)は仕切り部材30側から見た平面図である。
図5に示すように、ゼネバ歯車110は、回転軸116が挿通されるリング状の軸部111と、軸部111よりも大径の大径部112とを備える。大径部112では、ゼネバ歯車110の回転中心(軸線X’)を通る直線L(
図5(b)参照)を境にして一方側の半円部に、歯溝部112aと、歯部112bと、突出部112cが設けられる。
【0054】
歯部112bと突出部112cは、大径部112の周方向で交互に設けられる。歯部112bは、大径部112の厚み方向(軸線X’方向)における全長に亘って形成されており、突出部112cは、ロータ部90の回転を阻害しないようにするために、ロータ部90の膨出部93bとの接触を避ける厚み(高さhz)で形成される。一方、直線Lを境にして反対側の半円部のうち、歯溝部112aに面した部分である両側部112d、112eは、ロータ部90の回転範囲(回転角度)を規定する度当たりを構成している。
【0055】
図6はゼネバ歯車110の動作説明図であり、(a)はゼネバ歯車110の一方の度当たり112eによってロータ部90の回転が規制された状態、(b)はゼネバ歯車110の歯溝部112aと、ロータ部90のゼネバピン93aとが係合した状態、(c)はゼネバ歯車110の他方の度当たり112dによってロータ部90の回転が規制された状態を示す。
【0056】
本形態では、ロータ部90のゼネバピン93aは、ゼネバ歯車110の歯溝部112aに挿入されて歯部112bと係合する。ロータ部90が軸線X回りに1回転する毎に、ゼネバ歯車110が、ゼネバピン93aにより所定角度ずつ軸線X’周りに回転させられる。バルブ装置1では、ステッピングモータ8を駆動してロータ部90を回転させることによって弁体6を軸線X方向に進退移動させるが、ロータ部90の回転可能範囲はゼネバ歯車110とゼネバピン93aによって構成されるゼネバ機構(回転規制部)によって規制されており、この回転規制部によってロータ部90の回転が阻止された状態でステッピングモータ8を脱調させてからステッピングモータ8の駆動を停止する。
【0057】
図6(b)に示す状態で、ロータ部90が反時計回り方向CCWに回転すると、ゼネバ歯車110の度当たり112eが、膨出部93bのストッパ部93cに当接した時点で、ロータ部90の回転が阻止される(
図6(a)参照)。
【0058】
図6(a)に示す角度位置では、ロータ部90は、反時計回り方向への回転が規制されて、時計回り方向CWにしか回転できない。この状態からロータ部90が時計回り方向CWに回転すると、ロータ部90が2回転した地点で、
図6(b)に示す状態となる。この状態からさらに時計回り方向CWに1回転して、ゼネバ歯車110の度当たり112dが、膨出部93bのストッパ部93cに当接すると、ロータ部90の回転が阻止される(
図6(c)参照)。
【0059】
図6(c)に示す角度位置では、ロータ部90は、時計回り方向CWへの回転が規制されて、反時計回り方向CCWにしか回転できない状態となる。このように、ゼネバ歯車110は、ロータ部90が同じ方向に3回転すると度当たり112dあるいは112eによってそれ以上の回転が阻止される。ゼネバ歯車110の突出部112cは、ロータ部90の膨出部93bとの干渉を避ける高さで形成されているので、ゼネバ歯車110とロータ部90は互いに干渉することなく相対回転する。
【0060】
上述したように、バルブ装置1では、ステッピングモータ8のロータ部90の回転が、ネジ送り機構により、作動部材7の軸線X方向の進退移動に変換される。
図3に示すように、作動部材7の一端には、ロータ部90の本体部91内に挿入される軸部材71が設けられる。ネジ送り機構は、ロータ部90の本体部91の内周に設けられた雌ネジ95と、軸部材71の外周に設けられた雄ネジ71aと、支持部材120とから構成される。支持部材120は、仕切り部材30の係合部35に回転不能に取り付けられている。支持部材120は、作動部材7の軸線X方向の略中央部分に設けられた嵌合部72を軸線X回りに回転不能かつ軸線X方向に進退移動可能に支持する。ロータ部90が回転すると、軸部材71がネジ送りされて、作動部材7が軸線X方向に移動する。
【0061】
ロータ部90が、
図6(b)に示す回転位置から反時計回り方向CCWに1回転すると、ネジ送り機構によって作動部材7が流入管3側に移動して、弁体6が、流入管3の取付部材27の先端部27a(
図1参照)に当接する。弁体6は、軸線X方向に弾性変形する弾性部材であるスプリング76を介して作動部材7に連結される。スプリング76は、弁体6が取付部材27の先端部27aに当接するまでは、自由長の状態を保っている。弁体6が取付部材27の先端部27aに当接した状態から、ロータ部90がさらに1回転して、
図6(a)に示す回転位置に達するまでの間は、弁体6と作動部材7は、スプリング76(
図3参照)を圧縮しながら軸線X方向に相対移動する。ロータ部90が
図6(a)に示す回転位置に到達すると、スプリング76が予め設定した寸法だけ圧縮された状態となる。
【0062】
このように、バルブ装置1は、ゼネバ歯車110とゼネバピン93aによって構成されるゼネバ機構(回転規制部)により、ロータ部90の回転を規制している。ロータ部90が、その回転可能範囲の一端と他端の間にある所定の回転位置、すなわち、
図6(b)に示す角度位置から反時計回り方向CCWに1回転した回転位置に移動すると、弁体6は、作動部材7およびスプリング76を介して、取付部材27の先端部27aに当接する位置まで移動する。この位置では、スプリング76は、自由長の状態を保っている。そして、この状態から、ロータ部90がその回転可能範囲の一端である
図6(a)に示す回転位置まで更に回転すると、スプリング76が弁体6と作動部材7との間で圧縮される。このため、スプリング76の弾性力によって、弁体6が弁座(取付部材27の先端部27a)に押し付けられる。従って、流入管3の開口が弁体6によって密閉される。
【0063】
また、ロータ部90は、
図6(a)に示す回転位置から更に反時計回り方向CCWに回転することはできない。本形態では、このように、ゼネバ機構によってロータ部90の回転可能範囲を規制しているため、スプリング76が予め設定した寸法を越えて圧縮されることがない。よって、弁体6による押圧力が過大にならない位置でロータ部90および作動部材7を停止させることができる。また、弁体6にステッピングモータ8のトルク(停止時の脱調トルク等)が直接作用することが防止された構成である。従って、弁体6が過大な力で弁座(取付部材27の先端部27a)に押し付けられることが防止される。
【0064】
(支持部材)
図7は支持部材120の説明図であり、(a)は支持部材120を仕切り部材30側から見た平面図であり、(b)は弁体6側から見た平面図であり、(c)は側面図である。また、(d)は、(a)におけるA−A断面で支持部材120を切断した斜視図である。支持部材120は、円筒状の基部121と、この基部121の弁体6側の一端から径方向外側に延びるフランジ部122を備える。支持部材120を長を長手方向に貫通する貫通孔123の内周面には、径方向内側に突出する突出部121aが設けられる。突出部121aは、軸線X回りの周方向で所定の角度間隔(
