(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光拡散フィルムが、(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(C)成分としての光重合開始剤と、を含む光拡散フィルム用組成物を光硬化してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスプレイ用光拡散フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造を有する単一層の光拡散フィルムであって、光拡散フィルムの膜厚が60〜700μmの範囲内の値であり、かつ、フィルム面の法線方向からの光を入射した場合のヘイズ値が80%以上の値であることを特徴とするディスプレイ用光拡散フィルムである。
また、本発明の別の実施形態は、上述したディスプレイ用光拡散フィルムを用いるとともに、表示パネルのバックライトとしてコリメートバックライトを用いた表示装置である。
以下、これらの実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
但し、基本的には本発明の表示装置について説明し、本発明のディスプレイ用光拡散フィルムについては、表示装置の一構成要素として説明する。
また、説明の便宜のため、表示パネルとして液晶表示パネルを用いた場合を主として説明する。
【0024】
1.表示装置の基本構成
最初に、本発明の表示装置の基本構成を説明する。
図1に示すように、表示装置1は、画像の表示パネルとしての液晶表示パネル10と、液晶表示パネル10に画像表示用のコリメート光を入射するバックライト300と、液晶表示パネル10を通過した画像を担持する光を拡散する光拡散フィルム100と、映像信号に応じて液晶表示パネル10を駆動する駆動回路(図示せず)を備えている。
また、液晶表示パネル10には、画像表示のための開口を有し、バックライト300、液晶表示パネル10、光拡散フィルム100および駆動回路等の部材を所定の位置に保持しつつ収納するケーシング等、公知の液晶表示装置が有する各種の部材を、必要に応じて有する。
【0025】
かかる表示装置においては、バックライト300から出射されたコリメート光が、通常の液晶表示装置と同様に、表示画像に応じて変調駆動された液晶表示パネル10に入射して、通過することにより、画像を担持する光となり、この画像を担持するコリメート光が光拡散フィルム100で拡散されることにより、画像が表示される。
なお、
図1においては、表示パネルの表示面側に光拡散フィルムを積層した例を記載しているが、表示パネルの非表示面側に光拡散フィルムを積層することもできる。
また、
図1においては、透過型表示装置を例として記載しているが、本発明の表示装置は、表示パネルとして半透過型表示パネルを用いて、半透過型表示装置として構成することもできる。
【0026】
2.表示パネル
図1に示すように、表示パネルとしての液晶表示パネル10は、各種液晶表示装置に用いられる公知の液晶表示パネル10である。
したがって、例えば、
図1に示すように、2枚のガラス基板(11、12)の間に液晶を充填してなる液晶層13を有し、両ガラス基板(11、12)の液晶層13の逆面に、偏光板(14、15)を配置してなる構成を有する。
また、ガラス基板(11、12)と偏光板(14、15)との間には、必要に応じて、位相補償フィルタ等の各種の光学補償フィルム等が配置されてもよい。
【0027】
なお、液晶層13に用いられる液晶の種類としては、ネマティック(Nematic)液晶、コレステリック(Cholesteric)液晶、スメクティック(Smectic)液晶、ブルー相(Blue phase)液晶および強誘電性(Ferroelectric)液晶等を用いることができる。
【0028】
また、液晶表示パネル10は、カラーでもモノクロでもよく、液晶セル、TFT(Thin Film Transister)等の駆動手段(スイッチング素子)、ブラックマトリクス(BM)等にも特に限定は無い。
また、動作モードについても、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、IPS(In−Plane Ewiching)モード、super−IPSモード、MVA(Multidomain Vertical Alingement)モード等の全ての動作モードが利用可能である。
【0029】
また、表示パネルが、半透過型表示パネルであることも好ましく、特に半透過型液晶表示パネルであることが好ましい。
この理由は、半透過型表示パネルを用いることにより、外光が不十分な環境下においては、コリメートバックライトからの指向性が高い出射光の直進透過を抑え、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することができる一方で、外光が十分な環境下においては、外光を利用して画像を表示得ることができる半透過型表示装置を得ることができるためである。
ここで、半透過型液晶表示パネルは、室内でも屋外でも良好な画像を視認可能とするために考案された方式であり、一般に、一つの画素の中に透過領域と反射領域とを有している。
このうち、透過領域は、透過電極を有し、そこでバックライトから発せられる光を透過させることで、透過型液晶表示装置としての機能を発揮させる。
一方、反射領域は、反射電極を有し、そこで外光を反射させて、反射型液晶表示装置としての機能を発揮させる。
また、画素を透過領域と反射領域に区切るのではなく、反射型偏光板による光の透過と反射を利用した半透過型液晶パネルも存在するが、これを適用することもできる。
【0030】
3.バックライト
図1に示すように、本発明の表示装置1におけるバックライト300は、表示パネル10の表示面と直交するコリメート光を出射することができるコリメートバックライトであることを特徴とする。
この理由は、コリメートバックライトであれば、消費電力を抑えつつ正面コントラストの高い画像を表示することができるためである。
すなわち、コリメートバックライトを用いることにより、表示パネルを構成する各画素に対し、指向性の高い光を入射できることから、バックライトからの光を効率的に画像表示光として表示面側に出射することができるためである。
【0031】
かかるコリメートバックライトとしては、表示パネルの表示面と直交するコリメート光を出射することができるものであれば、従来公知の各種のものが使用可能である。
一例としては、
図2に示すようなコリメートバックライト300を挙げることができる。
すなわち、コリメートバックライト300は、高輝度ランプ338、反射板340およびコリメート板342とから構成される。
そして、高輝度ランプ338から発せられた光は、直接、あるいは反射板340で反射され、コリメート光となり、表示パネル10に入射される。
また、コリメート板342は、光透過性で、かつ観察者が視認できないサイズの球体であるビーズ320を、その一部が支持シート318に接触した状態で、光拡散反射性のバインダ344によって支持シート318に固定したものであり、支持シート318を高輝度ランプ338の側に向け、ビーズ320を表示パネル10の側に向けて配置される。
【0032】
なお、光拡散反射性のバインダ344としては、接着剤に対して光拡散物質の微粒子を分散したものが好適に例示される、
かかる光拡散物質としては、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化ハフニウム(HfO
2)、硫酸バリウム(BaSO
4)、アルミナ(Al
2O
3)、および酸化チタン(TiO
2)等の微粒子の1種以上が好適に例示される。
【0033】
また、コリメート板342においては、高輝度ランプ338から出射され、直接あるいは光反射板340で反射されてコリメート板342に入射した光は、
図2に示すように、ビーズ320と支持シート318との接触点に入射した光のみがビーズ320に入射し、屈折されて、コリメート光として出射される。
また、上述した接触点以外、すなわちバインダ344に入射した光は、バインダ344によって拡散・反射された後、光反射板340に入射して反射され、再度、コリメート板342に入射する。
【0034】
また、コリメートバックライトからの出射光の半値幅を40°以下の値とすることが好ましい。
この理由は、本発明の表示装置であれば、後述する所定の光拡散フィルムを備えることから、コリメートバックライトからの指向性が高い出射光の直進透過を抑え、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することができるためである。
すなわち、かかる半値幅が40°を超えた値となると、バックライトにおけるコリメート性能が過度に低下して、表示パネルを構成する各画素に対し、指向性の高い光を効率的に入射することが困難になり、バックライトからの光を効率的に画像表示光として表示面側に出射することが困難になる場合があるためである。
より具体的には、画像表示光における明るさのばらつきや、ぎらつきが発生しやすくなる場合がある。
したがって、コリメートバックライトからの出射光の半値幅を30°以下の値とすることがより好ましく、20°以下の値とすることがさらに好ましい。
なお、出射光の半値幅とは、出射光の輝度半値幅を意味する。
【0035】
4.光拡散フィルム
光拡散フィルム100は、表示パネル10の表示面側に積層した場合には、表示パネル10における各画素を透過して来るコリメートバックライト300から出射された指向性の高い入射光の直進透過を抑え、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射する機能を有している。
また、光拡散フィルム100は、表示パネル10の非表示面側、すなわち、表示パネル10とコリメートバックライト300との間に積層した場合には、コリメートバックライト300からの出射光の指向性を、好適な範囲に調節した上で、表示パネル10に対して入射させることにも寄与する。
また、本発明の表示装置は、かかる光拡散フィルムに特徴を有している。
すなわち、本発明における光拡散フィルムは、所定の内部構造を有する単一層の光拡散フィルムであって、所定の膜厚および所定の光拡散特性を有することを特徴とする。
以下、本発明における光拡散フィルムについて、具体的に説明する。
【0036】
(1)光拡散フィルムにおける光拡散の基本原理
本発明における光拡散フィルムは、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造を有する光拡散フィルムである。
したがって、最初に、
図3〜4を用いて、このような光拡散フィルムの基本原理について説明する。
まず、
図3(a)には、光拡散フィルム100の上面図(平面図)が示してあり、
図3(b)には、
図3(a)に示す光拡散フィルム100を、点線A−Aに沿って垂直方向に切断して、切断面を矢印に沿った方向から眺めた場合の光拡散フィルム100の断面図が示してある。
また、
図4(a)には、光拡散フィルム100の全体図を示し、
図4(b)には、
図4(a)の光拡散フィルム100をX方向から見た場合の断面図を示す。
かかる
図3(a)の平面図に示すように、光拡散フィルム100は、屈折率が相対的に高い柱状物112と、屈折率が相対的に低い領域114とからなるカラム構造113を有している。
また、
図3(b)の断面図に示すように、光拡散フィルム100の垂直方向においては、屈折率が相対的に高い柱状物112と、屈折率が相対的に低い領域114は、それぞれ所定の幅を有して交互に配置された状態となっている。
【0037】
これにより、
図4(a)に示すように、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が光拡散フィルム100によって拡散されると推定される。
すなわち、
図3(b)に示すように、光拡散フィルム100に対する入射光の入射角が、カラム構造113の境界面113aに対し、平行から所定の角度範囲の値、つまり、光拡散入射角度領域内の値である場合には、入射光(152、154)は、カラム構造内の相対的に高屈折率の柱状物112の内部を、方向を変化させながら膜厚方向に沿って通り抜けることにより、出光面側での光の進行方向が一様でなくなるものと推定される。
その結果、入射角が光拡散入射角度領域内である場合には、入射光が光拡散フィルム100によって拡散され、拡散光(152´、154´)になると推定される。
一方、光拡散フィルム100に対する入射光の入射角が、光拡散入射角度領域から外れる場合には、
図3(b)に示すように、入射光156は、光拡散フィルムによって拡散されることなく、そのまま光拡散フィルム100を透過し、透過光156´になるものと推定される。
なお、本発明において、「光拡散入射角度領域」とは、光拡散フィルムに対し、点光源からの入射光の角度を変化させた場合に、拡散光を出光するのに対応する入射光の角度範囲を意味する。
また、かかる「光拡散入射角度領域」は、
図4(a)に示すように、光拡散フィルムにおけるカラム構造の屈折率差や傾斜角等によって、その光拡散フィルムごとに決定される角度領域である。
【0038】
以上の基本原理により、カラム構造113を備えた光拡散フィルム100は、例えば、
図4(a)に示すように、光の透過と拡散において入射角度依存性を発揮することが可能となる。
