【文献】
T.E.Vrenken, et al,Journal of Hepatology,2008年,Vol.49,pp.799-809
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明および実施例において、本明細書の一部を形成する添付の図面に対して参照がなされ、図面において、本明細書において記載される化合物、組成物、および方法の効果を例証するいくつかの特定の実験の結果が、例として示される。他の実施形態が、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく企図され、得られることを理解されたい。以下の詳細な説明および実施例は、そのため、限定的な意味に解釈されないものとする。
【0013】
本明細書において使用される科学的および技術的用語はすべて、別段の定めがない限り、当技術分野において共通して使用される意味を有する。本明細書において提供される定義は、本明細書において頻繁に使用されるある用語についての理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0014】
さらに、本明細書および添付の請求項において使用されるように、名詞は、内容がその他に明確に指示しない限り、複数の指示物を有する実施形態を包含する。
【0015】
本明細書および添付の請求項において使用されるように、用語「または」は、一般に、内容がその他に明確に指示しない限り、「および/または」を含む意味で用いられる。
【0016】
本明細書において使用されるように、「幹細胞」は、継続的に分裂する(自己複製)能力を有し、種々の範囲の特殊化した細胞に分化することができる細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞が、対象の器官または組織から単離することができる多分化能幹細胞、全能性幹細胞、または多能性幹細胞である。そのような細胞は、完全に分化したまたは成熟した細胞型をもたらすことができる。幹細胞は、骨髄由来幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、自己由来もしくはそうでなければ神経細胞幹細胞、または胚性幹細胞とすることができる。幹細胞は、上皮および脂肪組織、臍帯血、肝臓、脳、または他の器官に由来する多系列の細胞とすることができる。様々な実施形態では、幹細胞が、哺乳動物から単離された多能性胚性幹細胞などの多能性幹細胞である。適した哺乳動物は、マウスまたはラットなどのげっ歯動物、ヒトおよび非ヒト霊長動物を含む霊長動物を含むことができる。
【0017】
確立されたヒト胚性幹細胞系の例は、H1、H7、H9、H13、またはH14(University of Wisconsinによって確立され、WiCellから入手可能)(Thompson(1998)Science 282:1145);hESBGN−01、hESBGN−02、hESBGN−03(BresaGen,Inc.、Athens、GA);HES−1、HES−2、HES−3、HES−4、HES−5、HES−6(ES Cell International,Inc.、Singaporeから);HSF−1、HSF−6(University of California at San Franciscoから);I3、I3.2、I3.3、I4、I6、I6.2、J3、J3.2(Technion−Israel Institute of Technology、Haifa、Israelで誘導);UCSF−1およびUCSF−2(Genbacev et al.,Fertil.Steril.83(5):1517−29,2005);系HUES1〜17(Cowan et al.,NEJM 350(13):1353−56,2004);ならびに系ACT−14(Klimanskaya et al.,Lancet,365(9471):1636−41,2005)を含むが、これらに限定されない。胚性幹細胞はまた、初代胚組織から直接得ることができる。典型的に、これは、通常は廃棄されるであろう、胚盤胞期の凍結インビトロ受精卵を使用して行われる。
【0018】
多能性幹細胞の他の供給源は、誘発霊長動物多能性幹(iPS)細胞を含む。iPS細胞は、hESCなどの多能性幹細胞の表現型を獲得するように再プログラムされた、ヒトなどの若年のまたは成熟した哺乳動物から得られる細胞を指す。再プログラムは、当業者に知られている方法によって達成することができる。細胞再プログラム方法は、たとえば、1つ以上の適切なベクターによるトランスフェクション感染によって細胞を遺伝的に修飾する方法またはたとえば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤などの小分子への曝露によって、細胞を後成的に修飾する方法を含むが、これらに限定されない。これらの再プログラムされた細胞によって獲得された表現型の形質は、胚盤胞から単離された幹細胞に似ている形態ならびに胚盤胞由来の胚性幹細胞に似ている表面抗原発現、遺伝子発現、およびテロメラーゼ活性を含む。iPS細胞は、典型的に、一次胚葉のそれぞれ:外胚葉、内胚葉、および中胚葉から少なくとも1つの細胞型に分化する能力を有する。hESCのようなiPS細胞はまた、免疫不全マウス、たとえばSCIDマウスに注射された場合に、奇形腫をも形成する。(Takahashi et al.,(2007)Cell 131(5):861;Yu et al.,(2007)Science 318:5858)。
【0019】
本明細書において使用されるように、培養「肝臓細胞」は、肝臓から単離された細胞;肝臓から単離された細胞に由来し、薬物代謝機能などのいくつかの肝機能を有する細胞;または肝臓細胞に分化した幹細胞もしくは薬物代謝機能などのいくつかの肝機能を有する細胞などの前駆細胞である。肝臓細胞の他の機能は、血漿タンパク質、たとえば血清アルブミン、インター−アルファ阻害剤プロテアーゼ、フィブリノーゲン、リポタンパク質、セルロプラスミン、トランスフェリン、補体、免疫グロブリン、および凝固因子の生成および分泌を含むことができる。
【0020】
肝臓細胞は、初代肝細胞などの肝細胞、肝臓腫瘍もしくは不死化肝細胞に由来する細胞株などの肝臓細胞株の細胞、多能性幹細胞、多分化能幹細胞に由来するなどの肝前駆細胞または早期肝組織から単離された細胞、分化転換肝臓細胞(分化形質転換した細胞に由来する細胞、すなわち、肝臓以外の組織由来の細胞)とすることができる。実施形態では、初代肝細胞が、新たに単離されるまたは細胞培養における使用に先立って凍結保存される。