図7では、180度間隔)の2箇所に設けられる。貫通孔123には、作動部材7の軸線X方向の略中央部分に設けられた嵌合部72が挿通される。嵌合部72の外周面には凹溝72aが形成され、この凹溝72aが貫通孔123の内周面に形成された突出部121aと嵌合されることで、支持部材120と作動部材7の軸線X回りの相対回転が阻止される。
【0065】
支持部材120は、仕切り部材30の中央部分に設けられた後述する係合部35に取り付けられる。円筒状の基部121の外周面におけるフランジ部122側の部位には、径方向外側に突出する係合突起124が設けられる。係合突起124は、軸線X回りの周方向に等間隔で複数設けられる。係合突起124は、支持部材120を仕切り部材30の係合部35に取り付けた際に、係合部35の係合突起35aに嵌合する。具体的には、隣接する係合突起124と係合突起124の間に構成される凹部に係合突起35aが嵌合する。これにより、支持部材120は、仕切り部材30に対して回り止めされた状態で取り付けられる。仕切り部材30に対する支持部材120の周方向の取付け位置は、係合突起124の周方向の配置間隔で調整可能となる。本形態では、係合突起124が周方向に等間隔で12個設けられるため、仕切り部材30に対する支持部材120の周方向の取付け位置を30度の倍数で変更できる。
【0066】
(仕切り部材)
図8は仕切り部材30の説明図であり、(a)は、仕切り部材30を弁体6側から見た平面図であり、(b)は、ロータ部90側から見た平面図である。また、(c)は仕切り部材30の側面図であり、(d)は弁体6側から見た仕切り部材30の斜視図である。また、
図9は仕切り部材30の断面図(
図8(a)のA−A断面図)であり、第1ケース10、第2ケース20,ロータ部90の小径軸部93を仮想線で示している。そして、
図10は支持部材120と仕切り部材30の結合状態の説明図であり、(a)は仕切り部材30を弁体6側から見た斜視図であり、(b)は(a)における面Aで切断した断面図である。また、
図11は仕切り部材30をロータ部90側から見た斜視図である。
【0067】
仕切り部材30は樹脂材料から構成されており、以下に説明するように、軸線X方向に2分割される金型によって成型可能な形状をしているため、容易に成型できる。仕切り部材30は円盤形状のプレート部31を有する。プレート部31の中央部には、作動部材7の軸部材71を挿通させる挿通穴32が、厚み方向に貫通して設けられている。
図9に示すように、仕切り部材30のロータ部90側の面31bには、挿通穴32を囲む円筒壁33が設けられている。円筒壁33は、軸線X方向に所定高さh4となるように形成される。プレート部31の中央に設けられた挿通穴32に挿通された軸部材71は、円筒壁33によって軸線X方向に移動可能に支持される。このため、軸部材71が軸線X方向に移動する際の軸心振れは、円筒壁33によって規制される。
【0068】
円筒壁33の先端33a側は、ロータ部90の本体部91における仕切り部材30側の端部に開口する嵌合穴91c(
図3、
図9参照)に内挿される。すなわち、ロータ部90の他端側(小径軸部93側)は、円筒壁33によって回転可能に支持される。つまり、本形態では、軸線X回りに回転するロータ部90の一端側の軸心合わせが、上述した第1ケース10の底部11内に設けられた軸受部材24のラジアル軸受部24bによって行われると共に、他端側の軸心合わせが、仕切り部材30のプレート部31と一体に形成された円筒壁33により行われる。すなわち、本体部91は、嵌合穴91cに円筒壁33を内挿した状態で、摺動回転可能に支持されており、嵌合穴91cと円筒壁33によって、本体部91の先端部93e側のラジアル軸受が構成される。
【0069】
また、プレート部31のロータ部90側の面31bには、円筒壁33を囲む環状壁34が設けられている。環状壁34は、上述したゼネバ歯車110の径方向外側において、軸線X方向に所定高さh5となるように形成される。環状壁34の外径D4は、第1ケース10の周壁部12における大径部12bの内径と整合している。仕切り部材30は、環状壁34が大径部12bに圧入されることにより、第1ケース10に対して位置決めされる。
【0070】
図8(b)に示すように、円筒壁33と環状壁34の間の部分には、径方向に延びる3本の溝31eが等角度間隔(120度間隔)で形成される。本形態では、
図3に示すように、仕切り部材30とロータ部90の先端部93eとの間に、ロータ部90の軸線X方向のガタツキを防止するための板バネ140が配置される。この板バネ140の脚部141(
図11参照)が、溝31e内に配置されて、仕切り部材30に接触している。
【0071】
さらに、円筒壁33と環状壁34の間には、ロータ部90側に突出する2本の板状の支持部材39、39が設けられる。支持部材39、39は、仕切り部材30のプレート部31に形成された軸受穴38aの両側に配置される。支持部材39、39には、軸受穴38aを挟んで対向する側面とは反対側の側面に突起39aが設けられる。上述したゼネバ歯車110を支持するブラケット部材115(
図2参照)は、軸線X’方向に延びる腕部115bに設けられた開口部115cを突起39aに係合させて、支持部材39、39に取り付けられる。プレート部31には、支持部材39、39の基部に隣接する位置に、プレート部31を厚み方向に貫通する貫通穴31dが設けられる。第1ケース10内の空間と第2ケース20内の空間は、貫通穴31dを介して互いに連通している。
【0072】
プレート部31の弁体6側の面31aには、軸受穴38aの裏側の位置に、弁体6側に突出する円筒状の軸受部38が設けられる。軸受部38は、ゼネバ歯車110の回転軸116を支持する。また、仕切り部材30の弁体6側の面31aには、挿通穴32を囲む係合部35が設けられる。この係合部35の内周面36は、プレート部31から離れる方向(
図9において左方向)に向かうに従って2段階に拡径しており、プレート部31の部位が小径部36a、弁体6側の部位が大径部36bとなっている。小径部36aの内径D5は支持部材120の基部121(
図7参照)の外径に対応しており、支持部材120を仕切り部材30に組み付けた際に、支持部材120の基部121がこの小径部36aに嵌合される。
【0073】
図8(a)に示すように、大径部36bには、径方向内側に突出する係合突起35aが、軸線X回りに等間隔で複数設けられる。係合突起35aは、大径部36bの軸線Xの全長に亘って延びている。また、係合部35には、周方向に120度間隔で切欠き35bが設けられる。切欠き35bの位置には、プレート部31を貫通する貫通穴31cと、貫通穴31cの径方向外側において係合部35と同じ方向に突出する腕部37が設けられる。腕部37は、軸線X方向に延びており、プレート部31からの高さh1は、係合部35のプレート部31からの高さh2よりも高い。腕部37の先端には、径方向内側に突出する爪部37aが設けられる。爪部37aは、支持部材120を仕切り部材30に組み付けた際に、支持部材120の係合段部122a(
図3参照)に係合して、支持部材120の仕切り部材30からの脱落を阻止している。
【0074】
支持部材120は、このように、その基部121が小径部36aに嵌合され、当接面122bを係合部35の先端面に当接させた状態で保持される。この状態で、