また、
図3〜
図4に示すように、カラム構造113を有する光拡散フィルムは、通常、「等方性」を有することになる。
ここで、本発明において「等方性」とは、
図4(a)に示すように、入射光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光におけるフィルムと平行な面(フィルムの端面以外の面と平行な面を意味する。以下において同じ。)内での、その光の拡散具合(拡散光の広がりの形状)が、同面内での方向によって変化しない性質を有することを意味する。
より具体的には、
図4(a)に示すように、入射光がフィルムによって拡散された場合に、拡散された出射光の拡散具合は、フィルムと平行な面内において円状になる。
【0039】
また、
図4(b)に示すように、本発明において、入射光の「入射角θ1」と言った場合、入射角θ1は、光拡散フィルムの入射側表面の法線に対する角度を0°とした場合の角度(°)を意味するものとする。
また、本発明において、「光拡散角度領域」とは、光拡散フィルムに対して、入射光が最も拡散される角度に点光源を固定し、この状態で得られる拡散光の角度範囲を意味するものとする。
さらに、本発明において、「拡散光の開き角」とは、上述した「光拡散角度領域」の角度幅(°)であり、
図4(b)に示すように、フィルムの断面を眺めた場合における拡散光の開き角θ2を意味するものとする。
なお、光拡散角度領域の角度幅(°)と、光拡散入射角度領域の幅は、略同一になることが確認されている。
【0040】
また、
図4(a)に示すように、光拡散フィルムは、入射光の入射角が光拡散入射角度領域に含まれる場合には、その入射角が異なる場合であっても、出光面側においてほぼ同様の光拡散をさせることができる。
したがって、得られた光拡散フィルムは、光を所定箇所に集中させる集光作用を有すると言うことができる。
なお、カラム構造内の柱状物112の内部における入射光の方向変化は、
図3(b)に示すような全反射により直線状にジグザグに方向変化するステップインデックス型となる場合の他、曲線状に方向変化するグラディエントインデックス型となる場合も考えられる。
また、
図3(a)および(b)では、相対的に屈折率が高い柱状物112と、相対的に屈折率が低い領域114と、の境界面を簡単のために直線で表わしたが、実際には、界面は僅かに蛇行しており、それぞれの柱状物は分岐や消滅を伴った複雑な屈折率分布構造を形成している。
その結果、一様でない光学特性の分布が光拡散性を高めているものと推定される。
【0041】
(2)単一層
また、本発明における光拡散フィルムは、単一層であることを特徴とする。
この理由は、複数の光拡散フィルムを積層させた場合と比較して、貼合工程を減らすことができ、経済的に有利であるばかりか、表示画像におけるボケの発生や層間剥離の発生についても効果的に抑制することができるためである。
なお、複数の光拡散フィルムを直接積層させた場合のほか、他のフィルム等を介して複数の光拡散フィルムを積層させた場合も、複数の光拡散フィルムを積層させた場合に含まれるものとする。
【0042】
(3)光拡散特性
また、本発明における光拡散フィルムは、
図5に示すように、フィルム面の法線方向から光を入射した場合、すなわち入射角θ1=0°の場合のヘイズ値が80%以上の値であることを特徴とする。
この理由は、光拡散フィルムがかかる所定の光拡散特性を有することにより、当該フィルムが単一層からなるにもかかわらず、コリメートバックライトからの指向性の高い出射光を、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することができるためである。
すなわち、かかるヘイズ値が80%未満の値となると、表示パネルを通過した指向性の高い光の一部が、光拡散フィルムを直進透過する場合があり、所謂「ぎらつき」が生じ易くなるためである。
したがって、フィルム面の法線方向から光を入射した場合、すなわち入射角θ1=0°の場合のヘイズ値を83%以上の値とすることがより好ましく、85%以上の値とすることがさらに好ましい。
また、上述した光拡散特性は、通常、フィルムの一方の面において満足する場合は、もう一方の面においても満足することが確認されているが、仮に一方の面のみしか満足しない場合であっても、本発明の効果が得られることが確認されており、言うまでもなく、本発明の範囲内である。
なお、
図5は、光源410および積分球420を用いて、フィルム面の法線方向から光を入射した場合、すなわち入射角θ1=0°の場合のヘイズ値を測定している様子を示す側面図である。
【0043】
次いで、
図6(a)〜(b)を用いて、光拡散フィルムに対するコリメート光の入射と、その出射との関係を説明する。
図6(a)には、本発明における光拡散フィルムに対するコリメート光の入射と、その出射との関係を説明するための側面図が示してあり、
図6(b)には、内部に光拡散性微粒子を含むタイプの光拡散フィルムに対するコリメート光の入射と、その出射との関係を説明するための側面図が示してある。
まず、
図6(a)〜(b)に示すように、入射光としてのコリメート光は、周知のように、完全な平行光となる訳ではなく、実際には、そのコリメート性能に応じた拡散光となる。
かかる前提の下、
図6(a)に示すように、コリメート光が本発明における光拡散フィルムに対して入射した場合、光拡散フィルムにおける光拡散の基本原理の項において説明したように、コリメート光の入射角にある程度の開きがある場合であっても、出光面側においてほぼ同様の光拡散をさせることができる。
したがって、本発明における光拡散フィルムであれば、コリメートバックライトからの入射光を、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することができることが分かる。
【0044】
これに対し、
図6(b)に示すように、コリメート光が内部に光拡散性微粒子を含むタイプの光拡散フィルムに対して入射した場合、比較的多量の微粒子を添加することにより所定以上のヘイズ値に調節したとしても、光拡散フィルムにより拡散された拡散光の出射角は、コリメート光の入射角に単純に依存するのみである。
したがって、コリメート光の入射角にある程度の開きがある場合、平行度が比較的高い光と、平行度が比較的低い光とでは、その出射角が異なってしまい、コリメートバックライトからの入射光を、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することが困難になり、表示装置の正面が暗くなってしまうことが分かる。
そればかりか、比較的多量の微粒子を添加していることから、光拡散角度領域が過度に広がってしまい、表示装置の正面がますます暗くなってしまう。
以上のように、本発明における光拡散フィルムは、所定のヘイズ値にて規定される光拡散特性を有するとともに、所定の内部構造を有することから、これら二つの構成に由来した効果が相まって、コリメートバックライトからの指向性が高い光を、直進透過させることなく、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することができる。
【0045】
(4)内部構造
本発明における光拡散フィルムは、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造を有することを特徴とする。
この理由は、かかる内部構造を有する光拡散フィルムであれば、所定のヘイズ値にて規定される光拡散特性を比較的容易に付与することができることから、コリメートバックライトからの指向性が高い出射光の直進透過を安定的に抑制することができるためである。
また、かかる内部構造を有する光拡散フィルムであれば、コリメート光の入射角にある程度の開きがある場合であっても、効率的に画像表示光として表示装置の正面に拡散出射することができる。
さらには、ルーバー構造を有する光拡散フィルムとは異なり、入射光を等方性光拡散させることができることから、単層であってもディスプレイの上下左右方向に画像表示光を拡散させることができる。
但し、所定のヘイズ値にて規定される光拡散特性を安定的に発揮させる観点からは、本発明における光拡散フィルムのカラム構造を構成する柱状物が、光拡散フィルムにおける一方の面を第1の面とし、他方の面を第2の面とした場合に、柱状物が、第1の面から第2の面に向かって形状変化してなる変形柱状物であることが好ましい。
この理由は、第1の面から第2の面に向かって形状変化しない通常の柱状物からなるカラム構造を備えた光拡散フィルムの場合、上述した所定のヘイズ値にて規定される光拡散特性を安定的に得られないことが確認されているためである。
これに対し、第1の面から第2の面に向かって形状変化してなる変形柱状物からなるカラム構造を備えた光拡散フィルムの場合、上述した所定のヘイズ値にて規定される光拡散特性を安定的に得られることが確認されているためである。
以下、変形柱状物からなるカラム構造について、具体的に説明する。
【0046】
より具体的には、
図4(a)に示すように、変形柱状物112において、第1の面115から第2の面116に向かって直径が増加することが好ましい。
この理由は、このような変形柱状物を有するカラム構造を形成することにより、光拡散フィルムに対して、より安定的に所定の光拡散特性を付与することができるためである。
すなわち、例えば、カラム構造における変形柱状物の直径が大きい側から光が入射した際、変形柱状物における光の出口側の直径が小さくなっていることにより、光の直進透過がより生じにくくなるためである。
なお、カラム構造における変形柱状物の直径が小さい側から光が入射した場合にも、光の直進透過が生じにくくなることが確認されている。
【0047】
また、
図7(a)に示すように、変形柱状物112´が、当該柱状物の途中において屈曲部を有していることが好ましい。
この理由は、このような変形柱状物を有するカラム構造を形成することにより、光拡散フィルムに対して、一段と安定的に所定の光拡散特性を付与することができるためである。
すなわち、柱状物が途中で屈曲していることにより、屈曲部の上下どちらかの部分の傾斜に沿った方向から光を入射させた場合であっても、光の直進透過がさらに生じにくくなるためである。
【0048】
また、
図7(b)に示すように、変形柱状物112´´が、第1の面115´´の側に位置する第1の柱状物112a´´と、第2の面116´´の側に位置する第2の柱状物112b´´と、からなることが好ましい。
この理由は、このような変形柱状物を有するカラム構造を形成することにより、光拡散フィルムに対して、一段と安定的に所定の光拡散特性を付与することができるばかりか、得られる光拡散特性を効率的に制御することができるためである。
すなわち、第1および第2の柱状物を有することにより、どちらかの柱状物の傾斜に沿った方向から光を入射させた場合であっても、光の直進透過がさらに生じにくくなるためである。
また、第2の柱状物の上端部と、第1の柱状物の下端部とが、後述する実施例4の光拡散フィルムのように、互い違いに重なり合うことで形成される重複カラム構造領域を有することも好ましい。
この理由は、かかる重複カラム構造領域を有することにより、第1および第2の柱状物の間の柱状物未形成部分における散乱光の発生を抑制して、光拡散角度領域内における拡散光の強度の均一性を、さらに向上させることができるためである。
【0049】
(4)−1 屈折率
カラム構造において、屈折率が相対的に高い柱状物の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域の屈折率との差を0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を0.01以上の値とすることにより、カラム構造内において入射光を安定的に反射させて、カラム構造に由来した入射角度依存性をより高め、光拡散入射角度領域と、非光拡散入射角度領域との区別を明確に制御することができるためである。
より具体的には、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、入射角度依存性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、カラム構造における屈折率が相対的に高い柱状物の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域の屈折率との差を0.05以上の値とすることがより好ましく、0.1以上の値とすることがさらに好ましい。
なお、屈折率が相対的に高い柱状物の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域の屈折率との差は大きい程好ましいが、屈曲カラム構造を形成可能な材料を選定する観点から、0.3程度が上限であると考えられる。
【0050】
(4)−2 最大径
また、
図8(a)に示すように、カラム構造において、柱状物の断面における最大径Sを0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる最大径を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、カラム構造に由来した入射角度依存性を、より効果的に向上させることができるためである。