【0021】
本明細書において使用されるように、「有する」、「有すること」、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、またはその他同種のものは、それらのオープンエンド(open ended)の意味で使用され、一般に、「〜を含むが、それに限定されない」ということを意味する。「〜から実質的になる」、「〜からなる」、およびその他同種のものは、「含む」およびその他同種のものに含められることが理解されるであろう。
【0022】
本明細書において言及される化合物は、特に参照される化合物の塩、異性体、水和物、溶媒和化合物、および多形体を含む。
【0023】
本開示は、とりわけ、培養肝臓細胞の全体的な薬物代謝を増強することができる化合物、組成物、および方法を記載する。本明細書において使用されるように、「全体的な薬物代謝」を増強することは、2つ以上(たとえば3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上など)の薬物代謝酵素のレベルを増加させることを意味する。実施形態では、2つ以上の薬物代謝酵素が、所与の経路内の1つまたは複数の所与の酵素を誘発する典型的な薬物代謝誘発因子を区別するために、異なる経路由来の酵素とすることができる。増加させる酵素のレベルは、酵素、酵素を発現するmRNA、または酵素活性のレベルとすることができる。1つ以上の酵素のレベルは、実質的に類似する条件下であるが、薬物代謝を増強する化合物の非存在下において培養された肝臓細胞に比べて、約5%以上(たとえば約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、または約50%以上)など、任意の明らかな量、増加させることができる。「実質的に類似する条件」は、同じまたは類似する温度、気体比、培養培地(「増強」化合物なし)、およびその他同種のものなど、実行可能な限り類似することを意味することが理解されるであろう。
【0024】
レベルを増加させることができる薬物代謝酵素は、フェーズI薬物代謝酵素、フェーズII薬物代謝酵素、およびフェーズIII薬物代謝酵素を含む。フェーズI酵素は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP)酵素、フラビン含有酵素、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、モノアミンオキシダーゼ、NADPH−シトクロムP450レダクターゼ、エステラーゼ、アミダーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、およびその他同種のものを含む。フェーズII薬物代謝酵素は、一般に抱合を触媒する酵素であり、メチルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ(SULT)、N−アセチルトランスフェラーゼ、胆汁酸−CoA:アミノ酸N−アセチルトランスフェラーゼ、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、アセチルcoAカルボキシルトランスフェラーゼ、およびその他同種のものを含む。フェーズIII薬物代謝酵素は、一般に細胞から化合物を排出し、ATP結合カセット(ABC)トランスポーター、溶質輸送体(SLC)、およびその他同種のものを含む。本明細書において記載される実施形態では、2つ以上のCYP酵素(たとえば3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上など)のレベルは、本明細書において記載される「増強」化合物の存在下において培養される肝臓細胞において増加する。
【0025】
レベルを増加させることができる特異的な酵素の非限定的な例は、ABCB1、ABCB11、ABCB4、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、CYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYPB6、CYP2C19、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP3A4、CYP3A43、CYP3A5、CYP3A7、CYP4F12、SLC01A1、SLC2A1、SLCO1B1、SLCO2B1、SULT1A1、SULT1A2、SULT1A3、SULT1B1、SULT1E1、SULT2A1、UGT1A1、UGT1A6、UGT1A8、UGT2B15、UGT2B4、GSTA2、およびその他同種のものを含む。
【0026】
肝臓細胞機能は、肝臓転写因子、たとえばHNF1、HNF4、HNF6、C/EBPアルファ、C/EBPベータの発現によって部分的にコントロールされる。たとえば、肝細胞核因子4−アルファ(HNF4アルファ)は、肝臓発達にならびに重要な代謝経路、たとえば薬物代謝、コレステロールおよび脂肪酸代謝、グルコースホメオスタシス、ならびに炎症に関連する、多くの肝臓特異的遺伝子の発現のコントロールに必要とされる核内受容体(NR)である。他の転写因子は、薬剤の代謝、処分、および毒性を決定する、フェーズI、フェーズII、およびフェーズIIIの薬物代謝遺伝子の多くの発現をコントロールすることに直接関与する。DME関連遺伝子は、アリール炭化水素受容体(AHR)、プレグネノロンx−受容体(PXR)、構成的アンドロステン受容体(CAR)、およびRXR(レチノイドX受容体)を含む。「増強」化合物への曝露後の全体的な肝機能の増強は、1つ以上の転写因子の増強に起因し得る。
【0027】
「増強」化合物への曝露によってレベルを増加させることができる転写因子の非限定的な例は、HNF1、HNF4、HNF6、C/EBPアルファ、C/EBPベータ、Ahr、CAR、PXR、およびRXRを含む。
【0028】
「増強」化合物への曝露後の全体的な肝機能の増強は、1つ以上の転写因子の増強または細胞機能を決定する転写因子の複雑な相互作用の調整に起因し得る。たとえば、HNF4は、多数の薬剤代謝シトクロムP450(CYP)遺伝子の直接的なトランス活性化因子として作用し、この因子が、肝臓においてCYP転写を支援する全体的な調節因子であることを示唆する。HNF4と他の転写因子との間の複雑な相互作用およびクロストークは、フェーズI、II、およびIIIの薬物代謝遺伝子の多くに影響を与える。たとえば、HNF4は、CAR、PXR、グルココルチコイド受容体(GR)、摂食−絶食サイクル標的、PGC−1アルファ、C/EBPなどの他の肝臓に豊富な因子と相互作用することによって肝臓におけるフェーズI CYP発現を調整する。