図10(b)に示すように、支持部材120の係合突起124が、各係合突起35aに周方向の両側から当接した状態となっており、上述したように、支持部材120が仕切り部材30に対して回り止めされた状態で取り付けられる。
【0075】
(回り止め部)
プレート部31の外周部分には、軸受部38の径方向外側の位置を含む4箇所に、それぞれ、2本の平行な切欠き溝41、41が形成されている。切欠き溝41、41は環状壁34の位置まで延びている(
図8(b)参照)。切欠き溝41、41の間の部位は、径方向に延びており周方向の幅が一定の第1板バネ片42となっている。4つの第1板バネ片42は、軸線X回りに等角度ピッチで配置されている。
【0076】
第1板バネ片42の先端には、軸受部38および係合部35と同じ側に突出するリブ42aが形成されている。第1板バネ片42は、リブ42aを除いた部分の軸線X方向の厚さh6が、プレート部31の外周縁における第1板バネ片42以外の部分である第2板バネ片43の厚さh7よりも薄く形成されている(
図8(c)参照)。第1板バネ片42および第2板バネ片43は、軸線X方向に弾性変形する樹脂バネ部を構成している。この樹脂バネ部が、回り止め部40である。
【0077】
図1、
図9に示すように、回り止め部40は、第1ケース10側の第1フランジ部13と第2ケース20側の第2フランジ部23の間に挿入され、第1フランジ部13の内周部分13bと第2フランジ部23の底面部分23dとの間に挟み込まれている。ここで、内周部分13bと底面部分23dの軸線X方向の距離h8(
図9参照:隙間の高さ)は、回り止め部40の軸線X方向の厚さh9(
図8(c)参照)よりも小さく設定されている。このため、回り止め部40は、薄い側のバネ片である第1板バネ片42の先端がロータ部90側に湾曲させられて撓み状態になっており、軸線X方向に圧縮変形されている。このため、回り止め部40は、軸線X方向の弾性力によって、第2板バネ片43を第1フランジ部13の内周部分13bに軸線X方向に押し付けると共に、第1板バネ片42を第2フランジ部23の底面部分23dに軸線X方向に押し付けている。第2板バネ片43は、軸線X方向に撓むことは可能であるが、その撓み量(軸線X方向の変形量)は極めて小さく、第1板バネ片42の撓み量>第2板バネ片43の撓み量である。従って、第2板バネ片の変形による仕切り部材30の軸線X方向への移動量が小さく、仕切り部材30の軸線X方向への位置ずれを低減できる。
【0078】
このように、仕切り部材30は、樹脂バネ部である回り止め部40が、内周部分13bおよび底面部分23dに弾性接触するように組み付けられる。これにより、仕切り部材30は、本体ケース2に対して軸線X回りに相対回転するとき、内周部分13bと回り止め部40との間、および、底面部分23dと回り止め部40との間に摩擦力が生じる。つまり、実施形態1では、第1ケース10と第2ケース20の間に、摩擦力によって軸線X回りの回り止めがなされた状態で仕切り部材30が取り付けられる。
【0079】
図9に示すように、仕切り部材30は、回り止め部40が設けられている外周縁が、第1ケース10と第2ケース20の溶接部位Wから径方向に所定寸法h3だけ離れている。上述したように、第1ケース10の第1フランジ部13の外周部分13aと、第2ケース20の第2フランジ部23の外周部分23aとは、TIG溶接によって接合されている。このように、第1ケース10と第2ケース20の接合部位としての溶接部位Wが、仕切り部材30の外周縁から離れていることで、溶接熱の仕切り部材30側への伝達が抑制される。これにより、溶接熱による仕切り部材30の変形が防止される。特に、本形態では、回り止め部40と溶接部位Wとの間に隙間Sが形成されているので、隙間Sが断熱層として機能する。なお、隙間Sに他の部材が配置されていてもよい。この場合でも、溶接部位Wと仕切り部材30とが離れていれば、溶接熱の伝達抑制効果は得られる。
【0080】
仕切り部材30は、上述したように、環状壁34が大径部12bに圧入されることで第1ケース10に対して位置決めされるが、溶接熱の仕切り部材30側への伝達が抑制されるため、溶接熱によって環状壁34が変形して仕切り部材30の位置決めが損なわれることを防止できる。なお、第1ケース10と第2ケース20を樹脂素材で形成した場合には、第1ケース10と第2ケース20を溶着して接合することができるが、この場合にも同じ効果が得られる。
【0081】
(弁体を駆動する機構)
図2および
図3に示すように、作動部材7では、支持部材120が嵌合する嵌合部72と、弁体6との連結部73と、スプリング支持部74とが、同一の樹脂材料(例えば、PPS(ポリフェニルサルファイド))で構成され、これらとSUS材からなる軸部材71とが、インサート成形により一体に形成される。
【0082】
軸部材71の先端側の外周には、ロータ部90の雌ネジ95に係合する雄ネジ71aが設けられる。
図3に示すように、軸部材71の基端側は、嵌合部72を貫通してスプリング支持部74の近傍まで延びている。
図2に示すように、円筒状の嵌合部72の外周には、軸方向に沿って延びる凹溝72aが、周方向の全周に亘って設けられる。この凹溝72aは、軸線Xを挟んで対称となる位置(軸線X回りの周方向で180度間隔の位置)に設けられる。
【0083】
スプリング支持部74は、嵌合部72よりも大径の円柱部74aと、円柱部74aの嵌合部72側の端部に設けられたフランジ部74bと、を備える。円柱部74aの外径は、スプリング76の内径と略同じであり、スプリング76の一端側が外挿されて取り付けられる。フランジ部74bの外径は、スプリング76の外径よりも僅かに大きい径を有しており、スプリング76の一端が当接する。
【0084】
スプリング支持部74に隣接する連結部73は、基本形状が円柱形状であり、この連結部73の先端の外周に、径方向外側に突出する突起73aが、軸線Xを挟んで反対方向に突出して設けられる。連結部73の突起73aが設けられた先端側は、弁体6の開口62a(
図2参照)に挿入されて、弁体6と連結部73とが連結される。
【0085】
図3に示すように、弁体6は、樹脂材料(例えば、PPS(ポリフェニルサルファイド))からなる係合部材61と、係合部材61に外嵌して取り付けられた当接部材65と、を備える。
図12は弁体の説明図であり、(a)は、弁体6を作動部材7側から見た平面図、(b)は、(a)におけるA−A断面図、(c)は、(a)におけるB−B断面図である。この図に示すように、係合部材61は、円板部62と、円板部62の外周から作動部材7とは反対方向に延びる周壁部63と、フランジ部64とを備える。周壁部63は、小径部63aと大径部63bとを備えており、円板部62から離れるにつれて内径が広がるように階段状に形成される。
【0086】
円板部62には、円板部62を厚み方向(軸線X方向)に貫通する開口62aが設けられており、開口62aでは、軸線Xを挟んで互いに平行な二面幅部62b、62bが形成される。この開口62aは、連結部73の突起73aが設けられた先端部を挿通可能な形状および大きさで形成される。
【0087】
また、連結部73の先端部の最大径D6は、周壁部63の小径部63aの内径D7よりも僅かに小さく設定される。そのため、弁体6の開口62aに連結部73の先端部を挿入したのち、弁体6を90度回転させることで、突起73aが円板部62に係止された状態となり(