すなわち、かかる最大径が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる最大径が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、拡散光の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、カラム構造において、柱状物の断面における最大径を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、柱状物の断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
また、柱状物の断面とは、フィルム表面(フィルムの端面以外の表面を意味する。以下において同じ。)と平行な面によって切断された断面を意味する。
なお、柱状物の最大径や長さ等は、光学デジタル顕微鏡にて観察することにより計測することができる。
【0051】
(4)−3 柱状物間の距離
また、
図8(a)に示すように、カラム構造において、柱状物間における距離、すなわち、隣接する柱状物におけるスペースPを0.1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる距離を0.1〜15μmの範囲内の値とすることにより、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、カラム構造に由来した入射角度依存性を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、かかる距離が0.1μm未満の値となると、入射光の入射角度にかかわらず、光拡散性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、かかる距離が15μmを超えた値となると、カラム構造内を直進する光が増加し、拡散光の均一性が悪化する場合があるためである。
したがって、カラム構造において、柱状物間における距離を0.5〜10μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0052】
(4)−4 厚さ
また、カラム構造の厚さ、すなわち、
図8(b)に示すように、フィルム面の法線方向における柱状物の長さLを50〜700μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、カラム構造の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、膜厚方向に沿った柱状物の長さを安定的に確保して、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、カラム構造に由来した光拡散角度領域内における拡散光の強度の均一性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、かかるカラム構造の厚さLが50μm未満の値となると、柱状物の長さが不足して、カラム構造内を直進してしまう入射光が増加し、光拡散角度領域内における拡散光の強度の均一性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかるカラム構造の厚さLが700μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、カラム構造の厚さLを70〜400μmの範囲内の値とすることがより好ましく、80〜300μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の光拡散フィルムは、
図8(b)に示すように膜厚方向全体にカラム構造(膜厚方向長さL)が形成されていてもよいし、フィルムの上端部、下端部の少なくともいずれか一方にカラム構造未形成部分を有していてもよい。
なお、
図7(a)〜(b)に示すような変形柱状物を有するカラム構造の場合には、上方部分(光拡散フィルムを製造する際に活性エネルギー線が照射される側の部分)における柱状物の長さと、下方部分における柱状物の長さとの比を、通常、7:1〜1:50の範囲内とすることが好ましい。
【0053】
(4)−5 傾斜角
また、
図8(b)に示すように、カラム構造において、柱状物112が光拡散フィルムの膜厚方向に対して一定の傾斜角θaにて林立してなることが好ましい。
この理由は、柱状物の傾斜角を一定とすることにより、カラム構造内において入射光をより安定的に反射させて、カラム構造に由来した入射角度依存性をさらに向上させることができるためである。
また、傾斜角θaを0〜20°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、本発明の表示装置は、表示パネルの表示面と直交する平行性の高いコリメート光を用いるものであるため、基本的には傾斜角θa=0°とすることが好ましいが、傾斜角θaを完全な0°に調節することは、実際上、困難になるためである。一方、傾斜角θaが20°を超えた値となると、表示装置の正面が光拡散フィルムの光拡散角度領域から外れてしまい、ヘイズ値で規定する所定の光拡散特性を満足することが困難になる場合があるためである。また、仮に満足した場合であっても、ディスプレイの上下あるいは左右で視野角に著しく偏りが生じる場合があるためである。
したがって、傾斜角θaを0〜15°の範囲内の値とすることがより好ましく、0〜10°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、傾斜角θaは、フィルム面に垂直な面であって、1本の柱状物全体を軸線に沿って2つに切断する面によってフィルムを切断した場合の断面において測定されるフィルム表面に対する法線の角度を0°とした場合の柱状物の傾斜角(°)を意味する。
より具体的には、
図8(b)に示す通り、傾斜角θaは、カラム構造の上端面の法線と、柱状物の最上部との為す角度のうち狭い側の角度を意味する。
また、
図8(b)に示す通り、柱状物が左側に傾いているときの傾斜角を基準とし、柱状物が右側に傾いているときの傾斜角をマイナスで表記する。
なお、
図7(a)〜(b)に示すような変形柱状物を有するカラム構造の場合は、通常、上方部分における柱状物(光の入射側の柱状物)の傾斜角を0〜20°の範囲内の値とするとともに、下方部分における柱状物(光の出射側の柱状物)の傾斜角を0〜20°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0054】
(5)膜厚
また、本発明における光拡散フィルムの膜厚を60〜700μmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、光拡散フィルムの膜厚が60μm未満の値となると、カラム構造内を直進する入射光が増加し、所定の光拡散特性を示すことが困難になる場合があるためである。一方、光拡散フィルムの膜厚が700μmを超えた値となると、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射してカラム構造を形成する際に、初期に形成されたカラム構造によって光重合の進行方向が拡散してしまい、所望のカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、光拡散フィルムの膜厚を70〜400μmの範囲内の値とすることがより好ましく、80〜300μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0055】
(6)粘着剤層
また、本発明における光拡散フィルムは、その片面または両面に、被着体に対して積層するための粘着剤層を備えていることが好ましい。
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知のアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系等の粘着剤を使用することができる。
【0056】
(7)製造方法
本発明における光拡散フィルムは、下記工程(a)〜(c)を含む製造方法により製造することが好ましい。
(a)(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(C)成分としての光重合開始剤と、を含む光拡散フィルム用組成物を準備する工程
(b)光拡散フィルム用組成物を工程シートに対して塗布し、塗布層を形成する工程
(c)塗布層に対して活性エネルギー線を照射する工程
以下、各工程について、図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0057】
(7)−1 工程(a)
かかる工程は、所定の光拡散フィルム用組成物を準備する工程である。
より具体的には、(A)〜(C)成分および所望によりその他の添加剤を混合する工程である。
また、混合に際しては、室温下でそのまま撹拌してもよいが、均一性を向上させる観点からは、例えば、40〜80℃の加温条件下にて撹拌して、均一な混合液とすることが好ましい。
また、塗工に適した所望の粘度となるように、希釈溶剤をさらに加えることも好ましい。
以下、光拡散フィルム用組成物について、より具体的に説明する。
【0058】
(i)(A)成分
(i)−1 種類
本発明における光拡散フィルム用組成物は、(A)成分として、複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
この理由は、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、(A)成分の重合速度を、(B)成分の重合速度よりも速くして、これらの成分間における重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率よく形成することができる。
また、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、単量体の段階では(B)成分と十分な相溶性を有しつつも、重合の過程において複数繋がった段階では(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、カラム構造をさらに効率よく形成することができるものと推定される。
さらに、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、カラム構造における(A)成分に由来した領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、所定以上の値に調節することができる。
したがって、(A)成分として、特定の(メタ)アクリル酸エステルを含むことにより、後述する(B)成分の特性と相まって、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い領域と、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域とからなるカラム構造を効率的に得ることができる。
なお、「複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル残基部分に複数の芳香環を有する化合物を意味する。
また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を意味する。
【0059】
また、このような(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、若しくは、芳香環上の水素原子の一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等を挙げることができる。
【0060】
また、(A)成分としての複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして、ビフェニル環を含有する化合物を含むことが好ましく、特に、下記一般式(1)で表わされるビフェニル化合物を含むことが好ましい。
【0062】
(一般式(1)中、R
1〜R
10は、それぞれ独立しており、R
1〜R
10の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表わされる置換基であり、残りは、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、フッ素以外のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基およびフッ素以外のハロゲン原子のいずれかの置換基である。)
【0064】
(一般式(2)中、R
11は、水素原子またはメチル基であり、炭素数nは1〜4の整数であり、繰り返し数mは1〜10の整数である。)
【0065】
この理由は、(A)成分として、特定の構造を有するビフェニル化合物を含むことにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、(A)成分と、(B)成分との相溶性を所定の範囲にまで低下させて、両成分同士の共重合性をさらに低下させることができると推定されるためである。
