特許第6307501号(P6307501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6307501
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】混合容器、混合ユニット
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/02 20060101AFI20180326BHJP
   C12N 5/02 20060101ALI20180326BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20180326BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20180326BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20180326BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20180326BHJP
   B01F 13/08 20060101ALI20180326BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C12M3/02
   C12N5/02
   C12M1/02 A
   C12M1/00 D
   B01F7/16 E
   B01F7/16 L
   B01F15/00 Z
   B01F13/08 Z
   B01F3/08 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-520118(P2015-520118)
(86)(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公表番号】特表2015-522278(P2015-522278A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】SE2013050746
(87)【国際公開番号】WO2014003640
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月10日
(31)【優先権主張番号】1250689-5
(32)【優先日】2012年6月26日
(33)【優先権主張国】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ゲバウアー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ヒヨルス,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ロンホルム,デイヴィッド
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−282629(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102931(WO,A1)
【文献】 特開2010−089151(JP,A)
【文献】 特開2011−036189(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/015571(WO,A1)
【文献】 特開平09−029084(JP,A)
【文献】 実公昭27−007577(JP,Y1)
【文献】 米国特許第03570819(US,A)
【文献】 特表2002−537868(JP,A)
【文献】 特表2004−534544(JP,A)
【文献】 特開2014−121302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/02
C12M 1/02
B01F 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形の折り畳み式混合容器であって、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁、上壁及び下壁であって、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられていて、容器の内容積を画成する側壁、上壁及び下壁と、
b)内容積に配置された撹拌器と、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された1以上の渦防止装置であって、内容積に配置され、側壁に沿う方向に延在する互いに対向する2つの第一の辺と、該第一の辺の両端から略半径方向であって前記上壁又は前記下壁に沿って延在する互いに対向する2つの第二の辺とを有し、前記第一の辺のうちの一方が、前記側壁に直接取り付けられ、なおかつ前記2つの第二の辺が、前記側壁に取り付けられていない方の前記第一の辺側の端部において、ストリング要素を介して下壁及び上壁に取り付けられ1以上の渦防止装置とを備え、