図12(c)参照)、弁体6の連結部73からの脱落が防止される。この状態において、弁体6と、作動部材7の連結部73とは、軸線X方向で相対移動可能である。
【0088】
周壁部63の小径部63aの外径は、スプリング76の内径と略同じであり、スプリング76の他端側が外挿されて取り付けられる。大径部63bの外径は、スプリング76の外径よりも僅かに大きい径を有しており、スプリング76の他端が当接する。
【0089】
周壁部63の円板部62とは反対側の端部の外周には、フランジ部64が全周に亘って設けられる。フランジ部64は、径方向外側に延出する。フランジ部64には、NBRなどのゴム材料からなる当接部材65(
図3参照)が外嵌して取り付けられる。
図1に示すように、弁体6が流入管3側に移動すると、流入管3の開口3aが当接部材65により閉鎖される。そのため、当接部材65(フランジ部64)の外径は、流入管3の開口径よりも大きい。
【0090】
ここで、
図1に示すように、バルブ装置1では、弁体6と、作動部材7と、ロータ部90と、流入管3とが、同軸上に配置される。流入管3の開口3aは、開口面に直交する方向(軸線X方向)に進退移動する弁体6によって開閉される。また、本形態では、ステッピングモータ8により作動部材7および弁体6が軸方向にステップ移動する。従って、段階的に変化する弁体6の開口3aとの位置関係に応じて、流入管3からバルブ室5a内に流入して排出管4から排出される流体の量が調整される。
【0091】
図13は、バルブ装置1の組み付け時に行う作動部材7(弁体6)の位置決めの説明図であり、(a)は、支持部材120の係合部35への着脱と弁体6の位置調整を説明する図であり、
図13(b)は、ゼネバ歯車110によるロータ部90の回転規制を説明する図である。
【0092】
本形態では、支持部材120の突出部121aと、作動部材7の嵌合部72の凹溝72aとを嵌合させて、支持部材120と作動部材7とが組み付けられている(
図10(b)参照)。つまり、支持部材120は、作動部材7に対して相対回転しないように嵌合している。この状態において支持部材120は、突出部121aに沿って軸線X方向に移動可能であり、仕切り部材30の係合部35に対して、軸線X方向から着脱自在である。そのため、バルブ装置1におけるネジ送り機構の部分の組み付け時には、始めに、ロータ部90を回転させて、ゼネバ歯車110の度当たり112eがストッパ部93cに当接する角度位置にロータ部90を配置する(
図13(b)参照)。そして、ロータ部90の回転を阻止した状態で、図中矢印S1で示す軸線X回りに支持部材120を回転させて、作動部材7とロータ部90とを相対回転させる。これにより、作動部材7の雄ネジ71aとロータ部90の雌ネジ95との噛み合い部分(
図3参照)の長さが変わり、支持部材120の回転方向に応じて、作動部材7と弁体6とが矢印S2で示す方向に進退移動する。従って、弁体6を所定の初期位置に位置決めできる。
【0093】
そして、初期位置に配置したのち、支持部材120(作動部材7)の軸線X回りの角度位置を保持した状態で、支持部材120を係合部35側にスライドさせて、係合部35から延びる腕部37の爪部37aを、支持部材120の係合段部122aに係止させる。この状態では、支持部材120の係合突起124と、係合部35の係合突起35aとが互いに嵌合しているので、支持部材120は、固定側部材である仕切り部材30の係合部35に回り止め嵌合された状態となる。
【0094】
また、支持部材120と係合部35とを相対回転不能に嵌合したのちに、弁体6(作動部材7)の位置を再度調整する場合には、支持部材120を係合部35から取り外すことで、作動部材7の位置の調整を行うことができる状態(
図13(a)に示す状態)になる。この際、支持部材120から延びる可撓性の腕部37の爪部37aと支持部材120の係合段部122aとの係合を解除して、支持部材120を軸方向にスライドさせるだけで、支持部材120を係合部35から簡単に取り外すことができる。
【0095】
(作用効果)
以上のように、実施形態1のバルブ装置1は、第1ケース10と第2ケース20を接合して形成した本体ケース2内の密閉空間を区画する仕切り部材30を備える。ロータ部90の一端側の小径軸部93は、仕切り部材30に形成された円筒壁33によって回転可能に支持され、他端側は第1ケース10に回転可能に支持される。仕切り部材30は、第1ケース10および第2ケース20に接触する回り止め部40を備えており、第1ケース10および第2ケース20に対して軸線X回りの回り止めがなされた状態に組み付けられている。従って、仕切り部材30がロータ部90と供回りして、本体ケース2に対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。よって、仕切り部材30の回転方向の位置精度を確保でき、ロータ部90の軸心精度を確保できる。
【0096】
実施形態1では、回り止め部40として、第1ケース10および第2ケース20に弾性的に接触する樹脂バネ部(弾性接触部)を用いる。仕切り部材30は樹脂製であり、軸受部として機能する円筒壁33が形成されたプレート部31を備える。そして、このプレート部31に、樹脂バネ部として機能する第1板バネ片42および第2板バネ片43が一体に形成されている。第1板バネ片42および第2板バネ片43(樹脂バネ部)は、摩擦によって回り止めを行うため、仕切り部材30の位置合わせは、ロータ部90の軸心精度の確保のために円筒壁33の径方向の位置合わせが行われていればよく、回転方向(周方向)の位置合わせを行う必要がない。従って、仕切り部材30の組み付けが容易である。
【0097】
また、実施形態1では、プレート部31が円盤形状であり、第1板バネ片42および第2板バネ片43は、プレート部31の外周部に設けられている。このため、プレート部31の外周部で摩擦力が発生し、第1板バネ片42および第2板バネ片43(樹脂バネ部)の弾性力が小さくても、全体として大きな摩擦力を発生させることができる。従って、組み付けが容易な構成でありながら、強力に回り止めを行うことができる。特に、本形態では、第1板バネ片42における第1ケース10との当接部(リブ42a)と、第2板バネ片43における第2ケース20との当接部は、プレート部31の外周縁に設けられている。従って、プレート部31の最外周で摩擦力を発生させることができ、全体として大きな摩擦力を発生させることができる。
【0098】
更に、実施形態1では、樹脂バネ部における弾性変形する側のバネ足である第1板バネ片42を第2ケース20に当接させ、第1板バネ片42よりも厚く且つ幅広なために第1板バネ片42よりも弾性変形しにくいバネ足である第2板バネ片43を第1ケース10に当接させている。このようにすると、第1、第2ケース10、20を接合する前に、第1ケース10に仕切り部材30を精度良く位置決めすることができる。そして、この状態でロータ部90と弁体6の位置関係を調整して、しかる後に第1、第2ケース10、20を接合できる。従って、弁体6を精度良く取り付けることができる。
【0099】