【0029】
「増強」化合物への曝露後の全体的な肝機能の増強は、細胞機能を決定する転写因子の複雑な相互作用の調整に起因し得る。「エンハンサー」化合物への曝露後に全体的な肝機能を増加させる方法で相互作用を調整することができる特異的な転写因子の非限定的な例は、肝臓核内因子(HNF1、HNF4、HNF6、C/EBPアルファ、C/EBPベータ)、FOXOタンパク質(たとえば、グルコース代謝を調整するFOXO1、FOXO3、FOXA1、FoxA2、FOXA3)などのフォークヘッドボックス受容体、ビタミンD受容体(VDR)、ならびにレチノイン酸受容体(RARおよびRXR)、アリール炭化水素受容体(AHR)、プレグネノロンx−受容体(PXR)、構成的アンドロステン受容体(CAR)を含む。したがって、本明細書において記載される化合物および組成物はまた、薬物代謝以外の肝機能を増強する役目を果たすこともできる。そのうえ、本明細書において記載される化合物および組成物は、肝細胞への培養幹細胞の分化を促進する役目を果たすことができる。
【0030】
転写因子の機能は、ステロイド受容体コアクチベーター(SRC)SRC1、SRC2、SRC3、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマコアクチベーター1α(PGC1アルファ)などのコアクチベーターならびにコインヒビター、たとえば、レチノイドおよび甲状腺受容体のサイレンシングメディエーター(SMRT)ならびに核内受容体コリプレッサー(N−CoR)によって部分的にコントロールされる。たとえば、PXRは、基本的に抑制されており、コリプレッサー(レチノイドおよび甲状腺受容体のサイレンシングメディエーター(SMRT)ならびに核内受容体コリプレッサー(N−CoR)ならびにコアクチベーター(ステロイド受容体コアクチベーター−1(SRC−1)、PPAR、およびグルココルチコイド受容体コアクチベーター−1(PGC−1)、肝細胞核因子4(HNF−4))の、活性化を促進する相互作用における複雑な変化を通して、リガンドおよび組織特異的な方法で活性化される。
【0031】
「増強」化合物への曝露後の全体的な肝機能の増強は、細胞機能を決定する転写因子、コアクチベーター、およびコインヒビターの複雑な相互作用の調整に起因し得る。
【0032】
肝細胞またはその他同種のものへの培養幹細胞の分化を促進するために、培養肝臓細胞の全体的な薬物代謝を増強するために使用することができる1つの化合物は、式I
【0034】
の化学構造を有するLFM−A13、[α−シアノ−β−ヒドロキシ−β−メチル−N−(2,5−ジブロモフェニル)プロペンアミド]である。
【0035】
LFMA−13は、強力なBTK阻害剤であることが報告されてきた。たとえば、Uckunらの米国特許第6,303,652号明細書を参照されたい。この特許は、それが本開示と矛盾しない程度まで、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,303,652号明細書は、LFM−A13に構造的に類似する様々なBTK阻害剤を開示する。例として、米国特許第6,303,652号明細書の教示に基づいて、下記の式II
【0037】
(式中、
R
1は、(i)(C
1〜C
3)アルキル、(ii)(C
1〜C
3)シクロアルキル、(iii)ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C
1〜C
3)アルコキシ、(C
1〜C
3)アルキル、(C
1〜C
3)アルカノイル、−S(O)
2R
c、もしくはNR
aR
bから独立して選択される1つ以上の置換基により任意選択で置換されたフェニル、または(iv)NR
aR
bであり;
R
2は、ヒドロキシル、(C
1〜C
6)アルコキシ、(C
1〜C
6)アルカノキシアミノ(alkanoxy amino)(C
2〜C
5)アルコキシ;ヒドロキシ(C
2〜C
5)アルコキシアミノ(C
2〜C
5)アルカノキシ、またはヒドロキシル(C
2〜C
5)アルカノキシであり;
R
3は、シアノまたは(C
1〜C
3)アルカノイルであり;
R
4は、水素、(C
1〜C
3)アルキル、ヒドロキシル(C
2〜C
5)アルキル、またはアミノ(C
2〜C
5)アルキルであり;
R
aおよびR
bは、それぞれ、独立して、水素もしくは(C
1〜C
3)アルキルであるか、またはR
aおよびR
bは、それらが結合した窒素が加わって、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、もしくはチオモルホリノであり;
nおよびmは、独立して、0〜2の整数であり;
Xは、ハロであり;
Yは、−S(O)
2R
cまたは−OR
cであり;
R
cは、(i)非置換もしくはハロにより置換された(C
1〜C
3)アルキルまたは(ii)アリールである)
による化合物がBTK活性を有することが期待されるであろう。
【0038】
本主題の発明者らは、LFM−A13に構造的に関連しないBTK阻害剤が、培養肝臓細胞の全体的な代謝機能を増強しなかったことを発見したが、LFM−A13に構造的におよび機能的に(少なくともBTK阻害に関して)類似する式IIによる化合物が、全体的な薬物代謝の増強または肝機能もしくは分化の増強に対して、LFMA−13に類似する効果を有し得ると考えられる。
【0039】
したがって、本明細書において記載される組成物および方法の実施形態は、式IIによる化合物を含む。実施形態では、式IIのR
1が(C
1〜C
3)アルキルまたは(C
1〜C
3)シクロアルキルである。実施形態では、式IIのR
2がヒドロキシルまたは(C
1〜C
6)アルコキシである。実施形態では、式IIのR
3がシアノである。実施形態では、式IIのR
4が水素または(C
1〜C
3)アルキルである。実施形態では、式IIのmが0である。実施形態では、式IIのnが2である。実施形態では、式IIのXがBrである。実施形態では、式IIのYが−S(O)
2R
cであり、R
cが(C
1〜C
3)アルキルである。
【0040】
実施形態では、本明細書において記載される化合物および組成物が、式IIの一部である式III
【0042】