また、カラム構造における(A)成分に由来した領域の屈折率を高くして、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、所定以上の値に、より容易に調節することができる。
【0066】
また、一般式(1)におけるR
1〜R
10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる炭素数が4を超えた値となると、(A)成分の重合速度が低下したり、(A)成分に由来した領域の屈折率が低くなり過ぎたりして、カラム構造を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(1)におけるR
1〜R
10が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびカルボキシアルキル基のいずれかを含む場合には、そのアルキル部分の炭素数を1〜3の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0067】
また、一般式(1)におけるR
1〜R
10が、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子以外の置換基、すなわち、ハロゲンを含まない置換基であることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルムを焼却等する際に、ダイオキシンが発生することを防止して、環境保護の観点から好ましいためである。
なお、従来の光拡散フィルムにおいては、所定のカラム構造を得るにあたり、モノマー成分を高屈折率化する目的で、モノマー成分においてハロゲン置換が行われることが一般的であった。
この点、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物であれば、ハロゲン置換を行わない場合であっても、高い屈折率とすることができる。
したがって、本発明における光拡散フィルム用組成物を光硬化してなる光拡散フィルムであれば、ハロゲンを含まない場合であっても、良好な入射角度依存性を発揮することができる。
【0068】
また、一般式(1)におけるR
2〜R
9のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが好ましい。
この理由は、一般式(2)で表わされる置換基の位置を、R
1およびR
10以外の位置とすることにより、光硬化させる前の段階において、(A)成分同士が配向し、結晶化することを効果的に防止することができるためである。
さらに、光硬化させる前のモノマー段階で液状であり、希釈溶媒等を使用しなくとも、見掛け上(B)成分と均一に混合することができる。
これにより、光硬化の段階において、(A)成分および(B)成分の微細なレベルでの凝集・相分離を可能とし、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
さらに、同様の観点から、一般式(1)におけるR
3、R
5、R
6およびR
8のいずれか一つが、一般式(2)で表わされる置換基であることが特に好ましい。
【0069】
また、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、通常1〜10の整数とすることが好ましい。
この理由は、繰り返し数mが10を超えた値となると、重合部位と、ビフェニル環とをつなぐオキシアルキレン鎖が長くなりすぎて、重合部位における(A)成分同士の重合を阻害する場合があるためである。
したがって、一般式(2)で表わされる置換基における繰り返し数mを、1〜4の整数とすることがより好ましく、1〜2の整数とすることが特に好ましい。
なお、同様の観点から、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、通常1〜4の整数とすることが好ましい。
また、重合部位である重合性炭素−炭素二重結合の位置が、ビフェニル環に対して近すぎて、ビフェニル環が立体障害となり、(A)成分の重合速度が低下する場合をも考慮すると、一般式(2)で表わされる置換基における炭素数nを、2〜4の整数とすることがより好ましく、2〜3の整数とすることが特に好ましい。
【0070】
また、一般式(1)で表わされるビフェニル化合物の具体例としては、下記式(3)〜(4)で表わされる化合物を好ましく挙げることができる。
【0073】
(i)−2 分子量
また、(A)成分の分子量を、200〜2,500の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分の重合速度をさらに速くして、(A)成分および(B)成分の共重合性をより効果的に低下させることができるものと推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を、より効率よく形成することができる。
すなわち、(A)成分の分子量が200未満の値となると、立体障害が小さくなるため(B)成分との共重合が生じ易くなるものと推定され、その結果、カラム構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分の分子量が2,500を超えた値となると、(B)成分との分子量の差が小さくなるのにともなって、(A)成分の重合速度が低下して(B)成分の重合速度に近くなり、(B)成分との共重合が生じ易くなるものと推定され、その結果、カラム構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の分子量を、240〜1,500の範囲内の値とすることがより好ましく、260〜1,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(A)成分の分子量は、分子の組成と、構成原子の原子量から得られる計算値から求めることができる。
【0074】
(i)−3 単独使用
また、本発明における光拡散フィルム用組成物は、カラム構造における屈折率が相対的に高い領域を形成するモノマー成分として、(A)成分を含むが、(A)成分は単独成分で構成されることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、(A)成分に由来した領域における屈折率のばらつきを効果的に抑制して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分における(B)成分に対する相溶性が低い場合、例えば、(A)成分がハロゲン系化合物等の場合、(A)成分を(B)成分に相溶させるための第3成分として、他の(A)成分(例えば、非ハロゲン系化合物等)を併用する場合がある。
しかしながら、この場合、かかる第3成分の影響により、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い領域における屈折率がばらついたり、低下し易くなったりすることがある。
その結果、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下し易くなったりする場合がある。
したがって、(B)成分との相溶性を有する高屈折率なモノマー成分を選択し、それを単独の(A)成分として用いることが好ましい。
なお、例えば、(A)成分としての式(3)で表わされるビフェニル化合物であれば、低粘度であることから、(B)成分との相溶性を有するため、単独の(A)成分として使用することができる。
【0075】
(i)−4 屈折率
また、(A)成分の屈折率を1.5〜1.65の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(A)成分の屈折率が1.5未満の値となると、(B)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、有効な光拡散角度領域を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(A)成分の屈折率が1.65を超えた値となると、(B)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(B)成分との見かけ上の相溶状態さえも形成する事が困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分の屈折率を、1.52〜1.62の範囲内の値とすることがより好ましく、1.56〜1.6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(A)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分の屈折率を意味する。
また、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0076】
(i)−5 含有量
また、光拡散フィルム用組成物における(A)成分の含有量を、後述する(B)成分100重量部に対して、25〜400重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(A)成分の含有量が25重量部未満の値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が少なくなって、
図3(b)の断面図に示すカラム構造における(A)成分に由来した柱状物の幅が過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における柱状物の長さが不十分になり、所定の光拡散特性を示さなくなる場合があるためである。一方、(A)成分の含有量が400重量部を超えた値となると、(B)成分に対する(A)成分の存在割合が多くなって、(A)成分に由来した柱状物の幅が過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。また、光拡散フィルムの厚さ方向における柱状物の長さが不十分になり、所定の光拡散特性を示さなくなる場合があるためである。
したがって、(A)成分の含有量を、(B)成分100重量部に対して40〜300重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜200重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0077】
(ii)(B)成分
(ii)−1 種類
本発明における光拡散フィルム用組成物は、(B)成分として、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
この理由は、ウレタン(メタ)アクリレートであれば、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節できるばかりか、(B)成分に由来した領域の屈折率のばらつきを有効に抑制し、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
【0078】
まず、ウレタン(メタ)アクリレートは、(B1)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(B2)ポリオール化合物、好ましくはジオール化合物、特に好ましくはポリアルキレングリコール、および(B3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成される。
なお、(B)成分には、ウレタン結合の繰り返し単位を有するオリゴマーも含むものとする。
このうち、(B1)成分であるイソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等を挙げることができる。
【0079】
また、上述した中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが、特に好ましい。
この理由は、脂環式ポリイソシアナートであれば、脂肪族ポリイソシアナートと比較して、立体配座等の関係で各イソシアナート基の反応速度に差を設けやすいためである。
これにより、(B1)成分が(B2)成分とのみ反応したり、(B1)成分が(B3)成分とのみ反応したりすることを抑制して、(B1)成分を、(B2)成分および(B3)成分と確実に反応させることができ、余分な副生成物の発生を防止することができる。
その結果、カラム構造における(B)成分に由来した領域、すなわち、低屈折率領域の屈折率のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0080】
また、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分と、(A)成分との相溶性を所定の範囲に低下させて、カラム構造をより効率よく形成することができる。
さらに、脂環式ポリイソシアナートであれば、芳香族ポリイソシアナートと比較して、得られる(B)成分の屈折率を小さくすることができることから、(A)成分の屈折率との差を大きくし、光拡散性をより確実に発現するとともに、光拡散角度領域内における拡散光の均一性の高いカラム構造をさらに効率よく形成することができる。
また、このような脂環式ポリイソシアナートの中でも、脂肪族環を介してイソシアナート基を2つ含有する化合物が好ましい。