また、実施形態1では、第1板バネ片42および第2板バネ片43は、軸線X方向の圧縮力が加わったときに弾性変形し、第1板バネ片42が第2ケース20に対して軸線X方向の一方側から当接し、第2板バネ片43が第1ケース10に対して軸線X方向の他方側から当接する。このため、仕切り部材30が第1ケース10と第2ケース20に対して軸線X方向に密着して軸線X方向への移動が防止される。従って、仕切り部材30に支持された弁体6の軸線X方向の位置がずれることを防止できる。よって、弁体6の位置精度を高めることができる。
【0100】
また、実施形態1の仕切り部材30は、上述したように、回り止め部40が設けられている外周部が、第1ケース10と第2ケース20の溶接部位Wから径方向に所定寸法h3だけ離れた位置に組み付けられる。従って、溶接熱の仕切り部材30(特に、第1板バネ片42および第2板バネ片43)への伝達を抑制でき、溶接熱によって第1板バネ片42および第2板バネ片43が変形することを防止できる。
【0101】
また、実施形態1では、仕切り部材30には、ロータ部90と同軸に形成された円筒部としての環状壁34が設けられ、第1ケース10には、円筒部(環状壁34)の外周側に配置された当接部としての周壁部12(大径部12b)が設けられる。そして、大径部12bの内周側に環状壁34を嵌め込むことにより、仕切り部材30と第1ケース10を全周にわたって径方向に当接させている。このように、仕切り部材30と第1ケース10との位置決め部を円筒形にした場合、径方向の位置合わせのみで位置決め状態を形成でき、回転方向(周方向)の位置合わせは不要である。従って、仕切り部材30の組み付けが容易である。また、このような効果を得るためには、環状壁34と大径部12bの一方を円筒状とし、他方を、円筒状の部材に対して3箇所以上の周方向位置において径方向に当接している形状とすればよい。
【0102】
更に、実施形態1では、第1ケース10内にロータ収容室5bが設けられ、ロータ部90の外周部分に配置されたロータマグネット100と、第1ケース10の外側に配置されたステータ部80が第1ケース10の小径部12aを挟んでロータ部90の径方向に対向しており、第1ケース10には、ロータ部90の一端側の軸部92を回転可能に支持するケース側軸受部である軸受部材24と、仕切り部材30との位置決め部である大径部12bが設けられる。ロータ部90の他端側の軸部(小径軸部93)は、上述したように、仕切り部材30によって回転可能に支持されるため、この構成では、第1ケース10および仕切り部材30にロータが支持されており、第1ケース10に対するロータ部90の位置精度が高い。従って、ロータマグネット100と第1ケース10のクリアランスを小さくすることができる。上述したように、第1ケース10における小径部12aの内周面とロータマグネット100との隙間は0.4mmである。従って、モータの効率を向上させることができる。
【0103】
また、実施形態1では、弁体6が仕切り部材30の環状壁34の中心軸線上に配置されるため、仕切り部材30の回転方向(周方向)の位置が変化しても弁体6の径方向位置(軸線X方向と直交する方向の位置)が変化せず、弁体6と弁座(流入管3の開口に取り付けられた取付部材27)との位置関係が崩れない。従って、弁体6を精度良く開閉できる。
【0104】
そして、実施形態1では、仕切り部材30を回り止めされた状態に挟み込む第1フランジ部13は凹凸のない平面形状であるため、第1ケース10の製造が容易である。また、第1、第2フランジ部13、23の間に回り止め部40を挟み込んでいるため、両ケース10、20の回転方向(周方向)の位置精度が低くても両ケース10、20を接合できる。更に、両ケース10、20は、その外周部分13a、13bを軸線X方向に直接当接させて位置決めされるため、両ケース10、20の接合時の位置精度が回り止め部40によって低下することがない。
【0105】
また、実施形態1では、ロータ部90の回転可能範囲を規制する回転規制部としてのゼネバ歯車110と、ロータ部90の回転に基づいて弁体6を軸線X方向に移動させる作動部材7をロータ部90と共回りしないように作動部材7の回転を規制する支持部材120が、いずれも、仕切り部材30に取り付けられる。従って、仕切り部材30が動いたとしても支持部材120と回転規制部(ゼネバ歯車110)の位置関係が崩れることがない。従って、仕切り部材30の回転方向(周方向)の位置合わせを行わずに仕切り部材30を組み付けたとしても、弁体6を駆動する作動部材7とロータ部90の位置関係が崩れることがない。よって、バルブ装置1の組み立てが容易である。また、支持部材120を仕切り部材30に着脱できるため、ゼネバ歯車110をロータ部90のゼネバピン93aに組み付けた状態で、支持部材120を取り外して作動部材7および弁体6の進退位置を調整できる。そして、調整後に支持部材120を取り付けて、弁体6とロータ部90の位置関係を固定できる。従って、弁体6とロータ部90の位置関係を調整する作業が容易である。更に、作動部材7はネジ送り機構によって進退移動するため、部品点数が少なくて済み、組み付けも容易である。
【0106】
(変形例1)
実施形態1は、樹脂バネ部として、プレート部31の径方向に延在する形状の板バネ片を用いていたが、板バネ片の形状はこのようなものに限定されない。変形例1では、樹脂バネ部として、周方向に延在する板バネ部を用いる。
【0107】
図14は変形例1の仕切り部材30Aの説明図であり、(a)は仕切り部材30Aを弁体6側から見た平面図であり、(b)はその部分断面図(
図14a)のA−A断面図)である。変形例1の仕切り部材30Aは円盤形状のプレート部31Aを備える。プレート部31Aは、以下に説明する樹脂バネ部(第3板バネ片45、第4板バネ片46)以外の構成は実施形態1のプレート部31と同一である。プレート部31Aの外周部には、屈曲形状の切欠き溝44が4箇所に形成されている。切欠き溝44は、プレート部31Aの外周縁から内周側に向けて延在する第1溝部44aと、第1溝部44aの内周側の端部から屈曲して周方向に延在する第2溝部44bを備える。プレート部31Aの外周部には、切欠き溝44で囲まれた第3板バネ片45が、軸線X回りの周方向で90度間隔の4箇所に形成されている。また、周方向で隣り合う第3板バネ片45、45の間の部位は、第4板バネ片46となっている。
【0108】
第3板バネ片45は、第1溝部44aに沿った一端が自由端であり、この自由端の端縁に沿ってリブ45aが形成されている。リブ45aは、プレート部31Aから軸受部38および係合部35と同じ側に突出する。
図14(b)に示すように、第3板バネ片45は、リブ45aを除いた部分の軸線X方向の厚さが、上記形態の第1板バネ片42と同様に寸法h6である。この厚さh6は、第3板バネ片45、45と周方向に隣り合う第4板バネ片46の厚さh7よりも薄く形成されている。第3板バネ片45および第4板バネ片46は、軸線X方向に弾性変形する樹脂バネ部を構成している。
【0109】
第3板バネ片45および第4板バネ片46(樹脂バネ部)は、上記形態の第1板バネ片42および第2板バネ片43と同様に回り止め部40Aとして機能する。