前記ストリング要素の最大断面寸法は、5mm未満である混合容器。
【請求項2】
略円筒形の折り畳み式混合容器であって、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁、上壁及び下壁であって、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられていて、容器の内容積を画成する側壁、上壁及び下壁と、
b)内容積に配置された撹拌器と、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された1以上の渦防止装置であって、内容積に配置され、側壁に沿う方向に延在する互いに対向する2つの第一の辺と、該第一の辺の両端から略半径方向であって前記上壁又は前記下壁に沿って延在する互いに対向する2つの第二の辺とを有し、前記第一の辺のうちの一方が前記側壁に直接取り付けられ、前記2つの第二の辺のうちの一方が前記上壁に直接取り付けられ、なおかつ前記2つの第二の辺のうちの他方が、前記側壁に取り付けられていない方の前記第一の辺側の端部において、ストリング要素を介して下壁に取り付けられ1以上の渦防止装置とを備え、
前記ストリング要素の最大断面寸法は、5mm未満である混合容器。
【請求項3】
略円筒形の折り畳み式混合容器であって、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁、上壁及び下壁であって、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられていて、容器の内容積を画成する側壁、上壁及び下壁と、
b)内容積に配置された撹拌器と、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された1以上の渦防止装置であって、内容積に配置され、側壁に沿う方向に延在する互いに対向する2つの第一の辺と、該第一の辺の両端から略半径方向であって前記上壁又は前記下壁に沿って延在する互いに対向する2つの第二の辺とを有し、前記2つの第二の辺が、両端部においてストリング要素を介して前記上壁及び前記壁に取り付けられ1以上の渦防止装置とを備え、
前記ストリング要素の最大断面寸法は、5mm未満である混合容器。
【請求項4】
略円筒形の折り畳み式混合容器であって、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁、上壁及び下壁であって、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられていて、容器の内容積を画成する側壁、上壁及び下壁と、
b)内容積に配置された撹拌器と、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された対をなす少なくとも2つの渦防止装置であって、内容積において互いに対向するように配置され、側壁に沿う方向に延在する互いに対向する2つの第一の辺と、該第一の辺の両端から略半径方向であって前記上壁又は前記下壁に沿って延在する互いに対向する2つの第二の辺とを有し、前記2つの第二の辺が、ストリング要素を介して前記側壁に取り付けられ
前記ストリング要素は、前記対をなす渦防止装置における前記上壁と向かい合う第二の辺同士を結合し、なおかつ該第二の辺を前記側壁に取り付ける第一のストリング要素と、前記対をなす渦防止装置における前記下壁と向かい合う第二の辺同士を結合し、なおかつ該第二の辺を前記側壁に取り付ける第二のストリング要素と、を含み、
前記ストリング要素の最大断面寸法は、5mm未満である混合容器。
【請求項5】
各渦防止装置と下壁との間に5mm以上の間隙を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の混合容器。
【請求項6】
略円筒形の折り畳み式混合容器であって、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁、上壁及び下壁であって、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられていて、容器の内容積を画成する側壁、上壁及び下壁と、
b)内容積に配置された撹拌器と、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された1以上の渦防止装置であって、内容積に配置され、側壁に沿う方向に延在する互いに対向する2つの第一の辺と、該第一の辺の両端から略半径方向であって前記上壁又は前記下壁に沿って延在する互いに対向する2つの第二の辺とを有し、ストリング要素を介して前記下壁及び前記上壁に取り付けられる1以上の渦防止装置とを備え、