この理由は、このような脂環式ジイソシアナートであれば、(B2)成分および(B3)成分と定量的に反応し、単一の(B)成分を得ることができるためである。
このような脂環式ジイソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート(IPDI)を特に好ましく挙げることができる。
この理由は、2つのイソシアナート基の反応性に有効な差異を設けることができるためである。
【0081】
また、ウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(B2)成分であるポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリへキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが、特に好ましい。
この理由は、ポリプロピレングリコールであれば、(B)成分を硬化させた際に、当該硬化物における良好なソフトセグメントとなり、光拡散フィルムのハンドリング性や実装性を、効果的に向上させることができるためである。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、主に、(B2)成分の重量平均分子量により調節することができる。ここで、(B2)成分の重量平均分子量は、通常、2,300〜19,500であり、好ましくは4,300〜14,300であり、特に好ましくは6,300〜12,300である。
【0082】
また、ウレタン(メタ)アクリレートを形成する成分のうち、(B3)成分であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、得られるウレタン(メタ)アクリレートの重合速度を低下させ、カラム構造をより効率的に形成する観点から、特に、ヒドロキシアルキルメタクリレートであることがより好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであることがさらに好ましい。
【0083】
また、(B1)〜(B3)成分によるウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って実施することができる。
このとき(B1)〜(B3)成分の配合割合を、モル比にて(B1)成分:(B2)成分:(B3)成分=1〜5:1:1〜5の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合割合とすることにより、(B2)成分の有する2つの水酸基に対してそれぞれ(B1)成分の有する一方のイソシアナート基が反応して結合し、さらに2つの(B1)成分がそれぞれ有するもう一方のイソシアナート基に対して、(B3)成分の有する水酸基が反応して結合したウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができるためである。
したがって、(B1)〜(B3)成分の配合割合を、モル比にて(B1)成分:(B2)成分:(B3)成分=1〜3:1:1〜3の割合とすることがより好ましく、2:1:2の割合とすることがさらに好ましい。
【0084】
(ii)−2 重量平均分子量
また、(B)成分の重量平均分子量を、3,000〜20,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の重量平均分子量を所定の範囲とすることにより、(A)成分および(B)成分の重合速度に所定の差を生じさせ、両成分の共重合性を効果的に低下させることができると推定されるためである。
その結果、光硬化させた際に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を効率よく形成することができる。
すなわち、(B)成分の重量平均分子量が3,000未満の値となると、(B)成分の重合速度が速くなって、(A)成分の重合速度に近くなり、(A)成分との共重合が生じ易くなる結果、カラム構造を効率よく形成することが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の重量平均分子量が20,000を超えた値となると、カラム構造を形成することが困難になったり、(A)成分との相溶性が過度に低下して、塗布段階で(A)成分が析出したりする場合があるためである。
したがって、(B)成分の重量平均分子量を、5,000〜15,000の範囲内の値とすることがより好ましく、7,000〜13,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、(B)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0085】
(ii)−3 単独使用
また、(B)成分は、分子構造や重量平均分子量が異なる2種以上を併用してもよいが、カラム構造における(B)成分に由来した領域の屈折率のばらつきを抑制する観点からは、1種類のみを用いることが好ましい。
すなわち、(B)成分を複数用いた場合、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域における屈折率がばらついたり、高くなったりして、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い領域との屈折率差が不均一になったり、過度に低下する場合があるためである。
【0086】
(ii)−4 屈折率
また、(B)成分の屈折率を1.4〜1.55の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の屈折率をかかる範囲内の値とすることにより、(A)成分に由来した領域の屈折率と、(B)成分に由来した領域の屈折率との差を、より容易に調節して、カラム構造を備えた光拡散フィルムを、より効率的に得ることができるためである。
すなわち、(B)成分の屈折率が1.4未満の値となると、(A)成分の屈折率との差は大きくなるものの、(A)成分との相溶性が極端に悪化し、カラム構造を形成することができないおそれがあるためである。一方、(B)成分の屈折率が1.55を超えた値となると、(A)成分の屈折率との差が小さくなり過ぎて、所望の入射角度依存性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の屈折率を、1.45〜1.54の範囲内の値とすることがより好ましく、1.46〜1.52の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(B)成分の屈折率を意味する。
そして、屈折率は、例えば、JIS K0062に準じて測定することができる。
【0087】
また、上述した(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.01以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる屈折率の差を所定の範囲内の値とすることにより、光の透過と拡散におけるより良好な入射角度依存性、およびより広い光拡散入射角度領域を有する光拡散フィルムを得ることができるためである。
すなわち、かかる屈折率の差が0.01未満の値となると、入射光がカラム構造内で全反射する角度域が狭くなることから、光拡散における開き角が過度に狭くなる場合があるためである。一方、かかる屈折率の差が過度に大きな値となると、(A)成分と(B)成分の相溶性が悪化しすぎて、カラム構造を形成できないおそれがあるためである。
したがって、(A)成分の屈折率と、(B)成分の屈折率との差を、0.05〜0.5の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう(A)成分および(B)成分の屈折率とは、光照射により硬化する前の(A)成分および(B)成分の屈折率を意味する。
【0088】
(ii)−5 含有量
また、光拡散フィルム用組成物における(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量100重量部に対して、10〜75重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(B)成分の含有量が10重量部未満の値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が少なくなって、(B)成分に由来した領域が、(A)成分に由来した領域と比較して過度に小さくなり、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。一方、(B)成分の含有量が75重量部を超えた値となると、(A)成分に対する(B)成分の存在割合が多くなって、(B)成分に由来した領域が、(A)成分に由来した領域と比較して過度に大きくなり、逆に、良好な入射角度依存性を有するカラム構造を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分の含有量を、光拡散フィルム用組成物の全体量100重量部に対して、20〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0089】
(iii)(C)成分
(iii)−1 種類
また、本発明における光拡散フィルム用組成物は、(C)成分として、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
この理由は、光拡散フィルム用組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、効率的に、(B)成分に由来した屈折率が相対的に低い領域中に、(A)成分に由来した屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を形成することができるためである。
ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。
【0090】
かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
(iii)−2 含有量
また、光拡散フィルム用組成物における(C)成分の含有量を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、0.2〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(C)成分の含有量が0.2重量部未満の値となると、十分な入射角度依存性を有する光拡散フィルムを得ることが困難になるばかりか、重合開始点が過度に少なくなって、フィルムを十分に光硬化させることが困難になる場合があるためである。一方、(C)成分の含有量が20重量部を超えた値となると、塗布層の表層における紫外線吸収が過度に強くなって、かえってフィルムの光硬化が阻害されたり、臭気が過度に強くなったり、あるいはフィルムの初期の黄色味が強くなったりする場合があるためである。
したがって、(C)成分の含有量を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、0.5〜15重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0092】
(iv)(D)成分
(iv)−1 種類
また、本発明における光拡散フィルム用組成物は、特に
図7(a)に示すような柱状物の途中において屈曲部を有する変形柱状物112´を有するカラム構造を形成する場合に、(D)成分として、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
この理由は、(D)成分として、紫外線吸収剤を含むことにより、活性エネルギー線を照射した際に、所定波長の活性エネルギー線を、所定の範囲で選択的に吸収することができるためである。
その結果、光拡散フィルム用組成物の硬化を阻害することなく、
図7(a)に示すように、フィルム内に形成されるカラム構造に屈曲を生じさせることができ、これにより、得られる光拡散フィルムに対し、より安定的に所定の光拡散特性を付与することができる。
【0093】
また、(D)成分が、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0094】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、下記式(5)〜(9)で表わされる化合物が好ましく挙げられる。
【0100】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、下記式(10)で表わされる化合物が好ましく挙げられる。
【0102】
(iv)−2 含有量
また、(D)成分を含む場合には、光拡散フィルム用組成物における(D)成分の含有量を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、2重量部未満(但し、0重量部を除く。)の値とすることが好ましい。
この理由は、(D)成分の含有量をかかる範囲内の値とすることにより、光拡散フィルム用組成物の硬化を阻害することなく、フィルム内に形成されるカラム構造に屈曲を生じさせることができ、これにより、得られる光拡散フィルムに対し、より安定的に所定の光拡散特性を付与することができるためである。