(式中、
nおよびmは、独立して、0〜2の整数であり、
Xは、ハロであり、
Yは、−S(O)
2R
cまたは−OR
cであり、
R
cは、(i)非置換もしくはハロにより置換された(C
1〜C
3)アルキルまたは(ii)アリールである)
による化合物を含む。
【0043】
実施形態では、式IIIのmが0である。実施形態では、式IIIのnが2である。実施形態では、式IIのXがBrである。実施形態では、式IIのYが−S(O)
2R
cであり、R
cが(C
1〜C
3)アルキルである。
【0044】
実施形態では、本明細書において記載される化合物および組成物が、LFMA−13、[α−シアノ−β−ヒドロキシ−β−メチル−N−(2,5−ジブロモフェニル)プロペンアミド]、式Iを含む。
【0045】
式IおよびIIIによる化合物を含む式IIによる化合物は、肝臓細胞もしくは幹細胞などの細胞を培養するための組成物の構成成分として含むことができるか、または細胞培養培地に追加することができる。組成物は、任意の適した細胞培養培地中の構成成分として含むことができるか、または任意の適した細胞培養培地に追加することができる。式IIによる化合物を含むまたは追加することができる細胞培養培地の非限定的な例は、イーグル基礎培地(BME);改変イーグル培地(MEM)とも呼ばれるイーグル最小必須培地;ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM);およびその他同種のものを含む。
【0046】
例として、肝臓細胞または幹細胞などの哺乳動物細胞を培養するための細胞培養組成物は、1つ以上のアミノ酸(および多くの場合、タンパク質が合成される20種のアミノ酸すべて);ヌクレオチドまたはRNAもしくはDNAまたは1つ以上のヌクレオチドの合成のためのヒポキサンチンなどの1つ以上のプリンおよびチミジンなどの1つ以上のピリミジン;コリンおよびイノシトールなどのリン脂質の合成のための1つ以上の前駆体;特に、補酵素の一部分として機能する1つ以上のビタミン;エネルギー源もしくは他の適したエネルギー源としてのグルコース;または塩を介して提供することができる、Na
+、K
+、Ca
2+、Cu
2+、Zn
2+、およびCo
2+などの1つ以上の様々な無機イオンを含むことができる。好ましくは、組成物は、インビボ環境を模擬するpHおよび塩の濃度を有する。
【0047】
細胞培養組成物はまた、抗生物質、タンパク質もしくはポリペプチド、血清、またはその他同種のものを含むことができる。実施形態では、細胞培養組成物が、既知組成の組成物である。本明細書において使用されるように、「既知組成の培地」は、組成が知られていない構成成分を含有していない細胞培養培地を意味する。既知組成の細胞培養培地は、様々な実施形態では、組成が知られていないタンパク質、ヒドロシレート(hydrosylate)、またはペプチドを含有し得ない。いくつかの実施形態では、既知組成の培地が、組換え成長ホルモンなどの組成が知られているポリペプチドまたはタンパク質を含有する。既知組成の培地の構成成分がすべて知られている化学構造を有するため、培養条件におけるばらつき、したがって細胞応答におけるばらつきを低下させ、再現性を増加させることができる。そのうえ、混入の可能性を低下させる。さらに、スケールアップ機能が、少なくとも部分的に、上記に議論される因子により、より容易になる。
【0048】
細胞培養培地は、任意の適した濃度で式IIによる化合物を含むことができる。たとえば、全体的な薬物代謝を増強することが所望される場合、式IIの化合物は、実質的に類似する条件において培養される細胞に比べて、2つ以上の薬物代謝酵素(たとえば上記に議論される)のレベルの増強を引き起こすのに有効な濃度で追加することができる。実施形態では、式IIの化合物が、約250マイクロモル未満、約100マイクロモル未満、約50マイクロモル未満、または約20マイクロモル未満など、約500マイクロモル未満の濃度で組成物中に存在する。一般に、式IIの化合物は、約0.005マイクロモル超、約0.01マイクロモル超、または0.05マイクロモル超など、約0.001マイクロモル超の濃度で組成物中に存在する。実施形態では、式Iの化合物が、約0.01マイクロモル〜約50マイクロモルまたは約1マイクロモル〜約20マイクロモルもしくは約10マイクロモルなど、約0.05マイクロモル〜約100マイクロモルの濃度で組成物中に存在する。
【0049】
式IIによる化合物は、任意の適した方法で細胞培養組成物に追加することができる。例として、式IIによる化合物を含有する原液は、DMSOまたはその他同種のものなどの適切な溶媒中に化合物を溶解することによって作製することができる。原液は、一度追加されたら、結果として生じる細胞培養培地の所望の濃度よりも任意の倍数高い濃度で作製することができる。例として、原液は、1000倍の濃度の溶液、2000倍の濃度の溶液、またはその他同種のものとすることができる。原液は、適切な所望の濃度を実現するために、市販で入手可能な培地または他の培地とすることができる細胞培養培地に追加することができる。次いで、調製した培地は、0.2マイクロメートルのフィルターを使用するろ過によってなど、任意の適したプロセスを介して滅菌することができる。培地は、直ちに使用するまたは必要に応じて、たとえば4℃で、保管することができる。
【0050】
細胞は、式IIの化合物を含むまたは式IIの化合物が追加された細胞培養培地中で培養することができる。当技術分野において知られている細胞培養技術および手順を用いることができる。例として、細胞は、接種に先立って収集し、一度接種されたら、細胞が培養されることになっている培養培地などの適した培地中に懸濁することができる。たとえば、細胞は、式IIの化合物を含有する培養培地または式IIの化合物を後で追加することができる培養培地中に懸濁することができる。
【0051】
細胞は、任意の適した濃度で接種することができる。典型的に、細胞は、用いられる細胞培養デバイスの表面積の約10,000細胞/cm
2〜約500,000細胞/cm
2で接種される。たとえば、細胞は、用いられる細胞培養デバイスの表面積の約50,000細胞/cm
2〜約150,000細胞/cm
2で接種することができる。しかしながら、より高いおよびより低い濃度を容易に使用することができる。温度、CO
2およびO
2レベル、培養培地組成、ならびにその他同種のものなどのインキュベーション時間ならびに条件は、培養されている細胞の性質に依存し、容易に変更することができる。細胞が培養される時間は、所望の細胞応答に依存して変えることができる。