1以上のストリング要素が、a)渦防止装置の前記2つの第一の辺に取り付けられたチューブであって、管状ポートを介して折り畳み式混合容器の上壁及び下壁に取り付けられるチューブと、b)チューブ及び管状ポートを貫通するワイヤであって、折り畳み式混合容器を収容するように構成された硬質支持コンパートメントの上壁及び下壁取り付けられるように配置されるワイヤとを備える、混合容器。
【請求項7】
略円筒形の折り畳み式混合容器であって、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁、上壁及び下壁であって、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられていて、容器の内容積を画成する側壁、上壁及び下壁と、
b)内容積に配置された撹拌器と、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された1以上の渦防止装置であって、内容積に配置され、前記側壁に沿う方向に延在する第三の辺と、該第三の辺の両端から略半径方向に延在する2つの第四の辺とを有し、ストリング要素を介して前記側壁に取り付けられる1以上の渦防止装置とを備え、
1以上のストリング要素が、a)渦防止装置の前記第四の辺に取り付けられたチューブであって、管状ポートを介して折り畳み式混合容器の側壁の両側のセグメントに取り付けられるチューブと、b)チューブ及び管状ポートを貫通するワイヤであって、折り畳み式混合容器を収容するように構成された硬質支持コンパートメントの側壁の両側のセグメントに取り付けられるように配置されるワイヤとを備える、混合容器。
【請求項8】
各渦防止装置と側壁との間に少なくとも2mmの間隙を有する、請求項3から7のいずれか1項記載の混合容器。
【請求項9】
撹拌器が磁気で駆動されるように構成されている、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の混合容器。
【請求項10】
滅菌されている、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の混合容器。
【請求項11】
硬質支持コンパートメント内に装着される、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の混合容器を備える混合ユニット。
【請求項12】
折り畳み式混合容器の内容積内に、細胞培地、細胞及び任意にはマイクロキャリアを更に含む、請求項11記載の混合ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み式混合容器に関し、特に、折り畳み式混合容器のための渦防止装置に関する。また、本発明は、硬質支持コンパートメント内に装着される折り畳み式混合容器を有する混合ユニット及び混合ユニット内で細胞を培養する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品産業では、シングルユース又は使い捨てシステムが、そのようなシステムの可撓性及び費用有効性に起因して、急速に増えてきている。システム内の使い捨て構成要素は、予め滅菌されて、規制基準に適合される。使い捨てシステムは、異なる生産目的に適合させることが容易であり、また、生産ラインを変更することが容易で安価である一方、良好なプロセス信頼性は、たとえ改善されない場合でも、少なくとも維持される。
【0003】
使い捨て容器又はバッグを使用し得る幾つかの種類の混合システムが存在する。1つのタイプのそのような混合システムは、細胞又は微生物が内部で成長できるバイオリアクターである。また、混合システムは、例えば緩衝液及び媒体を調製するためにも使用される。混合システムは、使い捨てバッグ又は容器を収容する支持コンパートメントを備えてもよい。コンパートメントは、所定形状のシリンダ、例えば略円形のシリンダを有してもよい。バッグは、例えば異なるパイプライン、ミキサ及びセンサをバッグに対して適切に且つ正確に接続できるように正確な態様でコンパートメント内に配置される。米国特許出願第2011/0310696号は、この種の混合システムを示す。
【0004】
細胞培養においては、細胞を浮遊状態に保つために撹拌を行うとともに、栄養物、ガス及び代謝産物の対流物質移動を行うことが必要である。支持コンパートメント内で用いるバッグなど、より大きなバッグでは、撹拌は、通常、回転撹拌器によって行われる。このとき、渦流を防止するために、1つ以上の渦防止装置をバッグ内に有することが望ましい。国際特許出願第2012/015571号は、バッグ壁からバッグを横切って延びるプラスチック材料のシートから形成される一種の渦防止装置について記載する。この構成は、渦防止装置とバッグ壁との界面に停滞ポケットが形成され、このポケットに細胞及び/又は細胞を伴うマイクロキャリアが蓄積する場合があるという点において欠点を有する。これは、特に、バッグの下壁に隣接するポケットに当てはまる。細胞の蓄積は、培養状態が局所的に悪化する場合があるとともに、蓄積された細胞から解放される信号物質が培養全体に影響を及ぼし得るため、望ましくない。また、国際特許出願第2012/015571号の場合のようにバッグを横切って水平に延びる渦防止装置は、バッグ内の対流を乱す。