すなわち、(D)成分の含有量が2重量部以上の値となると、光拡散フィルム用組成物の硬化が阻害されて、フィルム表面に収縮シワが生じたり、全く硬化しなくなったりする場合があるためである。一方、(D)成分の含有量が過度に少なくなると、フィルム内に形成される所定の内部構造に対し、十分な屈曲を生じさせることが困難になり、得られる光拡散フィルムに対し、所定の光拡散特性を安定的に付与することが困難になる場合があるためである。
したがって、(D)成分の含有量を、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して、0.01〜1.5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.02〜1重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0103】
(v)他の添加剤
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、上述した化合物以外の添加剤を添加することができる。
このような添加剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
なお、このような添加剤の含有量は、一般に、(A)成分および(B)成分の合計量(100重量%)に対して、0.01〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜3重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜2重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0104】
(7)−2 工程(b):塗布工程
かかる工程は、
図9(a)に示すように、光拡散フィルム用組成物を工程シート102に対して塗布し、塗布層101を形成する工程である。
工程シートとしては、プラスチックフィルム、紙のいずれも使用することができる。
このうち、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルム、およびポリイミド系フィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、グラシン紙、コート紙、およびラミネート紙等が挙げられる。
また、後述する工程を考慮すると、工程シート102としては、熱や活性エネルギー線に対する寸法安定性に優れたプラスチックフィルムであることが好ましい。
このようなプラスチックフィルムとしては、上述したもののうち、ポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系フィルムおよびポリイミド系フィルムが好ましく挙げられる。
【0105】
また、工程シートに対しては、光硬化後に、得られた光拡散フィルムを工程シートから剥離し易くするために、工程シートにおける光拡散フィルム用組成物の塗布面側に、剥離層を設けることが好ましい。
かかる剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
なお、工程シートの厚さは、通常、25〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0106】
また、工程シート上に光拡散フィルム用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等、従来公知の方法により行うことができる。
なお、このとき、塗布層の膜厚を60〜700μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0107】
(7)−3 工程(c):活性エネルギー線の照射工程
かかる工程は、
図9(b)に示すように、塗布層101に対して活性エネルギー線照射を行い、フィルム内にカラム構造を形成し、光拡散フィルムとする工程である。
より具体的には、活性エネルギー線の照射工程においては、工程シートの上に形成された塗布層に対し、光線の平行度が高い平行光を照射する。
【0108】
ここで、平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。
より具体的には、例えば、
図10(a)に示すように、点光源202からの照射光50をレンズ204によって平行光60とした後、塗布層101に照射したり、
図10(b)〜(c)に示すように、線状光源125からの照射光50を、照射光平行化部材200(200a、200b)によって平行光60とした後、塗布層101に照射したりすることが好ましい。
【0109】
なお、
図10(d)に示すように、照射光平行化部材200は、線状光源125による直接光のうち、光の向きがランダムとなる線状光源125の軸線方向と平行な方向において、例えば、板状部材210aや筒状部材210b等の遮光部材210を用いて光の向きを統一することにより、線状光源125による直接光を平行光に変換することができる。
より具体的には、線状光源125による直接光のうち、板状部材210aや筒状部材210b等の遮光部材210に対する平行度が低い光は、これらに接触し、吸収される。
したがって、板状部材210aや筒状部材210b等の遮光部材210に対する平行度が高い光、すなわち、平行光のみが、照射光平行化部材200を通過することになり、結果として、線状光源125による直接光が、照射光平行化部材200により平行光に変換されることになる。
なお、板状部材210aや筒状部材210b等の遮光部材210の材料物質としては、遮光部材210に対する平行度の低い光を吸収できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、耐熱黒塗装を施したアルスター鋼板等を用いることができる。
【0110】
また、照射光の平行度を10°以下の値とすることが好ましい。
この理由は、照射光の平行度をかかる範囲内の値とすることにより、カラム構造を効率的、かつ、安定的に形成することができるためである。
したがって、照射光の平行度を5°以下の値とすることがより好ましく、2°以下の値とすることがさらに好ましい。
【0111】
また、照射光の照射角としては、
図11に示すように、塗布層101の表面に対する法線の角度を0°とした場合の照射角θ3を、通常、−80〜80°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、照射角が−80〜80°の範囲外の値となると、塗布層101の表面での反射等の影響が大きくなって、十分なカラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。
【0112】
また、照射光としては、紫外線や電子線等が挙げられるが、紫外線を用いることが好ましい。
この理由は、電子線の場合、重合速度が非常に速いため、重合過程で(A)成分と(B)成分が十分に相分離できず、カラム構造を形成することが困難になる場合があるためである。一方、可視光等と比較した場合、紫外線の方が、その照射により硬化する紫外線硬化樹脂や、使用可能な光重合開始剤のバリエーションが豊富であることから、(A)成分および(B)成分の選択の幅を広げることができるためである。
【0113】
また、紫外線の照射条件としては、塗布層表面におけるピーク照度を0.1〜10mW/cm
2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるピーク照度が0.1mW/cm
2未満の値となると、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかるピーク照度が10mW/cm
2を超えた値となると、(A)成分および(B)成分の相分離が進む前に硬化してしまい、逆に、カラム構造を明確に形成することが困難になる場合があるためである。
したがって、紫外線照射における塗布層表面のピーク照度を0.3〜8mW/cm
2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜6mW/cm
2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0114】
また、紫外線照射における塗布層表面における積算光量を5〜200mJ/cm
2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる積算光量が5mJ/cm
2未満の値となると、カラム構造を上方から下方に向けて十分に伸長させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる積算光量が200mJ/cm
2を超えた値となると、得られる光拡散フィルムに着色が生じる場合があるためである。
したがって、紫外線照射における塗布層表面における積算光量を7〜150mJ/cm
2の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜100mJ/cm
2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、フィルム内に形成する内部構造により、ピーク照度および積算光量を最適化することが好ましい。
【0115】
また、紫外線照射の際に、工程シート上に形成された塗布層を、0.1〜10m/分の速度にて移動させることが好ましい。
この理由は、かかる速度が0.1m/分未満の値となると、量産性が過度に低下する場合があるためである。一方、かかる速度が10m/分を超えた値となると、塗布層の硬化、言い換えれば、カラム構造の形成よりも速く、塗布層に対する紫外線の入射角度が変化してしまい、カラム構造の形成が不十分になる場合があるためである。
したがって、紫外線照射の際に、工程シート上に形成された塗布層を、0.2〜5m/分の範囲内の速度にて移動させることがより好ましく、0.3〜3m/分の範囲内の速度にて移動させることがさらに好ましい。
なお、紫外線照射工程後の光拡散フィルムは、工程シートを剥離することによって、最終的に使用可能な状態となる。
【0116】
なお、
図7(b)に示すような第1の面側に位置する第1の柱状物と、第2の面側に位置する第2の柱状物とからなる変形柱状物112´´を有するカラム構造を形成する場合には、紫外線照射を2段階に分けて行う。
すなわち、最初に第1の紫外線照射を行い、塗布層の下部、すなわち第2の面側に第2の柱状物を形成し、塗布層の上部、すなわち第1の面側にカラム構造未形成領域を残す。
このとき、安定的にカラム構造未形成領域を残す観点からは、第1の紫外線照射を、酸素阻害の影響を利用すべく、酸素存在雰囲気下で行うことが好ましい。
次いで、第2の紫外線照射を行い、第1の面側に残されたカラム構造未形成領域に第1の柱状物を形成する。
このとき、安定的に第1の柱状物を形成する観点からは、酸素阻害の影響を抑制すべく、第2の紫外線照射を、非酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0118】
[実施例1]
1.光拡散フィルムの作成
(1)低屈折率重合性化合物(B)成分の合成
容器内に、(B2)成分としての重量平均分子量9,200のポリプロピレングリコール(PPG)1モルに対して、(B1)成分としてのイソホロンジイソシアナート(IPDI)2モル、および(B3)成分としての2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2モルを収容した後、常法に従って反応させ、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。
【0119】
なお、ポリプロピレングリコールおよびポリエーテルウレタンメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記条件に沿って測定したポリスチレン換算値である。
・GPC測定装置:東ソー(株)製、HLC−8020
・GPCカラム :東ソー(株)製(以下、通過順に記載)
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒 :テトラヒドロフラン
・測定温度 :40℃
【0120】
(2)光拡散フィルム用組成物の調製
次いで、得られた(B)成分としての重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート100重量部に対し、(A)成分としての下記式(3)で表わされる分子量268のo−フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート(新中村化学(株)製、NKエステル A−LEN−10)150重量部と、(C)成分としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン20重量部((A)成分および(B)成分の合計量(100重量部)に対して8重量部)とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散フィルム用組成物を得た。