【0052】
培養細胞は、(i)治験研究または治療上の用法の開発、(ii)培養中の細胞の治験研究、(iii)治療上の用法の開発、(iv)治療目的、(v)遺伝子発現の研究、(vi)薬剤および毒性スクリーニングの研究、ならびに(vii)その他同種のものを含む任意の適した目的に使用することができる。
【0053】
式IIによる化合物の存在は、肝臓細胞の一般的な機能を増強することができる、培養肝臓細胞の全体的な薬物代謝を増強することができる、肝細胞の分化もしくは維持を促進することができる、またはその他同種のことをすることができる。
【0054】
実施形態では、培養細胞は、候補薬剤化合物の代謝を研究するために使用される。好ましくは、培養細胞は、初代ヒト肝細胞もしくは肝臓細胞株由来の細胞などの肝臓細胞または幹細胞に由来する細胞である。肝臓細胞の薬物代謝機能は、式IIによる化合物の存在下において細胞を培養することによって増強することができる。候補化合物は、細胞培養物に追加することができ、候補化合物に対する薬物代謝の効果を試験することができる。薬物代謝の効果を決定するための任意の適した方法を用いることができる。例として、培養培地由来の上清は、候補化合物の追加の後に、除去し、培養によって生成された代謝物質の組成を決定するために、分析(たとえばHLPC、ガスクロマトグラフ、質量分析法、NMR、もしくはその他同種のものまたはその組合せ)にかけることができる。同定された代謝物質は、濃縮しまたは合成し、当技術分野において一般に知られている培養または動物における毒性について試験することができる。培養肝臓細胞に対する、候補化合物および培養の間に生成された任意の代謝物質の影響を研究することができる。たとえば、酵素アッセイ(たとえば薬物代謝酵素誘発について)、遺伝子発現(たとえばmRNA分析)、毒性分析、またはその他同種のものを培養肝臓細胞に対して実行することができる。
【0055】
候補化合物は、任意の適した時間に培養物に追加することができる。実施形態では、候補化合物は、細胞が、全体的な薬物代謝を増強するのに十分な時間、式IIの化合物を含有する培地中でインキュベートされた後に、培養物に追加される。実施形態では、候補化合物は、細胞が、少なくとも約30分間、式IIによる化合物が存在下において培養された後に、細胞培養物に追加される。実施形態では、候補化合物および式IIによる化合物は、同時に細胞に与えられる。たとえば、候補化合物は、式IIによる化合物を含有する細胞培養培地に追加することができ、次いで、結果として生じる培地は、細胞を培養するために使用することができる。その代わりに、候補化合物および式IIによる化合物は、同時に、細胞培養培地または細胞培養物に追加することができる。
【0056】
実施形態では、細胞が、細胞のウイルス感染を促進するために、式IIによる化合物を含む培地中で培養される。前記感染細胞は、抗ウイルス剤についてスクリーニングするために使用することができるか、またはワクチンを生成するために使用することができる。好ましくは、培養細胞は、初代ヒト肝細胞もしくは肝臓細胞株由来の細胞などの肝臓細胞または幹細胞に由来する細胞である。肝臓細胞の全体的な機能は、式IIによる化合物の存在下において細胞を培養することによって増強することができる。ウイルスは、細胞培養物に追加することができ、ウイルスに対する化合物または化合物の存在下における細胞に対するウイルスの効果を評価することができる。ウイルスまたは化合物の効果を決定するための任意の適した方法を用いることができる。例として、感染率、感染密度、またはその他同種のものを決定することができる。細胞またはウイルス遺伝子発現、mRNA、またはタンパク質をアッセイすることができる。
【0057】
実施形態では、細胞が、肝組織を導くために式IIによる化合物を含む培地中で培養される。細胞は、初代肝細胞または幹細胞とすることができるか、またはそれを含むことができる。式IIによる化合物の存在は、肝細胞への分化を容易にするか、または肝細胞機能を維持することが期待されるであろう。
【0058】
実施形態では、細胞が、肝臓補助デバイス(たとえば、患者を肝移植に橋渡しするためのデバイス)を生成するためにまたは肝臓細胞移植において使用される細胞を生成するために、式IIによる化合物を含む培地中で培養される。細胞は、初代肝細胞または幹細胞とすることができるか、またはそれを含むことができる。式IIによる化合物の存在は、肝細胞への分化を容易にするか、または肝細胞機能を維持するもしくは増強することが期待されるであろう。
【0059】
実施形態では、細胞が、肝細胞に由来する治療用タンパク質の発現を増強するために式IIによる化合物を含む培地中で培養される。治療用タンパク質は、培養物から単離し、治療目的に使用することができる。式IIによる化合物の存在下において発現を増強することができる肝細胞に由来する治療用タンパク質の例は、アルブミン、フィブリノーゲン、リポタンパク質、セルロプラスミン、トランスフェリン、補体、糖タンパク質などを含むが、これらに限定されない。そのような肝細胞に由来する治療用タンパク質を発現するための式IIによる化合物の存在下において培養された細胞は、初代肝細胞または幹細胞とすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0060】
実施形態では、幹細胞が、肝細胞への分化を容易にするまたは肝細胞機能を維持するために、式IIによる化合物を含有する培地中で培養される。
【0061】
組成物および方法の多くの実施形態が、本明細書において記載される。そのような組成物および方法の選択される態様の要約を下記に提供する。
【0062】
第1の態様では、細胞を培養するための組成物が、式II
【0064】
(式中、
R
1は、(i)(C
1〜C
3)アルキル、(ii)(C
1〜C
3)シクロアルキル、(iii)ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C
1〜C
3)アルコキシ、(C
1〜C
3)アルキル、(C
1〜C
3)アルカノイル、−S(O)
2R
c、もしくはNR
aR
bから独立して選択される1つ以上の置換基により任意選択で置換されたフェニル、または(iv)NR
aR
bであり;
R
2は、ヒドロキシル、(C
1〜C
6)アルコキシ、(C
1〜C
6)アルカノキシアミノ(C
2〜C
5)アルコキシ;ヒドロキシ(C
2〜C
5)アルコキシアミノ(C
2〜C