【0005】
したがって、停滞ポケットを形成しないとともに、良好な対流を可能にする、折り畳み式容器内の渦防止装置の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0227817号
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの態様は、停滞ポケットがない折り畳み式混合容器を提供することである。これは、請求項1に規定される容器を用いて達成される。
【0008】
1つの利点は、停滞域を伴わない良好な対流パターンを得ることができるという点である。更なる利点は、渦防止装置が、可撓性を有し、混合容器と共に折り畳むことができるとともに、使用時に粘性抵抗力に耐えるべく伸張できるという点である。
【0009】
本発明の第2の態様は、硬質支持コンパートメント内に装着される折り畳み式混合容器を備える混合ユニットを提供することである。これは、特許請求の範囲に規定されるユニットを用いて達成される。
【0010】
本発明の第3の態様は、混合ユニット内での細胞培養のための停滞域がない方法を提供することである。これは、特許請求の範囲に規定される方法を用いて達成される。
【0011】
本発明の更なる適した実施形態が従属請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】4つの渦防止装置を有する本発明に係る混合容器を示す。
図2】3つの渦防止装置を有する本発明に係る混合容器を示す。
図3】4つの渦防止装置を有する本発明に係る混合容器を示す。
図4】4つの渦防止装置を有する本発明に係る混合容器を示す。
図5】4つの渦防止装置を有する本発明に係る混合容器を示す。
図6】本発明に係る管状ストリング要素を有する渦防止装置の拡大図を示す。
図7】1つの渦防止装置を有する本発明に係る混合容器及び混合ユニットを示す。
図8】本発明に係る混合容器及び混合ユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの態様では、本発明は、略円筒形の折り畳み式混合容器1;11;21;31;41;51;81を開示し、該混合容器は、
a)可撓性プラスチックフィルム側壁3;13;23;33;43;53;73、上壁2;12;22;32;42;52;72及び下壁4;14;24;34;44;54;74を備え、上壁及び下壁が共に側壁に取り付けられ、側壁、上壁及び下壁は、共に合わさって、容器の内容積5;15;25;35;45;55;75を画成し、
b)内容積に配置された撹拌器6;16;26;36;46;76を備えており、
c)可撓性プラスチックフィルムから形成された1以上の渦防止装置7;17;27;37;47;57;77を備える。1以上の渦防止装置は、容器の内容積に配置され、ストリング要素8;18;28;38;48;49;58;78;79を介して下壁及び/又は側壁に取り付けられるとともに、側壁に沿って延び且つ略半径方向内側に延びる。上方向、下方向、沿う方向及び内側方向とは、容器が伸長(折り畳まれていない)状態にあっていつでも使用できるときの方向である。下壁及び上壁のうちの1つ以上は、硬質であってもよいが、可撓性であってもよく、その場合には、容器をバッグとして規定することができる。容器の形状は、円形断面と円形の上壁及び下壁とを有する円筒状であってもよい。下壁は、平坦であってもよく、或いは、例えば丸みを帯びた形状又は円錐台形状を成して先細っていてもよい。側壁と上壁又は下壁との間の移行部が緩やかな場合には、(使用時に)壁と垂直軸との間の角度が45°未満である部分が側壁として規定される。容器は、1つの渦防止装置、或いは、少なくとも2つ、3つ、又は、4つなど、複数の渦防止装置を備えることができる。渦防止装置は、例えば、垂直に延びることができるとともに、容器の外周にわたって一定の間隔で離間され得る。渦防止装置は、垂直軸に対して鋭角を成すこともできる。渦防止装置は、単プライのプラスチックフィルムから或いは多層積層体から形成することができる。渦防止装置の長さは、容器が液体で満たされて膨張されるときに渦防止装置が幾分引き締められるような長さにすることができる。ストリング要素は、例えば、プラスチックのモノフィラメント、エラストマー、又は、金属であってもよく、或いは、マルチフィラメント糸であってもよい。また、ストリング要素が管状要素を備えることもできる。ストリング要素は、例えば、溶接によって容器壁及び/又は渦防止装置に取り付けることができ、或いは、締結具を介して容器壁上及び/又は渦防止装置上に位置付けることができる。締結具は、例えば、フック、ループ、クランプ等の形態を成すことがき、また、ストリング要素は、クランプによって、結び付けによって、或いは、ループを締結具に通すことによって、締結具に取り付けることができる。