図14(b)に示すように、回り止め部40Aの軸線X方向の厚さは、実施形態1と同様に寸法h9である。第3板バネ片45および第4板バネ片46は、第1ケース10側の第1フランジ部13と第2ケース20側の第2フランジ部23の間に挿入され、第1フランジ部13の内周部分13bと第2フランジ部23の底面部分23dとの間に挟み込まれる。このとき、薄い側の板バネ片である第3板バネ片45の先端(自由端)が撓み、樹脂バネ部が軸線X方向に圧縮変形される。その結果、第4板バネ片46が第1フランジ部13の内周部分13bに弾性的に接触し、第3板バネ片45のリブ45aが第2フランジ部23の底面部分23dに弾性的に接触する。従って、実施形態1と同様に、摩擦力によって、仕切り部材30Aがロータ部90と供回りして本体ケース2に対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。よって、仕切り部材30Aの回転方向の位置精度を確保でき、ロータ部90の軸心精度を確保できる。
【0110】
(変形例2)
上記各形態は、回り止め部40/40Aとして、軸線X方向に弾性変形する樹脂バネ部を用いているが、変形例2では、径方向に弾性変形する樹脂バネ部を用いる。
図15は変形例2の仕切り部材30Bの説明図であり、(a)は仕切り部材30Bをロータ部90側から見た平面図であり、(b)は弁体6側から見た平面図である。また、
図16は変形例2の仕切り部材30Bと第2ケース20の説明図であり、(a)は第2ケース20をロータ部90側から見た平面図であり、(b)は仕切り部材30Bが第2ケース20に対して回り止めされた状態を示す平面図である。
【0111】
図15に示すように、変形例2の仕切り部材30Bは円盤形状のプレート部31Bを備える。プレート部31Bは、実施形態1の回り止め部40に代えて、以下に説明する樹脂バネ部48(回り止め部40B)と樹脂突起49(回り止め部40C)を設けており、他の構成は実施形態1のプレート部31と同一である。プレート部31Bの外周部には、周方向に延在する溝部47が4箇所に形成されている。各溝部47は、プレート部31Bを貫通する貫通部である。プレート部31Bにおいて、溝部47の外周側の部位は、周方向に延在する樹脂バネ部48となっている。プレート部31Bには、樹脂バネ部48が軸線X回りの周方向で90度間隔の4箇所に設けられている。樹脂バネ部48は、周方向の両端がプレート部31Bに接続されており、溝部47の溝幅の範囲内で径方向内側に弾性変形可能である。樹脂バネ部48の周方向の中央には、径方向外側に突出する突出部48aが形成されている。
【0112】
第2ケース20は実施形態1と同一であり、第2フランジ部23の外周部分23aの内周側が弁体6側に凹んでいる。
図16(a)に示すように、外周部分23aの内周側には、側面部分23cおよび底面部分23dからなる凹形状の内周部分23bが設けられている。
図16(b)に示すように、仕切り部材30Bは、本体ケース2に組み付けられるときに側面部分23cの内周側に配置される。このとき、樹脂バネ部48は、径方向内側に撓み、突出部48aが側面部分23cに弾性的に接触する。従って、仕切り部材30Bが第2ケース20に対して軸線X回りで相対回転しようとすると、プレート部31Bには、周方向の4箇所で側面部分23cとの間に摩擦力が生じる。この摩擦力によって、仕切り部材30Bの回り止めがなされる。
【0113】
また、
図15(b)に示すように、プレート部31Bの外周部には、周方向に隣り合う溝部47の間に、樹脂突起49が形成されている。樹脂突起49は、プレート部31Bから軸受部38および係合部35と同じ側に突出する。プレート部31Bは、樹脂突起49が形成された部位の厚さ(樹脂突起49の突出寸法を含む厚さ)が、第1フランジ部13の内周部分13bと第2フランジ部23の底面部分23dとの距離h8(
図9参照)よりも大きい。従って、第1ケース10側の第1フランジ部13と第2ケース20側の第2フランジ部23の間にプレート部31Bの外周部を挿入して、第1フランジ部13の内周部分13bと第2フランジ部23の底面部分23dの間にプレート部31Bの外周部を挟み込んだとき、樹脂突起49が押し潰される。この結果、第2フランジ部23の底面部分23dに押し潰された樹脂突起49が押し付けられ、第1フランジ部13の内周部分13bが樹脂突起49の裏側の部位に押し付けられる。従って、仕切り部材30Bが第2ケース20に対して軸線X回りで相対回転しようとすると、プレート部31Bには、周方向の4箇所で、第1フランジ部13の内周部分13bと第2フランジ部23の底面部分23dとの間に摩擦力が生じる。この摩擦力によって、仕切り部材30Bの回り止めがなされる。
【0114】
以上のように、変形例2の仕切り部材30Bには、樹脂バネ部48によって構成される回り止め部40Bと、樹脂突起49によって構成される回り止め部40Cが設けられている。これらは、いずれも、本体ケース2と仕切り部材30Bとの間に作用する摩擦力による回り止めである。このように、変形例2においても、摩擦力によって回り止めがなされた状態で仕切り部材30Bを本体ケース2に組み付けることができる。従って、実施形態1と同様に、仕切り部材30Bがロータ部90と供回りして、本体ケース2に対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。よって、仕切り部材30Bの回転方向の位置精度を確保でき、ロータ部90の軸心精度を確保できる。
【0115】
なお、変形例2において、樹脂バネ部48の周方向の一端のみをプレート部31Bに接続した形状にしてもよい。また、回り止め部40Bと回り止め部40Cのいずれか一方を省略することもできる。樹脂突起49による回り止め部40Cは、単純な構成でありながら、摩擦力によって回り止めがなされた状態で仕切り部材30Bを本体ケース2に組み付けることができる。樹脂突起49を設ける場合、その形状は変形例2のようなものでなくても良く、リブのような形状であってもよい。また、樹脂突起49によって、仕切り部材30Bの軸線X方向への移動を防止できる。これにより、仕切り部材30Bに支持された弁体6の位置精度を高めることができる。
【0116】
(変形例3)
上記各形態は、仕切り部材30/30A/30Bの外周部に樹脂バネ部からなる回り止め部40/40A/40Bを形成して、この樹脂バネ部の弾性力によって仕切り部材30/30A/30Bの外周部(回り止め部40/40A/40B)を第1、第2ケース10、20の少なくとも一方に押し付ける構成であったが、仕切り部材30と別体の弾性部材を用いて、仕切り部材30を第1、第2ケース10、20に押し付ける構成としてもよい。例えば、仕切り部材30の外周部を均一な厚さの板状に形成しておき、この外周部と第1フランジ部13あるいは第2フランジ部23との間に弾性部材を挟み込む構造としてもよい。このような構造でも、仕切り部材30の外周部を回り止め部として用いることができ、第1フランジ部13あるいは第2フランジ部23と仕切り部材30との間に摩擦力を発生させることができる。弾性部材としては、例えば、Oリング等を用いることができる。また、この場合には、仕切り部材30は樹脂製でなくてもよい。
【0117】
[実施形態2]
実施形態2について、実施形態1と同一の構成については同一の符号で示してその説明を省略し、異なる構成には異なる符号を付して説明する。
図17は実施形態2のバルブ装置の断面図である。
図17に示すように、実施形態2のバルブ装置201は、第1ケース10と第2ケース220から形成される本体ケース202を備える。本体ケース202内の空間は仕切り部材230によってバルブ室5aとロータ収容室5bに区画される。実施形態2のバルブ装置201は、仕切り部材230の本体ケース202への組み付け構造が実施形態1と異なるが、他の構成は実施形態1と同一である。