なお、(A)成分および(B)成分の屈折率は、アッベ屈折率(アタゴ(株)製、アッベ屈折計DR−M2、Na光源、波長589nm)を用いてJIS K0062に準じて測定したところ、それぞれ1.58および1.46であった。
【0121】
【化11】
【0122】
(3)塗布工程
次いで、得られた光拡散フィルム用組成物を、工程シートとしてのフィルム状の透明ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する。)に対して塗布し、膜厚210μmの塗布層を形成した。
【0123】
(4)活性エネルギー線照射
次いで、塗布層を
図9(b)におけるB方向に移動させながら、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック(株)製)を用い、平行度が2°以下の平行光(主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線)を、照射角(
図11のθ3)がほぼ0°となるように塗布層に照射した。
その際のピーク照度は3.1mW/cm
2、積算光量は58.9mJ/cm
2、ランプ高さは240mmとし、塗布層の移動速度は0.2m/分とした。
【0124】
次いで、確実な硬化を図るべく、塗布層の露出面側に、厚さ38μmの紫外線透過性を有する剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET382050;紫外線照射側の表面における中心平均粗さ0.01μm、ヘイズ値1.80%、像鮮明度425、波長360nmの透過率84.3%)をラミネートした。
次いで、剥離フィルムの上から、上述した平行光の進行方向をランダムにした散乱光をピーク照度10mW/cm
2、積算光量150mJ/cm
2となるように照射して塗布層を完全硬化させ、工程シートと剥離フィルムを除いた状態での膜厚が210μmである光拡散フィルムを得た。
なお、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス(株)製、アイ紫外線積算照度計UVPF−A1)を塗布層の位置に設置して測定した。
また、得られた光拡散フィルムの膜厚は、定圧厚さ測定器(宝製作所(株)製、テクロック PG−02J)を用いて測定した。
また、得られた光拡散フィルムを、塗布層の移動方向に平行かつフィルム面と直交する面で切断した断面の模式図を
図12(a)に示し、その断面写真を
図12(b)に示す。
また、得られた光拡散フィルムを、塗布層の移動方向に垂直かつフィルム面と直交する面で切断した断面の断面写真を
図12(c)に示す。
図12(b)および(c)より、得られた光拡散フィルムにおける内部構造が、
図4(a)に示すような変形柱状物を有するカラム構造であることが分かる。
なお、光拡散フィルムの切断は剃刀を用いて行い、断面の写真の撮影はデジタルマクロスコープ(キーエンス(株)製、VHX−2000)を用いて反射観察により行った。
【0125】
(5)光拡散特性の評価
(5)−1 ヘイズ値の測定
得られた光拡散フィルムのヘイズ値を測定した。
すなわち、PETと剥離フィルムにより挟まれた状態で得られた光拡散フィルムのPET表面に粘着剤層を設け、厚さ1.1mmのソーダガラスに対して貼合し、評価用試験片とした。
次いで、試験片のガラス側より、
図5に示すように、得られた光拡散フィルムのフィルム面の法線方向から、つまり、入射角θ1=0°となるように光を入射し、そのときのヘイズ値(%)をヘイズメータ(日本電色工業(株)製、NDH5000)を用いて、JIS K 7136に準じて測定した。得られたヘイズ値は95%であった。
なお、ヘイズ値(%)は、下記数式(1)にて算出される値を意味し、下記数式(1)中、拡散透過率(%)とは、全線透過率(%)から平行光透過率(%)を引いた値であり、平行光透過率(%)とは、直進透過光の進行方向に対し、±2.5°までの広がりを有する光の透過率(%)を意味する。
【0126】
【数1】
【0127】
(5)−2 コノスコープによる測定
得られた光拡散フィルムをコリメートバックライトを備えた表示装置に適用した場合に相当する光拡散特性を測定した。
すなわち、PETと剥離フィルムにより挟まれた状態で得られた光拡散フィルムのPET表面に粘着剤層を設け、厚さ1.1mmのソーダガラスに対して貼合し、評価用試験片とした。
次いで、コノスコープ(autronic−MELCHERS GmbH社製)を用いて、
図13(a)に示すように、試験片のガラス側より、実施例1の光拡散フィルムのフィルム面の法線方向から、つまり、入射角θ1=0°となるように光を入射した。得られた光拡散具合を示すコノスコープ画像を
図13(b)に示す。
なお、各コノスコープ画像における放射状に引かれた線は、それぞれ方位角方向0〜180°、45〜225°、90〜270°、135〜315°を示し、同心円状に引かれた線は、内側から順に極角方向20°、40°、60°、80°を示す。
したがって、コノスコープ画像における同心円の中心部分が、フィルム正面に拡散出射された拡散光の拡散具合を表している。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過を抑えた均一な光が拡散出射されていることが分かる。
【0128】
また、コノスコープを用いて、入射角θ1=0°の光を実施例1の光拡散フィルム並びに比較のために実施例2〜3および比較例1の光拡散フィルムに対して入射した場合における拡散光の出射角(°)に対する輝度(cd/m
2)を測定した。得られた出射角−輝度チャートを
図14に示す。
なお、
図14における特性曲線Aが実施例1(膜厚:210μm)における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが実施例2(膜厚:170μm)における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが実施例3(膜厚:135μm)における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが比較例1(膜厚:110μm)における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、同じ変形柱状物からなるカラム構造を有する実施例1〜3および比較例1の光拡散フィルムであっても、膜厚の違いによってフィルム正面に対する拡散具合が異なることが分かる。
すなわち、特性曲線A〜Cからは、膜厚が135〜210μmの範囲であれば、出射角0°における輝度が300〜400cd/m
2に抑えられており、入射光の直進透過が効果的に抑制されていることが分かる。
また、出射角の範囲(光拡散角度領域)も−30〜30°程度に適度に広がっているとともに、その領域内における輝度の変化も緩やかであることから、ばらつきやぎらつきの少ない均一な拡散光が出射されていることが分かる。
一方、特性曲線Dからは、膜厚が110μmになると、出射角0°における輝度が1800cd/m
2程にまで急激に増加しており、入射光の直進透過が著しく生じていることが分かる。
また、出射角の範囲(光拡散角度領域)は−20〜20°程度には広がっているものの、その領域内における輝度の変化は急峻であり、ばらつきやぎらつきが多い不均一な拡散光が出射されていることが分かる。
【0129】
また、コノスコープを用いて、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を実施例1の光拡散フィルムに対して入射した場合における拡散光の出射角(°)に対する輝度(cd/m
2)を測定した。得られた出射角−輝度チャートを
図15に示す。
なお、
図15における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、実施例1の光拡散フィルムであれば、入射角θ1が0〜15°の範囲で変化した場合であっても、出射角の範囲(光拡散角度領域)は常に−30〜30°程度に維持されており、異なる角度から入射する光であっても、効率的にフィルム正面に対して拡散出射できることが分かる。
したがって、コリメートバックライトからの入射光の半値幅が、少なくとも30°以下であれば、効率的に表示装置の正面に対して拡散出射できることが分かる。
【0130】
2.表示装置の製造および評価
次いで、
図1に示すように、得られた光拡散フィルムを偏光板の上に貼合するとともに、バックライトとして、
図2に示すコリメートバックライト(出射光の半値幅:20°)を配置し、表示装置を製造した。
得られた表示装置を用いて、所定画像を表示させ、その視認具合を評価したところ、表示装置の正面において視野角が広く、かつ、ぎらつきがない良好な視認具合であることが確認された。
また、実際の表示装置における表示画像の視認具合と、上述した試験片を試料としてコノスコープを用いて測定した
図13(b)に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。
【0131】
[実施例2]
実施例2では、光拡散フィルム用組成物を塗布する際に、塗布層の膜厚を170μmに変えたほかは、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた光拡散フィルムにおける内部構造は、実施例1と同様に
図4(a)に示すような変形柱状物を有するカラム構造であった。また、膜厚は170μmであり、測定されたヘイズ値は94%であった。その他の得られた結果を、
図16〜17および
図14に示す。
ここで、
図16は、コノスコープを用いて、実施例2の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°となるように光を入射した場合のコノスコープ画像である。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過を抑えた均一な光が拡散出射されていることが分かる。
また、
図17は、コノスコープを用いて、実施例2の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図17における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、実施例2の光拡散フィルムであれば、膜厚の大きい実施例1の場合よりは、各入射角θ1に対する拡散光の輝度に差が生じるものの、入射角θ1が0〜15°の範囲で変化した場合であっても、出射角の範囲(光拡散角度領域)は常に−30〜30°程度に維持されていることが分かる。したがって、異なる角度から入射する光であっても、効率的にフィルム正面に対して拡散出射できることが分かる。
また、
図14における特性曲線Bが実施例2の光拡散フィルムの入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートである。
さらに、得られた光拡散フィルムを実際に適用した表示装置における表示画像の視認具合と、
図16に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。
【0132】
[実施例3]
実施例3では、光拡散フィルム用組成物を塗布する際に、塗布層の膜厚を135μmに変えたほかは、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた光拡散フィルムにおける内部構造は、実施例1と同様に
図4(a)に示すような変形柱状物を有するカラム構造であった。また、膜厚は135μmであり、測定されたヘイズ値は93%であった。その他の得られた結果を、
図18〜19および
図14に示す。
ここで、
図18は、コノスコープを用いて、実施例3の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°となるように光を入射した場合のコノスコープ画像である。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過を抑えた均一な光が拡散出射されていることが分かる。
また、
図19は、コノスコープを用いて、実施例3の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図19における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、実施例3の光拡散フィルムであれば、膜厚の大きい実施例1や2の場合よりは、各入射角θ1に対する拡散光の輝度に差が生じるものの、入射角θ1が0〜15°の範囲で変化した場合であっても、出射角の範囲(光拡散角度領域)は常に−30〜30°程度に維持されていることが分かる。したがって、異なる角度から入射する光であっても、効率的にフィルム正面に対して拡散出射できることが分かる。
また、
図14における特性曲線Cが実施例3の光拡散フィルムの入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートである。
さらに、得られた光拡散フィルムを実際に適用した表示装置における表示画像の視認具合と、
図18に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。
【0133】
[実施例4]