例えば国際特許出願第2003028869号に記載されるように、撹拌器は、回転撹拌できるように配置されてもよく、また、容器の下端に位置させることができる。或いは、撹拌器は、容器の上壁から吊り下げることができ(例えば、米国特許第4355906号及び米国特許第7547135号参照)、又は、国際特許出願第2009143925号の場合のように上壁及び下壁の両方に取り付けられるシャフトに装着することができる。容器は、培地の輸送、細胞接種、栄養物流、ガス流、かん流、サンプルリング等のための複数のポートを更に備えてもよく、また、センサのためのポート/窓を備えてもよい。ポートには、衛生コネクタ、例えばGE Healthcareが提供しているReadyMate(商標)無菌コネクタが備えられてもよい。折り畳み式混合容器は、使い捨て可能であり、また、再使用可能な硬質支持コンパートメントで用いるように形成され得る。折り畳み式混合容器は、細胞培養のために使用できるが、例えばバイオプロセス産業では、細胞培地の調製、緩衝液調整等のために使用することもできる。また、折り畳み式混合容器は、衛生状態下での液体の混合が必要とされる他の分野で、例えば医療用途や、乳製品産業又は飲料産業において使用することもできる。
【0014】
ストリング要素を介した下壁に対する取り付けは、渦防止装置の必要性が最も高い容器の下端に渦防止装置が取り付けられることを意味するが、ストリング要素に起因して、下壁と渦防止装置との間に間隙が形成され、それにより、停滞域が形成されない。渦防止装置と容器の下壁との間の間隙は、例えば、1〜20cm又は1〜10cmなど、5mm以上又は1cmであってもよい。ストリング要素は、細く、例えば5mm未満又は2mm未満の直径又は最大断面寸法を有し、これは、ストリング要素の取り付けポイント付近の停滞域の形成にとって非常に小さい。ストリング要素を介して渦防止装置を側壁(例えば、側壁の両側部分)に取り付けることもでき、これにより、渦防止装置と側壁との間に間隙を形成することができる。この構成により、前述したように渦防止装置と容器の下壁との間に間隙を有することもできる。渦防止装置は、それらが容器の中心部へと延びないように配置することができ、例えば円筒容器の中心軸から半径の半分以内の容積に配置することができる。これは、容器内の対流循環を高める。
【0015】
幾つかの実施形態では、渦防止装置を例えばストリング要素9;29;39;59を介して上壁に取り付けることもできる。使用時、混合容器には、例えばバッグ容積の最大80%まで液体が部分的にのみ充填される。そのため、容器の上端には液体が何ら存在せず、また、望ましい場合には、停滞域の問題を何ら伴うことなく、渦防止装置を上壁に対して直接に取り付ける、例えば溶接することができる。しかしながら、渦防止装置は、ストリング要素9;29;39;59も介して上壁に同様にうまく取り付けられてもよい。特定の実施形態では、容器の壁(すなわち、上壁、下壁及び側壁)に対する渦防止装置の取り付けがストリング要素のみを介する。
【0016】
図4図7に示す幾つかの実施形態では、各々の渦防止装置37;47;57;77ごとに少なくとも1つ又は2つのストリング要素などの1以上のストリング要素38,39;48,49;58,59;78が下壁及び上壁の両方に取り付けられ或いは側壁の両側のセグメントに取り付けられる。このことは、渦防止装置に作用する引張荷重をストリング要素が担うことができるという利点を有する。ストリング要素は、例えば、各渦防止装置の縁部の一方又は両方に結合することができる。
【0017】
図6及び図7に示す特定の実施形態では、ストリング要素58;59;78;79は、チューブ60と、チューブの内側のワイヤ61とを備える。1以上のストリング要素は、例えば、a)例えば渦防止装置の縁部に沿って渦防止装置に取り付けられるとともに管状ポート65;85を介して折り畳み式混合容器の上壁52及び下壁54;74に或いは側壁73の両側のセグメントに取り付けられるチューブ60と、b)チューブ及び管状ポートを貫通するワイヤであって、折り畳み式混合容器を収容するように構成された硬質支持コンパートメントの上壁62及び下壁64;84に取り付けられ或いは支持コンパートメントの側壁83の両側のセグメントに取り付けられるように配置されるワイヤ61とを備えることができる。チューブは、例えば、各渦防止装置の縁部に溶接することができ、また、ワイヤは、容器の供給時にチューブ内に存在することができるが、ワイヤは、硬質支持コンパートメント内の折り畳み式容器の装着中にチューブ内に導入することもできる。容器壁のチューブポートは、コンパートメント壁上のワイヤ取り付けポイントに対応する場所に位置付けられるべきである。ワイヤは容器の内容積と接触せず、そのため、ワイヤを滅菌する必要がない。ワイヤは、細い金属ワイヤであってもよいが、ポリエステルやポリアミドなどの高分子材料から形成することもできる。チューブ内ワイヤ配置の利点は、折り畳み式容器壁が引張荷重を支える必要がないという点であり、これは、特に容器の全ての壁が可撓性を有するときに便利となり得る。