【0118】
第2ケース220の底部21および周壁部22は、実施形態1と同一である。第2ケース220の第2フランジ部223は、実施形態1と同一の外周部分23aを備える。第2フランジ部223の内周部分223bは、側面部分23cおよび底面部分223dを備え、底面部分223dに係合凹部241(ケース側回り止め部)が形成されている点が実施形態1と異なる。係合凹部241は、底面部分223dから軸線X方向の一端側(流入管3側)に凹んでいる。第1ケース10と第2ケース220は、第1フランジ部13の外周部分13aと、第2フランジ部223の外周部分23aとが全周にわたって軸線X方向に当接する。外周部分13aと外周部分23aはTIG溶接により全周にわたって接合される。これにより、第1ケース10と第2ケース220とが互いに接合されて、本体ケース202を構成する。
【0119】
両フランジ部13、223の外周縁同士を当接させた状態において、第2フランジ部223の底面部分223dは、第1フランジ部13の内周部分13bと軸線X方向に離れた位置に配置される。すなわち、第1フランジ部13の内周部分13bと、第2フランジ部223の底面部分223dとが軸線X方向に対向し、その間には仕切り部材230の外周部分が挿入される。
【0120】
(仕切り部材)
図18はバルブ装置201の要部の分解斜視図である。また、
図19(a)はバルブ装置1の要部の断面図であり、
図19(b)は
図3(a)の部分拡大図である。これらの図に示すように、バルブ装置201は、仕切り部材230の外周部分の形状が実施形態1と異なっている。
図20は仕切り部材230の説明図であり、(a)は仕切り部材230を弁体6側から見た平面図であり、(b)はロータ部90側から見た平面図である。また、
図21は、仕切り部材230の断面図(
図20(a)のA−A断面図)であり、第1ケース10、第2ケース220、ロータ部90の小径軸部93を仮想線で示している。そして、
図22は、支持部材120と、仕切り部材230の係合部35との係合状態の説明図であり、(a)は弁体6側から見た斜視図であり、(b)は(a)における面Aで切断した断面図である。また、
図23は仕切り部材230をロータ部90側から見た斜視図である。
【0121】
図17〜
図23に示すように、仕切り部材230は、円盤形状のプレート部231を有する。プレート部231の中央部には、プレート部231を厚み方向に貫通する挿通穴32が設けられる。プレート部231のロータ部90側の面231bには、挿通穴32を囲む円筒壁33と、円筒壁33を囲む環状壁34が設けられる。
【0122】
仕切り部材230の環状壁34よりも内周側の部位は、実施形態1の仕切り部材30と同一の構成である。すなわち、プレート部231のロータ部90側の面231bには、円筒壁33と環状壁34の間の部分に、径方向に延びる3本の溝31eが等角度間隔で形成されている。さらに、円筒壁33と環状壁34の間には、ロータ部90側に突出する2本の板状の支持部材39、39と、その根元部分に形成された貫通穴31d、31dと、軸受穴38aが設けられる。
【0123】
また、プレート部231の弁体6側の面231aには、軸受穴38aの裏側の位置に、弁体6側に突出する円筒状の軸受部38が設けられる。また、プレート部231の弁体6側の面31aには、挿通穴32を囲む係合部35が設けられる。係合部35には、周方向に120度間隔で切欠き35bが設けられる。切欠き35bの位置には、プレート部231を貫通する貫通穴31cと、貫通穴31cの径方向外側において係合部35と同じ方向に突出する腕部37が設けられる。
【0124】
仕切り部材230のプレート部231には、実施形態1のような樹脂バネ部は設けられていないが、プレート部231の環状壁34よりも外周側の部位には、弁体6側に突出する円柱形状の係合突起242が設けられている。係合突起242は、軸線X回りの周方向で180度間隔の2箇所にそれぞれ設けられ、その1つは、軸受部38の径方向外側に配置されている。プレート部231の環状壁34よりも外周側の部位は、係合突起242の部位を除き、軸線X方向の厚さが均一である。
【0125】
係合突起242は、第1ケース10と第2ケース220との間に仕切り部材230を組み付ける際に、第2ケース220の係合凹部241と嵌合する。係合凹部241と係合突起242が嵌合することで、仕切り部材230が本体ケース202に対して軸線X回りに相対回転することが規制される。すなわち、係合凹部241および係合突起242によって、回り止め部240が構成されている。
【0126】
(作用効果)
以上のように、実施形態2のバルブ装置201では、第2ケース220の第2フランジ部223の底面部分223dに係合凹部241(ケース側回り止め部)を形成しており、仕切り部材230には、係合凹部241と係合する係合突起242(仕切り部材側回り止め部)を形成している。そして、係合凹部241と係合突起242の係合によって、仕切り部材230の回り止めがなされる。従って、実施形態1およびその変形例と同様に、仕切り部材230がロータ部90と供回りして、本体ケース202に対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。よって、仕切り部材230の回転方向の位置精度を確保でき、ロータ部90の軸心精度を確保できる。また、仕切り部材230を本体ケース202に組み付けるとき、係合凹部241と係合突起242の係合によって、仕切り部材230の回転方向の位置決めを行うこともできる。
【0127】
なお、係合凹部241と係合突起242の凹凸を逆にしてもよい。すなわち、仕切り部材230に係合凹部を形成し、底面部分223dに係合突起を形成してもよい。ケース側の回り止め部を凸形状にする場合は、別部材を取り付けて凸部を形成してもよい。あるいは、第1フランジ部13の内周部分13bと仕切り部材230との間に回り止め部240と同様の係合凹部および係合突起を形成して、第1ケース10に対して回り止めを行ってもよい。
【0128】
(変形例4)
実施形態2は、第2ケース220と仕切り部材230の軸線X方向に対向する面に係止部(係合凹部241)と係合部(係合突起242)を形成するものであったが。変形例4は、仕切り部材230の外周面と第2ケース220に突起と凹部を形成し、これらを嵌合させて回り止めを行う形態である。
【0129】
図24は変形例4の仕切り部材230Aの説明図であり、(a)は仕切り部材230Aをロータ部90側から見た平面図であり、(b)は弁体6側から見た平面図である。また、
図25は変形例4の仕切り部材230Aと第2ケース220Aの説明図であり、(a)は第2ケース220Aをロータ部90側から見た平面図であり、(b)は仕切り部材230Aが第2ケース220Aに対して回り止めされた状態を示す平面図である。
【0130】
図24に示すように、変形例4の仕切り部材230Aは円盤形状のプレート部231Aを備える。プレート部231Aは、実施形態2の係合突起242が設けられておらず、以下に説明する係合凹部243(回り止め部240A)および樹脂突起245(回り止め部240B)を設けたこと以外の構成は実施形態2のプレート部231と同一である。プレート部231Aの外周縁には、径方向内側に凹む係合凹部243が形成されている。係合凹部243は、軸線X回りの周方向で略90度間隔の4箇所に設けられている。