5)アルカノキシ、またはヒドロキシル(C
2〜C
5)アルカノキシであり;
R
3は、シアノまたは(C
1〜C
3)アルカノイルであり;
R
4は、水素、(C
1〜C
3)アルキル、ヒドロキシル(C
2〜C
5)アルキル、またはアミノ(C
2〜C
5)アルキルであり;
R
aおよびR
bは、それぞれ、独立して、水素もしくは(C
1〜C
3)アルキルであるか、またはR
aおよびR
bは、それらが結合した窒素が加わって、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、もしくはチオモルホリノであり;
nおよびmは、独立して、0〜2の整数であり;
Xは、ハロであり;
Yは、−S(O)
2R
cまたは−OR
cであり;
R
cは、(i)非置換もしくはハロにより置換された(C
1〜C
3)アルキルまたは(ii)アリールである)
の構造を有する化合物を含む。組成物はまた、細胞のためのエネルギー源、アミノ酸、ビタミン、またはその他同種のものなどの細胞培養の1つ以上の構成成分を含むことができる。化合物は、培養肝臓細胞の代謝機能を増強するのに十分な量で組成物中に存在することができる。
【0067】
(式中、
nおよびmは、独立して、0〜2の整数であり、
Xは、ハロであり、
Yは、−S(O)
2R
cまたは−OR
cであり、
R
cは、(i)非置換もしくはハロにより置換された(C
1〜C
3)アルキルまたは(ii)アリールである)
の構造を有する、第1の態様による組成物組成物である。
【0068】
第3の態様は、mが0である、第1または第2の態様による組成物である。
【0069】
第4の態様は、nが2である、第1〜第3の態様のいずれかによる組成物である。
【0070】
第5の態様は、化合物がLFM−A13である、第1の態様による組成物である。
【0071】
第6の態様は、化合物が約0.1マイクロモル〜約50マイクロモルの濃度で組成物中に存在する、第1〜第5の態様のいずれかによる組成物である。
【0072】
第7の態様は、化合物が約1マイクロモル〜約20マイクロモルの濃度で組成物中に存在する、第1〜第5の態様のいずれかによる組成物である。
【0073】
第8の態様は、組成物が血清を含む、第1〜第7の態様のいずれかによる組成物である。
【0074】
第9の態様は、組成物が血清を含まない、第1〜第7の態様のいずれかによる組成物である。
【0075】
第10の態様は、肝臓細胞をさらに含む、第1〜第9の態様のいずれかによる組成物である。
【0076】
第11の態様は、肝臓細胞が肝細胞である、第10の態様による組成物である。
【0077】
第12の態様は、肝細胞が初代肝細胞である、第11の態様による組成物である。
【0078】
第13の態様は、幹細胞に由来する肝細胞をさらに含む、第1〜第12の態様のいずれかによる組成物である。
【0079】
第14の態様は、第2の化合物をさらに含み、第2の化合物は、候補化合物であって、その代謝物質が分析されることが所望される候補化合物である、第1〜第13の態様のいずれかによる組成物である。
【0080】
第15の態様は、培養肝臓細胞に感染することができるウイルスをさらに含む、第1〜第14の態様のいずれかによる組成物である。
【0081】
第16の態様は、培養中の肝臓細胞の代謝機能を増強する方法において:(i)第1〜第9の態様のいずれかによる組成物中で肝臓細胞を培養するステップであって、化合物は、実質的に類似するが、式IIによる化合物を欠く培地中で培養された肝臓細胞に比べて、培養肝臓細胞における2つ以上のCYP酵素のレベルを増強するのに有効な量で存在するステップを有してなる方法である。
【0082】
第17の態様は、肝臓細胞が肝細胞である、第16の態様による方法である。
【0083】
第18の態様は、肝細胞が初代肝細胞である、第17の態様による方法である。
【0084】
第19の態様は、肝臓細胞が分化幹細胞である、第16の態様による方法である。
【0085】
第20の態様は、肝臓細胞から分泌された組成物タンパク質から単離するステップをさらに含む、第16〜第19の態様のいずれかによる方法である。
【0086】
第21の態様は、培養物から肝臓細胞を単離するステップおよび肝臓補助デバイスに細胞を組み込むステップをさらに含む、第16〜第19の態様のいずれかによる方法である。
【0087】
第22の態様は、培養物から肝臓細胞を単離するステップおよびその必要がある対象の肝臓に単離された細胞を移植するステップをさらに含む、第16〜第19の態様のいずれかによる方法である。
【0088】
第23の態様は、候補化合物の代謝物質を同定する方法において:(i)第1〜第9の態様のいずれかによる組成物中で肝臓細胞を培養するステップであって、化合物は、実質的に類似するが、式IIによる化合物を欠く組成物中で培養された肝臓細胞に比べて、培養肝臓細胞における2つ以上のCYP酵素のレベルを増強するのに有効な量で存在するステップ;(ii)培養細胞を候補化合物と接触させるステップ;および(iii)候補化合物の代謝物質を同定するステップを有してなる方法である。
【0089】
第24の態様は、肝臓細胞が、培養細胞を候補化合物と接触させる前に、薬物代謝酵素レベルを増強するのに十分な期間、第1〜第9の態様のいずれかによる組成物中で培養される、第23の態様による方法である。
【0090】
第25の態様は、肝臓細胞が、培養細胞を候補化合物と接触させる前に、約30分間、第1〜第9の態様のいずれかによる組成物中で培養される、第23または第24の態様による方法である。
【0091】
第26の態様は、肝臓細胞が肝細胞である、第23〜第25の態様のいずれかによる方法である。
【0092】
第27の態様は、肝細胞が初代肝細胞である、第26の態様による方法である。
【0093】
第28の態様は、肝細胞への幹細胞の分化を促進する方法において、第1〜第9の態様のいずれかによる組成物中で幹細胞を培養するステップを有してなる方法である。
【0094】
以下において、全体的な肝機能を増強するための代表的な組成物および方法の様々な実施形態を記載する非限定的な実施例が示される。
【実施例】
【0095】
実施例1:培養肝臓細胞のCYP酵素レベルに対するLF、LFM、およびLFM−A13の効果