【0018】
図3図8に示す幾つかの実施形態では、2〜50mm又は5〜50mmなどの2mm以上の間隙20;30;40;50;70が各々の渦防止装置27;37;47;57;77と側壁23;33;43;53;73との間に形成される。これも、先と同様、容器が伸長(折り畳まれていない)状態にあっていつでも使用できるときに当てはまる。間隙は、停滞域が形成されないようにする。
【0019】
特定の実施形態では、撹拌器26;36;46;76は、磁気的に駆動されるとともに、滅菌性を確保するべく容器内に密閉収容されるようになっている。撹拌器は、例えば、放射線安定なプラスチックから形成することができ、磁石を組み込むことができるとともに、滑り軸受の周りで浮揚する或いは回転するように設計され得る。撹拌器は、例えば、硬質支持コンパートメントの下壁上のバッグの外側の磁気ドライブに隣接して、バッグの下端に配置できる。撹拌器は、低剪断混合又は高rpm混合などのその特定の用途に応じて、異なるインペラ構造、例えばタービン、プロペラ及び当該技術分野において知られる他の構造を支持してもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、折り畳み式混合容器は、例えばガンマ線又は電子ビーム照射で滅菌されている。滅菌は細胞培養のために必要とされ、また、渦防止装置と撹拌器とを含む混合容器をガンマ線又は電子ビーム照射などの電離放射線に晒すことによって滅菌することが都合良い。照射された全ての構成要素における構成材料は、機械特性の低下及び/又は照射後の浸出の形成が回避され或いは最小限に抑えられるように十分に放射線安定であれば、有益である。適した材料は、ポリエチレン、エチレン、共重合体、ポリアミド等となり得る。
【0021】
図6図8に示す第2の態様では、本発明は、例えばステンレス鋼又は他の金属から製造され得る硬質支持コンパートメント内に装着される先の実施形態のいずれかに記載される混合容器を備える混合ユニット71;91を開示する。支持コンパートメントは、可撓性混合容器の内側の液体の荷重を支えるようになっており、また、混合容器及び支持コンパートメントは、コンパートメントの内側に容器をぴったりと嵌合させるべく協調設計され得る。支持コンパートメントは、例えば、円形断面を有する円筒状であってもよい。本発明で用いるのに適した硬質支持コンパートメントの一例は、米国のXcellerex社から入手できるXDR(商標)バイオアクターシステムである。
【0022】
図6及び図7に示す幾つかの実施形態では、各々の渦防止装置の1以上、例えば2つのストリング要素58;59;78;79は、a)渦防止装置に取り付けられるとともに管状ポート65;85を介して折り畳み式混合容器の上壁52及び下壁54;74に或いは側壁73の両側のセグメントに取り付けられるチューブ60と、b)チューブ及び管状ポートを貫通するワイヤであって、硬質支持コンパートメントの上壁62及び下壁64;84に取り付けられ或いはコンパートメントの側壁83の両側のセグメントに取り付けられる金属ワイヤなどのワイヤ61とを備える。チューブ及びワイヤの配置を前述したようにすることができ、また、ワイヤは、異なる締結・張力付与手段、例えばネジ又は傍心取付具によって支持コンパートメントに取り付けられてもよい。
【0023】
特定の実施形態では、混合ユニットは、折り畳み式混合容器の内容積内に、細胞培地、細胞及び任意にはマイクロキャリアを更に備える。これにより、混合容器内で細胞培養を行うことができる。
【0024】
第3の態様では、本発明は、
a)上述の実施形態のいずれかに係る混合ユニットを用意するステップと、
b)折り畳み式混合容器に細胞培地及び任意にはマイクロキャリアを部分的に充填するステップと、
c)細胞培地に細胞を細胞播種等によって添加するステップと、
d)撹拌器による撹拌下で細胞を培養するステップと、
を含む細胞培養の方法を開示する。
【0025】
本明細書の説明は、最良の形態を含む本発明を開示するために実施例を使用し、また、任意のデバイス又はシステムを形成して使用すること及び任意の組み入れられた方法を実行することを含めて、任意の当業者が本発明を実施できるようにする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、また、当業者が想起する他の実施例を含んでもよい。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの言葉とは異ならない構造要素を有する場合、或いは、それらが特許請求の範囲の文字通りの言葉との実体のない差異を伴う等価な構造要素を含む場合に、特許請求の範囲内に入るように意図される。異なる態様及び実施形態のからの特徴は、新たな実施形態を形成するために組み合わされてもよい。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8