【0131】
図25に示すように、変形例4の第2ケース220Aは、第2フランジ部223Aの内周部分223fの底面部分223gに、実施形態2の係合凹部241が形成されておらず、係合突起244が形成されている。第2ケース220Aは、この点を除き、実施形態2の第2ケース220と同一である。係合突起244は、仕切り部材230Aの係合凹部243と軸線X方向に重なる4箇所に形成されている。係合突起244は、第1ケース10と第2ケース220Aとの間に仕切り部材230Aを組み付ける際に、第2ケース220Aの係合凹部243と嵌合する。これにより、仕切り部材230Aが第1ケース10および第2ケース220Aに対して軸線X回りに相対回転することが規制される。すなわち、係合凹部243および係合突起244によって、回り止め部240Aが構成されている。
【0132】
また、
図24(b)に示すように、プレート部231Aの外周部には、周方向に隣り合う係合凹部243の間に、樹脂突起245が形成されている。樹脂突起245は、プレート部231Aから軸受部38および係合部35と同じ側に突出する。樹脂突起245は、周方向で略90度間隔の4箇所に設けられている。樹脂突起245の構成およびその作用効果は、実施形態1の変形例2で用いられた樹脂突起49(回り止め部40C)と同じである。すなわち、第1ケース10と第2ケース220Aとの間に仕切り部材230Aを組み付ける際に、樹脂突起245が押し潰され、プレート部231Aが第1ケース10と第2ケース220Aに対して軸線X方向に押し付けられる。これにより、摩擦力による仕切り部材230Aの回り止めがなされる。また、仕切り部材230Aの軸線X方向の位置決めもなされる。
【0133】
以上のように、変形例4の仕切り部材230Aには、係合凹部243および係合突起244によって構成される回り止め部240Aと、樹脂突起245によって構成される回り止め部240Bが設けられている。このため、変形例4においても、部材同士の係合および摩擦力によって回り止めがなされた状態で、仕切り部材230Aを第1ケース10と第2ケース220Aの間に組み付けることができる。従って、実施形態1、2と同様に、仕切り部材230Aがロータ部90と供回りして、本体ケース202に対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。よって、仕切り部材230Aの回転方向の位置精度を確保でき、ロータ部90の軸心精度を確保できる。なお、変形例4において、回り止め部240Bを省略してもよい。
【0134】
(変形例5)
図26は変形例5の仕切り部材230Bの説明図であり、(a)は仕切り部材230Bをロータ部90側から見た平面図であり、(b)は弁体6側から見た平面図である。また、
図27は変形例5の仕切り部材230Bと第2ケース220Bの説明図であり、(a)は第2ケース220Bをロータ部90側から見た平面図であり、(b)は仕切り部材230Bが第2ケース220Bに対して回り止めされた状態を示す平面図である。
【0135】
図26に示すように、変形例5の仕切り部材230Bは楕円形状のプレート部231Bを備える。プレート部231Bには、上記形態の係合凹部241や係合凹部243は設けられていないが、変形例4と同様に樹脂突起245が4箇所に設けられている。一方、
図27に示すように、変形例5の第2ケース220Bは、外周部分223hおよび内周部分223jによって構成される第2フランジ部223Bを備える。内周部分223jは、側面部分223kおよび底面部分223mを備える。側面部分223kは軸線X方向に延在する筒状であり、軸線X方向に見たときに楕円形に形成されている。内周部分223jのような楕円形の凹部は、側面部分-223kに角部がないため、プレス加工での成型が容易である。
【0136】
変形例5の仕切り部材230Bは、第1ケース10と第2ケース220Bの間に組み付けられるとき、プレート部231Bが側面部分223kの内周側に配置される。プレート部231Bと側面部分223kはいずれも楕円形であるため、プレート部231Bが側面部分223kに係合され、仕切り部材230Bの軸線X回りの回転か規制される。すなわち、変形例5では、プレート部231B(仕切り部材側の回り止め部)と側面部分223k(ケース側回り止め部)によって回り止め部240Cが構成されている。また、変形例5では、変形例4と同様に、樹脂突起245(回り止め部240B)によって、摩擦力による仕切り部材230Bの回り止めもなされる。従って、変形例5では、部材同士の係合および摩擦力によって回り止めがなされた状態で、仕切り部材230Bを第1ケース10と第2ケース220Bの間に組み付けることができる。従って、上記各形態と同様に、仕切り部材230Bがロータ部90と供回りして、第1ケース10および第2ケース220Bに対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。よって、仕切り部材230Bの回転方向の位置精度を確保でき、ロータ部90の軸心精度を確保できる。
【0137】
なお、変形例5では、プレート部231Bと側面部分223kを楕円形して仕切り部材230Bの回転を規制しているが、楕円形以外の非円形であっても、回転を規制することは可能であるため、そのような形状を採用してもよい。また、楕円形や他の非円形にする場合に、プレス加工によってそのような形状を一体に成型するのではなく、実施形態1の内周部分23bのような円形凹部を形成し、その内周面に別部材を取り付けて、楕円形や他の非円形の内周形状にしてもよい。また、変形例5においても、変形例4と同様に、摩擦力による回り止め部240Bを省略してもよい。
【0138】
[他の形態1]
上記各形態の回り止め部に代えて、接着剤による回り止め部(接着部)を設けても良い。例えば、実施形態1の仕切り部材30に樹脂バネ部を設けず、プレート部31のロータ部90側の面31bに、第1ケース10における第1フランジ部13の内周部分13bに接触する接触面を設け、この接触面を内周部分13bに対して接着剤で接着する。あるいは、プレート部31の弁体6側の面31aに、第2ケース20における第2フランジ部23の底面部分23dに接触する接触面を設け、この接触面を底面部分23dに接着剤で接着する。このような構成でも、仕切り部材230Bがロータ部90と供回りして、第1ケース10および第2ケース220Bに対して軸線X回りの回転方向に位置ずれすることを防止できる。この場合には、本体ケース2および仕切り部材30の形状をより単純にすることができる。なお、この場合には、仕切り部材30は樹脂製でなくても良い。また、実施形態2およびその変形例4、5においても、樹脂突起245を省略する場合には、仕切り部材230/230A/230Bは樹脂製でなくても良い。
【0139】
[他の形態2]
上記各形態において、ロータ部90の回転可能範囲を規制する回転規制部としてゼネバ機構を用いていたが、他の機構を用いることができる。例えば、ロータ部90と仕切り部材30との間に回転可能範囲の一端側と他端側で当接する度当り部を形成してもよい。あるいは、アメリカンワインディング機構を用いることもできる。