初代ヒト肝細胞におけるCYP3A4およびCYP1A2の機能に対するレフルノミド(LEF)、レフルノミド代謝物質(LFM)、およびレフルノミド代謝物質アナログA−13(LFMA−13)の効果を試験する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養した初代ヒト肝細胞を、それぞれ、ビヒクルコントロール、10μM LF、10μM LFM、および10μM LFM−A13を含有するCorning肝細胞培地とインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、CYP3A4およびCYP1A2酵素アッセイをPromega P450−Glo(商標)アッセイキットを使用して実行する。アッセイ結果は、同じウェルにおいてATPレベルに対して標準化する。結果を
図1に示す。
【0096】
図1に示されるように、LEFは、CYP3A4活性に対して効果がほとんどないが、CYP1A2活性を約12倍、増加させ、LEFがCYP1A2誘発因子であることを示す文献の報告と一致する。LFMは、CYP3A4およびCYP1A2活性に対して効果がほとんどない。LFM−A13は、CYP3A4活性において最も大きな増加をもたらし(約4倍増加)、またCYP1A2活性をも増強した(約3倍)。
【0097】
CYP3A4活性に対するこれらの化合物の効果はまた、肝臓細胞株に対しても試験する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養するHepaRG細胞(Invitrogen)およびCorning肝臓細胞株を、それぞれ、ビヒクルコントロール、10μMレフルノミド(LF)、10μM LFM、および10μM LFM−A13を含有する培地とインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、CYP3A酵素アッセイをPromega P450−Glo(商標)アッセイキットを使用して実行する。アッセイ結果は、同じウェルにおいてATPレベルに対して標準化する。結果を
図2に示す。
【0098】
図2に示されるように、肝臓細胞株におけるCYP3A4活性に対する化合物の効果は、初代ヒト肝細胞における効果に類似する(
図1を
図2と比較する)。
【0099】
異なる培地中で培養した初代ヒト肝細胞におけるCYP3A4機能に対するLFM−A13の効果を試験する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養した初代ヒト肝細胞を、それぞれ、ビヒクルおよび10μM LFM−A13を含有する5つの異なる培地(4つの市販で入手可能な肝細胞培地およびCorning肝細胞培地)とインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、CYP3A酵素アッセイをPromega P450−Glo(商標)アッセイキットを使用して実行する。アッセイ結果は、同じウェルにおいてATPレベルに対して標準化する。結果を
図3に示す。
【0100】
図3に示されるように、LFMA−13は、試験した細胞培養培地の5つすべてにおいて培養した細胞においてCYP3A4活性を増加させた。
【0101】
基本的なおよび誘発性のCYP3A4活性に対するレフルノミド(LEF)、レフルノミド代謝物質(LFM)、およびレフルノミド代謝物質アナログA−13(LFMA−13)の効果について調査する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養した初代ヒト肝細胞を、それぞれ、ビヒクルコントロール、10μM LF、10μM LFM、および10μM LFM−A13を含有するCorning肝細胞培地と、知られているCYP3A4誘発因子である、25μMのリファンピンの存在下または非存在下においてインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、CYP3A酵素アッセイをPromega P450−Glo(商標)アッセイキットを使用して実行する。アッセイ結果は、同じウェルにおいてATPレベルに対して標準化する。結果を
図4に示す。
【0102】
図4に示されるように、LEFもLFMも、基本的なまたは誘発性のCYP3A4活性に対する効果をあまり有していない。対照的に、LMF−A13は、基本的なおよび誘発性のCYP3A4活性を増加させた。LFMA−13が誘発性のCYP3A4活性を増加させたことは、LFMA−13が、単に遺伝子発現の誘発因子としてのものであるだけではないメカニズムによって全体的な薬物代謝を増強することを示唆する。理論によって拘束されることを意図するものではないが、低濃度のLFMA−13(たとえば約5マイクロモル未満)は、リン酸化など、翻訳後の制御的な(regulational)安定効果を有することができると考えられる。さらに理論によって拘束されることを意図するものではないが、より高濃度(たとえば約5マイクロモル)で、LFMA−13は、薬物代謝酵素の遺伝子発現を誘発することもまた、考えられる。
【0103】
様々な濃度のLFM−A13の効果を、CYP1A2およびCYP3A4の基本的なおよび誘発性の活性について試験する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養した初代ヒト肝細胞を、それぞれ、ビヒクルコントロール、20μM LFM−A13、10μM LFM−A13、5μM LFM−A13、2.5μM LFM−A13、1.25μM LFM−A13、0.63μM LFM−A13、0.32μM LFM−A13、および0.16μM LFM−A13を含有するMFE培地と、知られているCYP3A4誘発因子である、25μMのリファンピンの存在下もしくは非存在下においてまたは知られているCYP1A2誘発因子である、100μMのオメプラゾールの存在下もしくは非存在下においてインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、CYP3A4およびCYP1A2酵素アッセイをPromega P450−Glo(商標)アッセイキットを使用してそれぞれ実行する。アッセイ結果は、同じウェルにおいてATPレベルに対して標準化する。結果を
図5A〜5Bに示す。
【0104】
図5A〜5Bに示されるように、LFM−A13は、基本的なおよび誘発性のCYP1A2およびCYP3A4活性の両方を増強した。基本的な活性は、誘発性の活性の増強よりもわずかに高い濃度でより大いに増強される。
【0105】