実施例4では、活性エネルギー線照射の際に、平行光を照射した後に、塗布層の露出面側に剥離フィルムをラミネートした状態で、散乱光を照射する代わりに、中心光線平行度を±3°以内に制御した紫外線スポット平行光源(ジャテック(株)製)を用い、平行度が2°以下の平行光を、照射角(
図11のθ3)ほぼ0°となるように塗布層に照射したほかは、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた光拡散フィルムの膜厚は110μmであり、測定されたヘイズ値は94%であった。その他の得られた結果を、
図20〜23に示す。
ここで、
図20(a)は、得られた光拡散フィルムを、塗布層の移動方向に平行かつフィルム面と直交する面で切断した断面の模式図であり、
図20(b)は、その断面写真である。
また、
図20(c)は、得られた光拡散フィルムを、塗布層の移動方向に垂直かつフィルム面と直交する面で切断した断面の断面写真である。
図20(b)および(c)より、得られた光拡散フィルムにおける内部構造が、
図7(b)に示すような変形柱状物を有するカラム構造であることが分かる。
また、
図21は、コノスコープを用いて、実施例4の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°となるように光を入射した場合のコノスコープ画像である。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過を抑えた均一な光が拡散出射されていることが分かる。
【0134】
また、
図22は、コノスコープを用いて、入射角θ1=0°の光を実施例4の光拡散フィルム並びに比較のために実施例1および比較例1の光拡散フィルムに対して入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図22における特性曲線Aが実施例4(膜厚:110μm)における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが実施例1(膜厚:210μm)における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが比較例1(膜厚:110μm)における出射角−輝度チャートである。
かかる
図22に示す出射角−輝度チャートから、異なる変形柱状物からなるカラム構造を有する実施例4および1の光拡散フィルムでは、フィルム正面に対する拡散具合が異なることが分かる。
すなわち、特性曲線AとBを比較すると、実施例4(特性曲線A)の膜厚が、実施例1(特性曲線B)の膜厚の半分程度であるにもかかわらず、特性曲線Aの方が特性曲線Bよりも、若干、拡散角が0°のときの輝度が高いのみであり、出射角の範囲(光拡散角度領域)は特性曲線Bよりも広くなっている。
これは、実施例4(特性曲線A)における内部構造が、
図7(b)に示す変形柱状物からなるカラム構造を有するのに対し、実施例1(特性曲線B)における内部構造は、
図4(a)に示す変形柱状物からなるカラム構造を有していることに起因していると判断できる。
このことは、実施例4(特性曲線A)と膜厚が同じであり、かつ、内部構造が実施例1(特性曲線B)と同じである比較例1(特性曲線C)との比較からも明白である。
【0135】
また、
図23は、コノスコープを用いて、実施例4の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図23における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、実施例4の光拡散フィルムであれば、各入射角θ1に対する拡散光の輝度にある程度の差が生じるものの、入射角θ1が0〜15°の範囲で変化した場合であっても、出射角の範囲(光拡散角度領域)は常に−30〜30°程度に維持されていることが分かる。したがって、異なる角度から入射する光であっても、効率的にフィルム正面に対して拡散出射できることが分かる。
さらに、得られた光拡散フィルムを実際に適用した表示装置における表示画像の視認具合と、
図21に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。
【0136】
[比較例1]
比較例1では、光拡散フィルム用組成物を塗布する際に、塗布層の膜厚を110μmに変えたほかは、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造し、評価した。得られた光拡散フィルムにおける内部構造は、実施例1と同様に
図4(a)に示すような変形柱状物を有するカラム構造であった。また、膜厚は110μmであり、測定されたヘイズ値は79%であった。その他の得られた結果を、
図24〜25および
図14に示す。
ここで、
図24は、コノスコープを用いて、比較例1の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°となるように光を入射した場合のコノスコープ画像である。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過が著しく生じていることが分かる。
また、
図25は、コノスコープを用いて、比較例1の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図25における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、比較例1の光拡散フィルムでは、各入射角θ1に対する出射角のピークが大きく異なってしまうことが分かる。したがって、異なる角度から入射する光を、効率的にフィルム正面に対して拡散出射することができないことが分かる。
また、
図14における特性曲線Dが比較例1の光拡散フィルムの入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートである。
さらに、得られた光拡散フィルムを実際に適用した表示装置における表示画像の視認具合と、
図24に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。
【0137】
[比較例2]
比較例2では、塗布層の膜厚を175μmにするとともに、活性エネルギー線の照射を以下のように行った以外は、実施例1と同様に光拡散フィルムを製造し、評価した。
すなわち、線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、ECS−4011GX)を準備した。
次いで、熱線カットフィルター枠上に遮光版を設置し、塗布層の表面に照射される紫外線が、線状光源の長軸方向から眺めた時の塗布層表面の法線を0°とした場合に、線状光源からの直接の紫外線の照射角(
図11のθ3)が0°となるように設定した。
このとき、塗布層表面から線状光源までの高さは500mmとし、ピーク照度は2.0mW/cm
2、積算光量は50mJ/cm
2となるように設定した。
また、遮光板等での反射光が、照射機内部で迷光となり、塗布層の光硬化に影響を及ぼすことを防ぐため、コンベア付近にも遮光板を設け、線状光源から直接発せられる紫外線のみが塗布層に対して照射されるように設定した。
次いで、コンベアにより、塗布層を0.2m/分の速度にて移動させながら紫外線を照射した。
次いで、確実な硬化を図るべく、実施例1と同様に剥離フィルム越しに散乱光を照射して塗布層を完全硬化させ、光拡散フィルムを得た。
【0138】
また、得られた光拡散フィルムにおける内部構造は、(A)成分の硬化物を主成分とする板状領域と、(B)成分の硬化物を主成分とする板状領域とを、塗布層の移動方向に沿って交互に配置してなるルーバー構造であった。また、膜厚は175μmであり、測定されたヘイズ値は81%であった。その他の得られた結果を、
図26〜27に示す。
ここで、
図26は、コノスコープを用いて、比較例2の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°となるように光を入射した場合のコノスコープ画像である。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過を抑えた均一な光を拡散出射できるものの、入射光を異方性光拡散させてしまうことから、上下方向、すなわち方位角方向0〜180°においては、少しでもずれた位置に対してほとんど拡散出射できず、視野角が著しく狭いことが分かる。
また、
図27は、コノスコープを用いて、比較例2の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図27における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、比較例2の光拡散フィルムでは、各入射角θ1に対する出射角のピークが大きく異なっており、さらに、入射角θ1=15°の場合には、直進透過光が著しく発生していることが分かる。したがって、異なる角度から入射する光を、効率的にフィルム正面に対して拡散出射することができないことが分かる。
さらに、得られた光拡散フィルムを実際に適用した表示装置における表示画像の視認具合と、
図26に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。
【0139】
[比較例3]
比較例3では、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸を、重量比95:5の割合で用い、常法に従って重合してなる重量平均分子量180万のアクリル系共重合体100重量部に対し、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成(株)製、アロニックスM−315、分子量423、3官能型)15重量部と、光重合開始剤としてのベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの重量比1:1の混合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア500)1.5重量部と、イソシアネート系架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)0.3重量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403)0.2重量部と、真球状シリコーン微粒子(GE東芝シリコーン(株)製、トスパール145、平均粒径4.5μm)18.6重量部を加えるとともに、酢酸エチルを加え、混合し、粘着性材料の酢酸エチル溶液(固形分14重量%)を調製した。
【0140】
次いで、得られた粘着性材料の酢酸エチル溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、コスモシャインA4100)に対し、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布した後、90℃で1分間乾燥処理して粘着性材料層を形成した。
次いで、剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製の剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET3811)の剥離層と、得られた粘着性材料層とを貼合し、貼合してから30分後に、Hバルブ使用の無電極ランプ(フュージョン(株)製)を用いて、照度600mW/cm
2、光量150mJ/cm
2となるように、剥離フィルム側から粘着性材料層に紫外線を照射した。
そして、得られた紫外線硬化後の粘着性材料層を比較例3の光拡散フィルムとして、実施例1と同様に評価したところ、測定されたヘイズ値は82%であった。その他の得られた結果を、
図28〜29に示す。
ここで、
図28は、コノスコープを用いて、比較例3の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°となるように光を入射した場合のコノスコープ画像である。
かかるコノスコープ画像から、フィルム正面に対し、入射光の直進透過が著しく生じていることが分かる。
また、
図29は、コノスコープを用いて、比較例3の光拡散フィルムに対して、入射角θ1=0°、5°、10°、15°の光を入射した場合における出射角−輝度チャートである。
なお、
図29における特性曲線Aが入射角θ1=0°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Bが入射角θ1=5°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Cが入射角θ1=10°における出射角−輝度チャートであり、特性曲線Dが入射角θ1=15°における出射角−輝度チャートである。
かかる出射角−輝度チャートから、比較例3の光拡散フィルムでは、各入射角θ1に対する出射角のピークが、入射角θ1に大きく依存し、大きく異なっており、さらに、各入射角θ1に対して、直進透過光が著しく発生していることが分かる。したがって、異なる角度から入射する光を、効率的にフィルム正面に対して拡散出射することができないことが分かる。
さらに、得られた光拡散フィルムを実際に適用した表示装置における表示画像の視認具合と、
図28に示す光拡散フィルムの光拡散特性とは、互いに相関があり、矛盾するものでないことを確認した。