遺伝子発現に対するLEF、LFM、およびLFM−A13の効果について試験する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養した初代ヒト肝細胞を、それぞれ、ビヒクルコントロール、10μM LEF、10μM LFM、および10μM LFM−A13を含有するCorning肝細胞培地とインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、全RNAを単離し、相対的mRNAレベルはリアルタイムPCRを使用して定量化する。結果を
図6に示し、ここで、CYPはシトクロムP450酵素であり、SULTはスルホトランスフェラーゼであり、UGTはUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼであり、ABCはATP結合カセットトランスポーターであり、AHRはアリール炭化水素受容体であり、CARは構成的アンドロステン受容体であり、PXRはプレグネノロンx−受容体である。
【0106】
図6において示されるように、LFM−A13は、試験したCYP酵素のすべて(CYP1A2、CYP2B6、およびCYP3A4)、ならびにUGT1A1、ABCトランスポーターのいくつか、およびAHRのmRNAレベルを大いに増加させ、LFM−A13が肝機能を広く増強することを示唆した。
【0107】
種々様々の薬物代謝酵素および初代ヒト肝細胞の他のタンパク質をコードするmRNAのレベルに対するLFMA−13の効果について試験する。手短に言えば、コラーゲンIコート表面上で培養した初代ヒト肝細胞を、それぞれ、ビヒクルコントロールおよび10μM LFM−A13を含有するCorning肝細胞培地とインキュベートする。48時間のインキュベーションの終わりに、全RNAを単離し、相対的mRNAレベルはリアルタイムPCRを使用して定量化する。結果を
図7に示し、ここで、ABCはATP結合カセットトランスポーターであり、CYPはシトクロムP450酵素であり、SLCは、溶質輸送体トランスポーターであり、SULTはスルホトランスフェラーゼであり、UGTはUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼであり、GSTはグルタチオンS−トランスフェラーゼであり、AHRはアリール炭化水素受容体であり、FOXOはフォークヘッドボックス受容体であり、HNFは肝臓核内因子であり、NCOは核内受容体コアクチベーターであり、NRは核内受容体であり、PPARGC1Aはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマコアクチベーター1−アルファであり、RXRはレチノイドX受容体であり、VDRはビタミンD受容体である。
【0108】
図7に示されるように、LFMA−13は肝細胞機能を増強する全体的な効果を有するように思われる。種々様々の薬物代謝酵素は、多くのCYPを含めて、LFMA−13の存在下においてレベルの増加を示す。多くの他の肝臓mRNAの多くのレベルもまた、LFMA−13の存在下において増加する。これらの結果は、培養肝臓細胞に対するLFM−A13の広範な効果について確認するものである。
【0109】
肝臓細胞に対する薬物代謝活性に対する効果を、テレイン酸およびBTK siRNAなどの他のBTK阻害剤について試験する。LFM−A13により見られた肝機能の広範な増強は、これらの構造的に関連しないBTK阻害剤により観察されない。
【0110】
そのうえ、LFM−A13がまたPolo様キナーゼ(PLK)阻害剤でもあるため、全体的な肝機能を増強するためにPLK mRNAに向けられるsiRNAの能力について評価する。LFM−A13に構造的に関連しないBTK阻害剤に類似して、Polo様キナーゼsiRNAは全体的な肝臓の増強をもたらさなかった。
【0111】
CYP3A4酵素活性に対する、BTK、PLK2、PLK3、およびPLK4に向けられるshRNAの効果の結果を
図8に示す。
【0112】
実施例2:肝細胞への幹細胞の分化に対するLFM−A13の効果
ヒト胚性幹細胞(hESC)に由来する肝細胞に対するLFM−A13の効果について評価する。手短に言えば、hESCを、当業者に知られている方法を使用して肝細胞系列にコミットさせ、次いで、10μM LFM−A13の存在下または非存在下においてCorning肝細胞培地中で培養する。7日後に、幹細胞に由来する肝細胞は、肝細胞タンパク質の発現を検出するために;(b)肝臓前駆体マーカーであるアルブミン(ALB)の存在について試験するために;ならびに(c)ATP結合カセット(ABC)トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーおよび肝機能についてマーカーである多剤耐性関連タンパク質2(MRP2)の存在について試験するために、一次抗体により免疫染色する。細胞の核は、すべての細胞を視覚化するために4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI)により対比染色する(図a)。免疫染色の結果を
図9に示す。示されるように、LFM−A13の非存在下において培養されたhESC(左の列)は、低レベルの肝臓マーカー(ALBおよびMRP2)を有する。対照的に、LFM−A13の存在下において培養されたhESC(右の列)は、より高いレベルの肝臓マーカー(ALBおよびMRP2)を有する。LFM−A13が肝細胞へのhESCの分化、維持、または機能を容易にしたことを示す。
【0113】
リファンピシン誘発性のCYP3A4活性および様々な肝臓マーカーのmRNA発現に対するLFM−A13の効果もまた、分化hESCに対して決定する。
図10に示されるように、リファンピン誘発性のCYP3A4活性は、LFM−A13の存在によって大いに増強される。
図11に示されるように、LFM−A13は、多くの肝臓マーカーの発現を増強した。
図11において、ALBはアルブミンであり、AFPはアルファ−フェトプロテインであり、CYP3A4はシトクロムp450 3A4であり、CYP7A1はシトクロムp450 7A1であり、PGC1aはグルココルチコイド受容体コアクチベーター−1aである(COL=コラーゲンIコートプレート;MOL=Matrigelオーバーレイ)。
【0114】
このように、肝細胞機能の増強のための細胞培養培地についての実施形態が開示される。当業者は、本明細書において記載される化合物、組成物、および方法が、開示されたもの以外の実施形態により実施することができることを理解するであろう。開示される実施形態は、限定ではなく説明の目的のために示される。